3,000万円の相続税はいくら?必ず0円になる帯と基礎控除まであと600万円の判定

遺産相続_年収になる

遺産が3,000万円なら、相続税は家族構成にかかわらず0円です。相続人が1人しかいない場合でも課税されません。

基礎控除は最低でも3,600万円あり、遺産3,000万円を上回るためです。申告も必要ありません。

ただしこの帯で確認すべきことが1つあります。基礎控除までの余裕が600万円しかないという点です。

名義預金600万円、生命保険の非課税枠の超過分、自宅の評価の計上漏れ。どれか1つで境界を越えます。

さらに暦年贈与を続けている場合、加算期間の延長により2030年から課税に転じます。

贈与税は毎年0円なのに、相続税では670万円が加算されて3,600万円を超えるためです。

この記事では家族構成別の早見表を示したうえで、600万円を埋める4つの加算、暦年贈与の加算額が年ごとにどう増えるか、超えたときの税額、遺産の正しい数え方までを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 3,000万円の相続税はどの家族構成でも0円。基礎控除の最低額3,600万円が遺産を上回るため申告も不要
  • ただし相続人1人だと基礎控除まで余裕が600万円しかなく、名義預金や保険金の超過分で境界を越える
  • 暦年贈与を続けていると加算期間の延長で2030年から670万円が加算され、相続人1人なら7万円が発生する
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3,000万円の相続税は必ず0円|ただし余裕は600万円

遺産3,000万円の相続税は、家族構成にかかわらず0円になります。相続税の記事では珍しく、計算するまでもなく結論が確定する金額帯です。

ただし安心して終わりにできるかは別の話です。この帯で確認すべきなのは税額ではなく、集計した金額が本当に3,000万円で収まっているかどうかです。

結論|どの家族構成でも0円になる理由

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。相続人が最も少ない1人の場合でも3,600万円になります。

法定相続人の数 基礎控除 課税遺産総額 判定
1人 3,600万円 0円 0円
2人 4,200万円 0円 0円
3人 4,800万円 0円 0円
4人 5,400万円 0円 0円

表の見方:課税遺産総額は「課税価格-基礎控除」です。3,000万円はどの行でも基礎控除を下回るため、課税遺産総額が発生しません。

重要ポイント:課税遺産総額が0円になった時点で計算は終わります。2割加算や配偶者の税額軽減を検討する必要もありません。誰が相続しても結論は変わりません。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分

基礎控除の計算式と課税されるかの判定手順は、下記の記事で解説しています。

基礎控除までの余裕は600万円しかない

0円という結論は同じでも、基礎控除までの距離は相続人の数で大きく変わります。この距離がこの帯の本題です。

法定相続人の数 基礎控除 3,000万円との差=余裕
1人 3,600万円 600万円
2人 4,200万円 1,200万円
3人 4,800万円 1,800万円
4人 5,400万円 2,400万円

表の見方:余裕とは「あといくら財産が増えると課税されるか」です。相続人が1人増えるごとに600万円ずつ広がります。

重要ポイント:相続人が1人なら余裕は600万円しかありません。子名義の口座に600万円あるだけで境界に達します。この帯で注意が必要なのは相続人が1人の家庭です。

計算ロジック:基礎控除3,600万円(相続人1人)から課税価格3,000万円を引いた600万円が余裕です。相続人2人なら4,200万円-3,000万円=1,200万円になります。

この記事の地図|確認すべきは「本当に3,000万円か」

3,000万円の相続で必要な作業は税額の計算ではありません。集計した金額が本当に3,000万円で収まっているかを確かめることです

【心配のいらない人】相続人が2人以上

余裕が1,200万円以上あります。名義預金や保険金の超過分が数百万円あっても基礎控除の範囲内で収まるため、早見表の確認だけで済みます。

【確認が必要な人】相続人が1人だけ

余裕は600万円です。一人っ子、子のいない夫婦の二次相続、独身で甥姪や孫が相続人になるケースが該当します。加算がないかを確認してください。

【今後の注意が必要な人】暦年贈与を続けている

生前贈与の加算期間が延長されており、2030年以降の相続では670万円が加算されます。相続人1人だと余裕600万円を超えて課税に転じます。

この記事はこの3つの立場を順番に扱います。まず早見表で0円を確認し、次に加算の有無を点検してください。

家族構成別の早見表|13パターンすべて0円

財産が現金・預貯金のみで特例を使わない前提の一覧です。どのパターンでも納税額は0円になります。自分の家族構成の行を確認してください。

配偶者がいる場合の早見表

配偶者がいる場合、相続人は必ず2人以上になります。基礎控除は4,200万円以上で、余裕は1,200万円以上あります。

家族構成 法定相続人 基礎控除 余裕 納税額
配偶者+子1人 2人 4,200万円 1,200万円 0円
配偶者+子2人 3人 4,800万円 1,800万円 0円
配偶者+子3人 4人 5,400万円 2,400万円 0円
配偶者+父母1人 2人 4,200万円 1,200万円 0円
配偶者+兄弟姉妹1人 2人 4,200万円 1,200万円 0円
配偶者のみ 1人 3,600万円 600万円 0円

表の見方:配偶者がいても「配偶者のみ」が相続人の場合は1人なので、余裕は600万円になります。子がいない夫婦で、被相続人の親も兄弟姉妹もすでに亡くなっているケースです。

重要ポイント:この帯では配偶者の税額軽減を使う必要がありません。課税価格の段階で基礎控除を下回っているため、税額軽減を使わずに0円が確定します。申告も不要です。

配偶者の税額軽減の1億6,000万円の上限と適用方法は、下記の記事で解説しています。

配偶者がいない場合の早見表

配偶者がいない場合も結論は同じです。ただし相続人が1人になるパターンが多いため、余裕が600万円になりやすい点に注意してください。

家族構成 法定相続人 基礎控除 余裕 納税額
子1人のみ 1人 3,600万円 600万円 0円
子2人のみ 2人 4,200万円 1,200万円 0円
子3人のみ 3人 4,800万円 1,800万円 0円
父母1人のみ 1人 3,600万円 600万円 0円
兄弟姉妹1人のみ 1人 3,600万円 600万円 0円
兄弟姉妹2人のみ 2人 4,200万円 1,200万円 0円
孫1人(代襲相続でない) 1人 3,600万円 600万円 0円

