


相続税の更正の請求とは、納めた相続税が本来の額より多かったときに、税務署に税額を減らしてもらい、払いすぎた分を返してもらう手続きです。
反対に税額が足りなかったときは、修正申告で追加の税金を納めます。
更正の請求が必要になるのは、計算ミスだけではありません。未分割で申告したあとに遺産分割がまとまるなど、申告後の出来事で税額が変わることもあります。
期限は原則5年ですが、遺産分割などが理由なら、知った日の翌日から4か月しかありません。
使い忘れた特例も、すべて取り戻せるわけではありません。配偶者の税額軽減は後から使えますが、小規模宅地等の特例は原則使えません。
また、1人の税額が減ると、別の相続人の税額が増えることがあります。
本記事では、期限と対象になるケース、後から使える特例、3つの還付額の試算、他の相続人への影響と手続きの流れを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

更正の請求は、申告期限が過ぎたあとに税額を減らす唯一の手続きです。自分から請求しない限り、払いすぎた相続税は戻ってきません。まず、何が戻るのか、修正申告や訂正申告とどう違うのかを整理します。
更正の請求が認められると、税務署が税額を減らす処分(減額更正)をし、差額が指定の口座に振り込まれます。戻るのは本来の税額を超えて納めていた相続税の本税です。
還付金には「還付加算金」という利息がつくことがあります。更正の請求による還付では、請求した日の翌日から3か月を過ぎた日と、減額更正の翌日から1か月を過ぎた日の早いほうから数え始めます(国税通則法58条1項2号)。
割合は年7.3%と、市中金利をもとに毎年決まる割合(還付加算金特例基準割合)の低いほうです。市中金利に連動するため低い水準で、利息を目当てに請求を遅らせる意味はありません。
還付される額の目安や、還付につながりやすいケースの一覧は、下記の記事で解説しています。

申告のやり直しには3つの呼び名があり、「申告期限の前か後か」と「税額が増えるか減るか」の2つで決まります。迷ったら、この2点だけ確かめてください。
| 手続き | いつ | 税額の向き | 期限 | ペナルティ |
|---|---|---|---|---|
| 訂正申告 | 申告期限の前 | 増える・減る両方 | 申告期限まで | なし |
| 修正申告 | 申告期限の後 | 増える | 税務署の更正があるまで | 延滞税・過少申告加算税の可能性 |
| 更正の請求 | 申告期限の後 | 減る | 原則5年(事由により4か月・2か月) | なし |
表の見方:申告期限の前なら、税額が増えても減っても出し直すだけで済みます。期限を過ぎたあとは、税額が増えるなら修正申告、減るなら更正の請求に分かれます。
重要ポイント:修正申告は自分で出せば税額が確定しますが、更正の請求は税務署が調べて認めたときにだけ税額が減ります。請求を出しただけでは還付は決まりません。
計算ロジック:修正申告は国税通則法19条で「更正があるまで」いつでも出せます。更正の請求は同法23条1項で法定申告期限から5年以内に限られ、相続税法32条の事由は4か月に短くなります。
訂正申告は法律上の手続き名ではなく、申告期限内に申告書を出し直すことの一般的な呼び方です。申告期限内に出し直した申告書が最終的な申告として扱われます。
税務署は、調査で税額が多すぎたと分かれば減額の更正をすることがあります。しかし、申告書がそのまま受け付けられたあと、納めすぎを税務署が見つけて連絡してくれることは期待できません。
相続税は申告納税方式で、税額は納税者が申告して確定させます。納めすぎに気づいた人が自分で更正の請求書を出し、理由と根拠を示すのが前提です。
とくに土地の評価は、同じ土地でも補正を使うかどうかで評価額が変わります。申告を自分でした場合や、相続税の申告に慣れていない事務所に頼んだ場合は、減額の余地を一度点検する価値があります。
申告後の評価の見直しで還付を受ける方法は、下記の記事で解説しています。


更正の請求の期限は、請求する理由によって3つに分かれます。遺産分割などが理由なら、5年が残っていても4か月で締め切られます。自分の理由がどれに当たるかを先に決めてから、期限を数えてください。
計算の誤りや評価の誤りで納めすぎたときの期限は、法定申告期限から5年以内です(国税通則法23条1項)。申告期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月なので、亡くなった日からおよそ5年10か月になります。
| 亡くなった日 | 申告期限 | 更正の請求の期限(5年) |
|---|---|---|
| 2024年5月21日(火) | 2025年3月21日(金) | 2030年3月21日(木) |
| 2025年8月31日(日) | 2026年6月30日(火) | 2031年6月30日(月) |
| 2026年1月20日(火) | 2026年11月20日(金) | 2031年11月20日(木) |
| 2026年9月14日(月) | 2027年7月14日(水) | 2032年7月14日(水) |
表の見方:亡くなった日と同じ日付の10か月後が申告期限で、その5年後が更正の請求の期限です。8月31日のように10か月後の月に同じ日付がない場合は、その月の末日が申告期限になります。
重要ポイント:期限は「亡くなった日」ではなく「亡くなったことを知った日」から数えます。知った日が遅れた相続人は、その人の申告期限から5年を数えてください。
計算ロジック:期間は翌日から数え、10か月後の同じ日付の前日に終わります(国税通則法10条1項)。表の日付はすべて平日の例で、期限が土日・祝日に当たるときは翌日に延びます(同条2項)。
申告期限の数え方と、土日や月末に当たる場合の扱いは、下記の記事で解説しています。

