


不動産を相続したとき、まず知っておきたいことがあります。この土地の相続税はいくらか、という問いには答えられません。
相続税は不動産だけを切り出して計算する税金ではなく、預貯金や保険金も含めた遺産全体に対してかかるものだからです。
順番はこうです。不動産の評価額を出す → 他の財産と合計する → 基礎控除を引く → 税額を出す。不動産の金額はこの最初の一歩にすぎません。
評価額の出し方は土地と建物で違います。土地は路線価をもとに計算し、建物は課税明細書の固定資産税評価額をそのまま使います。
自宅なら土地の評価額を8割減らせる制度があり、これを使えるかどうかで税額が0円になることもあります。
見落としやすいのが相続税以外の出費です。名義変更には登録免許税がかかり、司法書士に頼めば報酬も必要になります。一方で不動産取得税は相続ではかかりません。
この記事では、不動産の相続税がどう決まるかとかからないケース、計算の流れと具体例・早見表、土地と建物とマンションの評価方法、使える特例と生前の相続税対策、相続税以外にかかる税金と実費、賃貸物件を含む相続後の手続きまでを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

もっとも多い誤解がここです。相続税は財産ごとにかかるのではなく、遺産の総額に対してかかります。「この土地の相続税はいくら」という質問には答えられません。
不動産の評価額が3,000万円だとしても、それだけでは相続税がかかるかどうかも決まりません。他にどんな財産があるかで結論が変わるためです。
| 遺産の内容 | 合計 | 相続人2人での判定 |
|---|---|---|
| 不動産3,000万円のみ | 3,000万円 | 基礎控除4,200万円以下なので0円 |
| 不動産3,000万円+預貯金1,000万円 | 4,000万円 | 0円 |
| 不動産3,000万円+預貯金3,000万円 | 6,000万円 | 相続税がかかる |
| 不動産3,000万円+預貯金5,000万円 | 8,000万円 | 相続税がかかる |
表の見方:不動産の金額は4行すべて同じ3,000万円です。それでも結論は0円と課税に分かれます。不動産だけを見て判断できないのはこのためです。
重要ポイント:「不動産にかかる相続税」という言い方は正確ではありません。遺産全体の相続税を、取得した財産の割合で分けたものが各人の税額です。不動産を相続した人の税額は、その割合に応じて決まります。
相続税の税率表を見て「うちは20%だ」と考えるのも誤りです。税率を掛けるのは、法定相続分で分けた後の金額であって、遺産の総額そのものではありません。
| 計算の順番 | 内容 | 例(遺産6,400万円・子2人) |
|---|---|---|
| ①遺産の総額 | 不動産+預貯金など | 6,400万円 |
| ②基礎控除 | 3,000万円+600万円×2人 | 4,200万円 |
| ③課税される遺産 | ①−② | 2,200万円 |
| ④法定相続分で分ける | 2人で2分の1ずつ | 各1,100万円 |
| ⑤税率を掛ける | 1,100万円×15%−50万円 | 各115万円 |
| ⑥相続税の総額 | ⑤を合計 | 230万円 |
表の見方:税率15%を掛けるのは④で分けた1,100万円に対してです。遺産6,400万円に税率を掛けるのではありません。この順番を飛ばすと税額を大きく見誤ります。
重要ポイント:⑤で使う税率は分けた後の金額で決まります。相続人が多いほど1人分が小さくなり、低い税率が適用されます。
税率表の読み方でつまずく人は少なくありません。使い方と端数の処理は、下記の記事で解説しています。

やるべきことには順番があり、不動産の評価額を出す前に、財産の一覧を作ってください。順番を守るだけで判定が早く済みます。
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重要ポイント:STEP4で収まるなら税額の計算も申告も不要です。不動産があっても、ここで終わる家庭は少なくありません。
不動産を相続しても、相続税がかからない家庭は少なくありません。次の3つのどれかに当てはまれば、相続税は0円です。
| ケース | 目安 | 申告 |
|---|---|---|
| 遺産全体が基礎控除以下 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数(2人なら4,200万円) | 不要 |
| 自宅の土地に小規模宅地等の特例を使う | 330㎡まで評価額を8割減 | 必要 |
| 配偶者が相続する | 1億6,000万円か法定相続分まで税額0円 | 必要 |
重要ポイント:2つ目と3つ目は、税額が0円でも申告書を出さないと使えません。
土地だけを相続した場合の判定は、下記の記事で解説しています。

