仮想通貨(暗号資産)の相続税は110%?ビットコインなどの相続税評価と二重課税

仮想通貨_相続税

ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は、現金や不動産と同じように相続税の対象になります。目に見えませんが、財産的な価値があるものとして扱われます。

評価額は亡くなった日の取引所の価格で決まります。

その後どれだけ値下がりしても、いったん決まった相続税は下がりません。

さらに相続した暗号資産を売ると、売却益に所得税と住民税が最大55%かかります。相続税の最高税率55%と足した数字が「110%」です。

ただし負担が本当に売却代金を超えるのは、買った値段がほぼゼロに近いときか、相続した後に価格が下がったときに限られます。

相続時2億円だった暗号資産が8,000万円まで下がってから売ると、相続税と所得税等の合計は売却代金の110.6%に達します。

この記事では、評価額の出し方、110%になる仕組み、物納と延納が使えない理由、納税する現金の作り方、秘密鍵が分からない場合の扱い、手続きの流れ、生前の対策までを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 相続税は亡くなった日の価格で決まる。その後いくら下がっても税額は変わらない。
  • 相続時2億円が8,000万円に下がると負担は売却代金の110.6%。売る時期で手取りが変わる。
  • 暗号資産は物納の対象にも延納の担保にもならない。ただし相続人自身の土地や保証人なら担保にできる。
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仮想通貨(暗号資産)も相続税の対象になる

仮想通貨は目に見えないデジタル資産ですが、財産的価値を持つものとして相続税の課税対象になります。現金や不動産と同様に「正味の相続財産」に計上され、基礎控除を超える部分に相続税が課されます。ただし、仮想通貨には通常の財産にはない特有のリスクと複雑さがあります。

相続税の対象になる仮想通貨の種類

相続税の対象になる仮想通貨は、財産的価値があると認められるすべての暗号資産です。国内の主要取引所で売買されているものから、海外取引所でのみ扱われているもの、さらにはNFTや独自トークンまで広く対象になります。

種類具体例評価方法相続税上の取り扱い
主要仮想通貨ビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)・リップル(XRP)相続発生日の取引所価格通常通り課税対象
アルトコインソラナ・ポルカドットなど相続発生日の取引所価格(活発な市場がある場合)通常通り課税対象
NFT(非代替性トークン)デジタルアート・ゲームアイテム個別評価(売買実例・精通者意見)課税対象(評価が複雑)
DeFiポジションステーキング報酬・流動性提供相続発生日時点の価値課税対象(把握困難)
秘密鍵不明の仮想通貨アクセス不可能な状態の仮想通貨原則として通常通り評価原則課税(交渉の余地あり)

仮想通貨は国内取引所だけでなく、海外取引所や自己管理ウォレットに分散して保有されていることが多く、財産の全容を把握することが申告の第一関門になります。

取引所管理(ホットウォレット)とプライベートウォレット(コールドウォレット)の違い

仮想通貨は保管場所によって相続手続きの難易度が大きく変わります。国内の主要取引所(コインチェック・GMOコイン・ビットフライヤーなど)で管理されている仮想通貨は「ホットウォレット」と呼ばれ、取引所に死亡届を出すことで手続きが進みます。

一方、インターネットに接続されていないハードウェアウォレット(LedgerやTrezorなど)に自己管理している仮想通貨は「コールドウォレット」といい、秘密鍵(プライベートキー)またはシードフレーズ(12〜24の英単語)がなければ技術的にアクセスできません。

種類具体例手続きの難易度紛失リスク
ホットウォレット(取引所管理)コインチェック・ビットフライヤー等低(取引所に連絡)低(取引所が管理)
ソフトウェアウォレットMetaMask・Phantom等中(シードフレーズが必要)
コールドウォレット(ハードウェア)Ledger・Trezor等高(秘密鍵+PINコードが必要)高(秘密鍵を失うと永久に取得不可)
ペーパーウォレット秘密鍵を紙に印刷したもの中〜高高(紙が失われると取得不可)

コールドウォレットの秘密鍵が失われると、仮想通貨はブロックチェーン上に存在し続けていても永久にアクセスできなくなります。生前に秘密鍵・シードフレーズを安全な場所に記録し、相続人に伝える準備が必要です。

「税率110%超」が起きる仕組みの全体像

仮想通貨の相続で最も深刻な問題は、相続税と売却時の所得税が重なり合う「二重課税」です。これが「税率110%超」といわれる現象を生む原因です

仕組みを簡単に説明します。被相続人が100万円で購入した仮想通貨が、相続時に1,000万円になっていた場合を考えます。

まず相続税は1,000万円の評価額に対して課税されます。次に相続人がその仮想通貨を1,200万円で売却すると、所得税は「売却価格 − 被相続人の取得価額(100万円)」に対して課税されます。

課税のタイミング課税対象税率納税者
相続時相続発生日の時価(1,000万円)10〜55%(相続税)相続人
売却時売却価格 − 被相続人の取得価額(100万円)最大55%(所得税・住民税)相続人

株式や不動産であれば「取得費加算の特例」(相続税申告期限から3年以内の売却で、支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度)が使えますが、仮想通貨は雑所得として扱われるためこの特例が適用されません。

仮想通貨の相続税評価額の算出方法

仮想通貨の相続税評価額は、財産の種類・市場の活発さ・アクセス可能かどうかによって算出方法が異なります。まず「活発な市場がある仮想通貨」の評価を理解し、それ以外のケースへの対応を確認しましょう。

活発な市場がある仮想通貨の評価|相続発生日の取引所価格

ビットコイン・イーサリアム・リップルなど、国内外の主要取引所で活発に売買されている仮想通貨は、「相続発生日(被相続人が亡くなった日)の取引所の最終公表価格(売却価格)」で評価します。

評価額 = 相続発生日の取引所の最終公表価格 × 保有数量

参照元:国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)

