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不動産相続は税理士選びで税額が変わる|失敗しない選び方・費用・依頼準備を完全ガイド

不動産_相続_税理士

不動産を含む相続では、依頼する税理士によって土地の評価額が数百万円単位で変わり、結果として相続税額も大きく変動します。

「不動産があるから税理士に頼みたいが、どの税理士を選べばいいか分からない」「費用はいくらかかるのか、何を準備すればいいのか」――本記事はそうした、税理士への依頼を決めた方に向けた実務ガイドです。

なお、「そもそも不動産相続で税理士が必要なのか」を判断したい方は、関連記事「相続手続き・相続税申告で税理士は必要か?依頼すべきケースと判断基準」をご覧ください。

本記事では、依頼先の選び方・費用・準備・依頼後の流れに絞って、不動産相続を成功させる実務を解説します。

▼この記事の要点

  • 不動産相続は税理士の土地評価力によって税額が変わるため、不動産に強い税理士選びが重要
  • 税理士費用は基本報酬+土地の利用区分ごとの加算が一般的で、事前の内訳確認が必須
  • 不動産鑑定士・司法書士との連携や、相続後の売却まで見据えた税理士選びが鍵

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不動産相続で税理士選びが税額を左右する理由

不動産相続では、税理士選びが最終的な相続税額を大きく左右します。この章では、その理由を簡潔に押さえたうえで、依頼先選びの実務へ進みます。

同じ土地でも税理士によって評価額が変わる

相続財産の中で最も評価が難しいのが土地です。現金や預貯金は金額が一義的に決まりますが、土地は「形状」「接道状況」「利用状況」などによって評価額が変動します。

同じ土地であっても、適用する補正や減額要素の判断によって、税理士ごとに評価額が変わることがあります。この評価額の差が、そのまま相続税額の差につながります。

実務上、土地評価を得意とする税理士とそうでない税理士とでは、最終的な納税額に数百万円単位の開きが生じることも珍しくありません。

減額要素の見落としが過大な納税につながる

土地の評価には、評価額を下げられる「減額要素」が数多くあります。不整形地補正、地積規模の大きな宅地の評価減、私道やがけ地の減額などです。

これらの減額要素を見落とすと、本来より高い評価額で申告してしまい、結果として過大な相続税を納めることになります。

逆に、減額しすぎると税務署から指摘を受けるリスクもあります。適正かつ有利な評価を行うには、土地評価の経験が豊富な税理士の関与が重要です。

まず「税理士が必要か」を判断したい方へ

本記事は「不動産相続で税理士に依頼すると決めた方」に向けた実務ガイドです。

「そもそも自分のケースで税理士が必要なのか」「自分で申告できないか」を先に判断したい方は、関連記事「相続手続き・相続税申告で税理士は必要か?依頼すべきケースと判断基準」で、税理士が必要なケース・不要なケースを詳しく解説しています。

そちらをお読みいただいたうえで本記事に戻っていただくと、依頼先選びがよりスムーズになります。

参照元:国税庁タックスアンサーNo.4602「土地家屋の評価」

不動産相続に強い税理士を見分けるチェックリスト

税理士には得意分野があり、相続税申告、特に土地評価を専門的に扱う税理士は限られています。

この章では、不動産相続に強い税理士を見分ける具体的なチェックポイントを解説します。

相続税申告(特に土地評価)の年間実績

最も重要な指標が、相続税申告の年間取扱件数です。

日本の税理士の多くは法人税や所得税を主業務としており、相続税申告を年に数件しか扱わない事務所も珍しくありません。土地評価は経験がものを言う分野のため、年間の相続税申告実績、特に土地を含む案件の実績を確認しましょう。

目安として、相続税申告を年間数十件以上扱っている事務所であれば、土地評価の経験も豊富と考えられます。ホームページや初回相談で具体的な件数を尋ねるとよいでしょう。

書面添付制度の利用率

書面添付制度とは、税理士が申告書の作成にあたって計算・整理した内容や、相談に応じた事項を記載した書面を申告書に添付する制度です(税理士法第33条の2)。

この書面が添付されていると、税務署が調査に入る前に税理士への意見聴取が行われ、その結果次第で税務調査が省略されることもあります。土地評価は税務調査で指摘を受けやすい項目のため、書面添付制度を積極的に活用している税理士は信頼性が高いといえます。

