


相続した金(ゴールド)には相続税がかかります。金の延べ棒(インゴット)、金貨、純金積立のどれも、預金や不動産と同じ相続財産です。
相続税での金の値段は、亡くなった日の業者の買取価格に重さを掛けて決めます。お店で買うときの小売価格ではなく、売るときの買取価格を使う点がポイントです。
金の値段はここ数年で大きく上がりました。親が昔買った金でも、相続のときはいまの相場で評価されるため、思った以上に相続税が増えることがあります。
相続した金を売ると、相続税とは別に所得税がかかります。親がいくらで買ったかの記録があるか、いつ売るかで、手元に残る金額は大きく変わります。
金は売れば業者から税務署に支払調書が出るため、申告から漏らしたままにはできません。評価から売却までの流れを、最初に知っておくことが大切です。
この記事では、金の相続税評価額の計算方法、種類別の評価、買取価格の調べ方、税務署が金を把握する仕組み、売るときの税金、相続から売却までの手取りの試算、分け方と申告書の書き方を解説します。
▼ この記事の3行まとめ

金の相続税評価額は、亡くなった日に業者が金を買い取る価格に、金の重さを掛けて計算します。計算は単純ですが、どの日のどの価格を使うかを間違えやすい財産です。
この章では、計算式と計算例、買取価格を使う理由、金があると相続税がいくら増えるかを整理します。
計算式は「亡くなった日の1gあたりの買取価格(税込み)×重さ(g)」です。業者は消費税込みの価格を公表しているので、その価格をそのまま使います。亡くなった日の価格を使い、申告する日の価格ではありません。
| 持っていた金 | 重さ | 亡くなった日の買取価格(仮定) | 相続税評価額 |
|---|---|---|---|
| 金の延べ棒 1本 | 1,000g | 1gあたり2万円 | 2,000万円 |
| 金の延べ棒 5本 | 500g(100g×5) | 1gあたり2万円 | 1,000万円 |
| 金貨 10枚 | 約311g(1オンス×10) | 1gあたり2万円 | 約622万円 |
表の見方:1gあたりの価格は説明のための仮定です。実際の申告では、亡くなった日に業者が公表していた買取価格を使います。
重要ポイント:亡くなった後に金の値段が下がっても、評価額は亡くなった日の価格のままです。値下がりした分を差し引く仕組みはありません。
計算ロジック:1,000g×2万円=2,000万円。金貨は1オンス=約31.1gなので、10枚で約311g、311g×2万円=約622万円です。金貨は種類によって金の含有量が違うため、刻印で確かめます。
金の業者は、お店が売る小売価格と、お店が買い取る買取価格の2つを毎日公表しています。相続税の評価に使うのは、低いほうの買取価格です。
財産評価基本通達には金の決まりがなく、家財などと同じ「一般動産」として評価します。一般動産は、売買の実例の価格などをもとに、その時点で実際にお金に換えられる価格で評価するのが原則です(財産評価基本通達129)。
相続した人が金をお金に換えるときは、業者に買い取ってもらうので、買取価格がその時点の時価になります。小売価格で評価すると、実際には受け取れない金額に相続税を払うことになります。
解説記事の中には、小売価格を参考にすると書いているものもあります。小売価格は買取価格より1gあたり数百円以上高いのが一般的なので、量が多いと評価額に大きな差が出ます。
金があることで増える相続税は、ほかの遺産の大きさで決まります。遺産が大きい家庭ほど、同じ1,000万円分の金でも相続税は多く増えます。
| 金以外の遺産 | 金1,000万円が加わったときに増える相続税(総額) |
|---|---|
| 5,000万円 | 100万円 |
| 8,000万円 | 150万円 |
| 1億円 | 190万円 |
| 2億円 | 300万円 |
表の見方:相続人が子2人の場合の、相続税の総額の増え方です。金の値段が上がった分だけ、そのまま相続税の対象が増えます。
計算ロジック:【前提】相続人は子2人、特例の適用なし。遺産1億円の相続税の総額は770万円、1億1,000万円では960万円で、差は190万円です(相続税の速算表)。
預金と自宅だけなら基礎控除の範囲に収まる家庭でも、金を足すと超えることがあります。金の値段が上がった今は、昔買った少しの金で申告が必要になるケースが増えています。
| 財産 | 金がない場合 | 金300gがある場合 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 2,500万円 | 2,500万円 |
| 自宅(相続税評価額) | 1,400万円 | 1,400万円 |
| 金(1gあたり2万円) | − | 600万円 |
| 合計 | 3,900万円 | 4,500万円 |
| 相続税(子2人・基礎控除4,200万円) | 0円・申告不要 | 総額30万円・申告必要 |
表の見方:金300gが加わるだけで基礎控除を超え、申告が必要になります。自宅に小規模宅地等の特例を使える場合でも、特例を使うには申告が必要です。
計算ロジック:【前提】相続人は子2人。基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円。4,500万円−4,200万円=300万円を2人で分け、1人150万円×10%=15万円、2人で30万円です。

