相続税の基礎控除はいくら?計算式・早見表と課税されるかの判定手順

相続税_基礎控除

相続税の基礎控除とは、遺産の総額から無条件で差し引ける非課税枠です。金額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。

遺産の総額がこの金額以下なら相続税はかかりません。基礎控除は、相続税が発生するかどうかを分ける最初の境界線です。

ところが「基礎控除以下だから大丈夫」と考えていて、後から課税対象だったと分かるケースがあります。原因は遺産の総額の出し方にあります。

相続税の計算に使う遺産は、預貯金や不動産だけではありません。生命保険金や過去7年の贈与も加算され、逆に債務や葬式費用は差し引けます。

さらに基礎控除の計算に使う「法定相続人の数」は、民法上の相続人とは数え方が違います。相続放棄した人も含め、養子には人数の上限があります。

相続人の数が1人ずれるだけで控除額は600万円動きます。式そのものは単純でも、当てはめる数字を間違えると結論が逆になります。

本記事では、基礎控除の計算式と法定相続人数別の早見表、基礎控除の計算に限った相続人の数え方の特殊ルールを解説します。

あわせて正味の遺産額を集計するシート、基礎控除ギリギリのときに結論が変わる3つの要素、申告不要と判断したあとに残す記録、2015年改正の経緯を扱います。

▼ この記事の3行まとめ

  • 基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。相続人1人なら3,600万円、3人なら4,800万円
  • 遺産の総額には生命保険金や7年以内の贈与も加算される。預貯金と不動産だけで判断すると結論がずれる
  • 基礎控除ギリギリなら、土地の評価・名義預金・小規模宅地等の特例で判定が逆転することがある
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相続税の基礎控除とは?3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税の基礎控除は、遺産の総額から差し引ける非課税枠です。特別な手続きや要件はなく、相続が起きれば誰にでも適用されます

金額は法定相続人の数で決まります。3,000万円が定額部分で、そこに相続人1人あたり600万円が加算される仕組みです。

注意したいのは、この控除が「1人ずつに与えられる枠」ではないことです。遺産の総額から一括で差し引く合計額です。

また「基礎控除」という同じ言葉は、贈与税にも所得税にもあります。金額も対象も別の制度なので、混同すると判断を誤ります。

基礎控除の計算式と無税になる仕組み

基礎控除の計算式は法律で決まっており、財産の内容や相続人の年齢に関係なく同じです。

基礎控除額の計算式:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続税は、この基礎控除を差し引いた残りに課税されます。差し引いた後の金額を「課税遺産総額」と呼びます。

課税遺産総額の計算式:正味の遺産額 − 基礎控除額 = 課税遺産総額

課税遺産総額が0円以下になれば、相続税は0円です。この場合は原則として申告も必要ありません。

逆に1円でも上回れば、上回った部分に対して相続税が発生します。「少し超えただけなら大丈夫」という緩衝はありません。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

基礎控除は「一人当たりの枠」ではない|よくある誤解

最も多い誤解が「相続人が3人だから1人4,800万円まで無税」という読み方です。基礎控除は相続人ごとの枠ではありません

正しくは、遺産の総額からまとめて1回だけ差し引く合計額です。相続人が何人いても、差し引ける回数は1回です。

誤った理解 正しい理解
控除の考え方 相続人1人ごとに4,800万円の枠がある 遺産の総額から4,800万円を1回引く
遺産6,000万円・相続人3人の場合 1人2,000万円ずつなので全員が枠内で無税 6,000万円−4,800万円=1,200万円が課税対象
無税になる遺産の上限 4,800万円×3人=1億4,400万円 4,800万円

表の見方:黄色の行が誤解の起点です。「1人あたり」と考えると無税の上限を3倍に見誤ります

重要ポイント:相続人が受け取った金額ごとに判定するのではありません。まず遺産の総額を出し、そこから基礎控除を引くという順序です。

法定相続人の数別の基礎控除早見表

法定相続人の数が決まれば、基礎控除額は自動的に決まります。まず自分のケースを確認してください。

法定相続人の数 基礎控除額 家族構成の例
1人 3,600万円 配偶者のみ/子1人のみ
2人 4,200万円 配偶者と子1人/子2人
3人 4,800万円 配偶者と子2人/子3人
4人 5,400万円 配偶者と子3人
5人 6,000万円 配偶者と子4人
6人 6,600万円 配偶者と子5人
7人 7,200万円 配偶者と子6人
8人 7,800万円 配偶者と子7人

表の見方:黄色の行が最も多いパターンです。相続人の数が1人増えるごとに600万円ずつ控除が増えます

重要ポイント:控除の下限は相続人1人の3,600万円です。相続人が少ない家庭ほど基礎控除は小さくなり、課税される可能性が上がります。

計算ロジック:3,000万円が定額部分、600万円×人数が人数比例部分です。相続人3人なら3,000万円+600万円×3人=4,800万円という計算になります。

3つの基礎控除の違い|相続税・贈与税・所得税

「基礎控除」は相続税だけの用語ではありません。贈与税の110万円・所得税の控除と混同しないでください

それぞれ対象になる金額も、適用される場面も別の制度です。特に贈与税の110万円と混ざりやすい点に注意が必要です。

制度 控除額 対象になる金額 適用される場面
相続税の基礎控除 3,000万円+600万円×法定相続人の数 亡くなった人の遺産の総額 相続が起きたとき(1回)
贈与税の基礎控除 年110万円 1年間に受け取った贈与の合計額 毎年(受け取る人ごと)
所得税の基礎控除 58万円(所得に応じた上乗せあり) 1年間の所得金額 毎年の年末調整・確定申告

