投資信託の相続税はいくら?評価額の計算方法と相続手続き・売るときの税金

限定承認_相続税

投資信託の相続税評価額は、亡くなった日に解約したとした場合に受け取れる金額です。基準価額×口数から、解約時に差し引かれる税金相当額と信託財産留保額・解約手数料を引いて計算します。

相続税は、この評価額をほかの遺産と合計し、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた部分にかかります。投資信託だけに特別な税率があるわけではありません。

投資信託は、一般・毎日決算型・上場型の3種類で評価の仕方が分かれます。

相続した投資信託は、解約して現金で分けることも、相続人の口座に移して持ち続けることもできます。ただし売るときには、親の買った値段をもとに所得税がかかります。

買った値段の記録を引き継げるか、取得費加算の特例を使える期間内に売るかで、手元に残る額は大きく変わります。試算では、同じ投資信託でも手取りに約255万円の差が出ました。

遺産分割がまとまらない間は、投資信託を売ることもできません。値下がりしても相続税は亡くなった日の評価額のままなので、手続きの段取りも重要です。

この記事では、投資信託の種類別の評価方法と計算例、相続税の試算、相続手続きの流れ、解約か移管かの判断、売るときの税金と手取りの比較、遺産分割がまとまらないときの対応を解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 投資信託は、亡くなった日に解約したとした手取り額で評価する。一般・毎日決算型・上場型の3通りで計算の仕方が違う
  • 相続した投資信託を売ると、親の買った値段をもとに20.315%の税金がかかる。買値の記録の引き継ぎと取得費加算の特例で、手取りが約255万円変わる例もある
  • 遺産分割がまとまらなくても、相続税は10か月以内に法定相続分で申告する。値下がりしても相続税は減らない
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結論|投資信託は亡くなった日に解約した手取り額で評価する

投資信託の相続税評価額は、亡くなった日に解約請求をしたとした場合に、金融機関から受け取れる金額です。基準価額×口数そのままではなく、解約時に差し引かれる額を引いた金額で評価します。

この章では、投資信託の種類の見分け方と、種類ごとの計算式を整理します。具体的な数字での計算例は次の章で示します。

投資信託も相続税の対象

亡くなった人が持っていた投資信託は、預貯金や株式と同じく相続財産です。NISA口座で持っていた投資信託も、相続税の対象になります。

NISAで非課税になるのは運用益にかかる所得税で、相続税は非課税になりません。銀行や証券会社のどの口座で持っていたかに関係なく、すべての投資信託を合計して申告します。

投資信託の種類と評価方法の見分け方

評価方法は、毎日決算するか、証券取引所に上場しているかで3通りに分かれます。まず取引報告書や残高証明書で、どの種類かを確かめてください。

種類 主な商品 評価の基準
一般の投資信託 株式投資信託、バランス型、インデックスファンドなど 亡くなった日の基準価額
毎日決算する投資信託 MRF、MMF、中期国債ファンドなど 亡くなった日の基準価額+まだ受け取っていない分配金
上場している投資信託 ETF、REIT(不動産投資信託) 上場株式と同じ(終値と月平均のうち最も低い額)

表の見方:銀行や証券会社で買う投資信託の多くは「一般の投資信託」です。商品名に「ETF」「上場」「REIT」とあれば上場型、証券口座の待機資金になっているMRFは毎日決算型です。

一般の投資信託の計算式

一般の投資信託は、亡くなった日の基準価額に口数を掛け、解約時に差し引かれる額を引いて評価します。差し引くのは、税金相当額・信託財産留保額・解約手数料の3つです。

【一般の投資信託の計算式】

評価額=基準価額×口数−解約時に源泉徴収される税金相当額−信託財産留保額−解約手数料

【1万口あたりの基準価額の場合】

基準価額が1万口あたりで公表されている投資信託は、口数を1万で割ってから掛けます。

税金相当額は、解約したときに源泉徴収される所得税と住民税の相当額です。差し引かれるかどうかと金額は、口座の種類と個別元本(その人の平均の買値)で変わるため、金融機関の資料で確かめます。

信託財産留保額は、解約するときに投資信託の中に残す費用です。率は商品ごとに決まっていて、かからない商品もあります。目論見書や金融機関への問い合わせで確かめます。

毎日決算する投資信託(MRF・MMFなど)

MRFやMMFは毎日決算して分配金を出し、月末などにまとめて再投資します。亡くなった日時点でまだ再投資されていない分配金も、評価額に加えます。

【毎日決算する投資信託の計算式】

評価額=基準価額×口数+再投資されていない分配金−その分配金の源泉徴収税額相当−信託財産留保額−解約手数料

MRFは1口1円前後で基準価額がほとんど変わらないため、実際には口数とほぼ同じ金額になります。証券口座の買付余力として残っていることが多く、申告から漏れやすい財産です。

上場している投資信託(ETF・REIT)