書面添付制度の利用率を尋ね、高い割合で活用している税理士を選ぶことをおすすめします。

不動産鑑定士との連携体制

土地評価において、財産評価基本通達による評価額が実際の時価より高くなるケースでは、不動産鑑定士の鑑定評価による評価減が認められる場合があります。

不動産鑑定士と連携している税理士であれば、通達評価と鑑定評価のどちらが有利かを比較検討し、最適な評価方法を選択できます。複雑な土地や特殊な事情のある土地を相続した場合、この連携体制の有無が評価額に影響します。

土地の現地調査・役所調査を行うか

土地を適正に評価するには、机上の資料だけでなく、現地の状況や役所での調査が欠かせません。

実際に現地を訪れて間口・奥行・形状・接道状況・周辺環境を確認し、役所で都市計画や道路の情報を調査する税理士は、減額要素を見落としにくくなります。

現地調査や役所調査を標準的に行っているかどうかも、税理士選びの重要なポイントです。

相続後の不動産売却まで相談できるか

相続した不動産を売却する場合、譲渡所得税が発生します。このとき、相続税の一部を取得費に加算できる特例など、相続と売却を一貫して把握している税理士であれば有利な提案が可能です。

申告だけでなく、相続後の売却や活用まで見据えて相談できる税理士を選ぶと、トータルでの税負担を抑えられます。詳細はH2「相続後の不動産売却まで見据えた税理士選び」で解説します。

料金体系の透明性

不動産がある相続では、基本報酬に加えて土地の評価に対する加算報酬が発生するのが一般的です。

見積もりの段階で、基本報酬と加算報酬の内訳が明確に示されるかを確認しましょう。料金体系が不透明で、後から想定外の追加費用が発生する事務所は避けるべきです。

チェックリストまとめ(10項目)

不動産相続に強い税理士を見分けるチェックリストを整理します。

チェック項目確認のポイント
相続税申告の年間実績年間数十件以上が目安
土地評価の経験土地を含む案件の実績
書面添付制度の利用高い利用率が望ましい
不動産鑑定士との連携鑑定評価の選択肢があるか
現地調査の実施現地・役所調査を行うか
売却まで相談可能か譲渡所得まで対応できるか
料金体系の透明性内訳が明確か
初回相談の有無無料相談で相性を確認
二次相続への配慮将来まで見据えた提案か
コミュニケーション説明が分かりやすいか

これらの項目を初回相談で確認し、複数の税理士を比較して選ぶことをおすすめします。

参照元:日本税理士会連合会「書面添付制度」

不動産相続の税理士費用|料金体系と内訳

不動産がある相続の税理士費用は、現預金のみの相続より高くなる傾向があります。土地評価に手間がかかるためです。

この章では、料金体系と内訳を透明に解説します。

基本報酬の相場(遺産総額の0.5〜1%)

相続税申告の税理士報酬は自由化されており事務所によって異なりますが、一般的な相場は遺産総額の0.5〜1%とされています。

たとえば遺産総額が1億円の場合、基本報酬は50万〜100万円程度が目安です。多くの事務所は遺産総額に応じた料金表を設けています。

この基本報酬には、財産評価、申告書の作成、提出までの基本的な業務が含まれるのが一般的です。

不動産特有の加算報酬(土地の利用区分ごと)

不動産がある場合、基本報酬に加えて土地の評価に対する加算報酬が発生するのが一般的です。

加算の単位は「利用区分(評価単位)ごと」とされることが多く、1利用区分あたり数万円〜10万円程度が目安です。たとえば自宅の土地、賃貸アパートの土地、駐車場の土地はそれぞれ別の利用区分として扱われ、評価する区分が増えるほど加算報酬も増えます。

土地が多い相続や、用途の異なる土地を複数持つ相続では、この加算報酬がまとまった金額になることがあります。

複数物件・賃貸物件がある場合の加算

賃貸物件は評価が複雑なため、追加の加算報酬が発生することがあります。

貸家建付地の評価、賃貸割合の計算、借家権割合の適用など、賃貸物件特有の評価作業に対する加算です。複数の賃貸物件を持つ場合は、物件ごとに加算されることが一般的です。

