株式の相続税評価額の計算方法|上場・非上場の調べ方と節税対策

相続税_株式_評価

株式の相続税評価額とは、相続税を計算するときの株式の値段のことです。亡くなった日を基準に、株式を金額に換算します。

上場株式は市場の株価をもとに評価し、非上場株式は会社の資産や利益をもとに評価します。同じ株式でも、評価のルールが大きく異なります。

株式は現金と違い、そのままでは相続税の計算に使えません。相続財産に株式が含まれる場合、必ず評価額の算出が必要になります。

上場株式の評価は、4つの価格から最も低い株価を選べるため、実は難しくありません。株価の調べ方さえわかれば、自分でも計算できます。

一方、非上場株式の評価は会社規模や株主の立場で方式が変わり、専門知識が必要です。評価額しだいで相続税が数百万円変わることもあります。

さらに2024年改正の生前贈与加算7年ルールや、事業承継税制の期限延長など、株式の相続を取り巻く制度も大きく動いています。

この記事では、上場株式・非上場株式それぞれの評価額の計算方法、株価の調べ方、税額シミュレーション、節税対策までを整理します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 上場株式は「4つの価格のうち最も低い株価×株式数」で評価でき、株価は自分でも調べられる
  • 非上場株式は株主の立場と会社規模で3つの評価方式を使い分ける複雑な評価になる
  • 評価額しだいで相続税が大きく変わるため、非上場株式の評価や節税は一括相談・見積りで税理士を比較するのが安全
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株式の相続税評価の基本|上場と非上場で計算方法が変わる

株式を相続したら、まず「株式がいくらの財産として扱われるか」を把握する必要があります。評価額の算出が、株式相続のすべての出発点になります。

ここでは株式が課税対象になる仕組み、上場と非上場の違い、保有株式の確認方法、相続税がかかるかの判断を解説します。

株式も相続税の課税対象になる

株式は、現金や不動産と同じく相続税の課税対象です。亡くなった日(相続開始日)を基準に評価額を計算し、他の財産と合算します。

評価の基準はあくまで相続開始日です。その後に株価が上がっても下がっても、原則として評価額は変わりません。

また、含み益があるかどうかは相続税に関係ありません。買ったときの値段ではなく、亡くなった日時点の評価額で計算します。

これは損をしている株式でも同じです。購入時より値下がりしていても、相続開始日時点の評価額で他の財産と合算されます。

重要ポイント:株式は「亡くなった日時点の評価額」で課税されます。購入時の価格や申告後の値動きは関係ありません。

上場株式と非上場株式で評価方法が異なる

上場株式は証券取引所で売買され、日々の株価が公表されています。この市場価格をもとに評価するため、計算は比較的簡単です。

一方、非上場株式には市場価格がありません。会社の資産・利益・配当をもとに株価を算定するため、評価は格段に複雑になります。

日本の会社の大多数は非上場です。親が会社を経営していた場合や、勤務先の株式を持っていた場合は、非上場株式の相続になる可能性が高いといえます。

自分が相続する株式がどちらなのかで、この後にやるべきことが変わります。まず銘柄を確認し、上場・非上場を切り分けましょう。

項目 上場株式 非上場株式
評価の基準 市場の株価 会社の資産・利益・配当
評価方法 4つの価格から最低を選択 3つの方式を使い分け
計算の難易度 自分でも計算可能 専門知識が必要

表の見方:上場株式は自分でも計算できますが、非上場株式の評価は税理士レベルの専門知識が必要です。無理に自己判断しないことが大切です。

保有株式の確認方法|残高証明書とほふり照会

評価の前に、亡くなった人がどの銘柄を何株持っていたかを確定させます。確認の基本は、証券会社が発行する残高証明書です。

取引していた証券会社に相続の発生を連絡し、相続開始日時点の残高証明書を請求します。自宅に届く郵送物も重要な手がかりです。

どの証券会社と取引していたかわからない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に開示請求すれば、口座のある証券会社を特定できます。

【株式を探す3つの手がかり】

手がかり1:証券会社からの郵送物(取引残高報告書など)

手がかり2:配当金計算書・株主総会の招集通知

手がかり3:ほふりへの登録済加入者情報の開示請求

重要ポイント:取引先の証券会社が不明でもほふりへの開示請求で口座を特定できます。株式の見落としは申告漏れに直結するため、最初に洗い出しましょう。

相続税がかかるかは基礎控除で判断する

株式を含む相続財産の合計が基礎控除以下なら、相続税はかかりません。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

たとえば法定相続人が2人なら、基礎控除は4,200万円です。株式と預貯金などの合計がこれ以下なら、申告も原則不要です。

まず株式の評価額を出し、他の財産と合算して基礎控除と比較する。この順番で進めれば、相続税の要否を判断できます。基礎控除額の目安は次のとおりです。

法定相続人の数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円

表の見方:株式を含む財産の合計がこの金額以下なら相続税はかかりません。法定相続人が多いほど基礎控除は大きくなります。

重要ポイント:財産の合計が基礎控除以下なら相続税は0円です。まず株式の評価額を出さないと、この判断もできません。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

株式の相続で関係する税金は相続税だけではない

株式の相続では、相続税のほかにも税金が登場する場面があります。全体像を先に押さえておくと、手続きの見通しが立てやすくなります。

税金 かかる場面 期限
相続税 株式を相続したとき 10ヶ月以内
所得税(準確定申告) 故人に生前の売却益・配当があるとき 4ヶ月以内
譲渡所得税 相続した株式を売却して利益が出たとき 売却の翌年に確定申告

