


相続税の土地評価額は、市街地なら「路線価×補正率×面積」、それ以外の地域なら「固定資産税評価額×評価倍率」で計算します。
売買の相場(時価)ではなく、国税庁が定めた基準で評価するのが相続税のルールです。
土地は相続財産の中で最も大きな割合を占めることが多く、評価額の計算が相続税額をほぼ左右します。
そして土地の評価には、形や間口・利用状況に応じた「減額補正」が数多く用意されています。
補正を正しく使えば評価額は大きく下がる一方、知らなければ払いすぎたまま誰も教えてくれません。
逆に評価を誤って低くしすぎると、税務調査で追徴の対象になります。正確な手順の理解が欠かせません。
本記事では、必要書類の準備から、路線価方式・倍率方式の計算手順、減額補正のチェックリストまでを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

最初に全体像です。土地の評価は「基本の計算→減額補正→利用状況の調整」という3層構造で決まります。この骨組みを押さえれば、細かいルールも迷子になりません。
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この後に小規模宅地等の特例(最大80%減)が控えますが、それは「評価額を出した後」の話。まず本記事で正確な評価額を出せるようになりましょう。
順番も大切です。特例の80%減は、補正で下げた後の評価額に掛かります。先に補正で下げるほど、特例の効果も含めた最終的な評価額はさらに低くなります。
土地や建物を含む不動産全体の相続税の計算は、下記の記事で解説しています。

相続財産のうち、土地は例年3〜4割を占める最大の資産です。預貯金は残高がそのまま評価額になるため、誰が計算しても同じです。
一方、土地の評価には補正の適用判断という「腕の差」が出ます。同じ土地でも、評価する人によって数百万円の差がつくことは珍しくありません。
相続税の節税は、怪しいテクニックではなく「土地を正しく評価すること」から始まります。この記事の目的もそこにあります。
土地の評価額が1,000万円変われば、税率15%の帯で150万円、30%の帯なら300万円の税額差です。時間をかける価値は十分にあります。
土地を相続しても相続税がかからない条件と、いくらまで無税かは、下記の記事で解説しています。

相続税の土地評価は、実際に売れる値段(時価)より低く設定されています。路線価は公示価格の約8割の水準です。時価5,000万円の土地なら、評価額は4,000万円前後になるイメージです。
納税者に不利にならないよう、あえて低めに設定されているのがこの8割水準の趣旨です。地価が急に動いても評価が過大にならないための、いわば安全マージンです。
だからこそ「不動産会社の査定額」で申告すると、確実に払いすぎになります。相続税には相続税専用の物差しがある、とまず覚えてください。
逆に、地方の売りにくい土地などで「時価が路線価評価を下回る」場合は、不動産鑑定士の鑑定評価で申告できる余地もあります。原則は路線価、例外は時価という関係です。
ただし鑑定評価での申告は、税務署に否認されるリスクもあり、鑑定費用もかかります。使いどころが限られる上級テクニックのため、実行は必ず専門家と相談してください。
土地の評価は、形の整った土地なら自分で概算でき、クセのある土地ほど専門家に任せたほうが得になります。まず自分の土地がどちらかを確認してください。
| 土地の状態 | 自分で計算 | 理由 |
|---|---|---|
| 倍率方式の地域の土地 | しやすい | 固定資産税評価額×倍率の掛け算1回で済む |
| 正方形・長方形で1つの道路に面する土地 | しやすい | 路線価×面積に奥行の補正を掛けるだけ |
| 不整形地・旗竿地・間口が狭い土地 | 任せたほうがよい | 補正の組み合わせで評価が2〜4割変わる |
| 広い土地(三大都市圏500㎡以上など) | 任せたほうがよい | 地積規模の大きな宅地の要件判定が要る |
| 崖・高低差・無道路地・農地・山林 | 任せたほうがよい | 補正や評価方式の判断に専門性が要る |
| 賃貸物件の敷地・貸している土地 | 任せたほうがよい | 賃貸割合や借地権の扱いで評価が変わる |
表の見方:上の2行に当てはまれば、この記事の手順で概算できます。下の4行に1つでも当てはまるなら、概算までは自分で出し、精密な評価は税理士に任せるのが合理的です。
2つの道路に面する角地など加算がある土地を除けば、「路線価×面積」の概算は評価額の上限の目安になります。補正を使えば下がるだけなので、概算の段階で遺産全体が基礎控除を大きく下回るなら、精密な評価に進む前に申告不要の見当がつきます。
重要ポイント:「申告全体は自分で、土地の評価だけ税理士に依頼する」という部分依頼を受ける事務所もあります。初回相談が無料の事務所に概算を持ち込めば、補正で下がりそうかの当たりはその場でつきます。

