


法定相続人とは、民法で定められた「遺産を相続する権利を持つ人」のことです。
亡くなった人(被相続人)の配偶者は常に法定相続人となり、子・親・兄弟姉妹は順位に従って法定相続人になります。
相続税の計算では、この法定相続人が「何人いるか」が決定的に重要です。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で決まり、生命保険金や死亡退職金の非課税枠も人数に比例して増えます。
つまり、人数を1人数え間違えるだけで、課税される金額も申告の要否も変わってしまいます。
しかも税法上の数え方には、相続放棄した人も含める、養子は人数制限があるなど、民法の感覚と異なる独特のルールがあります。
本記事では、法定相続人の範囲・順位と法定相続分、相続税特有の人数の数え方、人数別の税額シミュレーションを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

最初に全体像を押さえましょう。法定相続人が「誰で・何人か」は、相続税の計算の土台であり、数え間違いは税額の間違いに直結します。
相続税の計算は、法定相続人の確定から始まります。
遺産から差し引ける基礎控除の額も、税率を当てはめる際の遺産の分け方も、すべて法定相続人の人数を基準に計算されるからです。
人数が多いほど控除や非課税枠が増え、同じ遺産でも相続税は少なくなります。
逆に、本来より多く数えてしまうと過少申告になり、後から追徴されるリスクを抱えます。
「うちの相続人は何人か」を正確に押さえることが、相続税対策のスタートラインです。
生前対策を考える段階でも、この人数が試算の前提になります。人数を仮置きしたままの節税プランは、土台から崩れるリスクを抱えます。
法定相続人の数は、次の3つの場面で税額に影響します。
1人増えるだけで、基礎控除と非課税枠の合計で最大1,600万円分の課税対象が減り、さらに税率まで下がります。
この「トリプル効果」があるからこそ、人数のカウントルールを正確に知る価値があります。
それぞれの効果の具体的な金額は、後述のシミュレーションで確認できます。
法定相続人をめぐる疑問は、次の4段階で整理すると迷いません。
「誰が相続人か」と「何人と数えるか」は別の問題です。この区別が本記事の最重要ポイントです。
たとえば相続放棄した人は、財産を受け取らなくても人数には含めます。この種のずれを順に解消していきます。

法定相続人になれるのは、配偶者と一定の血族だけです。配偶者は常に相続人となり、血族は上の順位がいれば下の順位に権利が回らない仕組みです。
被相続人の配偶者は、他にどんな相続人がいても、常に法定相続人になります。
ここでいう配偶者は、婚姻届を出した戸籍上の配偶者に限られます。
内縁関係や事実婚のパートナーは、どれだけ長く連れ添っていても法定相続人にはなれません。
離婚した元配偶者も同様に、相続権はありません。逆に、離婚協議中でも戸籍上の婚姻が続いていれば、配偶者として相続人になります。
別居期間の長さや夫婦仲は関係なく、判定はあくまで「亡くなった時点の戸籍」で行われます。
血族の中で最優先されるのは、被相続人の子です。
実子か養子か、結婚している相手との子かどうかは関係ありません。法律上の親子関係があれば、全員が第1順位の法定相続人です。
離婚した前妻・前夫との子も、親権の有無や交流の有無にかかわらず相続人になります。
子が先に亡くなっている場合は、孫が代わりに相続します(代襲相続)。
子(およびその代襲相続人)が1人もいない場合に、被相続人の父母が相続人になります。
父母がともに亡くなっていて祖父母が存命なら、祖父母が相続人です。
若くして亡くなった方の相続では、このパターンが少なくありません。高齢の親が相続人になる場合、次の相続(親の相続)もすぐに来るため、二重の相続を見据えた分け方が必要になります。
「親等の近い人が優先」のため、父母のどちらかが存命なら祖父母には回りません。
