


取得費加算の特例とは、相続した財産を相続開始から3年10ヶ月以内に売ったとき、納めた相続税の一部を売却時の経費(取得費)に足せる制度です。
加算できる額は、自分が納めた相続税額×売った財産の相続税評価額÷(自分の課税価格+債務控除額)で、売却益が上限です。
経費が増えるぶん売却益が小さくなり、所得税と住民税が軽くなります。根拠は租税特別措置法第39条です。
使えるのは相続税を納めた人だけです。配偶者の税額軽減で相続税がゼロになった人は使えません。
空き家の3,000万円控除とはどちらか一方を選ぶ形で、確定申告で特例を使うと書くことが条件です。
同じ物件でも、誰が相続するか、いつ売るかで加算できる額が変わります。
本記事では、計算式と試算、使える人と使えないケース、期限の数え方、他の制度との組み合わせ、確定申告の書き方を解説します。
▼ この記事の3行まとめ

取得費加算の特例の要点は3つです。納めた相続税の一部を売却時の経費にできること、売る時期に3年10ヶ月という期限があること、そして加算できる金額が相続財産の構成で変わることです。
売却益は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算します。この取得費に、納めた相続税の一部を上乗せできるのがこの特例です。
相続した不動産は被相続人が買ったときの値段をそのまま引き継ぎます。古くに買った土地ほど取得費が小さく、売却益がふくらみやすい構造です。
相続税の計算で使う財産の額を課税価格といいます。相続で受け取った財産から借入金や葬式費用を差し引いた金額です。
課税価格1億円の不動産だけを相続し、1,220万円の相続税を納めた人が1億2,000万円で売った場合を見てみます。
| 項目 | 特例を使わない場合 | 特例を使う場合 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 1億2,000万円 | 1億2,000万円 |
| 取得費(被相続人が買った値段) | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 加算できる相続税額 | ― | 1,220万円 |
| 譲渡費用 | 400万円 | 400万円 |
| 売却益(譲渡所得) | 1億600万円 | 9,380万円 |
| 所得税・住民税(20.315%) | 2,153.4万円 | 1,905.5万円 |
| 差額 | ― | 247.8万円の軽減 |
この例では加算できる額が1,220万円、軽くなる税額が247.8万円になります。
相続財産が売る不動産だけなら、納めた相続税の全額を加算できます。割り振りの計算で分子と分母が同じ金額になるためです。
参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
軽くなる税額は「加算できる額 × 20.315%」です。加算できる額は納めた相続税額に比例するため、相続税を多く納めた人ほど効果が大きくなります。
子1人が相続し、売る財産の相続税評価額が課税価格の半分だった場合の目安です。
| 自分の課税価格 | 納める相続税額 | 実質の負担率 | 加算できる額 | 軽くなる税額 |
|---|---|---|---|---|
| 8,000万円 | 680万円 | 8.5% | 340万円 | 69.1万円 |
| 1億円 | 1,220万円 | 12.2% | 610万円 | 123.9万円 |
| 1億5,000万円 | 2,860万円 | 19.1% | 1,430万円 | 290.5万円 |
| 2億円 | 4,860万円 | 24.3% | 2,430万円 | 493.7万円 |
| 3億円 | 9,180万円 | 30.6% | 4,590万円 | 932.5万円 |
| 5億円 | 1億9,000万円 | 38.0% | 9,500万円 | 1,929.9万円 |
表の見方:実質の負担率は「納める相続税額 ÷ 課税価格」です。加算できる額はこの負担率に売る財産の評価額をかけた金額になります。
重要ポイント:課税価格8,000万円の人と3億円の人では、同じ割合の財産を売っても軽くなる税額が13.5倍ちがいます。
計算ロジック:相続税額は国税庁 No.4155の速算表どおりに算出し、長期譲渡所得の税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)で税額を計算しています。
この特例は平成26年度の税制改正で対象がしぼられ、加算できる金額は改正前より小さくなりました。
改正前は、土地を売った場合の分子に「その人が相続したすべての土地等の評価額」を使えました。改正後は「売った土地の評価額」だけになっています。
A土地8,000万円・B土地5,000万円・C土地4,000万円・預金3,000万円を相続し、A土地だけを1億円で売った場合を改正前後で比べます。
| 項目 | 平成26年12月31日までの相続 | 平成27年1月1日以後の相続 |
|---|---|---|
| 計算式の分子 | その人が相続したすべての土地等の評価額 | 売った土地の評価額のみ |
| A土地を売ったときの分子 | 1億7,000万円(A+B+C) | 8,000万円(Aのみ) |
| 加算できる額 | 4,131万円 | 1,944万円 |
| 所得税・住民税 | 816.5万円 | 1,260.7万円 |
| 改正による負担の増加 | ― | 444.3万円の増加 |
重要ポイント:「改正で有利になった」と説明している解説は改正の向きを取りちがえています。複数の土地を相続した人ほど、改正によって加算できる額が小さくなりました。
新しいルールが適用されるのは平成27年1月1日以後に始まった相続です。それより前の相続は改正前のルールで計算します。
計算ロジック:課税価格2億円・子1人の相続税4,860万円を前提に、分子だけを入れ替えて算出しています。加算できる額は売却益8,150万円が上限ですが、今回はどちらも上限に達していません。
参照元:国税庁 措置法第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》関係
相続した不動産を売るときにかかる税金の全体像は下記の記事で解説しています。


加算できる金額は、納めた相続税額を売った財産の割合で割り振って求めます。分母を取りちがえると金額が大きく変わるため、4つのステップに分けて確認します。
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使うのは相続税の申告書 第1表に書かれた「自分の申告納税額」です。相続税は相続人ごとに割り振って納めるため、家族全体の総額とは別の金額になります。
重要ポイント:家族全員の相続税の総額を使ってしまうのが最も多いまちがいです。兄弟2人で相続した場合、総額を使うと加算額が2倍近くになります。
延納を選んで分割で納めている場合も、申告した税額の全額を使います。物納した分も相続税として計算に含めます。
贈与税額控除を受けている場合は、控除される贈与税額を足し戻した金額を使います。
売った財産の相続税評価額は、相続税の申告書 第11表(財産の明細書)で確認します。
土地は路線価方式または倍率方式で評価した金額、上場株式は相続開始日の終値などで評価した金額です。売った価格ではなく、相続税の申告に使った評価額を使います。
土地は時価の8割程度が路線価の水準です。売却価格のほうが評価額より高くなることが多く、この差は加算額には影響しません。
| 確認するもの | 見る書類 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自分が納めた相続税額 | 相続税の申告書 第1表 | 家族全員の相続税の総額ではない |
| 売った財産の相続税評価額 | 相続税の申告書 第11表 | 小規模宅地等の特例を使った場合は減額後の金額 |
| 自分の課税価格 | 相続税の申告書 第1表 | 借入金・葬式費用を差し引いた後の金額 |
| 債務控除額 | 相続税の申告書 第13表 | 課税価格に足し戻して分母にする |
重要ポイント:小規模宅地等の特例を使って評価を下げた土地は、減額した後の金額が分子になるため加算できる額も小さくなります。