申告後に遺産分割が成立したときなど、相続税法32条1項に当たる出来事が理由の場合は、その出来事が起きたことを知った日の翌日から4か月以内に請求しなければなりません。
この4か月は、5年を過ぎたあとに出来事が起きた場合に期限を延ばす働きがあります。一方で、5年の途中で起きた場合も4か月で締め切られるため、実際には期限が短くなる場面のほうが多くなります。
例えば、2028年3月10日(金)に遺産分割協議が成立したなら、期限は2028年7月10日(月)です。申告期限から5年が残っていても、この日を過ぎると分割を理由とする更正の請求はできません。
分割の成立日は、協議書に全員が署名押印した日や、調停が成立した日、審判が確定した日です。成立したらすぐに税額を計算し直す段取りを組んでください。
申告の前提になった事実が、あとの裁判の判決や和解で違っていたと確定した場合は、確定した日の翌日から2か月以内に請求できます(国税通則法23条2項)。
ただし、この2か月は5年の期限が過ぎたあとに満了する場合に限って使える決まりです。5年の途中で判決が出たなら、通常どおり5年の期限まで請求できます。
「後発的理由」と呼ばれるこの期限は、相続では遺産の帰属を争う裁判などで問題になります。遺産分割や遺留分のように相続税法32条に当たる出来事は、同条の4か月の規定で請求します。
理由と期限の組み合わせを1つの表にまとめました。自分の理由を左の列で探し、起算日と期限を右に読んでください。
| 更正の請求の理由 | 数え始める日 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 土地の評価が高すぎた・債務を入れ忘れた・控除の計算を誤った | 法定申告期限 | 5年以内 | 国税通則法23条1項 |
| 未分割で申告したあと遺産分割が成立した | 成立を知った日の翌日 | 4か月以内 | 相続税法32条1項1号 |
| 認知・廃除・放棄の取消しなどで相続人が変わった | 変わったことを知った日の翌日 | 4か月以内 | 相続税法32条1項2号 |
| 遺留分侵害額として支払う額が確定した | 確定を知った日の翌日 | 4か月以内 | 相続税法32条1項3号 |
| 遺言書が見つかった・遺贈が放棄された | 知った日の翌日 | 4か月以内 | 相続税法32条1項4号 |
| 判決で申告の前提事実が違うと確定した(5年経過後) | 確定した日の翌日 | 2か月以内 | 国税通則法23条2項 |
表の見方:上の1行だけが「申告期限から5年」で、残りは出来事から数える期限です。黄色の行は相続でいちばん多い、未分割のあとの分割成立です。
重要ポイント:1つの相続で理由が2つ重なることがあります。理由ごとに期限を数え、早いほうに合わせて準備してください。
計算ロジック:相続税法32条1項は「事由が生じたことを知つた日の翌日から四月以内に限り」と定めています。国税通則法23条2項は、同条1項の5年より後に満了する場合に限って適用されます。
参照元:国税庁 B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続
参照元:e-Gov 法令検索 国税通則法(第23条 更正の請求)

更正の請求ができるのは、大きく分けて「申告の時点で計算が誤っていた」場合と「申告後の出来事で税額が変わった」場合です。どちらに当たるかで期限と添付書類が変わります。代表的なケースを順に見ていきます。
申告時点ですでに計算が法律どおりでなかった場合です。期限は申告期限から5年で、誤りを示す資料が必要になります。よくある誤りは次のとおりです。
評価の誤りは「別の計算方法もある」というだけでは認められません。当初の評価のどこが評価通達に沿っていなかったかを、図面や現地の資料で説明できることが条件です。
差し引ける債務と葬式費用の範囲は、下記の記事で解説しています。

申告期限までに遺産分割がまとまらないと、法定相続分で取得したものとして申告します(相続税法55条)。その後に分割が成立すると、各人の取得額が変わり、税額が減る人は4か月以内に更正の請求をします。
未分割の申告では、配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も使えません。分割が成立してはじめて特例を使えるようになるため、還付額が大きくなりやすいのがこのケースです。
ただし、特例を使うには、当初の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を付けている必要があります。付け忘れていると、原則として分割が成立しても特例は使えません。
未分割で申告する方法と、あとから特例を取り戻す手順は、下記の記事で解説しています。