確認する価格使用する数値取得先
相続発生日の最終公表価格取引所が公表する売却価格(Bid価格)利用していた取引所のウェブサイト・残高証明書
相続発生日に公表がない場合前後で最も近い日の最終公表価格同上
複数の取引所で保有している場合各取引所の価格をそれぞれ確認各取引所

計算例:ビットコイン2.5枚を保有。相続発生日の取引所の最終公表価格が1枚600万円の場合

  • 評価額 = 600万円 × 2.5枚 = 1,500万円

仮想通貨の価格は24時間変動するため、「相続発生日の最終公表価格」を正確に記録することが重要です。取引所から「残高証明書」と「相続発生日の換算レート証明書」を取得して申告書に添付してください。

活発な市場がない仮想通貨・NFTの評価

マイナーなアルトコインやNFTのように、売買実績が少ない・価格が不安定な仮想通貨は「活発な市場が存在しない」と判断され、個別評価になります。個別評価では以下の基準を参考に評価額を算出します。

  • 売買実例価額:相続発生日前後で実際に取引された価格
  • 精通者意見価格:暗号資産の専門家による鑑定評価
  • 原価方式:取得価額を基礎とした評価

NFTの場合は、作品の希少性・発行枚数・過去の落札価格・関連プロジェクトの状況などを総合的に勘案して評価します。NFTは市場価格が存在しないケースも多く、評価額の算定に専門的な判断が必要です。

マイナーコインやNFTの評価は客観的な基準が少なく、税務調査で評価額を巡って問題になるケースがあります。評価方法の根拠を文書化しておくことが重要です。

秘密鍵が不明・アクセスできない仮想通貨の評価

コールドウォレットの秘密鍵が見つからない・パスワードを忘れた等の理由で仮想通貨にアクセスできない場合、相続税の取り扱いはどうなるのかが多くの方の疑問です。

原則として、仮想通貨がブロックチェーン上に存在している限り、アクセスできなくても相続税は課税されます。これは国税庁の公式見解です。

ただし、国会答弁では「客観的に換価不可能であることが明らかな場合には評価額をゼロとすることもあり得る」という見解が示されています。現実的には専門家を通じた税務当局との交渉が必要であり、一律に評価ゼロが認められるわけではありません。

状況相続税の取り扱い対応策
秘密鍵紛失・完全アクセス不可原則課税(評価ゼロは個別判断)専門家と相談のうえ税務当局と交渉
パスワード不明(推測可能)課税対象アクセス回復を試みながら申告
取引所が倒産・閉鎖回収不能な場合は評価ゼロの可能性あり専門家と相談

秘密鍵不明の仮想通貨は「存在するが使えない」という最悪の状況を生みます。生前対策として、秘密鍵・シードフレーズを安全な場所に記録し、信頼できる人物に伝えておくことが最も重要な対策です。

財産の種類ごとに評価額を下げられる余地は、下記の記事で解説しています。

相続税計算3ステップ|仮想通貨がある場合

仮想通貨の評価額が確定したら、相続税全体の計算に進みます。基本的な手順は他の財産と変わりませんが、仮想通貨特有の注意点があります。3つのステップで確認しましょう。

STEP1|保有する仮想通貨の全財産を把握する

相続税申告の前提として、被相続人が保有していた仮想通貨をすべて把握する必要があります。これが仮想通貨相続で最も難しい作業です。見落としがあると申告漏れになります。

調査の場所調査の方法主な見落としリスク
国内取引所各取引所に死亡連絡・残高照会複数取引所への分散保有
海外取引所メール履歴・アプリ検索申告漏れの最大原因
ハードウェアウォレットLedger・Trezor等の実物を探す秘密鍵と一緒に保管されていないケース
スマートフォン仮想通貨アプリを確認MetaMask等のソフトウェアウォレット
メール・通知取引所からの入出金通知メールを検索古いメールが削除されている
クレジットカード明細取引所への入金履歴を確認入金はあるが残高不明なケース

仮想通貨の財産調査は、被相続人のスマートフォン・PC・メールへのアクセス権限が必要です。パスワードが不明な場合は早急に専門家に相談してください。

STEP2|基礎控除を差し引いて課税遺産総額を求める

仮想通貨を含むすべての相続財産の合計から基礎控除を差し引きます。

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

法定相続人の数基礎控除額課税される仮想通貨評価額の目安
1人3,600万円仮想通貨+他財産の合計が3,600万円超で課税
2人4,200万円同4,200万円超で課税
3人4,800万円同4,800万円超で課税
4人5,400万円同5,400万円超で課税

仮想通貨は価格変動が大きいため、相続発生日の価格によっては基礎控除を大きく超えることがあります。仮想通貨の価格が高騰している時期に相続が発生した場合、基礎控除以下と思っていた財産が課税対象になるケースがあるため、必ず正確な評価額を確認することが必要です。

STEP3|税率を掛けて相続税額を算出する

課税遺産総額を法定相続分で按分し、速算表の税率を掛けて相続税の総額を計算します。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

法定相続分に応じた取得額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

相続税の申告期限は相続発生を知った翌日から10か月以内です。仮想通貨の財産調査に時間がかかる場合でも、この期限を守る必要があります。

基礎控除の計算式と課税されるかの判定は、下記の記事で解説しています。

ケース別シミュレーション5パターン|仮想通貨の相続税額を試算

仮想通貨の保有状況・家族構成・他の財産の有無によって相続税額は大きく変わります。5つのパターンで実際の税額を試算します。なお、試算は概算であり、相続税の特例・控除は考慮していません。

パターン1|ビットコイン500万円のみを相続したケース

項目内容
相続人子1人
仮想通貨ビットコイン500万円(亡くなった日の評価額)
他の財産預貯金2,500万円
財産の総額3,000万円
基礎控除3,600万円(3,000万円+600万円×1人)
課税遺産総額0円(財産の総額が基礎控除を下回る)
相続税0円