不動産鑑定士の意見書を使う場合の追加費用

通達評価より時価が低いケースで不動産鑑定士の鑑定評価を使う場合、鑑定費用が別途発生します。

鑑定費用は土地の規模や難易度によりますが、1件あたり数十万円程度が目安です。鑑定によって評価額が大きく下がり、鑑定費用を上回る節税効果が見込める場合に検討します。

費用の総額イメージ(ケース別)

不動産がある相続の税理士費用の総額イメージを整理します。

ケース費用の総額イメージ
自宅のみ・遺産5,000万円30万〜50万円程度
自宅+賃貸1棟・遺産1億円80万〜130万円程度
複数の土地・賃貸複数・遺産2億円150万〜250万円程度

これらはあくまで目安で、事務所や案件の難易度によって変動します。必ず複数の事務所から見積もりを取り、内訳を確認してください。

報酬以上の節税効果が得られるケース

税理士費用は決して安くありませんが、土地評価の適正化による節税効果が報酬を上回るケースは少なくありません

たとえば、減額要素の見落としを防ぎ、不整形地補正や地積規模の大きな宅地の評価減を適切に適用することで、報酬額以上に相続税が下がることがあります。

単に「支払う報酬額」だけでなく、「節税効果を含めたトータルコスト」で判断することが重要です。

参照元:日本税理士会連合会「税理士の報酬」

専門家の役割分担|税理士・不動産鑑定士・司法書士・不動産会社

不動産相続では、税理士だけでなく複数の専門家が関わります。それぞれの役割を理解し、適切に使い分けることが、円滑な相続につながります。

税理士の役割(相続税申告・土地評価)

税理士は、相続税の申告と納税に関する専門家です。

財産評価(特に土地評価)、相続税額の計算、申告書の作成・提出、税務調査への対応などを担います。不動産相続においては、土地の評価が税額を左右するため、税理士の役割は極めて重要です。

ただし、税理士は税務の専門家であり、相続登記や遺産分割の法律的な争いには対応できない点に注意が必要です。

不動産鑑定士の役割(鑑定評価・意見書)

不動産鑑定士は、不動産の経済価値を評価する専門家です。

財産評価基本通達による評価額が実際の時価より高くなるケースで、鑑定評価による評価減を主張する際に、鑑定評価書や意見書を作成します。税理士と連携して、有利な評価方法を選択する場面で関わります。

司法書士の役割(相続登記・名義変更)

司法書士は、不動産の登記手続きの専門家です。

相続した不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」を担当します。2024年4月から相続登記が義務化されたため、不動産相続では司法書士の関与が欠かせません。

なお、相続登記の義務化により、相続による不動産取得を知った日から3年以内の登記申請が必要です。

不動産会社の役割(売却・査定)

不動産会社は、相続した不動産の売却や査定を担当します。

相続不動産を売却して現金で分割する「換価分割」や、納税資金を確保するための売却の際に関わります。売却価格の査定や買主探しを担います。

専門家4種の役割分担早見表

不動産相続で関わる専門家の役割を整理します。

専門家主な役割関わる場面
税理士相続税申告・土地評価申告・節税・税務調査対応
不動産鑑定士鑑定評価・意見書通達評価より時価が低い土地の評価減
司法書士相続登記・名義変更不動産の名義変更(2024年義務化)
不動産会社売却・査定換価分割・納税資金確保のための売却

ワンストップ対応の事務所を選ぶメリット

これらの専門家と個別に契約することもできますが、税理士事務所のなかには司法書士や不動産鑑定士と提携し、ワンストップで対応できるところもあります。

ワンストップ対応の事務所を選ぶと、専門家間の連携がスムーズになり、相続人の手間と時間が大幅に軽減されます。窓口が一本化されることで、情報共有の漏れも防げます。

不動産が多い相続や、売却まで見据えた相続では、ワンストップ対応の事務所を選ぶメリットが大きいといえます。

参照元:法務省「相続登記の申請義務化について」

税理士に依頼する前に準備する不動産書類リスト

税理士に依頼する際、不動産関連の書類を事前に準備しておくと、評価や申告がスムーズに進みます。

この章では、依頼前に準備すべき不動産書類を入手先別に整理します。

登記関係(登記簿謄本・公図・測量図)