子も直系尊属も1人もいない場合に、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、その子(被相続人から見て甥・姪)が代襲相続します。
兄弟姉妹の代襲は甥・姪までの1代限りで、甥・姪の子には引き継がれません。
なお、兄弟姉妹には遺留分(最低限の取り分の保障)もないなど、他の順位と扱いが異なる点が多くあります。
似た言葉ですが、この2つは使い分けられています。違いを整理しましょう。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 被相続人 | 財産を残して亡くなった人 |
| 法定相続人 | 民法上、相続する権利を持つ人(実際に相続したかは問わない) |
| 相続人 | 実際に財産を相続する人 |
表の見方:相続放棄をした人は「法定相続人ではあるが、相続人ではない」状態になります。相続税の基礎控除が「法定相続人の数」を基準にするのは、この区別があるからです。
本や記事によって用語の使い方が揺れていることもありますが、税額計算の基準は常に「法定相続人の数」です。
順位のルールで誤解しやすいのは、下の順位に権利が移る条件です。
第1順位の子が1人でもいれば、父母や兄弟姉妹は相続人になりません。
下の順位に移るのは、上の順位の人が誰もいない(全員死亡・全員放棄など)場合だけです。
「子と親が一緒に相続人になる」ことは制度上あり得ません。相続人の組み合わせは「配偶者+どれか1つの順位」になります。
なお、相続放棄も「いない」扱いを生みます。子ども全員が放棄すると、親(直系尊属)が相続人になる、という動き方をします。
代表的な家族構成で、誰が法定相続人になるかを一覧にします。
| 家族構成 | 法定相続人 | 人数 |
|---|---|---|
| 配偶者と子2人 | 配偶者・子2人 | 3人 |
| 配偶者のみ(子なし・親死亡・兄弟なし) | 配偶者 | 1人 |
| 配偶者と父母(子なし) | 配偶者・父母 | 3人 |
| 配偶者と兄2人(子なし・親死亡) | 配偶者・兄2人 | 3人 |
| 独身・子なし・両親存命 | 父母 | 2人 |
| 独身・子なし・親死亡・妹1人 | 妹 | 1人 |
表の見方:子のいない夫婦は要注意です。「配偶者がすべて相続」とはならず、親や兄弟姉妹が相続人に加わります。遺産分割協議の相手が義理の親族になるということです。

法定相続分は、民法が定めた遺産の取り分の目安です。相続税の計算では、実際の分け方に関係なくこの割合を使う場面があるため、正確に押さえましょう。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者 | 血族相続人 |
|---|---|---|
| 配偶者+子 | 1/2 | 子全員で1/2 |
| 配偶者+直系尊属 | 2/3 | 直系尊属全員で1/3 |
| 配偶者+兄弟姉妹 | 3/4 | 兄弟姉妹全員で1/4 |
| 配偶者のみ | 全部 | — |
| 血族相続人のみ | — | 同順位で均等割り |
表の見方:血族側の割合は「全員分の合計」です。子が2人なら1/2を2人で分けて各1/4になります。順位が下がるほど配偶者の取り分が増える構造です。
同じ順位の相続人が複数いる場合、その中では均等に分けるのが原則です。
長男・次男・長女の3人なら、生まれ順や性別に関係なく各1/3ずつです。
「長男だから多くもらえる」という家督相続の考え方は、現在の民法にはありません。
例外は兄弟姉妹の相続における「半血兄弟」です。父母の一方だけが同じ兄弟姉妹の取り分は、両方同じ兄弟姉妹の2分の1になります。
なお、非嫡出子(婚姻外の子)の相続分は、かつて嫡出子の2分の1でしたが、現在は同等です。古い情報に注意してください。
法定相続分は、あくまで法律上の目安です。
相続人全員が遺産分割協議で合意すれば、法定相続分と異なる割合で自由に分けることができます。
ただし相続税の総額は、実際の分け方に関係なく「法定相続分で分けたと仮定して」計算します。
