相続に所得税はかかる?確定申告が必要な7つのケースと税金の分かれ目

相続税_所得税

相続で受け取った財産そのものに、所得税はかかりません。

相続財産には相続税が課されるため、同じ財産に所得税まで課すと二重課税になってしまうからです。

しかし、「相続がきっかけで所得税の確定申告が必要になる」ケースは確かに存在します。

亡くなった人の代わりに行う準確定申告、相続した不動産や株式の売却、家賃収入のある物件の相続などが代表例です。

死亡保険金や未支給年金も、受け取り方や契約内容によっては所得税の対象になります。

「どこまでが相続税で、どこからが所得税か」の線引きを知らないと、申告漏れによる加算税や、逆に払いすぎのリスクを抱えます。

本記事では、相続税と所得税の守備範囲の違い、所得税がかかる7つのケース、それぞれの申告の要否を解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 相続財産そのものに所得税はかからない。相続税と所得税の二重課税は法律で排除されている
  • 所得税がかかるのは「相続の前後に生まれたお金」。準確定申告・売却益・家賃収入・保険金などの7ケース
  • 相続した財産の売却は、相続開始から3年10ヶ月以内なら取得費加算の特例で所得税を減らせる
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結論|相続財産そのものに所得税はかからない

最初に大原則を押さえましょう。遺産を受け取っただけなら、所得税も確定申告も一切不要です

二重課税の排除という大原則

相続や遺贈で取得した財産には、所得税を課さないことが所得税法で明記されています。

相続財産には相続税という専用の税金があるため、同じ財産に相続税と所得税の両方をかける「二重課税」は法律上排除されているのです

現金1億円を相続しても、その1億円が所得税の対象になったり、翌年の確定申告が必要になったりすることはありません。

これは相続だけでなく、遺贈(遺言による取得)や死因贈与で受け取った財産も同じです。

「大金を受け取ったのだから所得では?」という感覚は自然ですが、税法上、相続財産は所得ではないのです。

したがって、遺産の受け取りについて年末調整で会社に申告したり、確定申告書に書いたりする欄もそもそも存在しません。

所得税がかかるのは「相続の前後に生まれたお金」

では、なぜ相続で所得税の話が出てくるのでしょうか。

答えは、相続財産そのものではなく、その前後に「新しく生まれたお金」に所得税がかかるからです

亡くなった人が生前に稼いだ所得、相続した財産を売って出た利益、相続した物件が生む家賃。

これらは「相続財産の受け取り」ではなく「所得の発生」なので、所得税の世界の話になります。

この区別さえつかめば、相続と所得税の関係はほぼ理解できたも同然です。

以降のセクションは、この原則を個別のケースに当てはめていく作業です。迷ったら「これは財産の受け取りか、新しい所得か」と自問してください。

所得税が関係する7つのケース

相続に関連して所得税の申告が必要になるのは、主に次の7つです。

  • ・ケース1:亡くなった人に所得があった(準確定申告)
  • ・ケース2:相続した財産を売却した
  • ・ケース3:家賃収入など収益を生む財産を相続した
  • ・ケース4:死亡保険金を受け取った(契約者=受取人の場合)
  • ・ケース5:未支給年金を受け取った
  • ・ケース6:換価分割(売って分ける)をした
  • ・ケース7:被相続人の事業を引き継いだ

1つでも当てはまるなら、この後の該当セクションで申告の要否を確認してください

どれにも当てはまらなければ、所得税について心配することはありません。相続税の申告要否だけ確認すれば大丈夫です。

所得税が発生すると住民税・保険料も連動する

所得税の対象になる所得は、翌年度の住民税や国民健康保険料の計算にも反映されます。

たとえば相続した不動産を売却して大きな譲渡所得が出ると、翌年の住民税や国保料・後期高齢者医療の保険料が一時的に跳ね上がることがあります

扶養に入っている人が売却した場合、その年だけ扶養から外れることもあります。

「遺産の受け取り自体」は影響ゼロ、「遺産から生まれた所得」は影響あり。この区別は保険料や扶養でも同じです。

売却のタイミングを決めるときは、税金だけでなく保険料への影響も含めて手取りを考えてください。

保険料への影響は一時的(原則1年度限り)です。恒久的に上がるわけではないので、過度に恐れる必要もありません。

相続税と所得税の違い|「いつの・誰のお金か」で決まる

2つの税金の守備範囲は、時間軸で整理すると一目で分かります。「死亡の前・時点・後」のどこで生まれたお金かが、税金の分かれ目です

時間軸マップ|3つの税金の担当範囲

時期 対象 税金・申告
死亡前(その年の1月1日〜死亡日) 被相続人の所得 所得税(準確定申告・4ヶ月以内)
死亡時点 残された財産 相続税(申告・10ヶ月以内)
死亡後 財産が生んだ収益・売却益 所得税(相続人の確定申告・翌年3月15日)

表の見方:死亡日を境に、税金の担当が切り替わるイメージです。「財産のストックには相続税、お金の流れ(所得)には所得税」と覚えてください

申告する人・期限・提出先も異なる

3つの申告は、手続きの面でも別物です。

準確定申告は相続人全員が連署で、被相続人の住所地の税務署へ4ヶ月以内に行います。

相続税申告も被相続人の住所地の税務署ですが、期限は10ヶ月以内です。

相続人自身の確定申告は、相続人自身の住所地の税務署へ、通常の確定申告期(翌年2月16日〜3月15日)に行います

「どの申告の話をしているのか」を意識して情報を集めると、混乱を防げます。

1つの相続で3つの申告が並ぶこともある

ケースによっては、同じ相続で複数の申告を並行して進めることになります。

【前提】賃貸アパートを経営していた父が5月に死亡し、長男がアパートを相続して経営を引き継いだシナリオです。

  • ・9月まで(4ヶ月以内):父の1〜5月分の家賃について準確定申告
  • ・翌年3月まで(10ヶ月以内):アパートを含む遺産について相続税申告
  • ・翌年3月15日まで:長男自身の6〜12月分の家賃について確定申告