ETFやREITは証券取引所で売買されるため、解約を前提とした計算はせず、上場株式と同じ方法で評価します。次の4つの価格のうち、最も低いものを選べます。

  • 亡くなった日の終値
  • 亡くなった月の毎日の終値の平均
  • 亡くなった月の前月の毎日の終値の平均
  • 亡くなった月の前々月の毎日の終値の平均

月平均の価格は、日本取引所グループや証券会社に問い合わせて確かめます。値上がりが続いていた銘柄ほど、前々月の平均を使うことで評価額を下げられます。

外貨建てMMFの評価

外貨建てMMFは、外国の通貨で運用し、毎日決算する投資信託です。毎日決算型の計算式で外貨建ての評価額を出し、亡くなった日の買相場(TTB)で円に換算します。

証券会社の残高証明書では、外貨建てMMFが円換算済みの金額で記載されていることがあります。どの為替相場で換算した金額かを確かめ、買相場で計算し直します。

外貨建ての投資信託

外貨建ての投資信託は、外貨で計算した評価額を円に換算します。換算には、取引金融機関が公表する亡くなった日の買相場(TTB)を使います。

買相場は、外貨を円に替えるときの相場で、仲値(TTM)より円の額が少なくなります。為替相場が公表されていない日に亡くなった場合は、直前の日の相場を使います。

ファンドラップ(ラップ口座)の投資信託

ファンドラップは、金融機関に運用を任せる契約で、口座の中で複数の投資信託を組み合わせて持ちます。相続税では、口座の中の投資信託を1本ずつ、一般の投資信託と同じ方法で評価します。

ファンドラップの契約は亡くなったことで終わり、中の投資信託は相続人の口座へ移すか解約します。契約の手数料が日割りで精算されることがあるため、未払いの手数料は債務として差し引けるかを確かめます。

参照元:国税庁 No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価

参照元:国税庁 No.4632 上場株式の評価

評価額の計算例と、残高証明書の金額との違い

計算式に数字を当てはめると、評価額の出し方が具体的にわかります。金融機関の残高証明書の金額は、そのまま評価額にならないことがあるため注意が必要です。

この章では、種類ごとの計算例と、休日に亡くなった場合の扱い、分配金の注意点を示します。

種類別の計算例

4種類の投資信託について、評価額の計算例を並べました。一般の投資信託では、信託財産留保額の分だけ評価額が下がります。

種類 前提 計算 評価額
一般の投資信託 基準価額12,000円(1万口あたり)、1,500万口、信託財産留保額0.3% 12,000円×1,500=1,800万円、留保額5万4,000円を差し引く 1,794万6,000円
MRF 基準価額1円、300万口、未再投資の分配金なし 1円×300万口 300万円
ETF 終値2,500円、当月平均2,600円、前月平均2,450円、前々月平均2,550円、4,000口 最も低い2,450円×4,000口 980万円
外貨建て 外貨での評価額10万ドル、TTB148円 10万ドル×148円 1,480万円

表の見方:ETFは、亡くなった日の終値2,500円ではなく、前月平均の2,450円を使えるため、20万円低く評価できます。

重要ポイント:一般の投資信託の例は、解約時に源泉徴収される税金相当額が0円と金融機関の資料で確認できた場合です。値上がり益に源泉徴収がある口座では、その相当額も差し引きます。

計算ロジック:一般の投資信託は1,500万口÷1万=1,500、12,000円×1,500=1,800万円、1,800万円×0.3%=5万4,000円。数字は説明用の仮定で、実際の値は残高証明書と基準価額の公表値で確かめます。

評価額を計算する手順

投資信託の評価額は、次の順番で確かめると漏れなく計算できます。商品ごとに、種類・口数・基準価額・差し引く額の4つをそろえてください。

  • □ 残高証明書で、商品名と口数を確かめる
  • □ 商品の種類(一般・毎日決算型・上場型)を確かめる
  • □ 亡くなった日(休日なら直前の日)の基準価額や終値を調べる
  • □ 信託財産留保額・解約手数料の率を目論見書で確かめる
  • □ 解約時に源泉徴収される税金相当額を金融機関に確かめる
  • □ 未受領の分配金がないかを確かめる

重要ポイント:金融機関に「相続税評価額の計算に使う解約価額」を依頼すると、差し引く額まで反映した資料を出してもらえることがあります。依頼できるかを問い合わせてみてください。

亡くなった日が休日の場合

土日や祝日に亡くなった場合など、亡くなった日の基準価額がないことがあります。その場合は、亡くなった日より前で最も近い日の基準価額を使います。

たとえば日曜日に亡くなった場合は、直前の金曜日の基準価額です。後の月曜日の基準価額は使いません。ETFも、亡くなった日に終値がなければ、最も近い日の終値を使います。

残高証明書の金額をそのまま使わない

金融機関に依頼すると、亡くなった日時点の残高証明書を発行してもらえます。ただし残高証明書の「評価額」は、基準価額×口数だけのことが多く、相続税評価額とは一致しないことがあります。

  • 信託財産留保額や解約手数料が差し引かれていない
  • ETFの月平均の価格が考慮されていない
  • MRFなどの未再投資の分配金が別に記載されている
  • 外貨建ての換算が買相場(TTB)でなく仲値になっている

残高証明書は口数を確かめる資料として使い、評価額は計算式に当てはめて出し直します。差が小さい場合でも、根拠を説明できるように計算過程を残しておきます。

分配金の扱い

投資信託の分配金は、受け取る時期によって扱いが変わります。亡くなる前に決算日が来て、まだ受け取っていない分配金は、相続財産として申告します。

分配金の時期 扱い
亡くなる前に受け取り済み 預金などの残高として相続財産に含まれる
亡くなる前の決算で確定し、未受領 未収の分配金として相続財産に加える
亡くなった後の決算で出たもの 相続財産ではなく、受け取った相続人の所得

重要ポイント:亡くなった後の分配金は、遺産分割の前でも出ることがあります。誰が受け取るかを遺産分割協議書に書いておくと、相続人の間の争いを防げます。

投資信託がある遺産の相続税はいくら?