この仮定計算があるからこそ、法定相続人の人数と法定相続分の知識が、税額の計算に直結するのです。
「実際は長男がすべて相続したのに、税額は3人で分けた前提で計算する」という感覚のずれは、この仕組みによるものです。
算出された相続税の総額を、実際に取得した割合で各相続人に振り分ける、という2段階の構造になっています。
「全財産を長男に」という遺言があっても、法定相続人の顔ぶれと人数は変わりません。
遺言は財産の行き先を変えるだけで、基礎控除や非課税枠の計算に使う法定相続人の数には一切影響しないのです。
法定相続人でない人(お世話になった知人など)に遺贈する遺言があっても、その人が人数に加わることはありません。
また、遺言で相続分がゼロになった相続人にも、遺留分(兄弟姉妹以外に保障される最低限の取り分)が残ります。
遺言で変えられるのは「分け方」まで。「人数」と「遺留分」は動かせない、と整理してください。

相続人になるはずだった人が先に亡くなっているとき、その子が代わって相続する仕組みが代襲相続です。代襲相続人も法定相続人の人数に含めるため、税額にも影響します。
被相続人より先に子が亡くなっている場合、その子(被相続人の孫)が相続権を引き継ぎます。
孫も亡くなっていればひ孫へ、と直系の子孫がいる限り、代襲は下の世代へ続きます(再代襲)。
代襲相続人の取り分は、本来の相続人(亡くなった子)の相続分をそのまま引き継ぎ、複数人いれば均等に分けます。
子が2人(長男・次男)で長男が死亡、長男に子が2人いる場合、長男の孫2人が各1/4ずつ(長男の1/2を折半)となります。
兄弟姉妹が相続人になるケースでも、先に亡くなっていれば甥・姪が代襲します。
ただし子の場合と違い、甥・姪も亡くなっている場合、その子へは代襲されません。
兄弟姉妹側の代襲は1代限り、と覚えてください。
高齢の独身の方の相続では、兄弟姉妹も高齢で亡くなっていることが多く、甥・姪が相続人になるケースが実務では頻出します。
甥・姪が相続人になると、面識の薄い相続人同士での遺産分割協議になりがちです。連絡と説明の丁寧さが手続きの成否を分けます。
代襲相続は、税額の面で意外な効果を持つことがあります。人数が増えるケースがあるのです。
【前提】被相続人の子は長男・次男の2人。長男がすでに死亡しており、長男には子(被相続人の孫)が3人いるシナリオです。
この場合の法定相続人は、次男1人+代襲相続人の孫3人=合計4人になります。
長男が存命なら2人だった法定相続人が、代襲によって4人に増え、基礎控除は4,200万円から5,400万円に拡大します。
もちろん人為的に作れる状況ではありませんが、「人数がいつの間にか変わっている」典型例です。
相続人の誰かが亡くなるたびに、人数と基礎控除は変動します。古い家系図の思い込みで計算しないよう注意してください。
計算ロジック:基礎控除=3,000万円+600万円×人数。2人なら4,200万円、4人なら5,400万円(2026年時点)。代襲相続人は全員を人数に含めるため、1人の死亡が結果的に控除を1,200万円増やす計算です。
代襲相続が起こるのは、本来の相続人が「死亡・相続欠格・相続廃除」のいずれかの場合です。
相続放棄をした場合、その人の子は代襲相続できません。
放棄した人は「初めから相続人でなかった」扱いになるため、代襲の前提となる相続権自体がなかったことになるからです。
「親が放棄すれば子(孫)が代わりにもらえる」という誤解は多いので注意してください。
孫に財産を渡したいなら、代襲を当てにせず、遺言での遺贈や生前贈与など確実な方法を選ぶ必要があります。

ここからが相続税特有の話です。基礎控除などの計算に使う「法定相続人の数」は、民法の相続人とはズレることがあります。恣意的な操作による節税を防ぐためのルールです。
相続放棄をすると、民法上は初めから相続人でなかった扱いになります。
しかし相続税の計算では、放棄がなかったものとして法定相続人の数に含めます。
子2人のうち1人が放棄しても、基礎控除の計算上の人数は2人のままです。
