7,000万円の相続税はいくら?相続人7人以上で0円になる境界と家族構成別の早見表

7,000万円_相続税

遺産が7,000万円あるとき、相続税は0円から720万円まで変わります。同じ7,000万円でも、相続人が誰で何人いるかによって結果がまったく違ってきます。

この金額帯には他の帯にない特徴があります。相続人が7人以上いれば、特例を何も使わなくても相続税は0円になります。基礎控除が7,200万円になって遺産額を上回るためです。

逆に6人では0円になりません。基礎控除は6,600万円で、400万円の課税遺産が残って40万円かかります。「人数が多いから大丈夫」という判断が最も外れやすい金額帯です。

5,000万円なら4人で0円になり、1億円は人数をいくら増やしても0円になりません。人数だけで相続税をゼロにできる最後の帯が7,000万円です

自宅がある場合は別の境界があります。小規模宅地等の特例で評価が8割下がるため、自宅の土地が財産の39%以上を占めていれば0円になります。

そして生前対策の効き方も帯によって違います。7,000万円なら生命保険の非課税枠と養子縁組を組み合わせるだけで、相続税を0円にできます。

この記事では、相続人の人数で0円になる境界から始めて、家族構成別の早見表、自宅の比率で0円になる条件、配偶者にいくら渡すと生涯の負担が最小になるか、納税資金の用意、そして生前対策の効果までを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 遺産7,000万円の相続税は0円〜720万円。相続人7人以上なら特例を使わなくても0円になるが、6人では40万円かかる
  • 自宅の土地が財産の39%以上(2,750万円以上)を占めていれば、小規模宅地等の特例で0円になる
  • 生命保険の非課税枠と養子縁組を組み合わせれば225万円を0円にできる。1億円帯では同じことをしても275万円残る
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結論|7,000万円は相続人7人以上で0円。上限は720万円まで

遺産7,000万円の相続税は、相続人の構成によって0円から720万円まで変わります。この帯の特徴は、相続人の人数だけで0円にできる点にあります。この章では結論を先に示したうえで、0円になる人数の境界と、上限がどこまで上がるのかを整理します。

相続人の構成別に見た上限と下限

まず結論から確認します。同じ7,000万円でも、誰が相続するかで納付額はここまで開きます。

ケース 納付額 理由
配偶者が全額を取得 0円 配偶者の税額軽減が1億6,000万円まで効く
相続人が7人以上 0円 基礎控除7,200万円が遺産額を上回る
配偶者+子2人(法定相続分) 112万5,000円 相続税の総額225万円のうち配偶者分が軽減される
配偶者+子1人(法定相続分) 160万円 基礎控除が4,200万円と小さい
子1人のみ 480万円 税額軽減がなく基礎控除も3,600万円
兄弟姉妹1人のみ 576万円 480万円に2割加算
法定相続人が0人(第三者へ遺贈) 720万円 基礎控除が3,000万円しかなく、さらに2割加算

表の見方:上に行くほど負担が軽く、下に行くほど重くなります。配偶者がいるかどうかと、相続人が何人いるかで結果が大きく変わります。

重要ポイント:最も軽いケースと最も重いケースの差は720万円です。遺産額が同じでも、相続人の構成だけでこれだけ動きます

参照元:国税庁 No.4157 相続税額の2割加算

0円になるのは相続人7人以上|子6人でも40万円残る

基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。遺産7,000万円を上回るのは相続人7人(7,200万円)からになります。

相続人(子のみ) 基礎控除 課税遺産総額 相続税の総額
子1人 3,600万円 3,400万円 480万円
子2人 4,200万円 2,800万円 320万円
子3人 4,800万円 2,200万円 220万円
子4人 5,400万円 1,600万円 160万円
子5人 6,000万円 1,000万円 100万円
子6人 6,600万円 400万円 40万円
子7人 7,200万円 0円 0円

表の見方:相続人が1人増えるごとに基礎控除が600万円増え、課税遺産総額が600万円減ります。6人と7人の間で結論が0円に反転します

重要ポイント:「人数が多いから申告不要」と考えて6人で止まると40万円の申告漏れになります。相続人の人数はあと1人で結論が変わるので、戸籍で正確に数える必要があります。

7,000万円という金額は、他の帯と比べても特殊な位置にあります。

遺産総額 人数だけで0円になるか 必要な相続人の数
5,000万円 なる 4人以上(基礎控除5,400万円)
7,000万円 なる 7人以上(基礎控除7,200万円)
1億円 現実的にならない 12人以上(基礎控除1億200万円)

計算ロジック:基礎控除が1億円を上回るには3,000万円+600万円×12人=1億200万円が必要です。計算上は12人で0円になりますが、法定相続人が12人になるケースはほぼないため、1億円は人数では0円にできないと考えてよいでしょう

基礎控除の計算方法と課税されるかどうかの判定手順は、下記の記事で解説しています。

上限は3段階|子1人480万円・兄弟姉妹1人576万円・相続人0人720万円

「7,000万円の相続税は最大いくらか」は、誰が相続するかで3段階に分かれます。最も重いのは法定相続人が1人もいないケースです

数字 何を指すか 当てはまるケース
480万円 相続税の総額の最大。2割加算を考えない場合 子1人のみ・父母1人のみが相続する
576万円 納付額の最大。2割加算を含む 兄弟姉妹1人が相続する
720万円 法定相続人が0人で第三者へ遺贈した場合 相続人がおらず、遺言で友人や団体へ遺贈する

計算ロジック:法定相続人が0人なら基礎控除は3,000万円です。課税遺産総額4,000万円に税率20%を乗じて控除額200万円を引くと600万円。受遺者は2割加算の対象なので600万円×1.2=720万円になります。

重要ポイント:兄弟姉妹や第三者が相続すると2割加算が効きます。子1人の480万円に対し、兄弟姉妹1人なら576万円で96万円の差が出ます。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

【早見表】家族構成別|7,000万円の相続税

相続人の構成ごとに、相続税の総額と実際の納付額を一覧にしました。配偶者がいる場合は税額軽減が効くため、総額と納付額が大きく違ってきます。この章では配偶者ありとなしに分け、さらに法定相続人がいないケースまで示します。

