


名義預金は、亡くなった人の財産として相続税の対象になります。口座の名義が家族でも、お金を出したのが被相続人で、贈与が成立していなければ遺産に含めて申告します。
判断は2段階です。まずお金の出どころ(原資)を見て、被相続人のお金であれば、次に贈与が成立していたかを確かめます。
名義預金は税務調査で指摘されやすい財産です。令和6事務年度に見つかった申告漏れ財産のうち、現金・預貯金等は29.1%を占めました。
「何年も前に入れたお金だから時効」という考えは通りません。贈与が成立していない以上、贈与税の時効を数える起点がないためです。
申告から漏れると、増えた相続税に加算税と延滞税が上乗せされます。相続人の顔ぶれによって、実際に納める額は大きく変わります。
一方、国税不服審判所の公表事例には、原資が被相続人でも贈与が成立していたとして、納税者の主張が認められた例もあります。
この記事では、名義預金が相続税の対象になる理由と判断基準、いくら増えるか、時効、申告の書き方、漏れたときの負担、名義預金にならない方法までを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

名義預金は相続税の対象になります。相続税の課税対象は、財産の名義ではなく実質的な所有者で判定するためです。口座が家族の名義でも、被相続人のお金であれば被相続人の財産です。この考え方を押さえておかないと、なぜ自分の口座に相続税がかかるのか納得できません。
名義預金は、口座の名義人と実際の所有者が一致していない預金を指します。名義を借りているだけの状態です。次の3つが典型例です。
【パターン1】親が子や孫の名義で貯金している
子や孫の将来のために、親や祖父母が名義だけを借りて積み立てているケースです。子ども本人が口座の存在を知らないことが多くあります。
【パターン2】夫の収入を妻名義の口座に貯めている
専業主婦が生活費をやりくりして貯めた、いわゆるへそくりです。名義は妻でも原資は夫の収入にあたります。
【パターン3】通帳・印鑑を被相続人が管理していた
名義人が成人していても、通帳やカード、届出印を被相続人が保管していれば名義預金と判定される可能性があります。
令和6事務年度の調査で見つかった申告漏れ財産のうち、現金・預貯金等は29.1%でした。土地(12.3%)や有価証券(13.6%)を上回ります。税務署は被相続人だけでなく、家族の口座も照会できる権限を持っています。
名義預金は「見つかりにくい財産」ではありません。むしろ調査で最初に確認される項目です。被相続人と家族の口座の入出金をさかのぼって突き合わせるため、大きな金額の移動は把握されます。
自宅で保管していた現金(タンス預金)に相続税がかかるかと、隠して見つかった場合の負担は、下記の記事で解説しています。

税務署がどのルートで財産を把握するかは、下記の記事で解説しています。


名義預金かどうかは、原資・管理・認識・使用の4つの事実から判断されます。ただし4つを同じ重さで数えるわけではありません。まず原資を見て、被相続人のお金なら次に贈与が成立していたかを見る、という2段階で考えると判断がぶれません。
国税不服審判所の公表事例を並べると、判断は次の流れで進んでいます。自分の口座がどこで止まるかを確認してください。
| 段階 | 確かめること | 結論 |
|---|---|---|
| 1. 原資 | 入金の元になったお金は誰のものか | 名義人自身のお金なら名義人の財産 |
| 2. 贈与の成立 | 被相続人のお金なら、あげる・もらうの合意と引き渡しがあったか | 成立していれば名義人の財産 |
| どちらも示せない | 原資が被相続人で、贈与の証拠もない | 名義預金として相続税の対象 |
| 誰のお金か分からない | 原資も管理もはっきりしない | 被相続人の財産とは認定されにくい |
表の見方:上から順に確かめます。1で名義人のお金だと示せれば2は不要です。1で被相続人のお金なら、2の贈与の成立が分かれ目になります。
重要ポイント:原資が被相続人でも、贈与が成立していれば名義預金にはなりません。令和3年9月17日の裁決では、父が毎年入金した未成年の子の口座が、贈与証と親権者の受諾を理由に子の財産と認められました。
参照元:預貯金 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所
4つの事実のどれか1つで決まるわけではありません。総合判断ですが、出発点は原資です。原資が被相続人なら、管理や使用の事実は「贈与が成立していたか」を確かめる材料になります。
誰のお金か分からない場合は、名義人に有利に働くことがあります。相続財産だと示すのは税務署の側で、平成25年12月10日の裁決では具体的な立証がないとして課税がすべて取り消されました。
重要ポイント:「通帳を自分で持っていたから大丈夫」とは言えません。原資が被相続人で贈与の証拠がなければ、管理していても名義預金とされます(平成19年10月4日裁決)。
基準ごとに、何を見れば判断できるかを整理します。自分のケースを当てはめながら確認してください。
| 基準 | 見るところ | 名義預金になりやすい状態 | 回避できている状態 |
|---|---|---|---|
| 原資 | 入金の元になったお金が誰の収入か | 被相続人の給与・年金・売却代金から入金されている | 名義人の給与・事業収入・婚姻前の貯蓄から入金されている |
| 管理 | 通帳・カード・届出印の保管者 | 被相続人が自宅の金庫などで保管していた | 名義人が自分で保管し、暗証番号も知っている |
| 認識 | 名義人が口座の存在を知っていたか | 相続が発生してから初めて口座を知った | 入金のたびに知らされ、残高も把握していた |
| 使用 | 名義人が自由に使えたか | 引き出しを禁じられ、一度も使っていない | 実際に引き出したり引き落としに使っていた |
表の見方:右の2列を比べてください。最初に見るのは原資の行です。原資が被相続人なら、残りの3行は贈与が成立していたかの判断材料になります。
重要ポイント:4つのうち原資だけは後から変えられません。管理・認識・使用は今日から改められますが、過去の入金の出どころは動かせません。だから判断の入口になります。
判断の入口が原資なので、集めるべき資料も決まります。名義人自身のお金だと示せる資料を優先してください。
| 示したいこと | 集める資料 | 入手先 |
|---|---|---|
| 名義人自身の収入から貯めた | 給与明細・源泉徴収票・確定申告書の控え | 勤務先・税務署(保存期間に注意) |
| 婚姻前から持っていた財産 | 婚姻前の日付の残高証明書・古い通帳 | 金融機関(10年程度は照会可能) |
| 名義人が口座を管理していた | ATM の利用記録・名義人の届出印・キャッシュカード | 金融機関・自宅の保管状況 |
| 贈与が成立していた | 受贈者の署名がある贈与契約書・贈与税の申告書控え | 自宅・税務署 |
| 名義人が実際に使っていた | 引き落としの記録・振込の履歴・カード決済の明細 | 金融機関・カード会社 |
| 相続財産ではないと判断した根拠 | 税理士が作成する書面添付の意見書 | 依頼した税理士 |
表の見方:左列が主張したい内容、中列がそれを裏づける資料です。1つの資料で足りることは少なく、複数を組み合わせて示します。
重要ポイント:金融機関の取引履歴はおおむね10年で照会できなくなります。20年前の入金について原資を示したいなら、通帳そのものを保管しておく必要があります。古い通帳は捨てないでください。
申告前、または申告後に不安がある場合は、次の項目を確認してください。1つでも当てはまれば名義預金の可能性があります。
重要ポイント:最も見落とされやすいのは専業主婦の妻名義預金です。夫婦のお金という感覚で管理されているため、名義預金だと認識されていないことが多くあります。