投資信託の評価額が出たら、ほかの遺産と合計して相続税を計算します。遺産の合計が基礎控除以下なら、相続税はかかりません。

この章では、相続税の計算の流れと遺産の規模別の目安、値下がりしたときの扱いを示します。

基礎控除と相続税の計算例

基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、子2人なら4,200万円です。遺産1億円(うち投資信託2,000万円)を子2人で相続すると、相続税の総額は770万円です。

計算の段階 金額
遺産の合計(投資信託2,000万円+預金8,000万円) 1億円
基礎控除(子2人) −4,200万円
課税される遺産 5,800万円
1人あたり(法定相続分2分の1) 2,900万円×15%−50万円=385万円
相続税の総額 770万円

計算ロジック:【前提】相続人は子2人、配偶者なし、特例の適用なし。法定相続分で分けたとした金額に税率を掛けて総額を出し、実際に取得した割合で各人に振り分けます。

遺産の規模別の相続税の目安

投資信託を含む遺産の合計と、相続人の数から、相続税のおおよその額がわかります。計算の仕組みは国税庁の解説で確かめられます。相続人が多いほど基礎控除が増え、相続税は少なくなります。

遺産の合計 子1人 子2人 子3人
5,000万円 160万円 80万円 19万9,800円
8,000万円 680万円 470万円 329万9,400円
1億円 1,220万円 770万円 629万9,700円
1億5,000万円 2,860万円 1,840万円 1,440万円
2億円 4,860万円 3,340万円 2,459万9,400円

表の見方:相続人全員の相続税の合計です。配偶者がいる場合は配偶者の税額軽減で大きく下がるため、この表より少なくなります。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

値下がりしても相続税は減らない

相続税の評価額は、亡くなった日の価格で決まります。相続した後に投資信託が値下がりしても、それを理由に相続税を減らすことはできません。

たとえば亡くなった日に2,000万円だった投資信託が、遺産分割が終わるまでに1,500万円に下がっても、相続税は2,000万円で計算します。差の500万円分の相続税は戻りません。

値動きの影響を受けたくない場合は、遺産分割を早くまとめて、売るか持つかを決めることが大切です。相続人全員の同意があれば、遺産分割の前に解約して現金で保管する方法もあります。

誰が投資信託を相続するかで売るときの税金が変わる

相続税の額は、遺産の合計で決まるため、誰が投資信託を相続しても総額は変わりません。ただし、相続税を払わない人が相続すると、売るときに取得費加算の特例を使えません。

たとえば配偶者は、配偶者の税額軽減で相続税が0円になることが多く、その場合は特例の対象外です。相続後に売る予定の投資信託は、相続税を払う子が相続すると、売るときの税金を減らせる場合があります。

一方で、配偶者が相続した財産は、配偶者が亡くなったときに再び相続税の対象になります。売るときの税金だけでなく、次の相続まで含めて分け方を考えます。

投資信託と同じ証券口座にある上場株式の評価方法と、売ったときの税金は、下記の記事で解説しています。

投資信託の相続手続きの流れ

投資信託の相続手続きは、金融機関への連絡から始まり、相続人の口座への移管か解約で終わります。亡くなったことを伝えると口座が凍結され、手続きが終わるまで売ることも移すこともできません。

この章では、手続きの流れと、金融機関からもらう資料、必要書類を整理します。

手続きの流れ|STEP1〜STEP5

手続きは、金融機関ごとに書類の名前は違っても、流れはほぼ共通です。相続税の申告期限(10か月)から逆算して、早めに始めてください。

STEP1
金融機関に亡くなったことを伝える
取引していた銀行・証券会社に連絡します。口座は凍結され、相続手続きの書類が送られてきます。

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STEP2
残高証明書と取引の記録をもらう
亡くなった日時点の残高証明書を依頼します。売るときの税金のため、買った値段がわかる記録も一緒にもらいます。

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STEP3
誰が相続するかを決める
遺言書があればそれに従い、なければ相続人全員で遺産分割協議をして、誰が何口を相続するかを決めます。

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STEP4
必要書類を出す
相続手続きの依頼書、戸籍謄本、遺産分割協議書(または遺言書)、印鑑証明書などを提出します。

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STEP5
相続人の口座へ移すか、解約する
持ち続けるなら相続人の口座へ移し、現金にするなら解約して代金を受け取ります。

金融機関からもらう資料

相続税の申告と、後で売るときの税金の計算には、金融機関の資料が欠かせません。特に買った値段の記録は、口座を閉じた後では取り寄せに時間がかかることがあります。

資料 使い道
亡くなった日時点の残高証明書 口数・基準価額の確認(相続税の評価)
取引報告書・取引残高報告書 買った値段と買った日の確認(売るときの税金)
特定口座年間取引報告書 亡くなった年の売買と分配金の確認(準確定申告)
目論見書・運用報告書 信託財産留保額・解約手数料の確認

重要ポイント:複数の金融機関に口座がある場合は、すべての金融機関で同じ資料をそろえます。郵便物やネット口座のログイン情報から、取引先を漏れなく探してください。

投資信託は自動的には分けられない

預貯金と同じように、投資信託も相続人の間で自動的に法定相続分で分かれるわけではありません。遺言書か遺産分割で誰が何口を相続するかを決めない限り、相続人の1人が自分の分だけ解約することはできません。

最高裁は平成26年2月25日の判決で、投資信託は相続人が亡くなった時点で当然に分けられるものではないと判断しました。手続きを進めるには、遺言書か、相続人全員の合意が必要です。