金の持ち方はさまざまで、種類によって評価の考え方が少しずつ違います。延べ棒と純金積立は相場で、アクセサリーや仏具は個別に評価します。
この章では、延べ棒・金貨・純金積立・プラチナと銀・アクセサリーと宝石・仏具の6つを整理します。
金の延べ棒は、亡くなった日の1gあたりの買取価格×重さで評価します。重さと品位(純度)は、延べ棒の表面の刻印で確かめます。
刻印には、製造したメーカーのマーク、品位(999.9など)、重さ、製造番号が入っています。純度99.99%の延べ棒が一般的で、業者の公表価格もこの純度を前提にしています。
100g未満の小さな延べ棒は、売るときに1本ごとの手数料(バーチャージ)がかかることがあります。評価額から手数料を差し引くかは扱いが分かれるため、税理士に確認してください。
金貨は、含まれている金の重さ×1gあたりの買取価格で評価するのが基本です。ただし記念金貨や古い金貨で、金の価値を上回る値段で取引されているものは、その取引価格で評価します。
メイプルリーフ金貨やウィーン金貨などの投資用の金貨は、業者が金貨ごとの買取価格を公表していることが多くあります。公表価格があれば、それを使うのが確実です。
金貨は1枚ずつ重さと種類が違うため、種類ごとに枚数を数えて一覧にします。ケースに入ったままの金貨は、ケースの表示で種類と重さを確かめられます。
天皇陛下御在位記念などの記念金貨は、額面より高く取引されることがあります。額面ではなく、亡くなった日の買取の相場で評価します。
純金積立は、金融機関や金の業者が預かっている金を、亡くなった日の買取価格で評価します。業者から亡くなった日時点の残高証明書を取れば、金の量と評価額がわかります。
相続の手続きは、業者に死亡を伝えて、相続人の口座に移すか、売ってお金で受け取るかを選びます。手続きの方法は業者ごとに違うため、必要書類を確認してください。
積立の引き落としが続いている場合は、死亡を伝えて止めてもらい、亡くなった日の後に買い付けた分の扱いも確認します。相続税の対象になるのは、亡くなった日時点で持っていた金です。
なお、金を預ける「金投資口座」や「金貯蓄口座」で一定の要件を満たすものは、売ったときの利益に一律20.315%の税金が源泉徴収されて課税が終わります。売るときの税金の扱いが延べ棒と違うので、契約の種類を確かめてください。
延べ棒を買った業者にそのまま預けている場合は、手元に現物がありません。業者が発行した保管証や預かり証、保管口座の明細が、金を持っている証拠になります。
預けている金も、評価のしかたは手元の延べ棒と同じです。業者に死亡を伝え、亡くなった日時点で預かっている金の重さを証明する書類を発行してもらいます。
保管料が未払いになっていれば、相続税の申告で債務として差し引けます。相続の手続きが終わるまでの保管料の扱いも、業者に確認しておきます。
プラチナや銀の延べ棒・コインも、金と同じ考え方で評価します。亡くなった日の1gあたりの買取価格×重さで、評価額を出します。
プラチナと銀も、金の業者が毎日の小売価格と買取価格を公表しています。売るときの税金の扱いも、金の延べ棒と同じ総合課税の譲渡所得です。
銀は1gあたりの価格が金よりずっと低いため、数kg単位で持っていることがあります。重さが大きくても評価額は小さめになりますが、量が多ければ申告の判定に影響するので、忘れずに計上してください。
金のネックレスや指輪などは、金の重さの価値だけでなく、デザインやブランドの価値が加わることがあります。一般的には、買取業者の査定額をもとに評価します。
ダイヤモンドなどの宝石がついたものは、金の相場表だけでは評価できません。高価なものは、鑑定士や買取業者の査定を取っておくと、申告の根拠になります。
普段使いの安価なアクセサリーは、ほかの家財と合わせて「家庭用財産」として一括で評価することが一般的です。
記念品の金杯や金の置物も、相続財産として評価します。金の重さの価値を下回らない金額で、買取業者の査定額をもとに評価するのが一般的です。
純度が刻印されていない製品は、業者で計量と純度の確認をしてもらいます。金メッキの製品は金の価値がほとんどないため、家財として扱います。
工芸品として価値が高いものは、美術品と同じく専門家の評価を取ると安心です。査定書は申告の根拠として保管しておきます。
仏壇や仏具などの祭具は、相続税がかからない財産です。ただし、金でできた仏具を投資や節税のために持っていた場合は、相続税の対象になります。
実際に礼拝に使っていたか、売りやすい形のまま保管していたかなどで判断されます。金の仏具が非課税になる境界は、下記の記事で解説しています。