放棄によって相続人の顔ぶれが変わっても(子から兄弟姉妹に移るなど)、人数の計算は「放棄前」の状態で固定されます。
放棄の連鎖で人数を増やして基礎控除を膨らませる、という操作を防ぐための仕組みです。
たとえば子1人が放棄して兄弟姉妹3人に相続権が移っても、人数は「放棄前の1人」で計算します。3人に増えるわけではありません。
放棄と混同しやすいのが、相続欠格と相続廃除です。
欠格・廃除された人は、法定相続人の数に含めません。放棄と扱いが逆です。
ただし、欠格・廃除では代襲相続が起こるため、その人に子がいれば代襲相続人として数に含めます。
養子は民法上、何人いても全員が法定相続人です。
しかし相続税の人数計算では、実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は2人までしか含められません。
養子縁組を繰り返して基礎控除を無限に増やす節税を防ぐための制限です。
この制限はあくまで税額計算上のもので、民法上の相続権や取り分には影響しません。養子が3人いれば、3人とも遺産分割には参加します。
なお、次の3つに当てはまる人は「実子」として扱われ、この制限を受けません。
孫を養子にしていた場合、その孫が代襲相続人にもなる「二重身分」が生じることがあります。
たとえば、孫を養子にした後、孫の親(被相続人の子)が先に亡くなったケース。孫は「養子」と「代襲相続人」の両方の立場を持ちます。
民法上は両方の相続分を取得できますが、相続税の人数計算では、1人の人間は1人としてしか数えられません。
この場合は代襲相続人(実子扱い)としてカウントするため、養子の算入制限の枠も使いません。
二重身分は取り分の計算にも人数の計算にも影響する論点なので、該当したら税理士に確認するのが安全です。
ここまでのルールを1つの表に整理します。
| ケース | 法定相続人の数に |
|---|---|
| 相続放棄した人 | 含める |
| 相続欠格・廃除された人 | 含めない |
| 欠格・廃除された人の子(代襲相続人) | 含める |
| 代襲相続人(孫・甥姪など) | 全員含める |
| 養子(実子がいる場合) | 1人まで含める |
| 養子(実子がいない場合) | 2人まで含める |
| 特別養子・連れ子養子 | 実子として全員含める |
| 内縁のパートナー・元配偶者 | そもそも相続人でない |
重要ポイント:迷ったら「操作で人数を増やせるか」で考えると整理できます。人数を意図的に増減できるケース(放棄・養子)には、増減を打ち消す方向のルールが置かれています。
法定相続人の数え間違いは、方向によって異なる不利益を生みます。
逆に少なく数えた場合は、本来より多く納税する「払いすぎ」になります。
払いすぎは税務署から指摘されません。更正の請求(原則5年以内)を自分から行わない限り戻らないお金です。
どちらに転んでも損をするからこそ、申告前の人数確認は「戸籍という証拠」に基づいて行う必要があります。
養子縁組による相続税対策の効果と落とし穴は、下記の記事で解説しています。


法定相続人の人数が税額にどれほど効くか、数字で確認しましょう。同じ遺産1億円でも、人数によって税額は2倍以上変わります。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
表の見方:遺産の総額(正確には課税価格の合計)がこの金額以下なら、相続税はかからず申告も原則不要です。1人につき600万円ずつ増える、と覚えてください。
【前提】遺産(課税価格)1億円を、法定相続人の子だけで相続するシナリオです。法定相続分どおりに取得したものとして計算します。
| 子の人数 | 課税遺産総額 | 相続税の総額 |
|---|---|---|
| 1人 | 6,400万円 | 1,220万円 |
| 2人 | 5,800万円 | 770万円 |
| 3人 | 5,200万円 | 630万円 |
| 4人 | 4,600万円 | 490万円 |