家(自宅)を相続した場合の判定は、下記の記事で解説しています。


不動産の評価額が出たら、いよいよ税額の計算です。遺産の総額から基礎控除を引き、法定相続分で分けて税率を掛けます。実際の数字で通してみます。
順番どおりに進めれば誰でも計算できます。途中を飛ばすと税額を大きく見誤りますので注意してください。
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重要ポイント:STEP3で使うのは実際の分け方ではなく法定相続分です。不動産を1人が全部相続する場合でも、計算上はいったん法定相続分で分けます。
もっとも多いパターンで実際に計算してみます。自宅の土地と建物、預貯金を子2人で相続するケースです。
【前提】土地180㎡(路線価20万円/㎡)・建物(固定資産税評価額800万円)・預貯金2,000万円。相続人は子2人。債務と葬式費用はなし。
| 計算の順番 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 土地の評価額 | 20万円×180㎡ | 3,600万円 |
| 建物の評価額 | 固定資産税評価額 | 800万円 |
| 預貯金 | — | 2,000万円 |
| ①遺産の総額 | 合計 | 6,400万円 |
| ②基礎控除 | 3,000万円+600万円×2人 | △4,200万円 |
| ③課税される遺産 | ①−② | 2,200万円 |
| ④法定相続分で分ける | 2人で2分の1ずつ | 各1,100万円 |
| ⑤税率を掛ける | 1,100万円×15%−50万円 | 各115万円 |
| ⑥相続税の総額 | ⑤を合計 | 230万円 |
表の見方:薄赤の230万円が相続人2人で納める合計額です。実際の分け方が半分ずつなら、1人115万円ずつを納めます。
計算ロジック:税率15%が適用されるのは、④で分けた後の1,100万円に対してです。相続税の速算表では1,000万円超3,000万円以下の区分が税率15%・控除額50万円です。
自分のケースに近い数字を探してください。相続人が多いほど税額は下がります。
| 遺産の総額 | 子1人 | 子2人 | 配偶者と子1人 | 配偶者と子2人 |
|---|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 160万円 | 80万円 | 80万円 | 20万円 |
| 6,000万円 | 310万円 | 180万円 | 180万円 | 120万円 |
| 7,000万円 | 480万円 | 320万円 | 320万円 | 225万円 |
| 8,000万円 | 680万円 | 470万円 | 470万円 | 350万円 |
| 1億円 | 1,220万円 | 770万円 | 770万円 | 630万円 |
| 1億5,000万円 | 2,860万円 | 1,840万円 | 1,840万円 | 1,495万円 |
表の見方:これは相続税の総額で、配偶者の税額軽減を適用する前の金額です。配偶者が相続する分は、この後の軽減でさらに下がります。
重要ポイント:同じ遺産額でも子1人と子2人では税額が半分近くまで変わります。相続人の数え方を間違えると、税額の見込みが大きくずれます。
注意:この表は8割減などの特例を使う前の数字です。自宅の土地があるなら、実際の税額はここから大きく下がります。
配偶者が取得した分は税額軽減が効きます。誰がどれだけ相続するかで、納付する合計額が変わります。
| 配偶者の取得割合 | 配偶者の税額 | 子の税額 | 納付する合計 |
|---|---|---|---|
| 100%(すべて配偶者) | 230万円 → 軽減で0円 | 0円 | 0円 |
| 50% | 115万円 → 軽減で0円 | 115万円 | 115万円 |
| 0%(すべて子) | — | 230万円 | 230万円 |
表の見方:遺産6,400万円・配偶者と子1人のケースです。配偶者に寄せるほど最初の相続の税額は下がります。
重要ポイント:ただし黄色の行を選ぶと次に配偶者が亡くなったときに、その財産へもう一度課税されます。基礎控除が600万円減り、配偶者の軽減も使えないため、2回の合計では不利になることがあります。
計算ロジック:相続税の総額230万円を取得割合で按分します。配偶者が50%なら115万円で、配偶者の税額軽減により0円になります。子の115万円はそのまま納付します。
同じケースで小規模宅地等の特例を使うとどうなるかを見てみます。土地の評価額が5分の1になり、税額は0円に変わります。
| 8割減を使わない | 8割減を使う | |
|---|---|---|
| 土地の評価額 | 3,600万円 | 720万円 |
| 建物 | 800万円 | 800万円 |
| 預貯金 | 2,000万円 | 2,000万円 |
| 課税価格 | 6,400万円 | 3,520万円 |
| 相続税の総額 | 230万円 | 0円 |
表の見方:土地3,600万円が720万円になり、課税価格が基礎控除4,200万円を下回ります。税額は230万円から0円に変わります。
重要ポイント:ただしこの制度は申告書を出さないと使えません。税額が0円になる場合でも、申告期限までに提出する必要があります。
計算ロジック:3,600万円×0.2=720万円。720万円+800万円+2,000万円=3,520万円で基礎控除4,200万円以下になります。制度を使わなければ230万円、使えば0円という230万円の差です。

土地は売買価格ではなく、国税庁が定めた路線価をもとに計算します。路線価は公示価格の8割が目安なので、実際に売れる金額より低く出ます。
路線価方式の計算式は単純で、道路に付けられた1㎡あたりの価格に、土地の面積を掛けます。必要な数字は路線価と面積の2つだけです。
| 項目 | 調べる場所 | 例 |
|---|---|---|
| 路線価 | 国税庁の路線価図(無料) | 20万円/㎡ |
| 土地の面積 | 登記事項証明書の「地積」 | 180㎡ |
| 土地の評価額 | 路線価×面積 | 3,600万円 |
表の見方:路線価図の数字は千円単位です。「200」と書かれていれば1㎡あたり20万円を意味します。300円と読み違えると桁が3つずれます。
重要ポイント:使うのは亡くなった年の路線価です。申告する年ではありません。路線価は毎年7月に公表されます。
郊外や農村部では路線価が定められていません。この場合は固定資産税評価額に決められた倍率を掛けて評価します。倍率方式と呼ばれる方法です。
| 方式 | 計算式 | 使う地域 |
|---|---|---|
| 路線価方式 | 路線価×面積×補正率 | 市街地。路線価図に数字がある |
| 倍率方式 | 固定資産税評価額×評価倍率 | 郊外・農村部。路線価図に「倍率地域」と書かれている |
表の見方:倍率方式では補正率を掛ける必要がありません。固定資産税評価額の時点で土地の形などが反映されているためです。
計算ロジック:固定資産税評価額1,000万円で倍率1.1なら、相続税評価額は1,100万円です。倍率は路線価図と同じページの「評価倍率表」で確認できます。
路線価×面積で出るのは上限に近い金額です。形がいびつ・間口が狭い・道路と高低差があるといった事情があれば減額できます。自分で見つけて申告しないと適用されません。
自分の土地にどの減額が使えるかは、条件を一つずつ当てはめて判断します。路線価図の読み方と補正率の適用方法は、下記の記事で解説しています。