表の見方:黄色の行が相続人1人=余裕600万円のケースです。7パターンのうち4パターンが該当します。

重要ポイント:兄弟姉妹や孫が相続する場合は本来2割加算の対象ですが、この帯では加算する税額そのものが0円なので影響しません。加算の有無を調べる前に結論が出ます。

参照元:国税庁 No.4157 相続税額の2割加算国税庁 No.4155 相続税の税率

相続人の数え方|相続放棄・養子・代襲

余裕額を決めるのは実際に相続する人の数ではなく、法定相続人の数です。数え方を間違えると余裕額の判定がずれます。

【相続放棄】放棄があっても人数は減らない

子2人のうち1人が相続放棄しても、基礎控除の計算上は2人として数えます。基礎控除は4,200万円のままで、余裕1,200万円も変わりません。

【養子】実子がいれば1人まで

基礎控除の計算に含められる養子の数には制限があります。実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は2人までです。

【代襲相続】亡くなった子の子は人数に入る

子が先に亡くなっていて孫が2人いる場合、その孫2人が法定相続人になります。人数が増えるため余裕も広がります。

相続放棄で人数が減らないという点はこの帯でも重要です。一人っ子が放棄しても基礎控除が下がることはなく、次順位の相続人が単独で相続する場合はその人数で計算します。

参照元:国税庁 No.4170 相続人の中に養子がいるとき

相続放棄をした場合の基礎控除と使える控除は、下記の記事で解説しています。

600万円を埋める4つの加算

相続人が1人の場合、余裕は600万円です。この600万円を埋めてしまう加算が4つあります。いずれも「遺産3,000万円」と聞いていた金額には含まれていないことが多いものです。

それぞれいくらで境界に達するのかを具体的な金額で確認していきます。

①生命保険の非課税枠の超過分

死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。相続人1人なら500万円までで、それを超えた分は課税価格に加算されます。

受け取った保険金 非課税枠(相続人1人) 課税価格に乗る額 課税価格 判定
500万円 500万円 0円 3,000万円 0円
800万円 500万円 300万円 3,300万円 0円
1,100万円 500万円 600万円 3,600万円 0円(境界)
1,500万円 500万円 1,000万円 4,000万円 課税される(40万円)

表の見方:保険金1,100万円で課税価格がちょうど3,600万円になり、基礎控除と同額で0円です。それを超えると課税されます。

重要ポイント:保険金は「遺産3,000万円」に含めて数えられていないことが多い財産です。受取人が指定されているため遺産分割の対象にならず、相続財産という意識を持ちにくいためです。

計算ロジック:非課税枠は500万円×1人=500万円です。保険金1,100万円から500万円を引いた600万円が課税価格に加算され、3,000万円+600万円=3,600万円になります。

死亡退職金にも同じく「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。保険金と退職金の両方を受け取った場合は、それぞれ別枠で計算します。

参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

みなし相続財産の種類と非課税枠は、下記の記事で解説しています。

生命保険金を受け取った場合の申告要否の判定は、下記の記事で解説しています。

②名義預金

子や孫の名義になっている預金でも、実質的に被相続人が管理していたものは相続財産に含まれます。名義ではなく実質で判断されます。

名義預金の額 課税価格 相続人1人(基礎控除3,600万円) 相続人2人(4,200万円)
300万円 3,300万円 0円 0円
600万円 3,600万円 0円(境界) 0円
1,000万円 4,000万円 課税される(40万円) 0円

表の見方:相続人1人なら名義預金600万円で境界に達し、1,000万円あれば課税されます。相続人2人なら1,000万円でも余裕1,200万円の範囲内で0円です。

重要ポイント:名義預金かどうかは入金の原資が誰か、通帳と印鑑を誰が管理していたか、名義人が口座の存在を知っていたかで判断されます。子が知らない口座に親が入金していた場合は名義預金です。

参照元:国税庁 No.4105 相続税がかかる財産

名義預金と判定される基準と税額への影響は、下記の記事で解説しています。

③自宅の評価の計上漏れ

「遺産3,000万円」が預貯金だけを指していて、自宅が含まれていないケースがあります。不動産は相続税評価額で課税価格に加わります。

自宅の相続税評価額 課税価格 相続人1人の判定
400万円 3,400万円 0円
600万円 3,600万円 0円(境界)
800万円 3,800万円 課税される(20万円)

表の見方:自宅の評価が600万円を超えると、相続人1人では基礎控除を超えます。地方の一戸建てでも土地の評価額が600万円を超えることは珍しくありません。

重要ポイント:ただし自宅の土地には小規模宅地等の特例があり、要件を満たせば評価が80%下がります。土地800万円なら特例適用後は160万円になるため、課税価格は3,160万円で0円に戻ります。

計算ロジック:課税価格3,800万円から基礎控除3,600万円を引いた200万円に税率10%を掛けて20万円です。特例を適用すると土地は160万円に下がり、課税価格3,160万円で0円に戻ります。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

小規模宅地等の特例の4類型の要件と計算方法は、下記の記事で解説しています。

④生前贈与加算

相続開始前の一定期間内に贈与された財産は、課税価格に加算されます。贈与税がかかっていなかった贈与も加算の対象です

この加算は期間が3年から7年へ段階的に延長されており、年を追うごとに加算額が増えます。この帯では加算額が余裕600万円を超えるため、次の章で詳しく扱います。

贈与の状況 加算額 課税価格 相続人1人の判定
暦年贈与110万円×3年分 330万円 3,330万円 0円
暦年贈与110万円×7年分(100万円控除後) 670万円 3,670万円 課税される(7万円)

重要ポイント:7年分になると670万円が加算され、余裕600万円を超えます。贈与税は毎年0円だったのに相続税が発生するという結果になります。

4つの加算の比較|境界に達する金額の一覧

4つの加算がそれぞれいくらで境界に達するかを並べます。相続人1人(基礎控除3,600万円・余裕600万円)を前提にした一覧です。

加算の種類 境界に達する条件 課税されるライン 特例で戻せるか
①生命保険の超過分 保険金1,100万円 1,100万円超 戻せない(非課税枠は使い切り)
②名義預金 600万円 600万円超 戻せない
③自宅の評価 評価額600万円 600万円超 戻せる(小規模宅地等の特例で80%減)
④生前贈与加算 7年分で670万円 すでに超えている 戻せない