亡くなった年の売却益・分配金と準確定申告

亡くなった年に、亡くなった人が投資信託を売ったり分配金を受け取ったりしていた場合は、準確定申告が必要になることがあります。特定口座で源泉徴収ありなら、原則として申告しなくて済みます。

亡くなった人の口座 準確定申告
特定口座(源泉徴収あり) 原則不要(損失を他の口座と差し引くなら申告する)
特定口座(源泉徴収なし) 売却益があれば必要
一般口座 売却益があれば必要

準確定申告の期限は、相続を知った日の翌日から4か月以内です。特定口座年間取引報告書で、亡くなった年の売買を確かめます。

主な必要書類

必要書類は金融機関によって違うため、STEP1で送られてくる案内に従います。一般的には、次の書類を求められます。

【主な必要書類】

  • 金融機関所定の相続手続き依頼書
  • 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本(または法定相続情報一覧図の写し)
  • 相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書
  • 遺産分割協議書、または遺言書(公正証書以外は検認済みのもの)
  • 投資信託を受け取る相続人の口座の情報

戸籍謄本などは、銀行の預金や不動産の相続登記と同じものを使い回せます。法定相続情報一覧図を法務局で作っておくと、複数の金融機関の手続きが楽になります。

解約するか、移したまま持つか

相続した投資信託は、相続人の口座に移して持ち続けるか、解約して現金にするかを選べます。どちらを選んでも、相続税の額は変わりません。

違いが出るのは、その後の値動きの影響と、売るときの税金のタイミングです。この章では、判断のポイントと、複数の相続人で分ける方法を整理します。

解約と移管の比較

解約と移管は、相続人の状況や運用の考え方で選びます。相続税の納税資金が必要なら、解約して現金にするのが一般的です。

項目 移して持ち続ける 解約して現金にする
相続税 変わらない 変わらない
売るときの税金 売ったときに払う 解約の年に払う
値動き 今後も影響を受ける 解約した時点で確定
相続人の口座 同じ金融機関に開く必要がある 不要(代金を振り込んでもらう)
分けやすさ 口数で分ける 金額で分けられる

表の見方:相続人が投資経験のない場合や、納税資金が足りない場合は解約が向いています。長く持ちたい場合や、値上がりを待ちたい場合は移管が向いています。

相続税の納税資金に充てる場合

相続税は原則として現金で一括納付するため、預金が足りなければ投資信託を解約して納税資金にします。解約の手続きには数週間かかることがあるため、申告期限の2〜3か月前には始めてください。

納税のために解約する場合も、3年10か月以内なら取得費加算の特例を使えます。相続税を払ったうえで売る形になるため、特例の効果を受けやすい時期です。

どの投資信託から解約するかは、値上がり益の小さいもの、つまり売るときの税金が少ないものから選ぶと手取りが多くなります。

同じ金融機関に口座が必要

投資信託を移すには、原則として亡くなった人と同じ金融機関に、相続人名義の口座を開きます。他社に直接移せない商品もあるため、移管先を先に確かめてください。

一度同じ金融機関に移してから、相続人が普段使う証券会社へ移せる場合もあります。ただし銀行でしか扱っていない投資信託などは、他社へ移せないことがあります。

持ち続けるときの注意

相続した投資信託を持ち続ける場合、その後の分配金は相続人の所得になります。分配金の受け取り方(再投資か受け取りか)は、移管の手続きで改めて選び直すことがあります。

特定口座で源泉徴収ありなら、分配金の税金も差し引かれて確定申告は不要です。親が選んでいた運用方針が自分に合うかを確かめ、合わなければ時期を見て売ることも検討します。

複数の相続人で分ける方法

投資信託を複数の相続人で分ける方法は3つあります。値動きがある財産なので、どの時点の価格で分けるかを合意しておくことが大切です。

分け方 やり方 注意点
口数で分ける 1,000万口ずつなど、口数を分けて各人の口座へ移す 全員が同じ金融機関に口座を開く
換金して分ける 解約した代金を相続人で分ける 売るときの税金は、取得割合に応じて各人が負担する
代わりにお金を払う 1人が全部を相続し、他の相続人にお金を払う 払う金額を決める基準日で揉めやすい

重要ポイント:代わりにお金を払う方法では、相続税の評価額で計算するか、協議した日の時価で計算するかで金額が変わります。どちらを使うかを協議書に明記してください。

遺産分割協議書の書き方

投資信託は、金融機関名・商品名・口数で特定して書きます。金額で書くと、手続きの日までの値動きで合わなくなるため、口数で書くのが確実です。

【記載例】

相続人Aは、次の投資信託を取得する。
○○証券株式会社 ○○支店 口座番号○○○○
「○○インデックスファンド」 1,500万口

【分配金も書いておく】

上記投資信託について相続開始後に生じた分配金は、相続人Aが取得する。

口座内のすべての投資信託を1人が相続する場合は、「○○証券○○支店の口座内の預り資産の一切」と書く方法もあります。後から見つかった商品の扱いにも困りません。

遺産分割協議書の書き方の全体は、下記の記事で解説しています。

相続した投資信託を売るときの税金

相続した投資信託を売ると、値上がり益に20.315%の税金がかかります。値上がり益は、相続税の評価額ではなく、親が買った値段をもとに計算します。

買った値段の記録を引き継げるか、取得費加算の特例を使える期間内に売るかで、税金は大きく変わります。この章では、4通りの売り方で手元に残る額を比べます。

税率と、取得費は親の買った値段

投資信託を売ったときの値上がり益には、所得税15.315%と住民税5%、合わせて20.315%がかかります。相続した投資信託の取得費(買った値段)は、親が買った値段を引き継ぎます。