土地だけで相続税がかかるかどうか、いくらまで無税かの判定は、下記の記事で解説しています。


建物は計算が不要です。毎年届く固定資産税の課税明細書に載っている評価額をそのまま使います。マンションだけは2024年から新しいルールが加わりました。
建物には土地のような計算式がなく、課税明細書の「価格」の欄をそのまま相続税評価額として使います。路線価を調べる必要もありません。
| 確認する欄 | 相続税での扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 課税明細書の家屋の「価格」 | そのまま評価額として使う | 計算不要 |
| 課税明細書の「課税標準額」 | 使わない | 軽減後の金額。相続税では使えない |
| 建築費・購入価格 | 使わない | 固定資産税評価額は建築費の5〜7割程度 |
表の見方:薄赤の「課税標準額」を使うのがよくある誤りです。住宅用地の軽減が入った数字なので、相続税では使えません。
重要ポイント:建物の評価額は建築費の5〜7割程度に落ち着くのが一般的です。2,000万円で建てた家の評価額が1,000万円台ということは珍しくありません。
課税明細書の「価格」と「課税標準額」の違いと、固定資産税評価額から相続税がかかるかを判定する計算例は、下記の記事で解説しています。

人に貸している建物は自分の意思で自由に使えません。その分だけ評価額が下がります。土地の評価も同時に下がります。
| 建物の使い方 | 評価額 | 土地の評価 |
|---|---|---|
| 自分で住んでいる | 固定資産税評価額のまま | 自用地として評価 |
| 人に貸している(満室) | 固定資産税評価額×(1−0.3) | 貸家建付地として2割前後下がる |
| 空き家 | 固定資産税評価額のまま | 自用地として評価 |
表の見方:黄色の行では建物も土地も下がります。借家権割合30%を引くので、建物の評価額は7割になります。
注意:空室があれば賃貸割合を掛けて計算します。全室空室なら減額は使えません。
土地を人に貸している場合は、自分で使っている土地(自用地)の評価額から、借りている人の権利の分を差し引きます。土地だけを貸しているか、建物を建てて貸しているかで計算式が変わります。
| 土地の使い方 | 呼び方 | 評価額の計算式 |
|---|---|---|
| 土地を貸し、借りた人が建物を建てている | 貸宅地 | 自用地の評価額×(1−借地権割合) |
| 自分の建物(アパート・貸家)を建てて貸している | 貸家建付地 | 自用地の評価額×(1−借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合) |
表の見方:借地権割合は、路線価図の数字の後ろのアルファベットで分かります。A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%です。
自用地の評価額5,000万円・借地権割合60%(D)の土地で計算すると、次のとおりです。貸宅地なら評価額は4割、満室のアパート用地なら8割強になります。
| ケース | 評価額 |
|---|---|
| 自分で使っている(自用地) | 5,000万円 |
| アパート用地・満室(賃貸割合100%) | 4,100万円 |
| アパート用地・8割入居(賃貸割合80%) | 4,280万円 |
| 貸宅地 | 2,000万円 |
計算ロジック:満室:5,000万円×(1−0.6×0.3×1.0)=4,100万円。8割入居:5,000万円×(1−0.6×0.3×0.8)=4,280万円。貸宅地:5,000万円×(1−0.6)=2,000万円。
重要ポイント:空室が多いと賃貸割合が下がり、評価減が小さくなります。亡くなった時点で一時的に空いていた部屋は、入居者を募集していれば賃貸中として扱える場合があります。
相続する不動産は1件とは限らず、離れた場所にあるものは1つずつ評価し、隣接するものは使い方で判断します。
| 状況 | 評価のしかた | 注意点 |
|---|---|---|
| 離れた場所の複数の土地 | 1つずつ別々に評価 | それぞれ路線価図を確認する |
| 隣接する2筆の土地 | 一体として利用していれば合わせて評価 | 登記が分かれていても使い方で判断する |
| 自宅と隣の駐車場 | 用途が違えば別々に評価 | 8割減をどちらに使うかを選ぶ必要がある |
| 自宅と貸しているアパート | 別々に評価 | 面積の上限を調整する計算が必要になる |
表の見方:薄赤の行が判断を要するところです。8割減は自宅なら330㎡・貸付用なら200㎡と上限が違い、併用には調整計算が必要です。
重要ポイント:複数の不動産があるならまず名寄帳で全部を洗い出してください。把握していない土地が見つかることは珍しくありません。
マンションは敷地の持分と建物を合わせて評価します。2024年1月以降の相続では、一部の物件で評価額が引き上げられます。対象かどうかだけ確認してください。
| 物件の特徴 | 評価額への影響 | 確認の必要性 |
|---|---|---|
| 築浅・高層階のタワーマンション | 大きく上がることがある | 必ず確認する |
| 築浅の一般的な分譲マンション | 多少上がることがある | 境界にいるなら確認 |
| 築古のマンション | ほぼ変わらない | 従来どおりの判定でよい |
| 一戸建て | 対象外 | 影響なし |
表の見方:対象になるのは居住用の区分所有マンションだけです。一戸建てと、区分所有していない賃貸アパート一棟は対象外です。
重要ポイント:判定には築年数・総階数・所在階・敷地の持分が必要です。国税庁が計算用のツールを公開しているので、手計算は不要です。
対象に当てはまりそうな場合は正確に計算する必要があります。マンションの評価額の計算と2024年の新しいルールは、下記の記事で解説しています。