配偶者がいる場合|子・父母・兄弟姉妹との組み合わせ

配偶者と誰が相続人になるかで法定相続分が変わります。子なら2分の1、父母なら3分の1、兄弟姉妹なら4分の1です。

相続人の構成 基礎控除 課税遺産総額 相続税の総額 実際の納付額
配偶者+子1人 4,200万円 2,800万円 320万円 160万円
配偶者+子2人 4,800万円 2,200万円 225万円 112万5,000円
配偶者+子3人 5,400万円 1,600万円 160万円 80万円
配偶者+子4人 6,000万円 1,000万円 100万円 50万円
配偶者+父母1人 4,200万円 2,800万円 323万3,000円 約108万円
配偶者+兄弟姉妹1人 4,200万円 2,800万円 335万円 約101万円(2割加算後)
配偶者のみ 3,600万円 3,400万円 480万円 0円

表の見方:「実際の納付額」は法定相続分どおりに取得し、配偶者が税額軽減を適用した場合の合計です。分け方を変えると納付額も変わります。

重要ポイント:配偶者と子4人なら納付額は50万円まで下がります。子1人の160万円と比べて110万円の差で、基礎控除が増えることに加えて1人あたりの取得金額が下がって税率も下がるためです。

計算ロジック:配偶者+子2人なら基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円。課税遺産総額2,200万円を法定相続分で按分し、配偶者1,100万円と子各550万円にそれぞれ税率10%を乗じて合計225万円になります。

参照元:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

配偶者がいない場合|子1〜7人・兄弟姉妹

配偶者がいないと税額軽減が使えないため、相続税の総額がそのまま納付額になります。

相続人の構成 基礎控除 課税遺産総額 相続税の総額(=納付額)
子1人のみ 3,600万円 3,400万円 480万円
子2人のみ 4,200万円 2,800万円 320万円
子3人のみ 4,800万円 2,200万円 220万円
子4人のみ 5,400万円 1,600万円 160万円
子5人のみ 6,000万円 1,000万円 100万円
子6人のみ 6,600万円 400万円 40万円
子7人以上のみ 7,200万円〜 0円 0円
父母1人のみ 3,600万円 3,400万円 480万円
兄弟姉妹1人のみ 3,600万円 3,400万円 576万円(2割加算後)
兄弟姉妹2人のみ 4,200万円 2,800万円 384万円(2割加算後)

重要ポイント:兄弟姉妹1人のみが相続する576万円が、法定相続人がいるケースでは最も重くなります。子1人の480万円に2割を加算した金額です。

兄弟姉妹が相続人になる場合の2割加算の仕組みは、下記の記事で解説しています。

法定相続人が0人のケース|第三者への遺贈

相続人が誰もいない場合でも、遺言で財産を遺贈すれば相続税がかかります。この場合が最も重くなります。

基礎控除は3,000万円+600万円×0人で3,000万円しかありません。しかも受遺者は配偶者・父母・子のいずれにも当たらないため2割加算の対象です。

項目 金額
遺産 7,000万円
基礎控除 3,000万円
課税遺産総額 4,000万円
2割加算前の相続税 600万円
納付額 720万円

注意:子や孫がいない方が友人や知人に遺贈するケースがこれに当たります。遺贈を受けた人が720万円を納めることになるため、受け取る側に納税資金があるかを事前に確認しておく必要があります

早見表の前提と、ここから外れる条件

ここまでの数値は次の前提で計算しています。前提から外れると税額は変わります。

  • 各相続人が法定相続分どおりに取得した場合
  • 小規模宅地等の特例など、財産の評価を下げる特例を使わない場合
  • 配偶者の税額軽減以外の税額控除を適用しない場合
  • 生前贈与の加算や相続時精算課税の持ち戻しがない場合

注意:自宅の土地がある場合は小規模宅地等の特例で評価額が最大80%下がります。7,000万円帯では自宅の土地が財産の39%以上あれば0円になるため、実際の税額は早見表よりかなり低くなることがあります。

相続税の計算方法|7,000万円のモデルケースで4ステップ

早見表で目安をつかんだら、自分のケースで計算します。相続税は遺産額に直接税率を掛けても求まりません。基礎控除を引き、法定相続分で按分してから税率を適用します。

この章では配偶者と子2人のケースで4ステップをたどり、控除と加算の適用順序、そして集計時の注意点まで確認します。

STEP1〜STEP4|配偶者と子2人のモデルケース

STEP1
正味の遺産額を計算する
プラスの財産とみなし相続財産を合計し、非課税財産・債務・葬式費用を差し引きます。加算対象期間内の暦年贈与があれば加算します。ここで7,000万円と確定させます

STEP2
基礎控除を差し引く
3,000万円+600万円×3人=4,800万円。7,000万円-4,800万円=課税遺産総額2,200万円です。ここが0円以下なら相続税はかかりません。

STEP3
法定相続分で按分して総額を出す
配偶者1,100万円・子各550万円に税率10%を乗じると、110万円+55万円+55万円=相続税の総額225万円。実際にどう分けたかに関係なく、いったん法定相続分で計算します。

STEP4
実際の取得割合で按分して控除を適用する
総額225万円を実際の取得割合で割り振ります。配偶者が2分の1を取得したなら配偶者112万5,000円・子各56万2,500円で、配偶者分は税額軽減で0円。納付額の合計は112万5,000円です。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

相続税の計算方法の詳しい手順は、下記の記事で解説しています。

控除と加算を適用する正しい順序

STEP4で複数の控除や2割加算が絡むとき、適用する順序が決まっています。2割加算は税額控除より先です

順序 処理 内容
1 各人の税額を算出 相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計額
2 2割加算 配偶者・父母・子以外が取得した場合、税額控除を差し引く前の相続税額に20%を加算
3 贈与税額控除 加算対象期間内の贈与で納めた贈与税を控除
4 配偶者の税額軽減 1億6,000万円または法定相続分相当額まで
5 未成年者控除 18歳までの年数×10万円
6 障害者控除 85歳までの年数×10万円(特別障害者は20万円)
7 相次相続控除 10年以内に相次いで相続があった場合
8 外国税額控除 国外財産に外国の相続税が課された場合