表の見方:相続税・所得税は場面ごとに別の税金です。準確定申告の4ヶ月が最初の期限になる点に注意してください。

上場株式の相続税評価額の計算方法|4つの価格から最も低い株価を選ぶ

上場株式の評価額は「1株あたりの株価×株式数」で計算します。このとき4つの価格のうち最も低い株価を選べるのが最大のポイントです。

ここでは4つの価格の中身、具体的な計算例、銘柄ごとの選び方、休日に亡くなった場合の扱いを解説します。

4つの価格とは|相続開始日の終値と3つの月平均額

株価は日々変動します。亡くなった日の終値だけで評価すると、たまたま株価が高い日に当たった人が不利になってしまいます。

そこで相続税では、月平均額を含む4つの価格を比べて、最も低いものを選ぶことが認められています。

一時的な株価の急騰で税負担が過大にならないようにするための仕組みで、納税者に有利なルールです。使わない手はありません。

使える価格 内容
①相続開始日の終値 亡くなった日の最終価格
②当月の月平均額 亡くなった月の毎日の終値の平均
③前月の月平均額 前月の毎日の終値の平均
④前々月の月平均額 前々月の毎日の終値の平均

表の見方:4つの価格はどれを選んでもよいのではなく、最も低い株価で評価してよいという有利なルールです。必ず4つすべてを確認しましょう。

参照元:国税庁 No.4632 上場株式の評価

計算例|1,000株を相続した場合

相続開始日が9月15日で、A社株式1,000株を相続したケースを試算します。4つの価格は次のとおりだったとします。

価格の種類 株価
9月15日の終値 2,050円
9月の月平均額 2,080円
8月の月平均額 1,980円(最低)
7月の月平均額 2,010円

表の見方:4つの価格のうち最も低いのは8月の月平均額1,980円です。黄色の行が採用する株価を示しています。

計算ロジック:【前提】A社株式1,000株・相続開始日9月15日。最も低い8月の月平均額1,980円を採用し、1,980円×1,000株=評価額198万円となります。