もっとも効果が大きいのは自宅の土地を8割減らせる制度です。配偶者が相続すれば1億6,000万円まで税額が0円にもなります。該当するものを漏らさず使ってください。
制度は数多くありますが、不動産の相続で効くのは上位2つでほぼ決まります。効果の大きい順に整理しました。
| 制度 | 効果 | 対象 | 申告 |
|---|---|---|---|
| 小規模宅地等の特例 | 土地の評価額を最大80%減 | 自宅・事業用・貸付用の土地 | 必要 |
| 配偶者の税額軽減 | 1億6,000万円か法定相続分まで税額0円 | 配偶者が取得した分 | 必要 |
| 未成年者控除 | 10万円×18歳になるまでの年数 | 18歳未満の相続人 | 不要 |
| 障害者控除 | 10万円または20万円×85歳までの年数 | 障害のある相続人 | 不要 |
| 相次相続控除 | 前回納めた相続税の一部 | 10年以内に相続税を払った場合 | 不要 |
| 贈与税額控除 | すでに払った贈与税の分 | 生前贈与を加算した場合 | 不要 |
表の見方:黄色の2つは申告書を出さないと使えません。税額が0円になる場合でも提出が必要です。下の4つは申告なしで適用されます。
重要ポイント:不動産の相続では小規模宅地等の特例が使えるかどうかで結論が変わります。まずこれを確認してください。
自宅の土地で使えるのは限られた人だけです。配偶者は無条件で使えますが、それ以外は住まいと保有の要件があります。
| 相続する人 | 8割減 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 使える | 要件なし |
| 同居していた親族 | 使える | 申告期限まで住み続け、その土地を持ち続ける |
| 生計を一にしていた親族 | 使える | 同じ |
| 持ち家のない別居の親族 | 使える | 配偶者も同居親族もいない/3年間持ち家に住んでいない |
| 持ち家がある別居の子 | 使えない | 持ち家がある時点で対象外 |
表の見方:薄赤の行が最も多い失敗です。すでに自分の家を持っている子が実家を相続すると使えません。同じ土地でも誰が相続するかで税額が変わります。
重要ポイント:面積の上限は自宅なら330㎡、事業用なら400㎡、貸付用なら200㎡です。減額の割合も貸付用だけ50%になります。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
どの区分に当てはまるかで結果が大きく変わります。区分ごとの要件と、誰が相続すると得かは下記の記事で解説しています。

未成年者控除と障害者控除は申告なしで使え、年齢から自動的に控除額が決まるため、計算も簡単です。
| 控除 | 計算式 | 例 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 未成年者控除 | 10万円×(18歳−相続時の年齢) | 15歳の子 | 30万円 |
| 未成年者控除 | 同じ | 10歳の子 | 80万円 |
| 障害者控除(一般) | 10万円×(85歳−相続時の年齢) | 40歳 | 450万円 |
| 障害者控除(特別) | 20万円×(85歳−相続時の年齢) | 40歳 | 900万円 |
| 相次相続控除 | 前回納めた相続税×経過年数に応じた割合 | 10年以内に相続税を払った場合 | 個別に計算 |
表の見方:黄色の2つは金額が大きくなります。障害者控除は40歳なら450万円、特別障害者なら900万円の控除です。不動産があって税額が出るケースでも、これで0円になることがあります。
重要ポイント:控除額が自分の税額を超えた場合は扶養義務者の税額から引けることがあります。使い切れないまま終わらせないでください。
未成年者控除と障害者控除の詳しい要件は、それぞれ下記の記事で解説しています。


配偶者には手厚い制度が用意されています。1億6,000万円か法定相続分のどちらか大きい金額まで税額が0円になります。
不動産の評価額が数千万円なら、配偶者が相続すればほぼ課税されません。ただし次に配偶者が亡くなったときに、その財産へもう一度課税されます。
重要ポイント:配偶者に寄せすぎると二次相続で基礎控除が600万円減り、配偶者の軽減も使えません。2回の合計で見ると不利になることがあります。

不動産は、持ち方や渡し方しだいで相続税の評価額が大きく変わる財産です。生前に準備しておけば、同じ不動産でも相続税を下げられます。ただし、どの方法にも手間やリスクがあるため、相続税だけで判断しないことが大切です。
空き地のままだと自用地として評価されますが、アパートを建てて貸すと土地は貸家建付地、建物は3割減で評価されます。現金で建てると、現金のままより評価額が大きく下がります。
ただし空室が続けば評価減は小さくなり、借入れの返済も残ります。2027年以降の相続では、亡くなる前5年以内に取得・新築した賃貸不動産は評価方法が変わる見直しも予定されています。

形がいびつな土地や、広い土地には評価を下げる補正があります。補正は申告する側が見つけて使わないと適用されません。生前に測量図や境界を整理しておくと、相続後の評価がスムーズです。
値上がりが見込める不動産は、相続時精算課税で生前に贈与すると、相続税は贈与したときの評価額で計算されます。ただし贈与した土地には小規模宅地等の特例が使えず、登記の費用も相続より高くなります。
| 項目 | 相続で受け取る | 相続時精算課税で贈与する |
|---|---|---|
| 相続税の計算に使う評価額 | 亡くなったときの評価額 | 贈与したときの評価額(固定) |
| 小規模宅地等の特例 | 使える | 使えない |
| 登録免許税(名義変更) | 固定資産税評価額の0.4% | 固定資産税評価額の2% |
| 不動産取得税 | かからない | かかる(土地・住宅は3%) |
表の見方:自宅の土地のように小規模宅地等の特例で8割減が使えるものは、相続で渡す方が有利なことが多くなります。値上がりが見込める賃貸物件などで検討します。
自宅の土地の8割減は、誰が相続するかで使えるかが決まります。配偶者か、同居していた親族、持ち家のない別居の親族が相続すると使えます。遺言で取得者を決めておくと、特例を確実に使えます。