分母は「自分の課税価格」ですが、そのままの金額ではありません。借入金や葬式費用を差し引く前の金額に戻して使います。
租税特別措置法施行令25条の16第1項2号は、相続税法13条(債務控除)の適用がある場合は「その適用がないものとした場合の課税価格」を分母にすると定めています。
借入金2,000万円を引き継いだ人が、相続税評価額1億2,000万円の不動産を1億5,000万円で売った場合で確認します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 相続で受け取った財産 | 2億2,000万円 |
| 引き継いだ借入金(債務控除額) | 2,000万円 |
| 自分の課税価格 | 2億円 |
| 納めた相続税額 | 4,860万円 |
| 売った不動産の相続税評価額 | 1億2,000万円 |
| 正しい分母(課税価格+債務控除額) | 2億2,000万円 |
| 加算できる額 | 2,650.9万円 |
| 分母に借入金を足し忘れた場合 | 2,916万円(265.1万円の過大) |
表の見方:分母は課税価格2億円ではなく、借入金を足し戻した2億2,000万円です。
重要ポイント:足し忘れると加算額が265.1万円大きく出ます。そのまま申告すると税額を53.9万円少なく申告したことになるため、後から追徴されるおそれがあります。
計算ロジック:課税価格2億円・子1人の相続税4,860万円に、割合1億2,000万円÷2億2,000万円=0.5455をかけて算出しています。売却益1億2,500万円を下回るため上限はかかりません。
STEP1からSTEP3の数字を当てはめると加算できる額が出ます。計算式は「納めた相続税額 ×(売った財産の評価額 ÷ 分母)」です。
加算できる額には上限があります。特例を使わない場合の売却益を超えることはできません。
売却益より大きい金額を加算できてしまうと、売却損を作り出せることになります。それを防ぐための上限です。売却損が出ている財産には加算できる額はありません。
この計算は売った財産ごとに行います。複数の財産を売った場合、1つの財産で使い切れなかった加算額を別の財産に回すことはできません。
参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
生前贈与でもらった財産も、相続税の課税価格に入っていれば分子に入れられます。ただし令和6年1月1日以後の贈与では控除された金額を引いた残額が分子になります。
| 分子に入れる財産 | 課税価格に入る金額 | 分子に入る金額 |
|---|---|---|
| 相続時精算課税を使った贈与財産(令和6年1月1日以後の贈与) | 贈与時の価額から基礎控除110万円を引いた残額 | 同じ(110万円を引いた後) |
| 相続開始前3年以内の暦年贈与 | 贈与時の価額そのまま | 同じ |
| 相続開始前4年〜7年の暦年贈与(令和6年1月1日以後の贈与) | 合計額から100万円を引いた残額 | 同じ(100万円を引いた後) |
相続時精算課税には年110万円の基礎控除ができました。この控除を引いた後の金額が課税価格に入るため、分子に入る金額も同じだけ小さくなります。
暦年課税の生前贈与加算も7年に延びましたが、4年前から7年前までの贈与は合計額から100万円を差し引きます。この場合も差し引いた後の残額が分子です。
重要ポイント:贈与を受けた当時の贈与税の申告書に書かれた金額をそのまま分子に使うと、110万円や100万円のぶんだけ加算額が大きくなりすぎます。
参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

取得費加算の特例は3つの要件をすべて満たした場合にだけ使えます。1つでも外れると加算額はゼロになるため、売却活動を始める前に確認しておきます。
要件は「相続や遺贈で取得した財産」「その人に相続税がかかっている」「3年10ヶ月以内に売る」の3つです。
| 要件 | 内容 | 外れるとどうなるか |
|---|---|---|
| ①相続や遺贈で取得した財産であること | 亡くなった人から相続または遺言で受け取った財産 | 生前にもらった財産は対象外 |
| ②その人に相続税がかかっていること | 相続税を実際に納めていること | 相続税がゼロなら加算できる額もゼロ |
| ③相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に売ること | 相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日まで | 1日過ぎると使えない(延長なし) |
重要ポイント:3つ目の期限は「相続税の申告期限の翌日から3年」が正確な数え方です。申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月なので、知った日が遅れた人は期限も後ろにずれます。
参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
この特例には「相続人であること」という条件はありません。遺言で財産を受け取った人なら親族でなくても使えます。
| 財産の受け取り方 | 使えるか | 理由 |
|---|---|---|
| 法定相続人として相続した | 使える | 相続による取得 |
| 遺言で受け取った(相続人以外の個人) | 使える | 遺贈による取得。親族でなくてよい |
| 相続放棄したあとに遺言で受け取った | 使える | 遺贈による取得にあたる |
| 生前贈与でもらった | 使えない | 相続や遺贈による取得ではない |
| 相続時精算課税で贈与を受けた | 使える | 相続税の課税価格に含まれる |
| 相続開始前の加算期間内(2026年までの相続は3年、2031年以後は7年)の贈与でもらった | 使える | 生前贈与加算で課税価格に含まれる |
| 法人が遺言で受け取った | 使えない | 法人税の対象で所得税の特例ではない |
重要ポイント:生前贈与でもらった財産は原則として対象外ですが、精算課税の贈与と生前贈与加算の対象の贈与は課税価格に含まれるため対象です。加算期間は2026年までの相続が3年で、2027年以後は段階的に延び、2031年以後は7年です。
この特例は相続税を納めた人のための制度です。各種の控除で相続税がゼロになった人は、加算できる額もゼロになります。
【相続税がゼロだと使えない】
この3つの控除は、控除する前の相続税額に足し戻して計算します。これらの控除でゼロになった人も加算できます(租税特別措置法39条6項・同法施行令25条の16第3項)。
配偶者は1億6,000万円または法定相続分までは相続税がかからないため、配偶者が相続した財産を配偶者自身が売る場合はこの特例が使えないことが多いです。
同じ相続でも、相続税を納めている子については使えます。誰がどの財産を相続するかで結果が変わる点は、分け方を決める段階で効いてきます。

この特例は譲渡所得だけに使えます。同じ相続財産でも、売却益が事業所得や雑所得になるものには使えません。
| 売ったもの | 所得の種類 | 使えるか |
|---|---|---|
| 土地・建物 | 譲渡所得 | 使える |
| 上場株式・非上場株式・投資信託 | 譲渡所得 | 使える |
| ゴルフ会員権・書画骨とう | 譲渡所得 | 使える |
| 金地金・金貨 | 譲渡所得 | 使える |
| 仮想通貨(暗号資産) | 原則として雑所得 | 使えない |
| 個人事業の商品・原材料 | 事業所得 | 使えない |
| 棚卸資産に準ずる土地・建物 | 雑所得 | 使えない |
仮想通貨は売却益が原則として雑所得になるため、相続して売っても取得費加算の特例は使えません。相続税と所得税の負担が重なりやすい財産です。