相続税の評価額で買ったことにはなりません。親が1,200万円で買い、亡くなった日に2,000万円になっていた投資信託を2,000万円で売ると、値上がり益は800万円です。

売った値段が親の買った値段を下回れば、値上がり益はなく税金もかかりません。損失の扱いは、値下がりの章で説明します。

参照元:国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)

買った値段の記録を引き継ぐ移し方

亡くなった人の特定口座から、相続人の特定口座へ移すと、買った値段の記録も一緒に引き継がれます。相続人の口座は、一般口座ではなく特定口座で開いてください。

特定口座なら、金融機関が売ったときの税金を計算し、源泉徴収ありを選べば確定申告もいりません。一般口座に移すと、売ったときに自分で取得費を計算して確定申告をします。

亡くなった人の口座が一般口座だった場合や、記録が残っていない場合は、取引報告書などで買った値段を確かめる必要があります。

買った値段がわからないと5%で計算する

買った値段がわからない場合は、売った値段の5%を取得費とみなして計算します。値上がり益が売った値段の95%になり、税金が大きく増えます。

2,000万円で売った場合、取得費は100万円とみなされ、値上がり益は1,900万円です。親が実際に1,200万円で買っていれば、値上がり益は800万円で済むため、記録の有無で1,100万円の差が出ます。

古い投資信託ほど、記録の取り寄せに時間がかかったり、記録が見つからなかったりします。相続が始まったら、すぐに金融機関へ依頼してください。

取得費加算の特例|3年10か月以内に売る

相続税を払った人が、相続から3年10か月以内に相続した財産を売ると、払った相続税の一部を取得費に加えられます。投資信託もこの特例の対象です。

【取得費に加える額】

その人の相続税額×売った投資信託の相続税評価額÷その人の課税価格(債務控除前)

【条件】

相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売ること。加える額は、値上がり益が上限です。

相続税がかからなかった人は、この特例を使えません。また3年10か月を過ぎて売ると使えなくなるため、売る予定があるなら期限内に売るかどうかを検討します。

参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

4通りの売り方で手元に残る額の比較

買った値段の記録の有無と、特例を使えるかどうかで、4通りの売り方を比べます。最も有利な売り方と最も不利な売り方で、手取りに約255万円の差が出ます。

売り方 取得費 特例で加える額 課税される値上がり益 税金 手取り
記録あり・3年10か月以内 1,200万円 154万円 646万円 約131万円 約1,869万円
記録あり・3年10か月より後 1,200万円 0円 800万円 約163万円 約1,837万円
記録なし(5%)・3年10か月以内 100万円 154万円 1,746万円 約355万円 約1,645万円
記録なし(5%)・3年10か月より後 100万円 0円 1,900万円 約386万円 約1,614万円

表の見方:差が最も大きいのは、買った値段の記録の有無です。特例の有無による差は、この例では約32万円です。

重要ポイント:売るなら、まず買った値段の記録を確保し、次に3年10か月の期限内に売るかを判断します。記録を失うと、特例を使っても取り戻せない差が残ります。

計算ロジック:【前提】遺産1億円・子2人。長男が投資信託(評価額2,000万円・買値1,200万円)と預金3,000万円を相続し、相続税は385万円。加える額は385万円×2,000万円÷5,000万円=154万円です。

売る前に確かめること

相続した投資信託を売る前に、次の項目を確かめると、税金の取りこぼしを防げます。特に買った値段の記録は、売る前でないと確保が難しくなります。

  • □ 相続人の口座が特定口座か
  • □ 親の買った値段(個別元本)の記録が引き継がれているか
  • □ 自分に相続税がかかったか(取得費加算の特例の対象か)
  • □ 相続から3年10か月の期限はいつか
  • □ 同じ年に、他の株式や投資信託で損失や利益が出ていないか

重要ポイント:取得費加算の特例は、売った財産ごとに計算します。複数の投資信託を売る場合は、値上がり益の大きいものから特例を当てると効果が大きくなります。

確定申告が必要なケース

相続人が投資信託を売ったとき、確定申告が必要かどうかは口座の種類と特例の利用で決まります。取得費加算の特例を使うには、特定口座で源泉徴収ありでも確定申告が必要です。

状況 確定申告
特定口座(源泉徴収あり)で売り、特例を使わない 不要
特定口座(源泉徴収あり)で売り、取得費加算の特例を使う 必要(払いすぎた税金が戻る)
特定口座(源泉徴収なし)・一般口座で売った 値上がり益があれば必要
損失を他の口座の利益と差し引く・繰り越す 必要

表の見方:特定口座では、金融機関が特例を反映せずに税金を差し引きます。特例を使う場合は、翌年の確定申告で「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」を付けて差額を取り戻します。

参照元:国税庁 No.1476 特定口座制度

元本払戻金を受け取っていた場合

毎月分配型などの投資信託では、分配金の一部が元本払戻金(特別分配金)として支払われることがあります。元本払戻金を受け取ると、その分だけ個別元本(平均の買値)が下がります。