重要ポイント:国税庁は「税額控除を差し引く前の相続税額に20%相当額を加算した後、税額控除額を差し引く」と定めています。順序を逆にすると税額を少なく計算してしまいます

計算ロジック:孫が100万円の税額で未成年者控除40万円を使う場合、正しくは100万円×1.2=120万円から40万円を引いて80万円です。順序を逆にすると(100万円-40万円)×1.2=72万円となり、8万円少なく計算してしまいます。

参照元:国税庁 No.4164 未成年者の税額控除

集計漏れと、加算対象期間は3年か7年か

7,000万円は基礎控除に比べて余裕が小さい金額です。集計を1つ誤ると課税されるかどうかの結論まで変わります。加える財産と差し引ける費用を確認します。

  • □ 生命保険金・死亡退職金(非課税枠を超える部分は課税対象)
  • □ 名義預金(配偶者や子の名義でも、通帳と印鑑を被相続人が管理していた口座)
  • □ タンス預金・手元の現金
  • □ 相続時精算課税を使って贈与された財産
  • □ 加算対象期間内の暦年贈与
  • □ 未収の家賃・配当・還付金
  • □ 借入金などの債務と葬式費用(差し引ける)

暦年贈与の加算対象期間を「相続開始前7年以内」と説明する資料が多くありますが、相続の時期によって異なります。

被相続人の相続開始日 加算対象期間
〜令和8年(2026年)12月31日 相続開始前3年以内
令和9年1月1日〜令和12年12月31日 令和6年1月1日から死亡の日までの間
令和13年1月1日〜 相続開始前7年以内

表の見方:7年という数字が完全に適用されるのは令和13年(2031年)1月1日以後の相続からです。2026年中の相続なら3年以内の贈与だけを加算します。

重要ポイント:相続人の数え方も結果を左右します。相続放棄をした人がいても基礎控除の計算では人数に含め、養子は実子がいれば1人まで、いなければ2人までしか含められません。

参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

法定相続人の数え方と範囲・順位は、下記の記事で解説しています。

【財産構成別】7,000万円で相続税を0円にできる条件

遺産の総額が同じでも、中身によって税額はまったく変わります。現金だけなら225万円かかりますが、自宅の土地が財産の39%以上を占めていれば0円になります

この章では4つの構成で税額を計算し、0円になる境界を式で示します。5,000万円帯と1億円帯とは必要な条件がまったく違う点が要点です。

シミュレーションの前提条件

【前提】

  • 遺産の合計=7,000万円(評価減を適用する前の相続税評価額)
  • 相続人=配偶者と子2人の合計3人
  • 基礎控除=3,000万円+600万円×3人=4,800万円
  • 自宅の土地は330㎡以内で、小規模宅地等の特例(特定居住用・80%減)を適用できるものとする
  • 債務・葬式費用はないものとする
  • 比較する数値は「相続税の総額」(配偶者の税額軽減を適用する前の金額)

評価減を一切適用しない場合の相続税の総額は225万円です。ここを基準に4つの構成を比べます。

パターンA|現金・預貯金のみ

財産 評価減前 適用できる評価減 課税価格
現金・預貯金 7,000万円 なし 7,000万円
相続税の総額 225万円

重要ポイント:現金は残高がそのまま評価額になるため、税理士が入っても税額は動きません。この構成で下げられるのは生前対策だけです。

パターンB|自宅あり(土地が財産の29%)

財産 評価減前 適用できる評価減 課税価格
自宅の土地 2,000万円 小規模宅地等の特例(80%減) 400万円
自宅の建物 1,000万円 なし 1,000万円
預貯金 4,000万円 なし 4,000万円
合計 7,000万円 5,400万円
相続税の総額 60万円

計算ロジック:1,600万円の減額により課税価格は5,400万円。基礎控除4,800万円を引いた課税遺産総額600万円を法定相続分で按分し、配偶者300万円・子各150万円に税率10%を乗じて合計60万円です。

重要ポイント:225万円から60万円まで下がりましたが、0円には届いていません。あと600万円分の圧縮が必要です。

小規模宅地等の特例の要件と適用の判定は、下記の記事で解説しています。

パターンC|賃貸不動産が中心

財産 評価減前 適用できる評価減 課税価格
賃貸物件の土地 3,500万円 貸家建付地の評価(18%減) 2,870万円
賃貸物件の建物 2,000万円 貸家の評価(借家権割合30%減) 1,400万円
預貯金 1,500万円 なし 1,500万円
合計 7,000万円 5,770万円
相続税の総額 97万円

重要ポイント:賃貸不動産の評価減は18%と30%で、小規模宅地等の特例の80%に比べると幅が小さいものです。1,230万円しか圧縮できず、税額は97万円残ります

参照元:国税庁 No.4614 貸家建付地の評価

パターンD|自宅の土地が財産の39%を占める

財産 評価減前 適用できる評価減 課税価格
自宅の土地 2,750万円 小規模宅地等の特例(80%減) 550万円
自宅の建物 1,000万円 なし 1,000万円
預貯金 3,250万円 なし 3,250万円
合計 7,000万円 4,800万円
相続税の総額 0円

計算ロジック:課税価格4,800万円は基礎控除4,800万円とちょうど同額です。課税遺産総額が0円になるため相続税もかかりません。

注意:この特例を使って0円になった場合でも申告書の提出は必要です。申告しなければ特例そのものが適用されず、225万円が課税されます。

0円になる境界|自宅の土地が財産の39%を超えるかどうか

4つのパターンを並べると、0円になるかどうかは自宅の土地が財産に占める割合で決まることが分かります。

自宅の土地 財産に占める割合 課税価格 相続税の総額
0円(現金のみ) 0% 7,000万円 225万円
1,000万円 14% 6,200万円 140万円
2,000万円 29% 5,400万円 60万円
2,700万円 39% 4,840万円 4万円
2,750万円 39.3% 4,800万円 0円
4,000万円 57% 3,800万円 0円