相続した金の延べ棒を売った利益は譲渡所得なので、この特例を使えます。金を3年以内に売った場合の手取りの試算は、下記の記事にまとめています。

相続した投資信託を売るときに、この特例と買った値段の記録の有無で手取りがどう変わるかは、下記の記事で試算しています。

相続税の申告をしていない状態では加算できる額を計算できません。まず相続税を申告し、そのうえで確定申告に反映する順序が必要です。
一方で「期限内に申告していること」は要件ではありません。期限に遅れた申告でもこの特例は使えます。
ただし条件があります。売った年の12月31日と相続税の申告期限のうち遅い日までに、相続税額が確定している必要があります。
重要ポイント:この日を過ぎてから相続税を申告した場合は、加算する相続税額を計算し直す規定が使えません(措置法通達39-8)。期限後申告になりそうなときほど、売却の時期に注意が必要です。
参照元:国税庁 措置法第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》関係

同じ制度でも、相続財産の構成や売る財産の種類で結果が変わります。加算できる額は納めた相続税額と売った財産の割合の掛け算で決まるためです。
前提となる相続税額は、国税庁 No.4155の速算表どおりに算出した金額を使っています。
相続財産が売る不動産だけのケースです。子1人が課税価格1億円の不動産を相続し、相続税1,220万円を納めました。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 1億2,000万円 |
| 取得費 | 1,000万円 |
| 譲渡費用 | 400万円 |
| 納めた相続税額 | 1,220万円 |
| 売った財産の相続税評価額 | 1億円 |
| 分母(課税価格+債務控除額) | 1億円 |
| 加算できる額 | 1,220万円 |
| 売却益(特例なし) | 1億600万円 |
| 売却益(特例あり) | 9,380万円 |
| 所得税・住民税(特例なし) | 2,153.4万円 |
| 所得税・住民税(特例あり) | 1,905.5万円 |
| 軽くなる税額 | 247.8万円 |
表の見方:分子と分母がどちらも1億円なので割合は1.00です。納めた相続税の全額1,220万円を加算できます。
計算ロジック:加算額=1,220万円 ×(1億円 ÷ 1億円)=1,220万円。売却益1億600万円を下回るため上限はかかりません。
株式は相続時より値下がりしていることがあります。取得費は相続時の時価ではなく被相続人が買ったときの価額を引き継ぎます。
総課税価格1億5,000万円(子2人)で相続税の総額が1,840万円、自分の課税価格6,000万円に対する相続税が736万円のケースです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 4,900万円 |
| 取得費 | 4,500万円 |
| 譲渡費用 | 15万円 |
| 納めた相続税額 | 736万円 |
| 売った財産の相続税評価額 | 5,000万円 |
| 分母(課税価格+債務控除額) | 6,000万円 |
| 割り振って計算した加算額 | 613.3万円 |
| 売却益による上限 | 385万円 |
| 加算できる額 | 385万円 |
| 売却益(特例なし) | 385万円 |
| 売却益(特例あり) | 万円 |
| 所得税・住民税(特例なし) | 78.2万円 |
| 所得税・住民税(特例あり) | 万円 |
| 軽くなる税額 | 78.2万円 |
表の見方:割り振りの計算では613.3万円ですが、売却益385万円が上限なので加算額はそこまでです。
重要ポイント:被相続人が高値で買った株式は売却益が小さく、加算額も小さくなります。株式は売る時期を市場に合わせて選べるため、売却益が出るタイミングを見ながら判断できます。

参照元:国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期
株式は不動産と違い、もともと持っていた同じ銘柄や、証券会社の口座の種類で扱いが変わります。売る前に次の2点を確かめてください。
| 場面 | 取得費加算の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続前から同じ銘柄を持っていて、その一部を売った | 相続で取得した株から先に売ったものとして計算できる | 措置法通達39-12 |
| 相続した株と、精算課税などの贈与でもらった株が混ざっている | 相続税の課税価格に入った1株あたりの価額が高い方から売ったものとして計算できる | 国税庁の質疑応答事例 |
| 源泉徴収ありの特定口座で売り、確定申告をしていない | 期限後申告で特例を使える | 期限内申告は要件でない |
| 源泉徴収ありの特定口座で売り、申告不要を選んで確定申告を済ませた | 後から特例を使うことはできない | 当初の申告で特例の記載がない |
重要ポイント:特定口座で源泉徴収された税金は、そのままでは取得費加算が反映されません。特例を使うなら、計算明細書を付けて確定申告をする必要があります。
注意点:確定申告で譲渡益を申告すると、合計所得金額が増えます。国民健康保険料や医療費の自己負担割合、扶養の判定に影響することがあるので、還付額と合わせて確かめてください。
借入金を引き継いだ人は分母が大きくなります。課税価格に債務控除額を足し戻した金額が分母になるためです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 1億5,000万円 |
| 取得費 | 2,000万円 |
| 譲渡費用 | 500万円 |
| 納めた相続税額 | 4,860万円 |
| 売った財産の相続税評価額 | 1億2,000万円 |
| 分母(課税価格+債務控除額) | 2億2,000万円 |
| 引き継いだ借入金 | 2,000万円 |
| 自分の課税価格 | 2億円 |
| 加算できる額 | 2,650.9万円 |
| 売却益(特例なし) | 1億2,500万円 |
| 売却益(特例あり) | 9,849.1万円 |
| 所得税・住民税(特例なし) | 2,539.4万円 |
| 所得税・住民税(特例あり) | 2,000.8万円 |
| 軽くなる税額 | 538.5万円 |
表の見方:分母は課税価格2億円ではなく2億2,000万円です。割合は0.5455になります。
計算ロジック:借入金のない人が同じ不動産を売った場合の加算額は2,916万円です。借入金があると265.1万円少なくなります。
A土地8,000万円・B土地5,000万円・C土地4,000万円・預金3,000万円を相続し、A土地だけを売るケースです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 1億円 |
| 取得費 | 1,500万円 |
| 譲渡費用 | 350万円 |
| 納めた相続税額 | 4,860万円 |
| 売った財産の相続税評価額 | 8,000万円 |
| 分母(課税価格+債務控除額) | 2億円 |
| 分子に入る土地 | A土地のみ8,000万円 |
| 分子に入らない土地 | B土地・C土地 |
| 加算できる額 | 1,944万円 |
| 売却益(特例なし) | 8,150万円 |
| 売却益(特例あり) | 6,206万円 |
| 所得税・住民税(特例なし) | 1,655.7万円 |
| 所得税・住民税(特例あり) | 1,260.7万円 |
| 軽くなる税額 | 394.9万円 |
表の見方:売っていないB土地とC土地の評価額は分子に入りませんが、分母である課税価格には含まれたままです。
重要ポイント:B土地とC土地も3年10ヶ月以内に売れば、それぞれについて加算できます。ただし期限は同じ日なので、3件を順番に売る計画が必要です。
被相続人が買ったときの契約書がないと、売却価格の5%を取得費とみなして計算します。取得費が小さくなるぶん売却益は大きく出ます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 8,000万円 |
| 取得費 | 400万円 |
| 譲渡費用 | 280万円 |
| 納めた相続税額 | 773.3万円 |
| 売った財産の相続税評価額 | 7,000万円 |
| 分母(課税価格+債務控除額) | 8,000万円 |
| 概算取得費(売却価格の5%) | 400万円 |
| 加算できる額 | 676.7万円 |
| 売却益(特例なし) | 7,320万円 |
| 売却益(特例あり) | 6,643.3万円 |
| 所得税・住民税(特例なし) | 1,487.1万円 |
| 所得税・住民税(特例あり) | 1,349.6万円 |
| 軽くなる税額 | 137.5万円 |
重要ポイント:実際の取得費2,500万円を証明できた場合の税額は923万円です。契約書が見つかれば426.6万円安くなります。
取得費加算の特例と概算取得費は同時に使えますが、契約書を探すほうが効果は大きくなります。まず書類探しを優先します。
5つのパターンを並べると、差がつくのは納めた相続税額・分母の大きさ・売却益の3点だとわかります。
| パターン | 売却価格 | 納めた相続税 | 加算できる額 | 軽くなる税額 | 効き方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1|不動産1件だけを相続して売る | 1億2,000万円 | 1,220万円 | 1,220万円 | 247.8万円 | 相続税の全額を加算できる |
| 2|上場株式を売る(値下がり) | 4,900万円 | 736万円 | 385万円 | 78.2万円 | 売却益で切られる |
| 3|借入金がある人が不動産を売る | 1億5,000万円 | 4,860万円 | 2,650.9万円 | 538.5万円 | 分母が大きくなり割合が下がる |
| 4|土地3件のうち1件だけ売る | 1億円 | 4,860万円 | 1,944万円 | 394.9万円 | 売った土地の分だけ加算できる |
| 5|買った値段がわからない | 8,000万円 | 773.3万円 | 676.7万円 | 137.5万円 | 売却益が大きく出るぶん効果も出る |
表の見方:軽くなる税額は「加算できる額 × 20.315%」です。加算できる額が売却益で切られたパターン2だけ、この関係が崩れます。
重要ポイント:パターン1とパターン2では軽くなる税額が3.2倍ちがいます。相続税を多く納め、売却益が大きい人ほど効果が出ます。
計算ロジック:各パターンの相続税額は課税価格と法定相続人の数から速算表で算出し、複数の相続人がいる場合は課税価格の割合で割り振っています。税率は長期譲渡所得の20.315%です。