重要ポイント:死亡日の終値2,050円で評価すると205万円です。最低値を選ぶだけで評価額が7万円下がります。銘柄数が多いほど、この差は積み上がります。

保有株式が5,000株・1万株と多い場合、同じ株価差でも評価額の差は35万円・70万円と拡大します。株数が多い人ほど丁寧に比較しましょう。

最も低い価格は銘柄ごとに選べる

複数の銘柄を保有していた場合、4つの価格の選択は銘柄ごとに行えます。すべての銘柄で同じ時点の価格を使う必要はありません。

A社株は前月の平均額、B社株は死亡日の終値、というように銘柄別に最も低い価格を選ぶことで、評価額の合計を最小にできます。

この選択に特別な手続きは不要です。申告書に採用した価格とその根拠を記載するだけで認められます。

ETF(上場投資信託)も上場株式と同じ方法で評価します。銘柄が多い場合は一覧表を作り、銘柄ごとの最低価格を整理しましょう。

重要ポイント:最も低い価格の選択は銘柄ごとに行えます。全銘柄で4つの価格を比較すれば、評価額を合法的に最小化できます。

土日祝日・連休中に亡くなった場合の扱い

相続開始日が土日祝日の場合、取引所が休みのためその日の終値がありません。この場合は、相続開始日に最も近い日の終値を使います。

たとえば土曜日に亡くなったなら前日の金曜日、日曜日なら翌日の月曜日の終値を使います。

3連休の中日など、最も近い営業日が前後に2日ある場合は、両日の終値の平均額を使います。

注意:休日に亡くなった場合は「最も近い日の終値」、前後2日が同じ近さなら平均額を使います。うっかり直前の終値だけで評価しないよう注意してください。

複数の証券取引所に上場している場合

銘柄によっては、東京証券取引所と名古屋証券取引所など、複数の取引所に上場していることがあります。

この場合、どの取引所の株価を使うかは納税者が選べます。取引所によって終値や月平均額がわずかに異なるため、低いほうを選べば評価額を下げられます。

ただし、相続開始日の終値がない取引所は選択できません。実際に取引のある市場の株価を確認しましょう。

重要ポイント:重複上場の銘柄は有利な取引所の株価を選択できます。地方取引所の株価も忘れずに確認しましょう。

上場株式の株価の調べ方|自分でできる4つの手順

上場株式の株価は、専門家でなくても無料で調べられます。次の4つの手順どおりに進めれば、自分で評価額を計算できます

全体の流れは次のとおりです。

手順1
株価サイトで相続開始日の終値を調べる

手順2
日本取引所グループの月間相場表で3ヶ月分の月平均額を調べる

手順3
証券会社の残高証明書で銘柄と株式数を確認する

手順4
4つの価格を比較し、最も低い株価×株式数で評価額を計算する

手順1|株価サイトで相続開始日の終値を調べる

まず、Yahoo!ファイナンスなどの株価サイトで、銘柄名または証券コードを検索します。「時系列」のページで過去の終値を確認できます。

証券コード(4桁の番号)は、証券会社の取引残高報告書や配当金計算書に記載されています。銘柄名の思い違いを防ぐため、コードで検索するのが確実です。

相続開始日の終値をメモします。相続開始日が休日の場合は、最も近い営業日の終値を控えておきます。

重要ポイント:終値は「時系列」ページで過去の日付にさかのぼって確認できます。当日の株価表示と間違えないようにしましょう。

手順2|日本取引所グループの月間相場表で月平均額を調べる

月平均額は、日本取引所グループ(JPX)のホームページで公表されています。「マーケット情報」から「統計情報(株式関連)」へ進み、「月間相場表」を開きます。

証券コードで銘柄を探し、「終値平均」の欄を確認します。相続開始月・前月・前々月の3ヶ月分を控えます。

社名変更や上場市場の変更があった銘柄は、相場表で見つけにくいことがあります。見つからない場合は証券会社に確認しましょう。

重要ポイント:月平均額は自分で毎日の終値を平均する必要はありません。JPXの月間相場表の「終値平均」欄をそのまま使えます

手順3|証券会社の残高証明書で銘柄と株式数を確認する

取引していた証券会社に相続開始日時点の残高証明書を請求すると、保有銘柄と株式数を正確に確認できます。

証券会社によっては、残高証明書に評価に必要な4つの価格を記載してくれる場合もあります。自分で調べる手間を大きく省けます。

インターネットでの調査に不安がある場合は、残高証明書を起点にするのが確実です。

重要ポイント:証券会社によっては残高証明書に4つの価格が記載されることがあります。請求時に「相続税評価用」と伝えるとスムーズです。

手順4|最も低い株価を選んで評価額を計算する

手順1〜3で集めた4つの価格を並べ、最も低い株価を選びます。その株価に保有株式数を掛ければ、評価額の計算は完了です。

銘柄が複数ある場合は、銘柄ごとにこの比較を繰り返し、最後にすべての評価額を合計します。

月平均額に小数点以下の端数がある場合は、切り捨ててかまいません。

計算の根拠は、申告時に「上場株式の評価明細書」として整理します。4つの価格の出所を記録しておくと、申告書の作成が楽になります。

重要ポイント:株価の小数点以下の端数は切り捨てできます。4つの価格の記録は評価明細書の作成にそのまま使えます。

非上場株式の相続税評価額の計算方法|3つの評価方式

非上場株式(取引相場のない株式)には市場価格がなく、会社の数字から株価を算定します。評価方式は株主の立場と会社の規模で決まります

ここでは3つの評価方式の中身と、どの方式が適用されるかの判定の流れを解説します。

評価方式は株主の立場と会社規模で決まる

最初の分かれ道は、株式を相続する人が経営を支配する「同族株主等」かどうかです。同族株主等なら原則的評価方式、それ以外の少数株主なら配当還元方式を使います。

同族株主等とは、親族などのグループで議決権の30%以上(50%超のグループがある場合はそのグループ)を持つ株主を指します。経営者の家族は通常こちらに該当します。

この判定を誤ると、評価方式そのものが変わり、申告のやり直しにつながります。株主名簿で議決権の割合を必ず確認しましょう。

原則的評価方式では、会社を従業員数・総資産・取引金額で大会社・中会社・小会社に区分し、規模に応じた方式で評価します。

会社規模 目安 評価方式
大会社 従業員70人以上など 類似業種比準方式
中会社 大会社・小会社の中間 併用方式
小会社 従業員数・総資産が小規模 純資産価額方式

表の見方:会社規模の判定は業種ごとに基準が細かく分かれています。規模の判定を誤ると評価額そのものが変わるため、判定は慎重に行う必要があります。

参照元:国税庁 No.4638 取引相場のない株式の評価

類似業種比準方式|似ている上場企業の株価をもとに評価

類似業種比準方式は、事業内容が似ている上場企業の株価をもとに、配当・利益・純資産の3つの要素を比較して株価を算定する方法です。

業種別の株価や比準要素は、国税庁が毎月公表しています。計算では会社規模に応じた調整率(大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5)を掛けます。

会社の利益や配当が少ないほど評価が下がる仕組みのため、純資産価額方式より評価額が低くなることが多い方式です。

重要ポイント:類似業種比準方式は利益・配当が少ないほど評価が下がる仕組みです。この性質が、後述する評価引き下げ対策の土台になります。

純資産価額方式|会社の純資産をもとに評価

純資産価額方式は、会社を解散したと仮定したときに株主へ返ってくる金額をもとに評価する方法です。

会社の資産と負債をすべて相続税評価額に置き換えて純資産を計算し、帳簿上の純資産との差額(含み益)には法人税等相当額37%を差し引きます。

残った純資産を発行済株式数で割ったものが、1株あたりの評価額です。土地などの個別評価が必要になるため、実務の手間は大きくなります。

計算ロジック:【計算の流れ】資産・負債を相続税評価額に洗い替え→含み益×37%を控除→残りの純資産÷発行済株式数。含み益の37%控除を忘れると評価額が過大になります。

配当還元方式|少数株主のための簡易な評価

配当還元方式は、経営に関与しない少数株主向けの例外的な方式です。会社の支配ではなく、配当を受け取ることが目的の株主を想定しています。

計算は「過去2年間の平均配当額÷10%」を基礎とします。配当がない場合や1株2円50銭未満の場合は、2円50銭とみなして計算します。

たとえば年配当が1株5円なら、5円÷10%=50円が評価の基礎です。配当の少ない会社ほど評価額は低く抑えられます。

原則的評価方式より評価額が大幅に低くなるのが一般的で、少数株主にとって有利な方式です。

重要ポイント:経営に関与しない少数株主なら評価額が大幅に低い配当還元方式を使えます。自分がどちらの株主に当たるかの判定が重要です。

中会社は併用方式で計算する

中会社は、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定の割合で組み合わせて評価します。割合は会社規模に応じて決まっています。