土地には「1物5価」と呼ばれるほど複数の価格があります。相続税の計算に使ってよい数字はどれかを、最初に確定させましょう。同じ土地に5つの値札がついているようなもので、使う場面がそれぞれ違います。相続税に使う値札は1つだけです。
| 価格の種類 | 決める機関 | 水準の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 実勢価格(時価) | 市場(売買の実績) | 100%超も | 実際の売買 |
| 公示価格 | 国土交通省 | 100% | 各価格の基準 |
| 基準地価 | 都道府県 | 100% | 公示価格の補完 |
| 相続税評価額(路線価) | 国税庁 | 約80% | 相続税・贈与税の計算 |
| 固定資産税評価額 | 市区町村 | 約70% | 固定資産税・倍率方式の土台 |
表の見方:相続税の計算に使うのは黄色の行=路線価ベースの相続税評価額です。実勢価格で申告すれば2割前後の払いすぎ、固定資産税評価額のままなら1割前後の過少申告になり得ます。
実務で起きやすい取り違えは、次の2つです。
パターン1は損をし、パターン2は追徴を招く。方向は逆でも、原因は同じ「物差しの取り違え」です。「どの物差しの数字か」を確かめてから計算を始める。これだけで大きな失敗の半分は防げます。
路線価は毎年1月1日時点の価格が7月上旬に公表され、地価の動きに合わせて毎年変わります。近年は都市部を中心に上昇傾向が続いており、数年前の記憶の評価額より高くなっている土地が増えています。
計算に使うのは、相続が開始した年(亡くなった年)の路線価です。申告する年でも、古い年のものでもありません。1〜6月に亡くなった場合は、7月の公表を待ってから評価します。申告期限は10ヶ月あるため、公表待ちで期限に困ることは通常ありません。
路線価図を見る前に、手元の課税明細書だけで評価額の当たりをつける方法もあります。固定資産税評価額÷0.7×0.8=相続税評価額のおおよその目安です。【前提】課税明細書の土地の価格が2,100万円のシナリオです。
2,100万円÷0.7×0.8=2,400万円。路線価ベースの評価額は、おおむねこの水準と推定できます。相続税の申告要否を大まかに見当づけるには十分な精度です。
計算ロジック:固定資産税評価額は公示価格の約70%・相続税評価額は約80%という水準差を利用した逆算です(2026年時点)。あくまで初動の目安で、申告にはこの数字は使えません。必ず路線価で計算し直してください。

計算に入る前の準備です。書類が揃えば、自分の土地がどちらの方式かは5分で判定できます。書類集めは評価だけでなく、そのまま相続税申告の添付資料にもなります。二度手間にならないよう、最初から原本またはきれいなコピーで揃えましょう。
重要ポイント:概算だけなら課税明細書と路線価図の2つで足ります。減額補正まで検討するなら、土地の形が分かる公図・測量図が必須になります。
賃貸物件がある場合は、賃貸借契約書とレントロール(入居状況の一覧)も追加で用意してください。
| 書類 | 取得場所 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 固定資産税の課税明細書 | 手元の納税通知書(紛失時は市区町村で評価証明書を取得) | 無料(証明書は300円前後) |
| 登記事項証明書 | 法務局(オンライン請求可) | 1通480〜600円 |
| 公図・地積測量図 | 法務局 | 1通360〜450円 |
| 路線価図・評価倍率表 | 国税庁サイト(財産評価基準書) | 無料 |
表の見方:すべて数百円以内・半日で揃う書類です。地積測量図は古い土地では法務局にないこともあります。その場合は公図と現地の実測で形を把握します。
路線価地域なのに、行き止まりの私道などには路線価が付いていないことがあります。この場合、税務署に「特定路線価設定申出書」を出し、その道路だけの路線価を設定してもらう方法があります。
特定路線価を使うか、旗竿地のような形で評価するかは、有利不利の判断が分かれる専門論点です。該当する土地は自己判断せず、税理士に評価方法の選択から相談してください。
特定路線価の設定は、申請から回答まで1ヶ月ほどかかります。該当する土地がありそうなら、申告期限から逆算して早めに動きましょう。
どちらの方式で計算するかは、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で判定します。
【判定の手順】
路線価図から自宅の場所を探しにくいときは、一般財団法人の「全国地価マップ」も便利です。住所検索で路線価を地図上に表示できます(最終確認は国税庁サイトで)。
倍率表を開いたら、宅地・田・畑など地目ごとに倍率が違う点に注意してください。同じ地番でも、複数の地目にまたがる土地は地目ごとに計算します。おおまかには、市街地=路線価方式・郊外や農村部=倍率方式です。
使う路線価は「相続が開始した年」のものです。路線価は毎年7月に公表されるため、1〜6月の相続では公表を待ってから計算します。

