マンションの相続税評価額の計算方法|手元の2つの書類から出す手順と新ルール判定

マンション_相続税

マンションの相続税評価額は、建物の部分と土地の部分を別々に計算して足し合わせます。土地は敷地全体のうち自分の持分にあたる面積で計算します。

2024年1月からは、一部のマンションでこの金額に補正がかかるようになりました。市場価格と相続税評価額の開きが大きい物件を対象とした改正です。

計算に必要な数字は、固定資産税の課税明細書と登記事項証明書の2つから取れます。手元にこの2つがあれば、税理士に頼む前に自分で概算を出せます。

つまずきやすいのは、算式そのものではなく「どの書類のどの数字を使うか」です。とくに土地の持分の割合は、登記簿の数字をそのまま使うと誤った金額になる場合があります。

補正がかかるかどうかは築年数・総階数・所在階・土地の持分の広さの4つで決まります。築古で低層のマンションなら、補正がかからないこともあります。

賃貸に出している一室は、補正をかけた後の金額に貸家の減額を適用します。この順序を逆にすると金額が変わってしまいます。

この記事では、手元の2つの書類から数字を読み取る手順、2024年の新ルールで補正がかかるかどうかの判定、賃貸に出している場合の計算、評価額別の税額の目安、申告までの流れを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 計算に使う数字は固定資産税の課税明細書と登記事項証明書の2つから取れる。ただし土地の持分の割合は登記簿の数字をそのまま使えないケースが2つある
  • 2024年1月からの補正は築年数・総階数・所在階・土地の持分の広さで決まる。築古・低層・郊外の物件は補正がかからないこともある
  • 賃貸に出している一室は、補正後の金額を基に貸家の減額を適用する。小規模宅地等の特例も補正後の金額が出発点になる
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マンションの相続税評価額は土地と建物を分けて出す|計算の全体像

マンションは一戸建てと違い、建物の一室と敷地全体の持分をセットで持っています。相続税評価額は建物と土地を別々に計算してから足し合わせます

建物と土地で使う数字が違う|どこから取るか一覧

建物と土地では、計算の出発点になる数字が別の書類にあります。先に何をどこから取るのかを整理しておくと、途中で手が止まりません。

計算する部分出発点になる数字書いてある場所
建物(一室)固定資産税評価額固定資産税の課税明細書
土地(敷地の持分)路線価または評価倍率国税庁の財産評価基準書
土地の面積敷地全体の面積登記事項証明書
土地の持分敷地権の割合(共有持分の割合)登記事項証明書

表の見方:4つのうち3つは手元の書類から読み取れます。路線価だけは国税庁のサイトで調べます。

重要ポイント:黄色の行の「敷地権の割合」が最もつまずきやすい数字です。登記簿の表示をそのまま使えないケースがあります。

手元に用意する2つの書類

計算を始める前に、次の2つを用意します。どちらも相続税の申告でそのまま使う書類なので、早めに揃えておくと後の手続きが楽になります。

【用意する2つの書類】

  • 固定資産税の課税明細書|毎年4月から6月ごろに市区町村から届く納税通知書に同封されています
  • 登記事項証明書|法務局で取得します。オンライン請求もできます

どちらも手元にない場合は、課税明細書は市区町村の資産税課、登記事項証明書は法務局で再取得できます。

課税明細書からは建物の固定資産税評価額を取ります。登記事項証明書からは築年数・総階数・所在階・専有部分の面積・敷地の面積・敷地権の割合の6つを読み取ります

2024年から一部のマンションだけ評価額が上がった

2024年1月1日以後の相続・遺贈・贈与で取得した分譲マンションには、新しい評価方法が使われます。国税庁は市場価格と相続税評価額の開きが大きい物件について、評価額を市場価格の6割の水準まで引き上げる補正を導入しました

対象は分譲マンションの一室です。一戸建てや一棟まるごと所有している賃貸マンションは対象外で、従来どおりの評価方法が使われます。

注意:すべてのマンションで評価額が上がるわけではありません。築古・低層・郊外の物件は補正がかからないこともあります。判定には計算が必要です。

参照元:国税庁 No.4667 居住用の区分所有財産の評価

全体の流れ|4つの数字を出して掛け合わせる

計算は4つの段階に分かれます。前の段階の答えを次の段階に持ち込む形なので、飛ばさず順番どおりに進めてください。どこで間違えたかを後から追えるようになります。

段階1

書類から6つの数字を読み取る
築年数・総階数・所在階・専有部分の面積・敷地の面積・敷地権の割合

段階2

補正がかかるかを判定する
4つの数字から引き上げ率を計算し、境目の0.6と比べる

段階3

建物と土地の評価額を出す
もとの評価額に引き上げ率を掛ける

段階4

減額のしくみを適用する
賃貸なら貸家の減額、自宅なら土地を8割減らせる制度

重要ポイント:段階4の減額は、段階3で補正した後の金額を出発点にします。順序を逆にすると金額が変わります。

手元の書類から4つの数字を読み取る|どこを見ればよいか

補正がかかるかどうかは4つの数字で決まります。4つはすべて登記事項証明書から読み取れます。算式より先に、どの欄を見るかを押さえるほうが確実です。

築年数|「新築年月日」から相続の日までを数える

築年数は、建物が建った時から相続が起きた日までの期間です。登記事項証明書の表題部にある「原因及びその日付」の新築年月日を起点にします。

国税庁は「1年未満の端数は1年」とすると定めています。14年3か月なら15年として扱います。切り捨てではなく切り上げです。

新築年月日相続が起きた日期間使う築年数
2010年4月1日2026年7月1日16年3か月17年
2010年4月1日2026年3月1日15年11か月16年
2010年4月1日2026年4月1日ちょうど16年16年