区分 類似業種比準方式 純資産価額方式
中会社の大 90% 10%
中会社の中 75% 25%
中会社の小 60% 40%

小会社は純資産価額方式が原則ですが、併用方式(50%ずつ)との選択も認められています。低いほうを選ぶことで評価額を抑えられます。

表の見方:会社規模が大きいほど類似業種比準方式の割合が高くなります。どの区分に当たるかで評価額が大きく変わるため、判定は税理士に確認するのが確実です。

特定会社は原則の方式で評価できない

会社の状態によっては、会社規模にかかわらず原則の評価方式が使えない「特定会社」に該当することがあります。

代表的なのは、清算中の会社、開業前・開業後3年未満の会社、休業中の会社、資産の大半が株式や土地の会社(株式保有特定会社・土地保有特定会社)などです。

特定会社に該当すると、原則として純資産価額方式での評価になります。類似業種比準方式より評価額が高くなることが多く、税額に直結します。

注意:特定会社に該当すると純資産価額方式が強制され、評価額が上がりやすくなります。該当の有無は必ず確認が必要です。

非上場株式の評価に必要な資料

非上場株式の評価を税理士に依頼する場合、会社の資料が必要になります。早めに集めておくと、評価がスムーズに進みます。

【評価に必要な主な資料】

資料1:直近3期分の決算書・法人税申告書

資料2:株主名簿(株主構成がわかるもの)

資料3:会社所有の土地・建物の固定資産税課税明細

資料4:保険積立金や有価証券など資産の明細

資料がそろわないと評価に時間がかかり、申告期限を圧迫します。会社の経理担当者や顧問税理士に早めに依頼しましょう。

重要ポイント:非上場株式の評価には直近3期分の決算書と申告書が必須です。資料集めから逆算して早めに動きましょう。

【計算例】株式を含む相続税額のシミュレーション

株式を相続すると、実際にいくらの相続税になるのでしょうか。株式の評価額しだいで税額は大きく変わります。3つのケースで試算します。

いずれも一般的な条件による目安です。実際の税額は財産構成や特例の適用で変わるため、参考値として確認してください。

相続税がかからないケース

株式2,000万円と預貯金2,000万円を、子2人が相続するケースです。基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。

項目 金額
株式の評価額 2,000万円
預貯金 2,000万円
財産合計 4,000万円
相続税額 0円(基礎控除4,200万円以下)

表の見方:株式2,000万円を含めても、財産合計4,000万円は基礎控除4,200万円を下回ります。黄色の行が結論です。

計算ロジック:【前提】子2人・財産4,000万円。基礎控除4,200万円を下回るため、相続税は0円で申告も原則不要です。ただし判断の前提として株式の評価は必要です。

申告が不要でも、4つの価格を比較した記録は残しておきましょう。税務署から問い合わせがあった場合の説明資料になります。

相続税がかかるケース

株式3,000万円と預貯金3,000万円、合計6,000万円を子2人が相続するケースです。

項目 金額
財産合計 6,000万円
基礎控除 4,200万円
課税遺産総額 1,800万円
相続税額(子2人合計) 180万円

表の見方:財産合計6,000万円から基礎控除4,200万円を引いた1,800万円が課税対象です。黄色の行が最終的な税額です。

計算ロジック:【前提】子2人・法定相続分で分割。課税遺産総額1,800万円を2人で分け、各900万円×税率10%=90万円。2人合計で180万円です(相続税率は2026年時点)。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

パターン比較|株式の評価額で税額はこう変わる

預貯金3,000万円・子2人を固定し、株式の評価額だけを変えた3パターンで相続税額を比較します。

パターンA:株式の評価額が2,000万円の場合。

パターンB:株式の評価額が3,000万円の場合。

パターンC:株式の評価額が5,000万円の場合。

パターン 財産合計 相続税額(2人合計)
A|株式2,000万円 5,000万円 80万円
B|株式3,000万円 6,000万円 180万円
C|株式5,000万円 8,000万円 470万円

表の見方:株式の評価額が3,000万円増えると、相続税は80万円から470万円へ約6倍になります。評価額の算定が税額に直結することがわかります。

重要ポイント:上場株式で最も低い価格を選ぶこと、非上場株式で正しい方式を使うことが、そのまま税額の差になります。評価の精度が節税そのものです。

計算ロジック:【前提】子2人・法定相続分で分割・預貯金3,000万円固定。各パターンとも「(財産合計−基礎控除4,200万円)÷2×税率−控除額」を2人分合計して算出しています。

配偶者が相続する場合は税額軽減で大きく変わる

配偶者が株式を相続する場合は、配偶者の税額軽減が使えます。1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで、相続税がかかりません。

たとえば株式5,000万円を含む財産8,000万円をすべて配偶者が相続すれば、1億6,000万円以下のため相続税は0円です。

ただし、この軽減は申告してはじめて適用されます。税額が0円になる場合でも、申告書の提出は必要です。

ただし、配偶者に財産を寄せすぎると、次に配偶者が亡くなったとき(二次相続)の税負担が重くなります。株式を誰が相続するかは、二次相続まで見据えて決めることが大切です。

