


共有名義の不動産にかかる相続税は、亡くなった人が持っていた持分だけを対象に計算します。
親子で2分の1ずつ持っている自宅なら、父が亡くなったときに課税されるのは父の2分の1だけです。子が元から持っていた2分の1に相続税はかかりません。
持分の評価額は、不動産全体の評価額に持分割合を掛けて求めます。共有だからという理由で評価額が下がることはありません。
ここでよく混同されるのが売却価格です。共有持分は市場では大幅に安くなりますが、それは売るときの話で相続税の評価とは別のものです。
土地6,000万円・建物1,000万円を親子で半分ずつ持ち、父に預貯金2,000万円があるケースなら、課税価格は5,500万円になります。子1人が相続する場合の相続税は235.0万円です。
小規模宅地等の特例を使えれば、この235.0万円が0円になります。ただし特例を使えるのは要件を満たす人が取得した持分だけです。
この記事では、課税される範囲、持分の評価方法、売却価格との違い、親が亡くなったときの計算、小規模宅地等の特例、共有を解消する方法、共有者に相続人がいない場合、やってはいけない3つのこと、申告の実務までを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

共有名義の不動産で最初に押さえるべきなのは課税される範囲です。相続税の対象になるのは、亡くなった人が持っていた持分だけです。
自分が元から持っていた持分は、相続で取得したものではありません。そのため相続税の課税対象にならず、申告書に書く必要もありません。ここを取り違えると、払わなくてよい税金を計算してしまいます。逆に他の共有者の持分まで自分のものだと考えると、申告漏れにつながります。
相続税は相続や遺贈によって取得した財産にかかります。共有者が元から持っていた持分は、この取得にあたりません。
親子で自宅を2分の1ずつ持っていた場合、父が亡くなって課税されるのは父の2分の1だけです。子の2分の1は名義も評価額も変わらず、相続税とは無関係のままです。相続をきっかけに子の持分の価値が変わることもありません。
| 財産 | 名義 | 相続税の課税対象 |
|---|---|---|
| 自宅(父の持分2分の1) | 父 | 対象になる |
| 自宅(子の持分2分の1) | 子 | 対象にならない |
| 父の預貯金 | 父 | 対象になる |
| 子の預貯金 | 子 | 対象にならない |
表の見方:誰の名義かで判断します。同じ建物でも、父の持分だけが相続財産です。共有だからといって全体が課税されるわけではありません。
重要ポイント:相続後に共有者が変わっても、自分の持分の評価額は変わりません。父の持分を子が相続すれば、子は自分の2分の1と相続した2分の1で単独所有者になります。
相続税の計算は財産ごとに行うものではありません。亡くなった人の財産をすべて合計してから、全体で税額を出します。不動産の持分だけを切り離して考えることはできません。
持分の評価額が3,500万円だとしても、そこに税率を掛けて相続税が決まるわけではありません。預貯金や生命保険なども合計し、基礎控除を引いた残りに課税されます。
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重要ポイント:共有持分の評価額が分かっただけでは相続税がいくらになるかは決まりません。他の財産と合計し、基礎控除を超えるかどうかで判断します。
基礎控除の計算式と課税されるかどうかの判定は、下記の記事で解説しています。

共有になる経路は2つに分かれます。元から共有だった場合と、相続をきっかけに共有になる場合です。どちらに当たるかで課税される範囲が変わります。
元から共有だった不動産は、亡くなった人の持分だけが相続財産になります。一方で単独名義の不動産を相続人が共同で相続すると、その不動産は新たに共有名義になります。
| 入口 | どうなるか | 相続税の対象 |
|---|---|---|
| 元から共有だった | 亡くなった人の持分が相続される | その持分だけ |
| 相続人が共同で相続した | 新たに共有名義になる | 不動産の全体 |
| 遺産分割が終わっていない | 相続人全員の共有状態が続く | 不動産の全体 |
注意点:遺産分割が終わるまでの共有状態は一時的なもので、分割によって解消されます。この状態のまま相続登記をしてしまうと、後から解消するのに手間と費用がかかります。
遺産分割から相続税の申告までの流れと期限は、下記の記事で解説しています。