表の見方:③の自宅だけは小規模宅地等の特例で評価を下げて0円に戻せます。他の3つは加算額そのものを減らす方法がありません。

重要ポイント:複数の加算が重なると境界を大きく超えます。保険金の超過分300万円と名義預金400万円があれば、それだけで700万円の加算です。1つずつ確認してください。

計算ロジック:いずれも「課税価格3,000万円+加算額」が基礎控除3,600万円を超えるかで判定しています。相続人が2人なら基礎控除4,200万円になるため、境界の金額は600万円ではなく1,200万円に変わります。

複数の加算が重なった場合の合計判定

実際には加算が1つだけということは少なく、複数が同時に存在します。それぞれが境界に達していなくても、合計すると超えることがあります

次の表に自分のケースの金額を当てはめて、合計額を出してください。

確認項目 計算方法 例A 例B
①生命保険金の超過分 保険金-(500万円×相続人の数) 300万円 0円
②死亡退職金の超過分 退職金-(500万円×相続人の数) 0円 0円
③名義預金 子・孫名義で実質は被相続人の資金 400万円 200万円
④自宅などの不動産 相続税評価額(特例適用前) 0円 500万円
⑤生前贈与加算 対象期間内の贈与額-100万円 330万円 0円
⑥債務・葬式費用 マイナスで計上 -200万円 -150万円
加算の合計 ①〜⑥の合計 830万円 550万円
課税価格 3,000万円+合計 3,830万円 3,550万円
相続人1人の判定 基礎控除3,600万円と比較 課税される(23万円) 0円

表の見方:例Aは3つの加算がそれぞれ600万円未満ですが、合計830万円で境界を越えています。例Bは不動産500万円があっても、債務控除で550万円に収まり0円です。

重要ポイント:⑥の債務・葬式費用は必ずマイナスで計上してください。葬儀費用が150万〜200万円あれば、加算をその分だけ打ち消せます。領収書があれば申告なしで差し引けます。

計算ロジック:例Aの課税価格3,830万円から基礎控除3,600万円を引いた課税遺産総額は230万円です。税率10%を掛けて23万円になります。例Bは3,550万円で基礎控除を下回るため0円です。

例Bのように不動産がある場合は、さらに小規模宅地等の特例で評価を80%下げられます。土地500万円なら100万円になるため、合計は150万円に下がります。

暦年贈与を続けていると2030年から課税に転じる

暦年贈与_相続税

4つの加算のうち、この帯で最も見落とされやすいのが生前贈与加算です。贈与税は毎年0円だったのに、相続税では課税されるという結果になります

しかも加算の対象期間は3年から7年へ段階的に延長されているため、同じ贈与をしていても相続が起きた年によって結論が変わります。順番に確認します。

加算のしくみ|基礎控除110万円以下の贈与も加算される

生前贈与加算は、相続開始前の一定期間内に贈与された財産を課税価格に足し戻す制度です。誤解されやすいのは、贈与税がかからなかった贈与も対象になる点です。

項目 内容
暦年贈与の年額 110万円=贈与税の基礎控除内なので贈与税は0円
110万円以下の贈与の扱い 相続税では加算される(国税庁が明記)
相続開始前3年以内の贈与 全額が加算(控除なし)
3年超7年以内の贈与 合計額から総額100万円までは加算されない
100万円控除の適用開始 相続開始が令和9年1月2日以後の場合

表の見方:国税庁は「基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算する」と明記しています。贈与税の申告が不要だった贈与も加算されます。

重要ポイント:100万円の控除は3年超7年以内の部分だけに適用されます。直近3年分には控除がないため、加算額を実際より小さく見積もらないでください。

参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

相続開始年別の加算額|2030年が境界

毎年110万円ずつ贈与していた場合、相続開始年ごとの加算額は次のように増えます。

相続開始 加算対象期間 加算額 課税価格 相続人1人の判定
2026年(令和8年)まで 相続開始前3年以内 330万円 3,330万円 0円
2027年(令和9年) 令和6年1月1日〜死亡の日 340万円 3,340万円 0円
2028年(令和10年) 同上 450万円 3,450万円 0円
2029年(令和11年) 同上 560万円 3,560万円 0円
2030年(令和12年) 同上 670万円 3,670万円 課税される(7万円)
2031年(令和13年)以降 相続開始前7年以内 670万円 3,670万円 課税される(7万円)

表の見方:加算対象期間は3段階で切り替わります。令和8年までは3年以内、令和9年から12年までは令和6年1月1日から死亡の日まで、令和13年以降は7年以内です。

重要ポイント:境界は2030年です。2029年までは加算560万円で余裕600万円の範囲内に収まりますが、2030年になると670万円に増えて基礎控除を超えます。

計算ロジック:7年分770万円のうち直近3年分330万円は全額加算、3年超の440万円は100万円控除後340万円です。合計670万円で課税価格3,670万円、基礎控除を引いた70万円×10%=7万円です。

※前提は毎年1回110万円を贈与し、相続開始までその回数分を継続した場合の概算です。実際の加算額は贈与日と相続開始日で決まります。

なぜ2030年が境界になるのか

この帯で境界が2030年になる理由は、余裕600万円と加算額の増え方が交差する位置にあります。

現在

加算は3年分だけ(330万円)

令和8年12月31日までの相続は従来どおり3年以内が対象です。余裕600万円に対して330万円なので、まだ270万円の余地があります。

移行期

令和6年1月1日を起点に期間が伸びる(340万〜560万円)

令和9年から12年までは「令和6年1月1日から死亡の日まで」が対象になります。年を追うごとに加算額が増えますが、2029年までは余裕の範囲内です。

2030年

加算が670万円になり余裕600万円を超える

令和6年1月1日から約7年が経過し、加算額が実質的に上限に達します。ここで課税価格3,670万円となり、相続人1人だと7万円が発生します

重要ポイント:贈与を止めても過去の贈与は加算されます。今から贈与を止めても、7年が経過するまでは加算対象として残ります

相続人が2人以上なら影響しない

加算670万円が問題になるのは相続人が1人の場合だけです。2人以上なら余裕が1,200万円以上あるため、加算しても基礎控除の範囲内です。

法定相続人 基礎控除 課税価格(加算670万円後) 判定
1人 3,600万円 3,670万円 課税される(7万円)
2人 4,200万円 3,670万円 0円
3人 4,800万円 3,670万円 0円