この期限には延長制度がありません。ただし期限に間に合わないと思っても、まだ手が残っている場合があります。まず数え方を確認したうえで、3つの手を順番に見ていきます。
期限は「相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日」です。申告期限が相続開始から10ヶ月なので、合わせて3年10ヶ月と説明されます。
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ここで注意したいのが申告期限の数え方です。申告期限は「相続開始を知った日」の翌日から10ヶ月と定められています。
遠方の親族が亡くなり、亡くなってから1ヶ月後に知らせを受けた場合、申告期限も1ヶ月後ろにずれます。
その結果、取得費加算の特例が使える期限も、亡くなった日から数えると3年11ヶ月になります。相続開始日で機械的に計算すると、使える期間を1ヶ月短く見積もることになります。
重要ポイント:知った日が遅かったことを示す資料は残しておきます。死亡診断書の日付と、知らせを受けた日を示すものが後から必要になります。
参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
売却の期限は「譲渡した日」で判定します。この譲渡した日は原則として引き渡した日ですが、売買契約の効力が発生した日を選んで申告することもできます。
| 選ぶ基準 | いつを譲渡の日とするか | 使う場面 |
|---|---|---|
| 原則 | 買主に引き渡した日 | 通常はこちら |
| 選べる基準 | 売買契約の効力が発生した日(ふつうは契約した日) | 引き渡しが期限を過ぎてしまうとき |
不動産の売買では契約から引き渡しまで1〜2ヶ月かかります。契約は期限内に済んだのに引き渡しが期限を越える、という事態が起こりえます。
この場合に契約した日を譲渡の日として申告すれば、期限内の売却として扱えます。「引き渡しが間に合わないから諦めるしかない」わけではありません。
重要ポイント:この選択は譲渡所得の申告全体に及びます。契約日を選ぶと売却益を申告する年分も1年早まるため、所得税だけでなく翌年の社会保険料への影響も合わせて確認します。
契約日を選べる制度があることを前提に、期限の直前は「契約をいつまでに締結するか」を軸にスケジュールを組みます。
期限内に相続人自身が亡くなった場合、次の相続人は、最初の相続の相続税をもとに加算できます。
租税特別措置法通達39-11は、最初の相続人が亡くなる直前に加算できた金額を、次の相続人が引き継いだものとみなして計算してよいと定めています。
さらに期限そのものが後ろにずれる場合があります。最初の相続人が申告書を出さないまま亡くなると、その申告義務は次の相続人に引き継がれます。
引き継いだ申告期限は相続税法27条2項により「次の相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月」になります。この新しい申告期限の翌日から3年が売却の期限です。
重要ポイント:次の相続人は「最初の相続の金額をもとに計算する」か「次の相続の金額をもとに計算する」かを、売った財産ごとに選べます。有利なほうを選んで申告できます。
参照元:国税庁 第1次相続の申告期限前に第2次相続が開始した場合の特例を適用できる譲渡の期限
売買契約を結んだあと、引き渡しと代金の決済が済む前に売主が亡くなったケースです。この場合も相続人は取得費加算の特例を使えます。
売主が亡くなったケースでは、相続税の対象になるのは不動産そのものではなく残代金を受け取る権利です。
相続人が引き渡しの日を譲渡の日として申告するときは、分子に「残代金を受け取る権利と受け取り済みの手付金の合計」を入れます。
あわせて、まだ引き渡していない義務にあたる金額を分母の債務控除額に加算します。分子と分母の両方を組み替える扱いです。
買主が亡くなった場合は、相続人がその不動産を転売したときに使えます。分子には引き渡しを受ける権利の価額か、不動産として申告した場合の評価額を入れます。
重要ポイント:相続税の申告でこの権利をどう申告したかによって分子の金額が変わります。相続税の申告内容と確定申告の整合を必ず確認します。
参照元:国税庁 相続開始時点で売買契約中であった不動産の譲渡についての相続税額の取得費加算の特例の適用
3つの手を使っても間に合わない場合があります。このとき無理に値下げして売り急ぐと、特例の効果より損が大きくなることがあります。
1億円で売れる見込みの物件について、加算できる額ごとに比べます。
| 加算できる額 | 軽くなる税額 | 釣り合う値下げ額 | 売却価格に対する率 | 5%値下げしたときの手残りの減り |
|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 101.6万円 | 127.5万円 | 1.3% | 398.4万円 |
| 1,000万円 | 203.2万円 | 254.9万円 | 2.5% | 398.4万円 |
| 2,000万円 | 406.3万円 | 509.9万円 | 5.1% | 398.4万円 |
| 3,000万円 | 609.5万円 | 764.8万円 | 7.6% | 398.4万円 |
表の見方:「釣り合う値下げ額」は、特例で軽くなる税額と値下げによる手残りの減りがちょうど同じになる金額です。この金額を超える値下げをするなら、期限を捨てて価格を守るほうが得になります。
重要ポイント:期限を過ぎても、被相続人の所有期間を引き継ぐため長期譲渡所得の20.315%はそのまま使えます。期限切れで税率が上がるわけではありません。
計算ロジック:値下げをすると売却益も同じだけ減るため、手残りの減りは値下げ額の79.685%です。釣り合う値下げ額は「加算できる額 × 20.315% ÷ 79.685%」で算出しています。加算できる額3,000万円でも764.8万円までの値下げが限度です。