自分の家が共有名義かどうかは登記事項証明書を取れば分かります。法務局の窓口かオンラインで、誰でも取得できます。
権利部の甲区に所有者が記載されており、共有であれば持分割合が「持分2分の1」のように書かれています。相続税の申告では、この登記の記載どおりに持分を計算します。
固定資産税の課税明細書でも共有かどうかは分かります。ただし持分割合まで載っていないことがあるため、登記事項証明書で確認するほうが確実です。
| 調べる書類 | 分かること | 取得方法 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 所有者と持分割合 | 法務局の窓口・郵送・オンライン(1通480〜600円) |
| 固定資産税の課税明細書 | 評価額と共有かどうか | 毎年4〜6月に市区町村から届く |
| 名寄帳 | その市区町村にある不動産の一覧 | 市区町村の窓口で取得する |
| 権利証・登記識別情報 | 取得の経緯 | 手元に保管されている |
重要ポイント:共有名義の不動産は本人も気づいていないことがあります。相続で持分を取得したまま登記していない場合や、住宅ローンの都合で共有にした場合が典型です。名寄帳を取れば、その市区町村にある不動産をまとめて確認できます。
注意点:相続登記は2024年4月から義務化されています。取得を知った日から3年以内に登記しないと過料の対象になります。共有のまま放置していた不動産があれば、あわせて確認してください。

共有持分の評価方法は国税庁がはっきり示しています。不動産全体の評価額に持分割合を掛けるだけです。
共有だから安くなるという扱いはありません。売りにくい財産であっても、相続税の計算では持分割合どおりに評価します。この点は国税庁の質疑応答事例ではっきり示されています。
共有地の評価について国税庁が示しているのは、共有地全体の価額に共有持分の割合を乗じて各人の持分の価額を算出するという方法です。
例として挙げられているのは、全体1億円の宅地を甲が4分の3、乙が4分の1で共有している場合です。甲の持分は7,500万円、乙の持分は2,500万円になります。割合を掛けるだけの単純な計算で、特別な調整は入りません。
| 共有者 | 持分割合 | 計算 | 持分の評価額 |
|---|---|---|---|
| 甲 | 4分の3 | 1億円×3/4 | 7,500万円 |
| 乙 | 4分の1 | 1億円×1/4 | 2,500万円 |
| 合計 | 1 | - | 1億円 |
表の見方:持分を足すと全体の評価額に戻ります。共有にしたことで評価額の合計が減ることはありません。
重要ポイント:この方法は土地でも建物でも同じです。建物は固定資産税評価額が全体の評価額になるので、固定資産税の課税明細書に持分割合を掛ければ求められます。
計算の順番を間違えると評価額がずれます。補正はすべて全体の評価に対して行い、最後に持分割合を掛けます。持分を先に掛けてから補正すると、結果が合わなくなります。
土地の形が悪い場合や道路に接していない場合は評価額を下げられますが、これは共有かどうかとは関係なく全体の評価で適用します。持分に対して別の補正がかかることはありません。共有であることが評価に影響するのは、最後に割合を掛ける一点だけです。
【共有地の評価の手順】
注意点:土地の評価額は補正のかけ方で大きく変わります。全体の評価を誤ると、持分の評価額もそのまま誤ります。土地の評価は相続税でもっとも差が出る部分です。
路線価方式と倍率方式の手順、使える減額補正は下記の記事で解説しています。

共有持分は自由に使えず売りにくい財産ですが、相続税の評価でそれを理由に減額することはできません。
国税庁の示す方法には共有による減額の規定がなく、持分割合を掛けるだけと明記されています。不動産鑑定士の評価で減価が認められるのは、遺産分割の場面で当事者間の時価を求めるときの話です。
| 場面 | 共有による減価 | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続税の財産評価 | ない | 全体の価額×持分割合(国税庁 質疑応答事例) |
| 遺産分割での時価の算定 | あり得る | 当事者間の合意または不動産鑑定 |
| 第三者への売却価格 | 大きく下がる | 買い手が限られるため |
重要ポイント:この3つを混同すると判断を誤ります。相続税は下がらず、売却価格は下がるという関係です。次のセクションで違いを詳しく見ます。
参照元:e-Gov 法令検索 民法(第249条・第250条)