金の評価額を出すには、亡くなった日の買取価格と、持っていた金の量の2つが必要です。どちらも後から確かめにくくなるので、早めに記録を残してください。
この章では、過去の買取価格の調べ方、金の重さと純度の確認、自宅や貸金庫で金が見つかったときの対応を整理します。
金の買取価格は、大手の地金業者がサイトで毎日公表しています。過去の日付の価格も、業者のサイトの価格推移のページで確認できます。
業者によって買取価格は少しずつ違います。実際に取引のある業者や、大手の業者の価格を使い、どの業者の価格を使ったかを記録しておくと、税務調査で説明しやすくなります。
延べ棒や金貨の刻印には、重さと品位が入っています。刻印の写真を撮り、1本ずつ重さと製造番号を一覧にしておくと、申告と分け方の話し合いがスムーズです。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 重さ | 延べ棒の刻印、金貨の種類(1オンス・1/2オンスなど) |
| 品位(純度) | 刻印の「999.9」などの数字 |
| 製造番号 | 延べ棒の刻印のシリアルナンバー |
| 購入した時期と価格 | 購入時の領収書、取引明細、保管証 |
表の見方:上の3つは評価額を出すため、最後の行は売るときの税金を計算するために必要です。購入時の書類は、捨てずに必ず保管してください。
古い金や海外で買った金は、購入先や純度がわからないことがあります。その場合は、地金の買取業者で計量と分析をしてもらい、重さと純度を確かめます。
大手の業者では、売る前提でなくても査定や分析を受け付けていることがあります。分析の結果と査定額の書類は、評価の根拠として申告書の控えと一緒に保管してください。
刻印がないと、売るときに分析の手数料がかかることもあります。相続税の評価額から手数料を差し引けるかは扱いが分かれるため、税理士に確認します。
亡くなった人の金は、貸金庫や自宅の金庫に保管されていることがよくあります。見つかったら、相続人全員がわかる形で記録し、勝手に持ち出さないでください。
貸金庫を開けるには、銀行所定の手続きが必要で、相続人全員の同意を求められることが一般的です。開けるときは複数の相続人が立ち会い、中身を一覧にして写真を残します。
申告の後に金が見つかった場合は、修正申告で財産に加えます。税務署から指摘される前に自分で修正すれば、加算税は軽く済みます。
金の値段は、相続税の申告期限までの10か月の間にも大きく動くことがあります。評価額は亡くなった日の価格で決まり、その後の値動きは相続税に反映されません。
値段が下がった場合は、実際に売れる金額より高い評価額で相続税を払うことになります。相続税を払うために金を売る予定なら、値下がりのリスクも考えて、早めに一部を売るかを検討します。
値段が上がった場合は、相続税は亡くなった日の価格で済みますが、売るときの所得税の利益が大きくなります。どちらの場合も、売る時期は相続税と所得税の両方を見て決めてください。

金は現物なので、黙っていればわからないと思われがちです。実際には、金を売れば業者から税務署に記録が出るため、申告から漏らすと後で問題になります。
この章では、税務署が金を把握する仕組みと、申告しなかったときの負担を整理します。
金地金を売って業者から受け取る代金が200万円を超えると、業者は税務署に「金地金等の譲渡の対価の支払調書」を出します。売った人の氏名・住所・売った金の量と金額が、税務署に伝わります。
相続した金を売れば、この支払調書から、売った人が金を持っていたことがわかります。相続税の申告に金が入っていなければ、相続財産から漏れていたことが疑われます。
平成24年からこの制度が始まり、国税庁は金地金の譲渡所得の調査を重点的に行ってきました。少しずつ分けて売れば避けられる、という考え方は通用しないと考えてください。
参照元:国税庁 F1-42 金地金等の譲渡の対価の支払調書(同合計表)
金を買うときも、一定以上の金額では、業者が本人確認をして取引の記録を残します。親が金を買っていた記録は、業者のもとに残っています。
税務調査では、亡くなった人の預金から大きなお金が引き出されていれば、その使い道を確かめられます。金の購入にお金が動いた跡が通帳にあれば、金を探すきっかけになります。
税務調査の流れと、どこまで調べられるかは、下記の記事で解説しています。

