借地権を相続したとき、相続税の計算に使う「評価額」はどのように決まるのでしょうか。
借地権の評価は「自用地価額×借地権割合」が基本ですが、権利金・地代・届出書の有無によって評価額がゼロになる場合もあります。
この記事では普通借地権・定期借地権・底地の評価をステップ形式で解説し、4ケース別シミュレーションと小規模宅地等の特例との組み合わせ効果まで網羅します。
▼ この記事の3行まとめ
- 普通借地権の評価は「自用地価額×借地権割合」で計算し、借地権割合は路線価図のA〜G(90〜30%)で確認する
- 権利金・地代・無償返還届出書の有無によって評価額がゼロ〜通常割合まで大きく変わる
- 底地(貸宅地)の評価は「自用地価額×(1−借地権割合)」で求め、小規模宅地等の特例との組み合わせで大幅な節税が可能
借地権とは|相続税の対象になる「土地の上の権利」

借地権は土地そのものではなく、土地の上に存在する独立した「財産的権利」です。
相続財産として評価の対象になるため、借地権を相続したときは正確な評価額を把握することが必要です。
まず借地権の定義と発生要件を確認し、課税対象となる理由を理解しましょう。
借地権の定義|建物所有を目的とした地上権・土地賃借権
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことです。
相続税法上の借地権は「建物の所有を目的とするもの」に限定されており、駐車場・資材置き場・農地などを借りる権利は借地権として認められません。
地上権は物権であり、土地所有者の同意なしに譲渡・転貸が可能な強い権利です。
土地賃借権は債権であり、譲渡・転貸には土地所有者(地主)の承諾が必要となります。
実務では土地賃借権による借地がほとんどで、地上権は少数にとどまります。
借地権と混同されやすい権利として「使用借権(使用貸借)」があります。
使用貸借とは地代なし・または固定資産税程度の低額で土地を借りる契約で、使用貸借では借地権は発生せず、相続税評価額はゼロになります。
| 権利の種類 | 性質 | 譲渡・転貸 | 相続税評価 |
|---|---|---|---|
| 地上権 | 物権 | 地主の同意不要 | 借地権として評価 |
| 土地賃借権(借地権) | 債権 | 地主の承諾必要 | 借地権として評価 |
| 使用借権(使用貸借) | 無償使用 | 不可 | 評価ゼロ(借地権発生なし) |
借地権が発生する2つの要件|有償契約と建物所有目的
借地権として認められるためには次の2つの要件を満たす必要があります。
1つ目は「建物の所有を目的とすること」です。
借地上に建物が建っており、その建物を所有するために土地を借りている状態が必要です。
建物が存在しない更地を借りているだけでは、借地権とは認められません。
2つ目は「有償の賃貸借契約であること」です。
毎年一定の地代(賃料)を支払っていることが条件で、無償または固定資産税程度の低額地代の場合は「使用貸借」と判断されます。
どの程度の地代が「通常」かは、その地域の借地権相当額を基準に判断されます。
固定資産税・都市計画税の合計額程度しか払っていなければ使用貸借とみなされ、借地権評価ゼロとなるため、親子間の土地貸借では地代水準の確認が不可欠です。
実際には「親から子へ土地を貸しているが、契約書がない」というケースも多くあります。
契約書がない場合は、地代の支払い実績(通帳の入出金履歴)や口頭合意の有無で判断します。
証拠が残っていないと税務調査で不利になるため、契約書の作成と地代振込の記録が大切です。
借地権が相続税の課税対象になる理由
借地権は土地を自由に使用・収益できる経済的価値を持つ財産です。
財産的価値がある以上、相続税法上の課税財産として評価の対象になります。
地主が土地を自分で使う場合の「自用地価額」を100%とすると、借地権者(借りている側)はその一部を占有していると考えることができます。
借地権評価額と底地評価額を合算すると、原則として自用地価額に一致します。
相続税における借地権の評価額は、相続財産の課税価格に算入されます。
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えた部分に対して相続税が課税されます。
都市部では借地権評価額が数千万円に達することも多く、相続税負担に大きく影響します。
なお、借地権の評価額は路線価ベースのため、実際の市場売却価格とは乖離する場合があります。
特に地方では路線価評価額より実勢価格が低いケースが多く、売却を想定している場合は不動産会社の査定と合わせて確認することを推奨します。
借地権の種類|普通借地権・定期借地権・旧法借地権の違い

借地権の種類によって相続税評価の方法が異なるため、まず自分が相続した借地権がどの種類に該当するかを契約書で確認することが先決です。
種類の判断を誤ると評価方法の選択を誤り、過少申告・過大申告のリスクが生じます。
普通借地権|借地借家法(平成4年〜)の基本形
普通借地権は、平成4年(1992年)8月1日に施行された借地借家法に基づく借地権です。
初回の契約期間は30年以上で、更新後は最初が20年、2回目以降は10年ずつ更新できます。
更新時に地主が拒絶するには「正当の事由」が必要で、借地人の権利は強く保護されています。
相続税評価は「自用地価額×借地権割合」で計算します。
借地権割合は路線価図のA〜G(90〜30%)で地域ごとに定められており、都市部では借地権割合が60〜70%以上となり、評価額が高くなる傾向があります。
普通借地権は更新が繰り返されることが前提であるため、経済的価値が高く評価されます。
相続人が借地権を引き継いで建物に住み続けるケースが多く、相続後の選択肢(保有・売却・返還)を申告前に整理しておくことが重要です。