共有持分について調べると評価額が低くなるという説明を見かけます。これは売却するときの価格の話で、相続税の評価とは別のものです。
2つを混同すると、相続税が安く済むと期待して当てが外れます。逆に、売却価格を相続税の申告に使うこともできません。どちらの場面の話なのかを区別してください。検索して出てくる説明がどちらを指しているかを見分けるだけでも判断を誤りません。
ひとくちに持分の価値といっても、相続税評価額・遺産分割での時価・実際の売却価格の3つに分かれます。
それぞれ目的が違うため、同じ持分でも金額が一致しません。とくに売却価格は買い手が限られるため、単独で所有している場合よりかなり低くなります。共有持分だけを買っても自由に使えないので、買主が値段を下げるためです。
| 金額の種類 | 使う場面 | 共有による減額 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 相続税評価額 | 相続税の申告 | ない | 全体の評価額×持分割合 |
| 遺産分割での時価 | 相続人どうしの話し合い | 交渉次第 | 不動産鑑定や査定に基づく |
| 第三者への売却価格 | 持分だけを売るとき | 大きく下がる | 買い手が限られるため安くなる |
| 他の共有者への売却価格 | 共有者間での売買 | 下がりにくい | 単独所有に近づくため |
表の見方:減額されるのは第三者に持分だけを売るときです。相続税の申告では、この安い金額を使うことはできません。
重要ポイント:共有持分の買取を扱う会社の記事では評価額が低いと説明されますが、それは売却価格を指しています。相続税の計算に持ち込むと過少申告になります。
共有持分は相続税では満額で評価されるのに、現金化しようとすると安くなります。
納税資金を持分の売却でまかなおうとすると、評価額どおりの金額では売れないという問題が起きます。相続税は評価額で計算されているため、差額を自己資金で埋めることになります。納税資金の計画は、売れる見込みの金額で立ててください。
【共有持分で起きる資金のずれ】
注意点:持分を売るならまず他の共有者に打診するのが原則です。第三者に売ると共有者との関係が悪化し、残った共有者も持分の価値を下げることになります。
相続した持分を売却する予定があるなら、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例を使えます。
相続の開始があった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで、つまり実質的に相続開始から3年10か月以内の売却が条件です。譲渡所得税を減らせるため、売る予定があるなら期限を意識してください。
注意点:この特例は相続税を納めた人にしか使えません。基礎控除の範囲内で相続税が0円だった場合は、加算できる金額もありません。
相続した不動産を売却したときの税金と特例は、下記の記事で解説しています。


住宅ローン控除や資金の都合で、自宅を親子の共有名義にしている家庭は多くあります。親が亡くなったときに課税されるのは親の持分だけです。
実際の数字で確認します。土地6,000万円・建物1,000万円を親子で2分の1ずつ持ち、父に預貯金2,000万円があるケースで計算します。
計算の出発点は父の財産の洗い出しです。不動産は持分の評価額だけを入れます。全体の評価額を入れないよう注意してください。
| 財産 | 全体の評価額 | 父の持分 | 課税価格に入る金額 |
|---|---|---|---|
| 土地 | 6,000万円 | 2分の1 | 3,000万円 |
| 建物 | 1,000万円 | 2分の1 | 500万円 |
| 預貯金 | - | - | 2,000万円 |
| 合計 | - | - | 5,500万円 |
| 子の持分(土地・建物) | 7,000万円 | 2分の1 | 0円(課税対象外) |
計算ロジック:土地と建物の全体は7,000万円ですが、父の持分はその2分の1の3,500万円です。預貯金2,000万円を足して課税価格は5,500万円になります。子が元から持っていた3,500万円は課税対象になりません。
重要ポイント:建物の評価額は固定資産税評価額です。毎年届く固定資産税の課税明細書で確認できます。土地は路線価方式または倍率方式で計算します。
課税価格5,500万円に対して、相続人の人数で税額が大きく変わります。
| 相続人 | 基礎控除 | 課税遺産総額 | 相続税の総額 |
|---|---|---|---|
| 子1人 | 3,600万円 | 1,900万円 | 235.0万円 |
| 子2人 | 4,200万円 | 1,300万円 | 130.0万円 |
| 子3人 | 4,800万円 | 700万円 | 70.0万円 |
計算ロジック:基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。課税価格5,500万円から基礎控除を引いた残りを法定相続分で分け、それぞれに税率をかけて合計します。子1人と子3人では165.0万円の差が出ます。
もし父が単独で所有していたら、課税価格は9,000万円になります。共有にしていたことで課税価格が3,500万円少なくなっています。
ただしこれは共有が節税になるという意味ではありません。子が持分を取得したときに、その分の資金を負担しているか、贈与税を払っているはずだからです。課税の時期が前倒しになっただけという見方もできます。
| 父が単独所有(9,000万円) | 親子で2分の1ずつ(5,500万円) | |
|---|---|---|
| 子1人が相続 | 920.0万円 | 235.0万円 |
| 子2人が相続 | 620.0万円 | 130.0万円 |
表の見方:子1人なら685.0万円、子2人なら490.0万円の差です。ただし子はすでに3,500万円分の資金を出しているか、贈与税を払っています。
注意点:持分割合と実際に出した金額の割合がずれていると、その差額に贈与税がかかります。共有にする段階で贈与税を払っていれば、相続税だけを比べて有利だと判断することはできません。
土地の持分を贈与したときの評価額と税額は、下記の記事で解説しています。