金を申告から漏らしていたことが税務調査でわかると、増えた相続税に加えて加算税と延滞税がかかります。わざと隠していたと判断されると、重加算税として増えた税額の35%〜40%がかかります。
| 状況 | 加算税 | さかのぼる期間 |
|---|---|---|
| うっかり漏れていた(税務調査で指摘) | 過少申告加算税10%〜15% | 申告期限から5年 |
| 申告自体をしていなかった | 無申告加算税15%〜30% | 申告期限から5年 |
| わざと隠していた | 重加算税35%〜40% | 申告期限から7年 |
表の見方:加算税の割合は、増えた税額の大きさなどで変わります。隠していたと判断されると、割合が上がり、さかのぼる期間も長くなります。
重要ポイント:税務署から調査の通知が来る前に自分で修正申告をすれば、加算税はかかりません。漏れに気づいたら、早めに修正してください。
申告漏れのペナルティと修正申告のやり方は、下記の記事で解説しています。

亡くなった後しばらくして、税務署から相続税の申告についてのお知らせや、財産の内容を尋ねる書類が届くことがあります。届いたら、金を含めてすべての財産を書き出し、申告が必要かを判定してください。
税務署は、亡くなった人の所得や不動産の情報などから、相続税の申告が必要そうな家庭に案内を送っています。金の購入や売却の記録があれば、それも判断の材料になります。
申告が要らない場合でも、案内に同封された回答書に財産の内容を書いて返送します。届いたお知らせの読み方と対処のしかたは、下記の記事で解説しています。

申告の後に金が見つかったら、税務署から連絡が来る前に修正申告をします。調査の通知が来る前に自分で修正すれば、加算税はかかりません。
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修正申告の手順と期限は、下記の記事で解説しています。