市街地の土地の計算方法です。路線価図の読み方さえ分かれば、基本の計算は掛け算1つです。手順どおりに進めましょう。
路線価図では、道路ごとに「200D」のような表示が付いています。
「200D」なら、路線価20万円/㎡・借地権割合60%の普通住宅地区(囲みなしの場合)という意味です。自用地の計算では数字だけ使い、アルファベットは貸し借りの計算で登場します。
路線価図は道路ごとに数字が振られています。角地では複数の道路に数字が付いているため、どの道路を正面にするかで計算が変わります。自分の土地が接している道路の数字を1,000倍する。これが1㎡あたりの評価の出発点です。
地区区分(数字を囲む図形)は、普通住宅地区・普通商業地区などの分類で、補正率表のどの列を使うかを決めます。囲みがなければ普通住宅地区です。同じ奥行でも、地区区分が違えば補正率も変わります。補正を使う段階では、この記号の確認を忘れないでください。
路線価図の詳しい見方・調べ方は、下記の記事で解説しています。

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【前提】路線価20万円(200D)・面積150㎡・補正なしのシナリオです。評価額は20万円×150㎡=3,000万円。持分2分の1で相続したなら、その半分の1,500万円が自分の評価額になります。
分譲マンションの場合は、敷地全体の評価額に登記されている敷地権の割合を掛け、さらに2024年からの区分所有補正率を適用します。一戸建てとは計算の枠組みが異なるため、専門記事で確認してください。
計算ロジック:基本式は「路線価×補正率×地積×持分」です(2026年時点)。補正率を仮に1.0とすれば概算が出ます。実際は奥行価格補正率が必ず絡むため、精密な評価額は概算よりわずかに下がるのが通常です。
角地など複数の道路に接する土地は、利便性が高い分だけ評価が上がります。
正面になるのは「路線価×奥行補正率」が高い方の道路です。単純に路線価の高い方ではない点に注意してください。
敷地とあわせて私道を持っている場合、私道部分は別の評価になります。
私道を宅地と一緒に満額で評価してしまうのは、よくある払いすぎパターンです。公図で自分の土地に私道部分(別の地番になっていることが多い)が含まれていないか、必ず確認してください。
近隣の複数世帯で共有する「共有私道」の持分も、同じ考え方で減額します。持分割合を掛けて評価するため、忘れずに計上しつつ大幅減額を活かしましょう。加算といっても数%の上乗せです。概算段階では「角地は少し高くなる」と押さえておけば十分です。
【前提】正面の路線価25万円・側方の路線価15万円・面積120㎡・角地(加算率0.03)・奥行補正なしのシナリオです。1㎡あたりは25万円+15万円×0.03=25万4,500円。評価額は25万4,500円×120㎡=3,054万円になります。
計算ロジック:側方の路線価はそのまま足すのではなく、加算率(この例では3%)を掛けた分だけ上乗せします(2026年時点)。正面だけの計算(3,000万円)との差は54万円と、影響は限定的です。