3つの申告は期限も提出先も別々です。1つの表にして、家族で共有できる形にしておきましょう

このパターンでは青色申告承認申請(最短4ヶ月以内)も加わるため、実質的に「申告ラッシュの1年」になります。

贈与税も加わると3つ巴|生前贈与との関係

相続の周辺には、もう1つ「贈与税」も登場します。守備範囲を簡単に整理しておきましょう。

贈与税は、生きている人から財産をもらったときの税金です。相続を待たずに財産を移すと、相続税の代わりに贈与税がかかります。

注意したいのは、相続開始前7年以内(段階的に延長中・2026年時点)の贈与は、相続財産に足し戻されて相続税の対象になることです

「生前にもらったから相続と無関係」とは限らない、という点だけ頭に入れておいてください。

贈与でもらった財産をその後に売却すれば、贈与者の取得費と取得時期を引き継いで譲渡所得を計算します。この点は相続と同じ仕組みです。

なお、相続があった年に被相続人から受けた贈与は、贈与税ではなく最初から相続税の対象として扱われます。

3つの申告の違いと全体像は、下記の記事で詳しく整理しています。

【判定表】受け取ったお金別・かかる税金一覧

相続の前後に受け取るお金を、かかる税金別に整理します。迷ったらこの表に戻って、自分が受け取ったお金の行を確認してください

お金の種類×税金のマトリクス

受け取ったお金 かかる税金
遺産の現金・預金・不動産・株式 相続税のみ
死亡保険金(契約者=被保険者の契約) 相続税(非課税枠あり)
死亡保険金(契約者=受取人の契約) 所得税(一時所得)
未支給年金 所得税(一時所得)
死亡日までに支払期日が来ていた家賃 相続税(未収債権として)
死亡日より後の家賃 所得税(相続人の不動産所得)
相続した財産の売却益 所得税(譲渡所得)
被相続人の所得税の還付金 相続税(相続財産に含める)

表の見方:同じ「保険金」「家賃」でも、契約形態や発生時期で税金が変わる点が落とし穴です。黄色の行(契約者=受取人の保険金)は相続税だと思い込みやすい代表例です

医療・介護がらみのお金はどっち?|給付金の判定

亡くなる前後には、医療や介護に関するお金の入金も重なります。代表的なものの判定を押さえましょう。

【入院給付金(受取人が被相続人の契約)】

本人が受け取るはずだった給付金なので、相続財産として相続税の対象です。保険金の非課税枠は使えません。

【高額療養費・医療費の払い戻し】

被相続人が受け取るはずだった還付なので、相続財産です。準確定申告の医療費控除の計算では、補填分として医療費から差し引きます。

【葬祭費・埋葬料(健康保険から)】

遺族に支給されるお金で、相続税も所得税もかからない非課税です。

「誰が受け取る権利のお金か」で判定する、という軸はここでも共通です

還付金は「相続財産」になる意外なルール

準確定申告で所得税が戻ってくる場合、その還付金の扱いに注意が必要です。

還付金は被相続人が受け取るはずだったお金なので、相続財産として相続税の課税対象になります

一方、還付金と一緒に受け取る「還付加算金」(利息に相当)は、相続人の雑所得です。

還付金を見込んで準確定申告をする場合は、相続税申告書への計上も忘れずにセットで行ってください。

同じ振込に相続税対象と所得税対象が混ざる、細かいながら間違いやすいポイントです。

還付加算金は数百円〜数千円程度のことが多いものの、金額の大小にかかわらず区分は正確に。振込通知書の内訳を保管しておきましょう。

参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

ケース1|亡くなった人に所得があった(準確定申告)

被相続人がその年に得ていた所得の申告は、相続人が引き継ぎます。期限は相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内と短いため、最優先で要否を判定しましょう

まず「生前の収入の形」を確認する

準確定申告の要否は、被相続人の生前の収入の形でほぼ決まります。最初に確認すべき資料は次の3つです。

  • ・過去の確定申告書の控え(自宅の書類棚・税理士の預かり)
  • ・源泉徴収票(勤務先・年金機構から)
  • ・公的年金の源泉徴収票や振込通知

毎年確定申告をしていた人なら、原則としてその年の分の準確定申告も必要と考えてください

e-Taxの利用者だった場合、マイナポータル連携や税務署への開示請求で過去の申告内容を確認できます。

準確定申告が必要な人の判定

被相続人が生前に確定申告をしていた人なら、原則としてその年の分の準確定申告が必要です。具体的には次のような場合です。

  • ・個人事業や不動産賃貸をしていた
  • ・給与収入が2,000万円を超えていた
  • ・給与を2ヶ所以上から受けていた
  • ・公的年金の収入が400万円を超えていた
  • ・生前に不動産や株式を売却して利益が出ていた

「毎年、確定申告の時期に税務署へ行っていたか」が、遺族にも分かりやすい判定サインです

1〜3月に亡くなった場合は注意してください。前年分の確定申告がまだなら、前年分と本年分の2年分の準確定申告が必要になります(期限はどちらも4ヶ月以内)。

準確定申告が不要な人|年金暮らしの多くは該当

逆に、次のような場合は準確定申告が不要です。

  • ・給与1ヶ所のみで、勤務先の年末調整で完結していた
  • ・公的年金が400万円以下で、その他の所得が20万円以下だった
  • ・そもそも所得が基礎控除以下だった