名義預金を遺産に足すと、相続税の申告が必要になったり、税額が上がったりします。同じ名義預金でも、遺産の額と相続人の顔ぶれで増える額が変わります。まず相続税がかかるかを判定し、次に増える額を確認してください。
相続税がかかるかどうかは、名義預金を含めた遺産の総額で判定します。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
| 法定相続人の数 | 基礎控除 | この額を超えると申告が必要 |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 名義預金を含めた遺産が3,600万円超 |
| 2人 | 4,200万円 | 同4,200万円超 |
| 3人 | 4,800万円 | 同4,800万円超 |
| 4人 | 5,400万円 | 同5,400万円超 |
表の見方:左の相続人の数に対応する基礎控除を、名義預金を含めた遺産の額と比べます。超えていれば相続税の申告が必要です。
重要ポイント:配偶者と子2人で遺産4,500万円なら基礎控除以下ですが、名義預金500万円が加わると5,000万円になり、相続税20万円がかかって申告が必要になります。
計算ロジック:基礎控除4,800万円(3,000万円+600万円×3人)を超える200万円を法定相続分で分け、配偶者100万円×10%+子50万円×10%×2人=20万円です(相続税の総額)。
申告した遺産額と名義預金の額の組み合わせで、相続税の総額がいくら増えるかを示します。相続人は配偶者と子2人です。
| 申告した遺産額 | 名義預金500万円 | 1,000万円 | 2,000万円 | 3,000万円 | 5,000万円 |
|---|---|---|---|---|---|
| 6,000万円(税額120万円) | +50万円 | +105万円 | +230万円 | +360万円 | +665万円 |
| 8,000万円(税額350万円) | +62万円 | +130万円 | +280万円 | +435万円 | +785万円 |
| 1億円(税額630万円) | +75万円 | +155万円 | +330万円 | +505万円 | +865万円 |
| 1億5,000万円(税額1,495万円) | +112万円 | +225万円 | +455万円 | +705万円 | +1,205万円 |
| 2億円(税額2,700万円) | +125万円 | +250万円 | +500万円 | +750万円 | +1,270万円 |
表の見方:左端の行が申告済みの遺産額、上端の列が名義預金の額です。交わるところが増える相続税の総額です(配偶者の税額軽減を引く前)。
重要ポイント:同じ名義預金1,000万円でも、遺産6,000万円なら105万円、2億円なら250万円と2.4倍の差が出ます。遺産額が大きいほど適用税率が高いためです。
計算ロジック:名義預金を足した遺産から基礎控除4,800万円を引き、法定相続分(配偶者2分の1・子各4分の1)で分けて速算表を当て、合計した総額の差を出しています。
早見表は相続税の総額です。配偶者がいる場合は、配偶者の税額軽減で配偶者の納税額が0円になることが多く、実際に納める増加額は総額の増加より小さくなります。遺産8,000万円で比べます。
| 相続人 | 名義預金1,000万円:総額の増加 | 1,000万円:納める額の増加 | 3,000万円:総額の増加 | 3,000万円:納める額の増加 |
|---|---|---|---|---|
| 子2人 | 150万円 | 150万円 | 490万円 | 490万円 |
| 配偶者と子2人 | 130万円 | 65万円 | 435万円 | 217.5万円 |
表の見方:左の2列が名義預金1,000万円、右の2列が3,000万円のケースです。配偶者がいると、総額の増加の半分ほどが納める額の増加になります。
重要ポイント:子だけが相続人の場合は、総額の増加がそのまま納める額になります。配偶者が先に亡くなっている二次相続では負担が重くなるため、親子間の名義預金ほど注意が必要です。
計算ロジック:配偶者と子2人は、名義預金を含めて法定相続分どおりに分け、配偶者は税額軽減で0円としました。子は各4分の1の税額を納めます。子2人は各2分の1です。