旧法借地権|旧借地法の借地権は現在も多く残る
平成4年7月31日以前に設定された借地権は、旧借地法が適用される旧法借地権です。
旧借地法は地主よりも借地人の権利を強く保護しており、更新拒絶が事実上困難なため、現在も旧法借地権のまま存続しているケースが多くあります。
旧法借地権は借地借家法の普通借地権と同じ方法で評価します。
評価方法は「自用地価額×借地権割合」で新旧の違いはなく、同じ計算式を使います。
旧法借地権は存続期間が自動更新されるため、相続後も長期にわたって契約が継続します。
旧法借地権かどうかの確認は、借地契約書の締結日で判断します。
契約書の日付が1992年(平成4年)8月1日より前であれば旧法借地権の可能性があります。
旧法借地権には更新を繰り返しながら半永久的に使用継続できる性質があります。
地主が正当な理由なく更新を拒絶できないため、数十年以上にわたり継続するケースも多くあります。
旧法借地権を相続した場合も、建物の相続登記と地主への通知を速やかに行うことが必要です。
定期借地権の3種類|一般・事業用・建物譲渡特約付きの違い
定期借地権は契約満了後に更新がなく、必ず土地を返還する義務がある借地権です。
普通借地権とは評価方法が異なり、残存期間に応じて評価額が変動します。
| 種類 | 存続期間 | 契約形式 | 主な用途 | 評価方法 |
|---|---|---|---|---|
| 一般定期借地権 | 50年以上 | 公正証書等書面 | 居住用建物 | 残存期間ベース |
| 事業用定期借地権 | 10〜50年未満 | 公正証書必須 | 商業施設・事業用 | 残存期間ベース |
| 建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | 書面 | 居住用建物 | 残存期間ベース |
定期借地権付きの建物を相続した場合は、残存期間が長ければ価値があり、残存期間が短くなるほど借地権評価額が下がります。
相続発生時に残存期間が5年以下の場合、借地権評価額は自用地価額の数%程度にとどまります。
種類が相続税評価に与える影響の早見表
相続した借地権の種類を正確に判定することが、正しい評価の前提条件です。
以下の早見表で評価方式と評価額の目安を確認してください。
| 借地権の種類 | 評価方式 | 評価額の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 普通借地権(借地借家法) | 自用地価額×借地権割合 | 自用地の30〜90% | 都市部ほど評価が高い |
| 旧法借地権 | 自用地価額×借地権割合 | 自用地の30〜90% | 新法と評価方法は同じ |
| 定期借地権(残存20年超) | 残存期間ベース | 自用地の20〜40%程度 | 設定条件で異なる |
| 定期借地権(残存5年以下) | 残存期間ベース | 自用地の5%程度 | 売却困難になる場合あり |
| 使用借権 | 評価なし | ゼロ | 地代の実態に注意 |
契約書の内容・締結日・地代の実態の3点を確認すれば、ほとんどの場合は種類を判定できます。
判定が難しいケース(旧法・新法の混在、地代水準が境界線上)は税理士に相談することを推奨します。
借地権割合の調べ方|路線価図とA〜G記号の読み方

普通借地権の評価額を計算するうえで最初に確認すべきなのが「借地権割合」です。
借地権割合は国税庁が地域ごとに定め、毎年7月に更新される路線価図や評価倍率表で確認できます。
路線価図の借地権割合記号(A〜G)の意味と地域傾向
路線価図に記載された路線価数字の後ろにアルファベットが付いています。
このアルファベットが借地権割合を示しており、A〜Gの7段階で設定されています。
| 記号 | 借地権割合 | 主な地域の傾向 | 借地権評価(自用地1億円) |
|---|---|---|---|
| A | 90% | 都市部の超一等地 | 9,000万円 |
| B | 80% | 都市部の主要商業地 | 8,000万円 |
| C | 70% | 都市部・近郊の住宅地 | 7,000万円 |
| D | 60% | 地方都市の中心部 | 6,000万円 |
| E | 50% | 地方都市の住宅地 | 5,000万円 |
| F | 40% | 地方の住宅地 | 4,000万円 |
| G | 30% | 地方の農村・郊外 | 3,000万円 |
借地権割合が高いほど借地権の評価額が大きくなり、相続税の負担も重くなります。
逆に底地(貸宅地)の評価は低くなるため、地主と借地人で相続税への影響が逆転します。
同じ土地でも借地人が相続するか地主が相続するかで、課税価格の差は数千万円になることがあります。
路線価図の検索手順|国税庁サイトでの調べ方(5ステップ)
借地権割合は国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」から無料で確認できます。
STEP1:国税庁ホームページ「財産評価基準書・路線価図・評価倍率表」を開く
STEP2:対象地の「都道府県」を選択し、対象年分(相続開始年)を選ぶ
STEP3:市区町村・地区を絞り込み、路線価図のPDFを開く
STEP4:地図上で対象地に接する道路(路線)を見つけ、路線価の数字を確認する
STEP5:数字の後のアルファベット(A〜G)が借地権割合を示すため、上表で割合を確認する
路線価は1,000円単位で表記されているため、「300D」なら1㎡あたり30万円・借地権割合60%です。
相続税は相続開始時(被相続人の死亡日)の年分の路線価図を使用するため、年分の確認を忘れずに行います。
一筆の土地が複数の路線に面している場合は、正面路線の記号を使用します。
正面路線の判定には奥行価格補正を加味した比較が必要なため、複数路線に面する土地は専門家に相談することを推奨します。