表の見方:端数が1か月でもあれば1年として数えます。黄色の行のようにちょうど区切りのよい年数になる場合だけ、端数が出ません。

重要ポイント:築年数が長いほど補正は小さくなります。築古の物件では、この1年の差で補正の有無が変わることもあります。

総階数と自分の部屋の階|地下は数えない

総階数は建物全体の階数、所在階は自分の部屋がある階です。どちらも地下は数に入れません

【階数を数えるときの決まり】

  • 総階数に地階は含めない|地下1階付11階建てなら、総階数は11階
  • 総階数は33で割った数字を使う|33階を超える場合は1として扱う
  • メゾネットタイプで複数階にまたがる場合は低い方の階を使う
  • 自分の部屋が地階にある場合は零階として扱う

登記事項証明書の表題部に「鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付11階建」のように記載されています。

総階数を33で割るのは、国内のマンションの階数分布に合わせた調整です。33階建て以上はすべて同じ扱いになるため、高さの差はそこで打ち止めになります

専有部分の床面積|登記の「床面積」をそのまま使う

専有部分の面積は、登記事項証明書の専有部分の建物の表示にある「床面積」を使います。販売資料に載っている面積とは基準が違う場合があるので、登記の数字を優先します。

注意:登記の床面積は内側の壁で測った面積(内法)で、販売資料の面積は壁の中心で測った面積(壁芯)です。壁芯のほうが数㎡大きく出ます。

敷地の面積と持分の割合|「1150000分の6319」の読み方

土地の持分は、登記事項証明書の敷地権の表示にある「敷地権の割合」で表されます。「1150000分の6319」のように、分母が大きい分数で書かれていることが多いです。

この割合に敷地全体の面積を掛けると、自分の持分にあたる土地の面積が出ます。小数点以下第3位は切り上げます

項目登記事項証明書の記載計算
敷地の面積3,630.30㎡
敷地権の割合1150000分の6319
自分の土地の面積3,630.30㎡ × 6,319/1,150,000 = 19.95㎡

表の見方:この19.95㎡が、あとで専有部分の面積と比べる数字になります。専有部分59.69㎡に対して19.95㎡なので、持分は約3分の1です

計算ロジック:【前提】国税庁パンフレットの例。敷地権の割合は登記簿の分数をそのまま使い、3,630.30×6,319÷1,150,000=19.9459…を第3位切上げで19.95㎡とします。

登記簿の数字をそのまま使えない2つのケース

ここが最もつまずきやすい場所です。登記簿に書かれた持分の割合を、そのまま計算に使えない場合が2つあります。国税庁がQ&Aで具体例を示しています。

ケース登記簿の表示計算に使う割合間違えると
同じ建物に2室以上を持っている2室合計で 1/10各室ごとに 1/20土地の評価額が2倍になる
1室を夫婦などで共有している夫の持分として 3/801/20(夫婦合計)土地の評価額が小さくなる

表の見方:1つ目は、登記簿が複数室分をまとめた割合で表示されているケースです。2階と5階の2室を持っていて登記簿が1/10なら、各室に対応するのは1/20です

重要ポイント:2つ目は逆の向きの誤りです。夫3/4・妻1/4で1室を共有していると、登記簿には夫の分として1/20×3/4=3/80が載ります。しかし計算に使うのは夫婦合計の1/20です

計算ロジック:補正率は「その一室」の性質から求めるものなので、室ごと・共有者合計の割合で計算します。共有分の按分は、補正後の評価額を持分で分けるときに行います。

自分がどちらのケースにあたるかは、登記事項証明書の敷地権の表示と、所有している部屋の数を突き合わせれば分かります。心当たりがある場合は、必ず税理士に確認してください

参照元:国税庁 居住用の区分所有財産の評価に関するQ&A(情報)

建物と土地のもとの評価額|課税明細書と路線価図

4つの数字とは別に、補正をかける前の評価額が必要です。建物は課税明細書、土地は国税庁の財産評価基準書から求めます。

対象計算式数字の出どころ
建物(一室)固定資産税評価額 × 1.0固定資産税の課税明細書
土地(敷地全体)路線価 × 敷地の面積国税庁の財産評価基準書
土地(自分の持分)敷地全体の価額 × 敷地権の割合

表の見方:建物は倍率1.0なので、課税明細書の固定資産税評価額がそのまま出発点になります

重要ポイント:土地は敷地全体の価額を出してから持分を掛けます。路線価が使えない地域では、固定資産税評価額に評価倍率を掛ける方法をとります。

路線価や評価倍率は国税庁の財産評価基準書で年分を選んで調べます。相続が起きた年の路線価を使うので、年を間違えないよう注意してください

参照元:国税庁 財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)

土地の評価額の求め方そのものは、下記の記事で解説しています。

読み取った数字は、国税庁の「区分所有補正率の計算明細書」に書き込めば補正率まで自動で計算できます。手計算をする必要はありません。

参照元:国税庁 B2-6 居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書

2024年の新ルールで評価額が上がる仕組み|引き上げ率の出し方

読み取った4つの数字から、市場価格と相続税評価額がどれだけ離れているかを表す倍率を出します。この倍率が1.67倍を超えると評価額の引き上げが入ります

4つの数字に係数を掛けて足す|開きを表す倍率の出し方

4つの数字にはそれぞれ決まった係数があり、掛けて足し合わせたうえで3.220を加えます。築年数と土地の持分はマイナスの係数なので、値が大きいほど倍率は下がります。

使う数字係数向き端数の扱い
築年数△0.033長いほど倍率が下がる1年未満は1年に切上げ
総階数 ÷ 330.239高いほど倍率が上がる第4位切捨て・1を超えたら1
自分の部屋の階0.018高いほど倍率が上がる地階は零階
土地の面積 ÷ 専有部分の面積△1.195広いほど倍率が下がる第4位切上げ
4つを足して 3.220 を加えるこれが開きを表す倍率