表の見方:財産の総額3,000万円が基礎控除3,600万円を下回るため、相続税はかかりません。ただし相続税がかからないケースでも、売却すれば所得税はかかります。

財産総額が基礎控除以下のため相続税はかかりません。ただし、その後子がビットコインを売却した場合、売却益に所得税が課されます。

被相続人の取得価額が100万円だった場合、子が600万円で売却すると「600万円 − 100万円 = 500万円」が雑所得として課税対象になります。

パターン2|複数の仮想通貨(合計2,000万円)を相続したケース

項目内容
相続人子2人
仮想通貨ビットコイン1,200万円+イーサリアム800万円=2,000万円
他の財産預貯金3,000万円
財産の総額5,000万円
基礎控除4,200万円(3,000万円+600万円×2人)
課税遺産総額800万円
法定相続分に応ずる取得金額(各1/2)400万円 → 各40万円(税率10%)
相続税の総額80万円(各人40万円)

重要ポイント:複数の取引所や銘柄に分けて持っていた場合は、それぞれの残高証明書が必要になります。1つでも漏れると申告漏れになります。

仮想通貨の高騰により基礎控除を超えた場合に相続税が発生します。複数の取引所・仮想通貨に分散して保有している場合、それぞれの残高証明書を取得する必要があります。一つでも漏れると申告漏れになります。

パターン3|仮想通貨+その他財産を相続したケース

項目内容
相続人配偶者・子1人
仮想通貨ビットコイン3,000万円(買ったときの値段200万円)
他の財産自宅不動産2,000万円+預貯金2,000万円
財産の総額7,000万円
基礎控除4,200万円(3,000万円+600万円×2人)
課税遺産総額2,800万円
配偶者(1/2)1,400万円 → 160万円(税率15%・控除50万円)
子(1/2)1,400万円 → 160万円
相続税の総額320万円

計算ロジック:配偶者の税額軽減を使わない場合の総額です。課税遺産総額2,800万円を法定相続分で分け、それぞれに税率を掛けてから合計しています

配偶者は「配偶者の税額軽減」により実際の納税額がゼロになるケースがほとんどです。ただし仮想通貨3,000万円(取得価額200万円)を後で売却すると、含み益2,800万円が雑所得として課税されます。

他に所得がない場合、課税所得2,800万円に対する税率は40%です。所得税840.4万円、復興特別所得税17.6万円、住民税280.0万円で、合計は1,138.0万円になります。

税率55%になるのは課税所得が4,000万円を超えたときです。含み益の大きさによって実際の負担率は変わります。

パターン4|相続後に仮想通貨を売却した場合(二重課税の計算例)

前提条件

  • 被相続人の財産:仮想通貨1,000万円+預貯金5,000万円=6,000万円
  • 被相続人が仮想通貨を買ったときの値段:100万円
  • 相続人は子1人(基礎控除は3,000万円+600万円×1人=3,600万円)
  • 相続人が1年後に1,200万円で売却
  • 相続人の給与収入:800万円

売却時の所得税の計算

  • 雑所得 = 1,200万円(売った値段)− 100万円(買ったときの値段)= 1,100万円
  • 給与所得 610万円(給与収入800万円 − 給与所得控除190万円)に雑所得1,100万円を合算
  • 課税所得 1,652万円(合算1,710万円 − 基礎控除58万円)→ 税率33%・控除153.6万円
  • 所得税の増える分:391.6万円 − 67.7万円 = 323.9万円
  • 復興特別所得税:323.9万円 × 2.1% = 6.8万円
  • 住民税:1,100万円 × 10% = 110万円
  • 所得税・復興特別所得税・住民税の合計:440.7万円

財産6,000万円に対する相続税は310.0万円で、このうち仮想通貨1,000万円に対応する分は51.7万円です。所得税等440.7万円と合わせると492.4万円になります。

同じ条件が上場株式だった場合と比べます。株式なら売却益は申告分離課税の20.315%で、取得費加算の特例も使えます。

財産の種類相続税の按分売却時の税合計の負担売却代金1,200万円に対する割合
仮想通貨51.7万円440.7万円(雑所得・総合課税)492.4万円41.0%
上場株式51.7万円213.0万円(譲渡所得・申告分離20.315%)264.6万円22.1%

表の見方:同じ1,000万円の財産を同じ1,200万円で売っても、仮想通貨は227.7万円多く払うことになります。負担率は22.1%と41.0%で2倍近い差です。

計算ロジック:株式の譲渡所得は1,200万円 − 100万円 − 取得費加算51.7万円 = 1,048.3万円で、これに20.315%を掛けて213.0万円としています。差が生まれる理由は税率と取得費加算の2つです。社会保険料控除は考慮していません。

重要ポイント:雑所得は総合課税なので、給与などその年の所得に合算して税率が決まります。売却益だけを取り出して税率を掛けると、税額を小さく見誤ります。

パターン5|秘密鍵不明・コールドウォレットが残されたケース

項目内容
相続人子1人
持っていたものハードウェアウォレットのビットコイン5,000万円(亡くなった日の評価額)
相続人が知らないもの秘密鍵・シードフレーズ・PINコード
基礎控除3,600万円(3,000万円+600万円×1人)
課税遺産総額1,400万円
相続税160万円(原則として課税される)
換金できるかできない。他の財産から相続税を払うことになる

表の見方:秘密鍵が分からなくても、ブロックチェーン上に存在する限り相続財産として計上するのが原則です。換金できないのに相続税だけがかかる状態になります。

このケースでは専門家を通じて税務当局と協議し、「換価不可能であることの証明」を行うことで評価額の見直しを求める交渉が必要になります。ただし認められる保証はありません。

最悪の場合は、換金できない財産に対して相続税を払うことになります。

このリスクを避けるには、秘密鍵やシードフレーズを生前に相続人へ伝えておくか、安全な記録媒体に保管して遺言やエンディングノートに保管場所を記しておくことが必要です。