重要ポイント:配偶者の税額軽減で1億6,000万円まで相続税は0円になります。ただし二次相続の負担増とセットで検討してください。

上場株式の評価で見落としやすい5つの注意点

上場株式の評価はシンプルですが、見落とすと評価や申告を誤るポイントがあります。特に配当と端株は申告漏れが起きやすいため注意が必要です。

ここでは、権利落ち日・配当・端株・NISA口座・受け渡し前の売却の5つの注意点を解説します。

権利落ち日をまたぐ場合は使う株価が変わる

配当や株式分割の権利がなくなる「権利落ち日」の前後は、株価が権利の分だけ下がります。この時期に相続が発生すると、使う株価の扱いが変わります。

権利落ち日とは、その日以降に株式を買っても直近の配当や新株を受け取れなくなる日のことです。多くの銘柄では決算月の月末近くに設定されています。

相続開始日が権利落ち日から基準日までの間にある場合は、権利落ち日の前日以前の終値のうち、相続開始日に最も近い日の終値を使います。

月平均額の計算にも調整が入るため、決算期の前後に亡くなった場合は特に注意が必要です。

注意:権利落ち日から基準日の間に相続が発生した場合は権利落ち前の株価で評価します。通常どおりの終値で評価すると誤りになります。

配当期待権・未収配当金も相続財産になる

亡くなったタイミングによっては、まだ受け取っていない配当金も相続財産として計上する必要があります。

配当基準日の翌日から株主総会の決議日までに亡くなった場合は「配当期待権」、決議日の翌日から支払日までに亡くなった場合は「未収配当金」として評価します。

配当期待権は「予想配当額×(1−源泉徴収税率20.315%)×株式数」で評価します。

注意:配当期待権・未収配当金は株式本体とは別に計上します。決算月の前後に亡くなった場合は、必ず配当の状況を確認してください。

端株(単元未満株)の見落としに注意

100株未満の端株は、証券口座で管理されていないことが多く、証券会社の残高証明書に載らない場合があります。

端株の有無は、配当金計算書の「所有株式数」の欄で確認できます。残高証明書の株式数と食い違っていれば、端株が存在するサインです。

端株が見つかった場合は、株主名簿管理人(信託銀行など)に相続開始日時点の残高証明書を請求します。

相続した端株は、発行会社への買取請求で現金化できます。少額でも放置せず、名義変更とあわせて対応しましょう。

注意:端株は証券会社の残高証明書に載らないことがあります。配当金計算書との突き合わせで見落としを防ぎましょう。

NISA口座の株式も相続財産に含まれる

NISA口座で保有していた株式も、通常の株式と同じく相続財産です。評価方法も同じで、4つの価格から最も低い株価を選べます。

ただし、NISAの非課税枠は相続人に引き継げません。相続した株式は、相続人の課税口座に移されます。

NISA口座の有無は残高証明書で確認できます。「非課税だから相続税もかからない」という誤解には注意してください。

移管の手続きは証券会社ごとに異なります。NISA口座があるとわかったら、早めに手続きの流れを確認しておきましょう。

重要ポイント:NISA口座の株式も相続税の課税対象で、非課税枠は引き継げません。相続後は課税口座での運用になります。

亡くなる直前に売却した株式は「未収金」になる

株式の売却では、約定から受け渡しまで数営業日かかります。売却を注文した後、受け渡しが完了する前に亡くなるケースがあります。

この場合、株式としてではなく「売買代金請求権(未収金)」として相続財産に計上します。金額は売却代金から手数料などを差し引いた額です。

4つの価格による株式の評価は使えないため、残高証明書や取引報告書で売却の状況を確認しましょう。

注意:受け渡し前の株式は株式ではなく未収金として計上します。直前の取引履歴は必ず確認してください。

株式の相続手続きの流れ|評価から名義変更・売却まで

株式の相続は、評価だけでなく名義変更や売却まで含めた段取りが重要です。相続税の申告期限は10ヶ月以内のため、全体の流れを押さえて進めましょう。

ここでは手続きの流れ、名義変更、売却時の税金、準確定申告を解説します。

相続発生から申告までの流れ|5つのSTEP

STEP1
保有株式を確認する。証券会社の残高証明書とほふり照会で、銘柄と株式数を洗い出します

STEP2
評価額を計算する。上場株式は4つの価格を比較し、非上場株式は税理士に評価を依頼します

STEP3
遺産分割協議で株式を誰が相続するかを決め、遺産分割協議書を作成します

STEP4
名義変更を行う。上場株式は証券会社、非上場株式は発行会社で手続きします

STEP5
相続税を申告・納税する。期限は相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です

重要ポイント:株式の調査と評価には時間がかかります。申告期限の10ヶ月から逆算して早めに着手しましょう。

名義変更の手続きと必要書類

株式は名義変更をしないと売却できません。上場株式は証券会社、非上場株式は発行会社で手続きします。

相続人が証券口座を持っていない場合は、同じ証券会社に相続人名義の口座を開設して株式を移します。

非上場株式の場合は、発行会社に株主名簿の書き換えを依頼します。会社の定款で譲渡制限がある場合も、相続による取得なら承認は不要です。

名義変更で必要になる主な書類は次のとおりです。

  • ・被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • ・相続人全員の戸籍謄本
  • ・相続人全員の印鑑証明書
  • ・遺産分割協議書または遺言書
  • ・証券会社・発行会社所定の手続き書類

重要ポイント:名義変更が完了するまで株式は売却できません。納税資金として売却を予定しているなら、名義変更を優先して進めましょう。

相続した株式を売却するときの税金

相続した株式を売却して利益が出ると、譲渡所得税(税率20.315%)がかかります。相続税とは別の税金です。

譲渡所得は「売却代金−(取得費+手数料)」で計算します。取得費は、亡くなった人が株式を購入したときの価格を引き継ぎます。

購入価格がわからない場合は、売却代金の5%を取得費とみなして計算できます。ただし実際の取得費より低くなることが多く、税負担は重くなりがちです。

取得費は、証券会社の取引報告書や顧客勘定元帳で確認できます。5%ルールを使う前に、まず記録を探してみましょう。

計算ロジック:【前提】譲渡所得100万円の場合。100万円×20.315%=203,150円の譲渡所得税がかかります(所得税15.315%+住民税5%)。

準確定申告が必要になるケース

亡くなった人にその年の株式の売却益や配当所得があった場合、相続人が代わりに所得税を申告します。これが準確定申告です。

期限は相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内で、相続税の申告(10ヶ月)より早く到来します。