相続した不動産を売るときに使える制度は取得費加算だけではありません。併用できる制度が多く、選択が必要な代表は空き家の3,000万円控除です。
取得費加算は取得費を増やす制度で、特別控除は売却益から差し引く制度です。働く場所がちがうため、多くの制度と組み合わせられます。
| 組み合わせる制度 | 取得費加算と | 内容 |
|---|---|---|
| マイホームを売ったときの3,000万円特別控除(措法35条1項) | 併用できる | 相続した家に自分が住んでから売る場合など |
| マイホームを売ったときの軽減税率(10年超・措法31条の3) | 併用できる | 売却益6,000万円以下の部分が14.21%になる |
| 特定のマイホームの買換えの特例 | 併用できる | 課税を将来に繰り延べる制度 |
| 買った値段がわからないときの概算取得費(5%) | 併用できる | 両方を取得費に入れられる |
| 非上場株式を発行会社に売ったときのみなし配当課税の特例 | 併用できる | 受け取った金銭の全額が譲渡所得になる |
| 小規模宅地等の特例 | 併用できる | ただし減額後の評価額が分子になる |
| 空き家を売ったときの3,000万円特別控除(措法35条3項) | どちらかを選ぶ | 同じ部分について両方は使えない |
重要ポイント:マイホームの3,000万円特別控除と取得費加算は併用できます。「どちらかを選ぶ」と説明している解説は、空き家の3,000万円控除と混同しています。
相続した家に自分が住んでから売る場合、マイホームの特別控除で3,000万円を差し引いたうえに、取得費加算で取得費も増やせます。
参照元:国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
空き家の3,000万円控除は、取得費加算とどちらか一方を選ぶ制度です。判断の基準は「加算できる額が3,000万円を超えるか」の一点です。
加算できる額は「実質の負担率 × 売った財産の評価額」です。空き家特例は売却代金1億円以下が要件なので、評価額はおおむね8,000万円以下に収まります。
評価額8,000万円の家屋と敷地を売る場合の判定です。子1人が相続した前提で、課税価格ごとに加算できる額を並べました。
| 自分の課税価格 | 納める相続税額 | 実質の負担率 | 加算できる額 | 有利なのは |
|---|---|---|---|---|
| 1億円 | 1,220万円 | 12.2% | 976万円 | 空き家の3,000万円控除 |
| 1億5,000万円 | 2,860万円 | 19.1% | 1,525.3万円 | 空き家の3,000万円控除 |
| 2億円 | 4,860万円 | 24.3% | 1,944万円 | 空き家の3,000万円控除 |
| 3億円 | 9,180万円 | 30.6% | 2,448万円 | 空き家の3,000万円控除 |
| 4億円 | 1億4,000万円 | 35.0% | 2,800万円 | 空き家の3,000万円控除 |
| 5億円 | 1億9,000万円 | 38.0% | 3,040万円 | 取得費加算 |
表の見方:加算できる額が3,000万円を超えるのは課税価格が5億円のときだけです。実務ではほとんどの場合、空き家の3,000万円控除のほうが有利になります。
計算ロジック:加算できる額が3,000万円を超えるには、評価額8,000万円に対して実質の負担率が37.5%以上必要です。子1人でこの負担率に届くのは課税価格が5億円前後になってからです。
判定表のうち、空き家控除が有利なケースと取得費加算が有利なケースを実際の税額で比べます。売却価格はどちらも空き家特例の上限に収まる金額です。
| 項目 | 課税価格1億円のケース | 課税価格5億円のケース |
|---|---|---|
| 納めた相続税額 | 1,220万円 | 1億9,000万円 |
| 売った家屋と敷地の相続税評価額 | 7,000万円 | 8,000万円 |
| 売却価格 | 9,000万円 | 1億円 |
| 売却益(特例なし) | 8,250万円 | 9,150万円 |
| 取得費加算を選んだ場合の加算額 | 854万円 | 3,040万円 |
| 取得費加算を選んだ場合の税額 | 1,502.5万円 | 1,241.2万円 |
| 空き家の3,000万円控除を選んだ場合の税額 | 1,066.5万円 | 1,249.4万円 |
| 有利なのは | 空き家控除(436万円得) | 取得費加算(8.1万円得) |
重要ポイント:課税価格5億円のケースでも差は8.1万円しかありません。迷ったら空き家特例を選んでおけば大きく外さない関係です。
【相続人が3人以上だと分岐点が動く】
相続人の数は空き家特例の控除額を左右する要素なので、有利判定の前に必ず確認します。
空き家特例には家屋の建築時期や耐震改修などの要件もあります。要件を満たすかどうかの確認は下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
空き家特例と取得費加算が選択制なのは「同じ部分について」です。空き家特例の対象にならない部分には取得費加算を使えます。
租税特別措置法通達39-6は、空き家特例の適用対象とならない部分があるときの取得費加算額の計算方法を定めています。
たとえば1階が店舗で2階が住居だった建物の場合、空き家特例が使えるのは住居部分だけです。店舗部分には取得費加算を使えます。
同じ年に複数の不動産を売った場合も、物件ごとに選べます。一方に空き家特例、もう一方に取得費加算という組み合わせが可能です。
重要ポイント:併用不可という説明だけを見て取得費加算をあきらめると、店舗併用や賃貸併用の物件で加算できる分を取りこぼします。
参照元:国税庁 措置法第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》関係
所有期間が10年を超えるマイホームを売ると、売却益6,000万円以下の部分の税率が20.315%から14.21%に下がります。取得費加算とは別の制度で、条件を満たせば重ねて使えます。
相続した不動産は被相続人の所有期間を引き継ぐため、被相続人が10年以上持っていた家なら期間の条件を満たします。
自分が住んでいたことなどの要件を満たせば、マイホームの3,000万円特別控除・軽減税率・取得費加算の3つを重ねられます。
計算ロジック:軽減税率の14.21%は所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%の合計です。売却益6,000万円を超える部分は通常の20.315%になります。
参照元:国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
小規模宅地等の特例で評価額を下げた土地を売る場合、減額した後の評価額が分子になります。相続税の申告に使った金額をそのまま持ってくるためです。
評価を8割下げた土地なら、分子も8割減ります。同時に課税価格も下がって相続税自体が減るため、加算できる額は二重に小さくなります。
ただしこれは小規模宅地等の特例を使わないほうが得という話ではありません。相続税の減額幅のほうが圧倒的に大きいためです。
重要ポイント:判断すべきなのは「どちらを使うか」ではなく、相続税と売却時の税金を合わせたトータルで比べることです。