路線価が付いていない地域の計算方法です。倍率方式は路線価方式よりシンプルで、掛け算1回で評価額が出ます。
計算式は「固定資産税評価額×評価倍率」です。【前提】固定資産税評価額1,200万円・評価倍率1.1のシナリオです。評価額は1,200万円×1.1=1,320万円。これで完成です。
計算そのものは1分で終わります。倍率方式の土地しかない相続なら、評価は自力でも十分対応できる領域です。
固定資産税評価額は3年に1度の評価替えで見直されます。倍率は「7割水準の固定資産税評価額を8割水準の相続税評価額に引き上げる」ための調整と考えると、1.1前後の意味が腑に落ちます。
重要ポイント:使うのは「固定資産税の税額」ではなく「固定資産税評価額」です。課税明細書の見る欄を間違えると桁から違ってきます。
倍率方式には、路線価方式のような補正計算がありません。土地の形や間口の影響は、土台の固定資産税評価額にすでに織り込まれているためです。
不整形地だからと自分で補正を重ねると、二重減額の誤りになります。倍率方式は「掛け算1回で終わり」が原則と覚えてください。ただし、賃貸に出している場合の貸家建付地などの調整は、倍率方式でも行います。
もう1つの注意は地目です。倍率は宅地・田・畑・山林など地目ごとに違い、判定は登記上の地目ではなく相続時点の現況で行います。登記は「畑」でも現況が宅地なら宅地の倍率です。現況と登記がずれている土地は、どの倍率を使うかから確認してください。
市街地にある農地などは、評価倍率表に「比準」「市比準」「周比準」と書かれていることがあります。この場合は「宅地とみなした価額から造成費を引く」宅地比準方式で評価します。
市街地の農地は宅地並みに評価されるため、「畑だから安い」という思い込みは通用しません。造成費の単価は都道府県ごとに定められており、計算はやや専門的です。該当する土地がある方は、概算段階から専門家に相談するのが安全です。
純粋な農村部の田畑や山林は、倍率方式で評価します。山林は倍率が数倍〜数十倍と大きいこともありますが、もとの固定資産税評価額が小さいため、評価額自体は低額にとどまるのが通常です。
なお、農業を続ける相続人には農地の納税猶予という別の制度もあります。農地が主な財産の方は、評価と猶予をセットで検討してください。

ここからが土地評価の核心です。「使いにくい土地は安く評価する」のがルールの思想。自分の土地の使いにくさを探すことが、そのまま節税になります。
普段は欠点に見える土地の個性が、相続税の場面では味方になります。先入観を捨てて、土地のアラ探しをしてみましょう。
1つでも当てはまれば、評価額を下げられる可能性があります。該当項目の補正を次の一覧で確認してください。実際の土地は「間口が狭くて奥に長い旗竿地」のように、複数の項目に同時該当することがよくあります。該当が重なるほど、精密評価の価値は上がります。
| 補正の種類 | 対象になる土地 | 減額幅の目安 |
|---|---|---|
| 奥行価格補正 | 奥行が標準より短い・長い | 〜20% |
| 間口狭小補正 | 間口が狭い | 〜10% |
| 奥行長大補正 | 奥行が間口の2倍以上 | 〜10% |
| 不整形地補正 | 形がいびつな土地・旗竿地 | 最大40% |
| がけ地補正 | 崖や急斜面を含む | 〜47% |
| 規模格差補正 | 広い土地(500㎡/1,000㎡以上) | 2〜3割前後 |
| 特別警戒区域補正 | 土砂災害特別警戒区域 | 〜30% |
| セットバック | 後退が必要な部分 | 該当部分70%減 |
| 都市計画道路予定地 | 予定地にかかる宅地(役所の都市計画課で確認可能) | 数%〜 |
| 利用価値の低下 | 騒音・高低差・日照阻害など | 該当部分10%減 |
表の見方:影響が大きいのは黄色の不整形地補正(最大40%)です。複数の補正は原則併用できますが、間口狭小×奥行長大と不整形地補正は「小さい方を採用」など細かいルールがあります。
よく使う4つの補正は次のとおりです。どの補正率も国税庁の補正率表で公開されていて、当てはめ自体は機械的です。難しいのは「どれが使えるか」の判断です。
| 補正 | 対象になる土地 | 下がり方の目安 |
|---|---|---|
| 奥行価格補正 | 奥行が標準より短い・長い土地(ほぼすべての土地で最初に確認) | 奥行距離と地区区分で補正率表から決まる |
| 間口狭小・奥行長大補正 | 道路に接する幅が狭い土地、奥行が間口の2倍以上ある土地 | 都市部の狭小地は両方が同時に当てはまることが多い |
| がけ地補正 | 斜度30度以上が目安の崖を含む土地 | 崖の割合と向きで決まり、北向きのほうが大きく下がる |
| 規模格差補正(地積規模の大きな宅地) | 三大都市圏で500㎡以上、それ以外で1,000㎡以上の宅地 | 2〜3割下がることがある |
重要ポイント:実家の敷地が広い、庭や家庭菜園と一体になっている土地は、面積の要件に届いていることがあります。面積は課税明細書で必ず確認してください。
規模格差補正率の計算と要件は、下記の記事で解説しています。