不動産の権利関係と形状を確認するための基本書類です。

  • 登記簿謄本(登記事項証明書):不動産の所有者、地番、地積、権利関係を確認する書類。法務局で取得できます。
  • 公図:土地の位置関係や隣地との境界の概略を示す図面。法務局で取得します。
  • 地積測量図:土地の正確な形状と面積を示す図面。法務局に備え付けがある場合に取得できます。

これらは土地の形状や接道状況を把握し、評価の基礎とするために不可欠です。特に地積測量図は、不整形地の補正を判断する際に重要な資料となります。

評価関係(固定資産税評価証明書・名寄帳)

土地・建物の評価額を確認するための書類です。

  • 固定資産税評価証明書:市区町村が発行する、固定資産税評価額を示す書類。建物の評価額算定に使います。
  • 固定資産課税明細書:毎年送られてくる固定資産税の通知書。所有不動産の一覧として活用できます。
  • 名寄帳(なよせちょう):被相続人が所有する不動産を市区町村ごとに一覧化した書類。所有不動産の見落としを防ぐために有効です。

特に名寄帳は、把握していなかった不動産を発見する手がかりになるため、被相続人が不動産を持っていた市区町村ごとに取得しておくことをおすすめします。

賃貸関係(賃貸借契約書・賃料明細)

賃貸物件を相続する場合に必要な書類です。

  • 賃貸借契約書:賃借人との契約内容を示す書類。貸家建付地の評価に使います。
  • 賃料明細・家賃管理表:賃貸割合(入居率)を確認する資料。空室状況によって評価が変わるため重要です。
  • 管理委託契約書:管理会社に委託している場合の契約書。

賃貸物件は評価が複雑なため、これらの書類が揃っていると税理士の評価作業がスムーズになります。

取得関係(売買契約書・購入時の資料)

相続後の売却を見据える場合に重要な書類です。

  • 購入時の売買契約書:被相続人が不動産を取得したときの契約書。取得費を証明する資料です。
  • 購入時の領収書・諸費用の記録:取得費に含められる費用の証明。

相続した不動産を将来売却する際、譲渡所得税の計算で「取得費」が必要になります。取得費が不明だと売却価格の5%しか取得費として認められず、税負担が重くなるため、購入時の資料は必ず探しておきましょう。

準備チェックリストまとめ

依頼前に準備する不動産書類を整理します。

分類書類入手先
登記関係登記簿謄本・公図・地積測量図法務局
評価関係固定資産税評価証明書・名寄帳市区町村役場
賃貸関係賃貸借契約書・賃料明細自宅保管・管理会社
取得関係購入時の売買契約書・領収書自宅保管

すべてを完璧に揃える必要はなく、揃わないものは税理士に相談すれば取得方法を案内してもらえます。ただし、購入時の資料は後から入手が難しいため、優先的に探しておくことをおすすめします。

参照元:国税庁タックスアンサーNo.1440「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」

税理士による土地評価の違いが生まれる具体例

「税理士によって土地の評価額が変わる」とはどういうことか、具体的な減額要素を例に解説します。

これらの減額要素を適切に適用できるかどうかが、税理士の専門性の差となって表れます。

不整形地の補正を適用するか

土地の形がいびつな「不整形地」は、整形地に比べて利用しにくいため、評価額を減額できます。

不整形の程度に応じて「不整形地補正率」を適用し、評価額を下げます。しかし、この補正の判断には土地の形状を正確に把握する必要があり、経験の浅い税理士は適用を見落とすことがあります。

整形地として評価するか、不整形地として補正を適用するかで、評価額に差が生じます。

地積規模の大きな宅地の評価減

一定面積以上の広い宅地は、「地積規模の大きな宅地の評価」により、規模格差補正率を適用して評価額を大幅に下げられる場合があります。

三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の宅地が対象となり得ます。この評価減は減額幅が大きいため、適用できるかどうかで税額が大きく変わります。

ただし、適用には地区区分や用途地域などの要件があり、正確な判断には専門知識が必要です。

私道・セットバック・がけ地などの減額

土地にはさまざまな減額要素があります。

  • 私道:不特定多数が通行する私道は評価額がゼロ、特定の者が使う私道は評価減
  • セットバック:建築基準法で道路後退が必要な部分は評価減
  • がけ地:傾斜のあるがけ地部分は、がけ地補正率で評価減