表の見方:同じ遺産1億円でも、1人と4人では税額に730万円の差がつきます。基礎控除の増加に加え、1人あたりの取得額が減って低い税率で済むためです。
計算ロジック:課税遺産総額=1億円−基礎控除。これを法定相続分で分けて速算表(税率10〜55%・2026年時点)を適用し合算。例:2人なら5,800万円×1/2=2,900万円→×15%−50万円=385万円×2人=770万円。
生命保険金や死亡退職金がある場合、人数の効果はさらに大きくなります。
【前提】遺産1億円のうち生命保険金2,000万円・死亡退職金1,500万円が含まれるケースで、法定相続人が2人から3人に増えたシナリオです。
【効果1:基礎控除が600万円増える】
4,200万円→4,800万円。課税対象が600万円減ります。
【効果2:非課税枠が最大1,000万円増える】
生命保険金の枠が1,000万円→1,500万円、死亡退職金の枠も1,000万円→1,500万円。合計で最大1,000万円課税対象が減ります。
【効果3:適用される税率が下がる】
課税遺産を3人で分けるため1人あたりの金額が下がり、累進税率の低い区分で計算できます。
3つの効果を合計すると、1人の違いで課税対象が最大1,600万円減り、税率まで下がる計算です。
人数の数え間違いが「数百万円単位の税額の間違い」につながる理由が、この構造にあります。
なお、この効果を狙った安易な養子縁組には算入制限と否認リスクがあります。人数は「正確に数える」ものであり、「作る」ものではない点は忘れないでください。
みなし相続財産である生命保険金と死亡退職金には、それぞれ独立した非課税枠があります。
2つの枠は別々に使えるため、法定相続人3人なら合計3,000万円まで非課税で受け取れます。
ここでの人数も、放棄者を含める・養子制限ありの「法定相続人の数」を使います。基礎控除と同じカウントです。
法定相続人3人なら、基礎控除4,800万円と2つの非課税枠3,000万円で、理論上7,800万円分を無税で承継できる計算になります。
ただし、枠を使えるのは相続人が受け取った分だけです。相続人でない孫や、放棄した本人が受け取った保険金には適用されません。
参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
参照元:国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
「遺産が基礎控除以下だから何もしなくていい」には、2つの落とし穴があります。
1つ目は、特例を使って初めて基礎控除以下になるケースです。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で税額が0円になる場合、申告書の提出が適用の条件です。申告しなければ特例は使えません。
2つ目は、遺産が基礎控除を「ぎりぎり下回る」ケースです。
生命保険金などのみなし相続財産や生前贈与の足し戻しを見落としていると、実は超えていた、ということが起こります。
基礎控除の8〜9割まで財産がある場合は、自己判断で「申告不要」と結論づけず、専門家の確認を挟むのが安全です。
2024年の改正で、相続開始前の生前贈与を相続財産に足し戻す期間が3年から7年へ段階的に延長されています(2026年時点で経過措置期間中)。
この持ち戻しの対象は「相続や遺贈で財産を取得した人」への贈与です。
誰が相続人か(誰が財産を取得するか)の確定は、どの贈与を足し戻すかの判定にも直結します。
相続人の判定を誤ると、基礎控除だけでなく、加算すべき贈与の範囲まで狂うということです。
古い記事には「3年以内」のままの解説も残っています。現在は7年への移行期間中である点に注意してください。
父の相続(一次相続)の次には、いずれ母の相続(二次相続)が来ます。このとき法定相続人は必ず1人以上減っています。
【前提】父の遺産の相続人が母と子2人(3人)、その後の母の相続では子2人だけになるシナリオです。