形以外の減額は書類に現れにくく、見落とされがちです。「現地を見る税理士かどうか」で評価額が変わる理由がここにあります。
| 減額の種類 | 対象 | 減り方 |
|---|---|---|
| セットバック | 前面道路が4m未満で、建替え時に道路に提供する部分 | その部分を70%減(10㎡×1㎡20万円なら140万円減) |
| 利用価値の著しい低下 | 線路沿いの騒音・道路との著しい高低差・墓地の隣接など | 該当部分を10%減(路線価に織り込み済みなら使えない) |
| 無道路地 | 道路に2m以上接していない土地 | 通路を開く費用相当額を引く(最大40%) |
表の見方:どれも登記簿や課税明細書だけでは分かりません。現地の状況と、路線価の付き方を見比べて判断します。
現地では、前面道路の幅、隣地との高低差、線路や幹線道路までの距離、墓地や高圧線が近くにあるかを確認します。道路幅の実測値と写真を残しておくと、税理士に依頼するときも評価の根拠として使えます。
無道路地の「最大40%」は通路の分の控除の上限で、形の補正と合わせると評価額は半分以下になることもあります。計算例は下記の記事で解説しています。

最大40%と効果の大きい不整形地補正だけ、仕組みを押さえておきましょう。いびつな土地を長方形で囲み(想定整形地)、はみ出す部分の割合を計算します。
【前提】想定整形地200㎡・実際の土地150㎡のシナリオです。かげ地割合は(200−150)÷200=25%。普通住宅地区の小さめの土地なら、補正率0.92(8%減)程度が適用されるイメージです。
三角地や旗竿地では、かげ地割合が大きくなりやすく、減額幅も大きくなります。不整形地には4つの評価方法があり、最も低くなる方法を選べます。ここは専門性が高いため、該当したら税理士案件と考えてください。
不整形地補正は、地区区分と地積区分(A・B・C)、かげ地割合の3つを組み合わせて補正率表から求めます。かげ地割合が同じでも、面積が小さい土地ほど補正率が大きくなる傾向があります。
4つの方法とは、①複数の整形地に分けて評価する、②面積÷間口で計算上の奥行を出す、③近い形の整形地とみなす、④大きな整形地から不要部分を引く(旗竿地向き)、です。
どの方法を選ぶかで評価額が変わり、納税者は有利な方を選択できます。選択肢を知らずに1つの方法だけで計算すると、損をしたまま気づけません。
旗竿地・三角地・台形・L字の土地が実際にどれだけ下がるかは、下記の記事で計算例と早見表にまとめています。

面積の大きな土地(三大都市圏500㎡以上・その他1,000㎡以上)は「地積規模の大きな宅地の評価」で2〜3割下がる可能性があります。この制度は、かつての「広大地評価」が2018年に改組されたものです。中低層マンションの敷地にも適用余地があります。
適用には地区区分や容積率などの要件があります。面積だけで即断せず、要件を1つずつ照合してください。効果が大きいだけに、適用可否の判断は慎重さが求められます。
また、分譲マンションの評価は2024年から新ルール(区分所有補正率・市場価格の6割水準)に変わりました。土地の評価減はここで挙げた以外にも多くの切り口があります。全体像は下記の記事で確認してください。


形状の次は「使われ方」です。人に貸している土地は自由に使えない分、評価額が下がります。2027年からの新ルールもここで確認します。
貸している土地は、借主の権利(借地権・借家権)に守られ、売却も建替えも自由にできません。その不自由さの分を評価から差し引くのが、この章の調整です。
| 利用区分 | 内容 | 計算式 |
|---|---|---|
| 自用地 | 自分で使っている土地 | 減額なし(ここまでの評価額のまま) |
| 貸宅地 | 土地を貸し、借主が建物を建てている | 自用地評価額×(1−借地権割合) |
| 貸家建付地 | 自分の土地に賃貸アパートなどを建てている | 自用地評価額×(1−借地権割合×30%×賃貸割合) |
| 借地権 | 土地を借りて建物を持っている | 自用地評価額×借地権割合 |
表の見方:借地権割合は路線価図のアルファベット(A=90%〜G=30%)、借家権割合は全国一律30%です。住宅地で多いD(60%)の貸宅地なら評価は6割減、満室の貸家建付地なら約18%減になります。
どの区分に当たるか迷ったら、「建物は誰のものか」「地代・家賃はあるか」の2点で整理してください。建物が借主のものなら貸宅地、自分の建物を貸していれば貸家建付地です。
【前提】自用地評価額3,000万円・借地権割合60%(D)・全室賃貸中(賃貸割合100%)のシナリオです。3,000万円×(1−60%×30%×100%)=3,000万円×0.82=2,460万円。
空室が2割あると賃貸割合80%となり、減額は18%→14.4%に縮みます。一時的な空室(募集中など)は賃貸中として扱える場合があるため、相続時の入居状況は記録を残しておきましょう。
計算ロジック:60%×30%=18%が「借家人に使われている割合」とみなされ、その分が評価から引かれます(2026年時点)。空室があると賃貸割合が下がり、減額幅は縮みます。相続時点の入居状況が評価を左右するのです。
なお、使用貸借(子にタダで貸しているなど)は賃貸扱いになりません。地代のやりとりがない土地は自用地として評価します。
貸家と貸家建付地の評価、賃貸割合の数え方は、下記の記事で解説しています。