「贈与してから何年も経っているから大丈夫」という考えは通りません。名義預金そのものに時効はありません。ただし相続税の申告そのものには期限があるため、2つを分けて押さえてください。
贈与税と相続税にはそれぞれ時効がありますが、名義預金には当てはまりません。
| 対象 | 時効 | 起算点 | 名義預金への適用 |
|---|---|---|---|
| 贈与税 | 6年 | 申告期限の翌日 | 適用されない |
| 贈与税(偽りその他不正の行為) | 7年 | 同 | 適用されない |
| 相続税 | 5年 | 申告期限の翌日 | 相続開始時の残高が課税対象。この期間を過ぎると税務署は税額を直せない |
| 相続税(偽りその他不正の行為) | 7年 | 同 | 同 |
| 名義預金そのもの | なし | — | 何十年前の入金でも相続財産になる |
表の見方:贈与税の時効は「贈与があった」場合に働くものです。名義預金は贈与が成立していないため、時効を数える起点そのものが存在しません。
重要ポイント:「贈与から6年たった」という主張は成り立ちません。名義預金は被相続人の預金を家族名義で預かっていた状態と認定されるため、相続開始時点の財産として課税されます。
時効が働かないのは、贈与がなかったと判断されるためです。贈与が成立していなければ、贈与税を課す前提がありません。
その結果、お金は一貫して被相続人のものだったことになります。20年前の入金であっても、相続開始の時点で被相続人の財産として口座に残っていれば、相続税の課税対象です。
古い入金だからと安心せず、原資と管理の実態を確認してください。時間の経過は解決になりません。
名義預金に時効がないのは、入金した時点を起点にしないという意味です。相続が起きた後の相続税には、税務署が税額を直せる期間(除斥期間)があります。
| 区分 | 税務署が税額を直せる期間 | 起算点 |
|---|---|---|
| 通常の申告漏れ | 5年 | 相続税の申告期限の翌日 |
| 偽りその他不正の行為がある | 7年 | 同 |
重要ポイント:期間が過ぎるのを待つ方法は勧められません。隠したまま待てば不正とされて7年に延び、重加算税の対象にもなります。相続税の調査は申告から1〜2年後に行われることが多いため、気づいた時点で修正申告してください。
被相続人が生前に通帳や印鑑を名義人に渡し、自由に使える状態にした場合は扱いが変わります。書面のない贈与は「渡した時」に成立するため、その年の贈与として贈与税の時効を数えます。
| 状況 | 贈与の時期 | 贈与税の時効の起点 |
|---|---|---|
| 贈与契約書を作って入金した | 契約書で効力が生じた時 | その年の翌年3月15日の翌日 |
| 契約書はないが、通帳を渡して自由に使わせた | 通帳を渡した時 | 渡した年の翌年3月15日の翌日 |
| 通帳も印鑑も被相続人が持ったまま | 贈与は成立していない | 起点がない(相続税の対象) |
表の見方:上の2行は贈与が成立しており、贈与税の時効を数えられます。下の行は名義預金のままです。
重要ポイント:通帳を渡した時に残高が110万円を超えていれば、その年の贈与税の申告が必要です。入金した各年の110万円以下の贈与とは扱われません。
参照元:国税庁 相続税法基本通達1の3・1の4共-8(財産取得の時期の原則)

名義預金を相続財産に含めると決めたら、評価額を出して申告書と遺産分割協議書に載せます。名義人の欄だけでなく、家族名義であることが分かるように書くのが実務のポイントです。手順を順に確認してください。
名義預金の評価は、被相続人名義の預金と同じです。相続開始日(亡くなった日)の残高に、その日に解約したら受け取れる利息を足します。
| 預金の種類 | 評価額 | 注意点 |
|---|---|---|
| 定期預金・定額貯金 | 残高+既経過利息(源泉徴収される税額を差し引いた額) | 利息を必ず計算する |
| 普通預金 | 原則として残高のみ | 既経過利息が少額なら残高で評価できる |
表の見方:定期預金は利息を足し、普通預金は残高だけで評価できるのが原則です。金融機関に残高証明書と既経過利息の計算を依頼します。
重要ポイント:評価の基準日は亡くなった日です。亡くなった後に名義人が引き出していても、その日の残高で評価します。
名義預金は、相続税の申告書の第11表(相続税がかかる財産の明細書)に、ほかの預金と同じ「現金預貯金等」として載せます。
| 欄 | 書き方の例 |
|---|---|
| 種類 | 現金預貯金等 |
| 細目 | 預貯金 |
| 利用区分・銘柄等 | 普通預金(妻〇〇名義) |
| 所在場所等 | 〇〇銀行〇〇支店 |
| 価額 | 相続開始日の残高+既経過利息 |
| 取得した人の氏名 | 遺産分割で取得する人 |
重要ポイント:名義人が誰かを書き添えておくと、名義預金を申告に含めたことが税務署に伝わります。申告書は国税庁のその年分の様式を使ってください。
名義預金も遺産分割の対象です。協議書には、口座の名義人を明記して誰が取得するかを書きます。
名義人以外の相続人が取得するときは特に記載を正確にしてください。金融機関は協議書の記載をもとに払い戻しや名義変更に応じます。
申告の前に、家族名義の口座をもれなく把握します。あとから見つかると修正申告になり、加算税と延滞税がかかります。
被相続人の通帳から出金をたどる
被相続人の口座から出た大きな金額の行き先を確認します。家族名義の口座への振込があれば、名義預金の候補です。過去10年分をさかのぼってください。
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相続人全員の口座を確認する
配偶者・子・孫の口座について、収入に見合わない残高がないかを見ます。専業主婦の口座に数千万円ある場合は、原資の説明が必要になります。
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忘れられた口座を探す
子どもの出生時に作った口座や、進学祝いを入れた口座が残っていることがあります。被相続人の自宅にある通帳・印鑑・金融機関の郵便物を確認してください。
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候補ごとに原資と管理の実態を整理する
口座ごとに、原資が誰のものか・誰が管理していたかを一覧にします。この一覧が税理士との相談で最も役に立ちます。
申告が必要かどうかの判定は、名義預金を含めた総額で行います。下記の記事で判定手順を確認できます。