倍率地域・取引慣行なし地域の特別ルール(20%)
路線価が設定されていない地域(倍率地域)では、評価倍率表に借地権割合が記載されています。
倍率地域での自用地価額は「固定資産税評価額×評価倍率」で計算します。
借地権評価は「自用地価額×評価倍率表に記載の借地権割合」で求めます。
評価倍率表の確認手順はSTEP1〜3と同様です。
STEP3で路線価図ではなく「評価倍率表」を選択し、地番を絞り込んで借地権割合を確認します。
倍率表に借地権割合の記載がない(借地事情が全くない)地域では、20%として計算します(財産評価基本通達27)。
倍率地域での計算例を確認します。
条件:固定資産税評価額600万円・評価倍率1.1・借地権割合E(50%)の場合
自用地価額 = 600万円 × 1.1 = 660万円
借地権評価額 = 660万円 × 50% = 330万円
底地評価額 = 660万円 × (1 − 50%)= 330万円
倍率地域でも計算の手順は路線価地域と同じで、自用地価額の算出方法が異なるだけです。
評価倍率は相続開始年の評価倍率表を使うため、年分を誤らないよう注意が必要です。
都市部と地方で評価額がどれだけ変わるか|割合別シミュレーション
同じ土地面積・自用地価額でも、借地権割合の違いで評価額は大きく異なります。
自用地価額5,000万円の土地を例に、借地権割合別の評価額を比較します。
| 借地権割合 | 借地権評価額 | 底地評価額 | 借地人の相続税増加(税率30%仮定) |
|---|---|---|---|
| A:90% | 4,500万円 | 500万円 | 約1,350万円 |
| C:70% | 3,500万円 | 1,500万円 | 約1,050万円 |
| E:50% | 2,500万円 | 2,500万円 | 約750万円 |
| G:30% | 1,500万円 | 3,500万円 | 約450万円 |
都市部のA割合(90%)と地方のG割合(30%)では、借地権評価額に3,000万円の差が生じます。
借地権割合の違いだけで相続税負担に900万円以上の差が生まれるため、割合の確認は非常に重要です。
小規模宅地等の特例(後述)を組み合わせれば、この課税価格をさらに大幅に圧縮できます。
普通借地権の評価計算3ステップ

普通借地権(旧法借地権を含む)の相続税評価額は3つのステップで計算します。
STEP1の自用地価額の算出が最も複雑で、計算の精度が評価額全体を左右します。
STEP1|自用地価額を算出する(路線価方式・倍率方式)
まず、借地している土地の「自用地としての価額」を算出します。
自用地価額とは、その土地を所有者自身が使用している場合の評価額のことです。
路線価地域(市街地)では次の式で計算します。
自用地価額 = 路線価 × 各種補正率 × 地積(㎡)
倍率地域(農村・郊外)では次の式で計算します。
自用地価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
各種補正率には、以下のものが含まれます。
- 奥行価格補正:道路から土地の奥行が長すぎる・短すぎる場合の補正
- 不整形地補正:三角形・旗竿地など形状が不整形な場合の減額補正
- 側方路線影響加算:角地など2方向以上の路線に接する場合の加算補正
- 奥行長大補正:細長い土地の使い勝手の悪さを考慮した補正
これらの補正計算は財産評価基本通達に定められた複雑な計算が必要です。
補正率の適用誤りは評価額に数百万円単位の影響を与えるため、税理士への依頼が推奨されます。
固定資産税の納税通知書・登記簿謄本・公図を手元に用意しておくと確認がスムーズです。
主な補正率と評価額への影響を以下の表で確認できます。
| 補正の種類 | 適用場面 | 評価への影響(目安) |
|---|---|---|
| 奥行価格補正 | 奥行が10m未満または30m超の土地 | 路線価の8〜96%に調整 |
| 不整形地補正 | 三角形・旗竿形など形状が複雑な土地 | 最大40%程度の減額 |
| 側方路線影響加算 | 2方向以上の道路に接する角地 | 最大8%程度の加算 |
| 間口狭小補正 | 道路に接する間口が短い土地 | 最大40%程度の減額 |
複数の補正が重なる場合は補正率を掛け合わせて計算するため、評価額が大きく変わります。
不整形地かつ間口も狭い土地では複数補正の重複適用で、路線価ベースより評価額が大幅に下がることもあります。
STEP2|借地権割合を路線価図で確認する
STEP1で使用した路線価図の路線価に付記されたアルファベットを確認します。
A(90%)〜G(30%)の7段階から対象地の借地権割合を特定します。
路線価図の見方に迷う場合のポイントを以下にまとめます。
- 対象地に接する道路(路線)の番号が路線価を示す
- 数字の後のアルファベット(例「300D」のD)が借地権割合
- 同一路線に複数の数字がある場合は、正面路線(価値の高い側)を選択
- 倍率地域の場合は路線価図ではなく評価倍率表の借地権割合欄を確認
路線価図・倍率表のどちらにも借地権割合の記載がない場合は、20%を適用します。
倍率表の「借地権割合」欄が「―」(ハイフン)の場合も20%として計算します。
STEP3|借地権評価額を計算する
STEP1の自用地価額にSTEP2の借地権割合を乗じて評価額を求めます。
計算式:借地権評価額 = 自用地価額 × 借地権割合
具体例①:路線価地域・自用地価額4,000万円・借地権割合C(70%)
借地権評価額 = 4,000万円 × 70% = 2,800万円
具体例②:倍率地域・固定資産税評価額800万円・評価倍率1.1・借地権割合E(50%)
自用地価額 = 800万円 × 1.1 = 880万円