親と同居していた場合に特例が使える条件は、下記の記事で解説しています。


不動産にかかる税金は相続税だけではありません。名義変更のときに登録免許税がかかり、持ち続ければ固定資産税が毎年発生します。まず全体像を押さえてください。
税金は場面ごとに整理すると分かりやすくなります。相続したとき、名義を変えるとき、持っているとき、売るときの4つに分けられます。
| 場面 | 税金 | 税率・金額 | 払う人 |
|---|---|---|---|
| 相続したとき | 相続税 | 10%〜55%(基礎控除超過分に対して) | 財産を取得した人 |
| 名義を変えるとき | 登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4% | 登記を受ける人 |
| 持っているとき | 固定資産税・都市計画税 | 評価額×1.4%+0.3%まで | 1月1日時点の所有者 |
| 売ったとき | 譲渡所得税・住民税 | 利益に対して20.315%または39.63% | 売った人 |
| 相続で取得したとき | 不動産取得税 | 0円(かからない) | — |
表の見方:薄赤の行が意外なところです。不動産を買ったり贈与を受けたりすると不動産取得税がかかりますが、相続では0円です。相続は本人の意思で取得したものではないという考え方によります。
重要ポイント:黄色の2つは相続税が0円でも発生します。登録免許税は名義変更をする限り必ずかかり、固定資産税は毎年続きます。
死後に動くお金には、税金の種類が異なるものが混在します。それぞれの扱いと全体像は、下記の記事で解説しています。

相続の年の固定資産税は誰が払うのか迷います。1月1日時点の所有者に、その年の1年分がまとめて課税されます。
| 亡くなった時期 | その年の固定資産税 | 翌年から |
|---|---|---|
| 1月2日以降に亡くなった | 亡くなった人に課税される | 相続した人に課税される |
| 1月1日に亡くなった | 相続した人に課税される | 同じ |
| 納付前に亡くなった場合 | 未払い分は債務控除で引ける | — |
表の見方:薄赤の行が実務で効きます。亡くなった時点で未納の固定資産税は、遺産から差し引けます。納税通知書を探して金額を確認してください。
重要ポイント:名義変更をしないと翌年以降も亡くなった人宛に納税通知書が届き続けます。口座が凍結されていると引き落とせず、気づかないうちに滞納になります。
注意:住宅が建っている土地は200㎡までの部分が評価額の6分の1に軽減されています。古い家を取り壊して更地にすると、この軽減が外れて負担が数倍になります。
同じ不動産をもらう場合でも、生前贈与と相続では税金の種類も金額も変わります。どちらが有利かの判断材料になります。
| 相続で取得 | 生前贈与で取得 | |
|---|---|---|
| かかる税金 | 相続税 | 贈与税 |
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×相続人の数 | 年110万円 |
| 不動産取得税 | 0円 | 評価額の3%(住宅・土地) |
| 登録免許税 | 評価額の0.4% | 評価額の2% |
| 小規模宅地等の特例 | 使える | 使えない |
表の見方:薄赤の2つで差が出ます。登録免許税は5倍、不動産取得税は贈与だけにかかります。不動産を渡すなら相続のほうが登記費用の面で有利です。
重要ポイント:黄色の行のとおり基礎控除の枠が桁違いです。不動産のような高額の財産を年110万円の枠で贈与するのは現実的ではありません。
注意:不動産を生前に渡すなら、登記費用と不動産取得税の分だけ贈与のほうが高くつきます。相続時精算課税など別の制度を使う判断が必要になります。

相続税が0円でも支出はあります。名義変更には登録免許税と司法書士報酬、書類の取得費用がかかります。いくら必要かを先に把握しておいてください。
相続登記をするときに必要なお金を一覧にしました。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%で計算します。
| 費用 | 金額の目安 | 必須か |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4% | 必ずかかる |
| 司法書士報酬 | 5万〜10万円(不動産1件あたり) | 自分で申請すれば不要 |
| 戸籍・除籍・住民票などの取得費 | 数千円〜2万円 | 必ずかかる |
| 登記事項証明書・固定資産評価証明書 | 1件あたり480〜600円 | 必要な分だけ |
| 不動産取得税 | 0円 | 相続ではかからない |
表の見方:黄色の登録免許税だけは避けられません。司法書士報酬は自分で登記すれば不要ですが、相続人が多い場合や遺産分割が複雑な場合は依頼したほうが確実です。
重要ポイント:薄赤のとおり不動産取得税は相続では0円です。売買や贈与では評価額の3%かかるため、混同して心配する必要はありません。
固定資産税評価額がわかれば自分で計算できます。毎年届く課税明細書に載っている「価格」の欄を使います。
| 固定資産税評価額(土地+建物) | 登録免許税(0.4%) | 司法書士報酬を含めた目安 |
|---|---|---|
| 1,000万円 | 4万円 | 9万〜14万円 |
| 2,000万円 | 8万円 | 13万〜18万円 |
| 3,000万円 | 12万円 | 17万〜22万円 |
| 5,000万円 | 20万円 | 25万〜30万円 |
表の見方:計算に使うのは相続税評価額ではなく固定資産税評価額です。相続税では路線価で計算しますが、登録免許税では課税明細書の数字を使います。
計算ロジック:登録免許税=固定資産税評価額×0.4%。土地と建物それぞれの評価額を合計してから計算します。評価額が100万円以下の土地は免税措置の対象になる場合があります。
注意:複数の不動産があれば司法書士報酬は物件ごとに加算されることがあります。見積りの段階で件数を伝えて確認してください。
2024年4月から不動産の名義変更が義務になりました。相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しないと過料の対象になります。
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重要ポイント:この義務は相続税がかかるかどうかとは無関係です。税金が0円の家庭にも同じように適用されます。
注意:分け方が決まらない場合は相続人申告登記という簡易な手続きで義務を果たせます。正式な登記は分割が決まってから行います。
参照元:e-Gov法令検索 不動産登記法(第76条の2・第164条)
相続登記は自分でも申請でき、司法書士に頼めば5万〜10万円かかりますが、確実さは上がります。
| 自分で申請 | 司法書士に依頼 | |
|---|---|---|
| 費用 | 登録免許税のみ | 登録免許税+報酬5万〜10万円 |
| 必要な作業 | 書類集め・申請書作成・法務局へ提出 | 書類を渡すだけ |
| 期間 | 2週間〜1か月(書類集めを含む) | 2週間〜1か月 |
| 向いているケース | 相続人が少なく、不動産が1件だけ | 相続人が多い・不動産が複数・遺産分割が複雑 |
| 失敗した場合 | 補正を求められ、何度も法務局へ行くことになる | — |
表の見方:黄色の行が判断の目安です。相続人が2〜3人で不動産が自宅だけなら、自分でも十分できます。相続人が多い場合や不動産が複数ある場合は依頼したほうが確実です。
重要ポイント:戸籍を出生から死亡まで揃えるのがもっとも時間のかかる作業です。転籍していると複数の市区町村に請求することになります。
不動産は現金化しないと納税に使えません。遺産の大半が不動産だと、納税資金が足りなくなることがあります。
| 手段 | 内容 | 要件 |
|---|---|---|
| 不動産を売却して納める | もっとも現実的な方法 | 申告期限の翌日から3年以内なら取得費加算が使える |
| 延納 | 最長20年の分割払い | 担保の提供が必要。利子税がかかる |
| 物納 | 不動産そのもので納める | 延納でも払えない場合に限る。要件が厳しい |
| 金融機関から借りる | 延納より低金利の場合がある | 審査が必要 |
表の見方:黄色の売却がもっとも使われる方法です。3年以内に売れば、納めた相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得を減らせます。
重要ポイント:売却するには先に相続登記が必要です。名義が亡くなった人のままでは売れないため、逆算して手続きを進めてください。
納税資金が足りない場合の選択肢と優先順位は、下記の記事で解説しています。