これらは現地調査や役所調査をしないと把握しにくいため、調査を丁寧に行う税理士でないと見落とすことがあります。

賃貸物件(貸家建付地)の評価

賃貸アパートやマンションが建っている土地は「貸家建付地」として評価され、自用地より評価額が下がります。

評価額は、借地権割合・借家権割合・賃貸割合を用いて計算します。特に賃貸割合(入居率)の計算は、各部屋の床面積に基づいて厳密に行う必要があり、評価額に影響します。

満室であれば評価減の恩恵をフルに受けられますが、空室がある場合はその部分の扱いに判断が必要です。

不動産鑑定士の意見書による評価減

財産評価基本通達による評価額が、実際の時価より明らかに高くなるケースがあります。

このような場合、不動産鑑定士の鑑定評価による評価額を採用することで、評価減が認められる可能性があります。不動産鑑定士と連携している税理士であれば、通達評価と鑑定評価を比較し、有利な方を選択できます。

ただし、鑑定評価が必ず認められるわけではなく、税務署との見解の相違が生じることもあるため、専門的な判断が必要です。

参照元:国税庁タックスアンサーNo.4602「土地家屋の評価」国税庁「地積規模の大きな宅地の評価」

相続後の不動産売却まで見据えた税理士選び

相続した不動産を売却する場合、譲渡所得税が発生します。相続税の申告と売却を一貫して相談できる税理士を選ぶと、トータルでの税負担を抑えられます。

相続した不動産を売却する際の譲渡所得税

相続した不動産を売却して利益(譲渡所得)が出ると、譲渡所得税・住民税がかかります。

譲渡所得は「売却価格-取得費-譲渡費用」で計算します。取得費は被相続人が購入したときの価格を引き継ぐため、購入時の資料が重要になります。

所有期間(被相続人の保有期間を引き継ぐ)が5年を超えるかどうかで税率が変わり、5年超の長期譲渡所得なら約20%、5年以下の短期譲渡所得なら約39%の税率が適用されます。

取得費加算の特例(相続税の一部を取得費に加算)

相続した不動産を相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。

取得費が増えればその分だけ譲渡所得が減り、譲渡所得税が軽減されます。この特例を使えるかどうか、いつまでに売却すべきかを把握している税理士であれば、有利なタイミングでの売却を提案できます。

相続税の申告を担当した税理士が売却も把握していれば、この特例の適用がスムーズです。

空き家の3,000万円特別控除

被相続人が一人で住んでいた家屋を相続し、一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」があります。

耐震基準を満たすことや、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することなど、細かい要件があります。

この特例も、相続と売却を一貫して相談できる税理士であれば、要件を満たすよう計画的に進められます。

申告から売却まで一貫して相談できる税理士の価値

相続税の申告と不動産の売却は密接に関連しています。

申告を担当した税理士が売却まで相談に乗れる場合、取得費加算の特例や空き家の特別控除を見据えた最適なタイミングでの売却を提案できます。申告と売却で税理士が分かれると、情報の引き継ぎに手間がかかり、特例の適用機会を逃すリスクもあります。

不動産の売却を視野に入れている場合は、売却まで一貫して相談できる税理士を選ぶことをおすすめします。

参照元:国税庁タックスアンサーNo.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

不動産が分割しにくい場合の対応と税理士の関与

不動産は現金と違って簡単に分けられないため、相続人が複数いる場合は分割方法が問題になります。

この章では、不動産の分割方法と、納税資金の確保について解説します。

代償分割(一人が取得し他に金銭を支払う)

代償分割とは、特定の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に金銭(代償金)を支払う方法です。

たとえば長男が実家を相続し、その代わりに長女へ法定相続分相当額の現金を支払うようなケースです。不動産を分割せず維持できるメリットがありますが、取得する人にまとまった現金が必要になります。

代償金の原資として、生命保険の活用が有効な場合があります。詳細は関連記事「死亡保険金にかかる相続税の完全ガイド」をご参照ください。

換価分割(売却して現金で分ける)