計算ロジック:課税価格は「自宅の土地×0.2+(7,000万円-自宅の土地)」です。これが基礎控除4,800万円以下になる条件を解くと、自宅の土地が2,750万円以上という結果になります。

重要ポイント:境界の直前は税額がごく小さくなります。自宅の土地が2,700万円なら4万円で、あと50万円分の評価が下がれば0円です。生命保険の非課税枠を少し使うだけで越えられる水準です。

3つの帯で必要な条件はこう違う

同じ計算を他の金額帯で行うと、必要な自宅の比率が大きく変わります。

遺産総額 0円にするために必要な自宅の土地 財産に占める割合
5,000万円 250万円以上 5%
7,000万円 2,750万円以上 39%
1億円 6,500万円以上 65%

表の見方:いずれも相続人が配偶者と子2人(基礎控除4,800万円)の場合です。遺産が増えても基礎控除は変わらないため、0円にするためのハードルが上がっていきます

重要ポイント:7,000万円帯は自宅が財産の4割ほどあれば0円になります。持ち家がある家庭ではめずらしくない比率なので、自宅の評価額を確認する価値が大きい帯です

遺産5,000万円と1億円のケースは、下記の記事で解説しています。

遺産1億円のときの税額と配偶者への最適な配分は、下記の記事で解説しています。

配偶者にいくら渡すと7,000万円の負担が最小になるか

相続人が同じでも、配偶者がいくら取得するかで生涯の負担は変わります。一次相続だけを見れば配偶者に全額寄せるのが最良ですが、二次相続まで含めると最も高くなります

この章では7,000万円という金額での最適値を数値で示します。二次相続そのものの仕組みは下記の記事で解説しているので、あわせて確認してください。

配偶者の取得額別|一次と二次の合計はこう動く

遺産7,000万円を配偶者と子2人で相続し、配偶者が取得した財産をそのまま残して亡くなったときに子2人が相続する前提で計算します。二次相続の基礎控除は相続人2人なので4,200万円です。

配偶者の取得額 一次相続の納付額 二次相続の相続税 一次+二次の合計
0円 225万円 0円 225万円
2,000万円 160万7,000円 0円 160万7,000円
3,500万円(法定相続分) 112万5,000円 0円 112万5,000円
4,200万円 90万円 0円 90万円(最小)
4,300万円 86万8,000円 10万円 96万8,000円
5,000万円 64万3,000円 80万円 144万3,000円
7,000万円(全額) 0円 320万円 320万円(最大)

表の見方:一次相続の納付額だけを見れば全額を配偶者に寄せるのが最良ですが、合計では最悪になります。最小と最大の差は230万円です

計算ロジック:一次相続の総額225万円を実際の取得割合で按分します。配偶者が4,200万円(60%)なら子の取得分は40%で、225万円×40%=90万円。二次相続は配偶者の財産4,200万円が基礎控除と同額なので0円です。

重要ポイント:配偶者に全額を渡すと一次相続は0円になりますが、二次相続で320万円かかります。「とりあえず配偶者が全部」という判断が、この帯では最も高くつきます

最小になるのは二次相続の基礎控除ちょうど

合計が最も小さくなるのは、配偶者の取得額を二次相続の基礎控除4,200万円ちょうどに合わせたときです。法定相続分どおりの3,500万円より22万5,000円有利になります。

理由は限界税率の比較にあります。配偶者に1円多く渡すと、一次相続の税額は約3.2%ずつ減ります。相続税の総額225万円を遺産7,000万円で割った割合です。

一方、配偶者の取得額が二次相続の基礎控除4,200万円を超えると、超えた分に最低でも10%の税率がかかります。減る3.2%より増える10%のほうが大きいため、4,200万円を超えると不利に転じます

注意:4,200万円を100万円超えて4,300万円にするだけで、合計は90万円から96万8,000円へ増えます。境界を越えた瞬間から二次相続で課税が始まるためです。

配偶者に固有の財産があるときの調整

ここまでの試算は配偶者自身の財産がゼロという前提でした。実際には配偶者にも預貯金や不動産があることが多く、その分だけ二次相続の課税対象が増えます。

考え方は変わりません。配偶者の固有の財産と相続する財産の合計を、二次相続の基礎控除4,200万円に収めます

配偶者の固有財産 最適な取得額 一次相続の納付額 二次相続 一次+二次の合計
0円 4,200万円 90万円 0円 90万円
1,000万円 3,200万円 約122万1,000円 0円 約122万1,000円
2,000万円 2,200万円 約154万3,000円 0円 約154万3,000円
3,000万円 1,200万円 約186万4,000円 0円 約186万4,000円
4,200万円以上 0円 225万円 固有財産が4,200万円を超えた分に課税 225万円〜

表の見方:「最適な取得額」は「4,200万円-配偶者の固有財産」です。固有財産が1,000万円なら3,200万円までにとどめると、二次相続で課税されずに済みます。

重要ポイント:配偶者の固有財産が4,200万円を超えている場合、一次相続で配偶者が何も取得しないほうが合計は小さくなります。ただし配偶者の生活資金が確保できるかを先に確認する必要があります。

前提の確認と、税額以外の判断軸

【前提の確認】二次相続までの間に財産は増減する

試算は配偶者が相続した財産をそのまま残して亡くなる前提です。生活費で取り崩せば二次相続の課税対象は減り、運用で増やせば増えます。二次相続は10年後、20年後に起こることもあります。

【判断1】一次の税額をゼロにすることを目標にしない

一次と二次を足した金額で比べます。配偶者に全額寄せると一次は0円ですが、合計は320万円で最も高くなります。

【判断2】二次相続の基礎控除から逆算する

配偶者の固有の財産と相続する財産の合計が、二次相続の基礎控除に収まる範囲を目安にします。子2人ならその金額は4,200万円です。

【判断3】配偶者の生活資金と住まいを優先する

7,000万円帯での差は最大230万円です。金額として小さくはありませんが、配偶者が生活に困る配分にしてまで追う額ではありません。

重要ポイント:配偶者居住権を使えば、住まいを確保しながら取得する財産の額を抑えられます。生活と税額の両立を図る手段として検討する価値があります

納税資金をどう用意するか

税額が出たら、次は払えるかどうかの問題になります。相続税は原則として申告期限までに現金で一括納付します。7,000万円帯では税額そのものは大きくありませんが、遺産の大半が不動産だと手元の現金が足りなくなります。