相続した不動産を売却する場合の税金と特例は、下記の記事で解説しています。


ひとくちに不動産と言っても、判定の難しさは大きく違います。自宅ならここまでの内容で足りますが、農地や貸地は別の知識が必要です。自分の不動産がどれかを確認してください。
種類によって評価の方法と使える制度が変わります。難易度も違うので、自己判断できる範囲を見極めてください。
| 不動産の種類 | 評価の特徴 | 使える主な制度 | 判定の難易度 |
|---|---|---|---|
| 自宅の土地と建物 | 路線価×面積+固定資産税評価額 | 330㎡まで80%減 | やさしい |
| 分譲マンション | 敷地の持分+建物。2024年の新ルールに注意 | 330㎡まで80%減 | ふつう |
| 空き地・更地 | 減額の要素がなく評価が高くなりやすい | 基礎控除のみ | やさしい |
| アパート・駐車場の敷地 | 貸家建付地として評価が下がる | 200㎡まで50%減 | ふつう |
| 農地 | 区分で評価が大きく変わる | 納税猶予・農地評価 | 難しい |
| 人に貸している土地(底地) | 借地権の割合を引く | 200㎡まで50%減 | 難しい |
| 借りている土地(借地権) | 路線価×借地権割合 | 自宅なら80%減 | 難しい |
| 共有している不動産 | 全体を評価してから持分を掛ける | 持分に応じて適用 | ふつう |
表の見方:黄色の自宅がもっとも判定しやすいケースです。薄赤の3つは評価の段階で専門的な判断が必要になるため、自己判断で結論を出さないでください。
重要ポイント:空き地や更地は減額の要素がなく8割減も使えないことが多いです。同じ面積でも自宅より評価が高くなり、課税されやすくなります。
土地は面積と路線価がわかれば、無税に収まるかを自分で判定できます。相続人2人なら遺産の合計4,200万円まで、8割減が使えれば2億1,000万円までが目安になります。
土地は評価額に占める割合が大きいため、8割減が使えるかどうかで結論が大きく変わります。誰が相続するかを決める前に、要件を満たす人がいるかを確認してください。
面積と路線価から無税ラインを判定する手順は、下記の記事で解説しています。

建物の比率が高い場合は判定の考え方が変わります。建物には8割減が効かないため、土地ほど 評価額が下がりません。
マンションでは敷地の持分が100㎡前後にとどまるため、小規模宅地の330㎡という上限を気にする必要がほぼありません。一方で8割減の効果は戸建ての半分程度です。
家(建物)を中心に相続した場合の判定は、下記の記事で解説しています。

誰も住まない不動産は負担が続きます。相続税が0円でも、固定資産税と管理の手間は毎年発生します。
| 状況 | 相続税の評価 | 固定資産税 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 空き家(建物あり) | 自用地として評価。8割減は使えない場合が多い | 住宅用地の軽減あり | 管理不全と判定されると軽減が外れる |
| 更地(建物なし) | 減額の要素がない | 軽減なし | 相続税も固定資産税も不利 |
表の見方:薄赤の更地は両方で不利です。取り壊すと固定資産税の軽減が外れ、負担が数倍になることがあります。壊すかどうかは税額を確かめてから判断してください。
重要ポイント:空き家を売る場合は最大3,000万円の特別控除が使えることがあります。要件が細かいので、売却を考えるなら早めに確認してください。
空き家を相続した場合の特例と売却時の税金は、下記の記事で解説しています。

この3つは評価の段階でつまずきます。自宅と同じ方法では計算できません。
農地は市街化区域かどうかで評価が大きく変わり、農業を継ぐなら納税を先送りできる制度があります。ただし営農をやめると猶予されていた税金をまとめて払うことになります。