表の見方:上がる向きが2つ、下がる向きが2つあります。高層階の新築ほど倍率が上がり、築古で土地の持分が広いほど倍率は下がります

重要ポイント:係数の絶対値は土地の持分(1.195)が最も大きいです。郊外のマンションで持分が広いと、それだけで倍率が大きく下がります。

計算ロジック:4つの係数と定数3.220は、国税庁が平成30年の取引実績をもとに統計的に求めた数値です。物件ごとの事情ではなく、この式に当てはめて機械的に計算します。

境目は0.6|引き上げるかどうかの判定

出した倍率の逆数をとると、市場価格に対して相続税評価額がどの水準にあるかが分かります。この水準が0.6を下回ると引き上げの対象になります

倍率が1.67倍のとき、逆数はちょうど0.6です。つまり市場価格の6割を下回っている物件だけが引き上げられます。

3つの帯|上がる・変わらない・下がる

水準は3つの帯に分かれ、帯ごとに扱いが変わります。真ん中の帯に入れば、従来どおりの評価額のままです。

水準倍率でいうと引き上げ率評価額はどうなるか
0.6 未満1.67倍より大きい倍率 × 0.6上がる
0.6 以上 1 以下1倍〜1.67倍補正なし変わらない
1 を超える1倍未満倍率そのもの下がる

表の見方:黄色の帯に入れば従来の評価額がそのまま使えます。築古・低層・郊外の物件はこの帯に入ることが多いです。

重要ポイント:いちばん下の帯は見落とされがちです。市場価格が相続税評価額を下回っている物件では、補正によって評価額が下がります

計算ロジック:水準が1を超えるのは倍率が1未満の場合で、引き上げ率がそのまま1未満になるため評価額は減ります。地方の過疎地や極端な築古物件で起こりえます。

ただし一棟の全戸と敷地の両方を単独で所有している場合は、土地側の引き上げ率は1が下限となり、下がりません。建物側には下限がありません。

参照元:国税庁 居住用の区分所有財産の評価に関するQ&A(情報)

国税庁の計算例をそのまま追う|築15年・11階建て・3階

国税庁が公表している計算例で、数字の流れを確認します。前提は築15年・総階数11階・所在階3階・専有部分59.69㎡・自分の土地19.95㎡です。

項目計算結果
築年数15年 × △0.033△0.495
総階数11 ÷ 33 = 0.333 → × 0.2390.079
所在階3階 × 0.0180.054
土地の持分19.95 ÷ 59.69 = 0.335 → × △1.195△0.401
開きを表す倍率△0.495+0.079+0.054-0.401+3.2202.457
水準1 ÷ 2.4570.407
引き上げ率2.457 × 0.6(水準が0.6未満のため)1.4742

表の見方:水準0.407は0.6を下回るので引き上げの対象です。もとの評価額が約1.47倍になります

この引き上げ率をもとの評価額に掛けます。建物と土地の両方に同じ率を掛けます。

対象もとの評価額引き上げ率新ルールでの評価額
建物(一室)500万円1.4742737万1,000円
土地(持分)1,000万円1.47421,474万2,000円
合計1,500万円2,211万3,000円

表の見方:合計で1,500万円だった評価額が2,211万3,000円になります。差は711万3,000円です

計算ロジック:【前提】国税庁パンフレットの計算例。引き上げ率1.4742を建物・土地それぞれのもとの評価額に掛けるだけで、建物と土地で率が変わることはありません。

参照元:国税庁「居住用の区分所有財産」の評価が変わりました(令和5年11月)

高層階ほど影響が大きくなる理由

4つの数字のうち、総階数と所在階は倍率を押し上げる向きに働きます。高層マンションの上層階は両方が大きいため、引き上げ率も大きくなります

加えて、高層マンションは戸数が多いぶん一戸あたりの土地の持分が小さくなります。土地の持分が小さいと、倍率を下げる働きも弱まります。

重要ポイント:3つの要素が同じ向きに重なるため、タワーマンションの高層階は最も影響を受けやすい組み合わせです

タワーマンションに絞った改正前後の比較は、下記の記事で解説しています。

新ルールで計算した額が上限とは限らない

新ルールどおりに計算すれば必ずその金額で通るとは限りません。国税庁は、この計算による価額よりも高い価額で評価することもあると明記しています

財産評価の通達には、通達どおりの評価が著しく不適当な場合の定めがあります。国税庁はQ&Aで、新ルールを適用した場合もこの定めが同じように働くとしています。

注意:相続の直前に不自然な取引をしている場合などは、新ルールで計算した金額が認められないことがあります。節税だけを目的とした購入は避けてください。

逆に、市場価格が大幅に下がっていて新ルールの計算が実態に合わない場合は、鑑定評価などの合理的な方法で時価を算定できます。上下どちらの向きにも例外があるということです。

参照元:国税庁 居住用の区分所有財産の評価に関するQ&A(情報)

評価額が上がらないマンション|自分が対象かどうかの判定

新ルールは分譲マンションの一室を対象にした決まりです。そもそも対象にならない形が5つ定められています。まず自分の物件がそこに入らないかを確認します。

そもそも対象にならない5つの形

国税庁は、次の5つを新ルールの対象から外しています。いずれかに当てはまれば、従来どおりの評価方法で計算します。

対象にならない形具体例理由
住居として使う造りでないものオフィス・店舗などのテナント物件居住用の決まりだから
部屋ごとの登記がされていないもの一棟まるごと所有の賃貸マンション区分所有の形でないから
地下を除いた階数が2階以下2階建ての低層の集合住宅乖離が生じにくいから
住居用の部屋が3室以下で全部を自分か親族が使う二世帯住宅市場に出る前提でないから
販売用の在庫として持っているもの不動産会社の販売在庫別の評価方法があるから