名義預金が加わると、税額だけでなく遺産分割にも影響します。名義人が「自分のお金」と思っていた預金が、相続財産に組み込まれるためです。
【影響1】分割協議のやり直しが必要になることがある
すでに遺産分割協議書を作っていた場合、名義預金の分だけ財産が増えます。分け方を決め直す必要が生じ、相続人の合意を再度得なければなりません。
【影響2】名義人が「返したくない」と主張して争いになる
長年自分の口座だと思っていた預金を相続財産として差し出すことに、名義人が納得しないケースがあります。とくに他の相続人との関係が良くない場合に起きやすくなります。
【影響3】相続人ごとの納税額が変わる
相続税の総額が増えるため、名義預金を取得しない相続人の納税額も上がります。自分は何も受け取っていないのに負担が増えることに、不満が生じることがあります。
重要ポイント:名義預金は分割協議を始める前に洗い出してください。協議がまとまってから判明すると、税金の問題が家族間の争いに発展します。
名義預金が妻名義だった場合、その預金を妻が取得する形で分割すれば、配偶者の税額軽減が使えます。1億6,000万円か法定相続分のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。
ただし配偶者に多く相続させると、次にその配偶者が亡くなったときの相続で負担が増えます。一次相続と二次相続の合計で判断してください。
ただし隠ぺいや仮装をしていた財産には、配偶者の税額軽減を使えません。名義預金を意図的に申告から外していた場合は、配偶者が取得しても軽減の対象外です。
相続税の総額そのものは分け方では変わりません。変わるのは各人の納税額の配分と、軽減の適用による最終的な負担です。計算の仕組みは下記の記事で解説しています。


申告の後に名義預金が見つかると、増えた相続税に加算税と延滞税が上乗せされます。税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税は0円です。負担の総額と動き方を確認してください。
遺産8,000万円を申告済みで、申告期限の2年後に名義預金が見つかった場合の負担です。相続人が子2人のケースと、配偶者と子2人のケースを並べます。
| 相続人 | 名義預金 | 増える相続税 | 自主的に修正申告 | 調査で指摘 | 隠ぺい・仮装と認定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 子2人 | 1,000万円 | 150万円 | 154.2万円 | 169.2万円 | 210.9万円 |
| 子2人 | 3,000万円 | 490万円 | 503.7万円 | 553.7万円 | 688.9万円 |
| 配偶者と子2人 | 1,000万円 | 65万円 | 66.8万円 | 73.2万円 | 128.2万円 |
| 配偶者と子2人 | 3,000万円 | 217.5万円 | 223.5万円 | 247.1万円 | 455.7万円 |
表の見方:右の3列が最終的な負担です。「増える相続税」は実際に納める額の増加で、配偶者は税額軽減で0円としています。
重要ポイント:子2人・名義預金1,000万円なら、自主的に修正すれば154.2万円、調査で指摘されると169.2万円です。隠ぺい・仮装と認定されると、配偶者の税額軽減も使えなくなり負担が跳ね上がります。
計算ロジック:過少申告加算税は各人の増えた税額の10%(期限内の税額と50万円の多い方を超える部分は15%)。重加算税は35%。延滞税は令和8年の年2.8%で、通常は1年分、隠ぺい・仮装なら2年分です。
上乗せされる税の種類と率を整理します。名義預金は「うっかり漏れ」と「意図的な隠ぺい」で扱いが大きく変わります。
| 種類 | 率 | かかる場面 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 0% | 事前通知を受ける前に自主的に修正申告した |
| 過少申告加算税 | 5%(一部10%) | 事前通知を受けた後、調査を予知する前に修正申告した |
| 過少申告加算税 | 10%(一部15%) | 調査で指摘されて修正申告した・更正された |
| 無申告加算税 | 5%〜30% | 申告そのものをしていなかった(自主的な期限後申告なら5%、調査後は15%〜30%) |
| 重加算税 | 35%(無申告なら40%) | 隠ぺい・仮装があった |
| 延滞税 | 年2.8%(令和8年) | 納期限(修正申告なら提出日)の翌日から2か月まで |
| 延滞税 | 年9.1%(令和8年) | 納期限の翌日から2か月を過ぎた後 |
表の見方:カッコ内の「一部」は、増えた税額のうち「期限内に申告した税額と50万円の多い方」を超える部分です。相続人ごとに計算します。
重要ポイント:修正申告は提出した日が納期限なので、提出と同時に納めれば延滞税は低い年2.8%で済みます。申告期限から1年を超えた期間は延滞税の計算から外れます(隠ぺい・仮装の場合を除く)。
参照元:国税庁 延滞税の計算方法
参照元:国税庁 相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)
申告漏れのペナルティ全般と、気づいたときの対処法は下記の記事で解説しています。