土地と建物の全体の評価額を変えて比べます。父の持分は常に全体の2分の1で、預貯金2,000万円、相続人は子1人です。
| 土地と建物の全体 | 父の持分(2分の1) | 課税価格 | 相続税 |
|---|---|---|---|
| 4,000万円 | 2,000万円 | 4,000万円 | 40.0万円 |
| 6,000万円 | 3,000万円 | 5,000万円 | 160.0万円 |
| 8,000万円 | 4,000万円 | 6,000万円 | 310.0万円 |
| 1億円 | 5,000万円 | 7,000万円 | 480.0万円 |
| 1億4,000万円 | 7,000万円 | 9,000万円 | 920.0万円 |
表の見方:いずれも預貯金2,000万円を足した課税価格に対する相続税の総額です。全体3,200万円以下なら課税価格が基礎控除3,600万円を下回り0円になります。
重要ポイント:この表は小規模宅地等の特例を使わない場合の金額です。特例が使えれば大きく下がります。次のセクションで、誰の持分に使えるのかを確認します。
父の持分を母が相続するか子が相続するかでも税額は動きます。配偶者の税額軽減があるためです。
課税価格5,500万円、相続人が母と子1人の場合、相続税の総額は130.0万円です。この130.0万円をどちらがどれだけ負担するかが、取得の仕方で変わります。
| 分け方 | 母の取得 | 子の取得 | 納める相続税 |
|---|---|---|---|
| 母が父の持分を相続し、預貯金は子へ | 3,500万円 | 2,000万円 | 47.3万円 |
| 子が父の持分を相続し、預貯金は母へ | 2,000万円 | 3,500万円 | 82.7万円 |
計算ロジック:母が取得した分は配偶者の税額軽減で税額が0円になるため、母に多く寄せるほど納税額は下がります。この例では35.4万円の差です。母の財産はいずれも基礎控除3,600万円を下回るので、二次相続の相続税はどちらも0円になります。
注意点:母が父の持分を相続すると今度は母と子の共有名義になります。共有状態は解消されないため、次の相続でまた同じ判断が必要になります。小規模宅地等の特例を子が使えるなら、子が取得するほうが有利になることもあります。
配偶者の税額軽減の上限と二次相続まで含めた判断は、下記の記事で解説しています。


共有名義でも小規模宅地等の特例は使えます。ただし対象になるのは、要件を満たす人が取得した持分だけです。
特例が使えるかどうかで税額はゼロにもなります。共有名義の相続でもっとも金額に響く部分なので、誰がどの持分を取得するかを決める前に確認してください。
父の持分の土地3,000万円に特例を適用すると600万円まで下がります。
建物には小規模宅地等の特例が使えないため、建物の持分500万円はそのままです。預貯金2,000万円と合わせた課税価格は3,100万円になり、子1人の基礎控除3,600万円を下回ります。特例を使うかどうかだけで、納税の有無が分かれることになります。
| 特例を使わない場合 | 特例を使う場合 | |
|---|---|---|
| 土地の持分 | 3,000万円 | 600万円 |
| 建物の持分 | 500万円 | 500万円(特例の対象外) |
| 預貯金 | 2,000万円 | 2,000万円 |
| 課税価格 | 5,500万円 | 3,100万円 |
| 基礎控除(子1人) | 3,600万円 | 3,600万円 |
| 相続税 | 235.0万円 | 0円 |
計算ロジック:特定居住用宅地等として330平方メートルまで8割減額されるため、3,000万円×20%=600万円になります。課税価格3,100万円が基礎控除3,600万円を下回るため相続税は0円です。
重要ポイント:建物は特例の対象外です。減額されるのは土地の持分だけなので、建物の評価額が大きい場合は思ったほど下がりません。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
共有名義の土地を複数の相続人が分けて取得した場合、要件を満たす人の持分だけに特例が適用されます。
父の持分2分の1を、同居していた長男と別居の次男が4分の1ずつ相続したとします。長男の取得分には特例を使えますが、持ち家のある次男の取得分には使えません。
| 取得した人 | 要件 | 特例 | 評価額(取得分1,500万円の場合) |
|---|---|---|---|
| 配偶者 | なし | 使える | 300万円 |
| 同居していた子 | 申告期限まで所有し住み続ける | 使える | 300万円 |
| 別居の子(持ち家なし) | 3年以上借家住まいなどの要件 | 要件を満たせば使える | 300万円 |
| 別居の子(持ち家あり) | 満たせない | 使えない | 1,500万円 |
重要ポイント:同じ土地でも取得した人ごとに適用の可否が分かれます。誰が取得するかを決める段階で、要件を満たす人に寄せると税額を抑えられます。
注意点:元から自分が持っていた持分には特例を使えません。特例の対象は相続で取得した持分だけです。親子共有名義の自宅で子が特例を使えるのは、父から相続した2分の1の部分に限られます。
二世帯住宅や共有名義の自宅で特例を使う条件は、下記の記事で解説しています。