表の見方:同じ670万円の加算でも、相続人が2人いれば基礎控除4,200万円を下回るため課税されません。この帯の警告は相続人1人の家庭に向けたものです。

重要ポイント:遺産1,000万円の帯なら670万円を足しても1,670万円で基礎控除に届きません。3,000万円は生前贈与加算だけで課税されうる最初の帯です。

今からできる確認

贈与を受けていた場合、まず加算対象になる贈与があるかを確認します。相続開始後では加算額を減らせないため、生前の確認が有効です。

【確認1】いつから贈与を受けているか

令和6年1月1日以降の贈与が加算対象の起点です。それより前の贈与は、相続開始前3年以内でなければ加算されません。通帳の入金記録で時期を確認してください。

【確認2】贈与の証拠が残っているか

贈与契約書がなく、親が子の通帳を管理していた場合は贈与が成立しておらず名義預金と判断される可能性があります。この場合は7年より前の分も課税価格に入ります。

【確認3】相続時精算課税を使っていないか

相続時精算課税を選択した贈与は、期間にかかわらず全額が加算されます。年110万円の基礎控除部分は加算されませんが、それを超える部分は何年前でも対象です。

最も注意が必要なのは確認2です。贈与のつもりで積み立てていた資金が名義預金と判断されると、加算期間の制限がなくなり全額が課税価格に入ります。

贈与を続けるか止めるかの判断

加算が課税につながると分かったとき、贈与を続けるべきか止めるべきかという問題が出てきます。この帯では止めても効果が出るまでに7年かかります

3,000万円という規模での判断材料を整理します。

比較項目 贈与を続ける 贈与を止める
手元の財産 年110万円ずつ減る 減らない
加算の対象 直近7年分が加算される 止めてから7年で加算が消える
相続人1人の相続税 7万円程度 0円(7年経過後)
効果が出るまで 7年
渡した財産の使い道 受け取った側が自由に使える 相続時まで動かせない

表の見方:贈与を止めても、加算が完全に消えるのは7年後です。それまでに相続が起きれば加算されるため、短期間で効果を得ることはできません。

重要ポイント:節税のためだけに贈与を止める判断はこの帯では合理的ではありません。差額は7万円程度で、贈与を止めれば受け取る側が使える資金もなくなります。

計算ロジック:加算670万円により課税価格3,670万円、相続税は7万円です。贈与を止めて7年経過すれば加算は0円になり課税価格3,000万円で0円ですが、その間に贈与できなかった額は110万円×7年=770万円になります。

贈与を続けるなら、教育資金や住宅取得資金の非課税制度を検討する方法もあります。これらは要件を満たせば加算の対象になりません。

節税対策の全体像と優先順位は、下記の記事で解説しています。

課税価格が3,600万円を超えたときの税額

加算によって基礎控除を超えた場合、いくらの相続税になるのかを確認します。超えた直後の税額は数万円にとどまります

境界を越えた瞬間に大きな負担が生じるわけではないため、金額の規模感を把握しておくと判断しやすくなります。

課税価格別・相続人別の税額

相続人が子のみの場合の相続税の総額です。2割加算と税額控除を反映する前の金額を示します。

課税価格 相続人1人(子1人) 相続人2人(子2人) 相続人3人(子3人)
3,600万円 0円 0円 0円
3,670万円 7万円 0円 0円
3,770万円 17万円 0円 0円
4,000万円 40万円 0円 0円
4,200万円 60万円 0円 0円
4,500万円 90万円 30万円 0円
5,000万円 160万円 80万円 19万9,800円

表の見方:相続人2人なら4,200万円まで、3人なら4,800万円まで0円です。相続人1人の列だけが3,600万円を超えた時点から税額が発生します。

重要ポイント:境界を70万円超えても税額は7万円です。超過額に対して10%の税率がかかるだけなので、いきなり数百万円になることはありません。

計算ロジック:課税価格から基礎控除を引いた課税遺産総額を法定相続分で分け、各人の取得金額に税率を掛けて合計します。1,000万円以下は税率10%です。相続人1人・課税価格3,670万円なら70万円×10%=7万円です。

兄弟姉妹や孫が相続する場合は、この金額に2割加算が適用されて1.2倍になります。課税価格3,670万円なら7万円×1.2=8万4,000円です。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率国税庁 No.4157 相続税額の2割加算

相続税の計算の7ステップと端数処理は、下記の記事で解説しています。

超えたときに使える特例

基礎控除を超えても、特例を使って0円に戻せる場合があります。この帯で現実的なのは次の2つです。

特例 効果 この帯での使いどころ
小規模宅地等の特例 自宅の土地の評価を80%減額 ③自宅の評価で超えた場合に有効
債務控除・葬式費用 借入金や葬儀費用を差し引く 葬儀費用200万円なら課税価格が200万円下がる
配偶者の税額軽減 1億6,000万円まで非課税 配偶者が相続する場合に有効だが申告が必要
未成年者控除 18歳になるまでの年数×10万円 相続人が10歳なら80万円の控除で7万円は0円

表の見方:この帯の税額は数万円なので、未成年者控除のような小さな控除でも0円に戻せます。該当する控除がないかを確認してください。

重要ポイント:債務控除と葬式費用は申告なしで課税価格から差し引けます。葬儀費用が200万円あれば、加算670万円のうち200万円が相殺されて課税価格3,470万円になり0円に戻ります。

参照元:国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務国税庁 No.4164 未成年者の税額控除

特例で0円に戻した場合は申告が必要になる

ここが判定の分かれ目です。特例を使って0円にした場合は、申告書の提出が適用の条件になります

0円になった理由 申告
課税価格3,000万円<基礎控除3,600万円 不要
生命保険の非課税枠で基礎控除以下 不要
債務・葬式費用を引いて基礎控除以下 不要
小規模宅地等の特例を使って基礎控除以下にした 必要
配偶者の税額軽減を使った 必要