仮想通貨相続の最大の問題|相続税と所得税の二重課税

仮想通貨の相続において、最も深刻な問題は相続税と所得税が重なる「二重課税」です。通常の財産では軽減できる税負担が、仮想通貨では現行法上の制度的な欠陥により解消されません。この問題の仕組みを正確に理解することが、対策を考えるうえで重要です。

「税率110%超」が発生するメカニズム

相続税の最高税率は55%です。これは法定相続分に応ずる取得金額が6億円を超える部分にかかる税率で、相続税に住民税はありません

売却したときの所得税と住民税は、合わせて最大55%です。この2つを足した数字が「110%」と呼ばれています。

ただし110%は、それぞれの最も高い帯にかかる税率を単純に足した数字です。実際の負担は下の帯の税率も使って計算するため、この割合がそのまま出るわけではありません。

財産の種類相続税売却時の所得税取得費加算の特例二重課税の程度
不動産・土地10〜55%15〜20%(譲渡所得・申告分離)使える(3年以内売却)軽減可能
上場株式10〜55%20.315%(申告分離)使える(3年以内売却)軽減可能
仮想通貨(現行)10〜55%最大55%(総合課税・雑所得)使えない最大110%超の課税
仮想通貨(改正後)10〜55%20.315%(申告分離)譲渡所得になるため余地は生じるが明示されていない売却時の税率は下がる

取得費加算の特例が使えない理由(株式との違い)

「取得費加算の特例」(租税特別措置法第39条)とは、相続税の申告期限から3年以内に相続財産を売却した場合、支払った相続税の一部を売却資産の取得費に加算できる制度です。これにより売却時の譲渡所得が圧縮され、二重課税が軽減されます。

株式や不動産はこの特例が使えますが、仮想通貨には適用されません。その理由は「適用区分」の違いです。

  • 株式・不動産の売却益:「譲渡所得」として申告分離課税(税率20.315%)→ 特例適用可
  • 仮想通貨の売却益:「雑所得」として総合課税(最大55%)→ 特例適用不可

この制度的な不公平を是正するため、令和10年(2028年)から仮想通貨の税制が変更される予定です。改正後は「取得費加算の特例」が使える可能性があります。

令和10年(2028年)の税制改正で何が変わるか

令和8年度税制改正で、一定の暗号資産の売却益を「譲渡所得・申告分離課税」に変える改正が決まりました。所得税15%に復興特別所得税0.315%と住民税5%を加えた20.315%になります。

適用されるのは、金融商品取引法の改正法が施行された日の属する年の翌年1月1日以後に売却した分です。最短で令和10年(2028年)1月1日以後の売却からになります。

対象は「一定の」暗号資産とされており、保有しているすべての銘柄が自動的に対象になるとは限りません。

比較項目現行(令和9年まで)改正後(令和10年〜・予定)
所得区分雑所得(総合課税)譲渡所得(申告分離課税)
税率5〜45%(住民税10%を加えて最大55%)20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
取得費加算の特例使えない譲渡所得になるため適用の余地が生じるが、適用関係は明示されていない
損益通算他の雑所得との通算のみ同年の他の暗号資産の損益と通算可能
損失の繰越控除不可3年間の繰越控除ができるようになる

改正後は売却益が「譲渡所得」として扱われるため、取得費加算の特例が適用される余地が生じます。ただし暗号資産にこの特例を使えるかどうかは明示されていません

施行の時期も金融商品取引法の改正法次第で動きます。売却の予定がある場合は、適用の有無を税理士に確認してください。

参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

取得費加算の特例が使える財産と計算方法は、下記の記事で解説しています。

上場株式を相続して売ったときの税金は、下記の記事で解説しています。

相続税を払う現金がないとき|売却代金を超える負担になる仕組み

相続税は亡くなった日の価格で決まり、その後いくら下がっても変わりません。暗号資産は値動きが大きいため、納税の時期に手元の価値が税額を下回ることが起こります。

ここでは、負担が売却代金を超える仕組みを数字で確かめたうえで、物納と延納が使えるのか、払う現金をどう作るのかという順番で見ていきます。

相続税は亡くなった日の価格で決まる

評価の基準になるのは、亡くなった日の取引価格です。翌日に半値になっても、相続税は下がりません

上場株式には「亡くなった月とその前2か月の平均のうち最も低い価格を選べる」という決まりがありますが、暗号資産にこの扱いはありません。値動きの大きさは同じでも、選べる余地がない点が違います。

重要ポイント:価格が下がったことを理由に相続税額そのものを減らしてもらうことはできません。申告のやり直しで対応できる話ではないため、納税の資金をどう作るかという問題として考える必要があります。

参照元:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

売却代金を超える負担になる2つの経路

負担が売却代金を超えるのは、含み益がほぼ全額のときと、相続後に価格が下がったときです。同じ「110%」という言葉で語られますが、起きる仕組みは別です。

どういう場合か相続時の評価額売却額相続税所得税・住民税合計の負担売却代金に対する割合
①買った値段がほぼゼロに近い
460万円で買ったものが14億3,660万円に
14億3,660万円14億3,660万円6億9,833.0万円7億9,623.6万円14億9,456.6万円104.0%
②相続の後に60%下がった
相続時2億円が8,000万円に
2億円8,000万円4,860.0万円3,985.9万円8,845.9万円110.6%
②相続の後に67%下がった
相続時3億円が1億円に
3億円1億円9,180.0万円5,104.8万円1億4,284.8万円142.8%

表の見方:①は売った金額がそのまま利益になるため、相続税と所得税がどちらも最も高い帯にかかります。②は売った金額が小さいのに、相続税は高いときの評価額で決まっている状態です。

計算ロジック:相続人は子1人、基礎控除は3,000万円+600万円×1人=3,600万円という前提です。住民税は一律10%、復興特別所得税は所得税額の2.1%で計算しています。