特例が使える面積には上限が設けられています。共有の場合は、持分割合を掛けた面積で判定します。全体の面積で判定するわけではありません。
特定居住用宅地等の上限は330平方メートルです。400平方メートルの土地を2分の1ずつ共有していれば、父の持分は200平方メートルとして扱われ、上限内に収まります。全体では上限を超えていても、持分では収まることがあります。
計算ロジック:400平方メートル×2分の1=200平方メートルです。上限330平方メートルを下回るため、持分の全部に特例を使えます。全体が700平方メートルなら持分は350平方メートルとなり、330平方メートルを超えた分には適用できません。
小規模宅地等の特例の要件と適用できる人の範囲は、下記の記事で解説しています。


共有名義は相続のたびに共有者が増えていきます。解消するなら早いほど手続きが簡単です。
解消の方法によってかかる税金が変わります。相続の場面で選べる方法と、その後に選べる方法を分けて整理します。遺産分割の段階なら選択肢が多く、費用も抑えられます。
遺産分割の段階なら共有にしない分け方を選べます。
| 方法 | 内容 | かかる税金 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 土地を分筆して別々に取得する | 相続税のみ | 土地が広く分けても使える |
| 代償分割 | 1人が取得し、他の相続人に代償金を払う | 相続税のみ | 自宅を残したい |
| 換価分割 | 売却して現金で分ける | 相続税+譲渡所得税 | 誰も住む予定がない |
| 共有にする | 持分で共同所有する | 相続税のみ | 結論の先送りになりやすい |
重要ポイント:共有にすると売却もリフォームも共有者全員の同意が必要になります。次の相続で共有者がさらに増えると、全員の合意を取ること自体が難しくなります。
代償分割の代償金の決め方と相続税の計算は、下記の記事で解説しています。

土地が広い場合は分筆して別々の土地にすれば共有を解消できます。
登記上も別の土地になるため、それぞれが単独で売却や建築を判断できます。分筆の方法によっては評価額が下がることもありますが、使いにくい形に分けると価値も下がるため注意が必要です。接道の状況によっては、片方が建築できない土地になることもあります。
注意点:分筆した土地の面積や形が不公平だと、価値の差額が贈与とみなされることがあります。評価額をそろえて分けるか、差額を代償金で調整してください。
分筆で相続税評価額がどこまで下がるかは、下記の記事で解説しています。

相続が終わったあとでも解消はできます。方法は4つあり、税金の扱いがそれぞれ違います。
【相続後に共有を解消する方法】
重要ポイント:全員で全体を売却するのがもっとも手取りが多くなる方法です。居住用の自宅であれば、共有者それぞれが3,000万円の特別控除を使えることもあります。
参照元:国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
参照元:e-Gov 法令検索 民法(第256条・第258条)
共有を放置すると相続のたびに共有者が増え、持分が細かくなっていきます。
親子2人の共有だった不動産も、親の持分を子2人が相続すれば3人の共有になります。さらに次の世代へ移ると、いとこどうしの共有になり面識のない相手と合意を取ることになります。一度こうなると、元に戻すには全員分の持分を買い集めるしかありません。
| 世代 | 共有者 | 1人あたりの持分 | 売却に必要な同意 |
|---|---|---|---|
| 今 | 親子2人 | 2分の1 | 2人 |
| 次の相続 | 子2人+孫 | 4分の1程度 | 3〜4人 |
| その次の相続 | いとこどうし | 8分の1程度 | 8人以上。面識のない相手も含む |
重要ポイント:不動産の売却には共有者全員の同意が必要です。1人でも反対すれば売れず、連絡が取れない共有者がいれば手続きそのものが進みません。
注意点:持分が細かくなっても固定資産税は共有者全員の連帯債務です。代表者に納税通知書が届き、その人が全額を立て替えることになりがちです。他の共有者から回収できないまま負担が続く例が少なくありません。