表の見方:上3行は課税価格の段階で基礎控除を下回るため申告が不要です。下2行は特例の適用を受けるために申告書を出す必要があります。

重要ポイント:申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限を過ぎると特例が使えなくなり、本来0円だった税額が発生します。

参照元:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

境界を越えたと分かったときの対応手順

集計の途中で基礎控除を超えていると分かった場合、期限内にやるべきことが決まります。10ヶ月の期限を過ぎると選べる手段が減ります

1

債務・葬式費用を先に反映する

領収書を集めて課税価格から差し引きます。申告なしで適用できるため、これだけで基礎控除以下に戻る場合があります。

2

使える控除を確認する

未成年者控除・障害者控除・相次相続控除の該当者がいないかを確認します。この帯の税額は数万円なので、小さな控除でも0円に戻ります

3

自宅があれば特例の要件を確認する

小規模宅地等の特例が使えれば土地の評価が80%下がります。ただし申告が条件なので、次のステップに進んでください。

4

10ヶ月以内に申告する

特例を使う場合は期限内の申告が適用条件です。分割が終わっていなくても、未分割のまま申告して後から特例を適用する方法があります

重要ポイント:ステップ1と2は申告不要で効きます。この2つで基礎控除以下に戻れば、申告そのものが不要になります。順番を守ってください。

遺産分割が10ヶ月以内に終わらない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、分割後に特例を適用して更正の請求ができます。

参照元:国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告

申告が必要ないケースの判定手順は、下記の記事で解説しています。

遺産の数え方|3,000万円に含めるもの・含めないもの

この帯の判定はすべて課税価格の集計にかかっています。何を含めて何を含めないかを正確に押さえてください

含める財産と含めない財産、そして差し引けるものを順に確認します。

含める財産・含めない財産

相続税の対象になる財産と、対象にならない財産を整理します。

区分 該当するもの
含める(本来の相続財産) 預貯金・現金・土地・建物・株式・投資信託・貸付金・自動車・貴金属・書画骨董
含める(見落としやすい) 名義預金・生命保険金の非課税枠超過分・死亡退職金の超過分・生前贈与加算の対象額
含めない(非課税財産) 墓地・墓石・仏壇・仏具・祭具、国や地方公共団体への寄付、心身障害者共済制度の給付金
含めない(相続財産でない) 未支給年金(受け取った遺族の所得)、遺族年金、香典

表の見方:黄色の行が余裕600万円を埋める原因になるものです。「遺産3,000万円」と聞いている金額には含まれていないことが多いため、個別に確認してください。

重要ポイント:未支給年金は相続財産に含めません。受け取った遺族自身の所得になるため、相続税の課税価格には加えません。遺族年金も同じ扱いです。

参照元:国税庁 No.4105 相続税がかかる財産国税庁 No.4108 相続税がかからない財産

債務と葬式費用は差し引ける

借入金や葬式費用は課税価格から差し引けます。これは加算とは逆方向に働くため、余裕を広げる要素になります。

区分 差し引けるもの 差し引けないもの
債務 借入金・未払医療費・未払の税金・未払の公共料金 保証債務・団信で完済される住宅ローン
葬式費用 通夜・葬儀・火葬・埋葬の費用、お布施、遺体の搬送費 香典返し・墓地の購入費・初七日以降の法要費用

表の見方:葬式費用のうち香典返しと法要費用は差し引けません。墓地の購入費も対象外ですが、生前に購入した墓地は非課税財産になります。

重要ポイント:葬儀費用は平均で100万円から200万円かかります。加算で境界を越えた場合でも、この控除で0円に戻ることがあります。領収書を保管してください。

参照元:国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用

自宅がある場合の評価

不動産は時価ではなく相続税評価額で計算します。売買価格のイメージで判定すると実際より高く見積もることになります。

対象 評価の基準 目安
土地 路線価×面積 時価の約80%
建物 固定資産税評価額 時価の約50〜70%
自宅の土地(特例適用後) 路線価×面積×20% 評価が80%下がる

表の見方:土地は路線価で評価するため、時価より低くなります。さらに自宅の土地なら小規模宅地等の特例で80%下がるため、実際の課税価格への影響は小さくなります。

重要ポイント:路線価は国税庁の路線価図で調べられます。自宅が3,000万円の内訳に入っていないと分かった場合は、まず路線価で評価額を確認してください。

計算ロジック:土地の相続税評価額は路線価に面積を掛けて求めます。小規模宅地等の特例を適用すると評価額の80%が減額されるため、残る評価額は20%です。土地800万円なら特例適用後は160万円になります。

集計漏れを防ぐチェックリスト

余裕600万円のこの帯では、1件の漏れが結論を変えます。次の項目を1つずつ確認してください

確認項目

  • □ 「3,000万円」に不動産が含まれているか(預貯金だけの金額ではないか)
  • □ 子・孫名義の口座に被相続人が入金していた資金はないか
  • □ 配偶者名義の預金に被相続人の収入が入っていないか
  • □ 把握していない生命保険はないか(保険証券・通帳の引落し履歴で確認)
  • □ 死亡退職金・弔慰金を受け取っていないか
  • □ 生命保険金と死亡退職金がそれぞれ非課税枠を超えていないか
  • □ 令和6年1月1日以降に贈与を受けていないか
  • □ 相続時精算課税を選択した贈与はないか
  • □ 貸金庫・タンス預金・金地金などの申告漏れやすい財産はないか
  • □ 被相続人が貸していたお金(貸付金)はないか
  • □ 債務と葬式費用の領収書を集めたか(マイナスで差し引ける)

重要ポイント:最初の項目が最も重要です。「遺産3,000万円」が預貯金だけを指していた場合、自宅を加えると簡単に3,600万円を超えます。名寄帳や固定資産税の納税通知書で不動産を確認してください。