借地権評価額 = 880万円 × 50% = 440万円
この2,800万円(または440万円)が相続財産として課税価格に算入されます。
路線価ベースの評価額は実際の市場取引価格とは異なるため、売却を検討する際は不動産査定を別途取得します。
特に旧法借地権は市場での買い手が限られるため、路線価評価より実勢価格が低くなる場合があります。
相続税申告の際には以下の書類を計算の根拠として保管しておくことを推奨します。
- 相続開始年の路線価図(国税庁ホームページから印刷)または評価倍率表
- 奥行補正・不整形地補正の計算過程を記録したワークシート
- 固定資産税の納税通知書(倍率地域での自用地価額算出の根拠)
税務調査で計算根拠を確認された場合、書類が揃っていれば速やかに対応できます。
4ケース別シミュレーション|権利金・地代・届出書の組み合わせで変わる評価額

借地権の評価額は「権利金の有無」「地代の水準」「無償返還届出書の提出の有無」によって評価がゼロになる場合と、通常割合で評価される場合に分かれます。
自分のケースがどれに該当するかを以下の4ケースで確認してください。
ケース1|権利金あり・通常地代を払うケース(一般的な借地権)
最も標準的なケースで、契約時に権利金(保証金)を支払い、毎月通常の地代を払っている借地権です。
「通常の地代」とは、その地域の慣行的な水準の地代を指します。
前提条件:自用地価額4,000万円・借地権割合C(70%)・権利金支払済み・通常地代支払い
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 借地権評価額 | 4,000万円 × 70% | 2,800万円 |
| 底地評価額 | 4,000万円 × (1 − 70%) | 1,200万円 |
| 合計 | ― | 4,000万円(自用地価額と一致) |
権利金を支払い通常地代を払うケースでは、借地権割合がそのまま評価に反映されます。
4ケースの中で最も評価額が高くなるため、相続税の負担も最大になります。
このケースでよくある誤りは、過去に支払った権利金の金額を評価に直接使ってしまうことです。
相続税評価は「自用地価額×借地権割合」の式で計算するため、権利金の金額は関係なく、あくまで路線価ベースの評価になります。
もう一つよくある誤りは、売買契約書や合意書に記載された「借地権の売買価格」を評価額として使うケースです。
過去に売買された時の取引価格は相続税評価額とは別の概念で、そのまま使用できません。
相続発生年の路線価図で自用地価額を算出し直し、借地権割合を乗じた金額を申告に使います。
ケース2|権利金なし・相当の地代を払うケース(評価がゼロになる)
権利金を支払わない代わりに、通常より高い「相当の地代」を毎月払っているケースです。
相当の地代とは、自用地価額のおおむね6%相当の年額地代のことです(国税庁の基準)。
相当の地代の目安:自用地価額4,000万円 × 6% ÷ 12ヶ月 ≒ 月20万円
このケースでは地主に高い地代を払い続けているため、借地権者(借りる側)の経済的利益がないと判断され、借地権評価額はゼロになります。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 借地権評価額 | 評価ゼロ(地代で経済的利益なし) | 0円 |
| 底地評価額 | 4,000万円 × 100% | 4,000万円 |
借地人が相続する場合は相続財産の計上額がゼロになるため、相続税負担はありません。
地主(底地所有者)が相続する場合は自用地価額4,000万円で評価されます。
地代が相当の地代未満(通常地代と相当の地代の中間)の場合は、按分計算で評価額が変わります。
中間的な地代水準のケースは複雑な計算が必要なため、税理士への確認が不可欠です。
地代が通常地代と相当の地代の中間にある場合、按分計算で借地権評価額が変わります。
実際の地代が相当の地代(年6%相当)に近いほど借地権評価が低くなり、通常地代に近いほど高くなります。
実際の地代が相当の地代以上であれば借地権評価ゼロになるため、地代水準の正確な把握が評価額を左右します。
ケース3|権利金なし・無償返還届出書あり(底地評価が80%になる)
権利金を授受せず、かつ「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出しているケースです。
無償返還届出書とは、将来土地を無償で返還することを借地人と地主が約束し、その旨を税務署に届け出た書類のことです。
届出書が提出されていると、借地権の経済的価値がないと判断されます。
この場合、借地権評価額はゼロになり、底地は自用地価額の80%で評価されます。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 借地権評価額 | 評価ゼロ(無償返還の届出あり) | 0円 |
| 底地評価額 | 4,000万円 × 80% | 3,200万円 |
底地が80%になるのは、将来借地人から土地が返還される可能性を考慮しているためです。
借地権ゼロなのに底地が80%(100%でなく)になるのは、貸付中は自由に使えない制約を20%分の控除として反映しているためです。
無償返還届出書は法人と個人(地主)間での土地賃貸に多く利用されます。
同族会社への土地貸付でよく使われるスキームですが、個人間でも活用できます。
届出書の提出忘れは底地評価の誤りにつながるため、契約時の書類を必ず確認します。
ケース4|使用貸借(親子間で地代なし)|借地権は発生しない
親が子に土地を無償(または固定資産税相当の低額)で貸しているケースです。
この「使用貸借」では法律上の借地権が発生しません。
使用貸借は、地代を受け取っていない・または実質的に無償と判断される場合に該当します。