申告後に、裁判で認知された子がいた、相続人の廃除やその取消しが確定した、相続放棄が取り消されたなどで相続人が変わる場合です。相続人が増えると基礎控除が増え、1人あたりの税額が下がることがあります。
例えば相続人が子2人から3人になると、基礎控除は4,200万円から4,800万円に増えます。相続税の総額が下がるうえ、取得する人が増えるため、先に申告した人の税額は減るのが普通です。
この場合も期限は、相続人が変わったことを知った日の翌日から4か月です。新しく加わった相続人は、新たに申告が必要になることがあります。
遺留分侵害額の請求を受けて支払う金額が確定した人は、その分だけ取得した財産が減るため、税額が減る側として更正の請求ができます。受け取った側は取得額が増えるため、修正申告や期限後申告が必要になります。
遺産分割のあとで遺贈の遺言書が見つかった場合や、遺贈を受けた人が放棄した場合も同じです。取得額が減る人が4か月以内に請求します。
相続税法32条1項が定める事由は全部で10あります。多くの解説は1〜4号で止まっていますが、次の表で全体を確認してください。
| 号 | 事由(かみくだいた内容) |
|---|---|
| 1号 | 未分割の財産が分割され、取得額が法定相続分での計算と違ってきた |
| 2号 | 認知・廃除・相続の回復・相続放棄の取消しなどで相続人が変わった |
| 3号 | 遺留分侵害額の請求に基づき支払う金額が確定した |
| 4号 | 遺贈の遺言書が見つかった、または遺贈が放棄された |
| 5号 | 条件付きで許可された物納が取り消されることになった |
| 6号 | 1〜5号に準ずるものとして政令で定める事由が生じた |
| 7号 | 特別縁故者への財産分与や特別寄与料の額が確定した(相続税法4条) |
| 8号 | 申告期限から3年を過ぎて、税務署長の承認を受けて分割し、配偶者の税額軽減を使えるようになった |
| 9号 | 国外転出時の課税で猶予されていた所得税を、相続人が納めることになった |
| 10号 | 贈与税の申告に入れた財産が、相続開始の年の贈与として相続税の課税価格に含まれるものだった(贈与税の更正の請求) |
表の見方:1〜4号は多くの相続で起こりうる事由、5〜10号は特定の制度を使った場合に限られる事由です。どの号でも、事由を知った日の翌日から4か月が期限です。
重要ポイント:8号の承認分割は、訴訟などで3年以内に分けられなかった場合の救済です。3年を過ぎた日の翌日から2か月以内に、税務署長へ承認申請を出していないと使えません。
遺留分の請求があった場合の相続税の計算と手続きは、下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告

申告で特例を使い忘れたとき、更正の請求で取り戻せるかどうかは特例ごとに条文で決まっています。とくに相続でよく使う2つの特例は、同じ「使い忘れ」でも結論が正反対です。
配偶者の税額軽減は、配偶者が取得した財産のうち1億6,000万円か法定相続分までは相続税がかからない制度です。申告で使い忘れても、更正の請求で後から適用を受けられます。
根拠は相続税法19条の2第3項です。適用の条件として、申告書だけでなく「国税通則法第二十三条第三項に規定する更正請求書」に明細を記載した書類を添付した場合も認めると書かれています。
そのため、「使い忘れた特例は任意の規定なので更正の請求では直せない」と一括りにするのは、配偶者の税額軽減については誤りです。期限は通常どおり申告期限から5年です。
配偶者の税額軽減の上限と、申告後に適用する方法は、下記の記事で解説しています。

自宅や事業用の土地の評価を最大80%下げる小規模宅地等の特例は、申告書に適用を受ける旨を書いていないと、原則として後から使えません。
租税特別措置法69条の4第7項は、適用の条件を「相続税の申告書(期限後申告書・修正申告書を含む)」への記載と書類の添付に限っています。配偶者の税額軽減と違い、更正請求書は挙げられていません。
税務署長がやむを得ない事情があると認めたときは、書類を後から出して適用を受けられる規定もあります(同条8項)。ただし、単なる使い忘れがこれに当たるとは考えにくく、当てにはできません。
小規模宅地等の特例の要件と、誰が相続すると得かは、下記の記事で解説しています。

未分割で申告した場合は、事情が違います。当初の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を付けておけば、3年以内に分割が成立したとき、配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も使えます。
このときの手続きが、分割の成立を知った日の翌日から4か月以内の更正の請求です。小規模宅地等の特例についても、租税特別措置法69条の4第5項が相続税法32条の更正の請求を準用しています。
3年以内に分割できない事情がある場合は、3年を過ぎた日の翌日から2か月以内に、税務署長の承認を受けるための申請書を出します。承認を受けると、分割できることになった日の翌日から4か月以内の分割で特例を使えます。
主な特例と控除について、申告で使わなかった場合に更正の請求で追加できるかを並べました。「できない」側は、申告の前に使うかどうかを決めておく必要があります。
| 特例・控除 | 更正の請求で後から追加 | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | できる | 相続税法19条の2第3項が更正請求書を明記 |
| 未成年者控除・障害者控除 | できる | 申告書への記載を適用の条件としていない(相続税法19条の3・19条の4) |
| 相次相続控除 | できる | 申告書への記載を適用の条件としていない(相続税法20条) |
| 債務控除・葬式費用 | できる | 申告書への記載を適用の条件としていない(相続税法13条) |
| 生命保険金・死亡退職金の非課税枠 | できる | 申告書への記載を適用の条件としていない(相続税法12条) |
| 小規模宅地等の特例 | できない(原則) | 租税特別措置法69条の4第7項が申告書への記載に限る |
| 特定計画山林の特例 | できない(原則) | 租税特別措置法69条の5第7項が申告書への記載に限る |
| 農地・非上場株式の納税猶予 | できない | 期限内の申告書への記載が条件(同法70条の6・70条の7の2) |
表の見方:「できる」は、適用の条件に申告書への記載がないか、更正請求書でもよいと書かれている特例です。赤い行は、申告書に書いていないと使えない特例です。
重要ポイント:未分割で申告して分割見込書を付けていた場合は、赤い行のうち小規模宅地等の特例も分割後に使えます。分割見込書は、分割がまとまらない申告で必ず付けてください。
計算ロジック:判定は各条文の「申告書に記載がある場合に限り適用する」という書き方があるかどうかで行っています。この書き方があり、更正請求書が含まれていない特例は、原則として後から追加できません。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
参照元:e-Gov 法令検索 租税特別措置法(第69条の4 小規模宅地等の特例)