同じ修正申告でも、いつ動いたかで加算税が変わります。
| タイミング | 過少申告加算税 | 延滞税 |
|---|---|---|
| 税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告 | 0%(課されない) | かかる |
| 事前通知を受けた後、更正を予知する前に修正申告 | 5%(一部10%) | かかる |
| 調査で指摘されてから修正申告・更正処分 | 10%(一部15%) | かかる |
| 隠ぺい・仮装があったと認定 | 重加算税35% | かかる |
重要ポイント:子2人・名義預金1,000万円のケースでは、自主申告なら154.2万円、調査後なら169.2万円、隠ぺい・仮装なら210.9万円です。気づいた時点で動けば15万円の差が生まれます。
名義預金に気づいてから修正申告を終えるまでの流れです。税務署が税額を直せる期間(原則5年)のうちに、早く動くほど負担は軽くなります。
名義預金の額と原資を確定させる
対象の口座の残高を相続開始日時点で確認します。あわせて入金の履歴をたどり、原資が被相続人のものかを整理します。通帳の写しや取引明細を集めてください。
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ほかの相続人と共有する
名義預金が加わると各人の税額が変わります。遺産分割の内容によっては、あらためて協議が必要になることもあります。先に共有しておくとトラブルを避けられます。
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修正申告書を作成する
当初申告に名義預金を加えて課税価格を計算し直します。第1表・第11表などを作成し、変更後の税額を出します。相続人全員の税額が変わる点に注意してください。
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提出と同時に納付する
被相続人の住所地を管轄する税務署へ提出します。提出した日が納期限になるため、同時に納付してください。遅れると延滞税が増えます。
重要ポイント:納めすぎていた場合は修正申告ではなく更正の請求になります。更正の請求は申告期限から5年以内が期限です。どちらを選ぶかで手続きも期限も変わります。
修正申告と更正の請求の選び方は、下記の記事で判定フローつきで解説しています。


名義預金は相続税の対象ですが、状況によっては贈与税がかかることもあります。分かれ目は「贈与が成立したかどうか」です。名義人が使ってしまった場合の扱いも整理します。
同じ口座でも、状況によってかかる税金が変わります。次の整理で確認してください。
| 状況 | かかる税金 | 理由 |
|---|---|---|
| 贈与が成立していない(名義預金のまま) | 相続税 | 被相続人の財産として課税される |
| 被相続人の生前に名義人が自由に使った | 贈与税 | その時点で贈与が成立したと判断されうる |
| 被相続人の死後に名義人が使った | 相続税 | 相続財産を使ったことになる |
| 贈与契約書があり本人が管理していた | 贈与税(申告済みなら追加なし) | 贈与が成立している |
重要ポイント:生前に名義人が自由に使った事実は、贈与が成立していた証拠にもなります。ただし年間110万円を超えていれば贈与税の申告が必要です。使った時期と金額を確認してください。
名義預金を使ってしまってから相続が発生した場合、どう扱うかは使った時期で変わります。
【被相続人の生前に使った場合】
使った時点で贈与が成立したと判断される可能性があります。年間110万円を超えていれば贈与税の申告が必要です。入金のたびに生活費や教育費に充てていた分は非課税ですが、貯めた残高を後から使った分は対象外です。
【被相続人の死後に使った場合】
相続財産を使ったことになるため、相続税の課税対象です。他の相続人との遺産分割にも影響するため、使った金額を明らかにしておく必要があります。
【残高が減っていても課税される】
相続開始時点の残高が課税対象です。生前に使った分は、贈与または被相続人自身の支出として別に整理します。
重要ポイント:生前に使って贈与が成立した分も、その名義人が相続で財産を受け取る場合、亡くなる前3年以内(2024年以降の贈与は段階的に7年へ延長)の贈与は相続税の計算に足し戻されます。
参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
生前贈与が相続税に足し戻される期間は、下記の記事で判定表とともに解説しています。