表の見方:黄色の行だけが「亡くなったときに1回」の控除です。贈与税と所得税の基礎控除は毎年使えるもので、性質が違います。

重要ポイント:贈与税の110万円は「もらった人1人につき年110万円」です。相続税の基礎控除とは別枠なので、両方を足して考えることはできません

参照元:国税庁 No.1199 基礎控除

相続税で使える控除と特例の全体像は、下記の記事で解説しています。

基礎控除の計算に使う「法定相続人の数」の特殊ルール3つ

基礎控除の金額は法定相続人の数で決まります。ところがこの人数は民法で定める相続人とそのまま一致しません

相続税の計算では「相続税法上の法定相続人の数」という別の考え方を使います。相続放棄した人も含め、養子には人数の上限があります。

理由は、相続人の意思や手続きで控除額を動かせないようにするためです。人数を操作できれば、税額も操作できてしまいます。

ここでは基礎控除の計算に限った特殊ルール3つと、なぜそうなっているのかを整理します。

なぜ民法の相続人と数え方が違うのか

民法の相続人は「誰が財産を承継する権利を持つか」を決めるものです。遺産分割の当事者を確定するための概念です。

一方で相続税法の「法定相続人の数」は、基礎控除や非課税枠を計算するための技術的な人数です。目的が違うため、数え方も変わります。

目的が違う以上、同じ人数を使う必要はありません。相続税法では、意図的に人数を動かせないような数え方が採用されています。

項目 民法上の相続人 相続税法上の「法定相続人の数」
何を決めるためのものか 誰が財産を承継するか 基礎控除・非課税枠・相続税の総額
相続放棄した人 相続人ではなくなる 人数に含める
養子 人数の制限はない 実子がいれば1人・いなければ2人まで
代襲相続人(孫など) 相続人になる 人数に含める
内縁の配偶者・養子縁組していない連れ子 相続人ではない 人数に含めない

表の見方:黄色の行が違いの根本です。目的が別の概念なので、人数が一致しないのは誤りではありません

重要ポイント:遺産分割の話し合いに参加する人数と、基礎控除の計算に使う人数は別に数えてください。同じ数字を使い回すと控除額を間違えます

参照元:国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分

特殊ルール①相続放棄した人も数に入れる

相続放棄をすると、民法では初めから相続人でなかったものとして扱われます。しかし基礎控除の人数からは外れません

放棄した人を除いて計算すると控除額が下がるため、放棄する人がいる家庭が不利になってしまいます。それを避けるための扱いです。

基礎控除に使う人数は「放棄がなかったものとした場合の相続人の数」です。放棄の有無で控除額は変わりません。

【具体例|子3人のうち2人が相続放棄した場合】

民法上の相続人は放棄しなかった子1人だけになります。しかし基礎控除は子3人で計算するため、3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。

注意:放棄によって次順位の人(親や兄弟姉妹)が新たに相続人になった場合も、人数は放棄がなかった場合の人数で数えます。新たに相続人になった人を足して増やすことはできません。

相続放棄をした場合の相続税の扱いは、下記の記事で解説しています。

特殊ルール②養子は実子がいれば1人・いなければ2人まで

養子は民法では実子と同じ相続権を持ち、人数の制限もありません。ところが基礎控除の計算では算入できる養子の数に上限があります

上限がある理由は明確です。養子縁組を繰り返せば人数を自由に増やせるため、控除額を膨らませる操作が可能になってしまいます。

実子の有無 算入できる養子の数 養子3人がいる場合の法定相続人の数
実子がいる 1人まで 実子1人+養子1人=2人(基礎控除4,200万円)
実子がいない 2人まで 養子2人=2人(基礎控除4,200万円)

表の見方:黄色の行のとおり、実子がいる場合は養子が何人いても1人しか算入できません。養子3人でも人数は2人です。

ただし次の養子は制限の対象外で、実子と同じように扱われます。人数の上限に含めずに数えられます。

  • 特別養子縁組によって養子になった人
  • 配偶者の実子(いわゆる連れ子)を養子にした場合
  • 代襲相続人である養子(養子が先に亡くなり、その子が相続する場合)

重要ポイント:制限の対象外に当たるかどうかで人数が変わります。連れ子を養子にしたケースは制限を受けませんので、該当する場合は必ず確認してください。

参照元:国税庁 No.4170 相続人の中に養子がいるとき

特殊ルール③代襲相続人は含める・内縁と連れ子は含めない

代襲相続とは、本来の相続人が先に亡くなっている場合に、その子が代わって相続する仕組みです。

代襲相続人は人数にそのまま含めるため、相続人の数が増えることがあります。子1人が先に亡くなり孫が2人いれば、その枠は2人分になります。

【具体例|子2人のうち1人が先に亡くなり、その子(孫)が2人いる場合】

法定相続人は子1人+孫2人の合計3人です。基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となり、子2人のケースより600万円増えます。

逆に、相続権がない人は人数に含められません。特に間違いやすいのが次の2つです。

人数に含められない人

  • 内縁の配偶者(婚姻届を出していないパートナー)
  • 養子縁組をしていない配偶者の連れ子
  • 離婚した元配偶者
  • 相続人の配偶者(子の妻・夫など)

注意:内縁の配偶者や連れ子が遺言で財産を受け取った場合、人数に含められないだけでなく相続税額が2割加算されます。生前に養子縁組を検討する余地があります。

相続人の数を間違えると非課税枠が1,600万円動く

法定相続人の数は、基礎控除だけに使う数字ではありません。生命保険金と死亡退職金の非課税枠も同じ人数で計算します

つまり人数を1人間違えると、3つの非課税枠が同時にずれます。影響は基礎控除の600万円だけでは終わりません。

項目 相続人2人の場合 相続人3人の場合 1人あたりの差
基礎控除 4,200万円 4,800万円 600万円
生命保険金の非課税枠 1,000万円 1,500万円 500万円
死亡退職金の非課税枠 1,000万円 1,500万円 500万円
合計の非課税枠 6,200万円 7,800万円 1,600万円