個別元本が下がると、売るときの取得費も下がり、値上がり益が大きくなります。最初に買った金額をそのまま取得費にすると、税金を少なく計算してしまいます。

個別元本は、取引残高報告書や金融機関への問い合わせで確かめます。特定口座で引き継げば、金融機関が反映した金額で計算されます。

取得費加算の特例の要件と計算は、下記の記事で詳しく解説しています。

値下がりしたときの税金

相続した後に投資信託が値下がりすることもあります。値下がりしても、親の買った値段より高く売れれば、値上がり益に税金がかかります。

この章では、値下がりした場合の相続税と売るときの税金、損失が出た場合の扱いを整理します。

相続税は亡くなった日の評価のまま

相続税は、亡くなった日の評価額で計算したものから変わりません。2,000万円で評価した投資信託が1,500万円に下がっても、2,000万円分の相続税を払います。

相続税の申告前に値下がりした場合でも同じです。申告期限までに売って現金にしても、相続税の計算は亡くなった日の評価額で行います。

親の買値より高く売れれば税金がかかる

亡くなった日より値下がりしても、親の買った値段より高ければ、その差に税金がかかります。相続税と売るときの税金の両方がかかる点に注意が必要です。

売った値段 値上がり益(親の買値1,200万円) 税金(3年10か月以内) 税金(3年10か月より後)
2,000万円(変わらず) 800万円 約131万円 約163万円
1,500万円(値下がり) 300万円 約30万円 約61万円
1,000万円(買値を下回る) −200万円(損失) 0円 0円

表の見方:1,500万円で売る場合、相続税の計算では2,000万円の財産だったのに、売るときにも300万円の値上がり益に税金がかかります。特例で加える154万円は値上がり益が上限なので、値上がり益が小さいほど効果も小さくなります。

計算ロジック:1,500万円で売る場合は(1,500万円−1,200万円−154万円)×20.315%=約30万円。特例を使わなければ300万円×20.315%=約61万円です。前提は前の章の比較表と同じです。

買値を下回れば損失を3年間繰り越せる

親の買った値段を下回って売ると、損失になります。この損失は、確定申告をすれば、同じ年の株式や投資信託の利益・配当と差し引きでき、残りは翌年以後3年間繰り越せます。

特定口座の中で売った場合、同じ口座の中の利益とは自動で差し引かれます。他の口座の利益と差し引いたり、翌年に繰り越したりするには、確定申告が必要です。

一方、この損失で相続税が戻ることはありません。相続税と所得税は別の税金なので、売ったときの損失は相続税の計算には影響しません。

参照元:国税庁 No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除

遺産分割がまとまらないとき

相続人の話し合いがまとまらないと、投資信託は凍結されたまま動かせません。それでも相続税の申告期限(10か月)は延びないため、分け方が決まっていないまま申告する必要があります。

この章では、遺産分割がまとまらない場合の申告の仕方と、値動きへの備えを整理します。

分けるまで売れない

遺言書がない場合、遺産分割が終わるまで、投資信託は解約も移管もできません。話し合いが長引くほど、値下がりの影響を受けやすくなります。

値下がりが心配な場合は、投資信託だけ先に分け方を決める方法があります。遺産の一部だけについて遺産分割協議書を作れば、その投資信託は先に手続きできます。

相続人全員が合意すれば、分け方を決める前に解約して現金で保管し、後から分けることもできます。金融機関によって対応が違うため、事前に確かめてください。

10か月以内に法定相続分で申告する

遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分で財産を取得したものとして相続税を申告します(相続税法55条)。分け方が決まっていなくても、10か月以内に申告と納付をしてください。

分け方が決まった後、実際に取得した額との差を、修正申告か更正の請求で直します。納税資金は、投資信託が動かせない間、各相続人が自分で用意する必要があります。

3年以内に分ければ特例を後から使える

分け方が決まっていない状態の申告では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えません。申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を出せば、3年以内に分けたときに特例を使えます。

取得費加算の特例の期限(3年10か月)も、申告期限から数えるため、遺産分割が長引くと売る時期と重なります。分け方が決まったら、売る時期も合わせて検討します。

分け方が決まらない場合の申告の仕方は、下記の記事で詳しく解説しています。

話し合いが進まないときは家庭裁判所へ

相続人の話し合いで分け方が決まらない場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てられます。調停でもまとまらなければ、審判で裁判所が分け方を決めます。

調停や審判には数か月から1年以上かかることがあり、その間も投資信託は動かせません。値動きのある財産は、先に一部だけ分ける方法も含めて、早めに専門家に相談してください。

相続放棄を考えているなら解約しない

亡くなった人に借金があり、相続放棄を考えている場合は、投資信託に手を付けないでください。解約して代金を使うと、相続を認めたものとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。

相続放棄は、相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し出ます。投資信託の評価額と借金の額を比べてから、放棄するかどうかを決めます。

分け方が決まる前の分配金と償還金

遺産分割の前に、分配金が出たり、投資信託の運用期間が終わって償還されたりすることがあります。償還金は亡くなった人の口座に入金され、凍結されたまま遺産分割の対象になります。

償還されると投資信託は現金に変わりますが、相続税の評価は亡くなった日の投資信託の評価額のままです。償還金の額で評価し直すわけではありません。

償還金を受け取った相続人は、償還による値上がり益について、売ったときと同じように税金の計算が必要になることがあります。特定口座なら金融機関が計算しますが、一般口座の場合は確定申告で精算します。

分配金や償還金を誰が受け取るかは、遺産分割協議書に書いておきます。書いていないと、改めて相続人全員の合意が必要になることがあります。

NISA・株式・見落としやすい投資信託

投資信託でも、NISA口座の分や証券口座の待機資金は、扱いや見つけ方に注意が必要です。特にMRFや償還済みの資金は、申告から漏れやすい財産です。

この章では、NISA口座の投資信託と上場株式との違い、見落としやすい投資信託を整理します。

NISA口座の投資信託

NISA口座で持っていた投資信託も、相続税は一般の投資信託と同じ方法で評価します。ただしNISAの非課税の枠は相続人に引き継げず、相続人の課税口座に移されます。

NISA口座から移した投資信託は、亡くなった日の時価が相続人の買った値段になるなど、通常の口座と扱いが違う点があります。NISA特有の手続きと税金は、下記の記事で解説しています。