還付額は、理由と家族の分け方で大きく変わります。同じ「使い忘れ」でも、戻る額と戻らない額に分かれます。ここでは、土地評価の誤り・分割の成立・特例の使い忘れの3つを同じ前提で試算します。
【前提】相続人は子2人(母は先に死亡)で、遺産を半分ずつ相続しました。当初は課税価格1億6,000万円で申告しましたが、土地の補正の使い忘れで評価が2,000万円高すぎたと分かったケースです。
| 項目 | 当初の申告 | 正しい計算 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 課税価格の合計 | 1億6,000万円 | 1億4,000万円 | −2,000万円 |
| 子A・子Bそれぞれの相続税 | 1,070万円 | 780万円 | −290万円 |
| 2人の相続税の合計 | 2,140万円 | 1,560万円 | 580万円の還付 |
表の見方:評価が2,000万円下がると、2人の相続税の合計は2,140万円から1,560万円に下がります。子1人あたり290万円、2人で580万円が更正の請求で戻ります。
重要ポイント:評価の誤りは相続人全員の税額に影響します。還付を受けるには、子Aと子Bがそれぞれ更正の請求書を出す必要があります。1人だけ出しても、もう1人の分は戻りません。
計算ロジック:基礎控除4,200万円を引いた課税遺産を法定相続分で分け、速算表で総額を出しています。当初は1億1,800万円を半分にした5,900万円×30%−700万円=1,070万円が1人分です。
正しい計算では4,900万円×20%−200万円=780万円になります。
【前提】相続人は母と子2人で、遺産は自宅の土地6,000万円(330平方メートル以内)とその他1億4,000万円の計2億円です。分割見込書を付けて未分割で申告しました。
その後、母が自宅と預金4,000万円、子2人が残りを5,000万円ずつ取得する分割が成立したケースです。
| 相続人 | 未分割での申告 | 分割後の正しい税額 | 更正の請求で戻る額 |
|---|---|---|---|
| 母 | 1,350万円 | 0円 | 1,350万円 |
| 子A | 675万円 | 506.6万円 | 168.4万円 |
| 子B | 675万円 | 506.6万円 | 168.4万円 |
| 合計 | 2,700万円 | 1,013.2万円 | 1,686.8万円 |
表の見方:未分割では特例がどちらも使えず、家族全体で2,700万円を納めていました。分割後は小規模宅地等の特例で自宅の評価が1,200万円になり、母の税額は配偶者の税額軽減で0円になります。
重要ポイント:家族全体で1,686.8万円が戻る計算ですが、分割の成立を知った日の翌日から4か月を過ぎると、1円も戻りません。
計算ロジック:分割後の課税価格の合計は、母5,200万円(1,200万円+4,000万円)と子5,000万円ずつの1億5,200万円です。相続税の総額1,540万円を取得割合で按分し、子1人は1,540万円×5,000÷15,200で506.6万円です。
【前提】相続人は母と子2人で、分割は申告前に済んでいます。母が自宅の土地6,000万円(330平方メートル以内)と預金2,000万円、子2人が6,000万円ずつを取得しました。正しく申告すれば、家族の相続税は合計1,215.8万円です。
| 申告の内容 | 家族全体の相続税 | 正しい申告との差 | 更正の請求で |
|---|---|---|---|
| 両方使った(正しい申告) | 1,215.8万円 | ― | ― |
| 配偶者の税額軽減だけ使い忘れた | 1,540万円 | +324.2万円 | 324.2万円が戻る |
| 小規模宅地等の特例だけ使い忘れた | 1,620万円 | +404.2万円 | 原則戻らない |
表の見方:配偶者の税額軽減を使い忘れた場合は、母が納めた324.2万円を更正の請求で取り戻せます。小規模宅地等の特例を使い忘れた場合は、子2人が810万円ずつ納めることになり、正しい申告より404.2万円多いまま残ります。
重要ポイント:使い忘れた金額が小さいほうが戻り、大きいほうが戻らないという逆転が起きています。申告前の確認は、小規模宅地等の特例を最優先にしてください。
計算ロジック:小規模宅地等の特例を使わないと課税価格の合計が2億円になり、相続税の総額は2,700万円です。子1人の税額は2,700万円×6,000÷20,000=810万円です。特例を使えば総額1,540万円で、子1人は607.9万円です。
3つのパターンを並べると、戻る額の大きさは「理由」より「特例が使えるかどうか」で決まることが分かります。
| パターン | 理由 | 期限 | 戻る額 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| A | 土地の評価が高すぎた | 申告期限から5年 | 580万円 | 相続人がそれぞれ請求する |
| B | 未分割のあと分割が成立 | 知った日の翌日から4か月 | 1,686.8万円 | 分割見込書がないと原則として特例は使えない |
| C | 配偶者の税額軽減の使い忘れ | 申告期限から5年 | 324.2万円 | 母1人が請求する |
| C | 小規模宅地等の特例の使い忘れ | ― | 0円(404.2万円が戻らない) | 申告前に決めるしかない |
表の見方:上の3行は更正の請求で取り戻せるケース、黄色の最終行は取り戻せないケースです。いちばん戻る額が大きいのは、分割の成立で2つの特例が同時に使えるようになるパターンBです。
重要ポイント:パターンBでは全員の税額が下がりましたが、分け方によっては税額が増える相続人も出ます。増える人がいるときは、その人の修正申告も同時に進めてください。
計算ロジック:3パターンとも相続税の総額を法定相続分で出し、各人の課税価格の割合で按分しています。配偶者の税額軽減は、1億6,000万円と母の課税価格の少ないほうに対応する税額を差し引いています。