換価分割とは、相続した不動産を売却し、その代金を相続人で分ける方法です。

公平に分けられるメリットがある一方、売却に伴って譲渡所得税が発生します。前述の取得費加算の特例や空き家の特別控除を活用できるかどうかで、手取り額が変わります。

換価分割を選ぶ場合は、売却時の税負担まで見据えて税理士に相談することが重要です。

共有のリスクと注意点

不動産を相続人の共有名義にする方法もありますが、実務上はおすすめできないケースが多くあります。

共有にすると、売却や活用に共有者全員の同意が必要になり、意思決定が難しくなります。さらに、共有者が亡くなると次の相続でさらに共有者が増え、権利関係が複雑化します。

将来のトラブルを避けるため、可能な限り代償分割や換価分割で単独所有にすることが望ましいでしょう。

納税資金の確保(不動産は現金化しにくい)

相続税は現金一括納付が原則ですが、不動産は現金化に時間がかかります。

不動産の割合が大きい相続では、相続税を納めるための現金が不足するリスクがあります。納税資金を確保する方法として、次のような選択肢があります。

  • 生命保険金を納税資金に充てる
  • 相続した不動産を売却して納税資金を確保する(換価分割)
  • 延納(分割払い)や物納(不動産での納付)を利用する

ただし、延納には利子税がかかり、物納も要件が厳しいため、可能な限り現金で準備するのが望ましいといえます。納税資金まで見据えた相談ができる税理士を選ぶことが重要です。

参照元:国税庁タックスアンサーNo.4205「相続税の申告と納税」

不動産相続の税理士依頼の流れ|申告期限10ヶ月のスケジュール

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

不動産がある相続は評価に時間がかかるため、早めの着手が重要です。この章では、税理士に依頼してから申告・納税までの標準的なスケジュールを整理します。

相続発生〜2ヶ月:税理士選定・契約

相続が発生したら、まず税理士を選定します。

この期間にやるべきことは次のとおりです。

  • 複数の税理士に相談し、見積もりを比較する
  • 不動産相続に強い税理士か、前述のチェックリストで確認する
  • 契約内容と料金体系を確認して契約する

不動産が多い相続ほど評価に時間がかかるため、できるだけ早く税理士を決めることが重要です。葬儀や四十九日法要と並行して進めることになりますが、遅くとも相続発生から2〜3ヶ月以内には税理士を決めたいところです。

3〜6ヶ月:財産調査・土地評価・現地調査

税理士と契約したら、財産調査と評価に入ります。

この期間の主な作業は次のとおりです。

  • 不動産の登記簿謄本・公図・測量図などの収集
  • 名寄帳による所有不動産の確定
  • 土地の現地調査・役所調査
  • 土地・建物の評価額の算定
  • 預貯金・有価証券などその他財産の調査

特に土地評価は、現地調査や役所調査を含めると時間がかかります。減額要素を漏れなく確認するため、この期間に丁寧な調査を行うことが、適正な評価につながります。

7〜9ヶ月:遺産分割・申告書作成

財産の全体像が把握できたら、遺産分割協議と申告書の作成に進みます。

この期間の主な作業は次のとおりです。

  • 遺産分割協議(誰がどの不動産を取得するか)
  • 遺産分割協議書の作成
  • 小規模宅地等の特例など特例適用の検討
  • 相続税申告書の作成

不動産は分割しにくいため、遺産分割協議が難航することがあります。代償分割や換価分割を含めて、税理士のシミュレーションを参考にしながら、申告期限に間に合うよう協議を進めます。

10ヶ月:申告・納税

申告期限までに、相続税の申告と納税を完了させます。

  • 相続税申告書の提出(被相続人の住所地の税務署)
  • 相続税の納付(現金一括が原則)
  • 書面添付制度を利用する場合は添付書面も提出

納税は現金一括が原則のため、納税資金の準備も忘れずに進めます。不動産の割合が大きく現金が不足する場合は、売却や延納・物納の検討が必要です。

このスケジュールからわかるとおり、10ヶ月は決して余裕のある期間ではありません。特に不動産が多い相続では、早めの税理士選定が成功の鍵となります。

参照元:国税庁タックスアンサーNo.4205「相続税の申告と納税」

よくある質問(FAQ)

Q1. 不動産相続に強い税理士はどう探せばいいですか?