最後の項目は加算とは逆方向に働きます。葬儀費用の領収書があれば課税価格を下げられるため、加算があっても基礎控除以下に戻ることがあります。

土地を相続しても相続税がかからないケースは、下記の記事で解説しています。

申告が不要かどうかの判定手順

3,000万円の相続では原則として申告が不要です。ただし「原則」と言えるのは加算がない場合に限られます

自分に申告義務があるかどうかを確かめる手順と、税務署から書類が届いたときの対応を確認します。

判定手順3ステップ

次の順番で確認すれば、申告が必要かどうかを自分で判定できます。

STEP1

加算を含めた課税価格を出す

預貯金・不動産に加えて、名義預金・生命保険金の非課税枠超過分・死亡退職金の超過分・生前贈与加算を足します。債務と葬式費用は差し引きます。

小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減は、この段階では使いません

STEP2

基礎控除と比べる

3,000万円+600万円×法定相続人の数を計算し、STEP1の金額と比べます。

下回っていれば申告は不要です。相続人1人なら3,600万円、2人なら4,200万円が基準になります。

STEP3

超えていれば申告が必要

特例を使えば税額が0円になる場合でも申告は必要です。10ヶ月の期限内に申告書を提出してください。

特例を使わずに税額が出る場合も、同じ期限内に申告と納税を行います。

重要ポイント:判定の分かれ目はSTEP1で「特例を使わない」と決めている点です。特例適用後の金額で基礎控除と比べると、申告が必要なのに不要と誤判定します

参照元:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

「お尋ね」が届いたときの対応

申告が不要な場合でも、税務署から「相続についてのお尋ね」という書類が届くことがあります。これは申告義務があると断定されたものではありません。

【届く理由】

税務署は被相続人の過去の所得や不動産の保有状況を把握しています。一定規模の財産がありそうだと判断された場合に送付されます。

【対応】

財産の内容を記入して返送します。基礎控除以下で申告が不要なら、その旨を記載して提出すれば手続きは終わります。

【この帯で確認すべきこと】

お尋ねが届いたことをきっかけに、名義預金や保険金の超過分がないかを点検してください。税務署は生前の資金移動を把握している場合があります。

3,000万円で相続人が2人以上なら、基礎控除以下である旨を記載して返送すれば足ります。相続人1人の場合は加算の確認をしてから返送してください。

申告不要と判断して間違えたときに起きること

加算を見落として申告しなかった場合、後から指摘を受けることがあります。この帯では税額が小さいため、金銭的な負担も限定的です。

起きること 内容 この帯での規模
本税の納付 本来納めるべき相続税 7万〜40万円程度
無申告加算税 申告しなかったことへの加算 本税の15%=1万〜6万円程度
延滞税 納付が遅れた期間に応じた利息 本税と期間に応じた額
特例が使えなくなる 申告期限を過ぎると小規模宅地等の特例が適用できない 本来0円が課税に変わる

表の見方:加算税や延滞税の金額は数万円にとどまります。この帯で最も影響が大きいのは最後の行です。

重要ポイント:自宅の評価で境界を越えた場合は、期限内の申告が0円の条件になります。小規模宅地等の特例を使えば0円のはずが、申告しなかったことで課税に変わります。

0円でも必要な手続きの全体像や、期限を過ぎたときの詳しい扱いは下記の記事で解説しています。

相続税が0円でも発生する費用と期限

相続税が0円でも、手続きそのものは残ります。相続税とは別に費用がかかり、期限が定められているものもあります

この帯で押さえておくべき費用と期限を確認します。

相続税以外に発生する費用

不動産がある場合、名義変更に登録免許税がかかります。相続税が0円でもこの費用は発生します。

項目 金額 算出の根拠
登録免許税(相続登記) 12万円 固定資産税評価額3,000万円×0.4%
同(評価額1,000万円の場合) 4万円 1,000万円×0.4%
司法書士報酬の目安 10万〜20万円 相場(自分で申請すれば不要)
戸籍謄本・住民票などの取得費 数千円〜1万円程度 通数に応じた実費
税理士報酬 申告不要なら0円 申告する場合は15万〜25万円が目安

表の見方:登録免許税は固定資産税評価額に0.4%を掛けて計算します。相続税評価額ではなく固定資産税評価額を使う点に注意してください。

重要ポイント:相続税が0円でも登録免許税は12万円かかります。この帯では相続税より登記費用のほうが大きくなるため、資金の準備が必要です。

計算ロジック:相続による所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額(固定資産税評価額)の0.4%です。評価額3,000万円なら3,000万円×0.004=12万円になります。

期限のある手続き

相続税の申告が不要でも、期限が定められている手続きがあります。特に相続登記は義務化されました。

4ヶ月

準確定申告

被相続人に事業所得や不動産所得があった場合、亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得を申告します。給与のみで年末調整済みなら不要です。

10ヶ月

相続税の申告(必要な場合のみ)

加算により基礎控除を超えた場合、または特例を使って0円にする場合の期限です。3,000万円で加算がなければこの手続きは不要です

3年

相続登記(2024年4月1日から義務化)

不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記が必要です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科されます

重要ポイント:相続税が0円の家庭では申告という節目がないため、手続きが後回しになりがちです。相続登記だけは期限があると覚えておいてください

預貯金の解約手続きや遺産分割協議書の作り方、専門家をどう選ぶかは下記の記事で詳しく解説しています。

1,000万円・4,000万円との比較|余裕はどう変わるか

3,000万円の位置づけは、前後の金額帯と並べるとはっきりします。同じ「0円」でも余裕の広さがまったく違います

帯ごとに何が論点になるのかを確認します。

帯ごとの余裕額と論点

相続人1人(基礎控除3,600万円)を基準にした余裕額の比較です。

課税価格 相続人1人の余裕 加算670万円で超えるか
1,000万円 2,600万円 超えない(1,670万円)
2,000万円 1,600万円 超えない(2,670万円)
3,000万円 600万円 超える(3,670万円)
3,600万円 0円(境界) 超える

表の見方:1,000万円でも2,000万円でも、生前贈与加算670万円を足しても基礎控除に届きません。3,000万円だけが加算で境界を越えます。

重要ポイント:3,000万円は生前贈与加算だけで課税されうる最初の帯です。それより下の帯では加算を気にする必要がありません。

1,000万円との違い|論点そのものが変わる

1,000万円と3,000万円はどちらも0円ですが、読者が考えるべきことが違います。

比較項目 1,000万円 3,000万円
相続人1人の余裕 2,600万円 600万円
加算で超えるリスク ほぼない ある
主な論点 分け方・手続き・借金の有無 集計の正確さ・加算の点検
不動産があると 分けられない問題が生じる 評価額で境界を越えることがある