年金暮らしの高齢者の多くは「年金400万円以下」に収まるため、準確定申告が不要なケースは実際には多数派です

ただし、申告義務がなくても、医療費控除などで税金が戻る「還付申告」はできます。亡くなる前は入院や介護で医療費がかさんでいることが多く、還付になる例は少なくありません。

年金からは所得税が源泉徴収されているため、医療費控除や社会保険料控除を反映すると数万円単位で戻るケースもあります。

重要ポイント:還付申告の期限は4ヶ月ではなく5年以内です。義務の申告と権利の申告で期限が違う、と覚えておいてください。

手続きの概要|相続人全員の連署で行う

準確定申告は、対象期間(1月1日〜死亡日)の所得をまとめ、相続人全員が連署して被相続人の住所地の税務署へ提出します。

相続人が複数いる場合は「死亡した者の所得税の確定申告書付表」に全員の氏名・住所を記載します。

2020年からはe-Taxでの提出も可能になり、付表もオンラインで作成できます。遠方の相続人がいる場合の連署のやり取りが楽になりました。

納めた所得税は相続税の債務控除の対象になり、逆に還付金は相続財産になります。準確定申告の結果は相続税の計算にも連動するのです。

参照元:国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)

放置するとどうなる?|加算税・延滞税のペナルティ

準確定申告が必要なのに期限を過ぎると、通常の確定申告と同じペナルティが課されます。

  • ・無申告加算税:納付すべき税額の原則15〜30%(自主的な期限後申告なら5%に軽減)
  • ・延滞税:納付が遅れた日数分(2ヶ月以内は年2.8%・超えると年9.1%、2026年時点)
  • ・重加算税:意図的な隠ぺいがあった場合は40%(無申告の場合)

気づいた時点で自主的に申告すれば、ペナルティは大幅に軽くなります

「4ヶ月を過ぎてしまったからもう手遅れ」ではありません。放置こそが負担を膨らませる最悪の選択です。

相続人の確定申告(売却益や家賃)を怠った場合も、同じ体系のペナルティが適用されます。期限管理はすべての申告に共通の生命線です。

なお、これらの加算税・延滞税は相続税の債務控除の対象になりません。期限内に済ませることが、相続全体のコストを抑える近道です。

個人事業主だった場合は消費税の準確定申告も

被相続人が消費税の課税事業者だった場合、所得税とは別に消費税の準確定申告も必要です。

期限は所得税と同じく、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です

インボイス登録をしていた個人事業主が増えているため、該当するケースは以前より多くなっています。

事業を引き継ぐ相続人がいる場合は、相続人側のインボイス登録や課税事業者の届出も検討事項になります。

所得税・消費税・事業承継の手続きが4ヶ月に集中するため、事業者の相続は初動から税理士に入ってもらうのが現実的です。

ケース2|相続した財産を売却した(譲渡所得)

相続した不動産や株式を売って利益が出ると、所得税がかかります。「相続税を払ったのに、売ったらまた税金」と感じる場面ですが、二重課税ではなく別の利益への課税です

課税されるのは「売却益」だけ|相続税との関係

売却で課税されるのは、売却代金の全額ではありません。

売却代金から、取得費(被相続人が買ったときの代金など)と譲渡費用を差し引いた「譲渡所得」に課税されます。

相続税は「死亡時点の財産の評価額」への課税、譲渡所得税は「買値と売値の差益」への課税。対象が違うため、法律上の二重課税には当たらないという整理です

売却益の計算では「相続時の評価額」ではなく「被相続人の買値」を使う点が直感に反するところです。相続税を払った財産でも、含み益は課税対象のまま引き継がれます。

なお、取得費が分からない場合は売却代金の5%で計算するため、税負担が重くなりがちです。被相続人の購入時の契約書を探すことが、最初の節税になります。

税率は所有期間で変わる|期間は被相続人から引き継ぐ

不動産の譲渡所得の税率は、所有期間5年超(長期)なら20.315%、5年以下(短期)なら39.63%です。

ここで重要なのが、所有期間は被相続人が取得した日から通算されることです

親が30年住んだ実家を相続直後に売っても、「30年超の長期譲渡」として低い税率が適用されます。

「相続してすぐ売ると短期扱いで損」という誤解で売却を遅らせる必要はありません。

むしろ取得費加算の期限(3年10ヶ月)を考えると、売ると決めたら早く動くほうが税務上は有利に働きます。

売却で損が出た場合|損益通算のルール

相続した財産を売って損が出た場合、所得税はかかりません。確定申告も原則不要です。

ただし「損を他の所得と相殺できるか」は、財産の種類で異なります。

  • ・不動産の譲渡損:給与など他の所得との通算は原則不可(自宅の売却など一部の例外あり)
  • ・上場株式の譲渡損:他の株式の譲渡益や配当(申告分離)とは通算可。翌年以降3年間の繰越も可能

株式の損失の繰越控除は、確定申告を続けることが条件です。損が出た年も申告しておくと、翌年以降の利益と相殺できます。

「損だから申告しない」で終わらせず、将来の相殺メリットまで考えて判断してください。

なお、取得費が不明で「売却額の5%」で計算した結果の黒字は、実態として損でも税務上は利益です。契約書探しが重要な理由がここにもあります。

取得費加算の特例|3年10ヶ月以内の売却で税金が減る

相続税を納めた人が相続財産を売却する場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。

要件は、相続開始の翌日から3年10ヶ月以内(相続税の申告期限の翌日から3年以内)に売却することです

【前提】相続税400万円を納めた長男が、相続した土地(土地の課税価格2,000万円・長男の取得財産の課税価格8,000万円)を売却したシナリオです。

取得費に加算できるのは、400万円×2,000万円÷8,000万円=100万円。譲渡所得が100万円圧縮され、税率20.315%なら約20万円の節税になります。

相続税が高額な人ほど加算額も大きくなり、節税効果は数百万円に達することもあります。売却予定があるなら、まず自分の加算額を試算してみてください。

計算ロジック:加算額=納めた相続税×(売却した財産の課税価格÷その人の取得財産の課税価格の合計)。節税額の目安=加算額×譲渡所得税率20.315%(長期・2026年時点)。売却財産の相続税評価が大きいほど効果も大きくなります。