複数の財産を相続した場合、どの財産に使うかで軽くなる税額が変わります。さらに小規模宅地等の特例を使った土地には売れない期間があります。売る順番と時期の決め方を整理します。
加算できる額が確定するのは相続税の申告が終わってからです。登記や売却活動にも時間がかかるため、3年10ヶ月のうち実際に動きやすい時期は限られています。
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相続税の申告前に売ると、加算できる額がまだ決まっていません。この場合はいったん特例なしで確定申告し、あとから取り戻す手続きが必要になります。
一方で期限の直前に売ろうとすると、売れ残りと値下げの危険があります。前後を除くと申告後1年から3年の間が最も動きやすい時期です。
重要ポイント:相続登記が済まないと売却活動を始められません。令和6年4月から相続登記は3年以内の申請が義務になりましたが、売る予定があるなら申告後すぐに登記を進めます。
加算できる額は売却益が上限です。そのため売却益の小さい物件に使うと、加算額が使い切れずに消えます。使い切れなかった分を別の物件に回すこともできません。
割り振った加算額がどれも1,000万円になる3つの物件で比べます。売却益の大きさだけがちがうケースです。
| 物件 | 売却益(特例なし) | 割り振った加算額 | 実際に使える額 | 使えず消える額 | 軽くなる税額 |
|---|---|---|---|---|---|
| A物件 | 3,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | ― | 203.2万円 |
| B物件 | 800万円 | 1,000万円 | 800万円 | 200万円 | 162.5万円 |
| C物件 | 売却損200万円 | 1,000万円 | 万円 | 1,000万円 | 万円 |
表の見方:B物件は売却益800万円しかないため、加算額のうち200万円が使えません。C物件は売却損なので加算額はまったく使えません。
重要ポイント:売却益が加算額を上回る物件から順に売るのが基本です。使い切れなかった分を別の物件に回すことはできません。
複数の土地がある場合は、期限が全物件で同じ日であることにも注意します。3件を順番に売るなら、1件目の売却活動を早く始める必要があります。
小規模宅地等の特例には相続税の申告期限まで持ち続ける条件があるものがあります。同居していた親族が自宅を相続する場合と、貸していた土地を相続する場合です。
この条件があるため、申告期限までに売ると小規模宅地等の特例が使えなくなります。取得費加算のほうは申告期限より前に売っても使えるので、制約は片側だけです。
| 期間 | 小規模宅地等の特例 | 取得費加算の特例 |
|---|---|---|
| 相続開始〜申告期限(10ヶ月) | 売ると使えなくなる | 使える |
| 申告期限〜3年10ヶ月 | 売っても問題ない | 使える |
| 3年10ヶ月より後 | 売っても問題ない | 使えない |
表の見方:2つの特例をどちらも使うなら、売れるのは申告期限を過ぎてからです。実際に売却できる期間は3年10ヶ月ではなく約3年になります。
重要ポイント:3年という期間は不動産の売却では長くありません。相続税の申告を進めながら、並行して査定と売却の準備を始めます。
地方の土地や築年数の古い建物は、成約まで時間がかかります。売れにくい物件から先に売却活動を始めます。売却益が加算額を上回る物件を優先しつつ、成約までの期間も合わせて順番を決めます。
売却損が見込まれる物件では、この特例の効果はゼロです。加算できる額は売却益が上限なので、期限内の売却にこだわる理由はそもそもなくなります。

この特例は相続税を納めた人だけが使えます。そのため誰がどの財産を相続するかで、売ったときの税金が変わります。遺産分割をこれから決める人に効いてくる論点です。
配偶者は1億6,000万円または法定相続分まで相続税がかかりません。納める相続税がゼロなら、その配偶者が売っても加算できる額はゼロです。
遺産2億円(自宅の土地建物1億円と預金1億円)を配偶者と子1人で分け、その後に自宅を1億2,000万円で売る場合を比べます。
| 項目 | ケースA|配偶者が自宅を相続 | ケースB|子が自宅を相続 |
|---|---|---|
| 自宅の土地建物(相続税評価額) | 1億円(配偶者) | 1億円(子) |
| 預金 | 1億円(子) | 1億円(配偶者) |
| 相続税の総額 | 3,340万円 | 3,340万円 |
| 配偶者が納める相続税 | 0円(税額の軽減) | 0円(税額の軽減) |
| 子が納める相続税 | 1,670万円 | 1,670万円 |
| 自宅を売る人 | 配偶者 | 子 |
| その人が納めた相続税額 | 0円 | 1,670万円 |
| 加算できる額 | 0円 | 1,670万円 |
| 売却時の所得税・住民税 | 2,153.4万円 | 1,814.1万円 |
| 相続税と売却時の税金の合計 | 3,823.4万円 | 3,484.1万円 |
| 差 | ― | 339.3万円得 |
表の見方:一次相続で納める相続税はどちらのケースも同じ1,670万円です。差がつくのは売却時の税金だけです。
重要ポイント:自宅を子が相続しておくだけで売却時の税金が339.3万円安くなります。分け方を変えるだけなので、追加の費用はかかりません。
計算ロジック:相続税の総額3,340万円を課税価格の割合で割り振り、配偶者分は税額の軽減でゼロとしています。ケースBの加算額は1,670万円 ×(1億円 ÷ 1億円)=1,670万円です。
【分け方を決める段階で確認したいこと】
相続税だけを見て分け方を決めると、売却時の所得税で取り返されることがあります。
配偶者が相続したあとの二次相続で子が受け取り、そこから3年10ヶ月以内に売るという方法もあります。ただし売る時期を二次相続まで待つことになります。