重要ポイント:所得税は暗号資産の利益だけを取り出さず、その年の所得に合算した課税所得で税率を決めます。利益だけに税率を掛けると、税額を小さく見誤ります。

重要ポイント:②で効いているのは売った値段ではなく、亡くなった日の値段で相続税が決まるという点です。下がってから売ると、相続税を払うための現金が足りなくなります。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

参照元:国税庁 No.2260 所得税の税率

暗号資産は物納の対象に含まれない

相続税を財産そのもので納める物納には、使える財産が法律で決められています。暗号資産はその中に入っていません。

物納に充てられるのは、順位の高いものから不動産・船舶・国債証券・地方債証券・上場株式等、次に非上場株式等、最後に動産です。この列挙に暗号資産という区分はありません。

注意点:物納には「延納でも金銭で納めることが難しい」という条件も付きます。先に延納を検討し、それでも払えない場合に初めて物納の話になります。順番を飛ばして物納だけを申請することはできません。

参照元:国税庁 No.4214 相続税の物納

延納の担保にもならないが、別の財産で立てられる

延納は分割払いの制度ですが、担保として出せる財産も限定されています。ここにも暗号資産は入っていません。

担保にできるのは国債・地方債、税務署長等が確実と認める有価証券、土地、保険を付けた建物や登記された船舶、鉄道財団などの財団、そして税務署長等が確実と認める保証人の保証です。

ただし担保は相続した財産でなくてもかまいません。相続人が自分で持っている土地や、他の相続人・第三者が持っている財産でも担保として提供できると定められています。

【暗号資産だけを相続しても延納を申請できる場合】

  • 相続人が自分の土地を担保に出す相続した財産である必要はありません
  • 他の相続人や第三者の財産を担保に出す本人以外が持っている財産でも認められます
  • 税務署長等が確実と認める保証人の保証を立てる|担保になる物がなくても、保証で代えられる場合があります
  • 延納税額が100万円以下で期間が3年以下なら担保は不要|小さな金額なら担保を用意しなくても申請できます

重要ポイント:暗号資産だけを相続した場合の延納は最長5年、利子税の特例割合は年0.7%です。不動産等の割合が50%未満に当たるためで、不動産を相続したときの最長20年と比べて期間が短くなります。

相続税額分割の回数毎年の納付額利子税の合計本則6.0%で計算した場合
4,860.0万円5回(5年)972.0万円102.06万円874.80万円

計算ロジック:相続時2億円の暗号資産を子1人が相続した場合の相続税4,860.0万円を、5年で均等に分けた試算です。利子税は残っている税額にかかるため、1年目34.02万円から5年目6.80万円へ減ります。

重要ポイント:特例割合0.7%で計算すると本則6.0%の8分の1以下になります。この割合は年によって変わるので、申請の前に所轄の税務署で確認してください。

参照元:国税庁 No.4211 相続税の延納

納税する現金を作る順番

先に売ってしまうと、選べる手が減ります。暗号資産を売る前に確かめる順番があります。

まず確認
他の相続財産と相続人自身の現金で足りるか
預貯金で払えるなら、暗号資産を売らずに済みます。売らなければ所得税はかかりません

次に検討
延納を申請できる担保があるか
相続人自身の土地や保証人でも担保になります。暗号資産を持ち続けたまま5年に分けて払う道が残ります。

売る場合
売る量を税額から逆算する
売却益に最大55%の所得税・住民税がかかるため、相続税と同額を売っただけでは足りません。

売った後
売却した年の翌年に確定申告をする
雑所得として申告します。相続税の申告期限とは別の期限なので、資金の予定を分けて考えます。

注意点:納税のために売るときは相続税と所得税の両方を賄える金額を売る必要があります。相続税の分だけ売ると、翌年の所得税を払う現金がなくなります。

参照元:国税庁 No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係

払えないときに相続放棄を選ぶ場合の制約

負担が資産の価値を超えるなら相続放棄という道もありますが、暗号資産だけを選んで放棄することはできません

放棄すると初めから相続人でなかったものとして扱われるため、預貯金や不動産も含めてすべてを引き継がないことになります。期限は相続の開始を知った日から3か月で、家庭裁判所への申述が必要です。

【相続放棄を検討するときの注意点】

  • 暗号資産だけの放棄はできない預貯金や不動産も含めて全部を引き継がないことになります
  • 期限は知った日から3か月過ぎると原則として放棄できません
  • 売却や送金をすると放棄が認められないことがある|財産を処分したとみなされる可能性があります
  • 子が放棄すると孫は代襲相続人にならない|次の順位の相続人に権利が移ります
  • 放棄した人は生命保険金の非課税枠を使えない|受取人固有の財産として受け取ること自体はできます

重要ポイント:放棄を検討している間は暗号資産を動かさないでください。売却や送金が「相続財産の処分」と判断されると、放棄が認められなくなるおそれがあります。

相続税を払う現金が足りないときの選択肢は、下記の記事で解説しています。

仮想通貨相続の手続きフロー

仮想通貨の相続手続きは、通常の相続手続きよりも複雑で時間がかかります。特に財産の把握(どこにどれだけあるか)と、コールドウォレットの引き継ぎに特別な対応が必要です。4つのステップで手順を確認しましょう。

STEP1|被相続人の仮想通貨を全て把握する(財産調査)

相続が発生したら、まず被相続人が保有していた仮想通貨の全容を把握します。仮想通貨は通帳や登記簿のような明確な記録がないため、複数の場所を丁寧に調査する必要があります。

調査の優先度調査場所調査方法
最優先スマートフォン・PC仮想通貨アプリ・取引所アプリの確認
最優先メールボックス取引所名(コインチェック・GMOコイン等)で検索
重要国内取引所主要6〜10社に問い合わせ(本人確認書類が必要)
重要物理的な保管場所金庫・引き出し・セーフティボックスにウォレット機器がないか確認
要確認海外取引所メール履歴・アプリから特定
要確認クレジットカード明細過去2〜3年の明細で取引所への入金を確認