この章では必要な現金を洗い出し、足りない場合の選択肢を整理します。

7,000万円帯で必要になる現金の目安

用意すべきなのは相続税だけではありません。手続き全体でかかる費用を並べます。

費目 目安 支払う時期
相続税 0〜720万円(配偶者+子2人なら112万5,000円) 相続開始から10か月以内
税理士報酬 28万〜78万円 申告前後
不動産の相続登記(登録免許税) 固定資産税評価額の0.4% 登記のとき
司法書士報酬(登記を依頼する場合) 5万〜10万円程度 登記のとき
戸籍謄本などの取得費用 数千円〜2万円程度 手続きの初期
葬儀費用 ケースによる 相続開始直後

表の見方:税理士報酬は相続を専門とする事務所の公開料金で、遺産総額5,000万〜7,000万円の区間が28万〜60万円、7,000万〜1億円の区間が38万〜78万円です。7,000万円はその境目にあたります。

計算ロジック:自宅の固定資産税評価額が1,500万円なら登録免許税は1,500万円×0.4%=6万円です。相続税112万5,000円のケースでも、報酬と登記費用を合わせると170万円前後の現金が必要になります

手元の現金で足りるかの判定

  • □ 遺産のうち現金・預貯金がいくらあるか
  • □ そのうち納税に充てられるのは誰が取得する分か
  • □ 生命保険金を受け取る予定があるか(受取人固有の財産なので分割協議を待たずに使える)
  • □ 不動産を取得する人と現金を取得する人が分かれていないか
  • □ 相続人自身の資金で立て替えられるか

重要ポイント:不動産を取得する人と現金を取得する人が分かれると、不動産を取得した人だけ資金が足りなくなります。遺産分割の段階で、誰がいくら納めるかも一緒に決めておく必要があります。

現金が足りなくなる典型例|子1人が賃貸不動産を相続するケース

不足が起きやすいのは、配偶者がおらず子1人が賃貸不動産を相続するケースです。基礎控除が3,600万円と小さいうえ、手元の現金も少ないためです。

項目 金額
賃貸物件の土地4,500万円(貸家建付地18%減) 3,690万円
賃貸物件の建物2,300万円(貸家30%減) 1,610万円
預貯金 200万円
課税価格の合計 5,500万円
相続税(子1人・基礎控除3,600万円) 235万円
税理士報酬 50万円
登録免許税(固定資産税評価額2,000万円×0.4%) 8万円
必要な現金の合計 293万円
手元の現金との差 93万円の不足

表の見方:評価減が効いて課税価格は7,000万円から5,500万円に下がりましたが、評価が下がっても納めるのは現金です。手元の200万円では足りません。

計算ロジック:課税価格5,500万円から基礎控除3,600万円を引いた課税遺産総額1,900万円に税率15%を乗じて控除額50万円を引くと235万円です。配偶者がいないため税額軽減は使えません。

重要ポイント:同じ財産でも配偶者と子2人なら税額は大きく下がります。配偶者がいるかどうかで納税資金の必要額まで変わります

足りない場合の選択肢

現金が足りないときの手段は限られます。7,000万円帯では税額が数十万円から数百万円にとどまるため、延納や物納は要件を満たしにくくなります。

手段 内容 7,000万円帯での現実性
預貯金の仮払い制度 遺産分割前でも預貯金の一定額を単独で払い戻せる(1金融機関あたり150万円が上限) ◎ この帯では上限内で足りることが多い
生命保険金を充てる 受取人固有の財産なので分割協議を待たずに受け取れる ◎ 契約があれば最も確実
不動産の売却 売却して納税資金を作る ○ 申告期限までの時間を確保できれば有効
相続人自身の資金で立て替える いったん自分の預貯金から納め、後で精算する ○ 数十万円〜百万円台なら現実的
延納 年賦で分割納付する。相続税額10万円超・金銭で納付することが困難などの要件がある △ 担保の提供と利子税が必要で手間が大きい
物納 相続財産そのもので納付する。延納でも困難な場合に限られる × この税額では要件を満たしにくい

重要ポイント:1億円を超える帯では延納が現実的な選択肢になりますが、7,000万円帯では仮払い制度と生命保険で足りることが多く、延納まで進む必要はほとんどありません

参照元:国税庁 No.4211 相続税の延納国税庁 No.4214 相続税の物納

生前に手当てしておく方法

納税資金の問題は、相続が起きてからでは手が限られます。最も確実なのは生命保険です。

死亡保険金は受取人固有の財産なので、遺産分割協議がまとまっていなくても受け取れます。口座凍結の影響も受けません。

計算ロジック:相続人が3人なら非課税枠は500万円×3人=1,500万円です。現金1,500万円を保険に変えれば課税価格が1,500万円下がり、パターンAなら225万円が70万円になります。納税資金を確保しながら税額も下げられます。

参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

生命保険の非課税枠の使い方と契約形態ごとの注意点は、下記の記事で解説しています。

7,000万円の相続で使える控除・特例と、申告の要否

7,000万円帯は基礎控除との差が小さいため、控除や特例が1つ使えるかどうかで結論が変わります。ただし特例で0円になった場合は、申告しなければ特例そのものが使えません。この章では使える制度を一覧にしたうえで、申告が必要になるケースと期限を確認します。

使える控除・特例の一覧

制度 内容 7,000万円帯での効き方
配偶者の税額軽減 1億6,000万円または法定相続分相当額まで非課税 配偶者の取得分は実質0円。ただし二次相続に注意
小規模宅地等の特例 自宅の敷地330㎡まで評価額を80%減額 自宅の土地が財産の39%以上あれば0円にできる
生命保険金の非課税枠 500万円×法定相続人の数 相続人3人なら1,500万円を圧縮。これだけで155万円下がる
死亡退職金の非課税枠 500万円×法定相続人の数 保険と併用でき、合わせて3,000万円の圧縮も可能
未成年者控除 18歳までの年数×10万円 子が未成年なら数十万円の控除
障害者控除 85歳までの年数×10万円(特別障害者は20万円) 40歳の相続人なら450万円で、この帯なら税額を0円にできる
相次相続控除 10年以内に相次いで相続があった場合 二次相続で効く