不動産を1人が相続し、他の相続人にお金を渡して調整する分け方があります。この方法だと売らない相続人の加算額が使われないまま消えます。
評価額1億円の不動産だけを子2人で分け、1億2,000万円で売る場合を2つの分け方で比べます。
| 項目 | 代わりにお金を渡して分ける | 持分で分けてそれぞれ売る |
|---|---|---|
| 長男が相続するもの | 不動産の全部(1億円) | 不動産の10分の7(7,000万円) |
| 次男が相続するもの | 長男から現金(3,000万円) | 不動産の10分の3(3,000万円) |
| 長男の課税価格 | 7,000万円 | 7,000万円 |
| 次男の課税価格 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 長男が納める相続税 | 539万円 | 539万円 |
| 次男が納める相続税 | 231万円 | 231万円 |
| 売る人 | 長男だけ | 長男と次男 |
| 長男の加算額 | 539万円 | 539万円 |
| 次男の加算額 | 0円(売らないため使えない) | 231万円 |
| 加算額の合計 | 539万円 | 770万円 |
| 売却時の所得税・住民税の合計 | 2,043.9万円 | 1,997万円 |
| 差 | 46.9万円多い | ― |
表の見方:長男の加算額はどちらも539万円で同じです。差が出るのは次男の分で、売らない次男の231万円が使えないまま終わります。
重要ポイント:次男は相続税を231万円納めていますが、不動産を相続していないので加算に使えません。その結果、売却時の税額が46.9万円多くなります。
計算ロジック:長男の分子は租税特別措置法通達39-7により「不動産の評価額 ×(課税価格 ÷(課税価格+渡したお金))」で調整します。1億円 ×(7,000万円 ÷ 1億円)=7,000万円となり、割合はちょうど1.00です。
売る予定の不動産を1人に集めるより、持分で分けてそれぞれが売ったほうが加算額を使い切れます。ただし持分での売却は相続人全員の同意が必要になります。
重要ポイント:分子の調整が必要なのは、渡したお金と対応づけられた財産を売る場合だけです。遺産分割協議書でどの財産に対する代償なのかを特定しておくと、関係のない財産を売るときに調整が不要になります。

遺留分を払った場合も同じ:遺留分侵害額請求を受けてお金を払った人も、代償金と同じく分子を減らす調整をします。売った財産の評価額から、払った額のうちその財産に対応する分を引いて計算します。
遺産分割がまとまらない場合、法定相続分で分けたものとして相続税を申告します。この状態で売っても取得費加算の特例は使えます。
その後に分け方が決まって相続税額が変わったときは、加算できる額も変わります。所得税について修正申告または更正の請求で調整します。
ただし分け方が決まっていないと、誰が売主になるかを決められません。相続人全員の共有として売ることになり、実務の手間は増えます。
重要ポイント:売却の期限は分け方が決まるかどうかに関係なく進みます。協議が長引いているときほど、期限から逆算した判断が必要です。
不動産を売ってお金を分ける方法では、相続人それぞれが売主になります。加算できる額は相続人ごとに計算します。
各自の相続税額と課税価格を使うため、同じ不動産を売っても相続人ごとに加算できる額はちがいます。
相続税をまったく納めていない相続人がいれば、その人の分は加算できません。持分の決め方が売却時の税額に影響します。


この特例は確定申告で使うと書いて初めて認められます。申告のときに書き忘れると、原則としてあとから取り戻すことはできません。税務署長がやむを得ない事情があると認めた場合だけ、後から書類を出して使える例外があります。手続きと書類を確認します。
申告するのは財産を売った年の翌年です。確定申告の期間は2月16日から3月15日までで、提出先は住所地の税務署です。
特例を使った結果、納める税額がゼロになることがあります。税額がゼロでも申告は必要です。申告しないと特例そのものが使えません。
e-Taxでも申告できます。確定申告書等作成コーナーでは明細書の様式も用意されています。

参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
中心になるのは「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」です。この明細書に数字を入れていくと加算額が計算できます。
| 書類 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書 | 国税庁のホームページ | この書類で加算額を計算する |
| 譲渡所得の内訳書(土地・建物用) | 国税庁のホームページ・税務署 | 不動産を売った場合 |
| 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書 | 国税庁のホームページ | 株式を売った場合 |
| 取得費加算の特例チェックシート | 国税庁のホームページ | 確定申告書に添付する |
| 取得費を証明する書類 | 手元の保管書類 | 被相続人が買ったときの契約書・領収書 |
| 譲渡費用の領収書 | 仲介会社・解体業者 | 仲介手数料・解体費用など |
| 相続税の申告書の写し | ― | 平成30年分の確定申告から添付は不要 |
重要ポイント:相続税の申告書の写しは平成30年分の確定申告から添付が不要になりました。ただし明細書に書く数字は申告書から拾うため、写しは手元に用意しておきます。
取得費を証明する書類は見つからないこともあります。その場合は売却価格の5%を取得費として計算しますが、実額が使えたほうが税額は下がります。
明細書はA欄からC欄に数字を入れる形式です。分母はB欄とC欄の合計になります。
| 明細書の欄 | 書く内容 | 確認する書類 |
|---|---|---|
| 譲渡した資産の種類・数量 | 登記事項証明書の地目と地積 | 登記事項証明書 |
| 譲渡した資産の相続税評価額(A欄) | 相続税の申告に使った評価額 | 相続税の申告書 第11表 |
| 相続税の課税価格(B欄) | 自分の課税価格 | 相続税の申告書 第1表 |
| 債務控除額(C欄) | 引き継いだ借入金・葬式費用 | 相続税の申告書 第13表 |
| 確定した相続税額 | 自分の申告納税額 | 相続税の申告書 第1表 |
| 取得費に加算される相続税額 | 相続税額 × A ÷(B+C) | 上限は特例なしの売却益 |
表の見方:C欄の債務控除額を空欄にすると分母が小さくなり、加算額が大きく出ます。借入金や葬式費用を引いている人は必ず記入します。
計算した加算額は譲渡所得の内訳書に転記します。取得費と別の欄に書くのではなく、取得費に合算した金額を書きます。
内訳書への書き方:土地・建物を売ったときは、譲渡所得の内訳書の取得費の欄に、計算明細書で出した加算額を上段に「○相」と二段書きします。株式は「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の取得費の欄に含め、申告書に「措法39条」と書きます。
相続税の申告より先に所得税の申告期限が来ることがあります。この場合は特例を使わずに申告し、あとから「更正の請求」で取り戻します。
更正の請求とは、納めすぎた税金を返してもらうための手続きです。所得税の更正の請求は通常5年以内ですが、この特例では期限が大きく短くなります。
| 状況 | あとから取り戻せるか | 期限 |
|---|---|---|
| 所得税の申告期限までに相続税額が確定していなかった | 取り戻せる | 相続税の期限内申告書を提出した日の翌日から2ヶ月 |
| 相続税を修正申告して税額が増えた | 加算額を計算し直せる | 所得税の更正の請求で取り戻す(売った年の翌年以後の修正申告でも、修正後の税額で計算できる) |
| 税務署の更正で相続税額が変わった | 加算額を計算し直せる | 同上(更正後の税額で計算する) |
| 確定申告で取得費加算を書き忘れた | 原則として取り戻せない | ―(やむを得ない事情があると税務署長が認めた場合を除く) |
| 遅い日を過ぎてから相続税を申告した | 取り戻せない | ― |
重要ポイント:期限は相続税の期限内申告書を提出した日の翌日から2ヶ月です。5年ではありません。相続税を申告したらすぐに動く必要があります。
重要ポイント:一方で、確定申告のときに取得費加算を書き忘れただけの場合は、原則として救済されません。この特例には「申告のときに使うと書いていること」という条件があるためです。
相続税を修正申告して税額が増えた場合は、増えた後の税額で加算額を計算し直せます。所得税の申告をした後の修正申告でも同じです(租税特別措置法施行令25条の16第2項)。相続税が減った場合も同じで、こちらは所得税を修正申告することになります。