「月2万円払っているから賃貸借のはず」という場合でも、固定資産税・都市計画税の合計額以下の地代では使用貸借と判断されることがあります。
使用貸借の場合、子の借地権評価ゼロ・親の土地は自用地価額で評価されます。
| 項目 | 金額 | 相続税の影響 |
|---|---|---|
| 子の借地権評価額 | 0円 | 子の相続財産なし |
| 親の土地(自用地)評価額 | 4,000万円 | 親の相続財産として全額計上 |
親が亡くなると土地は自用地価額(4,000万円)で相続財産に算入されます。
特定居住用宅地等の80%減額は、子が同居していれば適用可能です。
ただし使用貸借の場合は「貸付事業用宅地等」の50%減額は適用できません。
地代を一切もらっていない土地を貸付事業とは認められないためです。
定期借地権の評価計算|残存期間をベースにした割引計算

定期借地権は普通借地権とは評価方法が異なり、
残存期間の長短に応じて評価額が変化する点が最大の特徴です。
相続発生時の残存期間を契約書で正確に確認することが計算の出発点です。
定期借地権の評価式|設定時の経済的利益×現価率で按分
定期借地権の評価は、相続発生時点で借地権者に帰属する経済的利益を計算します。
原則的な評価式は以下のとおりです。
定期借地権評価額 = 自用地価額 ×(設定時の経済的利益 ÷ 設定時の取引価格)×(残存期間の現価率 ÷ 設定期間の現価率)
「設定時の経済的利益」とは権利金・敷金・保証金の合計額を指し、
「現価率」は将来の価値を現在価値に換算するための係数です。
この計算は複雑なため、実務では簡便法も認められています。
簡便法では自用地価額に残存期間割合を乗じる方法が使えます(一般定期借地権)。
具体例:自用地価額5,000万円・設定期間50年・残存期間30年の一般定期借地権
残存期間30年は「15年超」に該当するため、底地控除率20%を使用します。
定期借地権評価額 = 5,000万円 × 20% = 1,000万円(簡便法)
残存期間別の評価割合の目安|底地との関係で理解する
一般定期借地権の場合、残存期間に応じて底地の評価から控除する割合が異なります。
| 残存期間 | 底地の控除率(定期借地権相当) | 底地評価の目安(自用地5,000万円) |
|---|---|---|
| 5年以下 | 5%相当を控除 | 5,000万円 × 95% = 4,750万円 |
| 5年超10年以下 | 10%相当を控除 | 5,000万円 × 90% = 4,500万円 |
| 10年超15年以下 | 15%相当を控除 | 5,000万円 × 85% = 4,250万円 |
| 15年超 | 20%相当を控除 | 5,000万円 × 80% = 4,000万円 |
定期借地権の評価額は「自用地価額 − 底地評価額」で計算します。
残存期間が短くなるほど底地評価額は上がり、借地権評価額は下がります。
残存期間15年超の場合、借地権評価額は1,000万円(自用地5,000万円の20%)にとどまります。
同じ自用地5,000万円の土地でも、普通借地権(C割合70%)なら評価額は3,500万円です。
定期借地権(残存15年超・20%コントロール)では1,000万円と、大きく評価額が違います。
定期借地権を相続した場合の相続税負担は、普通借地権より大幅に軽くなるケースが多くなります。
定期借地権の評価が低くなる理由と相続後の注意点
定期借地権は契約期間満了後に必ず土地が返還されるため、永続的に使用できる普通借地権より経済的価値が低く評価されます。
残存期間が10年を切ると評価額は顕著に下がり、売却価格にも影響します。
逆に設定直後(残存期間50年近く)のケースでは評価額が最大になります。
定期借地権付き建物を相続した場合は、土地(定期借地権)と建物を別々に評価します。
建物の固定資産税評価額から倍率を掛けた評価額が建物の相続税評価額です。
残存期間が短い定期借地権付き建物は買い手が限られるため、売却時期を慎重に判断する必要があります。
契約満了が近い場合は更地にして返還する費用(建物解体費)も考慮した資産整理が必要です。
底地(貸宅地)の相続税評価|地主側が知るべき計算方法

土地を貸している地主側(底地所有者)が相続する場合は、「貸宅地」として評価します。
自用地として自由に使えない分だけ評価額が下がりますが、売却が困難という制約があるため、評価額と資産の換金性に乖離が生じます。
底地評価の基本式|自用地価額×(1−借地権割合)
普通借地権が設定された土地(底地)の評価式は次のとおりです。
貸宅地評価額 = 自用地価額 × (1 − 借地権割合)
借地権割合が高い地域ほど底地評価額が低くなります。
| 借地権割合 | 底地の評価率 | 底地評価額(自用地4,000万円) | 借地権評価額 |
|---|---|---|---|
| A:90% | 10% | 400万円 | 3,600万円 |
| C:70% | 30% | 1,200万円 | 2,800万円 |
| E:50% | 50% | 2,000万円 | 2,000万円 |
| G:30% | 70% | 2,800万円 | 1,200万円 |
都市部(A割合90%)では底地評価額が自用地の10%、つまり400万円まで下がります。
評価額が低い底地は相続税は軽いですが、売却できないまま「塩漬け」になるリスクがあります。
底地を相続した場合は、節税だけでなく売却・交換・地主権の整理も含めて対策を検討します。
底地を売却する主な方法は「借地人への売却」「第三者への売却」「借地権との等価交換」の3つです。
借地人への売却は交渉がまとまれば最もスムーズで、価格は自用地価額の20〜40%程度が目安です。