特定口座(源泉徴収あり)だけで取引していた場合は不要なことも多いですが、一般口座や源泉徴収なしの口座がある場合は確認が必要です。

注意:準確定申告の期限は相続税より早い4ヶ月以内です。生前に株式取引があった場合は、口座の種類を早めに確認してください。

参照元:国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)

株式を相続したくない場合は相続放棄も選択肢

借金が多い場合や、引き受け手のない非上場株式しかない場合は、相続放棄という選択肢もあります。

相続放棄をすれば、株式を含むすべての財産と債務を引き継ぎません。手続きは相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申し立てます。

ただし、放棄すると預貯金などプラスの財産も一切受け取れません。株式だけを選んで放棄することはできない点に注意してください。

注意:相続放棄の期限は3ヶ月以内で、財産の一部だけの放棄はできません。判断に迷ったら早めに専門家へ相談しましょう。

株式の相続税を抑える5つの節税対策

株式の相続税は、渡し方と特例の使い方で大きく変わります。上場株式は生前贈与、非上場株式は特例の活用が節税の柱です。

ここでは、生前贈与・評価引き下げ・事業承継税制・みなし配当課税の特例・取得費加算の特例の5つを解説します。

上場株式は株価が下がったタイミングの生前贈与が有効

上場株式は、株価が下がったタイミングで生前贈与すると、低い評価額で財産を移せます。年110万円の基礎控除内なら贈与税もかかりません。

贈与後の値上がり分や配当は受贈者のものになるため、早く渡すほど効果が大きくなります。

贈与時の株式の評価にも、相続と同じく「4つの価格から最も低いものを選ぶ」ルールが使えます。贈与日の終値だけで判断しないようにしましょう。

ただし2024年改正により、相続人への贈与は亡くなる前7年以内の分が相続財産に加算されます。加算期間は次のとおり段階的に延長されます。

相続開始の時期 加算される贈与の期間
2026年12月まで 相続開始前3年以内
2027年1月〜2030年12月 2024年1月1日以降の贈与
2031年1月以降 相続開始前7年以内

表の見方:加算期間は2031年に完全に7年へ移行します。株式の生前贈与は早く始めるほど加算を避けやすくなります

参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除

自社株は評価額を引き下げてから贈与する

非上場の自社株は、評価額を適正に引き下げてから贈与・相続することで、税負担を大きく抑えられます。

類似業種比準方式は、会社の利益・配当・純資産が小さいほど評価が下がる仕組みです。この性質を利用します。

【評価引き下げの代表的な方法】

方法1:役員退職金の支給で利益と純資産を圧縮する

方法2:設備投資や大規模修繕で利益を圧縮する

方法3:記念配当の廃止など配当方針を見直す

評価が下がったタイミングで贈与すれば、低い評価額で自社株を後継者に移せます。実行の順番と時期の設計が重要なため、税理士との綿密な計画が前提です。

重要ポイント:役員退職金の支給などで評価額が下がったタイミングで贈与するのが自社株対策の定石です。行きすぎた対策は否認リスクがあるため専門家と進めましょう。

非上場株式は事業承継税制で納税猶予・免除

後継者が非上場株式を相続・贈与で引き継ぐ場合、事業承継税制(特例措置)を使えば相続税・贈与税の納税が猶予され、要件を満たせば最終的に免除されます。

特例措置の適用には「特例承継計画」の提出が必要です。提出期限は2027年(令和9年)9月30日まで延長され、2027年12月31日までの相続・贈与が特例措置の対象です。

特例措置では、対象株式の全部について納税の100%が猶予されます。期限のない一般措置(猶予割合80%)より有利な内容です。

ただし、後継者が株式を手放すなど要件を満たさなくなると、猶予が打ち切られ、利子税とともに納税が必要になります。長期の視点での判断が欠かせません。

雇用維持などの継続要件があり、手続きも複雑なため、事業承継税制の実績がある税理士のサポートが事実上必須です。

注意:特例措置は2027年12月31日までの相続・贈与が対象です。自社株の承継を考えている場合は、期限から逆算して早めに準備してください。

発行会社への譲渡はみなし配当課税の特例で税率を抑える

相続した非上場株式を発行会社に買い取ってもらうと、通常は売却額の一部が配当所得となり、総合課税で最高55%の税率がかかります。

しかし相続税の申告期限の翌日から3年以内に譲渡すれば、全額が譲渡所得として扱われ、税率を約20%に抑えられます。

非上場株式を現金化したい相続人には大きな特例です。譲渡の日までに発行会社を通じて税務署への届出が必要な点に注意してください。

重要ポイント:期限内の譲渡なら最高55%の課税が約20%に抑えられます。適用には事前の届出が必要です。

参照元:国税庁 No.1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例

取得費加算の特例で売却時の税金を軽減

相続した株式を、相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始から約3年10ヶ月以内)に売却すると、納めた相続税の一部を取得費に加算できます。