表の見方:黄色の行が影響の合計です。相続人の数が1人違うと、非課税枠は最大1,600万円動きます

重要ポイント:生命保険金や死亡退職金がない場合の差は基礎控除の600万円だけです。保険金や退職金がある家庭ほど、人数の誤りが大きな金額差になります

計算ロジック:生命保険金の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」、死亡退職金も同じく「500万円×法定相続人の数」です。基礎控除600万円と合わせると1人あたり1,600万円の差になります。

参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

法定相続人の範囲と順位、具体的な数え方は、下記の記事で解説しています。

正味の遺産額の出し方|加算する財産・差し引ける財産の一覧シート

基礎控除と比べる相手は「正味の遺産額」です。預貯金と不動産を足しただけの金額ではありません

ここを概算で済ませると判定を誤ります。生命保険金や過去の贈与が加算され、逆に債務や葬式費用は差し引けます。

加算する項目は3種類、差し引ける項目も3種類です。項目ごとにバラバラに考えると集計できません。

まず1枚のシートで全体を集計してから、基礎控除と突き合わせてください。ここでは各項目の中身を順に確認します。

正味の遺産額 算出シート|プラスとマイナスを1枚で集計

次の6項目を上から順に埋めれば、正味の遺産額が出ます。概算でよいので、まず全項目を埋めることを優先してください

区分 項目 該当するもの 自分の金額
+ 加算 ①本来の相続財産 預貯金・現金・不動産・有価証券・車・貴金属・貸付金・ゴルフ会員権     万円
+ 加算 ②みなし相続財産 生命保険金・死亡退職金のうち非課税枠を超えた部分     万円
+ 加算 ③生前贈与 死亡前7年以内の暦年贈与・相続時精算課税で贈与した財産     万円
− 減算 ④非課税財産 墓地・墓石・仏壇・仏具・国や地方公共団体への寄付     万円
− 減算 ⑤債務 借入金・未払いの医療費・未払いの税金・未払いの公共料金     万円
− 減算 ⑥葬式費用 通夜・葬儀・火葬・埋葬・納骨・お布施・遺体の搬送費     万円
正味の遺産額 ①+②+③−④−⑤−⑥     万円

表の見方:黄色の行が基礎控除と比べる金額です。①だけを基礎控除と比べても判定はできません。

重要ポイント:埋めにくいのは②と③です。保険証券と過去7年分の通帳・贈与契約書を先に集めてから着手すると効率的です。

計算ロジック:相続税の課税対象は「亡くなった人が持っていた財産」ではなく「亡くなったことをきっかけに移る経済的価値の総額」です。だから受取人固有の保険金や、生前に渡した贈与も加算の対象になります。

加算する財産①本来の相続財産|見落としやすいもの

預貯金・不動産・有価証券が中心になります。ここは大半の人が把握できているはずです。

問題は通帳や登記簿に本人名義で残っていない財産です。次の項目を1つずつ確認してください。

  • □ 家族名義の口座に入っている、実質は本人の資金(名義預金)
  • □ 自宅で保管している現金(いわゆるタンス預金)
  • □ 親族や知人への貸付金
  • □ ゴルフ会員権・リゾート会員権
  • □ 未受領の高額療養費や税金の還付金
  • □ 暗号資産・電子マネーの残高
  • □ 書画骨董・貴金属・美術品
  • □ 海外の預金や不動産

重要ポイント:この中で最も指摘が多いのが名義預金です。家族名義でも、資金の出どころが本人なら相続財産に含めます。名義だけでは判断されません。

注意:税務署は金融機関に照会をかけられるため、本人名義以外の口座の動きも把握されます。あえて外して集計しても、後から加算されるだけです。

参照元:国税庁 No.4105 相続税がかかる財産

加算する財産②みなし相続財産(生命保険金・死亡退職金)

生命保険金と死亡退職金は、受取人が固有の権利として受け取るものです。しかし相続税では課税対象として加算します

ただし全額ではありません。それぞれに「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、超えた部分だけを加算します。

項目 非課税枠 保険金2,000万円・相続人3人の場合
生命保険金 500万円×法定相続人の数 非課税枠1,500万円 → 加算するのは500万円
死亡退職金 500万円×法定相続人の数 別枠で1,500万円まで非課税

表の見方:黄色の行のとおり、保険金の全額ではなく非課税枠を超えた部分だけが加算されます。

重要ポイント:生命保険金と死亡退職金の非課税枠は別枠でそれぞれ使えます。相続人3人なら合計3,000万円まで非課税です。

計算ロジック:相続人3人なら非課税枠は500万円×3人=1,500万円です。保険金2,000万円から1,500万円を引いた500万円が、正味の遺産額に加算されます。

注意:非課税枠を使えるのは相続人が受け取った場合に限られます。孫や内縁の配偶者が受取人になっている場合、非課税枠は適用されず全額が加算されます。

みなし相続財産に当たるものの種類と扱いは、下記の記事で解説しています。

加算する財産③生前贈与|7年以内の暦年贈与と相続時精算課税

生前に贈与した財産も、一定の範囲で相続財産に戻して計算します。現在残っている財産だけでは判定できません

2024年(令和6年)1月1日以後に受けた贈与から、加算する期間が3年から7年に延長されました。移行期のため相続の時期で対象期間が変わります。

相続開始の時期 加算の対象になる期間
2026年(令和8年)中 実質3年(2024年1月1日以後の贈与が3年以内に収まるため
2031年(令和13年)1月1日以後 死亡前7年以内の贈与がすべて対象

表の見方:黄色の行が現在の状況です。加算期間は「3年」と「2024年1月1日から相続開始までの年数」の長いほうになるため、3年を超えて伸び始めるのは2027年以降の相続からです。

延長された部分には緩和措置があります。死亡前4年〜7年の贈与については、合計100万円までは加算しません

相続時精算課税制度を使って贈与した財産は、期間の制限なくすべて加算します。年数が経っていても対象から外れません。

重要ポイント:年110万円以下の贈与でも贈与税がかからないだけで、加算の対象からは外れません。「非課税だったから関係ない」という理解は誤りです。

計算ロジック:毎年100万円を10年間贈与していた場合、贈与税は0円でも死亡前7年分の700万円から緩和措置の100万円を引いた600万円が加算されます。残っている財産が基礎控除内でも、これで超えることがあります。