相続税は家族全体で総額を出し、それを取得額で割り振ります。そのため、1人の税額が減ると、別の相続人の税額が増えることがあります。増える人に何が起きるのかを、条文の順に整理します。
パターンBと同じ遺産で、分割の内容だけを変えてみます。母が自宅と預金2,000万円、子Aが8,000万円、子Bが4,000万円を取得したケースです。
| 相続人 | 未分割での申告 | 分割後の正しい税額 | 差 | 必要な手続き |
|---|---|---|---|---|
| 母 | 1,350万円 | 0円 | −1,350万円 | 更正の請求 |
| 子A | 675万円 | 810.5万円 | +135.5万円 | 修正申告 |
| 子B | 675万円 | 405.3万円 | −269.7万円 | 更正の請求 |
表の見方:母と子Bは税額が下がるので更正の請求をします。子Aは法定相続分の5,000万円より多い8,000万円を取得したため、税額が135.5万円増えて修正申告が必要になります。
重要ポイント:家族全体では税額が下がっていても、個人ごとに見ると増える人がいます。還付を受ける人だけで手続きを進めると、増える人の手続きが抜け落ちます。
計算ロジック:相続税の総額はパターンBと同じ1,540万円です。子Aの税額は1,540万円×8,000÷15,200で810.5万円、子Bは1,540万円×4,000÷15,200で405.3万円です。
遺産分割の成立など相続税法32条1項1〜6号の事由で税額が不足した人は、修正申告書を出すことが「できる」と定められています(相続税法31条1項)。義務ではなく、出す期限もありません。
ただし、出さずに放っておけば済むわけではありません。ほかの相続人の更正の請求を認めて減額の更正をした税務署は、税額が増える人の分も更正します(相続税法35条3項)。
この更正ができるのは、更正の請求があった日から1年を過ぎる日と、通常の更正の期限(申告期限から5年)の遅いほうまでです。家族の誰かが請求すれば、増える人の分もほぼ確実に見直されると考えてください。
本来、申告期限のあとに税額が増えると延滞税がかかります。しかし、遺産分割の成立など32条1項1〜6号の事由による増加には、延滞税の特別な扱いがあります(相続税法51条2項)。
| 増える人の対応 | 延滞税を計算しない期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 自分で修正申告を出す | 申告期限の翌日から修正申告書を出した日まで | 相続税法51条2項1号ハ |
| 出さずに税務署の更正を待つ | 申告期限の翌日から、更正通知書が出た日と「事由の翌日から4か月を過ぎる日」の早いほうまで | 相続税法51条2項2号ハ |
表の見方:自分で修正申告を出せば、出した日までの延滞税はかかりません。税務署の更正を待つと、事由の翌日から4か月を過ぎたあとの日数には延滞税がかかります。
重要ポイント:増える人も、分割の成立から4か月以内に修正申告を出して納付すれば延滞税の心配がなくなります。還付を受ける人の更正の請求と、同じ時期にそろえるのが合理的です。
計算ロジック:修正申告で増えた税額は、修正申告書を出した日が納期限です。調査の通知の前に自分から出した修正申告には、過少申告加算税もかかりません(国税通則法65条6項)。
分割が成立してから4か月の間に、家族全員の手続きを終える必要があります。還付を受ける人と増える人の手続きを、1つの計算でまとめて進めてください。
分割の成立日と4か月後の日付を確定する
協議書に全員が署名押印した日(調停なら成立日)を確認し、4か月後の期限を家族全員で共有します。
⬇
家族全員の税額を1つの計算で出し直す
分割後の取得額で相続税の総額と各人の税額を計算し、減る人と増える人を分けます。
⬇
減る人は更正の請求、増える人は修正申告を準備する
同じ評価額と計算を使い、更正の請求書と修正申告書を並行して作ります。
⬇
4か月以内に全員分を提出し、増える人は納付する
修正申告書を出す日に増えた税額を納めれば、延滞税はかかりません。
手続きを別々の税理士に頼むと、使う評価額や計算がずれることがあります。相続人の間で意見が分かれていない限り、1つの事務所で全員分をまとめて計算するのが確実です。
参照元:e-Gov 法令検索 相続税法(第31条・第32条・第35条・第51条)