同じ名義預金でも、夫婦間と親子間では争われる中身が違います。親子間は「贈与が成立したか」、夫婦間は「原資が誰の収入か」が問題になります。この違いを知らないと、対策の方向を間違えます。
法律上の出発点から救済措置まで、両者を並べて確認してください。
| 論点 | 夫婦間 | 親子間 |
|---|---|---|
| 法律上の出発点 | 民法762条1項により、婚姻中に自己の名で得た財産は特有財産。夫の収入で貯めた妻名義預金はもともと夫の財産 | 民法549条により、贈与は「あげる・もらう」の合意で成立。合意がなければ親の財産のまま |
| 争点の中身 | 原資が夫の収入か、妻自身の収入・婚姻前の財産か | 贈与が成立していたか(受諾の有無・自由に使えたか) |
| 「内助の功」の扱い | 考慮されない。家計をやりくりして貯めても夫の財産 | — |
| どちらのものか不明な場合 | 民法762条2項により、共有と推定される | 原資の出どころで判定 |
| 納税者が勝てる典型 | 妻に自分の収入や婚姻前の貯蓄がある | 贈与契約書に受贈者の署名があり、本人が自由に使えた |
| 納税者が負ける典型 | 専業主婦で原資がすべて夫の収入 | 通帳・印鑑を親が管理し、子が口座の存在を知らない |
| 使える特例 | 贈与税の配偶者控除2,000万円は居住用不動産かその購入資金のみ。預金として持つだけでは使えない | 暦年課税110万円/相続時精算課税2,500万円 |
| 相続時の救済 | 配偶者の税額軽減(1億6,000万円か法定相続分の多い方)が使える。隠ぺい・仮装した分は対象外 | 子には同様の軽減がない |
表の見方:左列の論点ごとに、夫婦間と親子間で扱いがどう違うかを対比しています。特に「法律上の出発点」が根本的に異なります。
重要ポイント:親子間では贈与契約書が有効な対策になりますが、夫婦間では契約書だけでは足りません。原資が夫の収入であることが動かないため、妻自身の収入や婚姻前の貯蓄を示す資料が必要になります。
参照元:国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
民法762条1項は「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする」と定めています。専業主婦が夫の給与から貯めた預金は、妻が自分の名で得た財産にはあたりません。
家計を切り詰めて貯めたという事情は、税務上は考慮されません。努力の有無ではなく、お金の出どころで判定されます。
ただし同条2項は「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する」と定めています。妻にも収入があり、原資を特定できない場合には、この推定が働く余地があります。
夫の遺産に妻名義の預金が加算された場合の税額を試算します。相続人は配偶者と子2人で、基礎控除は4,800万円です。
| 夫の遺産額 | 妻名義の預金 | 加算後の遺産額 | 加算前の税額 | 加算後の税額 | 増加額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 1,000万円 | 6,000万円 | 20万円 | 120万円 | +100万円 |
| 5,000万円 | 3,000万円 | 8,000万円 | 20万円 | 350万円 | +330万円 |
| 8,000万円 | 2,000万円 | 1億円 | 350万円 | 630万円 | +280万円 |
| 8,000万円 | 3,000万円 | 1億1,000万円 | 350万円 | 785万円 | +435万円 |
| 1億円 | 3,000万円 | 1億3,000万円 | 630万円 | 1,135万円 | +505万円 |
| 1億2,000万円 | 5,000万円 | 1億7,000万円 | 960万円 | 1,950万円 | +990万円 |
表の見方:左端が夫の遺産額、その右が名義預金と判定された妻名義の預金です。右端が加算によって増える相続税額です。
重要ポイント:夫の遺産5,000万円に妻名義3,000万円が加わると、税額は20万円から350万円へ17.5倍になります。夫の遺産が4,800万円以下なら加算前は0円なので、妻名義預金の加算だけで課税が始まる家庭もあります。
計算ロジック:遺産額に妻名義の預金を加えたうえで基礎控除4,800万円を引き、法定相続分(配偶者2分の1・子各4分の1)で按分して速算表を適用しています。配偶者の税額軽減は適用前の総額で示しました。
配偶者の税額軽減を使えば、配偶者が取得した分については1億6,000万円まで相続税がかかりません。詳しくは下記の記事で解説しています。

孫や未成年の子の名義では、判定の考え方が少し変わります。本人に贈与を理解する能力がないため、親権者が代わりに受諾できるかが問題になります。
| 状況 | 贈与は成立するか | 注意点 |
|---|---|---|
| 未成年の子に親が贈与し、親権者である親が受諾して管理 | 成立しうる | 親権者としての管理は認められる。ただし贈与契約書で親権者が受諾したことを残す |
| 祖父母が孫に贈与し、親権者である親が受諾して管理 | 成立しうる | 祖父母が管理していると名義預金になる。管理は親権者が行う |
| 祖父母が孫名義の口座を作り、祖父母自身が通帳と印鑑を保管 | 成立しない | 孫も親も口座を知らないケースが多く、名義預金と判定される |
| 成人した孫の名義で、孫が口座を知らない | 成立しない | 成人後は本人が受諾する必要がある。親権者の代理は使えない |
表の見方:未成年の場合は親権者の受諾で贈与が成立します。親から子への贈与でも、親権者である親が受諾できます。大事なのは、受諾した後の通帳を贈与した側が管理し続けないことです。
重要ポイント:孫が成人したら、本人に口座を引き渡してください。未成年のうちは親権者の管理で足りますが、成人後も祖父母や親が管理し続けると名義預金に戻ります。
なお孫が相続や遺贈で財産を取得すると、代襲相続人である場合を除いて相続税額が2割加算されます。孫への贈与を検討する場合は、下記の記事も確認してください。


名義預金かどうかは、国税不服審判所で何度も争われてきました。公表されている預貯金の裁決を並べると、原資だけでなく、贈与の成立と税務署の立証が勝敗を分けていることが分かります。
国税不服審判所が「預貯金」として公表している裁決のうち、名義と実質の帰属を争った8件です。
| 裁決 | 争われた口座 | 結論 | 決め手 |
|---|---|---|---|
| 平成3年1月18日 | 孫名義の定期貯金 | 被相続人の財産 | 届出の住所・印鑑・筆跡が被相続人の他の貯金と同じだった |
| 平成4年5月18日 | 相続人名義の預金(株式売却代金が原資) | 一部は相続人の財産 | 相続人が貸したお金の返済分と認められた |
| 平成13年3月29日 | 相続人名義の定期預金 | 被相続人の財産と認めず | 夫婦の収入がほぼ同じで、妻の管理は夫の財産の根拠にならない |
| 平成19年10月4日 | 妻・子名義の預貯金と有価証券 | 大部分が被相続人の財産 | 原資も管理も被相続人。へそくりの主張は通らず、原資不明で筆跡が妻の1口だけ除外 |
| 平成25年12月10日 | 家族名義の預貯金等 | 課税を全部取消し | 税務署が印鑑・保管場所・原資を具体的に立証しなかった |
| 平成28年11月8日 | 子の配偶者・孫名義の貯金等 | 一部は相続財産に当たらない | 原資が子の配偶者の生活口座や子の満期保険金だった |
| 平成31年4月19日 | 被相続人名義の預貯金 | 被相続人の財産 | 相続人は自分のお金と主張したが、口座開設と印鑑管理は被相続人 |
| 令和3年9月17日 | 未成年の子名義の普通預金 | 相続財産に含まれない | 贈与証があり、親権者の母が受諾して毎年入金・通帳を管理 |
表の見方:黄色の行が納税者の主張が認められた事例、赤い行が退けられた事例です。白い行は一部だけ認められました。
重要ポイント:令和3年9月17日の事例では、原資は被相続人でも、贈与が成立していたため子の財産と認められました。原資が被相続人というだけで負けが決まるわけではありません。
参照元:預貯金 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所
8件から、次の3点が導けます。いずれも対策の優先順位を決めるうえで役に立ちます。
必ず原資と贈与の記録を残してください。給与振込の履歴、婚姻前の残高証明、受贈者が署名した贈与契約書が最も強い証拠になります。