参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

株式・投資信託を売却した場合も同じ仕組み

譲渡所得の課税は、不動産だけでなく相続した株式や投資信託の売却にも適用されます。

取得費は被相続人が買ったときの価格を引き継ぎます。証券会社の特定口座なら取得価額が記録されているため、確認は比較的簡単です。

上場株式の税率は20.315%(申告分離課税)。取得費加算の特例は株式の売却にも使えます

注意したいのはNISA口座の株式です。被相続人のNISA口座の非課税メリットは相続人に引き継がれず、相続時の時価で課税口座に移されます。

相続後の値上がり分は通常どおり課税されるため、「親のNISAだから売っても非課税」という誤解は禁物です。

相続時までの値上がり分には課税されない(相続時の時価が新しい取得費になる)ため、課税口座の株式とは取得費の扱いが異なる点も覚えておきましょう。

自宅を相続して売る場合|3,000万円控除との使い分け

実家を相続して売却する場合は、取得費加算のほかに「3,000万円特別控除」も検討対象になります。

  • ・自分も住んでいた家を売る → 居住用財産の3,000万円特別控除(取得費加算と併用可)
  • ・空き家になった実家を売る → 空き家の3,000万円特別控除(取得費加算と併用不可)

空き家特例と取得費加算は選択適用のため、どちらが有利か必ず両方で試算してください

控除額3,000万円と取得費加算額(多くは数十万〜数百万円)を比べると、要件を満たすなら空き家特例が有利なことが多いのが実情です。

ただし相続税が高額だった場合は取得費加算が逆転することもあり、機械的には決められません。売却前の試算が必須です。

空き家特例には「1981年5月以前の建築」「売却額1億円以下」「耐震改修または取り壊し」など細かい要件があります。該当しそうなら早めに税理士へ確認しましょう。

売却予定があるなら|3年10ヶ月カレンダー

売却を考えているなら、期限から逆算したスケジュールが重要です。

〜10ヶ月
相続税の申告・納付を済ませる。遺産分割が固まらないと売却も特例の計算もできないため、協議を先行させます

〜3年10ヶ月
この期間内に売買契約・引き渡しまで完了させると、取得費加算の特例が使えます。不動産売却には数ヶ月かかるため、期限の1年前には動き始めるのが安全です

売却の翌年
2月16日〜3月15日に譲渡所得の確定申告を行う。特例の適用には申告が必須です。忘れると加算なしの税額になります

売却した年の確定申告に必要な書類

譲渡所得の確定申告では、通常の申告書に加えて次の書類を準備します。

  • ・譲渡所得の内訳書(計算明細書)
  • ・売却時の売買契約書のコピー
  • ・被相続人が購入したときの売買契約書のコピー(取得費の証明)
  • ・仲介手数料などの譲渡費用の領収書
  • ・取得費加算を使う場合:相続税申告書のコピー・計算明細書

最大の難関は「被相続人の購入時の契約書」です。実家の書類棚・銀行の貸金庫・購入時の仲介業者を、相続の早い段階から探してください

契約書が見つからない場合も、通帳の出金記録や住宅ローンの記録などで取得費を合理的に説明できることがあります。あきらめる前に税理士に相談しましょう。

取得費加算の特例の詳しい要件と計算方法は、下記の記事で解説しています。

ケース3|家賃収入など収益を生む財産を相続した

賃貸アパートや駐車場を相続すると、家賃という「新しい所得」が相続人に発生し続けます。誰の所得としていつから申告するのか、独特のルールを押さえましょう

敷金・預かり金は「債務」として引き継ぐ

賃貸物件を相続すると、入居者から預かっている敷金の返還義務も一緒に引き継ぎます。

敷金は将来返すお金なので、相続税の計算では債務控除として遺産から差し引けます

一方、返還不要の礼金や更新料は、受け取った時期に応じて被相続人または相続人の不動産所得に計上します。

物件を相続したら、賃貸借契約書で「預かっているお金」と「もらったお金」を仕分けることが、相続税・所得税両方の正確な申告につながります。

死亡日を境に「誰の収入か」が切り替わる

家賃収入の帰属は、支払期日で判定します。

  • ・死亡日までに支払期日が来ていた家賃 → 被相続人の収入(準確定申告の対象・未収なら相続財産)
  • ・死亡日より後に支払期日が来る家賃 → 相続人の収入(相続人の確定申告の対象)

同じ物件の同じ家賃でも、死亡日の前後で「申告する人」が切り替わるのです

給与所得者が物件を相続した場合、家賃などの所得が年20万円を超えると確定申告が必要になります。

ここでいう所得は、家賃収入から固定資産税や管理費などの経費を引いた後の金額です。収入ベースではなく所得ベースで判定します。

なお、20万円以下で所得税の申告が不要でも、住民税の申告は別途必要になる点は見落としがちです。

遺産分割前の家賃は「法定相続分で全員のもの」

見落とされがちなのが、遺産分割協議がまとまるまでの家賃の扱いです。

判例上、分割前の家賃は、法定相続分に応じて各相続人に帰属します。物件を最終的に誰が相続するかは関係ありません。

分割協議が年をまたぐと、この「法定相続分で申告」が複数年続くことになります。協議の長期化は所得税の面でもコストなのです。

したがって原則として、未分割期間の家賃は相続人それぞれが自分の相続分だけ確定申告することになります。

後から物件を相続した人が全額を申告してしまうと、他の相続人との間で贈与の問題が生じるおそれもあります。分割が長引きそうなら、家賃の精算方法まで含めて税理士に相談してください。