表の見方:黄色の2行は見落とされやすい形です。2階建てのマンションや二世帯住宅は、区分登記されていても対象外です

重要ポイント:2つ目の「部屋ごとの登記がされていないもの」は、一棟買いの投資用マンションが典型です。区分所有の形をとっていない物件は新ルールの外にあります

4つ目の「3室以下で全部を自分か親族が使う」は、二世帯住宅を外す趣旨です。部屋数が3室以下でも、1室でも他人に貸していれば対象になります。

注意:借地の上に建つ分譲マンションで、土地を貸している側の評価をする場合にも新ルールは使いません。貸している土地の評価は別の決まりで行います。

土地を貸している側の評価は、下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁「居住用の区分所有財産」の評価が変わりました(令和5年11月)

対象でも引き上げがないケース|築古・低層・郊外

5つの形に入らなくても、計算した結果として引き上げが入らないことがあります。開きを表す倍率が1.67倍以下なら補正はかかりません

倍率を下げる働きをするのは築年数と土地の持分の広さです。この2つが大きい物件は、倍率が1.67倍以下に収まりやすくなります。

特徴効いてくる数字目安の計算
築年数が20年以上築年数(△0.033)20年 × △0.033 = △0.66
総階数が10階以下総階数(0.239)10 ÷ 33 × 0.239 = 0.072
自分の部屋が5階以下所在階(0.018)5階 × 0.018 = 0.09
土地の持分が広い(郊外型)土地の持分(△1.195)30㎡ ÷ 75㎡ × △1.195 = △0.478
4つが重なった場合合計+3.220約2.24倍|引き上げの対象

表の見方:4条件が重なっても、この例では2.24倍で引き上げの対象に入ります。「築古だから大丈夫」と決めつけず、必ず計算してください

計算ロジック:△0.66+0.072+0.09-0.478+3.220=2.244。逆数は0.446で0.6を下回るため補正がかかります。倍率を1.67倍以下にするには、築年数や土地の持分がさらに大きい必要があります。

自分が対象かどうかの判定チェックリスト

ここまでの内容を確認する順番にまとめます。上から順に見て、当てはまったところで判定が決まります。

【判定の順番】

  • 相続や贈与で取得したのは2024年1月1日以後か|それより前なら対象外
  • 部屋ごとの登記がされているか|一棟所有なら対象外
  • 住居として使う造りか|テナント物件なら対象外
  • 地下を除いた階数が3階以上か|2階以下なら対象外
  • 住居用の部屋が4室以上、または3室以下でも他人に貸しているか|二世帯住宅なら対象外
  • 4つの数字から出した倍率が1.67倍を超えるか|1.67倍以下なら補正なし

すべてに当てはまった場合だけ、評価額の引き上げが入ります。

重要ポイント:最後の倍率の判定だけは計算が必要です。国税庁の計算明細書に数字を入れれば自動で判定できます

参照元:国税庁 居住用の区分所有財産の評価に関するQ&A(情報)

賃貸に出している一室の評価|掛ける順序を間違えると狂う

賃貸に出しているマンションは、人に貸している分だけ評価額を下げられます。ただし引き上げの補正と減額のどちらを先に行うかが決まっています

掛ける順序が決まっている|引き上げてから減らす

国税庁は、先に補正をかけて評価額を出し、その金額を基に貸している分の減額をすると定めています。逆にすると答えが変わってしまいます。

1番目

もとの評価額を出す
建物は課税明細書の金額、土地は路線価×面積×持分

2番目

引き上げ率を掛ける
これで「貸していないものとみなした金額」になる

3番目

貸している分を差し引く
土地と建物で差し引く割合が違う

4番目

自宅の土地を減らせる制度を使う
ここも3番目までの金額が出発点

重要ポイント:減額のしくみはすべて「補正した後の金額」を出発点にします。小規模宅地等の特例も同じです。

順序を取り違えると、減額を先に適用してから引き上げてしまうことになります。同じ数字を使っていても結果が合わなくなるので、流れを固定して計算してください。

土地の減額|国税庁の計算例で確認する

土地は、地域ごとに決まった借地権割合と、建物を貸していることによる30%を掛けた分を差し引きます。国税庁が示している計算例で流れを追います。

段階計算結果
敷地全体の価額1㎡30万円 × 2,000㎡6億円
自分の持分6億円 × 60/8,000450万円
引き上げ後の金額450万円 × 1.6278732万5,100円
貸している分の減額732万5,100円 × 0.6 × 0.3 × 100%△131万8,518円
土地の評価額732万5,100円 - 131万8,518円600万6,582円

表の見方:持分を掛けて450万円になった後に引き上げ率を掛けます。減額はいちばん最後です

重要ポイント:0.6は地域ごとに決まっている借地権の割合で、路線価図に記号で示されています。地域によって30%から90%まで変わるため、必ず路線価図で確認してください

計算ロジック:【前提】国税庁Q&Aの計算例。借地権割合0.6・建物を貸していることによる割合0.3・貸している部分の割合100%。732万5,100円×0.6×0.3=131万8,518円を差し引きます。

建物の減額|貸している分の30%を差し引く

建物は、貸している部分について30%を差し引きます。土地と違って地域による差はなく、割合は全国一律です。

段階計算結果
もとの評価額固定資産税評価額500万円 × 1.0500万円
引き上げ後の金額500万円 × 1.6278813万9,000円
貸している分の減額813万9,000円 × 0.3 × 100%△244万1,700円
建物の評価額813万9,000円 - 244万1,700円569万7,300円

土地と建物を合わせると、この例の評価額は1,170万3,882円になります。同じ物件を自分で使っていた場合と比べます。

使い方土地建物合計
自分で住んでいる732万5,100円813万9,000円1,546万4,100円
人に貸している600万6,582円569万7,300円1,170万3,882円
△131万8,518円△244万1,700円△376万218円

表の見方:貸しているだけで評価額が376万218円低くなります。建物側の減額のほうが大きく出ています。

計算ロジック:建物は30%をそのまま差し引くのに対し、土地は借地権割合0.6を掛けてから30%を差し引くため、同じ30%でも土地側の減額率は18%にとどまります。