借地権と底地を同時に第三者に売却する「共同売却」は双方が合意すれば自用地価額に近い価格で売れます。
底地評価額と借地権評価額の合計は自用地価額に一致するか
権利金あり・通常地代のケースでは、借地権評価額と底地評価額の合計は自用地価額と一致します。
しかし権利金なし・相当の地代や無償返還届出書があるケースでは一致しません。
| ケース | 借地権評価額 | 底地評価額 | 合計 |
|---|---|---|---|
| ケース1:権利金あり・通常地代 | 2,800万円(70%) | 1,200万円(30%) | 4,000万円(100%) |
| ケース2:権利金なし・相当の地代 | 0円(0%) | 4,000万円(100%) | 4,000万円(100%) |
| ケース3:無償返還届出書あり | 0円(0%) | 3,200万円(80%) | 3,200万円(80%) |
| ケース4:使用貸借 | 0円(0%) | 4,000万円(100%) | 4,000万円(100%) |
ケース3(無償返還届出書あり)では合計が自用地価額の80%に減少します。
ケース3の底地が80%評価となる理由は、将来返還を受けるという確実性を評価に織り込んでいるためです。
定期借地権が設定された貸宅地の評価
定期借地権が設定された貸宅地の評価は、普通借地権とは計算方法が異なります。
評価式:貸宅地評価額 = 自用地価額 − 定期借地権の評価額
残存期間15年超の場合の具体例(自用地5,000万円):
定期借地権評価額 = 5,000万円 × 20% = 1,000万円
貸宅地評価額 = 5,000万円 − 1,000万円 = 4,000万円(自用地の80%)
残存期間5年以下の場合(自用地5,000万円):
定期借地権評価額 = 5,000万円 × 5% = 250万円
貸宅地評価額 = 5,000万円 − 250万円 = 4,750万円(自用地の95%)
残存期間が短くなるほど貸宅地評価額が自用地価額に近づき、地主の相続税負担は増加します。
定期借地権付きの底地は売却が難しいため、評価額と実際の換金価値が乖離するリスクがあります。
換金が難しい底地の主な出口戦略には「借地人への売却」「借地権との共同売却」「不動産信託の活用」があります。
底地の換金を検討する場合は早期に専門家(弁護士・税理士・不動産コンサルタント)へ相談することが重要です。
小規模宅地等の特例との組み合わせ|借地権・底地への適用条件

小規模宅地等の特例を借地権や底地に適用できれば、評価額を大幅に圧縮できます。
ただし適用には厳格な要件があり、要件を1つでも満たさないと適用を受けられません。
相続発生前から要件を把握しておくことが、節税の最大化につながります。
借地権に小規模宅地等の特例は使えるか|居住用の場合
借地権は土地そのものではありませんが、「土地の上に存する権利」として小規模宅地等の特例(措置法69条の4)の対象に含まれます。
被相続人が居住の用に供していた借地権は「特定居住用宅地等」に該当し、330㎡を限度に評価額を80%減額できます。
適用できる相続人の要件(いずれかに該当すること):
- 配偶者(同居・別居を問わず適用可)
- 被相続人と同居していた親族(申告期限まで居住継続・土地保有継続が必要)
- 家なき子(相続開始前3年間・国内の自己所有家屋に居住していない親族)
「家なき子」の要件は2018年の改正で厳格化されており、
持ち家のある親族が名義を妻や子に変えて適用を受けることは認められなくなりました。
申告期限(相続開始から10ヶ月以内)まで借地権を保有し続けることが適用の絶対条件です。
家なき子特例を適用する場合は、以下の4要件をすべて満たしているか確認が必要です。
- □ 相続開始前3年以内に、自己・配偶者・3親等内親族・特別の関係にある法人が所有する家屋に居住していないこと
- □ 相続開始時に日本国内で自己所有の家屋を持っていないこと
- □ 被相続人に配偶者・同居親族がいないこと(いずれも故人または別居が前提)
- □ 申告期限まで相続した借地権を売却・贈与せず保有し続けること
特定居住用(最大330㎡・80%減)と貸付事業用(最大200㎡・50%減)を両方適用する場合は面積調整が必要です。
「特定居住用の適用面積÷330 + 貸付事業用の適用面積÷200 ≦ 1」の算式を満たす範囲で使えます。
2つの特例を組み合わせる場合は、どちらを優先するかで節税効果が変わるため、必ず試算比較を行います。
貸付事業用宅地等として50%減額を適用するための条件
地主側(底地所有者)が相続する場合、「貸付事業用宅地等」として50%減額を受けられます。
適用面積の上限は200㎡で、特定居住用宅地等と並行適用する場合は面積調整が必要です。
適用条件は次の2点です。
- 相続開始の直前まで被相続人(または生計一親族)が貸付事業に供していた土地であること
- 相続した相続人が申告期限まで貸付事業を継続し、かつ土地を保有し続けること
貸宅地(底地)は継続的に地代収入を得る事業用貸付に該当するため、原則として50%減額の対象になります。
ただし相続開始前3年以内に新たに貸し付けを開始した場合は「3年縛り」により適用できません。
駆け込みで底地経営を始めても特例を受けられないため、計画的な事前対策が必要です。
特例適用後の評価額シミュレーション|節税効果の比較
自用地価額4,000万円・借地権割合C(70%)の土地に各特例を適用した場合の比較です。
| 立場 | 特例の種類 | 適用前評価額 | 減額割合 | 適用後評価額 | 節税効果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 借地人(相続人が居住) | 特定居住用80%減 | 2,800万円 | 80% | 560万円 | △2,240万円 |