相続した金を売って利益が出ると、相続税とは別に所得税と住民税がかかります。利益は「売った値段−親が買った値段」で計算するため、昔買った金ほど利益が大きくなります。
この章では、税金の計算の基本、親から引き継ぐ取得費と取得日、購入記録がないときの扱い、相続税を取得費に足せる特例を解説します。
金の延べ棒を売った利益は、給与や年金などほかの所得と合わせて税金を計算する総合課税の譲渡所得になります。持っていた期間が5年を超えていれば、利益から50万円を引いた残りの2分の1だけに税金がかかります。
| 持っていた期間 | 課税される金額 |
|---|---|
| 5年以内(短期) | (売った値段−取得費−売る費用)−50万円 |
| 5年超(長期) | {(売った値段−取得費−売る費用)−50万円}×1/2 |
表の見方:50万円の控除は、その年のほかの総合課税の譲渡益と合わせて50万円までです。課税される金額はほかの所得に足され、所得税と住民税がかかります。
重要ポイント:利益が出たら、売った年の翌年3月15日までに確定申告をします。会社員でも、給与以外の所得が20万円を超えれば申告が必要です。
相続税を現金で払えないときは、相続した金を売って納税資金にすることがあります。取得費加算の特例の期間は相続が始まった日の翌日から数えるので、申告期限の前に売っても特例の対象になります。
売った年の確定申告の時点で相続税の額が決まっていれば、特例を付けて申告できます。相続税の申告より先に確定申告の期限が来る場合の扱いは、税理士に確認してください。
金は売ればすぐに現金になるため、納税資金に向いた財産です。ただし売る量が多いと所得税も大きくなるので、必要な額だけ売るのが基本です。
相続した金の取得費は、相続した時の値段ではなく、亡くなった親が金を買った値段です。持っていた期間も、親が買った日から数えます。
たとえば親が15年前に1gあたり5,000円で買った金を、相続して1年後に売った場合、取得費は1gあたり5,000円で、持っていた期間は16年の長期です。相続してすぐ売っても、5年超の長期の扱いになります。
相続税の評価額(亡くなった日の買取価格)を取得費にすることはできません。相続税がかかった値段と、所得税の計算の取得費は別のものです。
持っていた期間は親が買った日から数えるため、親が買ってから5年以内に売ると短期の扱いになります。短期では2分の1にならないので、同じ利益でも税金が約2倍になります。
| 親が買ってから売るまで | 課税される金額 | 所得税+住民税 |
|---|---|---|
| 5年以内(短期) | 296万円 | 約90万円 |
| 5年超(長期) | 148万円 | 約45万円 |
表の見方:【前提】親が1gあたり1万5,000円で買った金1kg(1,500万円)を、2,000万円で売り、特例で154万円を取得費に足した場合です。ほかの課税所得は400万円とします。
計算ロジック:利益は2,000万円−1,500万円−154万円=346万円。50万円を引いて296万円が短期の課税額、長期はその2分の1の148万円です。
親が買った日が5年を超える直前なら、超えてから売るほうが税金は少なくなります。ただし取得費加算の特例の期限と重なる場合は、両方を比べて決めてください。
親がいくらで買ったかわからない場合は、売った値段の5%を取得費として計算できます。ただし5%は実際の購入価格よりかなり低いことが多く、税金が大きく増えます。
| 取得費の決め方 | 金1kgを2,000万円で売った場合の取得費 |
|---|---|
| 購入記録がある(1gあたり5,000円で購入) | 500万円 |
| 購入記録がない(売値の5%) | 100万円 |
表の見方:記録がないと、取得費が400万円少なくなり、その分だけ利益が大きく計算されます。
計算ロジック:5%の扱いは所得税基本通達38-16によるもので、土地建物以外の資産にも使えます。2,000万円×5%=100万円です。
購入時の領収書や取引明細がなくても、業者に取引の記録が残っていれば取り寄せられることがあります。通帳の出金記録と合わせて、購入価格を証明できないか探してください。
参照元:国税庁 法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》関係〕
売るときに業者に払う手数料は、売る費用として利益から差し引けます。確定申告では、譲渡所得の内訳書(総合譲渡用)に売った金の内容を書きます。
確定申告書は、国税庁の確定申告書等作成コーナーで作ることもできます。取得費の金額と取得日は、親が買った時のものを入力します。
相続税を払った人が、申告期限の翌日から3年以内に相続した金を売ると、払った相続税の一部を取得費に足せます。相続税と所得税が二重にかかるのを和らげる、取得費加算の特例です。
足せる金額は「その人の相続税×売った金の相続税評価額÷その人が相続した財産の合計」です。土地や株式だけでなく、金の延べ棒にも使えます。
たとえば相続税385万円の長男が、5,000万円の相続財産のうち2,000万円分の金を売れば、385万円×2,000万円÷5,000万円=154万円を取得費に足せます。足した分だけ利益が小さくなり、所得税と住民税が減ります。
使うには、売った年の確定申告で、計算明細書を付けて申告します。期限を1日でも過ぎると使えないため、売る時期は申告期限から逆算して決めてください。特例の要件と計算方法は、下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続した金の手取りは、購入記録があるか、いつ売るかで大きく変わります。同じ金1kgでも、条件の違いで手取りに約121万円の差が出ました。
この章では、試算の前提、4つのパターンの比較、手取りを増やすためにやることを整理します。
親が昔買った金1kgを長男が相続し、相続した時と同じ値段で売るケースで計算します。金の値段は説明のための仮定で、実際の相場とは異なります。
| 項目 | 前提 |
|---|---|
| 相続人 | 子2人(長男・次男) |
| 遺産 | 金1kgを含めて1億円。2人で5,000万円ずつ相続し、金は長男が相続 |
| 親が金を買った時 | 15年前に1gあたり5,000円(500万円) |
| 相続した時・売った時 | 買取価格は1gあたり2万円(2,000万円) |
| 長男のほかの所得 | 給与などの課税される所得が400万円 |
表の見方:金の値段は説明のための仮定です。親の購入から15年たっているので、どのパターンでも5年超の長期の扱いになります。
相続税の総額は770万円で、長男の相続税は385万円です。金はこの相続税の対象になったうえで、売るときに所得税と住民税がかかります。
購入記録の有無と、取得費加算の特例を使えるかどうかの組み合わせで、4つのパターンを比べます。最も手取りが多いのは、購入記録があり、3年以内に売るパターンAです。
| パターン | 取得費 | 課税される金額 | 所得税+住民税 | 手取り |
|---|---|---|---|---|
| A:記録あり・3年以内に売る | 500万円+特例154万円 | 648万円 | 約223万円 | 約1,777万円 |
| B:記録あり・3年を過ぎて売る | 500万円 | 725万円 | 約257万円 | 約1,743万円 |
| C:記録なし・3年以内に売る | 100万円+特例154万円 | 848万円 | 約310万円 | 約1,690万円 |
| D:記録なし・3年を過ぎて売る | 100万円 | 925万円 | 約344万円 | 約1,656万円 |
表の見方:手取りは、売った2,000万円から所得税と住民税を引いた金額です。相続税385万円は、どのパターンでも同じなので含めていません。
重要ポイント:AとDの手取りの差は約121万円です。購入記録で約87万円、売る時期で約34万円の差が出ています。
計算ロジック:特例の額は385万円×2,000万円÷5,000万円=154万円。Aの課税額は(2,000万円−654万円−50万円)×1/2=648万円。所得税は課税所得400万円に足した増加分に復興特別所得税2.1%を加え、住民税は10%で計算しました。
相続した後に金の値段が動けば、売った時の手取りも変わります。取得費加算の特例の額は相続税で決まっているので、値上がりした分はそのまま利益に上乗せされます。
| 売った時の買取価格 | 売った金額 | 所得税+住民税 | 手取り |
|---|---|---|---|
| 1gあたり1万5,000円(値下がり) | 1,500万円 | 約124万円 | 約1,376万円 |
| 1gあたり2万円(相続時と同じ) | 2,000万円 | 約223万円 | 約1,777万円 |
| 1gあたり2万5,000円(値上がり) | 2,500万円 | 約332万円 | 約2,168万円 |
表の見方:パターンA(購入記録あり・3年以内)の条件で、売った時の値段だけを変えました。値下がりしても、相続税は2,000万円で計算された385万円のままです。
計算ロジック:取得費は500万円+特例154万円で共通です。1,500万円で売った場合、(1,500万円−654万円−50万円)×1/2=398万円が課税され、税額は約124万円です。
試算の差は、ほとんどが相続した後の行動で決まります。売るつもりがあるなら、購入記録を探し、申告期限から3年以内に売る計画を立ててください。
重要ポイント:売らずに持ち続けるなら、所得税はかかりません。ただし将来売るときに特例が使えなくなるため、売るかどうかは3年以内に一度判断しておくのが安全です。