なお、遺産分割が成立しても、その効果は過去の家賃にはさかのぼりません。「分割までの家賃は法定相続分・分割後の家賃は取得した人」という2段構えで整理されます。

相続した物件を「貸す」場合と「売る」場合の税金比較

収益物件を相続したら、持ち続けて貸すか、売却するかの判断が必要です。税金面の違いを整理します。

項目 貸し続ける 売却する
かかる所得税 毎年の不動産所得(総合課税・最大55%) 譲渡所得に一度だけ(長期20.315%)
使える特例 青色申告特別控除など 取得費加算(3年10ヶ月以内)など
申告の手間 毎年の確定申告が続く 売却の翌年1回で完結

表の見方:不動産所得は給与と合算される総合課税のため、高収入の相続人ほど家賃への税率が高くなります。売却の税率は所得に関係なく一定です。

収益性・管理の負担・取得費加算の期限を合わせて、相続から1年以内に方針を決めるのが理想的です。

青色申告・減価償却は「自動では引き継がれない」

被相続人が賃貸業で青色申告をしていた場合でも、その地位は相続人に引き継がれません。

相続人が青色申告を続けるには、自分で改めて承認申請書を提出する必要があります。期限は死亡の時期によって異なり、最短で死亡から4ヶ月以内です。

一方、建物の減価償却は、取得価額・未償却残高などを被相続人から引き継いで計算します。

また、被相続人の赤字(純損失)は相続人に引き継げません。「引き継ぐもの」と「引き継がないもの」の区別が、このケースの実務ポイントです。

整理すると、引き継ぐのは減価償却の計算要素と敷金の返還義務。引き継がないのは青色申告の地位と純損失です。

青色申告の申請期限は死亡日によって細かく変わるため、賃貸物件を相続したら、まず「自分の申請期限はいつか」を税務署か税理士に確認してください。

配当金・利子など不動産以外の収益も同じ考え方

収益を生む財産は不動産だけではありません。株式の配当や預金の利子も同じ整理で考えられます。

死亡日までに支払いが確定していた配当は相続財産、相続後に確定した配当は相続人の配当所得です

上場株式の配当や預金利子は源泉徴収で完結するため、確定申告が必須になる場面は多くありません。

ただし、配当控除や損益通算のために申告したほうが有利な場合もあります。相続した証券口座の規模が大きいなら、申告の有利不利を試算する価値があります。

太陽光発電の売電収入や駐車場収入も、死亡日以降の分は相続人の所得です。「収益を生む財産」を相続したら、この記事の家賃と同じルールを当てはめてください。

固定資産税などの経費が準確定申告と相続人の申告のどちらに入るかは、下記の記事で解説しています。

ケース4・5|死亡保険金・未支給年金を受け取った

保険金や年金まわりのお金は、相続税と所得税の境界が最も分かりにくい領域です。「誰が保険料を払ったか」「何のお金か」で判定が変わります

死亡保険金|契約者=受取人なら所得税

死亡保険金にかかる税金は、契約形態で決まります。

亡くなった人が保険料を払っていた契約(契約者=被保険者)なら相続税ですが、受取人自身が保険料を払っていた契約なら、所得税(一時所得)です

たとえば妻が夫に保険をかけ、保険料を払い、保険金も妻が受け取るケースがこれに当たります。

一時所得の課税対象は「(保険金−払込保険料−特別控除50万円)×1/2」。払った保険料が引けて2分の1課税になるため、負担は比較的軽くなります。

【前提】妻が契約者・受取人となり保険料総額800万円を負担、夫の死亡で保険金2,000万円を一時金で受け取ったシナリオです。

一時所得の課税対象は(2,000万円−800万円−50万円)×1/2=575万円。これが妻の給与などと合算されて課税されます。

計算ロジック:一時所得=(受取額−払込保険料−特別控除50万円)×1/2。合算後の税率が20%なら税額は約115万円です(2026年時点)。相続税型の契約なら非課税枠500万円×法定相続人が使えるため、どちらが有利かは家族構成と遺産額によります。