更正の請求は、請求書と根拠の書類をそろえて税務署に出し、税務署の調査を受けて認められる流れです。書類で根拠を示せないと、正しい請求でも認められません。書類・書き方・流れの順に確認します。
どの理由でも共通して必要なのは、更正の請求書と、課税価格や税額の計算を書いた次葉・付表です。そのうえで、理由ごとに事実を証明する書類を付けます。
| 更正の請求の理由 | 主な証明書類 |
|---|---|
| 土地の評価の誤り | 訂正後の評価明細書、測量図・公図、現地の写真、補正の根拠資料 |
| 債務・葬式費用の計上漏れ | 借入金の残高証明書、契約書、請求書、領収書 |
| 未分割のあとの分割成立 | 遺産分割協議書(全員の印鑑証明書つき)、調停調書、審判書 |
| 相続人の異動 | 認知や廃除の裁判の確定を示す書類、戸籍謄本 |
| 遺留分侵害額の確定 | 合意書、調停調書、判決書、支払いの記録 |
| 遺言書の発見・遺贈の放棄 | 遺言書の写し(自筆証書遺言は検認済みのもの)、放棄を示す書類 |
表の見方:左の理由に合わせて右の書類を用意します。どの理由でも、更正の請求書と次葉は国税庁のホームページから様式を取得できます。
重要ポイント:実務では、訂正後の内容で作った申告書一式を参考として付けることが多くあります。当初の申告のどこをどう変えたかが一目で分かる形にすると、税務署の確認が早く進みます。
参照元:国税庁 相続税の更正の請求書(令和5年1月分以降)の様式
更正の請求書には、更正後の税額、請求の理由、請求するに至った事情の詳細、更正前の税額などを書きます(国税通則法23条3項)。いちばん審査に効くのが「請求の理由」の書き方です。
【記載例1】遺産分割が成立した場合
「令和○年○月○日、共同相続人間で遺産分割協議が成立し、申告期限後3年以内の分割見込書に基づき配偶者の税額軽減及び小規模宅地等の特例を適用したため(相続税法第32条第1項第1号)」
【記載例2】土地の評価に誤りがあった場合
「○○所在の宅地について、不整形地補正を適用せずに評価していたため、財産評価基本通達20に基づき評価額を訂正した(国税通則法第23条第1項第1号)」
記載例のように、日付・事実・適用した条文を1〜2文で書き、詳しい計算は添付書類に回します。長い説明より、根拠がどの書類のどこにあるかを示すほうが審査が進みます。
提出先は納税地(亡くなった人の住所地)を所轄する税務署です。e-Taxでも提出できますが、請求の内容によっては書面での提出が必要になります。
当初の申告書と根拠資料をそろえる
申告書の控え一式と、減額の理由を示す書類を用意し、理由に合った期限を確認します。
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更正の請求書と次葉・付表を作る
国税庁の様式で、更正前と更正後の課税価格・税額を記入し、請求の理由を書きます。
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納税地の税務署に提出する
e-Taxか、書面の持参・郵送で提出します。税務署から照会や追加書類の依頼があれば答えます。
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更正通知書と還付金を受け取る
認められると更正通知書と国税還付金振込通知書が届き、指定口座に振り込まれます。
審査の期間は一律に決まっていません。処理が請求から3か月を超えた場合は、その後の期間について還付加算金が付いて返ってきます。
更正の請求を出しても、請求の対象になっている税金の納付は猶予されません(国税通則法23条5項)。この決まりが問題になるのは、税額が確定していて、まだ納めていない税金がある場合です。
例えば、延納を使って分割で納めている人が、評価の誤りに気づいて更正の請求をした場合です。請求中も延納の分納は予定どおり続けなければならず、減額が認められてから差額が調整されます。
「どうせ減るから」と納付を止めると、減額が認められなかった部分や、認められるまでの期間について延滞税がかかります。税務署長が相当の理由を認めたときに限り、徴収を猶予する例外があります。

更正の請求は、出せば通る手続きではありません。期限・特例の選び直し・根拠の不足・書類の出し忘れの4つが、認められない典型です。事例と対策を確認したうえで、認められなかったときの対応を整理します。
認められない請求の多くは、請求を出す前に避けられたものです。自分の請求が次の4つに当たらないか、先に確かめてください。
【事例1】分割の成立から5か月後に請求した
申告期限から2年で分割が成立し、「5年あるから」と5か月後に請求しましたが、分割を理由とする請求は4か月が期限のため認められませんでした。
対策:分割が成立した日に、4か月後の日付を家族全員で共有してください。
【事例2】小規模宅地等の特例を後から追加した
分割済みで申告した際に特例を書き忘れ、更正の請求で追加しようとしましたが、申告書への記載が条件の特例のため認められませんでした。
対策:申告前に、特例を使える宅地がないかを必ず確認してください。
【事例3】「評価が高すぎる」とだけ書いて請求した
別の評価方法なら安くなると考えて請求しましたが、当初の評価のどこが通達に沿っていないかを示せず、理由がないと通知されました。
対策:減額の根拠を、図面・写真・評価明細書で説明できる状態にしてから請求してください。
【事例4】分割見込書を付けずに未分割で申告していた
分割の成立後に配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例で更正の請求をしましたが、当初の申告書に分割見込書がなく、特例は使えませんでした。
対策:未分割で申告するときは、分割見込書を申告書と一緒に必ず出してください。
チェックリスト:請求を出す前の確認項目
重要ポイント:請求が認められないと、還付を見込んでいた資金の計画が狂います。還付金をあてにした支払いは、減額の通知が届くまで決めないでください。
請求が認められないと、税務署から「更正をすべき理由がない旨の通知書」が届きます。納得できない場合は、通知を受けた日の翌日から3か月以内に不服を申し立てられます(国税通則法77条1項)。
「更正をすべき理由がない旨の通知書」が届く
通知を受けた日の翌日から3か月以内に、不服申立ての方法を選びます。
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再調査の請求か審査請求を選ぶ
税務署長への再調査の請求か、国税不服審判所長への審査請求のどちらかを出します。
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再調査の結果にも不服なら審査請求
再調査の決定書が届いた日の翌日から1か月以内に、審査請求ができます。
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裁決にも不服なら裁判所へ
審査請求の裁決があったことを知った日から6か月以内に、取消訴訟を起こせます。
再調査の請求と審査請求は、どちらを先に選んでもかまいません。税務署の判断に事実の誤解がありそうなら再調査の請求、法律の解釈が争点なら最初から審査請求を選ぶのが一般的です。
参照元:国税不服審判所 不服申立手続等
5年の期限を過ぎた計算の誤りは、原則として取り戻せません。期限後に残る道は、申告後の出来事に当たる場合に限られます。
| 状況 | 取り戻せるか | 理由 |
|---|---|---|
| 5年を過ぎてから土地の評価の誤りに気づいた | 原則できない | 国税通則法23条1項の5年が過ぎている |
| 5年を過ぎてから遺産分割が成立した | 4か月以内ならできる | 相続税法32条1項1号(分割見込書と承認が必要な場合あり) |
| 5年を過ぎてから遺留分の支払額が確定した | 4か月以内ならできる | 相続税法32条1項3号 |
| 5年を過ぎてから判決で申告の前提事実が違うと確定した | 2か月以内ならできる | 国税通則法23条2項 |
表の見方:赤い行だけが、期限を過ぎたら戻らないケースです。残りの行は、出来事が起きた日から新しい期限を数えます。
重要ポイント:単なる見落としは、期限を過ぎると救済されません。申告から5年が近い人は、今のうちに申告内容を点検してください。