二次相続では、基礎控除が4,800万円から4,200万円に減り、生命保険金の非課税枠も1,500万円から1,000万円に減ります。
さらに配偶者の税額軽減も使えないため、二次相続は「人数減×特例なし」の二重苦で税負担が重くなりがちです。
一次相続の分け方を考える段階で、二次相続の人数減まで織り込んだ試算をしておくと、トータルの税負担を抑えられます。
「一次で配偶者に多く渡して税額軽減をフル活用」が常に正解とは限らないのは、この二次相続の人数減が待っているからです。
計算ロジック:基礎控除の減少額=600万円×減った人数。相続人が3人→2人なら600万円、非課税枠も生保・退職金それぞれ500万円ずつ縮小します(2026年時点)。
基礎控除の仕組みと申告要否の判定は、下記の記事で解説しています。


家族関係が複雑な場合の「この人は相続人?」という疑問に答えます。判定を誤りやすい代表的なケースを、結論から確認しましょう。
【前妻・前夫との子】
法定相続人になります。離婚で配偶者との関係は切れても、親子関係は一生続くためです。何十年も交流がなくても変わりません。
【再婚相手の連れ子】
養子縁組をしていなければ法定相続人になりません。一緒に暮らして実の子同然でも、縁組がなければ相続権はゼロです。相続させたいなら、生前の養子縁組か遺言が必要です。
「疎遠な前妻の子には権利があり、同居の連れ子には権利がない」という逆転が起こり得ます。
再婚家庭では、この食い違いが遺産分割トラブルの最大の火種になります。早めの対策を検討してください。
なお、連れ子を養子にすると法定相続人が増え、しかも実子扱いで人数制限を受けません。家族の実態と節税の両面で意味のある選択肢です。
内縁・事実婚のパートナーは、法定相続人になれません。財産を残すには遺言や生命保険の受取人指定が必要です。
一方、内縁のパートナーとの間の子は、父親が認知していれば法定相続人になります。
母親の相続では、認知の手続きなしに当然に相続人です(分娩の事実で親子関係が明らかなため)。
認知された子の相続分は、婚姻関係のある相手との子とまったく同じです。かつての2分の1ルールは廃止されています。
認知は遺言でも行えます。遺言認知があると、相続開始後に相続人が1人増えることになります。
認知された子が増えれば、基礎控除の計算人数も増えます。他の相続人の取り分と税額の両方が変わる、影響の大きい出来事です。
相続開始時にまだ生まれていない胎児も、相続についてはすでに生まれたものとみなされ、法定相続人になります。
無事に生まれてくれば、相続開始時にさかのぼって相続人だった扱いになります(死産の場合は相続人になりません)。
相続税の計算でも、生まれた後の申告では胎児だった子を人数に含めます。
妻の妊娠中に夫が亡くなった場合は、遺産分割協議を急がず、出生を待ってから進めるのが実務の基本です。
出生により法定相続人が1人増えるため、基礎控除も600万円増えます。申告期限に間に合わない場合の対応も含め、早めに税理士に相談してください。
子のいない方の相続では、兄弟姉妹(や甥・姪)が相続人になるケースが増えています。このパターン特有の注意点が3つあります。
【注意1:相続税が2割加算される】
兄弟姉妹・甥姪は、配偶者・一親等の血族以外のため、算出された相続税額に2割が加算されます。
【注意2:遺留分がない】
兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言があれば取り分をゼロにすることも可能です。逆にいえば、配偶者にすべて残したいなら遺言1枚で実現できます。
【注意3:戸籍集めの負担が跳ね上がる】
兄弟姉妹を確定するには、被相続人の親の出生までさかのぼる戸籍が必要です。収集に1〜2ヶ月かかることも珍しくありません。
子のいない夫婦こそ、遺言の作成が最も費用対効果の高い相続対策になります。
被相続人の子が、他の家に養子に出ているケースです。結論は縁組の種類で分かれます。
【普通養子縁組の場合】