参照元:国税庁 居住用の区分所有財産の評価に関するQ&A(情報)

空室があるとどうなるか

減額できるのは実際に貸している部分だけです。マンション一室を丸ごと貸しているなら、貸している部分の割合は100%です

区分所有の一室では、貸しているか空室かのどちらかになります。相続が起きた時点で空室だった場合、原則として減額は使えません。

注意:入居者が退去した直後で、すぐに次の募集をしている場合は貸していたものとして扱われることがあります。募集の記録や管理会社との契約書を残しておいてください。

一棟まるごと持っている場合は計算が別

一棟まるごと所有している賃貸マンションは、部屋ごとの登記がないため新ルールの対象外です。引き上げの補正はかからず、従来どおりの評価方法で計算します

所有の形引き上げの補正土地の評価建物の評価
分譲マンションの一室かかる持分の価額 × 引き上げ率から減額固定資産税評価額 × 引き上げ率から減額
一棟まるごとかからない敷地全体の価額から減額固定資産税評価額から減額

表の見方:一棟所有では持分の計算も引き上げの計算も不要です。敷地全体をそのまま評価します

区分所有でも、一棟の全部屋と敷地の両方を1人で持っている場合は扱いが変わります。土地側の引き上げ率は1が下限となり、評価額が下がることはありません

注意:賃貸用の不動産は2027年1月1日以後の相続から扱いが変わります。相続が起きる前の5年以内に買った賃貸用不動産は、市場価格で評価されることになりました

この2027年からの変更点は、下記の記事で解説しています。

評価額から相続税を出す4ステップ

マンションの評価額が出たら、他の財産と合わせて相続税を計算します。マンションの評価額だけでは相続税は決まりません。家族構成と財産の総額で変わります。

STEP1|財産を全部合わせて課税価格を出す

マンションの評価額に、預貯金・有価証券・生命保険金などを加えます。借入金や葬式費用はここから差し引きます。

区分含めるもの扱い
不動産マンションの評価額・その他の土地建物足す
金融資産預貯金・有価証券・投資信託足す
みなし相続財産生命保険金・死亡退職金(非課税枠を超えた分)足す
債務・葬式費用借入金・未払医療費・葬式費用差し引く

表の見方:薄赤の行だけが差し引く項目です。住宅ローンが残っている場合はここで差し引きます

STEP2|基礎控除を差し引く

課税価格から基礎控除を引きます。基礎控除は3,000万円に法定相続人1人あたり600万円を加えた金額です。

法定相続人の数基礎控除この金額以下なら
1人3,600万円相続税は0円
2人4,200万円相続税は0円
3人4,800万円相続税は0円
4人5,400万円相続税は0円

重要ポイント:評価額3,000万円のマンションだけを相続する場合、相続人が1人でも基礎控除3,600万円を下回るため相続税は0円です

マンション以外に預貯金などがあると、合計で基礎控除を超えることがあります。マンションの評価額だけを見て判断しないでください。

相続税がかからないケースの整理は、下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

STEP3|法定相続分で分けて税率を掛ける

基礎控除を引いた金額を、いったん法定相続分どおりに分けます。実際の分け方ではなく法定相続分で計算するのがこの段階の決まりです

分けた金額それぞれに税率を掛けて税額を出し、合計します。この合計が相続税の総額です。

分けた後の金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円

表の見方:税率は分けた後の金額に対して段階的に上がります。相続人の数が多いほど1人あたりの金額が下がり、低い税率が使えます

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

STEP4|実際の取得割合で各人の税額を確定する

相続税の総額を、実際に取得した財産の割合で分け直します。多く取得した人が多く負担する形になります。

その後、配偶者の税額軽減や未成年者控除などを各人ごとに差し引いて納税額が決まります。配偶者が取得した分は1億6,000万円まで税額が出ません

重要ポイント:マンションを誰が取得するかで各人の納税額が変わります。自宅の土地を8割減らせる制度が使えるかどうかも取得する人で決まります

評価額別の税額一覧|自分のマンションはどの帯か

マンションの評価額と家族構成が分かれば、相続税の目安が出ます。マンション以外に財産がない場合、5,000万円までは税額が小さく収まります

評価額と家族構成の組み合わせ一覧

マンションだけを相続した場合の相続税の総額です。他に財産がある場合は、その分を足した金額でこの表を見てください。

マンションの評価額子1人子2人配偶者と子1人配偶者と子2人
3,000万円0円0円0円0円
4,000万円40万円0円0円0円
5,000万円160万円80万円80万円20万円
6,000万円310万円180万円180万円120万円
8,000万円680万円470万円470万円350万円
1億円1,220万円770万円770万円630万円
1億5,000万円2,860万円1,840万円1,840万円1,495万円

表の見方:黄色の行のとおり、3,000万円のマンションだけならどの家族構成でも0円です。基礎控除が最低でも3,600万円あるためです。

重要ポイント:相続人が増えるほど税額は下がります。子1人と配偶者と子2人では、1億円のケースで590万円の差が出ます

計算ロジック:【前提】マンション以外の財産・債務はなし、特例や控除は適用前の相続税の総額。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数。課税遺産総額を法定相続分で分けて税率を掛け、合計しています。

事例1|3,000万円のマンションだけを子1人が相続する

もっとも多いのは、評価額が基礎控除を下回って相続税がかからないケースです。相続人が1人でも基礎控除は3,600万円あるため、この帯に収まる物件は少なくありません。