申告を見直すと、財産の漏れで増える項目と、評価の誤りで減る項目が同時に見つかることがあります。このときは項目ごとではなく、差し引きした税額の向きで手続きを決めます。
同じ人の申告で、預金の計上漏れ(増える)と土地の評価の誤り(減る)が両方見つかった場合、2つの手続きを別々に出すのではなく、すべての訂正を反映した税額と当初の税額を比べます。
| 見つかった誤り | 差し引きの結果 | 出す手続き |
|---|---|---|
| 増える項目>減る項目 | 税額が増える | 修正申告(減る項目も反映して出す) |
| 増える項目<減る項目 | 税額が減る | 更正の請求(増える項目も反映して出す) |
| 増える項目=減る項目 | 税額が変わらない | 手続きは原則不要 |
表の見方:増える項目と減る項目を両方反映した「正しい税額」を出し、当初の税額より多いか少ないかで手続きを選びます。
重要ポイント:減る項目だけを取り出して更正の請求を出すと、調べた税務署に増える項目を指摘されます。見つけた誤りは、増える側も含めて全部反映してください。
税務調査で財産の申告漏れを指摘されたときも、同じ考え方をします。調査の中で、評価の誤りなど税額が減る項目を見つけていれば、その場で主張して差し引いてもらうことができます。
調査が終わって修正申告を出したあとでも、申告期限から5年以内であれば、別の減額項目について更正の請求はできます。ただし、調査で議論した論点を蒸し返す請求は認められにくくなります。
調査の前に自分から修正申告を出せば過少申告加算税はかからず、調査の通知後は5%〜、調査後は10%〜と重くなります。減る項目を先に見つけておけば、増える額そのものを小さくできます。
税務調査で調べられる範囲と当日の対応は、下記の記事で解説しています。

差し引きで税額が増える場合は修正申告です。修正申告は税務署の更正があるまでいつでも出せますが、早いほど延滞税が少なくなります。
修正申告書の作り方と、2026年の延滞税・加算税の割合は、本体の記事でまとめています。更正の請求と同時に出す場合は、使う評価額と計算をそろえることが大切です。