共有者の1人が亡くなり、その人に相続人がいない場合は持分が他の共有者のものになります。
民法255条が定めるルールですが、このとき相続税がどうなるかを説明している記事はほとんどありません。国税庁が質疑応答事例で明確にしています。
国税庁は、共有者の1人が死亡して相続人がいないときは他の共有者がその持分に応じて遺贈により取得したものとして相続税を課税すると示しています。
つまり無償で持分をもらえるわけではありません。取得した持分の評価額に対して相続税がかかります。評価の時点は持分が移った時ではなく、相続開始の時です。思いがけず財産が増える一方で、納税の義務も生じます。
【民法255条で持分を取得したときの扱い】
重要ポイント:基礎控除が3,000万円しかないうえに2割加算までかかります。通常の相続より条件が厳しくなる点を知らないと、申告が必要なことに気づかないまま期限を過ぎます。
参照元:国税庁 質疑応答事例 民法第255条の規定により共有持分を取得した場合の相続税の課税関係
他に財産がない前提で、取得した持分の評価額別に相続税を計算します。
| 取得した持分の評価額 | 基礎控除 | 課税遺産総額 | 相続税 | 2割加算後 |
|---|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 3,000万円 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 4,000万円 | 3,000万円 | 1,000万円 | 100.0万円 | 120.0万円 |
| 5,000万円 | 3,000万円 | 2,000万円 | 250.0万円 | 300.0万円 |
| 6,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 | 400.0万円 | 480.0万円 |
計算ロジック:相続人がいないため法定相続人の数は0人となり、基礎控除は3,000万円+600万円×0人=3,000万円です。相続人がいない場合は課税遺産総額をそのまま1つの金額として税率をかけ、取得した人は相続人ではないため2割加算がかかります。
重要ポイント:持分の評価額が3,000万円を超えると相続税がかかります。通常の相続なら子1人でも基礎控除3,600万円ですが、このケースではそれより600万円低くなります。
申告期限も通常とは違います。亡くなった日から10か月ではありません。相続人がいないことを確定させる手続きが先に必要だからです。
相続人がいない場合は相続財産清算人が選任され、特別縁故者への財産分与の請求期間が設けられます。この期間が終わって初めて、持分が他の共有者に移ることが確定します。
| 状況 | 申告期限 |
|---|---|
| 特別縁故者による財産分与の請求がない場合 | 請求期限の満了の日の翌日から10か月以内 |
| 特別縁故者の財産分与の請求がある場合 | 分与額または分与しないことの決定が確定したことを知った日の翌日から10か月以内 |
注意点:期限が後ろにずれる一方で、評価は相続開始の時点で行います。持分が移るまでに地価が変動しても、亡くなった時点の評価額で計算します。
相続人がいない場合の財産の行方と手続きは、下記の記事で解説しています。


共有名義の不動産ではよかれと思ってした行為に贈与税がかかることがあります。
いずれも当事者にお金のやりとりがないため、税金がかかると思わずに進めてしまう点が共通しています。事前に知っていれば避けられるものばかりです。手続きをする前に、誰に何の税金がかかるのかを確認してください。
共有持分は自分の意思だけで放棄できます。ただし放棄した持分は他の共有者のものになり、その人に贈与税がかかります。手放したつもりが、相手に負担を生む結果になります。
民法255条は、共有者の1人が持分を放棄したときはその持分が他の共有者に帰属すると定めています。無償で財産を得ることになるため、贈与を受けたものとして課税されます。
| 場面 | 持分の行き先 | かかる税金 | 負担する人 |
|---|---|---|---|
| 生きているうちに持分を放棄する | 他の共有者 | 贈与税 | 持分を取得した共有者 |
| 相続人がいないまま死亡する | 他の共有者 | 相続税(2割加算あり) | 持分を取得した共有者 |
| 相続放棄をする | 他の相続人 | なし(相続税の枠内で処理) | - |
重要ポイント:持分の放棄は相続放棄とはまったく別のものです。相続放棄は家庭裁判所での手続きですが、持分の放棄は共有者への意思表示で足ります。手軽な分、税金の負担を見落としやすくなります。
注意点:放棄した本人に税金はかかりませんが、受け取った共有者が贈与税を負担します。善意でしたことが相手の負担になるため、事前に相談してください。
共有者どうしで持分を売買するとき、時価より著しく低い金額で売ると差額が贈与とみなされます。
身内どうしだからと相場を無視した金額にすると、買った側に贈与税がかかります。時価の目安は相続税評価額ではなく、実際に取引される価格です。
計算ロジック:時価3,000万円の持分を1,000万円で売れば、差額の2,000万円を贈与で受けたものとして扱われます。基礎控除110万円を引いた1,890万円に贈与税がかかります。
注意点:相場が分からないまま金額を決めると危険です。不動産会社の査定を複数取り、根拠を残してください。売買契約書に金額の根拠を残しておくと説明しやすくなります。
参照元:国税庁 No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき
共有名義でとくに困るのが共有者の1人が判断能力を失った場合です。
売却も、担保に入れることも、大規模なリフォームも共有者全員の同意が要ります。認知症で意思表示ができなくなると、その同意を得られません。成年後見人を選任すれば手続きは進みますが、選任には数か月かかり、その後も家庭裁判所の監督が続きます。
【共有者が認知症になると起きること】
重要ポイント:対策は判断能力があるうちに共有を解消しておくことです。相続の場面で共有にしない、すでに共有なら早めに持分を集約する、という2つの方向があります。
注意点:成年後見制度は一度始めると本人が亡くなるまで続きます。不動産を売るためだけに使うつもりでも、後見人への報酬が毎年発生し続けます。
不動産を共有名義にするとき、実際に出した金額の割合で持分を決めるのが原則です。
父が3,000万円、子が1,000万円を出したのに2分の1ずつの持分にすると、子は1,000万円分多く取得したことになります。この差額に贈与税がかかります。
| 出した金額 | 正しい持分 | ずらした場合 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 父3,000万円・子1,000万円 | 父3/4・子1/4 | 父1/2・子1/2 | 子に1,000万円の贈与 |
| 父2,000万円・子2,000万円 | 父1/2・子1/2 | 同じ | 贈与にならない |
重要ポイント:住宅ローンを組んだ場合は誰が返済しているかで判断されます。名義は子でも実際に父が返済していれば、その分は父からの贈与とみなされることがあります。
注意点:すでにずれている場合、過去にさかのぼって持分を直すこと自体が贈与になります。気づいた時点で税理士に相談してください。