【前提】

  • マンションの評価額|3,000万円
  • 他の財産|なし
  • 相続人|子1人
  • 基礎控除|3,600万円

課税価格3,000万円は基礎控除3,600万円を下回るので相続税は0円で、申告も不要です。ただし名義変更の手続きは必要になります。

事例2|3,000万円のマンションと預貯金2,000万円を配偶者と子1人が相続する

マンション以外に財産があると、合計で基礎控除を超えることがあります。マンションの評価額だけで判断すると、申告が必要なことに気づかないまま期限を過ぎてしまいます。

【前提】

  • マンションの評価額|3,000万円
  • 預貯金|2,000万円
  • 相続人|配偶者と子1人
  • 基礎控除|4,200万円

課税価格5,000万円から基礎控除4,200万円を引くと800万円が残り、相続税の総額は80万円です。配偶者が取得した分には税額が出ないため、実際の納税額はさらに下がります。

事例3|5,000万円のマンションと預貯金3,000万円を配偶者と子2人が相続する

自宅の土地を8割減らせる制度を使えるかどうかで、税額が大きく変わります。マンションでも土地の持分について使えるので、金額の差を確かめておきます。

【前提】

  • マンションの評価額|5,000万円(うち土地の持分1,500万円)
  • 預貯金|3,000万円
  • 相続人|配偶者と子2人
  • 基礎控除|4,800万円
制度の利用課税価格相続税の総額
使わない8,000万円350万円
使う(土地1,500万円を8割減)6,800万円200万円△150万円

表の見方:土地の持分1,500万円を8割減らすと1,200万円下がり、相続税の総額は150万円減ります

計算ロジック:減額されるのは土地の部分だけで、建物には使えません。1,500万円×80%=1,200万円を課税価格から差し引き、6,800万円-基礎控除4,800万円=2,000万円で計算しています。

事例4|1億円のマンションを配偶者と子2人が相続する

評価額が1億円になると、税額の水準が一段上がります。都心の物件では引き上げの補正が入って1億円台になることもあるため、納税資金を用意できるかが論点になります。

【前提】

  • マンションの評価額|1億円
  • 他の財産|なし
  • 相続人|配偶者と子2人
  • 基礎控除|4,800万円

課税価格1億円から基礎控除4,800万円を引いた5,200万円で計算すると、相続税の総額は630万円です。納税資金の準備が必要になる水準です。

注意:マンションは現金化しないと納税資金になりません。売却するか、預貯金で払えるかを申告期限の10か月以内に判断してください

事例5|賃貸に出していた一室を相続する

人に貸している一室は評価額が下がるため、税額も下がります。国税庁の計算例で使った物件を、自分で住んでいた場合と貸していた場合で比べます。

【前提】

  • 引き上げ後の評価額|自分で住んでいた場合1,546万4,100円
  • 同|人に貸していた場合1,170万3,882円
  • 預貯金|4,000万円
  • 相続人|配偶者と子1人
  • 基礎控除|4,200万円
使い方マンションの評価額課税価格相続税の総額
自分で住んでいた1,546万4,100円5,546万4,100円134万6,000円
人に貸していた1,170万3,882円5,170万3,882円97万円
△376万218円△376万218円△37万6,000円

表の見方:評価額が376万218円下がり、相続税の総額は37万6,000円下がります

重要ポイント:賃貸に出すと評価額は下がりますが、自宅の土地を8割減らせる制度は使えず、減額は5割にとどまります。自宅として使うほうが有利になる場合もあります。

5つの事例の比較

5つの事例を横に並べます。同じ評価額でも家族構成と使い方で税額が変わるため、自分の状況に近い行を探して目安をつかんでください。

事例マンションの評価額他の財産相続人相続税の総額
事例13,000万円なし子1人0円
事例23,000万円預貯金2,000万円配偶者と子1人80万円
事例35,000万円預貯金3,000万円配偶者と子2人350万円(制度利用で200万円)
事例41億円なし配偶者と子2人630万円
事例51,170万3,882円(賃貸)預貯金4,000万円配偶者と子1人97万円

表の見方:事例1と事例4の差は630万円です。評価額が3倍強になると税額はゼロから630万円まで動きます。

重要ポイント:事例3のように、制度を使えるかどうかで150万円の差が出ることがあります。誰が取得するかを決める前に試算してください。

計算ロジック:いずれも特例適用前の相続税の総額です。配偶者が取得した分の税額軽減や未成年者控除を反映すると、実際の納税額はさらに下がります。事例5は国税庁Q&Aの計算例の物件を使っています。

マンションで使える減額のしくみ

評価額が出た後に使える減額の制度があります。どれも申告期限内に手続きをすることが条件です。知らずに期限を過ぎると使えなくなります。

自宅の土地を8割減らせる制度|330㎡まで

亡くなった人が住んでいたマンションを、配偶者や同居していた親族が取得した場合、土地の持分の評価額を8割減らせます。減額できる面積は330㎡までです。

マンションの一室では土地の持分が20㎡から40㎡程度に収まることが多いため、面積の上限に引っかかることはほとんどありません

取得する人使えるか主な条件
配偶者使える条件なし
同居していた親族使える申告期限まで住み続けて所有し続ける
別居の親族条件つきで使える持ち家がないことなど
賃貸に出していた場合この制度は使えない貸付用として5割減の枠を使う

表の見方:配偶者が取得する場合だけ条件がありません。同居していた親族は申告期限まで住み続けることが必要です

重要ポイント:薄赤の行のとおり、賃貸に出していた一室にはこの8割減の制度は使えません。貸付用の枠で200㎡まで5割減となります。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