【前提】自用地評価額3,000万円・借地権割合60%(D)で、借主が家を建てて住んでいるシナリオです。貸宅地は借地権の分がまるごと引かれ、6割減になります。
| 立場 | 計算 | 評価額 |
|---|---|---|
| 土地を貸している側(貸宅地) | 3,000万円×(1−60%) | 1,200万円 |
| 土地を借りて家を建てている側(借地権) | 3,000万円×60% | 1,800万円 |
重要ポイント:「借地だから相続に関係ない」は誤解です。土地を持っていなくても、借りる権利そのものが相続財産として評価されます。借地権割合の高い都市部ほど大きくなります。
貸宅地(底地)の評価は、下記の記事で解説しています。

借地権の評価と借地権割合の調べ方は、下記の記事で解説しています。

親族間の土地の貸し借りでは、地代の有無と水準が評価を分けます。
「子から少し地代をもらっているから貸宅地」と自己判断すると、税務調査で否認されやすい典型論点です。親族間の貸し借りがある土地は、契約と地代の実態を資料で整理したうえで、評価方法を専門家に確認してください。
令和8年度の税制改正で、2027年1月1日以後の相続・贈与から一部の賃貸用不動産の評価が変わります。相続前5年以内に買った(新築した)貸付用不動産は、路線価ではなく市場価格に近い「通常の取引価額」で評価されます。
| 土地・建物の状況 | 2027年以後の評価 |
|---|---|
| 相続前5年以内に購入・新築した貸付用不動産 | 通常の取引価額(取得価額を基に地価の変動などを考慮した額の80%で評価できる扱いあり) |
| 5年より前から持っている貸付用不動産 | 今までどおり(貸家建付地の減額など) |
| 相続や贈与で引き継いだ貸付用不動産 | 対象外 |
| 不動産小口化商品(共同事業型) | 取得時期を問わず通常の取引価額 |
表の見方:封じられるのは「亡くなる直前に賃貸不動産を買って評価を下げる」方法です。以前から持っている賃貸物件の評価は変わりません。以前から持っていた土地への建築には経過措置があります。
重要ポイント:国税庁は令和8年9月18日に通達案を公表し、意見を募集している段階です。計算方法などの細部は変わる可能性があるので、賃貸不動産を使った対策は確定版を確認してから決めてください。
5年ルールの対象と経過措置、建て替えの判断は、下記の記事で解説しています。