共有名義の不動産があると申告書の書き方と住宅ローンの扱いに注意が必要です。
どちらも共有だからこそ判断が分かれる部分で、誤ると税額が変わります。提出前に確認してください。
共有名義の不動産に住宅ローンが残っている場合、債務控除できるのは亡くなった人が負っていた分だけです。
ローンの組み方によって扱いが変わります。団体信用生命保険に加入していれば死亡時に完済されるため、債務として控除することはできません。完済された時点でその債務は存在しなくなるからです。
| ローンの組み方 | 亡くなった人の債務 | 債務控除 |
|---|---|---|
| 団体信用生命保険に加入していた | 保険金で完済される | できない |
| 団信なしの単独債務 | 残債の全額 | できる |
| 連帯債務(団信なし) | 自分の負担部分 | 負担部分だけできる |
| 子が債務者で親が連帯保証人 | 原則としてなし | 原則できない |
重要ポイント:団信で完済されると債務控除できないのに不動産の評価額は満額のままです。ローンが残っているから相続税は安くなると考えていると、見込みが外れます。
ローンがある場合の債務控除と団信の有無による違いは、下記の記事で解説しています。

共有名義に固有の様式はありません。第11表に持分の評価額を書きます。
| 表 | 書く内容 | 共有名義での注意点 |
|---|---|---|
| 第11表 | 相続税がかかる財産の明細 | 全体の評価額ではなく、持分の評価額を書く。持分割合も記載する |
| 第11・11の2表の付表1 | 小規模宅地等の特例 | 取得した持分のうち特例を使う部分を記載する |
| 第13表 | 債務及び葬式費用の明細 | 住宅ローンは亡くなった人の負担部分だけ書く |
| 第1表 | 各人の課税価格と納める税額 | 第11表の結果が反映される |
重要ポイント:第11表には全体の評価額ではなく持分の評価額を書きます。全体の金額を書いてしまうと、本来の倍の財産を申告することになります。
注意点:持分割合は登記事項証明書のとおりに記載します。「2分の1」のように分数で書かれているので、登記の記載を確認してから転記してください。
相続税の申告書の書き方と提出までの流れは、下記の記事で解説しています。

相続後に共有名義のまま売却した場合、譲渡所得の申告は共有者それぞれが行います。
売却代金も譲渡費用も持分割合で按分し、各自が自分の持分に対応する譲渡所得を計算します。代表者がまとめて申告することはできません。売買契約書は1通でも、税務上は共有者ごとの取引として扱われます。
| 項目 | 扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 譲渡所得の計算 | 持分割合で按分して各自が計算 | 共有者ごとに確定申告が必要 |
| 取得費 | 持分に対応する分 | 相続で取得した分は被相続人の取得費を引き継ぐ |
| 3,000万円の特別控除 | 要件を満たす共有者ごとに使える | 住んでいた人だけが対象 |
| 取得費加算の特例 | 相続税を納めた人が使える | 相続開始から3年10か月以内の売却 |
重要ポイント:自宅を売る場合の3,000万円の特別控除は共有者ごとに適用されます。夫婦で2分の1ずつ持つ自宅を売れば、合わせて6,000万円まで控除できます。ただし実際に住んでいた人でなければ使えません。
注意点:共有者の1人が確定申告を忘れると、その人だけが無申告加算税と延滞税の対象になります。売却の翌年の2月16日から3月15日までに、全員が忘れずに申告してください。
参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
参照元:国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
申告書を出す前に、共有名義で落としやすい項目を確認します。
チェックリスト:共有名義の不動産がある相続で確認すること
重要ポイント:もっとも金額に響くのは小規模宅地等の特例を使えるのは誰かを確認したかです。この例では特例の適用で235.0万円が0円になります。