参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

7年加算ルールの詳細と暦年贈与の使い方は、下記の記事で解説しています。

差し引ける財産①非課税財産

財産の中には、はじめから相続税がかからないものがあります。集計から除いてください。

  • 墓地・墓石・仏壇・仏具・神棚など日常の礼拝に使うもの
  • 国・地方公共団体・特定の公益法人に寄付した財産
  • 生命保険金・死亡退職金の非課税枠に収まる部分
  • 心身障害者共済制度に基づく給付金を受ける権利

注意:同じ仏具でも骨董的な価値があるものや投資目的で持っているものは課税対象です。「仏壇だから非課税」と一律に判断できません。

重要ポイント:非課税財産は亡くなる前に購入しておけば課税対象から外れます。亡くなった後に相続人が購入しても、その費用は差し引けません。

参照元:国税庁 No.4108 相続税がかからない財産

差し引ける財産②債務と葬式費用

亡くなった人が残した債務と、葬式にかかった費用は差し引けます。借入金があるなら必ず集計に入れてください

ただし何でも差し引けるわけではありません。差し引けるものと差し引けないものの線引きを確認します。

区分 差し引けるもの 差し引けないもの
債務 借入金・未払いの医療費・未払いの所得税や住民税・未払いの公共料金 保証債務・団体信用生命保険で完済される住宅ローン・墓地購入の未払金
葬式費用 通夜と本葬の費用・火葬・埋葬・納骨・お布施・戒名料・遺体の搬送費 香典返しの費用・初七日以降の法要・墓地や墓石の購入費・遺体の解剖費用

表の見方:黄色の行で見落としやすいのが団体信用生命保険付きの住宅ローンです。死亡で完済されるため債務として差し引けません。

重要ポイント:葬式費用は領収書がないものも差し引けます。お布施や心付けは、日付と金額と相手をメモに残しておけば認められます。

参照元:国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務

基礎控除と突き合わせて課税されるか確かめる4ステップ

相続人の数と正味の遺産額がそろえば、判定はできます。順序を守って計算すれば手戻りが起きません

先に基礎控除を出してから財産を集計すると、金額が近いときに「もう少し探せば下がるのでは」と迷いが出ます。

逆に財産を先に集計してから基礎控除と比べれば、判断は1回で終わります。ここでは4ステップの手順と3つの判定例を確認します。

判定の4ステップ

次の順番で進めてください。STEP1の相続人の数を間違えると、以降のすべてがずれます

STEP1
法定相続人の数を確定する。相続放棄した人も含め、養子は実子がいれば1人・いなければ2人までで数える

STEP2
基礎控除額を計算する。3,000万円+600万円×STEP1の人数

STEP3
正味の遺産額を集計する。本来の相続財産+みなし相続財産+生前贈与−非課税財産−債務−葬式費用

STEP4
STEP3とSTEP2を比べる。STEP3が下回れば課税されず、上回れば超えた部分が課税対象になる

重要ポイント:STEP3で金額が近いと感じたら、そこで止めて次章の3つの要素を確認してください。概算のまま結論を出すと判定が逆になることがあります

判定例3パターン|同じ規模でも結論が変わる

財産の総額が近くても、相続人の数と加算項目で結論は変わります。3つのパターンで比べます。

項目 パターンA パターンB パターンC
家族構成 配偶者と子2人(3人) 子1人のみ(1人) 配偶者と子1人(2人)
基礎控除額 4,800万円 3,600万円 4,200万円
①本来の相続財産 5,000万円 3,400万円 3,800万円
②みなし相続財産の加算分 500万円 0円 0円
③生前贈与の加算 0円 0円 600万円
⑤⑥債務・葬式費用 −300万円 −200万円 −150万円
正味の遺産額 5,200万円 3,200万円 4,250万円
判定 400万円が課税対象 課税されない 50万円が課税対象

表の見方:黄色の行が結論です。パターンCは本来の相続財産だけなら基礎控除以下ですが、生前贈与の加算で超えます

重要ポイント:パターンBは相続人1人で基礎控除が3,600万円しかありませんが、債務と葬式費用を引いて課税されずに済んでいます。マイナスの項目を忘れると逆の結論になります

計算ロジック:パターンCは3,800万円+600万円−150万円=4,250万円が正味の遺産額です。基礎控除4,200万円を50万円上回るため課税対象になります。加算した600万円は死亡前7年以内の暦年贈与から緩和措置100万円を引いた金額です。