マンションの評価ルール(2024年新ルール)は、下記の記事で解説しています。


ここまでの内容を、1つの土地で通して計算してみます。概算と精密評価の差額が、そのまま「補正を知っている価値」です。
【前提】路線価20万円(200D・普通住宅地区)・面積150㎡・間口6m・奥行25mの整形地(自用地)のシナリオです。
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計算ロジック:補正率は普通住宅地区の各補正率表から適用(2026年時点)。概算3,000万円→精密約2,654万円で、約346万円の評価減。税率15%の帯なら約52万円の税額差になります。
1つ目は、概算の使い方です。「路線価×面積」は必ず実際の評価額以上になるため、概算で基礎控除を下回れば申告不要の判断材料になります。正確には、角地の加算だけは概算を上回る要因になります。角地でなければ「概算=上限」と考えて差し支えありません。
逆に、概算で基礎控除を大きく超えるなら、迷わず税理士へ。減額補正で基礎控除以下まで下げられる可能性もあり、その判断こそ専門家の出番です。
2つ目は、補正の積み重ねの威力です。1つひとつは数%でも、掛け合わせれば1割超の評価減。土地が数千万円なら数百万円の差です。
この例は3つの補正を重ねただけで約12%減でした。奥行が標準的で1つの道路に接する整形地であっても、奥行価格補正だけは適用されることが多く、概算より少し下がるのが通常です。
これに不整形や崖などが加われば、差はさらに広がります。「概算で満足せず、精密評価まで詰める」価値がここにあります。
土地を複数持っている場合は、1つずつ同じ手順で評価して合算します。このとき重要なのが「評価単位」です。登記上の筆(地番)ごとではなく、利用のまとまりごとに1つの土地として評価します。
| 土地の状態 | 評価単位 |
|---|---|
| 2筆にまたがる自宅の敷地 | 合わせて1つ |
| 1筆の中に自宅と貸駐車場 | 分けて2つ |
| 自宅の隣の、同じ人が使う庭や家庭菜園 | 自宅と一体で1つ |
評価単位を誤ると、規模格差補正や不整形地補正の適用可否まで変わります。「広い一体の土地を筆ごとに分けて評価し、規模格差補正を取り逃す」のはよくある失敗です。
分け方しだいで補正の適用も変わるため、複数の筆や用途が混ざる土地は評価単位の判定から専門家に確認するのが安全です。
なお、遺産分割で1つの土地を分ける場合、分け方によって評価額が変わることもあります。ただし極端に使えない形に分ける「不合理分割」は認められません。
なお、土地とセットで評価する建物は「固定資産税評価額×1.0」、つまり課税明細書の金額そのままです。賃貸中の建物(貸家)は30%引きで評価します。
建物の評価には土地のような補正の複雑さがありません。悩むべきは土地、と割り切って時間を配分してください。
固定資産税評価額と相続税評価額の違いを財産の種類別に整理した早見表は、下記の記事にまとめています。

分筆や分け方で評価額がどう変わるかは、下記の記事で解説しています。

評価額が固まったら、次は小規模宅地等の特例(自宅の土地330㎡まで80%減)の適用検討です。詳しくは下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

最後に、評価を誤った場合の救済と、専門家に頼む目安です。土地評価は「間違えたら終わり」ではなく、後から取り戻す道があります。
補正を見落として評価額を高く申告していた場合、払いすぎた相続税は還付を受けられます。手続きは「更正の請求」。期限は相続税の申告期限から5年以内です。
土地の評価は税理士によっても差が出やすく、申告後の見直しで数百万円の還付につながる例は珍しくありません。
見直しで還付につながりやすいのは、不整形地補正・規模格差補正・私道・セットバック・利用価値10%減の見落としです。本記事のチェックリストは、申告済みの土地の点検にも使えます。
「土地の多い申告を急いで済ませた」「補正の検討をした記憶がない」という方は、期限内なら見直す価値があります。更正の請求には、正しい評価額の根拠資料(評価明細書・公図・現地写真など)を添えて税務署に提出します。還付までは数ヶ月かかるのが一般的です。
還付を専門に扱う税理士に「セカンドオピニオン」として過去の申告を見てもらう方法もあります。報酬は還付額の一定割合という成功報酬型が多く、還付が出なければ費用がかからない事務所もあります。
不動産の評価を見直して還付を受ける手順は、下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁 B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続
土地の評価額は、申告書に金額だけ書けばよいわけではありません。「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」という国税庁の様式に、路線価・補正率・計算過程を記載して添付します。
使った補正とその根拠がこの明細書で審査されるため、計算過程を説明できる形で残すことが大切です。不整形地補正を使う場合は、想定整形地の図面も添付します。ここまで来ると作図スキルも必要で、専門家の領域になってきます。
明細書は国税庁サイトから様式と記載例をダウンロードできます。整形地であれば記入はさほど難しくないため、まず様式を眺めて全体像をつかんでおくとよいでしょう。
税理士に依頼する場合は、書面添付制度(税理士が申告内容を保証する制度)に対応した事務所だと、税務調査リスクの面でも安心です。
逆に、評価額が低すぎた場合は修正申告が必要です。面積の誤り・利用区分の誤認・実勢とかけ離れた独自の減額などは、税務調査での指摘対象になります。
特に多いのが、縄伸び(登記面積より実測面積が大きい)による過少評価です。古い土地は登記と実測がずれていることが多く、面積が大きければ評価額も上がります。自主的に修正すれば加算税は軽く済みます。誤りに気づいたら、指摘される前に動いてください。
なお、路線価と時価が大きくかけ離れる場合(タワーマンション節税の否認例など)には、例外的に国税庁が別の評価を採用することもあります。行きすぎた評価圧縮はリスクと隣り合わせです。
調査で指摘されやすいのは、面積の相違(登記と実測のずれ)・評価単位の誤り・賃貸割合の水増し・使用貸借の貸宅地扱いなどです。減額の攻めどころと、やってはいけない誤りは紙一重に見えて別物です。根拠資料で説明できる減額だけを使うのが鉄則です。
土地の評価は、生前の準備でも精度とスピードが変わります。
境界未確定の土地は、評価にも売却にも支障が出る「負動産」予備軍です。元気なうちの整理が、家族への何よりの引き継ぎになります。
どの土地を誰が相続するかを生前に決めておけば、評価と分割を同時に進められます。土地は分けにくい財産だからこそ、方針の共有が相続を円滑にします。