共有名義の不動産は評価と特例の判断しだいで税額がゼロにもなります。複数の税理士から見積りを取り、提案の中身を比べてください。
共有名義では土地の評価・持分の按分・特例の適用者が同時に絡みます。どれか1つを誤ると、納めすぎか申告漏れのどちらかになります。
【相続税の対応実績がある税理士に相談すべき理由】
たとえば土地6,000万円・建物1,000万円を親子で2分の1ずつ持ち、父の預貯金が2,000万円という家庭で、A税理士は小規模宅地等の特例を検討せずに申告しました。課税価格は5,500万円で、相続税は235.0万円になります。
B税理士は同居していた子が父の持分を取得する形にして小規模宅地等の特例を適用しました。課税価格は3,100万円まで下がり、基礎控除3,600万円を下回ります。相続税は0円になり、235.0万円の差が生まれています。
比べるべきなのは土地の評価にどこまで踏み込むかです。評価額が違えば、そこから先の金額はすべて変わります。
判定ポイント1:現地や資料を確認するか土地の形状や道路との接し方によって評価額は下がります。→ 登記情報だけで計算する事務所と、現地や公図まで確認する事務所では評価額に差が出ます。
判定ポイント2:特例を誰に適用するか提案するか「同居されていたのはどなたですか」と聞いてくるかどうかです。→ 質問がないまま計算する事務所は、特例の設計をしていません。
判定ポイント3:共有の解消まで話すか次の相続で共有者が増えることまで説明するかを見てください。→ 申告だけで終わる事務所と、その後の設計まで示す事務所があります。
共有名義の不動産は評価を誤っても税務署から教えてもらえません。
【相談しないまま進めた場合のリスク】
納めすぎた税金を取り戻すには更正の請求が必要で、申告期限から5年を過ぎると請求できなくなります。複数の事務所から見積りを取っていれば、評価の違いはその時点で見えます。
見積りはフォームの記入5分から始められます。
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重要ポイント:STEP1で持分割合と誰が住んでいるかを整理しておくことが、見積りの精度を大きく左右します。小規模宅地等の特例が使えるかどうかで税額がゼロになることもあるためです。
共有だから安くなるということはありません。持分の評価額は不動産全体の評価額に持分割合を掛けて求めるため、共有による減額はないためです。
ただし亡くなった人の持分だけが課税対象になるので、単独で所有していた場合より課税価格は小さくなります。共有者が自分の持分を取得したときに、その分の資金を負担しているか贈与税を払っている点には注意が必要です。
それは売却するときの価格の話です。共有持分だけを第三者に売ろうとすると、使用も処分も自由にできないため買い手が限られ、価格が大きく下がります。
相続税の評価はこれとは別で、国税庁は共有地全体の価額に持分割合を乗じると示しています。売却価格を相続税の申告に使うことはできません。
土地6,000万円・建物1,000万円を2分の1ずつ持ち、父に預貯金2,000万円があるケースなら、課税価格は5,500万円です。子1人が相続すると相続税は235.0万円になります。
同居していた子が父の持分を取得して小規模宅地等の特例を使えば、課税価格は3,100万円まで下がり基礎控除3,600万円を下回るため0円になります。
できません。相続放棄は亡くなった人の財産をすべて放棄する手続きで、不動産の持分だけを選んで放棄することはできないためです。
相続後に持分だけを手放したい場合は、他の共有者に売却するか持分を放棄することになります。ただし放棄すると、持分を取得した共有者に贈与税がかかります。
その持分は他の共有者のものになります(民法255条)。このとき国税庁は、他の共有者が持分に応じて遺贈により取得したものとして相続税を課税すると示しています。
相続人がいないため基礎控除は3,000万円で、取得した人は相続人ではないので2割加算もかかります。申告期限は特別縁故者の財産分与の請求期限が終わってから10か月以内です。
共有名義の不動産で押さえるべきなのは、課税される範囲と評価の方法です。この2つを正しく理解していれば、払わなくてよい税金を計算することも、申告漏れを起こすこともありません。
この記事の要点をまとめます。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年9月時点の法令等に基づいて作成しています。相続税法の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度については国税庁のホームページや税理士にご確認ください。