ここまで見たとおり、更正の請求は期限・特例の条文・家族全員の再計算が絡みます。同じ使い忘れでも、特例の種類しだいで数百万円が戻るか戻らないかに分かれます。請求を出す前の判定が結果を左右します。
更正の請求書の様式を埋めること自体は難しくありません。難しいのは、戻る余地の洗い出しと、根拠の示し方です。
相続税の対応実績がある税理士に相談する理由
パターンCでは、配偶者の税額軽減の使い忘れなら324.2万円が戻る一方、小規模宅地等の特例の使い忘れでは404.2万円が戻りません。申告の前か後かで、税理士の判定の価値が大きく変わります。
見積りを並べると報酬額を比べられますが、差が大きいのは戻る余地の見つけ方です。次の3点を各事務所に同じ質問で聞き、答えを突き合わせてください。
判定ポイント1:減額の余地をいくつ挙げるか
「当初の申告書を見て、減額できる余地はいくつありますか」と聞きます。A事務所は土地の補正1点、B事務所は土地の補正に加えて債務の計上漏れと非課税枠の使い忘れの3点を挙げたという答えでした。
→ B事務所の方が、申告書全体を点検する実務経験が豊富と判定できます。
判定ポイント2:家族全員の税額を計算するか
「税額が増える相続人がいないか、全員分を計算してもらえますか」と聞きます。A事務所は依頼者本人の還付額だけ、B事務所は全員の税額と増える人の修正申告まで出すという答えでした。
→ B事務所の方が、税務署の更正で後から延滞税が生じる形を避けられると判定できます。
判定ポイント3:認められなかった場合の対応が見積りに入っているか
「理由がないと通知された場合、不服申立てまで対応しますか」と聞きます。A事務所は請求書の提出まで、B事務所は再調査の請求まで対応範囲に入れているという答えでした。
→ B事務所の方が、更正の請求の実務を最後まで担える体制だと判定できます。
自分たちだけで判断すると、期限か特例の条文のどちらかで取りこぼしが起きやすくなります。
相談しないまま進めると起きること
パターンBの家族が4か月を過ぎてしまうと、1,686.8万円の還付がすべて受けられなくなります。分割の成立は、還付の手続きを始める合図と考えてください。
計算ロジック:パターンBの還付額は、母1,350万円と子2人の168.4万円ずつの合計です。分割を理由とする請求は相続税法32条1項の4か月が期限で、申告期限から5年が残っていても延長されません。
更正の請求の報酬は、還付額に応じた成功報酬で決める事務所が多くあります。料率の差より、見つけてもらえる還付額の差のほうが手取りを大きく動かします。次の表は仮の料率で比べた例です。
| 相続財産規模 | A税理士の見積り | B税理士の見積り | 手取りの差 |
|---|---|---|---|
| 1億円 | 還付見込み200万円 報酬 還付額の30%(60万円) 手取り140万円 |
還付見込み300万円 着手金10万円+還付額の20%(70万円) 手取り230万円 |
B税理士が90万円多い |
| 2億円 | 還付見込み500万円 報酬 還付額の30%(150万円) 手取り350万円 |
還付見込み700万円 着手金10万円+還付額の20%(150万円) 手取り550万円 |
B税理士が200万円多い |
| 3億円 | 還付見込み800万円 報酬 還付額の30%(240万円) 手取り560万円 |
還付見込み1,200万円 着手金10万円+還付額の20%(250万円) 手取り950万円 |
B税理士が390万円多い |
表の見方:A税理士は着手金なしで料率が高く、B税理士は着手金が必要でも料率が低い例です。還付見込みの差は、見つけた減額の余地の数の違いを想定しています。
重要ポイント:成功報酬は、還付が認められた額に掛けるのか、請求した額に掛けるのかで実際の負担が変わります。報酬の計算の基準を、見積書で必ず確かめてください。
計算ロジック:手取りは還付見込み額から報酬を引いた額です。表の料率と還付見込みは比較のための仮の数字で、実際の報酬は事務所と案件で異なります。
相続の概要を整理する
被相続人の資産内容・資産額概算・相続人構成・年齢・遺言の有無をメモにまとめます。申告書の控えと、申告期限・分割の成立日も書き出します。
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一括見積り・相談サービスに依頼する
複数の税理士事務所に一括で見積りを依頼できるサービスを使います。希望内容を「相続税申告・相続税の節税・確定申告・準確定申告など」と明確に記し、複数の税理士(目安3~5の事務所)への同時打診を依頼します。
不動産がある場合は所在地・広さなども記載します。フォームでは「財産の種類」「相続人の人数」をできるだけ正確に伝えると見積りの精度が上がります。フォーム記入自体は5分程度です。
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見積りと初回相談を受ける
各事務所から「提案内容」「試算相続税額」「報酬額」が記載された見積りが届きます。減額の余地をいくつ挙げているかを確認し、気になる事務所と初回相談をします。
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税理士を選定・正式依頼する
「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で事務所を選びます。これから申告する方は相続開始から7ヶ月以内に税理士を決めてください。分割が成立した方は、4か月の期限から逆算して早めに依頼します。
聞く順番より、同じ質問をすべての事務所に投げて答えを並べることが大事です。
重要ポイント:更正の請求は、当初の申告をした事務所以外に頼むこともできます。申告をした事務所に言い出しにくい場合は、別の事務所の意見を聞くのも一つの方法です。
見積書は成功報酬の基準額と対応範囲が書面で出ているかを先に確かめてください。
すでに申告を終えた相続で、別の税理士に見直しを頼む場合の進め方は、下記の記事で解説しています。

重要ポイント:見積り比較では、料率の安さだけでなく、見込まれる還付額と対応範囲を合わせて判断してください。
計算や評価の誤りが理由なら、原則として戻りません。ただし、5年を過ぎてから遺産分割の成立や遺留分の支払額の確定などが起きた場合は、それを知った日の翌日から4か月以内に請求できます。判決で申告の前提事実が違うと確定した場合は、2か月以内です。
できます。国税庁のホームページで様式を取得し、e-Taxか書面で提出します。ただし、土地の評価の誤りのように根拠の説明が必要な請求は、書類が足りないと認められません。分割の成立による請求も、家族全員の税額の計算が必要になります。
一律の期間は決まっていません。税務署の照会や追加の書類の依頼があると長くなります。請求した日の翌日から3か月を過ぎると、還付金に還付加算金という利息がつき始めます。
請求は税額が減る人ごとの手続きなので、1人で出すことはできます。ただし、遺産分割の成立などが理由のときは、税務署が税額の増える相続人を更正します。土地の評価の誤りのように全員の税額が減る理由なら、ほかの相続人も請求しないと、その人の分は戻りません。
税務署は請求の内容を確かめるための調査を行い、書類の提出や説明を求めることがあります。その過程で、申告漏れなど税額が増える項目が見つかれば、あわせて指摘されます。請求を出す前に、増える項目がないかも点検しておくと安心です。
期限は理由で3種類に分かれる
後から使える特例と使えない特例がある
家族全員の税額をそろえて直す
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年9月時点の法令に基づいて作成しています。相続税法の改正により、記事の内容が変わる可能性があります。最新の制度については、必ず国税庁の公式情報または税理士に相談してください。