保険金を年金形式で受け取る場合は、毎年の受取額が雑所得として課税されます(相続税との二重課税は調整されます)。

参照元:国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき

未支給年金|相続財産ではなく遺族の一時所得

亡くなった人がまだ受け取っていなかった公的年金(未支給年金)は、請求した遺族が受け取ります。

この未支給年金は、相続財産ではなく、受け取った遺族の一時所得になります。相続税の対象に含めない点がポイントです。

請求できるのは、生計を同じくしていた配偶者・子・父母などの遺族で、相続人かどうかとは別の基準で決まります。

年金は後払い(偶数月に前2ヶ月分)のため、未支給年金はほぼすべての年金受給者の死亡で発生します。年金事務所への死亡届とあわせて請求を忘れないでください。

一時所得には50万円の特別控除があるため、未支給年金だけなら課税されないことがほとんどです。

ただし、同じ年に契約者=受取人型の保険金など他の一時所得があると、合算で50万円を超えて申告が必要になる場合があります。

重要ポイント:遺族年金は未支給年金とは別物で、所得税も相続税もかからない非課税のお金です。名前が似ていても課税は正反対なので混同しないでください。

個人年金保険の受給権を相続した場合

被相続人が受け取っていた個人年金保険(民間の保険会社の年金)を、遺族が引き継いで受け取るケースもあります。

この場合、まず「年金を受け取る権利(受給権)」の評価額が相続税の対象になります。

そして2年目以降に受け取る年金には、相続税の対象を超える部分に毎年の所得税(雑所得)がかかります

相続税と所得税の二重課税にならないよう段階的に調整する仕組みで、保険会社から届く支払調書をもとに計算します。

毎年の確定申告が必要になる場合があるため、年金形式の保険を相続したら、初年度に税理士へ計算方法を確認しておくと安心です。

死亡退職金は相続税|ただし3年経過後は所得税

勤務先から支払われる死亡退職金は、原則として相続税の対象です(非課税枠500万円×法定相続人あり)。

例外は、支給が決まる時期が遅れた場合です。

死亡後3年を超えてから支給が確定した退職金は、相続税ではなく受け取った遺族の一時所得になります

会社の清算や労使交渉のもつれなどで支給決定が遅れたケースで問題になります。「いつ支給が確定したか」が税金の分かれ目です。

3年以内に確定した退職金なら、実際の受け取りが遅れても相続税の対象のままです。「確定の時期」と「受け取りの時期」を区別してください。

ケース6・7と「かからないのに誤解しやすい」ケース

残る2つのケースと、逆に「かかると思われがちだが、かからない」ケースを整理します。誤解による無駄な心配や申告ミスを、ここで解消してください

ケース6|換価分割は「全員に譲渡所得」が生じる

換価分割とは、相続した不動産などを売却して、代金を相続人で分ける方法です。

公平に分けやすい便利な方法ですが、税務上は「相続人全員がいったん共有で相続し、それぞれが売却した」扱いになります。

売却益が出れば、代金を受け取った相続人全員に譲渡所得の確定申告義務が生じます

「代表者が売ったから、申告も代表者だけ」ではありません。分け方を決める段階で、全員分の申告の段取りまで考えておきましょう。

なお、3,000万円特別控除などの特例は「その家に住んでいた相続人」しか使えません。換価分割では、同じ売却でも相続人ごとに税額が変わり得ます。

取得費加算の特例は、相続税を納めた相続人それぞれが自分の負担分で適用できます。誰がどの特例を使えるかを売却前に整理しておくと、手取りの配分まで正確に設計できます

ケース7|事業を引き継いだら、その後の利益は自分の所得

被相続人の個人事業(店舗・農業・賃貸業など)を相続人が引き継いだ場合、死亡日以降の売上は相続人の事業所得です。

開業届の提出、青色申告の承認申請、消費税の届出など、相続人自身が「新たに事業を始めた」のと同じ手続きが必要になります

事業用資産そのものは相続税の対象、引き継いだ後の利益は所得税の対象。ここでも「ストックは相続税・フローは所得税」の原則どおりです。

従業員がいる事業なら、給与支払事務所の届出や源泉徴収の引き継ぎも発生します。事業承継は手続きの数が多いため、リスト化して漏れを防いでください。

限定承認をした場合|「みなし譲渡」で所得税が発生する

限定承認とは、プラスの財産の範囲内でだけ借金を引き継ぐ相続方法です。借金の全容が不明なときの安全策ですが、税務上の重大な特徴があります。

限定承認をすると、被相続人が財産を「死亡時の時価で売却した」とみなされ、含み益に所得税がかかります(みなし譲渡課税)

たとえば父が2,000万円で買った土地が死亡時に5,000万円なら、3,000万円の含み益に譲渡所得税が発生します。

この所得税は被相続人の債務として、準確定申告(4ヶ月以内)で申告します。相続人が自分の財布から払うわけではなく、遺産の範囲内で清算される仕組みです。

単純承認(通常の相続)ではみなし譲渡は起こりません。限定承認を検討する際は、この課税まで含めて損得を判断してください。

含み益の大きい不動産や株式があるほど、限定承認のコストは膨らみます。利用件数が少ない制度なのは、この課税の存在も一因です。

注意:限定承認は相続を知った日から3ヶ月以内に、相続人全員で家庭裁判所に申し立てる必要があります。みなし譲渡の準確定申告(4ヶ月)と期限が連続するため、検討するなら早めに専門家へ相談してください。