調査が不完全で申告漏れになると、税務調査で発覚した際に無申告加算税・延滞税が追加されます。申告漏れが最も多いのが海外取引所の仮想通貨であり、被相続人のメールを徹底的に調査することが重要です。

STEP2|取引所に死亡届を提出して残高証明書を取得する

国内取引所で保有している仮想通貨については、各取引所に被相続人の死亡を連絡し、手続きを進めます。取引所によって手続きの方法は異なりますが、一般的に必要な書類は以下の通りです。

  • 死亡届出書(取引所所定の書式)
  • 被相続人の死亡を証明する書類(死亡診断書・住民票の除票)
  • 相続関係を証明する書類(相続関係説明図・戸籍謄本)
  • 相続人全員の本人確認書類・印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(または遺言書)

死亡連絡の際に「相続発生日の残高証明書」と「相続発生日の日本円換算レートの証明書」を合わせて請求しましょう。これらは相続税申告書の添付書類になります。

死亡連絡が遅れると、相続の手続きが終わるまで口座にアクセスできず、申告の準備が止まることがあります。相続が起きたらできるだけ早く各取引所に連絡してください。

STEP3|コールドウォレットの仮想通貨を引き継ぐ

コールドウォレット(ハードウェアウォレット)の仮想通貨は取引所を通さないため、手続きが異なります。秘密鍵またはシードフレーズを使って相続人が自分のウォレットに移転する必要があります。

引き継ぎのステップ必要なもの注意点
シードフレーズの確認12〜24の英単語のリスト紛失すると永久にアクセス不可
新しいウォレットの用意相続人のソフトウェアまたはハードウェアウォレット実績のある信頼できるウォレットを選ぶ
インポート操作シードフレーズを新しいウォレットに入力操作を誤ると資産を失う可能性あり
残高の確認仮想通貨の種類・数量を確認して記録
相続税申告書への計上相続発生日の評価額の証明書類ブロックチェーン上の取引記録を残す

コールドウォレットの操作は専門知識が必要です。誤った操作で仮想通貨を失うリスクがあるため、不慣れな場合は仮想通貨に詳しい専門家に依頼することをお勧めします。

STEP4|相続税申告書に計上して申告する

取引所からの残高証明書・換算レート証明書と、コールドウォレットの残高記録をもとに、相続税申告書に仮想通貨を計上します。申告期限は相続発生を知った翌日から10か月以内です

  • 第11表(相続税がかかる財産の明細書)に「暗号資産」として記載
  • 各仮想通貨の種類・数量・評価額を明記
  • 残高証明書・換算レート証明書を添付

申告書作成は専門的な知識が必要なため、仮想通貨の相続に詳しい税理士に依頼することを強く推奨します。

取引所やウォレットを漏れなく洗い出す方法は、下記の記事で解説しています。

亡くなった後にやること全体の流れは、下記の記事で解説しています。

相続税申告に必要な書類の一覧は、下記の記事で解説しています。

申告漏れが多い仮想通貨と見落としやすいポイント

仮想通貨の相続税申告では、一般の財産と比べて申告漏れが起きやすい特有のポイントがあります。税務調査で発覚した場合、重加算税(35〜40%)が加算される可能性があるため、事前に把握しておくことが重要です。

海外取引所(バイナンス・コインベース等)の申告漏れリスク

国内取引所と異なり、海外取引所は日本の税務当局との情報共有が限定的です。しかし、国際的な税務情報交換の仕組みが整備されており、申告漏れが発覚するリスクは年々高まっています。

海外取引所の特徴申告漏れのリスク対策
日本語サポートが不十分相続手続きが困難・時間がかかる仮想通貨専門の税理士に依頼
本人確認なしで登録可能なケースも被相続人のアカウントを特定できないメール履歴から取引所を特定する
取引履歴の取得が困難取得価額の計算ができないCSVデータをダウンロードして保存
日本語での残高証明書が発行されない申告書への添付に工夫が必要英文書類を翻訳して添付

海外取引所の仮想通貨は「申告しなければバレない」と考えるのは危険です。金融機関の国際的な情報交換協定(CRS)により、海外口座の情報が国税庁に提供されるケースが増えています。必ず申告してください。

DeFi・ステーキング報酬の取り扱い

DeFi(分散型金融)でのステーキング報酬・流動性提供報酬・レンディング利息なども、相続発生時点で保有していれば相続財産に含めます。これらは複雑な仕組みで管理されているため、把握が難しいケースがあります。

  • ステーキング報酬:相続発生日時点の累積報酬額を評価
  • 流動性プールのポジション:プール内の仮想通貨の評価額で計算
  • レンディング(貸し出し中):貸し出し中の元本+未収利息を評価

DeFiポジションはブロックチェーンを直接確認しないと把握できないため、被相続人のウォレットアドレスを特定することが財産調査の前提になります。

NFTの相続税評価と申告の注意点

NFT(非代替性トークン)も財産的価値があれば相続税の対象です。しかし、NFTの評価方法は仮想通貨ほど明確な指針がなく、個別に評価する必要があります

NFTの種類評価の考え方難易度
人気コレクション系OpenSea等のフロア価格(最低価格)を参考
1点もの・高額アート直近の成約価格・精通者意見
ゲームアイテムゲーム内マーケットの取引価格中〜高
価値不明のNFT精通者意見または取得価額ベース非常に高い

NFTはプロジェクトが終了すると価値がゼロになることもあります。評価日時点での実態に即した評価が必要で、専門家への相談が推奨されます。

申告漏れが見つかったときのペナルティは、下記の記事で解説しています。

税務調査でどこまで調べられるかは、下記の記事で解説しています。

海外に財産がある場合の課税の判定は、下記の記事で解説しています。

仮想通貨の相続税を減らす生前対策

仮想通貨の二重課税リスクを回避し、相続人の税負担を軽減するために、生前にできる対策があります。相続発生前から計画的に実施することで、大きな節税効果が期待できます

生前売却して現金化する(最も効果的な対策)