表の見方:1,000万円では課税の心配がほぼないため、遺産の分け方や手続きが主題になります。3,000万円では集計の正確さが主題です。

重要ポイント:遺産1,000万円なら加算を点検する必要はありません。分け方と手続きに集中してください。詳しくは下記の記事で解説しています。

4,000万円との違い|加算なしでも課税される

4,000万円になると、加算がなくても相続人1人なら課税されます。境界を越えているためです。

課税価格 相続人1人 相続人2人 相続人3人 その帯の論点
1,000万円 0円 0円 0円 必ず0円(余裕2,600万円)
3,000万円 0円 0円 0円 必ず0円だが余裕600万円
4,000万円 40万円 0円 0円 相続人1人のときだけ課税
5,000万円 160万円 80万円 19万9,800円 相続人の数で0円にも160万円にも

表の見方:相続税の総額です。3,000万円まではどの構成でも0円ですが、4,000万円になると相続人1人の列に税額が現れます。

重要ポイント:3,000万円と4,000万円の間に基礎控除3,600万円という境界があります。加算を含めた集計が3,600万円を超えるかどうかが、この2つの帯を分ける基準です。

計算ロジック:5,000万円・相続人3人は基礎控除4,800万円を引いた課税遺産総額200万円を法定相続分1/3ずつに分けます。1人あたり66万6,000円(千円未満切捨て)に税率10%を掛けて6万6,600円、3人で19万9,800円です。

相続人が増えるほど基礎控除が上がるうえ、課税遺産総額を人数で分けてから税率を掛けるため、同じ遺産額でも税額は下がります。

遺産5,000万円のときの税額と0円になる境界は、下記の記事で解説しています。

3,000万円の相続の相談は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

3,000万円の相続で税理士に相談する目的は、税額を減らすことではありません。加算を洗い出して、本当に基礎控除の範囲内かを確かめることです

この帯は原則0円なので、依頼が不要なケースがほとんどです。まず判定だけを相談し、必要と分かってから依頼を決めるのが合理的です。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

この帯で税理士の実績が問われるのは、税額の計算ではなく課税価格に何を含めるかの判断です。名義預金や生前贈与加算の判定は経験によって差が出ます。

この帯で実績が問われる場面

  • 名義預金の洗い出し(余裕600万円では判定が結論を左右する)
  • 生前贈与加算の対象期間の判定(3年・移行期・7年の3区分)
  • 贈与が成立しているかの確認(不成立なら期間の制限なく全額が課税価格に入る)
  • 生命保険金・死亡退職金の非課税枠の計算
  • 申告が必要か不要かの判定(0円でも申告が必要なケースの見極め)
  • 過大申告の回避(本来0円なのに申告・納税してしまう事態を防ぐ)

実際の金額差で見ると次のようになります。預貯金3,000万円と自宅の土地800万円があり、相続人が子1人のケースです。

対応 小規模宅地等の特例 課税価格 納税額
自宅を含めずに申告不要と判断 3,800万円(実際) 20万円+加算税
特例を適用して期限内に申告 適用(土地800万円→160万円) 3,160万円 0円

表の見方:自宅を集計に入れていなかった場合、申告しないまま期限を過ぎると特例が使えず20万円が発生します。期限内に申告して特例を適用すれば0円です。

重要ポイント:この帯では「税理士に頼めば大きく得をする」という構図にはなりません。だからこそ最初に確認すべきは「そもそも申告が必要か」です。不要なら依頼も不要です。

複数の税理士から見積りを取るメリット

見積りを比較するときは金額だけを見るのではなく、次の3つで実務力を判定できます。

判定ポイント1:「申告が必要かどうか」を先に判定してくれるか。A税理士は財産の概要を聞いた時点で「基礎控除以下なので申告不要です」と伝え、B税理士は判定せずに申告一式の見積りを出しました。→ A税理士の方が、この規模の案件の経験が豊富と判定できます。

判定ポイント2:子や孫名義の口座と生前贈与を確認してくるか。A税理士は「お子さん名義の口座はありますか」「贈与はいつから続けていましたか」を最初に質問し、B税理士は被相続人名義の財産だけを聞きました。→ A税理士の方が、加算の判定の実務経験が豊富と判定できます。

判定ポイント3:自宅の評価と特例の要件を確認してくるか。A税理士は「同居しているか」「相続人に持ち家があるか」を質問し、B税理士は土地の面積だけを聞きました。→ A税理士の方が、特例の適用判定の実務経験が豊富と判定できます。

報酬の目安は申告が不要なら0円、申告する場合は15万〜25万円です。この帯では判定だけで終わることが多いため、初回相談の範囲で解決する場合もあります。

相談しないまま進めるリスク

自分で判定して進めた場合に起きうることを整理します。この帯では税額そのものより判定の誤りが問題になります。

相談しないまま進めた場合のリスク

  • 名義預金の見落としで基礎控除を超えていたことに気づかず、無申告になる
  • 生前贈与加算の対象期間を3年と思い込み、実際は7年分だった
  • 自宅が集計に入っておらず、小規模宅地等の特例を使えないまま期限を過ぎる
  • 贈与が成立しておらず、7年より前の分まで課税価格に入っていた
  • 本来0円なのに不安から申告・納税してしまう(過大申告に気づかない)

これらはいずれも申告期限までに判定を済ませていれば避けられます。判定だけなら初回相談の範囲で済むことが多いため、まず相談してください。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

複数の税理士に同時に相談する場合の流れです。

STEP1

相続の概要を整理する

被相続人の資産内容(預貯金・不動産・保険)、資産額の概算、相続人の構成と人数、年齢、遺言の有無を整理します。

この帯では子や孫名義の口座と、生前贈与の有無を必ず含めてください

STEP2

一括見積り・相談サービスに依頼する

「相続税申告が必要かどうかの判定」「名義預金・生前贈与加算の確認」「小規模宅地等の特例の適用判定」など希望内容を明記し、相続税の対応実績がある税理士3〜5社への同時打診を依頼します。