| 地主(底地) | 貸付事業用50%減 | 1,200万円 | 50% | 600万円 | △600万円 |
| 借地人(特例なし) | ― | 2,800万円 | ― | 2,800万円 | 0円 |
借地人側で特定居住用宅地等の特例が使えれば、課税価格を2,240万円も圧縮できます。
特例を使えるかどうかは相続人の居住状況・申告期限内の保有継続などの細かい要件で決まります。
要件を満たすかどうかは相続発生後すぐに税理士に確認することを強く推奨します。
借地権相続後の選択肢|保有・売却・返還の税務比較

借地権を相続した後の選択肢は主に3つあります。
保有し続ける・地主に売却または返還する・第三者に売却するの3パターンで、
それぞれ税務上の取り扱いが異なるため、選択の前に特徴を把握することが重要です。
保有し続ける場合の手続きと注意点
借地権を相続して継続保有する場合、相続発生後すぐに行うべき手続きがあります。
相続後の対応チェックリスト:
- □ 相続発生の事実を地主に速やかに通知する(口頭でも可、後日書面が望ましい)
- □ 地代の支払い名義を被相続人から相続人に変更する(通帳名義・銀行振込先の変更)
- □ 借地上の建物の相続登記を申請する(2024年4月から登記義務化)
- □ 借地契約書の内容(期間・更新料・建替え条件)を確認する
- □ 小規模宅地等の特例を申告期限まで適用できるか確認する
建替えや大規模修繕を行う場合は地主の承諾が必要です。
建替え承諾料の相場は建物の価格の3〜5%程度で、交渉によって変動します。
建物の登記が借地人名義になっていないと、第三者(新地主)に借地権を対抗できなくなるため、速やかに相続登記を行います。
借地の固定資産税は地主が払いますが、建物の固定資産税は相続した相続人が負担します。
地代・建物固定資産税・修繕費の収支を把握したうえで保有継続の判断をします。
更新時に発生する更新料(地価の3〜5%程度が目安)も考慮した長期的な資金計画が重要です。
旧法・普通借地権では期間満了の1〜2年前から地主と更新条件の交渉を始める余裕を持つことを推奨します。
地主に売却・返還する場合の課税関係と手取り計算
相続した借地権を地主に売却する場合は、譲渡所得税の対象になります。
譲渡所得 = 売却価格 − (取得費 + 譲渡費用)
取得費は被相続人が借地権を取得した際の費用(権利金・仲介手数料等)を引き継ぎます。
取得費が不明な場合は売却価格の5%を概算取得費として使用できます(租税特別措置法)。
取得費加算の特例を適用できれば、支払った相続税額の一部を取得費に加算できます。
取得費加算の特例の適用期限は相続開始の翌日から3年10ヶ月以内の売却で、この期限を逃すと適用不可になります。
地主への無償返還(返還料なし)の場合は譲渡所得税が生じません。
ただし借地上の建物は解体または撤去が必要なため、解体費用の負担が発生します。
解体費用の相場は木造1棟で100〜200万円程度、鉄骨造では200〜400万円程度です。
取得費加算の特例を適用した場合の節税効果の概算を表で確認します。
| 項目 | 特例なし | 取得費加算あり(仮定) |
|---|---|---|
| 売却価格 | 2,400万円 | 2,400万円 |
| 取得費(権利金等) | 150万円 | 150万円 |
| 取得費加算額(相続税分) | 0円 | 約130万円 |
| 譲渡所得 | 約2,250万円 | 約2,120万円 |
| 所得税・住民税(約20.3%) | 約457万円 | 約430万円 |
| 節税効果 | ― | 約27万円 |
加算できる相続税額は「相続税総額×(借地権評価額÷課税価格合計)」で算出します。
3年10ヶ月以内という期限が迫っている場合は、売却時期を相続開始日から逆算して決定します。
借地権付き建物ごと第三者に売却する場合の手順と承諾料
借地権付き建物を第三者に売却する場合は、地主の承諾を得ることが必要です。
承諾なしに売却すると、借地契約の解除事由になる可能性があります。
地主承諾の進め方:
- STEP1:地主に売却の意向を伝え、承諾を求める(書面が望ましい)
- STEP2:承諾料(借地権価格の10%程度)の交渉を行う
- STEP3:承諾書を書面で取り交わす
- STEP4:売買契約・登記・地代契約の名義変更を行う
地主が承諾しない場合は、裁判所に「借地権の譲渡を許可する裁判」を申し立てられます。
裁判所の許可が出れば地主の承諾なしに売却できますが、手続きに数ヶ月〜1年以上かかります。
借地権付き建物の売却価格は自用地評価の50〜70%程度が目安になるケースが多く、
都市部の借地権割合が高い地域では買い手を見つけやすいですが、地方では買い手が限られるため、長期間売れ残るリスクがあります。
相続後の選択肢を税務・手取り・手続き負担の観点から比較した一覧です。
| 選択肢 | 主な費用・負担 | 税務上の取り扱い | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 保有継続 | 地代・建物修繕費 | 相続税のみ(譲渡税なし) | 建替え時に承諾料が発生 |
| 地主に売却 | 比較的少ない | 譲渡所得税(取得費加算可) | 3年10ヶ月以内で節税効果大 |
| 地主に無償返還 | 建物解体費(100〜400万円) | 課税なし | 解体費の事前見積もりが必要 |
| 第三者に売却 | 地主承諾料(権利金の10%程度) | 譲渡所得税(取得費加算可) | 承諾拒否なら裁判申立てが必要 |
取得費加算の3年10ヶ月期限が近い場合は、売却を最優先で検討します。
どの選択肢が最も有利かは借地権評価額・取得費・相続税額によって変わるため、税理士への試算依頼が有効です。
借地権の相続税評価こそ早めに税理士へ相談すべき理由