相続税申告、特に土地評価の年間実績が豊富な税理士を選ぶことが重要です。

具体的には、相続税申告を年間数十件以上扱っているか、書面添付制度を活用しているか、不動産鑑定士と連携しているか、現地調査・役所調査を行うかを確認しましょう。

税理士事務所のホームページで相続税申告の実績を確認したり、初回無料相談で直接質問したりするのが有効です。複数の税理士を比較して、料金体系の透明性や説明の分かりやすさも踏まえて選ぶことをおすすめします。

Q2. 不動産がある場合の税理士費用はいくらですか?

基本報酬は遺産総額の0.5〜1%が相場で、これに不動産特有の加算報酬が加わります。

加算報酬は土地の利用区分(評価単位)ごとに発生し、1区分あたり数万円〜10万円程度が目安です。賃貸物件がある場合や複数の物件がある場合は、さらに加算されることがあります。

たとえば自宅と賃貸1棟があり遺産総額1億円程度のケースでは、総額80万〜130万円程度が目安です。必ず複数の事務所から見積もりを取り、内訳を確認してください。

Q3. 税理士によって土地の評価額は本当に変わりますか?

変わります。土地の評価には不整形地補正、地積規模の大きな宅地の評価減、私道・がけ地の減額など、数多くの減額要素があります。

これらを適切に適用できるかどうかは、税理士の経験と専門性に依存します。経験の浅い税理士が減額要素を見落とすと、本来より高い評価額で申告してしまい、過大な相続税を納めることになります。

土地評価の経験が豊富な税理士に依頼することで、適正かつ有利な評価が期待でき、結果として相続税を抑えられる可能性があります。

Q4. 相続した不動産を売る場合も同じ税理士に相談できますか?

多くの税理士は、相続税申告だけでなく、相続後の不動産売却に伴う譲渡所得税の相談にも対応しています。

相続した不動産を申告期限の翌日から3年以内に売却すると、相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」が使えます。また、空き家を売却する場合の3,000万円特別控除など、有利な特例もあります。

申告と売却を一貫して相談できる税理士であれば、これらの特例を見据えた最適なタイミングでの売却を提案できます。売却を視野に入れている場合は、契約前にその旨を伝えておくとよいでしょう。

Q5. 不動産の相続登記も税理士に頼めますか?

相続登記は司法書士の業務のため、税理士は直接行えません。ただし、多くの税理士事務所は司法書士と提携しており、ワンストップで対応してもらえます。

2024年4月から相続登記が義務化され、相続による不動産取得を知った日から3年以内の登記申請が必要になりました。正当な理由なく申請を怠ると過料の対象になることもあります。

司法書士と連携している税理士事務所を選べば、相続税申告と相続登記をまとめて進められ、手間が大幅に省けます。

まとめ|不動産相続の税理士選びを成功させるために

不動産を含む相続では、税理士選びが最終的な相続税額を大きく左右します。最後に、税理士選びを成功させるためのポイントを整理します。

税理士選びの3つの最重要ポイント

不動産相続の税理士選びで、特に重視すべきは次の3点です。

第一に、土地評価の実績と専門性です。相続税申告の年間実績が豊富で、現地調査・役所調査を丁寧に行い、減額要素を漏れなく適用できる税理士を選びましょう。これが税額を左右する最重要ポイントです。

第二に、料金体系の透明性です。基本報酬と不動産特有の加算報酬の内訳を明確に示してくれる税理士を選びましょう。複数の事務所から見積もりを取り、比較することが大切です。

第三に、売却・登記まで見据えた対応力です。相続後の不動産売却や相続登記まで一貫して相談できる、あるいは司法書士・不動産鑑定士と連携している事務所を選ぶと、トータルでの負担が軽減されます。

依頼前の準備チェックリスト

税理士に依頼する前に、次の書類を準備しておくとスムーズです。

  • 登記簿謄本・公図・地積測量図(法務局)
  • 固定資産税評価証明書・名寄帳(市区町村役場)
  • 賃貸借契約書・賃料明細(賃貸物件がある場合)
  • 購入時の売買契約書・領収書(売却を見据える場合)

すべて揃わなくても、税理士に相談すれば取得方法を案内してもらえます。ただし、購入時の資料は後から入手が難しいため、優先的に探しておきましょう。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断や法律判断を保証するものではありません。具体的な相続対策・申告は、必ず税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。

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