銀行で買った投資信託の注意

銀行の窓口で買った投資信託は、銀行の投資信託口座で管理されています。相続手続きは預金と同じ銀行で行いますが、投資信託は預金とは別の口座として扱われます。

預金の相続手続きだけを済ませて、投資信託の手続きが漏れることがあります。銀行には「預金と投資信託の両方」の残高証明書を依頼し、相続人の投資信託口座も同じ銀行に開く必要があるかを確かめます。

上場株式との違い

投資信託と上場株式は、同じ証券口座で持っていても評価の仕方が違います。上場株式とETF・REITは月平均を使えますが、一般の投資信託は亡くなった日の基準価額だけで評価します。

項目 一般の投資信託 上場株式・ETF・REIT
評価の基準 亡くなった日の基準価額 終値と3か月の月平均のうち最も低い額
差し引くもの 税金相当額・信託財産留保額・解約手数料 なし
売るときの税率 20.315% 20.315%
取得費の引継ぎ 親の買った値段(個別元本) 親の買った値段

表の見方:評価の仕方は違いますが、売るときの税金の考え方は同じです。1つの証券口座の中でも、商品ごとに評価方法を確かめます。

投資信託で持っていても相続税は下がらない

投資信託は、亡くなった日に解約したとした手取り額で評価されるため、時価とほぼ同じ金額で相続税がかかります。預金を投資信託に替えても、相続税を減らす効果はほとんどありません。

差し引かれるのは、解約時の税金相当額や信託財産留保額などに限られます。値上がり益が小さい投資信託では、評価額は基準価額×口数とほとんど変わりません。上場株式やETFのように月平均を使える仕組みもないため、相続税の対策としては期待できません。

相続税を減らしたい場合は、生前贈与や生命保険の非課税枠など、別の方法を検討します。投資信託は、運用の目的で持つものと考えてください。

生前にできる準備

投資信託の相続で家族が困るのは、どこに何があるかわからないことと、買った値段の記録がないことです。元気なうちに、口座の一覧と取引の記録を家族と共有してください。

  • 取引している銀行・証券会社と支店の一覧を書いておく
  • ネット専用の口座は、金融機関名だけでも家族に伝える
  • 口座は特定口座にしておき、買った値段の記録を金融機関に残す
  • 使っていない口座は解約してまとめておく
  • 遺言書で、投資信託を誰に遺すかを口数や口座単位で書いておく

特定口座にしておけば、相続人の特定口座へ記録ごと移せるため、売るときの税金を正しく計算できます。この準備だけで、相続人の手取りが数百万円変わることもあります。

見落としやすいMRF・償還金・休眠口座

投資信託の相続で申告漏れが起きやすいのは、本人も意識していなかった資金です。証券口座の残高証明書は、投資信託だけでなく口座全体で依頼してください。

  • 証券口座の買付余力として置かれたMRF
  • 償還されて口座に残ったままの現金
  • 何年も取引のない銀行・証券会社の口座
  • 郵便で届く運用報告書だけがあり、本人が忘れていた投資信託

家族が把握していない口座は、郵便物、通帳の引き落とし、ネット口座のログイン情報、確定申告書の配当欄などから探します。見つかった口座ごとに残高証明書を取ります。

投資信託の相続税の相談は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

投資信託の相続は、評価額の計算、相続税の申告、売るときの税金がつながっています。相続税の対応実績がある税理士なら、申告と売る時期まで含めて手元に残る額を比べて示せます。

税理士によって金融資産の扱いの経験や報酬が違うため、複数の事務所の見積りを比べるのが確実です。この章では、相談する意味と手順を整理します。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

投資信託は種類ごとに評価方法が違い、残高証明書の金額をそのまま使うと誤ることがあります。相続後に売る予定があるなら、取得費の記録と特例の期限まで見てもらうことが大切です。

【実績がある税理士が必要な理由】

  • 評価の正確さ — 種類ごとの計算式で、差し引ける額を漏れなく反映する
  • 財産の洗い出し — MRF・償還金・休眠口座などの申告漏れを防ぐ
  • 売る時期の判断 — 取得費加算の特例の期限と、相続人の納税資金を合わせて考える
  • 取得費の確保 — 買った値段の記録を引き継ぐ移し方を、手続きの前に助言する
  • 遺産分割への備え — 分け方が決まらない場合の申告と、特例の取り戻しを準備する

具体例で見ます。評価額2,000万円の投資信託を相続した人が、買った値段の記録を失い、3年10か月を過ぎてから売ると、税金は約386万円です。

税理士の助言で特定口座へ記録ごと移し、期限内に売れば税金は約131万円で、手取りは約255万円多くなります。

計算ロジック:【前提】この記事の比較表と同じ(遺産1億円・子2人、長男の相続税385万円、親の買値1,200万円、2,000万円で売却、税率20.315%)。

税理士を比較するときの3つの判定ポイント

見積りと初回相談の内容から、金融資産の相続の経験が豊富かどうかを読み取れます。次の3点を同じ質問で比べます。

判定ポイント1:残高証明書の金額をそのまま使わないか/「投資信託の評価額はどう計算しますか」と聞きます。
→ 種類ごとに計算し直すと答える事務所のほうが、評価の精度が高いと判定できます。