金は少量ずつに分けやすい財産ですが、分け方によって税金の負担が変わります。売ってから分けると、売った金額に応じて相続人全員に所得税がかかります。
この章では、現物で分ける方法、売ってお金で分ける方法、1人が受け取ってほかの人にお金を払う方法を整理します。
延べ棒が複数本あれば、本数や重さで分けられます。分ける時点では所得税はかからず、売るかどうかを各自が決められます。
1kgの延べ棒1本だけのように分けにくい場合は、業者で小さな延べ棒に替える方法もあります。替えるときは手数料がかかるため、費用を確認してから決めてください。
遺産分割協議書には、延べ棒の重さと製造番号を書いて、誰がどれを相続するかを特定します。金を多く受け取った人は、その分だけ相続税の負担も増えるので、相続税の割り振りも合わせて確認しておきます。
金を売って、そのお金を分ける方法です。売った利益は、受け取る割合に応じて相続人それぞれの譲渡所得になります。
代表者1人の名前で売っても、遺産分割で分ける割合が決まっていれば、それぞれが自分の分の確定申告をします。50万円の控除は1人ずつ使えるため、人数で分けると税金が少なくなることもあります。
代表者が全額を自分の所得として申告し、ほかの相続人にお金を渡すと、贈与と見られるおそれがあります。売る前に遺産分割協議書で、売って分けることと割合を決めておきます。
金を1人の相続人がまとめて受け取り、ほかの相続人に自分のお金で代わりの金額を払う方法です。金を手放したくない相続人がいる場合に向いています。
払う金額は、亡くなった日の評価額をもとに話し合って決めます。金の値段は日々変わるため、どの日の価格で精算するかも遺産分割協議書に書いておくと、後の争いを防げます。
代わりに払うお金を用意できない場合は、現物で分けるか、売って分ける方法を検討します。
分け方が決まるまでの金は、相続人全員の共有の財産です。1人の相続人が持ち出したり売ったりすると、ほかの相続人とのトラブルになります。
保管している人を決め、金の一覧と写真を全員で共有しておきます。業者に預けている金は、分け方が決まるまで動かさないよう業者に伝えておくと安心です。
遺言で金の受け取り手が決まっている場合は、遺言の内容に従って引き渡します。遺言に重さや製造番号が書かれていれば、その延べ棒を特定して渡します。
金を売ってお金で分けるときは、順番を間違えると贈与の問題が出ます。先に遺産分割協議書で「売って分けること」と割合を決め、その後に売ります。
200万円を超える売却では、支払調書は代表者の名前で出ます。ほかの相続人の分も含まれていることを説明できるよう、遺産分割協議書と振込の記録を残しておきます。