含み益を持つ仮想通貨を生前に売却して現金化することで、相続時の財産評価を「現金」に変え、二重課税を避けることができます。売却時に所得税はかかりますが、相続税との合算が避けられるため、トータルの税負担を抑えられるケースが多いです。

比較項目生前売却して現金化仮想通貨のまま相続
所得税(売却時)現行最大55%(本人の所得税率による)相続人が売却時に最大55%
相続税現金として評価(評価額の変動なし)相続発生日の時価で評価
二重課税なし発生する
取得費加算の特例対象外(本人の売却)現行は使えない

生前売却は「現時点での所得税を確定させる」代わりに「相続後の二重課税リスクを回避する」という選択です。どちらが有利かは仮想通貨の保有額・含み益・家族の状況によって異なるため、税理士に試算してもらうことをお勧めします。

暦年贈与で少しずつ移転する

年間110万円以下の贈与は贈与税がかかりません。毎年少量の仮想通貨(または売却後の現金)を後継者に贈与することで、相続財産を少しずつ減らすことができます。

  • 暦年贈与:年間110万円以下の贈与は非課税。2024年改正により相続発生前7年以内の贈与は相続財産に加算(旧ルールは3年)
  • 相続時精算課税:累計2,500万円まで贈与税ゼロ(相続時に相続財産に加算)。贈与時の評価額で固定されるため、価格上昇前の贈与が有利

仮想通貨の価格が低い時期に相続時精算課税を使って贈与することで、価格上昇分の課税を回避できます。価格の変動を見計らった贈与タイミングの判断が重要です。

デジタル遺産リストを作成する

仮想通貨を保有している場合、相続人が財産の全容を把握できるよう「デジタル遺産リスト」を作成しておくことが重要です。これが最もコストのかからない対策であり、相続人の負担を大幅に軽減します。

デジタル遺産リストに記載すべき項目

  • 利用している国内取引所の名称・登録メールアドレス
  • 利用している海外取引所の名称・登録情報
  • ハードウェアウォレットの種類・保管場所
  • シードフレーズの保管場所(直接記載は危険・封印して保管)
  • 主な保有仮想通貨の種類
  • ウォレットアドレス(参考として)

シードフレーズや秘密鍵を遺言書に直接記載することは、第三者に見られるリスクがあるため推奨しません。別途封印して「特定の場所に保管している」とだけ遺言書や遺書に記載する方法が安全です。

秘密鍵・ウォレット情報の確実な引き継ぎ準備

コールドウォレットの秘密鍵・シードフレーズは、紛失すると永久に仮想通貨にアクセスできなくなります。一方、保管方法が不適切だと盗難リスクがあります。安全かつ確実な引き継ぎのために以下の方法を検討してください。

引き継ぎ方法メリットデメリット
金庫に保管・鍵を相続人に教えるシンプルで確実金庫への不正アクセスリスク
公証役場での保管安全性が高い費用・手間がかかる
弁護士・司法書士への寄託専門家が管理費用がかかる
シャミアの秘密分散単一の紛失リスクを分散できる技術的な知識が必要

シードフレーズをメールやクラウドサービスに保存することは、ハッキングで盗まれるリスクがあるため絶対に避けてください。物理的な媒体(紙またはスチールプレート)に記録し、安全な場所に保管することが基本です。

NISA口座を相続したときの評価と手続きは、下記の記事で解説しています。

暗号資産の相続は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

暗号資産の相続税は評価と納税資金の見立てで結果が変わります。複数の事務所から見積りを取り、方針と報酬を比べてください。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

分かれ目になるのは取引所とウォレットを漏れなく洗い出せるか、納税する現金の道筋を描けるかの2点です。

【相続税の対応実績がある税理士に相談すべき理由】

  • 複数の取引所とウォレットを洗い出せる1つ漏れると申告漏れになり、加算税の対象になります
  • 亡くなった日の価格で正しく評価できる取引所ごとに価格が違うため、根拠を示せる資料が必要です
  • 売却したときの所得税まで含めて資金の計画を立てられる|相続税だけ見て売ると、翌年の所得税で足りなくなります
  • 延納の担保を立てられるか判断できる|相続人自身の土地や保証人でも担保になります
  • 秘密鍵が不明な場合の申告方針を示せる|換金できない財産をどう扱うかは判断が要る部分です

たとえば相続時2億円の暗号資産を子1人が相続したという場合を考えます。

A税理士は相続税4,860.0万円分だけを売るよう案内しました。翌年、売却益にかかる所得税・住民税を払う現金が足りなくなりました。

B税理士は所得税まで織り込んで売る量を決め、相続人自身の土地を担保に延納も併用しました。手元に暗号資産を残したまま納税を終えられました

複数の税理士に相談するメリット

比べるべきなのは暗号資産を扱った件数と、納税資金の提案があるかです。同じ財産でも手元に残る額が変わります。

判定ポイント1:暗号資産の申告を何件扱ったか「取引所の残高証明はどう取りますか」と聞いてみてください。→ 手順を即答できない事務所は、扱った件数が少ない可能性があります。

判定ポイント2:売却後の所得税まで説明があるか相続税の話だけで終わる見積りかどうかを見ます。→ 売却益は最大55%の総合課税なので、ここを外すと資金が足りなくなります。

判定ポイント3:延納や担保の提案があるか「暗号資産を売らずに納税する方法はありますか」と聞きます。→ 相続人自身の土地や保証人で担保を立てる案が出るかで実務力が分かります。

相談しないまま進めるリスク

暗号資産は税務署が把握する仕組みが年々広がっています。申告しないまま済ませられる財産ではありません。

【相談しないまま進めた場合のリスク】

  • 取引所やウォレットの漏れで申告漏れになる調査で指摘されると過少申告加算税が上乗せされます
  • 相続税の分だけ売って翌年の所得税が払えなくなる売却益には最大55%の所得税・住民税がかかります
  • 延納の担保を立てられることを知らずに全部売ってしまう|相続人自身の土地でも担保にできます
  • 放棄を検討中に売却して放棄できなくなる|財産の処分とみなされる可能性があります
  • 秘密鍵が不明なまま期限を迎える|申告期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月です