借地権の相続税評価は、権利金の有無・地代水準・届出書の有無によって評価額がゼロから通常割合まで大きく変わる複雑なテーマです。
評価を誤ると過大申告・過少申告の両方のリスクがあります。
相談すべき理由|借地権評価特有の複雑さ
借地権評価をめぐっては次のような複雑な判断が求められます。
- 権利金・地代・無償返還届出書の有無による4ケース分類の正確な判定
- 路線価図の補正計算(奥行補正・不整形地補正など)の実施
- 普通借地権か定期借地権かの判別と評価方法の選択
- 小規模宅地等の特例(居住用・貸付事業用)の適用可否の確認
- 使用貸借か賃貸借かの判定(親子間の土地貸借で特に重要)
これらの判断を誤ると、評価額が大幅に変わり申告ミスにつながります。
相談するメリット|評価誤りと節税機会の損失を同時防止
- 正確なケース分類:権利金・地代・届出書の実態を確認し、4ケースを正しく判定できる
- 特例適用の最大化:小規模宅地等の特例の適用可否を確認し、節税効果を最大化できる
- 路線価補正の正確な計算:奥行補正・不整形地補正を適切に反映し、過大評価を防げる
- 取得費加算との連動確認:売却を検討する場合に取得費加算の特例との組み合わせを助言できる
相談しなかった場合のリスク
借地権評価を誤った場合に生じる主なリスクを確認します。
最も多いのは「使用貸借と賃貸借の誤判定」による評価誤りです。
賃貸借と判断して借地権を計上したが実態は使用貸借だった場合、過大申告となり不必要な相続税を支払うことになります。
逆に賃貸借なのに使用貸借と判断すると、借地権の計上漏れとして税務調査で指摘され、追徴税額が発生するリスクがあります。
過少申告加算税(最大15%)と延滞税も課されます。
費用対効果の試算|税理士報酬 vs 節税・リスク回避効果
| 項目 | 金額目安 |
|---|---|
| 税理士報酬(相続税申告代行) | 30〜100万円 |
| 小規模宅地等の特例適用による節税 | 200〜500万円以上 |
| 評価誤りによる過払い防止 | 50〜300万円 |
| 追徴課税・ペナルティ回避 | 追徴税額の10〜15% |
| 費用対効果 | 報酬の3〜10倍以上の効果が見込める |
借地権の評価誤りは金額が大きいため、税理士報酬を大幅に上回るリスクが潜んでいます。
初回相談で確認すべき質問リスト
- □ 私の借地権は普通借地権ですか・定期借地権ですか(契約書を持参して確認)
- □ 権利金・地代の状況から4ケースのどれに該当しますか
- □ 小規模宅地等の特例は借地権に適用できますか
- □ 路線価図の補正計算を含めた正確な自用地価額を試算してもらえますか
- □ 親子間で土地を貸し借りしているケースで使用貸借か賃貸借かを確認してもらえますか
- □ 売却を検討している場合、取得費加算の特例と組み合わせた節税効果を試算してもらえますか
- □ 借地権の売却・返還・保有のどの選択が税務上最も有利ですか
よくある質問(FAQ)
Q. 借地権の相続税評価額はどのように計算しますか?
普通借地権(旧法借地権含む)は「自用地価額×借地権割合」で計算します。
借地権割合は路線価図のアルファベット(A=90%〜G=30%)で確認できます。
Q. 親子間で無償で土地を貸している場合、借地権の評価はどうなりますか?
個人間の使用貸借(無償または固定資産税程度の低額)では借地権は発生しないため、評価額はゼロです。
この場合、親が所有する土地は自用地価額で評価されます。
Q. 相当の地代を払っている場合、借地権の評価はどうなりますか?
権利金を授受せず相当の地代(自用地価額のおおむね年6%程度)を払っている場合、借地権評価額はゼロになります。
地主側の土地は自用地価額で評価されます。
Q. 借地権に小規模宅地等の特例は使えますか?
借地権は「土地の上に存する権利」として小規模宅地等の特例の対象になります。
被相続人が居住の用に供していた借地権であれば特定居住用宅地等として330㎡まで80%減額が可能です。
Q. 定期借地権と普通借地権では相続税評価の方法が違いますか?
普通借地権は「自用地価額×借地権割合」で評価しますが、定期借地権は残存期間に応じた割引計算を行います。
残存期間が短いほど評価額が低くなるため、相続発生時の残存期間の確認が重要です。
まとめ|借地権評価は「割合・種類・権利金の有無」の3点で決まる
借地権評価の基本
- 普通借地権の評価は「自用地価額×借地権割合(A90%〜G30%)」で計算する
- 借地権割合は路線価図のアルファベット記号または評価倍率表で確認する
- 底地(貸宅地)の評価は「自用地価額×(1−借地権割合)」で計算し、借地権と合算すると自用地価額と一致する
権利金・地代・届出書で変わる4つのケース
- 権利金あり・通常地代 → 借地権割合がそのまま評価に反映(最も評価が高い)
- 権利金なし・相当の地代 → 借地権評価ゼロ・底地は自用地価額で評価
- 権利金なし・無償返還届出書あり → 借地権評価ゼロ・底地は自用地価額の80%で評価
- 使用貸借(地代なし) → 借地権は発生せず評価ゼロ・土地は自用地価額で評価
今すぐ取るべき行動
- 借地権を相続した場合:借地契約書を確認して種類(普通・定期)と権利金・地代の実態を整理し、税理士に相談する
- 底地(貸宅地)を相続した場合:貸付事業用宅地等の50%減額が使えるか申告期限前に確認する
- 売却・返還を検討する場合:取得費加算の特例(相続開始から3年10ヶ月以内)が使えるか税理士に確認する
※本記事は2025年1月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制改正や個別の事情により取り扱いが異なる場合があります。具体的な手続きについては税理士または税務署にご相談ください。