相続税の申告が必要な場合は、金を財産の一覧に書き、評価の根拠となる資料を残します。金は根拠の資料が後から集めにくいので、申告の時点でそろえておくことが大切です。
この章では、申告書への書き方と、残しておく資料を整理します。
金は、申告書の第11表(相続税がかかる財産の明細書)に、ほかの財産と並べて書きます。種類・数量・単価・評価額と、誰が取得したかを1行ずつ書きます。
| 欄 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 種類・細目 | その他の財産・金地金(家庭用財産として書く場合もある) |
| 所在場所 | 保管していた場所(自宅・貸金庫・業者の保管口座など) |
| 数量 | 1,000g(延べ棒1本) |
| 単価 | 亡くなった日の1gあたりの買取価格 |
| 価額 | 単価×数量 |
| 取得した人の氏名 | 遺産分割で金を相続した人 |
表の見方:どの種類で書くかは税理士によって扱いが分かれますが、評価額が正しければ税額は変わりません。延べ棒が複数あれば、まとめて数量を書くか、1本ずつ書きます。
申告の手続き全体の流れは、下記の記事で解説しています。

金の評価と売却に関する資料は、相続税と所得税の両方の根拠になります。申告期限から少なくとも7年は保管しておくと安心です。
購入時の資料は、売るときの所得税を少なくするために欠かせません。相続税の申告が終わっても捨てずに保管してください。
遺産の合計が基礎控除以下なら、相続税の申告は要りません。ただし、金を誰が相続するかを決め、純金積立などの名義を移す手続きは必要です。
延べ棒には名義がないため、遺産分割協議書に誰が相続したかを書いておくことが、後で売るときの証明になります。売った時の所得税の申告でも、相続で取得したことを示す書類として使います。
申告が要らないかの判定に金を入れ忘れると、本当は申告が必要だったのに放置することになります。判定の前に、金の評価額を必ず足してください。

金を持っている親が元気なうちにできる準備もあります。最も効果が大きいのは、購入記録を家族にわかる形で残しておくことです。
この章では、少しずつ贈与する方法、金の仏具を使った節税の注意点、記録の残し方を整理します。
金を毎年少しずつ子や孫に贈与すれば、相続財産を減らせます。1人あたり年110万円までの贈与なら、贈与税はかかりません。
金の贈与の価額も、贈与した日の買取価格×重さで計算します。金の値段が上がると、同じ重さでも110万円を超えやすくなるため、贈与のたびに価格を確認してください。
たとえば1gあたり2万円なら、110万円で贈与できるのは約55gです。毎年同じ時期に同じ量を渡し続けると、まとめて贈与する約束だったと見られるおそれがあるため、時期や量を変え、贈与のたびに契約書を作っておきます。
ただし、亡くなる前7年以内に相続人が受けた贈与は、相続財産に足し戻されます(3年を超えて7年以内の分は合計100万円まで差し引けます)。孫など相続人でない人への贈与は、遺贈を受けなければ足し戻しの対象外です。贈与の仕組みは、下記の記事で解説しています。

相続時精算課税を選んで金を贈与すると、相続のときは贈与した時の価額で相続財産に足し戻されます。贈与の後に金の値段が上がっても、上がった分には相続税がかかりません。
| 比べる点 | 年110万円の贈与(暦年課税) | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 贈与税がかからない範囲 | 1人年110万円まで | 年110万円+累計2,500万円まで |
| 相続のときの扱い | 亡くなる前7年以内の贈与を足し戻す | 年110万円を超えた分を、贈与した時の価額で足し戻す |
| 金が値上がりした場合 | 足し戻しの対象外の贈与なら影響なし | 値上がり分は相続税の対象外 |
| 注意点 | 110万円を超えると贈与税がかかる | 一度選ぶと、その親からの贈与は暦年課税に戻せない |
表の見方:精算課税は、値上がりしそうな財産を早めに渡すときに向いています。ただし金の値段が下がった場合は、贈与した時の高い価額で足し戻されます。
重要ポイント:精算課税を選ぶには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに届出書を出す必要があります。選ぶかどうかは、ほかの財産も含めて税理士と検討してください。
相続時精算課税の仕組みと注意点は、下記の記事で解説しています。