重要ポイント:7,000万円帯は税額が最大720万円なので、障害者控除だけで0円になることがあります。1億円を超える帯では控除しきれませんが、この帯では制度1つで結論が変わります。

参照元:国税庁 No.4167 障害者の税額控除

配偶者の税額軽減でいくら減らせるかは、下記の記事で解説しています。

0円でも申告が必要な5つのケース

使った制度 申告
配偶者の税額軽減 必要
小規模宅地等の特例 必要
農地等の納税猶予の特例 必要
特定計画山林の特例 必要
相続財産を公益法人などに寄付した場合の非課税の特例 必要
基礎控除以下で0円(相続人7人以上など) 原則不要
生命保険金の非課税枠で0円 原則不要

表の見方:上の5つは「申告することが適用の要件」です。申告しないと特例が使えず、本来なら0円だった相続税が課税されます

重要ポイント:相続人7人以上で0円になる場合は申告不要ですが、パターンDのように小規模宅地等の特例で0円になった場合は申告が必要です。同じ0円でも扱いが違います

申告が必要ないケースの判定手順は、下記の記事で解説しています。

申告期限と、分割が決まらない場合の対応

申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割が終わっていなくても期限は延びません。

注意:期限までに分割が決まらない場合は、いったん法定相続分で申告しておきます。「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、後で分割がまとまったときに配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できます。提出を忘れると特例が使えなくなります。

参照元:国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告

申告までの流れと10か月の逆算スケジュールは、下記の記事で解説しています。

生前にできる対策|7,000万円帯は組み合わせで0円にできる

7,000万円帯の生前対策は、他の帯より効きます。生命保険の非課税枠と養子縁組を組み合わせるだけで、225万円を0円にできます。この章では効果を金額で示したうえで、1億円帯との違いと、直前に始めても効かない対策を分けます。

効果が大きい対策と、その金額

現金7,000万円(配偶者と子2人・相続税の総額225万円)を基準に、対策ごとの効果を計算しました。

対策 仕組み 対策後の税額 効果
生命保険の非課税枠を使い切る 現金1,500万円を保険に変える(500万円×3人) 70万円 ▲155万円
養子を1人迎える 相続人4人になり基礎控除が5,400万円に増える 160万円 ▲65万円
両方を実行する 保険2,000万円(500万円×4人)+養子1人 0円 ▲225万円(全額)
自宅を小規模宅地等の特例が使える状態にする 同居や家なき子の要件を満たしておく ケースによる 自宅の土地が39%以上なら0円

表の見方:いずれも遺産7,000万円・配偶者と子2人が前提です。養子を迎えると相続人が4人になるため、生命保険の非課税枠も2,000万円に増えます。

計算ロジック:両方を実行すると課税価格は7,000万円-2,000万円=5,000万円になり、基礎控除は3,000万円+600万円×4人=5,400万円です。課税価格が基礎控除を下回るため相続税は0円になります

1億円帯との違い|同じことをしても結果が変わる

同じ2つの対策を1億円で実行すると、結果はまったく違います。

遺産総額 対策前 生命保険+養子1人を実行 結果
7,000万円 225万円 課税価格5,000万円<基礎控除5,400万円 0円
1億円 630万円 課税価格8,000万円>基礎控除5,400万円 275万円が残る

重要ポイント:生命保険と養子縁組で動かせるのは合わせて2,600万円ほどです。7,000万円ならこの圧縮で基礎控除を下回りますが、1億円では届きません。対策の効果は遺産額との相対で決まります。

効果が限定的な対策・注意が要る対策

【直前に始めても効かない・リスクがある対策】

  • 暦年贈与 — 加算対象期間内の贈与は相続財産に加算される。相続開始日が令和8年12月31日以前なら3年以内が対象になるため、直前に始めても圧縮できない
  • 養子縁組 — 基礎控除は増えるが、孫を養子にした場合は2割加算の対象になる。相続人間の争いの火種にもなる
  • 賃貸不動産の購入 — 評価は下がるが、下記のとおり2027年から規制が入る
  • 相続直前の借入による不動産購入 — 令和4年の最高裁判決で、路線価による申告が否認された事例がある

注意:賃貸不動産を買って評価を下げる手法は、令和9年(2027年)1月1日以後の相続から、課税時期前5年以内に対価を伴う取引で取得したものは通常の取引価額で評価されます。取得から5年を超えて生存していなければ、パターンCのような評価減は使えません。

財産評価を下げる手法が今も使えるかどうかの線引きは、下記の記事で解説しています。

着手時期の目安

対策によって効果が出るまでの時間が違います。相続が近い段階で始めても間に合わないものがあります。

対策 効果が出るまでの期間 根拠
生命保険の非課税枠 契約後すぐ 500万円×法定相続人の数
養子縁組 縁組後すぐ 基礎控除と非課税枠が増える
小規模宅地等の特例 相続後の申告で適用可能 申告期限までに要件を満たして選択すればよい
賃貸不動産の取得による評価減 5年超 課税時期前5年以内の取得は通常の取引価額で評価(2027年以降)
暦年贈与による圧縮 加算対象期間を超えてから 令和8年12月31日以前の相続なら3年、令和13年以後は7年

重要ポイント:生命保険と養子縁組はどちらも実行後すぐ効きます。7,000万円帯でこの2つの組み合わせが強いのは、時間を必要としないからでもあります。

いつから何を始めるべきかの判定と、節税手段の全体像は、下記の記事で解説しています。

7,000万円の相続でよくある失敗

7,000万円帯は基礎控除との差が小さいため、判断を1つ誤ると結論が課税と非課税で入れ替わります。この帯で最も多いのは人数の数え違いです。この章では3つの事例と対策を示し、最後に確認項目をまとめます。