人に貸している土地や借りている土地は、権利が分かれているぶん評価額が下がります。路線価図のアルファベットが借地権の割合を示しています。

注意:借地権を相続していることに気づかず申告から漏らす失敗が多いです。建物の名義が亡くなった人なら、土地の権利も相続している可能性があります。

不動産の相続では期限が複数あります。相続税の10か月と、名義変更の3年が中心です。順番に確認してください。
相続後に動くべき時期は決まっていて、相続税が0円だった家庭でも、名義変更と固定資産税は必ず発生します。
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重要ポイント:準確定申告の4か月は相続税の10か月より先に来ます。亡くなった人が賃貸不動産を持っていた場合は特に注意してください。
注意:放置して次の世代に引き継がれると、相続人が増えて全員の同意が必要になり、名義変更が難しくなります。3年の期限はこの問題を防ぐために設けられました。
不動産は現金のように分けられません。期限までに分け方が決まらなくても、申告期限は延びません。
| 状況 | 申告のしかた | 必要な書類 |
|---|---|---|
| 分け方が決まっている | その内容で申告する | 遺産分割協議書 |
| 分け方が決まっていない | いったん法定相続分で申告する | 申告期限後3年以内の分割見込書 |
| 遺言がある | 遺言の内容で申告する | 遺言書の写し |
表の見方:薄赤の行では8割減も配偶者の軽減も使えません。ただし分割見込書を出しておけば、後で決まったときにやり直せます。
重要ポイント:この書類を出し忘れると後から分割が決まっても制度を使えません。もめている場合ほど、この1枚の有無が税額を左右します。
分け方が決まらないまま申告する方法は、下記の記事で解説しています。

不動産の相続では書類が多くなります。相続税の申告と名義変更で共通して使えるものが多いので、まとめて集めると効率的です。
| 書類 | 取得先 | 費用 | 使う手続き |
|---|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局 | 480〜600円 | 相続税申告・名義変更 |
| 固定資産評価証明書 | 市区町村 | 300〜400円 | 相続税申告・名義変更 |
| 公図・地積測量図 | 法務局 | 450円 | 土地の形状の確認 |
| 名寄帳 | 市区町村 | 200〜400円 | 所有する不動産の洗い出し |
| 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) | 市区町村 | 数千円 | 相続人の確定 |
| 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書 | 市区町村 | 1通300〜450円 | 遺産分割協議書に添付 |
| 遺産分割協議書 | 自分で作成 | 0円 | 相続税申告・名義変更 |
表の見方:黄色の2つは相続税の申告と名義変更の両方で必要です。複数枚取っておくと、後で取り直す手間が省けます。
重要ポイント:戸籍は出生から死亡までの連続したものが必要です。転籍している場合は複数の市区町村から取ることになり、時間がかかります。
申告に必要な書類の全体像は、下記の記事で解説しています。

アパートや貸家を相続すると、相続税とは別に所得税の手続きが続きます。青色申告を続けたい場合は、承認申請の期限が相続開始の時期で変わるので注意してください。
| 手続き | 期限 | ポイント |
|---|---|---|
| 亡くなった人の準確定申告 | 相続開始を知った日の翌日から4か月以内 | 亡くなった年の1月1日から死亡日までの家賃収入を申告 |
| 分け方が決まるまでの家賃の申告 | 翌年3月15日(確定申告) | 分け方が決まるまでの家賃は、相続人が法定相続分で受け取ったものとして各自が申告 |
| 青色申告の承認申請(亡くなった人が青色申告だった場合) | 死亡日が1〜8月なら4か月以内、9〜10月ならその年の12月31日、11〜12月なら翌年2月15日 | 期限を過ぎると、その年は白色申告になる |
| 入居者への連絡・敷金の引き継ぎ | 速やかに | 家賃の振込先の変更と、敷金を返す義務も引き継ぐ |
重要ポイント:亡くなった人が白色申告だった場合や、新しく貸し始めた場合の青色申告の承認申請は、貸付けを始めた日から2か月以内です。
分けにくいからと共有にするのは避けたほうが安全です。売却や賃貸に共有者全員の同意が必要になります。
| やりたいこと | 共有の場合 | 単独名義の場合 |
|---|---|---|
| 売却する | 共有者全員の同意が必要 | 1人で決められる |
| 賃貸に出す | 持分の過半数の同意が必要 | 1人で決められる |
| 共有者が亡くなった | その持分がさらに分かれて人数が増える | 影響なし |
表の見方:薄赤のとおり、共有者が亡くなるたびに関係者が増えて収拾がつかなくなります。
重要ポイント:分けにくい場合は1人が取得して他の相続人に金銭を渡す方法があります。共有にする前にこの選択肢を検討してください。
共有名義の不動産の評価と、共有を解消する方法は下記の記事で解説しています。


自分で計算するときにつまずく箇所があります。どれも結果が大きくずれる原因なので、確認しておいてください。
使う数字を取り違えるのが最も多い失敗です。売買価格でも課税標準額でもなく、相続税の評価額で判定します。
事例1:5,000万円で買った自宅を見て「基礎控除4,200万円を超えるから課税される」と考えた。実際の評価額は土地2,800万円+建物1,200万円で4,000万円、預貯金を足しても基礎控除以下だった。
対策:土地は路線価×面積、建物は課税明細書の「価格」で概算を出す。売買価格や建築費で判断しない。
事例2:課税明細書の「課税標準額」を建物の評価額として使い、実際より低く見積もっていた。住宅用地の軽減が入った数字だった。
対策:明細書では「価格」の欄を見る。「課税標準額」は固定資産税を計算するための数字で、相続税では使わない。
重要ポイント:基礎控除の人数は相続を放棄した人も含めて数えます。放棄した人を除くと基礎控除が600万円少なくなり、判定を誤ります。
相続税がかからないと判断していても、税務署から書類が届くことがあります。不動産を持っていた人が亡くなると、税務署は登記情報から把握しています。
| 届く書類 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
| 相続税の申告等についてのご案内 | 申告が必要な可能性が高いと見ている | 申告要否を確認して回答する |
| 相続税についてのお知らせ | 申告が必要かもしれないという案内 | 判定して必要なら申告する |
| 無視した場合 | 税務調査に移行することがある | 加算税・延滞税の対象になる |
表の見方:どちらも届いた時点で税務署は財産をある程度把握しています。不動産は登記で把握されるため、隠すことはできません。
重要ポイント:本当に基礎控除以下なら、同封の申告要否検討表に記入して返送すれば済みます。申告書を出す必要はありません。
届いた書類の意味と回答書の書き方は、下記の記事で解説しています。