誤解1|遺産を受け取っても「年収」は増えない

「遺産を相続したら、翌年の住民税や社会保険料が上がるのでは」という心配をよく聞きます。

結論として、相続財産は所得ではないため、年収にも住民税にも扶養の判定にも影響しません

会社の年末調整で申告する必要もなく、配偶者控除や扶養控除から外れることもありません。

専業主婦(主夫)が数千万円を相続しても、配偶者の扶養から外れることはない、ということです。

影響が出るのは、相続した財産を売却したり、財産が収益を生んだりして「所得」が発生した場合だけです。

なお、75歳以上の後期高齢者医療制度など、一部の保険料は預貯金ではなく所得で判定されます。遺産で残高が増えても保険料は変わりません。

遺産と年収の関係は、下記の記事で詳しく解説しています。

誤解2|代償金・遺産の現金化でも課税されないもの

誤解されやすいお金を2つ補足します。

遺産分割で不動産を相続した人が他の相続人に支払う「代償金」は、受け取る側にとって相続の一部です。所得税も贈与税もかかりません(相続税の計算に織り込まれます)。

また、相続した預金を解約して現金化しても、それは財産の形が変わっただけです。「売却して利益が出た」場合と違い、預金の払い戻しに所得税はかかりません

課税されるのはあくまで「利益(所得)」であって、「お金の移動」ではない。この軸で判断すれば大抵の誤解は避けられます。

相続直後の売却は税務署に把握されている前提で

「相続してすぐ売ると税務署に目をつけられるのでは」という不安を持つ人がいますが、順序が逆です。

不動産の売買や登記の情報は、法務局から税務署へ自動的に共有されます。売却の事実は最初から把握されている前提で、正しく申告することがすべてです

売却後に「お尋ね」という文書が届くことがありますが、これは申告の要否を確認する事務的な照会で、疑われているわけではありません。

正しく申告していれば恐れる必要はなく、逆に無申告は高確率で発覚します。売却したら翌年の申告をカレンダーに入れる。それだけです。

相続税の申告内容と売却の申告内容は税務署内で突き合わせが可能です。取得費加算を使う場合も、数字の整合性を意識して正確に記載しましょう。

相続財産を寄附すると所得税を節税できる場合がある

相続財産の一部を寄附する人は少なくありません。要件を満たす寄附は、相続税と所得税の両方を減らせる可能性があります

相続税側の特例|申告期限内の寄附は非課税

相続した財産を、相続税の申告期限(10ヶ月)内に国・地方公共団体・特定の公益法人などに寄附した場合、その財産には相続税がかかりません。

「遺産の一部を社会に還元したい」という希望を、税負担なしで実現できる制度です。

母校の大学や日本赤十字社、認定NPO法人への寄附などが典型例です。寄附した分だけ課税遺産が減るため、他の相続人の税負担にも影響しません。

適用には相続税の申告書に寄附の証明書を添付することが必要です。寄附先の選定と証明書の入手は、申告期限から逆算して進めてください。

参照元:国税庁 No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき

所得税側の控除|寄附金控除も併用できる

同じ寄附について、相続人自身の所得税の確定申告で寄附金控除(または税額控除)も受けられます。

相続税の非課税と所得税の控除は別の制度なので、要件を満たせば両方を同時に使えます

寄附金控除は年末調整では処理できないため、給与所得者でも確定申告が必要です。寄附先が発行する受領証明書を保管しておきましょう。

認定NPO法人や公益社団法人などへの寄附は、所得控除ではなく税額控除(寄附額の約40%)を選べる場合があり、多くの人はこちらが有利です。

ふるさと納税(自治体への寄附)も対象になるため、相続した現金の一部をふるさと納税に回して所得税・住民税を減らす、という使い方も可能です。

寄附で損をしないための3つの注意点

善意の寄附でも、やり方を誤ると思わぬ課税が生じます。事前に確認すべき点が3つあります。

【注意1:期限は相続税の申告期限まで】

相続税の非課税特例が使えるのは、申告期限(10ヶ月)までに寄附した場合だけです。期限後の寄附には特例が使えません。

【注意2:寄附先の範囲が限定されている】

非課税特例の対象は国・地方公共団体・特定の公益法人・認定NPO法人などに限られます。一般のNPOや町内会への寄附は対象外です。

【注意3:不動産や株の現物寄附は別の課税に注意】

値上がりした不動産・株式をそのまま寄附すると、含み益への「みなし譲渡課税」が生じる場合があります。国税庁長官の承認を受けて非課税にする制度もありますが、要件が厳格です。

現金の寄附ならシンプルですが、現物の寄附は必ず事前に税理士へ相談してください

相続と所得税の悩みは一括相談・見積りで税理士に確認を

相続税と所得税がまたがる論点は、どちらか一方だけ見ていると判断を誤ります。両方をセットで見てくれる税理士に、一括相談・見積りで確認するのが確実です

一括相談・見積りが必要な理由|税金をまたぐ判断で結果が変わる

相続の税務は、相続税単体では終わりません。

たとえば相続財産1億円で不動産の売却を予定していたケース。A税理士は相続税申告のみを受託し、売却は「翌年に考えましょう」と後回しにしました。

B税理士は取得費加算の期限から逆算して売却スケジュールまで設計。分け方の工夫と特例の適用で、譲渡所得税が約80万円軽くなりました

相続税と所得税をつなげて設計できるかどうかが、税理士選びの分かれ目です。

一括相談・見積りのメリット|実務力を3つのポイントで比較できる

複数の税理士から見積りを取ると、次の3つの判定ポイントで実務力を比較できます

判定ポイント1:準確定申告まで含めて受託するか。A税理士は相続税申告のみ、B税理士は準確定申告・翌年の譲渡所得の申告までワンストップ → 全体を任せられる税理士の方が、期限漏れのリスクを減らせると判定できます。

判定ポイント2:売却・収益化まで見据えた提案があるか。取得費加算の期限や未分割家賃の帰属まで説明できるか → 出口まで設計する税理士の方が、トータルの税負担を減らせると判定できます。

判定ポイント3:所得税の申告報酬を明示するか。準確定申告・譲渡所得の申告が基本料金に含まれるか別料金かを見積りで明確にするか → 内訳が明朗な事務所の方が、後からの追加請求トラブルを防げると判定できます。

1社だけに相談するリスク|「相続税だけ」の視野で損をする

相続税申告の実績をうたう事務所でも、所得税側の設計力には差があります。

1社だけの見解では、取得費加算の失念や未分割家賃の申告漏れなど、所得税側の論点が抜けていても気づけません

特例の適用漏れで払いすぎた所得税も、更正の請求をしない限り戻りません。

複数の税理士の提案を並べることが、視野の抜けを見つける最も簡単な方法です。

見積り比較でチェックすべき3項目

チェック項目 確認する内容
提案内容 準確定申告・譲渡所得の申告・寄附の特例まで視野に入っているか
試算相続税額 売却予定がある場合、取得費加算まで織り込んだ試算か
報酬額 相続税申告・準確定申告・翌年の確定申告の料金区分が明確か