事例1|「7人いるから申告不要」と誤判断した

【状況】

子が6人いる家庭で、遺産は7,000万円でした。「相続人が多いから基礎控除で収まる」と考え、申告しませんでした。

【結果】

基礎控除は3,000万円+600万円×6人=6,600万円でした。400万円の課税遺産が残り、相続税40万円と無申告加算税・延滞税がかかりました

対策:0円になるのは相続人7人以上です。6人では40万円かかります。人数を数えたら基礎控除を実際に計算し、遺産額と比べます。相続放棄をした人がいても人数には含めるので、その点も確認します。

事例2|一次相続を0円にして二次相続で320万円

【状況】

父が亡くなり、遺産7,000万円を「とりあえず母が全部相続する」と決めました。配偶者の税額軽減により一次相続の相続税は0円で済みました。

【結果】

その後に母が亡くなり、子2人が7,000万円を相続。二次相続では税額軽減が使えず基礎控除も4,200万円に下がるため、相続税は320万円になりました

対策:一次と二次の合計で判断します。配偶者の取得額を二次相続の基礎控除4,200万円に合わせていれば、合計は90万円で済みました。差は230万円です。

事例3|土地の評価を下げる余地を取りこぼす

【状況】

自宅の土地を路線価にそのまま面積を掛けて評価し、申告しました。現地は見ていません。

【結果】

形がいびつで間口が狭い土地でしたが、不整形地補正も間口狭小補正も適用していませんでした。評価額が下がらず、あと少しで基礎控除に収まったのに課税されました

対策:現地調査と役所調査を工程に入れます。この帯は境界に近いため、数百万円の評価減で0円になることがあります。申告後でも、法定申告期限から5年以内なら更正の請求で取り戻せます。

土地の評価額の計算方法と減額補正は、下記の記事で解説しています。

チェックリスト|失敗を避ける確認項目

  • □ 法定相続人の数を戸籍で確定したか(相続放棄・養子・代襲相続を含む)
  • □ 基礎控除を実際に計算し、遺産額と比べたか(7人以上で0円)
  • □ 名義預金・タンス預金・みなし相続財産を集計に含めたか
  • □ 加算対象期間内の贈与を確認したか(2026年中の相続なら3年以内)
  • □ 自宅の土地が財産の39%以上を占めるか計算したか
  • □ 土地の現地調査と役所調査をしたか
  • □ 配偶者の取得額を一次と二次の合計で検討したか
  • □ 特例で0円になる場合も申告書を提出する予定か

重要ポイント:この帯で最も影響が大きいのは上の2項目です。人数と基礎控除の計算を確定させれば、課税されるかどうかの結論がまず決まります。

名義預金の判定基準と対策は、下記の記事で解説しています。

7,000万円の相続税は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

7,000万円帯は基礎控除4,800万円との差が2,200万円しかありません。土地の評価や特例の判定ひとつで、課税されるかどうかの結論が入れ替わります

しかも報酬は事務所によって2倍以上の開きがあり、1社だけでは比較のしようがありません。この章では複数の税理士に一括で相談する意味と手順を整理します。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

相続税の申告は、税理士なら誰でも同じ結果になる手続きではありません。この帯は境界に近いため、判断の差が0円と225万円という形で表れます

【実績がある税理士が必要な理由】

  • 相続人の確定 — 6人と7人で結論が0円に反転する。養子や代襲相続の扱いを誤ると判断ごと変わる
  • 土地の評価 — 補正の適用漏れで基礎控除を超えたままになる。現地と役所を調べないと分からない要素がある
  • 小規模宅地等の特例 — 自宅の土地が財産の39%以上なら0円にできる。申告が適用の条件でもある
  • 配分の設計 — 一次と二次の合計で最大230万円の差が出る
  • 集計漏れの防止 — 名義預金の漏れで基礎控除を超え、課税に転じることがある
  • 改正への追随 — 加算対象期間や貸付用不動産の評価見直しを織り込んで判定できる

具体例で見ます。自宅の土地2,750万円・建物1,000万円・預貯金3,250万円を配偶者と子2人が相続するケースで、A税理士は小規模宅地等の特例を使わずに申告し、相続税の総額を225万円と算定しました。

B税理士は要件を確認したうえで特例を適用し、課税価格を4,800万円まで下げて0円としました。同じ財産で225万円の差です。報酬を50万円としても175万円が手元に残ります。

計算ロジック:基礎控除は4,800万円。特例なしなら課税価格7,000万円で課税遺産総額2,200万円、相続税の総額225万円。特例ありなら土地が550万円に下がって課税価格4,800万円となり、基礎控除と同額なので0円です。

税理士を比較するときの3つの判定ポイント

見積りと初回相談の内容から、実務力は具体的に読み取れます。次の3点を同じ質問で比べます。

判定ポイント1:課税されるかどうかの結論を出せるか/相続人の数と財産の内訳を聞いたうえで「この条件なら基礎控除を2,200万円超えます」と示せるかを確認します。
→ その場で境界のどちら側かを示せる事務所のほうが、この帯の判断に慣れていると判定できます。

判定ポイント2:土地の評価をどう進めるか説明できるか/現地調査と役所調査を工程に入れているか、検討する補正を具体的に挙げられるかを確認します。
→ 工程に明記している事務所のほうが、評価額を下げる余地を取りこぼしにくいと判定できます。

判定ポイント3:見積りに加算条件が明示されているか/基本報酬だけを出す事務所と、土地の筆数・相続人の人数・書面添付の有無まで加算条件を書く事務所があります。
→ 先に示す事務所のほうが、後から総額が膨らむ心配が少ないと判定できます。

この3点は複数の事務所に同じ質問をすれば必ず差が出ます。1社だけでは、その回答が標準なのか判断できません。

相談しないまま進めるリスク

【相談しないまま進めるリスク】

  • 人数の数え違い — 「6人いるから申告不要」と判断し、40万円の無申告と加算税を招く
  • 特例の申告漏れ — 小規模宅地等の特例を使えるのに申告せず、0円で済んだはずの225万円を納める
  • 土地の評価の取りこぼし — 補正を適用せず、あと少しで基礎控除に収まったのに課税される
  • 配分の失敗 — 一次相続を0円にすることだけを考えて配偶者に寄せ、合計が320万円になる
  • 集計漏れによる追徴 — 名義預金の計上漏れを後から指摘され、加算税と延滞税が上乗せされる
  • 報酬の割高契約 — 相場を知らないまま1社と契約し、他社より数十万円高い報酬を払う