対策は「これから贈与する場合」と「すでに名義預金がある場合」で分かれます。すでにある場合は放置が最も不利です。順に確認してください。
贈与を名義預金にしないためには、贈与が成立したことを客観的に示せる状態を作ります。
重要ポイント:裁決事例では贈与証に受贈者の署名がないことを理由に否認された例があります。契約書は作るだけでなく、受贈者が署名し内容を認識していることが必要です。
あげるのではなく貸す場合は、契約書と返済の記録がないと贈与と判断されることがあります。親族への貸付金の注意点は、下記の記事で解説しています。

夫婦間では贈与契約書だけでは足りません。原資が夫の収入であるという事実が動かないためです。
妻名義の預金を守るには、その原資が妻自身のものであることを示す資料が必要になります。婚姻前の残高証明や、妻の給与振込の履歴を残してください。
パート収入や過去の勤務先からの給与も原資になります。金額が小さくても記録があれば、按分の根拠として意味を持ちます。
すでに名義預金の状態になっている場合、次の3つから選びます。金額と家族構成に応じて判断してください。
元の所有者の口座に戻す
最も確実な方法です。被相続人の財産であることを認めたうえで、相続財産として正しく申告します。贈与税はかかりません。
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あらためて正しく贈与する
贈与契約書を作成し、名義人が自分で管理する状態に切り替えます。年間110万円を超えるなら贈与税の申告が必要です。以後は正式な贈与として扱われます。
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相続財産として申告する前提で準備する
解消せず、相続税の申告で正しく計上します。名義預金の額を把握し、納税資金を用意しておきます。加算税も延滞税もかかりません。
重要ポイント:過去にさかのぼって贈与契約書を作る行為は絶対に避けてください。隠ぺい・仮装と認定され、重加算税35%の対象になります。子2人・名義預金3,000万円なら、重加算税だけで171.5万円になります。
名義預金の解消は、相続税対策の中でも優先度が高い項目です。放置すると加算税と延滞税が上乗せされるためです。
一方で、解消のために贈与税を払うのが有利かどうかは、遺産総額と相続人の数によって変わります。基礎控除以下なら相続税はかからないため、贈与税を払う必要はありません。

年代別・財産規模別の生前対策のやることは、下記の記事で解説しています。


名義と実質の不一致は、預金だけの問題ではありません。株式・保険・不動産にも同じ考え方が適用されます。預金だけを確認して安心すると、別の財産で指摘されます。
財産の種類ごとに、何が問題になるかを整理します。判定の軸はいずれも「原資を出したのは誰か」です。
| 財産 | 呼び方 | 問題になる場面 | 判定の軸 |
|---|---|---|---|
| 預金 | 名義預金 | 家族名義の口座に被相続人のお金が入っている | 原資・管理・認識・使用 |
| 上場株式・投資信託 | 名義株 | 家族名義の証券口座を被相続人が運用していた | 購入資金の出どころ・売買の指示を誰がしたか |
| 非上場株式 | 名義株 | 設立時に家族名義で出資したが、資金は被相続人が出した | 払込資金の出どころ・議決権を誰が行使したか |
| 生命保険 | 名義保険 | 契約者が家族でも保険料を被相続人が払っていた | 保険料の負担者 |
| 不動産 | 名義不動産 | 家族名義で登記したが、購入資金は被相続人が出した | 購入資金の出どころ |
表の見方:右端の列を見ると、いずれも原資が判定の中心にあることが分かります。名義預金の考え方をそのまま当てはめれば判断できます。
重要ポイント:とくに見落とされやすいのが名義保険です。契約者が妻でも、保険料を夫が払っていれば夫の財産として扱われます。死亡保険金や解約返戻金の課税も、保険料を負担した人で決まります。
会社を経営していた場合、設立時の株主構成が問題になることがあります。名義を借りて出資した株式は、被相続人の財産として評価されます。
かつて株式会社の設立には発起人が7人必要だったため、親族や知人の名義を借りるのが一般的でした。払込資金を被相続人が出していれば、その株式は被相続人のものです。
非上場株式は評価額が高くなりやすいため、名義株が加わると税額が大きく動きます。株主名簿と払込の記録を突き合わせて確認してください。
預金以外の財産についても、次の項目を確認してください。
重要ポイント:貸金庫は税務調査で必ず確認される場所です。被相続人が借りていた貸金庫に家族名義の資産が入っていれば、被相続人が管理していた証拠として扱われます。
名義預金をめぐって実際に起きている誤解を整理します。いずれも「大丈夫だと思っていた」ことが原因です。
【誤解1】毎年110万円以内なら名義預金にならない
金額の大小は判定に関係ありません。110万円以内でも、贈与が成立していなければ名義預金です。逆に110万円を超えていても、贈与が成立して申告していれば問題になりません。
対策:金額ではなく、贈与契約書と本人による管理を整えてください。
【誤解2】111万円を贈与して申告すれば証拠になる
あえて基礎控除を少し超える額を贈与し、1,000円の贈与税を納めて証拠を作る方法が知られています。しかし贈与が成立していなければ、申告しても名義預金の認定は覆りません。
対策:申告だけを頼りにせず、通帳と印鑑を本人が管理する状態を作ってください。
【誤解3】名義人が知らなければバレない
税務署は家族の口座も照会できます。被相続人の口座からの出金と家族の口座への入金を突き合わせれば、資金の移動は把握されます。
対策:隠すのではなく、正しく申告するか、贈与として成立させるかを選んでください。
重要ポイント:誤解2の「111万円贈与」は、かえって税務署に注目される可能性があります。毎年きまった額を贈与し続けている記録は、定期贈与とみなされるリスクも生みます。形式だけを整える対策は避けてください。