配偶者が取得すると1億6,000万円まで税額が出ない

配偶者が取得した財産は、1億6,000万円または法定相続分のうち多い金額まで税額が出ません。マンション1室であれば、この枠に収まることがほとんどです。

注意:配偶者に寄せれば一次相続の税額は下がりますが、その配偶者が亡くなったときの相続で税額が増えます。2回の相続を合わせて考えてください。

参照元:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

2つを組み合わせるときの順序

自宅の土地を8割減らす制度と配偶者の枠は、両方を同時に使えます。先に土地の減額を行い、その後の課税価格に対して配偶者の枠を当てます

1番目

引き上げの補正をかける
新ルールの対象なら、まず評価額を出し直す

2番目

土地の持分を8割減らす
補正後の土地の金額に対して減額する

3番目

課税価格を確定して税額を出す
基礎控除を引き、法定相続分で分けて税率を掛ける

4番目

配偶者の枠を当てる
各人の税額を出した後に差し引く

重要ポイント:土地の減額は課税価格を出す前、配偶者の枠は税額を出した後です。働くタイミングが違います。

売るときに相続税を取得費に足せる制度

相続したマンションを売る場合、納めた相続税の一部を売却の経費に加えられます。売却益にかかる税金を抑えられる制度です。

使えるのは相続税の申告期限の翌日から3年以内に売った場合です。相続の日から数えると3年10か月が期限になります

注意:この制度と、居住用の家屋を売ったときの3,000万円の控除はどちらか有利な方を選ぶ形になる場合があります。売る前に試算してください。

申告までの手順と期限|必要な書類

相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。マンションの評価に必要な書類の取得には時間がかかるため、早めに動きます

相続が起きてから10か月の流れ

マンションがある場合の進め方です。評価に必要な書類を先に集めておくと、遺産分割の話し合いを数字を見ながら進められます。

1〜2か月

書類を集める
固定資産税の課税明細書・登記事項証明書・戸籍・預貯金の残高証明

2〜4か月

マンションの評価額を出す
4つの数字を読み取り、引き上げの補正がかかるかを判定する

4〜8か月

誰が取得するかを決める
土地を8割減らせる制度が使える人を確かめてから分け方を決める

8〜10か月

申告して納税する
申告書を提出し、現金で納める。名義変更もこの前後で行う

重要ポイント:分け方が決まらないと土地を8割減らせる制度は使えません。期限の3か月前までに方向を固めてください。

参照元:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

マンションの評価に必要な書類

マンションの評価だけで必要になる書類をまとめます。いずれも取得に数日から数週間かかるので、最初に手配します。

【マンションの評価に使う書類】

  • 固定資産税の課税明細書|建物の固定資産税評価額を確認する
  • 登記事項証明書|築年数・総階数・所在階・専有部分の面積・敷地の面積・敷地権の割合を確認する
  • 固定資産評価証明書|課税明細書が見つからない場合に市区町村で取得する
  • 賃貸借契約書と賃料の入金記録|賃貸に出している場合に貸していた事実を示す
  • 区分所有補正率の計算明細書|国税庁の様式に数字を入れて補正率を計算する

登記事項証明書は法務局、課税明細書と評価証明書は市区町村の資産税課で取得します。

重要ポイント:登記事項証明書は必ず取得してください。課税明細書だけでは、補正の判定に使う4つの数字が揃いません。

名義変更は3年以内が義務になった

2024年4月から、相続で取得した不動産の名義変更が義務になりました。取得を知った日から3年以内に手続きをしないと10万円以下の過料の対象になります

相続税の申告期限とは別の期限です。申告が不要な場合でも名義変更は必要になります。

注意:相続税がかからない物件でも名義変更の義務は免れません。評価額が基礎控除以下でも手続きをしてください。

分け方が決まらないときの申告

期限までに分け方が決まらない場合は、いったん法定相続分で分けたものとして申告します。この場合、土地を8割減らせる制度と配偶者の枠は使えません

ただし申告のときに届出書を出しておけば、分け方が決まった後にやり直して減額を受けられます。届出は申告期限内に出す必要があります。

注意:届出書を出し忘れると、後から分け方が決まっても減額を受けられません。未分割で申告する場合は必ず添付してください。

申告後に評価の誤りが見つかったとき

引き上げの補正の判定を誤って評価額を多く申告していた場合、申告期限から5年以内であれば還付を受けられます

とくに敷地権の割合の読み取りを誤っていたケースでは、土地の評価額が実際の2倍になっていることがあります。金額の差は小さくありません。

評価の見直しで還付を受ける手順は、下記の記事で解説しています。

マンションの相続税評価額の計算は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

マンションの評価は、読み取る数字を1つ誤るだけで金額が大きく動きます。複数の税理士から見積りを取って、判断の根拠を比べてください

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

マンションの評価は、登記事項証明書の読み取りと引き上げの補正の判定という2つの作業が重なります。どちらも実務の経験差が出るところです。

【相続税の対応実績がある税理士に依頼する理由】

  • 敷地権の割合の読み取り|複数室を持っている場合や共有している場合に、登記簿の数字をそのまま使わない判断ができる
  • 引き上げの補正の判定|4つの数字を正しく拾い、補正の対象になるかを計算で確かめる
  • 減額を使う順序|補正の後に貸家の減額や土地を8割減らす制度を当てる順序を守る
  • 過大な申告の回避|評価額を多めに申告して払いすぎることを防ぐ
  • 調査を見据えた申告|補正の判定根拠を書面で残し、後から説明できる状態にする

金額で見ます。建物3,500万円・土地の持分1,500万円のマンションと預貯金3,000万円を配偶者と子2人が相続するケースで、敷地権の割合を読み間違えた場合を比べます。

土地の持分の評価課税価格相続税の総額土地を8割減らした場合
正しく1,500万円8,000万円350万円200万円
誤って3,000万円(2倍)9,500万円555万円237万5,000円
1,500万円205万円37万5,000円

表の見方:読み取りを誤るだけで205万円の差が出ます。土地を8割減らす制度を使っても37万5,000円の差が残ります。

計算ロジック:【前提】基礎控除4,800万円、特例適用前の相続税の総額。登記簿の敷地権の割合をそのまま使うと、2室を持っている場合に土地の評価額が2倍になることがあります。

相談するメリット|見積りで比べる3つの判定ポイント

見積りや初回相談では、次の3点を比べると実務力が見えます。どれもマンションの評価に固有の論点です。

判定ポイント1:区分所有補正率の計算実績「国税庁の計算明細書を自分で作成していますか」と聞きます。件数を答えられる事務所は日常的に扱っています。→ 具体的な件数が出る事務所のほうが経験が豊富と判定できます。