申告期限から5年以内なら更正の請求で取り戻せる場合もありますが、そもそも見落としに気づかなければ請求もできません

税理士費用の相場と見積書の見方は、下記の記事で解説しています。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

STEP1
相続の概要を整理する
被相続人の資産内容と資産額の概算、相続人の構成と年齢、遺言の有無を整理します。この帯では相続人の人数と自宅の土地の評価額が結論を左右するので、あわせて控えておきます。

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する
相続税申告・相続税の節税・準確定申告など希望する内容を明記し、目安3〜5社の税理士へ同時に打診します。所有する不動産があれば所在地と広さを記載します。財産の種類と相続人の人数はできるだけ正確に伝えると見積りの精度が上がります。フォームの記入自体は5分程度です。

STEP3
見積りと初回相談を受ける
各税理士から提案内容・試算相続税額・報酬額が記載された見積りが届きます。気になる事務所と初回相談を行い、上記の3つの判定ポイントを同じ質問で必ず確認します

STEP4
税理士を選定・正式依頼する
提案内容の質、説明の丁寧さ、報酬の納得性で最適な事務所を選びます。相続開始から7ヶ月以内に決めておくと、申告期限までに土地の評価と資料収集の時間を確保できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 遺産7,000万円の相続税は最大でいくらですか?

法定相続人がいる場合の最大は、兄弟姉妹1人が相続するケースの576万円です。子1人のみなら480万円で、2割加算がない分だけ軽くなります。

最も重いのは法定相続人が1人もおらず、遺言で第三者に遺贈するケースです。基礎控除が3,000万円しかなく2割加算もあるため720万円になります。

Q2. 相続人が何人いれば7,000万円でも相続税は0円になりますか?

7人以上です。基礎控除が3,000万円+600万円×7人=7,200万円となり、遺産7,000万円を上回るためです。この場合は特例を使わなくても0円で、申告も原則不要です。

6人では0円になりません。基礎控除6,600万円で400万円の課税遺産が残り、相続税40万円がかかります。「人数が多いから大丈夫」と判断せず、基礎控除を実際に計算してください。

Q3. 自宅があれば7,000万円でも相続税は0円になりますか?

自宅の土地が財産の39%以上(2,750万円以上)を占めていれば0円になります。小規模宅地等の特例で評価額が80%下がり、課税価格が基礎控除4,800万円以下になるためです。

自宅の土地が2,000万円(29%)だと課税価格5,400万円で60万円かかります。境界の直前は税額がごく小さくなるので、生命保険の非課税枠を少し使えば0円にできる場合もあります。ただし特例で0円にした場合は申告が必要です。

Q4. 配偶者が全部相続すれば相続税は0円にできますか?

一次相続は0円になりますが、二次相続まで含めると最も高くなります。配偶者が亡くなったときは税額軽減が使えず、相続人も減って基礎控除が小さくなるためです。

遺産7,000万円を配偶者が全額取得して子2人が二次相続すると合計320万円です。配偶者の取得額を二次相続の基礎控除4,200万円に合わせれば合計90万円で済み、230万円の差になります。

Q5. 5,000万円や1億円のときと何が違いますか?

0円にするための条件が違います。人数だけで0円にできるのは5,000万円なら4人以上、7,000万円なら7人以上で、1億円は現実的な人数では0円になりません。

自宅の比率も違います。0円にするために必要な自宅の土地は5,000万円なら財産の5%、7,000万円なら39%、1億円なら65%です。生前対策も、7,000万円なら生命保険と養子縁組の組み合わせで0円にできますが、1億円では275万円が残ります。

まとめ|7,000万円は「相続人の数」と「自宅の比率」で0円から720万円まで変わる

遺産7,000万円の相続税は、相続人の構成で0円から720万円まで開きます。同じ家族構成でも、財産の中身と分け方で結果は大きく変わります。

この帯の特徴は、境界が2つあることです。相続人の人数と自宅の土地の比率で、それぞれ0円になるかどうかが決まります。

この記事で扱った内容を整理すると次のとおりです。

  • 相続人7人以上(基礎控除7,200万円)なら特例を使わなくても0円。6人では40万円かかる
  • 上限は3段階。子1人480万円/兄弟姉妹1人576万円/法定相続人0人の遺贈720万円
  • 自宅の土地が財産の39%以上(2,750万円以上)なら小規模宅地等の特例で0円になる
  • 賃貸不動産の評価減は18%と30%で、小規模宅地等の特例の80%に比べると幅が小さい
  • 配偶者への配分は二次相続の基礎控除4,200万円に合わせると合計90万円で最小になる
  • 配偶者に全額寄せると一次は0円だが合計320万円で最大。差は230万円
  • 暦年贈与の加算対象期間は、相続開始日が令和8年12月31日以前なら3年以内
  • 生命保険の非課税枠と養子縁組を組み合わせれば225万円を0円にできる。1億円では275万円が残る
  • 特例で0円になった場合は申告が必要。人数で0円になった場合は原則不要

今すぐ取るべき行動

  • 法定相続人が何人になるかを戸籍で確定する(相続放棄・養子・代襲相続の有無を含めて数える)
  • 基礎控除を計算して遺産額と比べ、課税されるかどうかを確定させる(7人以上なら0円)
  • 正味の遺産額を集計する(生命保険金・死亡退職金・名義預金・生前贈与を加え、債務と葬式費用を差し引く)
  • 自宅の土地の評価額が財産に占める割合を計算し、39%を超えるかを確認する
  • 自宅の敷地を誰が相続するかを決め、小規模宅地等の特例の要件を満たすか判定する
  • 配偶者がいる場合は、二次相続の基礎控除から逆算して取得額の目安を出す
  • 相続税の対応実績がある税理士3〜5社に一括で相談し、試算額と報酬を並べて比較する

※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。相続税法の改正により取扱いが変更される場合があります。最新の制度については国税庁のウェブサイトまたは相続税の対応実績がある税理士にご確認ください。

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