1円でも超えたら遺産全体に課税されるのか

「基礎控除を1円超えると遺産全体に相続税がかかる」という誤解があります。課税されるのは超えた部分だけです

正味の遺産額5,200万円で基礎控除が4,800万円なら、課税の対象になるのは差額の400万円です。5,200万円全体ではありません。

ただし申告の義務は別です。基礎控除を超えた場合、申告書には遺産の全体を記載する必要があります。

重要ポイント:超えた金額がわずかなら税額も小さくなります。金額の大小に関係なく、超えたら申告は必要という点だけ押さえてください。

自分のケースで相続税がかかるかの判定手順は、下記の記事で解説しています。

基礎控除ギリギリのときに結論がひっくり返る3つの要素

正味の遺産額が基礎控除の前後500万円に収まったときは、概算のままでは判定できません

相続財産の中には、詰め方によって数百万円から数千万円単位で動くものがあります。動く幅が判定の差より大きいのです。

特に影響が大きいのは土地の評価・名義預金・小規模宅地等の特例の3つです。この3つで結論が逆になることがあります。

ここでは各要素がどれだけ動くのか、そしてギリギリのときに何から確認すべきかを整理します。

なぜ概算では判定できないのか|±500万円は誤差の範囲

概算の判定は、預貯金の残高と土地の路線価×面積を足す方法が一般的です。手軽ですが誤差が大きくなります。

預貯金は残高証明で確定できます。誤差が出るのは土地の評価と、本人名義でない財産です

土地は補正によって数百万円単位で上下します。家族名義の口座は、資金の出どころ次第で数百万円が加算されます。

注意:基礎控除との差が500万円以内なら「たぶん大丈夫」で終わらせないでください。申告が必要だったと後から分かると、無申告加算税と延滞税がかかります。

要素①土地の評価|路線価×面積の概算と実際のズレ

土地の相続税評価額は、路線価に面積を掛けただけでは決まりません。土地の形状や周辺の状況に応じて補正がかかります

補正には評価を下げるものと上げるものがあります。どちらも見落とすと判定がずれます。

補正の種類 動く方向 影響の目安
不整形地・間口が狭い・奥行が長い 下がる 評価額の10〜40%
セットバックが必要な土地 下がる 後退部分は原則として評価しない
都市計画道路の予定地 下がる 地区区分と地積割合に応じて減額
がけ地・高低差がある 下がる がけ地部分の割合に応じて減額
角地・2つの道路に面している 上がる 側方や二方の路線影響加算

表の見方:黄色の行が影響が大きい補正です。形が悪い土地は評価額が10〜40%下がることがあります

計算ロジック:路線価20万円×200㎡=4,000万円の土地でも、不整形地補正が0.90かかれば3,600万円になります。この400万円の差が、基礎控除ギリギリのケースでは結論を左右します。

重要ポイント:補正は現地と役所を確認しないと判断できません。路線価×面積の概算で基礎控除を少し超える程度なら、専門家に評価を依頼する価値があります

参照元:国税庁 No.4602 土地家屋の評価

路線価の調べ方と土地の評価の手順は、下記の記事で解説しています。

要素②名義預金|家族名義の口座が数百万円加算される

名義預金とは、口座の名義は家族でも実質は亡くなった人の財産と判断される預金です。

該当すれば本人名義の残高に上乗せして加算します。金額が大きくなりやすく、ギリギリのケースでは決定的な要素になります。

判定は名義ではなく実態で行われます。次の4点を確認してください。

  • □ その口座に入金された資金は誰が稼いだものか
  • □ 通帳と印鑑を管理していたのは誰か
  • □ 贈与の合意があったか(贈与契約書や申告の記録があるか)
  • □ 名義人が自分の判断で自由に使える状態だったか

重要ポイント:4点すべてが名義人本人であれば名義預金には当たりません。資金の出どころが亡くなった人で、管理も本人がしていた場合は加算されます

【具体例|妻名義の口座に夫の給与から積み立てた1,000万円がある場合】

妻に収入がなく、夫が通帳を管理していた場合は名義預金と判断されます。夫名義の財産が3,500万円でも、合計4,500万円として基礎控除と比べることになります。

要素③小規模宅地等の特例|使えば0円でも申告が必須になる

自宅の土地を配偶者や同居していた子が引き継ぐ場合、330㎡までの評価額を80%下げられる特例があります。

減額の幅が大きいため、基礎控除を超えていたケースが特例で一気に下回ることがあります。

ここに落とし穴があります。この特例を使って基礎控除以下になった場合、申告書の提出が適用の条件になります

【具体例|自宅の土地4,000万円に特例を適用した場合】

評価額は800万円まで下がります。正味の遺産額が5,200万円から2,000万円になり基礎控除4,800万円を下回りますが、申告しなければ特例は適用されません

注意:特例を前提に「基礎控除以下だから申告不要」と判断すると、特例が使えず本来の評価額で課税されます。申告期限を過ぎてからでは取り返せません。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

小規模宅地等の特例の要件と計算方法は、下記の記事で解説しています。

ギリギリのときの感度チェック表|どれが動くと何万円動くか

基礎控除との差が500万円以内なら、次の表の上から順に確認してください。影響が大きい順に並べています

ブレる要素 動く方向 金額の目安 ギリギリのときにすべきこと
小規模宅地等の特例 下がる 土地の評価額の最大80% 使う前提なら申告の準備を始める
土地の形状などの補正 下がる 評価額の10〜40% 現地と役所で補正要素を確認する
名義預金 上がる 数百万〜数千万円 家族名義の口座の資金の出どころを確認する
生前贈与の加算 上がる 数百万円 過去7年分の通帳と贈与契約書を確認する
生命保険金・死亡退職金 上がる 数百万円 非課税枠を超える部分がないか計算する
角地などの路線影響加算 上がる 数十万〜数百万円 2つ以上の道路に面していないか確認する
債務・葬式費用 下がる 数十万〜数百万円 領収書とメモを集めて集計する

表の見方:黄色の行が最も金額が動く要素です。自宅の土地があるなら、まず小規模宅地等の特例が使えるかを確認してください

重要ポイント:上3つの要素は自分で判断しきれないことが多いものです。差が500万円以内なら税理士に確認するほうが確実です。判定を誤ったときの負担のほうが大きくなります。

基礎控除以下でも申告が必要になるケース

正味の遺産額が基礎控除以下なら、原則として申告は必要ありません。ただし例外があり、これを外すと特例が使えなくなります

例外は「特例や控除を使った結果として基礎控除以下になった場合」です。この場合、申告が特例を使うための条件になります。

一方で、申告しなくても自動的に適用される控除もあります。両者の線引きを確認してください。

特例で0円になる場合は申告が適用の条件

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、申告書に適用を記載して提出することが適用の要件になっています。