重要ポイント:「売却するかもしれない」「賃貸物件がある」という予定・事情は見積り段階で必ず伝えてください。所得税側の論点があるかどうかで、必要な提案がまったく変わります

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

STEP1
相続の概要を整理する。被相続人の生前の収入状況(事業・年金・給与)、資産の内容、売却予定の有無、相続人の構成をまとめます

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する。「相続税申告・準確定申告・売却の相談」など希望内容を明記し、3〜5社への同時打診を依頼します。不動産があれば所在地・広さも記載。フォーム入力は5分程度です

STEP3
見積りと初回相談を受ける。各税理士から提案内容・試算相続税額・報酬額が届くので、気になる事務所と初回相談を行います。準確定申告の期限(4ヶ月)が近い場合は最初に伝えましょう

STEP4
税理士を選定・正式依頼する。提案内容の質・説明の丁寧さ・報酬の納得性で選び、相続開始から7ヶ月以内の決定を目安にします

依頼前の最終チェックリスト|事務所選び

  • □ 相続税申告の取扱件数を明示しているか
  • □ 準確定申告・譲渡所得の確定申告まで対応しているか
  • □ 不動産売却(取得費加算・3,000万円控除)の実務経験があるか
  • □ 賃貸物件の相続(青色申告の引き継ぎ)に対応できるか
  • □ 書面添付制度に対応しているか
  • □ 報酬体系が明朗か(申告ごとの料金区分)

重要ポイント:準確定申告の期限は4ヶ月と、相続の手続きの中で最初に来る税務期限です。依頼が遅れるほど選択肢が減るため、必要かどうかの判定だけでも早めに相談してください

相談準備のチェックリスト|スムーズに進めるために

  • □ 被相続人の生前の収入が分かる資料(確定申告書の控え・源泉徴収票・年金の通知)
  • □ 財産の一覧メモ(預貯金・不動産・有価証券・保険)
  • □ 賃貸物件がある場合は賃貸借契約書・家賃の入金記録
  • □ 売却予定の有無と希望時期のメモ
  • □ 相続人の構成と各自の職業(給与所得者か自営業か)
  • □ 疑問点のリスト(準確定申告の要否・売却の税金など)

重要ポイント:被相続人の過去の確定申告書の控えが1枚あるだけで、準確定申告の要否判定は一気に正確になります。書類探しから相談を始めても遅くありません

相続と所得税に関するよくある質問(FAQ)

Q1:相続した現金を自分の口座に預けただけでも、確定申告は必要ですか?

不要です。相続財産の受け取りは所得ではないため、所得税の確定申告の対象になりません。

金額の大小も関係ありません。必要になるのは相続税の申告(基礎控除を超える場合)だけです。

Q2:相続税を払った財産を売ったらまた税金。二重課税ではないのですか?

法律上は二重課税ではありません。相続税は「死亡時点の財産」への課税、譲渡所得税は「買値と売値の差益」への課税で、対象が異なるためです。

ただし負担感への配慮として、相続開始から3年10ヶ月以内の売却なら、納めた相続税の一部を取得費に加算して所得税を減らせる特例があります。

Q3:遺産を相続すると、翌年の住民税や扶養に影響しますか?

影響しません。相続財産は所得ではないため、住民税・社会保険料・扶養の判定・保育料などの算定に含まれません。

影響が出るのは、相続した財産を売却した利益や、相続した物件の家賃など「所得」が発生した場合だけです。

Q4:準確定申告と自分の確定申告は、両方必要になることがありますか?

あります。たとえば賃貸物件を相続した場合、死亡日までの家賃は準確定申告、死亡日後の家賃は相続人自身の確定申告と、2つの申告に分かれます。

期限も4ヶ月以内と翌年3月15日で異なるため、スケジュールを分けて管理してください。

Q5:相続した実家を売る場合、3,000万円の特別控除は使えますか?

自分がその家に住んでいた場合は、居住用財産の3,000万円特別控除を使える可能性があります。

住んでいなかった場合でも、一定の要件を満たす空き家なら「空き家の3,000万円特別控除」の対象になることがあります。ただし空き家特例は取得費加算と併用できないため、どちらが有利か試算して選んでください。

まとめ|「財産には相続税・所得には所得税」で整理する

相続と所得税の関係について、重要なポイントを整理します。

【大原則】

  • 相続財産そのものに所得税はかからない(二重課税の排除)
  • 所得税がかかるのは、相続の前後に「新しく生まれたお金」だけ
  • 遺産の受け取りは年収・住民税・扶養の判定に影響しない

【所得税がかかる主なケース】

  • 被相続人に所得があった場合は準確定申告(4ヶ月以内・年金400万円以下などは不要)
  • 相続財産の売却益は譲渡所得。3年10ヶ月以内なら取得費加算の特例で軽減できる
  • 死亡日後の家賃は相続人の所得。未分割期間は法定相続分で全員に帰属する

【間違いやすいポイント】

  • 契約者=受取人の死亡保険金と未支給年金は、相続税ではなく所得税(一時所得)
  • 青色申告の地位は引き継がれない。相続人が改めて承認申請する
  • 換価分割は代金を受け取った相続人全員に譲渡所得の申告義務が生じる

【今すぐ取るべき行動】

  • 被相続人の生前の収入を確認し、準確定申告の要否を判定する(期限4ヶ月)
  • 売却予定の財産があれば、3年10ヶ月の期限から逆算してスケジュールを立てる
  • 賃貸物件・売却・保険金など所得税がからむ事情があれば、一括相談・見積りで税理士に確認する

※本記事は2026年7月時点の法令・情報に基づいて作成しています。税制改正により、内容が変更となる可能性があります。最新の制度については国税庁の公式サイトや税理士にご確認ください。

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