不動産がある場合は所在地と広さを記載してください。「財産の種類」「相続人の人数」を正確に伝えると見積りの精度が上がります。フォーム記入は5分程度です。

STEP3

見積りと初回相談を受ける

各税理士から「提案内容」「試算相続税額」「報酬額」が記載された見積りが届きます。気になる事務所と初回相談を行ってください。

この帯では「申告不要」と判定されて依頼そのものが不要になることが多くあります

STEP4

税理士を選定・正式依頼する

「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で最適な事務所を選びます。

申告が必要と判明した場合は、相続開始から7ヶ月以内に決定してください。申告期限10ヶ月に対して作業期間を確保できます。

重要ポイント:この帯ではSTEP3で終わることが最も多くなります。加算を含めても基礎控除の範囲内であれば、申告そのものが不要だからです。

税理士の無料相談を含む7つの窓口の使い分けは、下記の記事で解説しています。

税理士費用の相場と費用を抑える方法は、下記の記事で解説しています。

よくある質問

Q1. 遺産3,000万円の相続税はいくらですか?

0円です。相続税の基礎控除は最低でも3,600万円あり、遺産3,000万円を上回るためです。

相続人が1人しかいない場合でも課税されません。配偶者だけ、子1人だけ、兄弟姉妹1人だけといったどのパターンでも課税遺産総額が発生しないため、2割加算や配偶者の税額軽減を検討する必要もありません。

申告も不要です。ただし課税価格が本当に3,000万円で収まっているかは別に確認してください。

Q2. 3,000万円以下なら絶対に申告不要ですか?

「遺産3,000万円」の中身によって変わります。相続税の申告義務は課税価格と基礎控除を比べて判定するため、集計の対象が正確かどうかが結論を決めます。

預貯金3,000万円のほかに、名義預金・生命保険金の非課税枠を超える部分・死亡退職金の超過分・生前贈与加算があれば課税価格は増えます。相続人が1人だと余裕は600万円しかないため、これらで基礎控除3,600万円を超えることがあります。

逆に借入金や葬式費用は差し引けます。まず加算と控除を反映した課税価格を出してから判定してください。

Q3. 暦年贈与を続けていた場合はどうなりますか?

贈与税は0円でも、相続税では課税価格に加算されます。国税庁は基礎控除110万円以下の贈与財産も加算すると明記しています。

加算の対象期間は3段階で変わります。令和8年12月31日までの相続は3年以内、令和9年から12年までは令和6年1月1日から死亡の日まで、令和13年以降は7年以内です。

毎年110万円を贈与していた場合、7年分になると加算額は670万円です。直近3年分330万円は全額、3年超の440万円から100万円を控除した340万円を足した金額です。

課税価格は3,670万円となり、相続人1人なら7万円の相続税が発生します。相続人2人なら基礎控除4,200万円なので0円です。

Q4. 相続税が0円なら何もしなくていいですか?

相続税の申告は不要ですが、他の手続きは残ります。相続税とは別に費用も発生します。

不動産がある場合、相続登記が2024年4月1日から義務化されました。取得を知った日から3年以内に登記が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科されます。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%で、評価額3,000万円なら12万円です。

被相続人に事業所得や不動産所得があった場合は、4ヶ月以内に準確定申告が必要です。預貯金の解約や遺産分割協議書の作成も進めてください。

Q5. 3,000万円の相続で税理士に依頼すべきですか?

加算がなく相続人が2人以上なら、依頼は不要です。課税価格が基礎控除を大きく下回るため、申告そのものが発生しません。

一方、相続人が1人で、子や孫名義の口座がある、生前贈与を続けていた、自宅が集計に入っていないといった場合は、判定だけでも相談する価値があります。境界までの余裕が600万円しかないため、判断を誤ると無申告になります。

報酬は申告が不要なら0円、申告する場合は15万〜25万円が目安です。まず「申告が必要かどうか」だけを相談し、必要と分かってから依頼を決めるのが合理的です。

まとめ

3,000万円の相続税は、家族構成にかかわらず0円です。基礎控除の最低額3,600万円が遺産を上回るため、相続人が1人でも課税されず、申告も必要ありません。

ただし基礎控除までの余裕は相続人1人なら600万円しかありません。この帯で確認すべきなのは税額ではなく、集計した金額が本当に3,000万円で収まっているかどうかです。

この記事で扱った内容を整理すると次のとおりです。

  • 3,000万円は13の家族構成すべてで0円。課税遺産総額が発生しないため2割加算も配偶者の税額軽減も検討不要
  • 基礎控除までの余裕は相続人1人で600万円、2人で1,200万円、3人で1,800万円
  • 余裕600万円を埋める加算は4つ。生命保険の非課税枠の超過分・名義預金・自宅の評価の計上漏れ・生前贈与加算
  • 保険金1,100万円、名義預金600万円、自宅の評価600万円のいずれかで境界に達する
  • 暦年贈与を続けていると加算期間の延長により2030年から670万円が加算され、相続人1人なら7万円が発生する
  • 贈与税は毎年0円でも相続税では加算される。国税庁は110万円以下の贈与も加算対象と明記している
  • 境界を70万円超えても税額は7万円。超過額に10%の税率がかかるだけで急激には増えない
  • 自宅の評価で超えた場合は小規模宅地等の特例で0円に戻せるが、その場合は期限内の申告が条件になる
  • 相続税が0円でも相続登記は3年以内が義務。登録免許税は評価額3,000万円で12万円かかる

今すぐ取るべき行動

  • 法定相続人が何人いるかを数え、基礎控除までの余裕額を確認する(1人なら600万円)
  • 子や孫の名義の口座に被相続人の資金が入っていないかを確認する
  • 生命保険金・死亡退職金が非課税枠(500万円×相続人の数)を超えていないかを確認する
  • 自宅が「3,000万円」の内訳に含まれているかを確認し、含まれていなければ路線価で評価する
  • 生前贈与を受けていた場合は、いつから続けていたかを通帳で確認する
  • 不動産がある場合は相続登記の期限(3年以内)と登録免許税の準備をする
  • 加算を含めた課税価格が基礎控除を超えそうな場合は、相続税の対応実績がある税理士に判定だけを相談する

※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。相続税法の改正により内容が変更される場合があります。最新の制度については国税庁のウェブサイトまたは税理士にご確認ください。

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