制度を使えば税額が0円になるとしても、申告しなければ制度そのものが使えません。結果として本来の評価額で課税されます。

「税額が0円だから申告は不要」という順序ではありません。申告するから0円になるという順序です。

注意:この点を誤解して申告しないと、期限後に特例を使えず、無申告加算税と延滞税まで加わります。特例を前提に判定した場合は必ず申告してください。

申告が必要な特例と、申告しなくてよい控除の線引き

どちらに当たるかは制度ごとに決まっています。使う予定の制度がどちらかを確認してください。

区分 該当する制度 申告の要否
適用に申告が必要 配偶者の税額軽減/小規模宅地等の特例/特定計画山林の特例/農地等の納税猶予/公益法人などへ寄付した財産の非課税 必要
申告なしで適用される 基礎控除/生命保険金の非課税枠/死亡退職金の非課税枠/債務控除/葬式費用の控除/未成年者控除/障害者控除 不要

表の見方:黄色の行の制度を使って0円になる場合は申告が絶対条件です。下の行の控除だけで0円になるなら申告は不要です。

重要ポイント:未成年者控除と障害者控除は申告が要件になっていません。この2つで税額が0円になる場合は申告しなくてよい点が、上の特例との違いです。

参照元:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

申告期限は10ヶ月|過ぎた場合のペナルティ

申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月です。期限を過ぎると加算税と延滞税がかかります

ペナルティ 内容
無申告加算税 納付すべき税額に対して原則15〜20%(税務調査の前に自主的に申告すれば5%程度に軽減)
過少申告加算税 追加で納める税額に対して原則10〜15%
重加算税 意図的に隠していた場合、無申告なら40%・過少申告なら35%
延滞税 法定期限の翌日から納付日までの日数に応じて課される

表の見方:黄色の行が申告そのものを忘れた場合です。税務調査の前に自主的に申告すれば負担は軽くなります

参照元:国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき

申告が必要ないケースの判定手順と落とし穴は、下記の記事で解説しています。

申告不要と判断したあとにやっておくこと

基礎控除以下と判断して申告しない場合でも、やり終わりではありません。税務署から確認の文書が届くことがあります。

そのときに「なぜ申告しなかったのか」を説明できる資料が残っていないと、慌てて集め直すことになります。

判定に使った資料をそのまま保管しておけば足ります。ここでは届く文書の種類と、残しておく記録を整理します。

税務署から届く「相続税についてのお尋ね」とは

税務署は市区町村から死亡の情報を受け取り、過去の所得や財産の情報と突き合わせて申告が必要そうな人を把握しています

その結果として、亡くなってから半年ほど経った頃に文書が届くことがあります。主に次の2種類です。

文書の名称 届く人 対応
相続税の申告等についてのご案内 申告が必要と見込まれる人 同封の書類で申告の準備を進める
相続税についてのお尋ね 申告が必要かどうか判断がつかない人 財産の内容を記入して返送する

表の見方:黄色の行は申告を前提とした案内です。下の行は確認のための照会で、基礎控除以下なら「不要」と回答して返送します

重要ポイント:お尋ねに答えなくても直接の罰則はありません。ただし返送しないと税務調査につながることがあります。判定の根拠を示して返送するほうが確実です。

お尋ねに答えるために残しておく3つの記録

返送に必要な情報は、判定のときに集めた資料でそろいます。捨てずにまとめて保管してください

  • □ 財産の一覧(本記事の算出シートに記入したもの)
  • □ 金融機関の残高証明書、または死亡日時点の残高が分かる通帳のコピー
  • □ 不動産の固定資産税課税明細書と、路線価による計算のメモ
  • □ 生命保険金・死亡退職金の支払通知書
  • □ 過去7年分の贈与の記録(通帳の入出金・贈与契約書・贈与税の申告書)
  • □ 借入金の残高証明書と、葬式費用の領収書

重要ポイント:特に重要なのは死亡日時点の残高が確認できる資料です。残高証明書は死亡日基準で発行を依頼してください。

注意:遺産分割が終わって口座を解約すると、後から死亡日時点の残高を確認しづらくなります。解約の前に残高証明書を取得しておいてください。

記録は何年残すか|時効との関係

税務署が相続税を課すことができる期間には期限があります。原則は申告期限から5年です。

意図的に財産を隠していたなど、偽りその他不正の行為があった場合は7年に延びます。

申告期限は相続開始から10ヶ月なので、亡くなってから実質5年10ヶ月が目安になります。

重要ポイント:保管の目安は最低5年、余裕を見て7年です。判定に使った資料を1つの封筒にまとめておけば十分です。

参照元:e-Gov法令検索 国税通則法(第70条 国税の更正、決定等の期間制限)

判断に迷ったときの確認先

基礎控除との差が小さくて自分で決めきれない場合、確認できる窓口があります。

  • 国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」に財産の金額を入力して判定する
  • 所轄の税務署に電話で相談する(一般的な取り扱いの確認向け)
  • 税理士の無料相談で、土地の評価と名義預金の判断だけ見てもらう

土地がある場合と名義預金の可能性がある場合は、税理士に確認するほうが確実です。この2つは自己判断が難しい論点です。

参照元:国税庁 相続税の申告要否判定コーナー

基礎控除は2015年に引き下げられた|改正の経緯と今後

現在の「3,000万円+600万円×法定相続人の数」は、2015年1月1日から適用されている金額です。それ以前はもっと大きな控除でした

この引き下げによって、相続税を納める人の割合はおよそ2倍以上に増えました。かつて「一部の資産家の税」だった位置づけが変わっています。

経緯を知っておくと、親世代の経験談が今の判定に使えない理由も分かります。ここでは改正の内容と今後の見通しを整理します。

改正前後の比較|5,000万円+1,000万円×人数からの引き下げ

改正では定額部分と人数比例部分の両方が下げられました。相続人が多い家庭ほど下げ幅が大きくなっています

項目 改正前(2014年12月31日まで) 改正後(2015年1月1日以降)
定額部分 5,000万円 3,000万円 −2,000万円
人数比例部分 1,000万円×法定相続人の数 600万円×法定相続人の数 −400万円/人
相続人1人の基礎控除 6,000万円 3,600万円 −2,400万円
相続人2人の基礎控除 7,000万円 4,200万円 −2,800万円
相続人3人の基礎控除 8,000万円 4,800万円 −3,200万円