取得費が増える分だけ譲渡所得が減り、譲渡所得税を軽減できます。

この特例は、確定申告で計算明細書を添付してはじめて適用されます。売却した翌年の申告を忘れないようにしましょう。

納税資金の確保や資産の整理で株式の売却を予定しているなら、この期限内に売却するだけで税負担が変わります。

重要ポイント:売却するなら相続開始から約3年10ヶ月以内が有利です。売却時期を決める前に、この特例の期限を確認しましょう。

参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

株式の相続で起こりやすいトラブルと対策

株式の相続では、評価や分割をめぐるトラブルが起こりがちです。よくあるトラブルは事前の対策でほぼ防げます

ここでは代表的な3つのトラブルと、その対策を解説します。

評価額をめぐって相続人同士が対立する

株式は株価が日々動くため、「いつの・どの価格で分けるか」をめぐって相続人同士が対立しやすい財産です。

相続税評価額と実際に売れる価格(時価)が異なることも、対立を生む一因です。特に非上場株式では、その差が大きくなりがちです。

事例1:株式を相続する長男が代償金を支払う代償分割で、株価の基準日をめぐって兄弟の主張が食い違い、協議が長期化した。

対策:遺産分割協議の最初に、評価の基準日と算定方法を相続人全員で合意しておきます。合意内容は協議書に明記します。

事例2:非上場株式の評価額が高すぎるのではないかと、株式を相続しない相続人が不信感を持った。

対策:税理士が作成した評価明細を全員に開示し、算定根拠を透明化します。中立的な専門家の評価を基準にすることで対立を防げます。

重要ポイント:評価の基準日と方法を最初に全員で合意することが、株式相続のトラブル防止の要です。

申告後に株式が見つかる

株式は不動産と違って登記簿がなく、把握しづらい財産です。申告後に見つかるケースは珍しくありません。

事例:申告を終えた後、自宅から古い株券と配当通知が見つかり、申告漏れが判明した。

対策:相続の初期段階でほふりへの開示請求を行い、口座を網羅的に洗い出します。配当金計算書や郵送物との突き合わせも有効です。

それでも後から見つかった場合は、速やかに修正申告を行います。税務署の指摘前に自主的に申告すれば、過少申告加算税が軽減されます。

証券会社は税務署に取引記録を提出しているため、株式の申告漏れは発覚しやすい財産です。「見つからないだろう」という判断は禁物です。

重要ポイント:後から株式が見つかったら指摘される前に自主的に修正申告することで、ペナルティを最小限にできます。

納税資金が足りない

相続財産のほとんどが株式だと、相続税を納める現金が足りなくなることがあります。特に売却しづらい非上場株式では深刻な問題です。

事例:財産の大半が自社株の後継者が、納税資金を用意できず、会社の資金から借り入れて納税せざるを得なくなった。

対策:納税額の見込みを早めに試算し、次の3つの方法から資金計画を立てておきます。

【対策1】株式を売却して納税資金を作る

上場株式なら名義変更後に売却できます。約3年10ヶ月以内なら取得費加算の特例も使えます。

【対策2】延納で分割払いにする

要件を満たせば相続税を年払いで分割できます。ただし利子税がかかります。

【対策3】物納を検討する

延納でも納付が難しい場合、株式そのもので納める物納という選択肢もあります。

トラブルを防ぐために、次の項目を確認しておきましょう。

  • □ 残高証明書とほふり照会で保有株式を洗い出した
  • □ 4つの価格を比較して最も低い株価で評価した
  • □ 端株・配当期待権・未収配当金を確認した
  • □ 評価の基準日と方法を相続人全員で合意した
  • □ 納税資金の確保方法を決めた
  • □ 準確定申告(4ヶ月)と相続税申告(10ヶ月)の期限を把握した

重要ポイント:納税資金対策は「売却・延納・物納」の順に検討するのが基本です。どれを選ぶかで税負担が変わるため、早めに方針を決めましょう。

参照元:国税庁 No.4211 相続税の延納

株式の相続税評価こそ一括相談・見積りで税理士を比較する

株式、特に非上場株式の評価は、税理士の力量によって評価額と税額が大きく変わる分野です。

だからこそ、1社だけに相談するのではなく、複数の税理士から提案と見積りを取り寄せて比較することが重要です。ここでは一括相談・見積りの必要性とメリット、手順を解説します。

一括相談・見積りが必要な理由|非上場株式の評価は税理士で差が出る

非上場株式の評価は、会社規模の判定・資産の洗い替え・類似業種の選定など、判断の連続です。判断の積み重ねで評価額が大きく変わります。

たとえば同じ会社の株式でも、A税理士の評価は5,000万円、株式評価に精通したB税理士の評価は3,800万円、という差が実際に起こり得ます。

評価差1,200万円に相続税率30%を当てはめると、納税額で約360万円の差になります。評価の精度がそのまま税額の差になるのが株式相続です。

一括相談・見積りのメリット|株式評価に強い税理士を比較で見つけられる

複数の税理士に一括で相談すれば、株式の評価と対策に強い税理士を比較して選べます。判定のポイントは次の4つです。

判定ポイント1:非上場株式の評価実績
年間の評価件数や事例を数字で示せるか。実績を具体的な数字で答えられる税理士ほど信頼できます

判定ポイント2:評価引き下げ・生前対策の提案力
役員退職金の支給時期など、評価額を適正に下げる具体策を提示できるか。

判定ポイント3:事業承継税制の申請実績
特例承継計画の作成から認定手続きまでの経験があるか。期限(2027年12月31日)を踏まえた段取りを示せるか。

判定ポイント4:申告後のサポート体制
株式評価は税務調査で指摘されやすい項目です。調査対応まで見積りに含まれているかを確認します。

1社だけに相談・見積りをするリスク|評価の誤りに気づけない

1社だけに相談すると、その評価や提案が適正かどうかを比較で確かめられません。株式評価の経験が浅い税理士に当たると、評価の誤りに誰も気づけません。

評価が過大なら、本来払わなくてよい相続税を払うことになります。たとえば評価が1,000万円過大なら、税率30%で約300万円の払いすぎです。

逆に評価が過少だと、税務調査で指摘され、過少申告加算税や延滞税の追加負担が発生します。どちらに転んでも損をするのは相続人です。

見積り比較シミュレーション|報酬差と評価適正化の効果

遺産規模別に、税理士報酬の差と、株式評価の適正化・節税提案で得られる効果を試算しました。報酬の安さだけでなく、提案力を含めた総合判断が重要です。

遺産規模 報酬の幅(最安〜最高) 評価・提案力による税額差
5,000万円 20万〜40万円 約100万円
1億円 40万〜80万円 約300万円
2億円(非上場株式含む) 70万〜150万円 約600万円