名義預金の判定は、原資をどこまでたどれるかで結論が変わります。同じ口座でも、資料の集め方と説明の仕方で課税されるかどうかが分かれます。複数の事務所から見積りを取り、確認の範囲を比べてください。
名義預金は税務調査で最も争われる論点です。経験の差がそのまま結論の差になります。
【対応実績がある税理士に依頼すべき理由】
たとえば妻名義の預金3,000万円について、原資の一部が妻のパート収入だと示せた場合です。全額が名義預金なら総額は435万円増えますが、半分の1,500万円を妻の財産と認められれば増加は205万円に収まります。資料の集め方だけで230万円の差が出ます。
相見積りの目的は報酬の比較だけではありません。提案の中身に実務経験が表れます。次の3点を確認してください。
判定ポイント1:家族名義の口座をどこまで確認するかが見積りに書かれているか。「通帳をお預かりします」だけの事務所と、「配偶者と子・孫の口座を過去10年分確認します」と書く事務所では精度が違います。→ 後者のほうが実務経験が豊富と判定できます。
判定ポイント2:原資の追跡について具体的な指示があるか。「配偶者の婚姻前の残高証明と、過去の給与収入の記録をご用意ください」まで踏み込む事務所は、按分の主張を組む前提で動いています。→ 夫婦間の名義預金に対応できると判定できます。
判定ポイント3:書面添付制度を使うかどうか。名義預金と判定しなかった理由を申告書に添付しておくと、調査の対象になりにくくなります。→ 対応している事務所は、判断の根拠を文書化できる実力があると判定できます。
自分で判断して申告した場合、次のような結果になることがあります。いずれも後から取り返すのが難しいものです。
【相談しないまま進めた場合に起きること】
納めすぎた場合は申告期限から5年以内であれば更正の請求で取り戻せます。しかし隠ぺい・仮装と認定されると、重加算税に加えて配偶者の税額軽減も使えなくなります。
複数の事務所へまとめて相談する手順です。相続開始から7ヶ月以内に依頼先を決めておくと、申告期限に余裕をもって対応できます。
相続の概要を整理する
被相続人の資産内容と概算額、相続人の構成と年齢、遺言の有無を整理します。あわせて家族名義の口座の有無と、その残高もリストにしておいてください。
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一括見積り・相談サービスに依頼する
相続税申告・相続税の節税・準確定申告など希望する内容を明記し、3〜5の事務所へ同時に打診します。所有している不動産があれば所在地と広さも記載してください。
財産の種類と相続人の人数は、できるだけ正確に伝えることが重要です。見積りの精度が変わります。フォームの記入自体は5分程度で終わります。
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見積りと初回相談を受ける
各事務所から提案内容・試算した相続税額・報酬額が記載された見積りが届きます。気になる事務所と初回相談を行い、判定ポイント3つを確認してください。
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税理士を選定・正式依頼する
提案内容の質・説明の丁寧さ・報酬の納得性で選びます。相続開始から7ヶ月以内に決めてください。資料収集に時間がかかるためです。
なります。口座の名義が家族でも、原資が被相続人で贈与が成立していなければ、被相続人の財産として相続税の対象です。原資が名義人自身のお金か、贈与が成立していた場合は名義人の財産になります。
遺産8,000万円で相続人が子2人なら、名義預金1,000万円で150万円、3,000万円で490万円増えます。配偶者と子2人で配偶者が税額軽減を使う場合、実際に納める額の増加は1,000万円で65万円です。
原資が夫の収入であれば名義預金になります。民法762条1項により、婚姻中に自己の名で得た財産だけが特有財産とされるためです。ただし妻自身の収入や婚姻前の貯蓄が含まれている場合は、その部分を主張できます。
ありません。贈与が成立していなければ贈与税の時効を数える起点がなく、相続開始時の残高が相続税の対象です。ただし相続税の申告期限から5年(不正があれば7年)を過ぎると、税務署は税額を直せなくなります。
税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告してください。過少申告加算税がかかりません。子2人・名義預金1,000万円のケースでは、調査後に修正するより15万円軽くなります。
名義預金は、原資が被相続人で贈与が成立していなければ、相続税の対象になります。名義ではなく、お金の出どころと贈与の有無で判断されます。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて作成しています。相続税法の改正により取り扱いが変更される場合があります。最新の制度については国税庁のホームページで確認するか、相続税の対応実績がある税理士にご相談ください。