表の見方:黄色の行が最も多い家族構成です。相続人3人のケースでは基礎控除が3,200万円も縮小しました

計算ロジック:改正前は5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円、改正後は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。定額部分で2,000万円、人数比例部分で1,200万円、合計3,200万円の縮小になります。

同じ家族でも課税と非課税が入れ替わった

金額の変化を実際のケースで見ると影響が分かります。改正前なら申告不要だった家庭が課税対象に変わりました

【具体例|正味の遺産額6,000万円・配偶者と子2人(相続人3人)】

改正前の基礎控除は8,000万円だったため課税されませんでした。改正後の基礎控除は4,800万円なので、1,200万円が課税対象になります。

この影響を最も受けたのが、都市部に持ち家がある家庭です。土地の評価額が高いため、預貯金が少なくても基礎控除を超えやすくなりました。

重要ポイント:親や祖父母の相続で「うちは相続税がかからなかった」という経験があっても、2015年より前の相続なら基準が違います。今回は改めて判定してください。

課税割合の推移|4.4%から約10%へ

改正の影響は統計にはっきり表れています。亡くなった人のうち相続税の課税対象になった割合の推移です。

年分 課税割合 状況
2014年(改正前の最終年) 4.4% 亡くなった人の約23人に1人
2015年(改正の初年) 8.0% 亡くなった人の約12人に1人
直近 約10% 亡くなった人の約10人に1人

表の見方:黄色の行が改正の初年です。1年で課税割合がほぼ倍になりました

重要ポイント:現在は亡くなった人の約10人に1人が課税対象です。相続税は限られた資産家だけの話ではなくなっています。

参照元:国税庁 統計情報(相続税の申告事績)

今後さらに引き下げられる可能性はあるか

2015年の改正以降、基礎控除の金額は変わっていません。現時点で引き下げの予定は公表されていません

近年の改正の焦点は基礎控除ではなく、生前贈与と相続の扱いをそろえる方向に向かっています。2024年の7年加算への延長がその一例です。

ただし基礎控除が据え置かれても、地価や株価が上がれば課税対象になる人は自然に増えます。制度が変わらなくても対象は広がります

重要ポイント:「基礎控除が下がるかもしれないから今のうちに」と急ぐ必要はありません。注視すべきは基礎控除より、贈与に関するルールの変更です。

基礎控除を超えそうなときに検討できること

判定の結果、基礎控除を超えることが分かった場合にできることは、相続が起きる前か後かで大きく変わります

相続後にできるのは主に評価を適正に下げることと、特例を漏らさず使うことです。財産を減らす対策は取れません。

一方で相続が起きる前なら選択肢は広がります。まず線引きを確認してください。

生前にできることと相続後にできることの線引き

時期 できること できないこと
相続が起きる前 生前贈与・生命保険の非課税枠の活用・不動産の組み替え・養子縁組の検討
相続が起きた後 土地の評価を適正に下げる・特例と控除を漏らさず使う・分割方法の工夫 財産そのものを減らす対策

表の見方:黄色の行のとおり選択肢が多いのは生前のみです。相続後は「正しく評価して正しく特例を使う」ことが対策になります。

相続後でも使える評価減と特例

相続が起きた後でも、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減は大きな効果があります

自宅の土地は330㎡まで80%減額でき、配偶者が取得した財産は1億6,000万円または法定相続分まで課税されません。

ただし配偶者に寄せすぎると、次の相続で負担が増えることがあります。二次相続まで見た配分の検討が必要です。

注意:これらの特例は遺産分割が終わっていないと使えません。申告期限までにまとまらない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えて申告してください。

生前にできる対策の全体像

相続が起きる前なら、財産を減らす対策と評価を下げる対策の両方が使えます。

  • 年110万円の範囲内での暦年贈与(ただし7年加算の対象になる点に注意)
  • 生命保険への加入による非課税枠(500万円×法定相続人の数)の活用
  • 教育資金や住宅取得資金の贈与の特例の利用
  • 現金から不動産への組み替えによる評価額の圧縮

どの対策も効果と手間が違うため、優先順位をつけて進めてください。手当たり次第に実行すると、かえって不利になることもあります。

相続税の節税対策の全体像と優先順位は、下記の記事で解説しています。

相続税の基礎控除の判定は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

基礎控除の計算式は単純でも、当てはめる正味の遺産額は自分では確定しづらいものです。複数の税理士に同じ条件で相談し、横並びで比較するのが確実です

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

基礎控除の判定で差が出るのは計算式ではなく、財産をいくらと評価するかです。ここは経験量が結果に直結します。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

  • 土地の減額要素を現地と役所で調査し、評価を適正に下げられる
  • 家族名義の口座まで確認し、名義預金の加算漏れを防げる
  • 相続税法上の法定相続人の数を正しく数え、基礎控除と非課税枠を確定できる
  • 過去7年分の贈与を洗い出し、加算漏れによる後日の追徴を避けられる
  • 特例を使って0円になる場合に、期限内の申告まで確実に完了させられる

【具体例|正味の遺産額が基礎控除4,800万円を300万円上回ると判断したケース】

A税理士は路線価×面積のまま申告して納税。B税理士は不整形地補正とセットバックを反映し評価を700万円下げ、基礎控除以下となり納税0円になりました。

この差は税理士の判断で生まれたものです。自分で概算するだけでは、下げられる評価に気づけません

税理士を比較するときの3つの判定ポイント

相続税に対応している税理士でも実務力には差があります。見積りや初回相談で、次の3点を比べてみてください。

「土地の現地調査をするか・家族名義の口座まで確認するか・特例適用時の申告が業務範囲に入るか」の3点で見分けられます

判定ポイント1:土地の現地調査と役所調査をするか
不動産がある場合、現地と役所を調査するかを確認します。机上の資料だけでは不整形地・セットバック・高低差などの減額要素は拾えません。→ 現地調査を行う税理士のほうが、評価を適正に下げられると判定できます。