判定ポイント2:売るときの税金まで助言するか/相続後に売る予定を伝え、取得費や特例の期限について聞きます。
→ 売る時期まで含めて試算する事務所のほうが、手元に残る額を考えてくれると判定できます。

判定ポイント3:金融資産の数で報酬が増えるか/口座や銘柄の数による加算があるかを確かめます。
→ 加算の基準を先に示す事務所のほうが、後から総額が膨らむ心配が少ないと判定できます。

この3点は複数の事務所に同じ質問をすれば必ず差が出ます。1つの事務所だけでは、その回答が標準なのか判断できません。

相談しないまま進めるリスク

【相談しないまま進めるリスク】

  • 評価の誤り — 残高証明書の金額で申告し、差し引ける額を取りこぼす
  • 申告漏れ — MRFや休眠口座の投資信託を申告せず、加算税がかかる
  • 取得費の喪失 — 一般口座に移したり記録を捨てたりして、売るときの税金が増える
  • 特例の期限切れ — 3年10か月を過ぎてから売り、取得費加算を使えない
  • 分け方の争い — 値動きのある財産の分け方で、相続人の間で揉める

投資信託は、手続きの順番を誤ると後から取り戻せない差が出ます。移管や解約の前に、税理士に評価と売る時期を確認してもらってください。

相続税申告の見積りを比べる手順は、下記の記事で解説しています。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

STEP1
相続の概要を整理する
被相続人の資産内容と資産額の概算、相続人の構成と年齢、遺言の有無を整理します。取引していた銀行・証券会社の一覧と、残高証明書があれば用意します。

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STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する
相続税申告・相続税の節税・確定申告・準確定申告など希望する内容を明記し、目安3〜5の税理士事務所へ同時に打診します。所有する不動産があれば所在地と広さを記載します。財産の種類と相続人の人数はできるだけ正確に伝えると見積りの精度が上がります。フォームの記入自体は5分程度です。

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STEP3
見積りと初回相談を受ける
各税理士から提案内容・試算相続税額・報酬額が記載された見積りが届きます。気になる事務所と初回相談を行い、上記の3つの判定ポイントを同じ質問で必ず確認します。

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STEP4
税理士を選定・正式依頼する
提案内容の質、説明の丁寧さ、報酬の納得性で最適な事務所を選びます。相続開始から7か月以内に依頼先を決めると、投資信託の移管や解約の前に助言を受けられます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 投資信託の相続税評価額はどうやって計算しますか?

一般の投資信託は、亡くなった日の基準価額×口数から、解約時に差し引かれる税金相当額・信託財産留保額・解約手数料を引いて計算します。MRFなどは未再投資の分配金を加え、ETFやREITは上場株式と同じく終値と月平均のうち最も低い額で評価します。

Q2. 亡くなった日が土日で基準価額がない場合はどうしますか?

亡くなった日より前で、最も近い日の基準価額を使います。日曜日に亡くなった場合は、直前の金曜日の基準価額です。後の月曜日の基準価額は使いません。

Q3. 相続した投資信託を売ると税金はかかりますか?

値上がり益に20.315%の税金がかかります。値上がり益は、相続税の評価額ではなく、親が買った値段をもとに計算します。相続税を払った人が相続から3年10か月以内に売れば、取得費加算の特例で税金を減らせます。

Q4. 相続後に値下がりしたら相続税は減りますか?

減りません。相続税は亡くなった日の評価額で計算します。値下がりしても、親の買った値段より高く売れれば、その差に税金がかかります。買った値段を下回って売った損失は、確定申告をすれば3年間繰り越せます。

Q5. 遺産分割がまとまらないと投資信託はどうなりますか?

相続人全員の同意がない限り、口座が凍結されたままで、解約も移管もできません。相続税は、10か月以内に法定相続分で取得したものとして申告します。値下がりが心配なら、投資信託だけ先に分け方を決める方法もあります。

まとめ|投資信託は亡くなった日の手取り額で評価し、売る前に取得費を確保する

投資信託の相続税評価額は、亡くなった日に解約したとした手取り額です。相続税はほかの遺産と合わせて計算し、相続後に売るときは親の買った値段をもとに別に税金がかかります。

この記事で扱った内容を整理すると次のとおりです。

  • 評価方法は、一般・毎日決算型・上場型(ETF・REIT)の3通り
  • 残高証明書の金額をそのまま使わず、計算式に当てはめて出し直す
  • 遺産1億円・子2人なら相続税の総額は770万円。値下がりしても相続税は減らない
  • 手続きは、連絡→残高証明書→遺産分割→書類提出→移管か解約の順
  • 売るときの税金は20.315%。買値の記録と取得費加算の特例で、手取りが約255万円変わる例もある
  • 遺産分割がまとまらなくても、10か月以内に法定相続分で申告する

今すぐ取るべき行動

  • 取引していた銀行・証券会社をすべて洗い出す
  • 亡くなった日時点の残高証明書と、買った値段がわかる取引の記録を依頼する
  • 相続人の口座を開くなら、特定口座で開く
  • 売る予定があるなら、取得費加算の特例の期限(相続から3年10か月)を確かめる
  • 相続税の対応実績がある税理士3〜5の事務所に一括で相談し、評価と売る時期を比べてもらう

※本記事は2026年10月時点の法令等に基づいています。財産評価基本通達や所得税法の改正により内容が変わる場合があります。最新の制度については国税庁のウェブサイトまたは相続税の対応実績がある税理士にご確認ください。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
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