判定ポイント2:敷地権の割合の確認方法「同じ建物に2室持っている場合、登記簿の割合をそのまま使いますか」と聞きます。各室ごとの割合に直すと答えられるかが分かれ目です。→ 即答できる事務所は読み取りの落とし穴を知っていると判定できます。

判定ポイント3:賃貸に出している場合の順序「補正と貸家の減額はどちらを先にしますか」と聞きます。補正が先だと答えられるかを確かめます。→ 順序を説明できる事務所は計算の流れを理解していると判定できます。

3点とも答えが返ってくる事務所は、マンションの評価を数多く扱っています。報酬額だけで選ばず、この3点の答え方で比べてください

相談しないまま進めるリスク

自分で計算して申告した場合に起こりやすいことをまとめます。どれも後から気づいても取り返しがつきにくいものです

【相談しないまま進めた場合のリスク】

  • 敷地権の割合の読み間違い|土地の評価額が2倍になり、払いすぎたまま気づかない
  • 補正の判定漏れ|対象なのに補正をかけず、後から修正申告と加算税の対象になる
  • 減額の順序の誤り|貸家の減額を先に当てて、金額が合わなくなる
  • 制度が使える人を誤る|土地を8割減らせる人が取得していれば下がったのに、別の人が取得してしまう
  • 期限内に分け方が決まらない|届出書を出し忘れて、後から減額を受けられなくなる

重要ポイント:払いすぎは申告期限から5年以内なら還付を受けられます。一方で申告漏れは加算税の対象になるため、方向によって影響が違います。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

複数の税理士に同時に打診する流れです。相続開始から7か月以内に依頼先を決めてください。申告期限まで3か月を残しておく必要があります。

STEP1

相続の概要を整理する
亡くなった人の資産内容と概算額、相続人の構成と年齢、遺言の有無をまとめます。マンションは所在地・専有部分の面積・築年数を控えます。

STEP2

一括見積り・相談サービスに依頼する
「相続税申告・相続税の節税・準確定申告」など希望内容を明記し、3〜5社への同時打診を依頼します。マンションは所在地と広さを記載します。財産の種類と相続人の人数はできるだけ正確に伝えてください。フォームの記入は5分程度です。

STEP3

見積りと初回相談を受ける
各事務所から提案内容・試算した相続税額・報酬額が届きます。気になる事務所と初回相談を行い、3つの判定ポイントを確かめます。

STEP4

税理士を選定して正式に依頼する
提案内容の質・説明の丁寧さ・報酬の納得性で選びます。相続開始から7か月以内に決めます。

重要ポイント:STEP2ではマンションの所在地と専有部分の面積を必ず伝えてください。この2つがないと試算の精度が上がりません。

よくある質問

Q1. マンションの相続税評価額は市場価格と同じですか?

同じではありません。2024年からの補正が入る物件でも、市場価格の6割の水準までしか引き上げられません。補正がかからない物件では、市場価格の3割から5割程度にとどまることもあります。

Q2. 引き上げの補正はすべてのマンションに適用されますか?

されません。オフィスなどのテナント物件、一棟まるごと所有の賃貸マンション、地下を除いた階数が2階以下の建物、住居用の部屋が3室以下で全部を自分か親族が使う二世帯住宅、販売用の在庫は対象外です。

これらに当てはまらない場合でも、計算した倍率が1.67倍以下なら補正はかかりません。築年数が長く土地の持分が広い物件は、この帯に収まることがあります。

Q3. 登記簿に書かれた敷地権の割合をそのまま使ってよいですか?

2つの例外があります。同じ建物に2室以上を持っている場合、登記簿の割合は合計になっているため各室ごとの割合に直します。1室を夫婦などで共有している場合は、登記簿には各人の持分を反映した割合が載っていますが、計算には共有者合計の割合を使います。

Q4. 賃貸に出しているマンションは、補正と貸家の減額のどちらを先に計算しますか?

補正が先です。もとの評価額に引き上げ率を掛けて金額を出し直したうえで、その金額を基に貸家の減額を適用します。小規模宅地等の特例も補正後の金額が出発点になります。

Q5. 自分で計算した評価額で申告しても問題ありませんか?

国税庁の計算明細書を使えば補正率まで計算できます。ただし敷地権の割合の読み取りや、減額を使う順序で誤りが起きやすい部分です。また新ルールで計算した金額が必ず認められるとは限らず、国税庁はより高い価額で評価することもあると示しています。

まとめ

マンションの相続税評価額は、手元の2つの書類から数字を読み取れば自分で概算を出せます。つまずくのは算式ではなく、どの数字を使うかの判断です。

  • 計算に使う数字は固定資産税の課税明細書と登記事項証明書から取る
  • 土地の持分の割合は、複数室を持っている場合と共有している場合に登記簿の数字をそのまま使えない
  • 引き上げの補正は築年数・総階数・所在階・土地の持分の広さの4つで決まり、倍率が1.67倍を超えると対象になる
  • 対象にならない形が5つ定められている
  • 賃貸に出している場合は、補正をかけた後の金額に貸家の減額を当てる
  • 3,000万円のマンションだけならどの家族構成でも相続税は0円

今すぐ取るべき行動

  • 固定資産税の課税明細書と登記事項証明書を用意する
  • 登記事項証明書から築年数・総階数・所在階・専有部分の面積・敷地の面積・敷地権の割合の6つを書き出す
  • 同じ建物に2室以上を持っていないか、1室を共有していないかを確認する
  • 国税庁の計算明細書に数字を入れて、補正の対象になるかを判定する
  • 相続税の対応実績がある税理士に一括で見積りを依頼し、3つの判定ポイントで比べる

※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいて作成しています。相続税法や財産評価に関する通達の改正により内容が変わる場合があります。最新の制度については国税庁のホームページまたは税理士にご確認ください。

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