判定ポイント2:家族名義の口座まで確認するか
名義預金の判定を行うかを確認します。本人名義の残高だけを集計する進め方では、後から加算されて追徴になるおそれがあります。→ 資金の出どころまで確認する税理士のほうが、判定の精度が高いと判定できます。

判定ポイント3:特例で0円になる場合の申告が業務範囲に入るか
税額が0円でも申告書の提出が必要なケースがあります。この申告が見積りに含まれるかを確認してください。→ 業務範囲を明示する税理士のほうが、後からの追加請求がないと判定できます。

相談しないまま進めるリスク

1社だけで決めると、その事務所の評価が適正なのか判断できません。比較対象がないまま申告することになります

具体的には次のようなリスクがあります。

相談せずに進めた場合のリスク

  • 概算で基礎控除以下と判断し、名義預金の加算で後から課税対象だったと判明する
  • 土地の補正を反映せず、本来より高い評価額で申告して納めすぎる
  • 小規模宅地等の特例を前提に申告不要と判断し、期限後に特例が使えなくなる
  • 相続人の数え方を誤り、基礎控除と非課税枠が最大1,600万円ずれる
  • 過去7年分の贈与の加算を漏らし、税務調査で加算税と延滞税が加わる

これらの多くは複数の事務所に相談するだけで防げます。相談は無料のことが多く、比べるだけなら費用はかかりません

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

実際に一括相談・見積りを利用する流れは、次の4ステップです。フォームの記入自体は5分ほどで終わります。

申告期限は10ヶ月です。相続開始から7ヶ月以内に依頼先を決めると余裕を持って進められます

STEP1
相続の概要を整理する。被相続人の資産内容と資産額の概算・相続人の構成と人数・年齢・遺言の有無をまとめる

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する。相続税申告や申告要否の判定などの希望内容を明記し、相続税の対応実績がある税理士3〜5社へ同時に打診する。不動産があれば所在地と広さ、土地の数も伝える(記入は5分程度)

STEP3
各税理士から「提案内容」「試算した相続税額」「報酬額」が記載された見積りが届く。上記の3つの判定ポイントをぶつけ、気になる事務所と初回相談を行う

STEP4
「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で最適な事務所を選び、正式に依頼する。相続開始から7ヶ月以内に決めると余裕を持って進められる

重要ポイント:依頼時は「土地の数」「相続人の人数」「相続開始日」を全社に同じように伝えてください。条件がそろっていないと、届いた提案を比較できません。

税理士の選び方の判定軸と見極め方は、下記の記事で解説しています。

税理士費用の相場と見積書の見方は、下記の記事で解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続税の基礎控除は一人当たりいくらですか?

基礎控除は「一人当たり」の枠ではありません。遺産の総額から一括で差し引く合計額で、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。

相続人3人なら4,800万円で、これを遺産の総額から1回だけ差し引きます。相続人1人あたり4,800万円という考え方ではありません。

Q2. 相続放棄をすると基礎控除は減りますか?

減りません。基礎控除の計算に使う人数は「相続放棄がなかったものとした場合の相続人の数」です。子3人のうち2人が放棄しても、基礎控除は3人で計算して4,800万円になります。ただし放棄によって新たに相続人になった人を足して増やすこともできません。

Q3. 基礎控除以下なら本当に申告しなくてよいのですか?

特例を使わずに基礎控除以下なら申告は不要です。ただし小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使った結果として基礎控除以下になる場合は、申告書の提出が特例を使う条件になります。この場合に申告しないと特例が適用されず、本来の評価額で課税されます。

Q4. 基礎控除は今後さらに引き下げられますか?

2015年の改正以降は据え置かれており、現時点で引き下げの予定は公表されていません。近年の改正は生前贈与と相続の扱いをそろえる方向に向かっています。

2024年には贈与の加算期間が3年から7年に延長されました。ただし地価が上がれば、制度が変わらなくても課税対象になる人は増えます。

Q5. 遺産が基礎控除ギリギリのときはどうすればよいですか?

概算のままで結論を出さないでください。土地の形状などの補正で評価が10〜40%下がることがあり、逆に名義預金や生前贈与の加算で数百万円上がることもあります。差が500万円以内なら、土地の評価と名義預金の判断について税理士に確認するほうが確実です。

まとめ|基礎控除は「式」より「当てはめる数字」で決まる

基礎控除の基本

  • 基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。相続人1人なら3,600万円、3人なら4,800万円
  • 相続人ごとの枠ではなく、遺産の総額から一括で差し引く合計額
  • 基礎控除の計算に使う人数は民法上の相続人と別。放棄した人も含め、養子は実子がいれば1人・いなければ2人まで
  • 人数を1人間違えると、基礎控除と生命保険・死亡退職金の非課税枠が合計で最大1,600万円ずれる

判定するときのポイント

  • 比べる相手は「正味の遺産額」。みなし相続財産と7年以内の贈与を加算し、非課税財産・債務・葬式費用を差し引く
  • 基礎控除との差が500万円以内なら、土地の補正・名義預金・小規模宅地等の特例で結論が逆転しうる
  • 特例を使って0円になる場合は、申告書の提出が適用の条件になる
  • 申告不要と判断した場合も、判定に使った資料は5〜7年保管して「お尋ね」に備える

今すぐ取るべき行動

  • 法定相続人の数を特殊ルールに沿って確定し、基礎控除額を計算する
  • 本記事の算出シートに沿って、加算3項目と減算3項目を埋めて正味の遺産額を出す
  • 基礎控除との差が500万円以内なら、複数の税理士に一括相談・見積りを依頼して評価を確認する

※本記事は2026年8月時点の法令・実務に基づいて作成しています。相続税法や関連制度の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度や個別の判断については、国税庁の情報や相続税の対応実績がある税理士に必ずご確認ください。

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