土地の評価は、同じ土地でも評価する税理士によって金額が変わる分野です。依頼するなら、相続税の対応実績がある税理士に一括で相談・見積りを依頼し、評価の方針を比べてください。
補正は「申告した人が使ったものだけ」が反映され、税務署は払いすぎを教えてくれません。最初の評価の質がそのまま税額になります。
【税理士に任せると変わること】
たとえば間口の狭い旗竿地で、経験の浅いA税理士は路線価×面積に奥行補正だけを掛けて2,900万円と評価しました。B税理士は不整形地補正と間口狭小補正を使って2,300万円とし、評価の差600万円は、税率15%でも90万円の税額差になりました。
複数の税理士から見積りを取ると、次の3つの点で実務力を比べられます。
判定ポイント1:現地調査を行うか。机上の路線価計算だけでなく、現地で間口・高低差・騒音などの減額要素を確認するか → 現地まで見る税理士の方が、評価減の拾い漏れを防げると判定できます。
判定ポイント2:適用した補正の根拠を示すか。どの補正をなぜ使った(使わなかった)かを、公図や測量図ベースで説明できるか → 根拠を示す税理士の方が、否認リスクと払いすぎの両方を防げると判定できます。
判定ポイント3:最新ルールへの対応。マンションの2024年新ルールや2027年からの貸付用不動産の5年ルールを踏まえた説明があるか → 改正に強い税理士の方が、将来の対策まで任せられると判定できます。
| 見積りで見る項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 提案内容 | 現地調査の有無と、検討する減額補正の項目が示されているか |
| 試算した相続税額 | 土地の評価方針を反映した税額と根拠が示されているか |
| 報酬額 | 土地の数や評価の難しさによる加算を含めた総額か |
1つの事務所だけ、または自分だけの評価では、補正の検討漏れで評価額が数百万円高いままでも、誰も気づかないまま申告が終わります。
起きやすいこと
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市街地の土地は「路線価×補正率×面積」の路線価方式、路線価のない地域は「固定資産税評価額×評価倍率」の倍率方式で計算します。どちらの方式かは、国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)で確認できます。
路線価は相続税計算専用の価格で、公示価格の約8割の水準に設定されています。実際に売れる値段より低いのが通常です。不動産会社の査定額で申告すると払いすぎになります。相続税の計算には必ず路線価ベースの評価額を使ってください。
形がいびつな土地(最大40%減)、間口が狭い・奥行が長い土地、崖を含む土地、広い土地(500㎡以上など)、騒音や高低差のある土地などです。
貸している土地や賃貸アパートの敷地も、権利の分だけ評価が下がります。減額要素が1つでもあれば税理士に確認する価値があります。
貸家建付地として「自用地評価額×(1−借地権割合×30%×賃貸割合)」で評価します。借地権割合60%で満室なら約18%の減額です。
なお2027年1月以後の相続からは、相続前5年以内に買った貸付用不動産は通常の取引価額(時価)で評価する見直しが予定されています。直前の購入による圧縮は効かなくなります。
倍率方式の土地や、形の整った路線価地域の土地なら、概算は自分でできます。「路線価×面積」で上限の目安をつかめます。
ただし不整形地・広い土地・賃貸物件の敷地などは補正の判断に専門性が必要です。減額要素のある土地は、相続税の対応実績がある税理士への依頼をおすすめします。
相続税の土地評価額は、市街地なら「路線価×補正率×面積」、それ以外は「固定資産税評価額×評価倍率」で計算します。形の整った土地は自分で概算でき、クセのある土地ほど補正で評価が下がります。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年10月時点の法令・情報に基づいて作成しています。税制改正により、内容が変更となる可能性があります。最新の制度については国税庁の公式サイトや税理士にご確認ください。