制度は条件を満たしていても、手続きをしなければ使えません。0円になったから何もしなくてよい、という判断が最も危険です。
事例3:8割減を使えば0円になると計算し、申告書を出さなかった。後の税務調査で8割減が認められず、本来の評価額で課税された。
対策:制度を使って0円にした場合は必ず申告書を提出する。まず制度を使わない状態で判定し、それで収まるなら申告は不要。
事例4:持ち家のある子が実家を相続した。8割減が使えると思い込んでいたが要件を満たさず、評価額がそのまま課税価格になった。
対策:誰が相続すれば8割減を使えるかを、分け方を決める前に確認する。同じ不動産でも取得者によって税額が変わる。
重要ポイント:相続税がかからない判定と、手続きが不要という判断は別です。判定が「かからない」でも、名義変更の3年の期限は必ず来ます。
申告を済ませてから誤りに気づくことがあります。多く納めていた場合は5年以内、足りなかった場合は自分から修正申告します。
| 気づいた内容 | 手続き | 期限 | ペナルティ |
|---|---|---|---|
| 減額を使い忘れて多く納めていた | 更正の請求 | 申告期限から5年以内 | 還付される |
| 不動産を申告から漏らしていた | 修正申告 | 定めなし | 調査の通知前なら過少申告加算税はかからない |
| 放置して指摘を受けた | 更正を受ける | — | 過少申告加算税10〜15%+延滞税 |
表の見方:黄色の行は税務署から連絡が来ることはありません。自分で気づいて請求しない限り、納めすぎたままになります。
重要ポイント:不動産の評価は後から見直すと減額の余地が見つかることが多いです。路線価×面積だけで申告していたなら、確認する価値があります。
修正申告と更正の請求のどちらを選ぶか、期限と手続きは下記の記事で解説しています。


不動産の評価は、同じ物件でも人によって金額が変わります。評価額が変われば「かかる・かからない」の結論そのものが変わります。境界に近い場合ほど、判定を任せる相手で結果が違います。
不動産の相続税は財産の洗い出しと評価の2段階で差がつきます。税理士なら誰でも同じ結論になるわけではありません。
【相続税の対応実績がある税理士に依頼する理由】
具体例で見てみます。同じ土地でA税理士は路線価×面積の3,600万円で評価し、B税理士は形が悪いことによる減額を反映して3,000万円と評価しました。
預貯金1,000万円と建物800万円を合わせると、A税理士では5,400万円で課税、B税理士では4,800万円になります。相続人3人なら基礎控除4,800万円なので、B税理士では申告すら不要という結論の差です。
不動産の案件では、税理士の経験差が評価額に直結します。次の3つを比べれば実務力が見えます。
判定ポイント1:現地を見るかどうか|図面だけで評価する事務所と、現地で高低差や道路の状況を確認する事務所があります。→ 現地を見る事務所のほうが、減額の要素を拾えると判定できます。
判定ポイント2:分け方の提案があるか|評価額を出すだけの見積りか、「誰が相続すれば8割減を使えるか」まで提案する見積りか。→ 後者のほうが、不動産の案件を数多く処理していると判定できます。
判定ポイント3:登記や売却まで見通しているか|相続税だけで終わるか、名義変更や将来の売却まで踏み込むかを見ます。→ 後者のほうが、相続後の負担まで含めて設計できると判定できます。
見積りを取るだけなら費用はかかりません。3〜5の事務所に同時に打診して、評価額と提案内容を横に並べて比べてください。
不動産の判定を自分だけで済ませると、気づかないまま損をしているか、後から請求されるかのどちらかになります。
【相談しないまま進めた場合に起きること】
どれも分け方を決める前に相談していれば避けられるものです。分け方が確定してからでは戻せない判断があるため、早い段階で確認してください。
見積りを集めて比べる流れは4段階です。フォームの記入は5分程度で終わります。
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重要ポイント:不動産がある相続では相続開始から7か月以内に依頼先を決めてください。評価には現地確認や役所での調査が必要で、時間がかかります。
土地だけを切り出して相続税を計算することはできません。相続税は預貯金や保険金も含めた遺産の総額に対してかかるためです。
まず不動産の評価額を出し、他の財産と合計して基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)と比べてください。超えていなければ相続税は0円です。
土地は国税庁のサイトで路線価を調べ、登記事項証明書の面積を掛けます。建物は毎年届く固定資産税の課税明細書の「価格」をそのまま使います。
注意点は2つあります。路線価は千円単位で表示されること、そして課税明細書では「課税標準額」ではなく「価格」を見ることです。
名義変更が必要です。2024年4月から義務化され、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。
また制度を使って相続税を0円にした場合は申告が必要です。8割減や配偶者の税額軽減は、申告書を出さないと適用されません。
かかりません。不動産取得税は売買や贈与で取得した場合の税金で、相続では課税されません。本人の意思で取得したものではないという考え方によります。
ただし名義変更のときに登録免許税がかかります。固定資産税評価額の0.4%で、評価額2,000万円なら8万円です。
売って利益が出れば譲渡所得税と住民税がかかります。所有期間が5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%です。亡くなった人の所有期間を引き継げるため、多くの場合は5年超になります。
相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却すれば、納めた相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得を減らせます。
不動産の相続税は、不動産だけを見ていても答えが出ません。遺産全体で判定し、使える制度を確認するという順番が大切です。
もっとも多い失敗は、売買価格を見て「うちは課税される」と思い込むことです。実際の評価額は7割程度で、多くの家庭は基礎控除に収まります。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年10月時点の法令に基づいて作成しています。相続税法・不動産登記法の改正により内容が変わる場合があります。最新の制度については国税庁のウェブサイトまたは税理士にご確認ください。