参照元:国税庁 相続税の修正申告があった場合における譲渡所得の取得費加算
加算額の計算でまちがえやすいのは、使う数字の取りちがえです。総額と自分の分、評価額と売却価格の混同が代表的です。
| よくあるまちがい | 正しい処理 |
|---|---|
| 家族全員の相続税の総額を使う | 自分が納めた相続税額だけを使う |
| 分母を課税価格そのままにする | 課税価格に債務控除額を足し戻す |
| 売却価格を評価額として使う | 相続税の申告書 第11表の評価額を使う |
| 相続人全員の課税価格の合計を分母にする | 自分の課税価格だけを使う |
| 加算額を取得費とは別の欄に書く | 取得費に合算した金額を書く |
| 税額がゼロになったので申告しない | ゼロでも申告しないと特例が使えない |
重要ポイント:分母を課税価格そのままにするまちがいは、加算額が大きく出るため過少申告になります。税務調査で指摘されると追徴の対象になります。
税理士に依頼する場合も、計算の根拠は自分でも確認しておきます。相続税の申告書のどの数字を使ったかを聞けば、取りちがえは見つけられます。

参照元:国税庁 取得費加算の特例の適用に係る譲渡資産について、相続により取得した株式のほかに贈与により取得した株式もある場合

取得費加算の特例は所得税の特例ですが、計算に使う数字はすべて相続税の申告書から拾います。相続税と譲渡所得の両方を扱える事務所でないと判断できません。
この特例は「使えるかどうか」だけでなく「いくら加算できるか」「他の制度とどちらを選ぶか」の判断が必要です。判断を誤ると金額が大きく動きます。
【相続税の対応実績がある税理士が必要な理由】
この5つはいずれも、所得税の申告だけを扱う事務所では判断できない論点です。見積りの段階で確認しておくと、依頼後に取りこぼしが出るのを防げます。
借入金2,000万円を引き継いだ人が、相続税評価額1億2,000万円の不動産を1億5,000万円で売るケースで比べます。
引き渡しが期限を数日過ぎる見込みだったとします。A事務所は「間に合わないので使えません」と判断し、B事務所は売買契約を結んだ日を売った日として申告する方法を提示しました。
この判断のちがいで税額は2,539.4万円と2,000.8万円に分かれ、差は538.5万円になります。
計算ロジック:課税価格2億円・子1人の相続税4,860万円に、割合1億2,000万円÷2億2,000万円をかけた2,650.9万円が加算額です。これに長期譲渡所得の税率20.315%をかけた金額が差になります。
複数の事務所から見積りを取ると、回答の粒度そのものが実務力の差として見えます。比べるべきポイントは3つです。
| 判定ポイント | A事務所の回答 | B事務所の回答 | 見えること |
|---|---|---|---|
| 加算額の計算根拠を出せるか | 「概算で〇〇万円くらいです」 | 申告書の第1表・第11表・第13表を指して計算過程を提示 | 数字の出所を言えるかどうか |
| 空き家特例との比較をするか | 「空き家控除のほうが有利です」 | 両方の税額を試算して差額を提示 | 判定を数値でしているかどうか |
| 期限が迫った場合の対応 | 「間に合わないので使えません」 | 売った日の基準を選ぶ方法を含めて3つの選択肢を提示 | 使える手を持っているかどうか |
重要ポイント:「概算で〇〇万円くらい」と答える事務所は、相続税の申告書を読まずに答えています。分母に債務控除額を足し戻すかどうかで金額が変わるため、申告書を見ずに出した概算は当てになりません。
重要ポイント:空き家の3,000万円控除との比較を数値で出せる事務所は、選択が必要な制度を把握しています。「空き家控除のほうが有利です」という結論だけの回答では検証できません。
この3点を確認すれば、相続税の対応実績がある税理士かどうかは初回相談の段階で判別できます。

この特例は取り返しがつかない場面が多い制度です。書き忘れ・選択の誤り・期限切れは、原則としてあとから直せません。
【相談しないまま進めるリスク】
分母に債務控除額を足し忘れた場合、加算額が265.1万円大きく出ます。本税で53.9万円の過少申告になり、過少申告加算税5.4万円と延滞税が上乗せされます。
この負担は、複数の事務所から見積りを取って計算根拠を比べることで避けられます。
一括相談・見積りは4つのステップで進みます。比較するのは報酬額だけでなく提案内容の質です。
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重要ポイント:相続税の申告がまだ済んでいない場合は、申告と売却の両方を見てもらえる事務所を選びます。分け方を決める前に相談すれば、誰が相続するかから提案してもらえます。
「納めた相続税額 ×(売った財産の相続税評価額 ÷(自分の課税価格+債務控除額))」で計算します。分母は課税価格そのままではなく、借入金や葬式費用を差し引く前の金額に戻して使います。計算した金額が特例を使わない場合の売却益を超える場合は、売却益が上限になります。
売った日は原則として引き渡した日ですが、売買契約の効力が発生した日を選んで申告することもできます。契約が期限内に済んでいれば、引き渡しが期限を越えても期限内の売却として扱えます。
また期限内に相続人自身が亡くなった場合や、相続開始の時点で売買契約中だった場合にも別の取扱いがあります。
原則として取り戻せません。この特例は確定申告のときに「特例を使う」と書いていることが条件です。税務署長がやむを得ない事情があると認めた場合だけ、後から書類を出して使えます。
所得税の申告期限までに相続税額が確定していなかった場合は、相続税の期限内申告書を出した日の翌日から2ヶ月以内に更正の請求ができます。相続税を修正申告して税額が増えた場合も、増えた後の税額で取り戻せます。
加算できる額が3,000万円を超えるかどうかで判定します。加算できる額は「相続税の実質の負担率 × 売った財産の評価額」なので、評価額8,000万円の物件なら負担率37.5%以上が必要です。
空き家特例は売却代金1億円以下が要件のため、実務ではほとんどの場合で空き家の3,000万円控除が有利になります。相続人が3人以上の場合は控除額が2,000万円に下がるので判定が変わります。
配偶者の税額の軽減で相続税がゼロになっていると、加算できる額もゼロです。売る予定のある財産は、相続税を納める子が相続したほうが売却時の税額が下がります。すでに配偶者が相続している場合は、二次相続で子が受け取ってから3年10ヶ月以内に売る方法もあります。
取得費加算の特例は、納めた相続税の一部を売却時の経費にできる制度です。使えるかどうかは3つの要件で決まりますが、実際にいくら軽くなるかは分母の取り方と他の制度との選択で変わります。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年10月時点の法令・情報に基づいて作成しています。税制改正により、内容が変更となる可能性があります。最新の制度については国税庁の公式サイトや相続税の対応実績がある税理士にご確認ください。