暗号資産の取引情報を各国の税務当局が自動で交換する枠組みも始まります。海外の取引所を使っていても把握される方向に進んでいます。

参照元:国税庁 No.1525 暗号資産交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

見積りはフォームの記入5分から始められます

STEP1
相続の概要を整理する
亡くなった方の財産の内容とおおよその金額、相続人の構成を書き出します。使っていた取引所の名前と、ウォレットの有無を控えてください

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する
「相続税申告」「暗号資産の評価」「納税資金の相談」など希望する内容を伝え、3〜5社へ同時に打診します。不動産があれば所在地と広さも記載します。財産の種類と相続人の人数は正確に書くほど見積りの精度が上がります。フォームの記入は5分程度です。

STEP3
見積りと初回相談を受ける
各事務所から提案内容・試算した相続税額・報酬額が届きます。気になる事務所と初回相談を行い、売却後の所得税まで説明があるかを確かめます

STEP4
税理士を選定して正式に依頼する
提案内容の質、説明の丁寧さ、報酬の納得性で選びます。相続の開始から7か月以内に決めてください。申告期限の10か月まで余裕を残せます。

重要ポイント:暗号資産がある相続では財産の洗い出しに時間がかかります。取引所への照会には戸籍などの書類が必要で、回答を待つ期間も見込んでおく必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q. パスワードや秘密鍵を知らない仮想通貨にも相続税はかかりますか?

原則としてかかります。仮想通貨がブロックチェーン上に存在している限り、技術的にアクセスできなくても相続税は課税されるというのが国税庁の見解です。

ただし、客観的に換価できないことが明らかな場合には評価額がゼロになる可能性があるという国会答弁もあります。この場合は税務当局との個別の交渉が必要なので、専門家に相談してください。

Q. 仮想通貨の相続税評価額はいつの価格を使いますか?

相続発生日(被相続人が亡くなった日)の取引所の最終公表価格(売却価格)を使います。相続発生日に価格が公表されていない場合は、前後で最も近い日の最終公表価格を使用します。価格は利用していた取引所から「残高証明書」「換算レート証明書」を取得して確認します。

Q. 相続した仮想通貨を売却した場合、取得費加算の特例は使えますか?

現行法では使えません。「取得費加算の特例」は譲渡所得に適用される制度ですが、仮想通貨の売却益は雑所得として扱われるため対象外です。

令和8年度税制改正で、一定の暗号資産の売却益は譲渡所得(申告分離課税)に変わります。ただしこの特例を使えるかどうかは明示されていません。売却の予定がある場合は税理士に確認してください。

Q. 海外取引所の仮想通貨も申告が必要ですか?

必要です。海外取引所の仮想通貨も日本の相続税の課税対象になります。「海外だから申告しなくてもバレない」という考えは危険です。

国際的な金融情報の自動交換制度(CRS)により、税務当局が把握するケースが増えています。申告漏れが発覚した場合は重加算税(35〜40%)が加算されます。

Q. NFTも相続税の対象になりますか?

財産的価値があると認められるNFTは相続税の対象です。ただし、市場価格が明確でないNFTの評価方法は個別の判断になります。

過去の取引事例、フロア価格、精通者意見などを参考に評価額を出します。価値がほぼゼロのNFTは評価がゼロになることもありますが、判断には専門家の確認が必要です。

まとめ|仮想通貨の相続は早期の財産把握と生前対策が鍵

仮想通貨(暗号資産)の相続税は、亡くなった日の取引所の価格で決まります。その後に価格が下がっても税額は変わらないため、納税する現金をどう作るかが問題になります。

この記事の要点をまとめます。

  • 評価額は亡くなった日の取引所の価格×保有数量。秘密鍵が分からなくても原則として課税される
  • 相続税の最高税率55%と、売却益にかかる所得税・住民税の最大55%を足した数字が「110%」。相続税に住民税はない
  • 負担が売却代金を超えるのは2つの場合。買った値段がほぼゼロに近いとき(104.0%)と、相続の後に価格が下がったとき
  • 相続時2億円が8,000万円に下がってから売ると負担は売却代金の110.6%。3億円が1億円なら142.8%
  • 取得費加算の特例は雑所得には使えない。同じ条件の上場株式より227.7万円多く払うことになる(41.0%対22.1%)
  • 令和8年度税制改正で一定の暗号資産は譲渡所得・申告分離課税(20.315%)に変わる。適用は最短で令和10年1月1日以後の売却から
  • 暗号資産は物納の対象にも延納の担保の列挙にも入っていない。ただし相続人自身の土地や保証人なら担保にできる
  • 延納は最長5年・利子税の特例割合は年0.7%。4,860万円を5年で分けると利子税は102.06万円
  • 海外取引所・NFT・ステーキングの報酬も申告の対象。漏れると重加算税35〜40%が課される可能性がある

今すぐ取るべき行動

  • 被相続人のスマートフォンとパソコンで、使っていた取引所とウォレットを洗い出す
  • 各取引所に死亡を連絡し、亡くなった日の残高証明書と円換算レートの証明書を請求する
  • ハードウェアウォレットと秘密鍵・シードフレーズの保管場所を探す
  • 相続税と、売却したときの所得税の両方を見積もる
  • 他の財産や相続人自身の現金で払えるか確認する(売らずに済めば所得税はかからない)
  • 延納の担保に使える財産があるか確認する(相続人自身の土地でもよい)
  • 複数の税理士に見積りを依頼し、売却後の所得税まで説明があるか比べる

※本記事は2026年9月時点の法令・税率に基づいています。暗号資産の税制は改正が予定されているため、申告の前に国税庁のウェブサイトで確認してください。個別の判断は税理士にご相談ください。

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