表の見方:非上場株式を含む相続ほど、税理士による税額差が拡大します。報酬の差より評価・提案力による税額差のほうがはるかに大きいのが実情です。

計算ロジック:【前提】株式の評価方法の選択・評価引き下げ・特例活用を含む対策全体での試算。評価の精度と特例の適用漏れ防止が税額差の主な要因です。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

STEP1
相続の概要を整理する。株式の銘柄・株数・上場か非上場か、その他の財産の概算額、相続人の構成をまとめます

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する。相続税申告・株式の評価・節税の希望を伝え、3〜5社へ同時に打診します。フォーム入力は5分程度です

STEP3
見積りと初回相談を受ける。各税理士から評価の方針・試算税額・報酬額が届くので、気になる事務所と初回相談を実施します

STEP4
税理士を選定・正式依頼する。提案内容の質・説明の丁寧さ・報酬の納得性で選び、申告期限の10ヶ月から逆算して早めに決定します

重要ポイント:非上場株式の評価には数ヶ月かかることもあります。相続開始後できるだけ早く見積り依頼するのが安全です。

初回相談で確認すべきチェックリスト

  • □ 非上場株式の評価実績を数字で示せるか
  • □ 上場株式の4つの価格・配当期待権・端株まで確認する姿勢があるか
  • □ 評価引き下げや生前対策の具体案を提示できるか
  • □ 事業承継税制(2027年12月31日期限)を踏まえた提案か
  • □ 取得費加算・みなし配当特例など売却時の税金まで説明があるか
  • □ 申告期限までのスケジュールを示せるか
  • □ 質問への回答が明確でわかりやすいか

重要ポイント:初回相談では株式評価の実績を具体的な数字で確認することが、力量を見極める最短ルートです。

見積りで確認すべきチェックリスト

  • □ 報酬体系が明確に記載されているか
  • □ 非上場株式の評価料金が報酬に含まれるか(別料金の場合の金額)
  • □ 株式の評価方針と試算評価額が示されているか
  • □ 節税提案による試算効果が明示されているか
  • □ 税務調査対応の費用と条件が明記されているか
  • □ 追加費用が発生する条件が明記されているか
  • □ 複数社の総額を同じ条件で比較できるか

重要ポイント:見積りは報酬の安さではなく「節税効果−報酬」の実質メリットで比較してください。非上場株式の評価料金の有無は特に要確認です。

よくある質問(FAQ)

Q. 株式の相続税評価額はいつ時点の株価で決まりますか?

亡くなった日(相続開始日)が基準です。上場株式は相続開始日の終値と、当月・前月・前々月の月平均額の4つから最も低い株価を選べます。申告後に株価が動いても、評価額は変わりません。

Q. 株式が少額でも相続税の申告は必要ですか?

株式を含む財産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら、申告は原則不要です。超える場合は、株式が少額でも全財産をあわせて申告する必要があります。

Q. NISA口座の株式は相続税がかかりませんか?

かかります。NISAの非課税は生前の運用益に対するもので、相続税とは別です。評価方法は通常の上場株式と同じで、非課税枠は相続人に引き継げず、課税口座に移されます。

Q. 非上場株式の評価は自分でできますか?

現実的には困難です。会社規模の判定、資産の相続税評価への洗い替え、類似業種の選定など専門的な判断が多く、誤ると過大納税や追徴のリスクがあります。非上場株式がある場合は税理士への依頼をおすすめします。

Q. 申告した後に株価が大きく下がったら、評価をやり直せますか?

原則としてやり直せません。評価は相続開始日を基準に確定するため、その後の値下がりは反映されません。値下がりリスクが心配な場合は、早めに売却して納税資金を確保する方法もあります。

まとめ|株式の相続税評価は上場・非上場の違いを押さえて正確に

株式の相続税評価の基本

  • 株式は亡くなった日時点の評価額で相続税の課税対象になる
  • 上場株式は4つの価格から最も低い株価を選び、株数を掛けて評価する
  • 非上場株式は株主の立場と会社規模で3つの方式を使い分ける
  • 株価はYahoo!ファイナンスとJPXの月間相場表で自分でも調べられる

評価・手続きの注意点

  • 権利落ち日・配当期待権・端株・NISA口座は見落としやすい
  • 準確定申告は4ヶ月以内、相続税申告は10ヶ月以内
  • 生前贈与は7年加算、事業承継税制は2027年12月31日までの相続・贈与が対象

今すぐ取るべき行動

  • 残高証明書とほふり照会で保有株式をすべて洗い出す
  • 上場株式は4つの価格を調べて最も低い株価で評価する
  • 非上場株式がある場合は、複数の税理士に一括相談・見積りを依頼して評価の方針と報酬を比較する

※本記事は2026年7月時点の法令・税率に基づいて作成しています。相続税法や事業承継税制の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度や個別の判断については、国税庁の情報や相続に強い税理士に必ずご確認ください。

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