お金を金の仏具に替えれば相続税がかからない、という話を聞くことがあります。投資や節税のための仏具は非課税にならず、相続税の対象とされます。
非課税になるのは、日常の礼拝に使う仏具です。金の延べ棒を仏像の形にしただけのものや、使わずに保管しているものは、売りやすい財産として課税されます。
さらに、仏具に加工する費用は売るときには戻ってきません。相続税が減らないうえに、加工費の分だけ財産が目減りするおそれがあります。
親が金を買った時の記録は、相続税の評価には使いませんが、売るときの所得税を大きく左右します。試算では、記録の有無だけで手取りに約87万円の差が出ました。
【残しておくもの】
購入した日・業者名・重さ・金額がわかる領収書や取引明細、保管証。
【残し方】
金と同じ場所か、家族がわかる場所にまとめて保管する。財産の一覧(エンディングノートなど)に、金の保管場所と購入記録の場所を書いておく。
金の保管場所を家族が知らないと、相続のときに見つからず申告から漏れることもあります。保管場所と記録の場所を、家族と共有しておいてください。
金は預金と違い、銀行の通知や郵便物で存在がわかるとは限りません。家族が知らないまま相続が起きると、金が見つからずに申告から漏れることがあります。
自宅の金庫、貸金庫、業者の保管口座のどこに、どれだけの金があるかを、家族が読める形で書き残しておきます。貸金庫の場合は、契約している銀行と支店も書いておきます。
見つからなかった金が後から税務署に把握されると、相続人が加算税を負担することになります。存在を伝えておくことは、家族の負担を減らすいちばんの準備です。

金は評価の方法自体は単純ですが、売るときの所得税や分け方まで含めると、判断が必要な場面が多い財産です。相続税の対応実績がある税理士なら、相続税と所得税を通して手取りが多くなる方法を提案できます。
税理士によって提案の中身や報酬が違うため、複数の事務所の見積りを比べるのが確実です。この章では、相談する意味と手順を整理します。
金の相続は、相続税の評価だけで終わりません。売る時期や分け方の選び方で、相続人の手取りが100万円単位で変わります。
【実績がある税理士が必要な理由】
具体例で見ます。金1kgを相続した長男が、購入記録を探さず、申告期限から4年後に売りました。手取りは約1,656万円でした。
税理士の助言で購入記録を見つけ、3年以内に特例を付けて売っていれば手取りは約1,777万円で、約121万円の差になっていました。
計算ロジック:【前提】この記事の試算と同じ(金1kg・購入価格500万円・売却価格2,000万円・長男の相続税385万円・ほかの課税所得400万円)。パターンDとパターンAの手取りの差です。
見積りと初回相談の内容から、金を含む相続の対応力は具体的に読み取れます。次の3点を同じ質問で比べます。
判定ポイント1:売るときの所得税まで説明があるか/「金を売ったら税金はどうなるか」と聞きます。
→ 取得費加算の特例と期限まで答える事務所のほうが、実務経験が豊富と判定できます。
判定ポイント2:評価の根拠の残し方を案内するか/買取価格の記録や刻印の写真について聞きます。
→ 必要な資料を具体的に挙げる事務所のほうが、税務調査に強い申告書を作れると判定できます。
判定ポイント3:見積りに確定申告の費用が明示されているか/金を売った年の確定申告の費用が含まれるかを確かめます。
→ 先に示す事務所のほうが、後から総額が膨らむ心配が少ないと判定できます。
この3点は複数の事務所に同じ質問をすれば必ず差が出ます。1つの事務所だけでは、その回答が標準なのか判断できません。
【相談しないまま進めるリスク】
金は売るまで税金の負担が見えにくい財産です。相続した金の扱いに迷ったら、売る前に税理士に相談してください。
相続税申告の見積りを比べる手順は、下記の記事で解説しています。

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亡くなった日の業者の買取価格(税込み)に、金の重さを掛けて計算します。お店で買うときの小売価格ではなく、売るときの買取価格を使います。亡くなった後に値段が下がっても、評価額は亡くなった日の価格のままです。
金を売って200万円を超える代金を受け取ると、業者から税務署に支払調書が出ます。購入時の取引記録や通帳の出金からも把握されるため、申告から漏らすと税務調査で指摘される可能性が高いと考えてください。わざと隠すと重加算税がかかります。
利益が出れば、所得税と住民税がかかります。利益は売った値段から親が買った値段(取得費)を引いて計算し、親の購入から5年を超えていれば、50万円を引いた残りの2分の1が課税されます。購入価格がわからないと、取得費は売値の5%になります。
相続税の申告期限の翌日から3年以内に売れば、払った相続税のうち金に対応する部分を取得費に足せます(取得費加算の特例)。その分、売るときの所得税が少なくなります。
対象です。業者が預かっている金を、亡くなった日の買取価格で評価します。業者から亡くなった日時点の残高証明書を取り、金の量と評価額を確認してください。
相続した金には相続税がかかり、評価額は亡くなった日の業者の買取価格×重さで決まります。売るときは所得税もかかるため、相続税と所得税を通して考えることが大切です。
この記事で扱った内容を整理すると次のとおりです。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年10月時点の法令等に基づいています。相続税法・所得税法の改正や金の相場の変動により内容が変わる場合があります。最新の制度については国税庁のウェブサイトまたは相続税の対応実績がある税理士にご確認ください。