実親との親子関係は続くため、実親の相続人になれます。養親と実親、両方の相続権を持つ「二重の相続権」の状態です。
【特別養子縁組の場合】
実親との親子関係が法律上消滅するため、実親の相続人にはなれません。相続権は養親側にのみあります。
「養子に出したから相続に関係ない」は普通養子では誤りです。戸籍を確認し、人数に含めて計算してください。
相続人であること自体は、判断能力や年齢に関係ありません。問題は遺産分割協議への参加方法です。
認知症などで判断能力を欠く相続人は、そのままでは協議に参加できず、成年後見人を立てなければ遺産分割協議が進められません。
未成年の相続人は、通常は親権者が代理します。ただし親も相続人の場合は利益が相反するため、特別代理人の選任が必要です。
どちらも家庭裁判所の手続きに数ヶ月かかることがあります。該当者がいる場合は、10ヶ月の申告期限から逆算して早めに動いてください。
なお、判断能力や年齢は「法定相続人の数」のカウントには影響しません。人数はあくまで戸籍上の関係だけで決まります。
【相続人が行方不明】
行方不明でも法定相続人であることは変わらず、除外して遺産分割はできません。不在者財産管理人の選任や、長期間生死不明なら失踪宣告の手続きで対応します。
【法定相続人が1人もいない】
相続人不存在として、家庭裁判所が選任した相続財産清算人が清算します。特別縁故者(内縁のパートナーや献身的に世話をした人)への分与が認められる場合があり、残った財産は国庫に帰属します。
おひとりさまの財産は、遺言がなければ国のものになる可能性が現実にあります。渡したい相手がいるなら遺言が必須です。

相続人の顔ぶれは、放棄などによって後から変わることがあります。「人数のカウント」と「実際の相続人」が食い違う場面を整理しましょう。
相続放棄をした人は初めから相続人でなかった扱いになるため、同順位の全員が放棄すると、次の順位に相続権が移ります。
子ども全員が放棄すれば直系尊属へ、直系尊属もいなければ(または放棄すれば)兄弟姉妹へ、という流れです。
借金を理由に放棄する場合、放棄の連鎖で親戚中に借金の相続権が回っていきます。
自分が放棄したら、次に相続人になる親族へ一報を入れるのが、トラブルを防ぐマナーです。
裁判所や債権者から自動で通知が行く仕組みはありません。知らずに3ヶ月の熟慮期間を過ごしてしまう親族を出さないためにも、一報は重要です。
放棄があっても「法定相続人の数」は変わらないため、基礎控除は減りません。しかし、それで安心はできません。
たとえば子1人が放棄して、財産が兄弟姉妹に渡ったケース。
兄弟姉妹が納める相続税には2割加算が適用され、トータルの税負担はかえって重くなることがあります。
また、放棄した本人が生命保険金を受け取ると、非課税枠が使えず全額課税になります。
「放棄しても基礎控除は守られる」のは事実ですが、税額全体では不利が生じ得る。放棄の判断では、この税務面も含めた検討が必要です。
「全部母さんに相続させたいから、自分は放棄する」という言い方をよく聞きますが、方法の選択には注意が必要です。
家庭裁判所での相続放棄をすると、初めから相続人でなかった扱いになり、相続権が次の順位(被相続人の親や兄弟姉妹)に移ってしまいます。
母にすべて渡すつもりの放棄が、義理の親族を遺産分割に引き込む結果になりかねません。
財産を受け取らないだけなら、遺産分割協議で「取得しない」と合意すれば十分です。相続権は失わず、次順位にも移りません。
この使い分けが、相続人の顔ぶれを意図せず変えないための重要な知識です。
「取得しない」選択なら、遺産分割協議書に署名するだけで済み、家庭裁判所の手続きも期限の制約もありません。
相続放棄の手続きと判断基準は、下記の記事で解説しています。

借金が多い相続では、相続人になり得る親族が次々に放棄していくことがあります。
子→直系尊属→兄弟姉妹と順に放棄が連鎖し、全員が放棄すると相続人不存在となり、相続財産清算人による清算手続きに進みます。
このとき注意すべきは、放棄には期限(相続を知った日から3ヶ月)があることです。
先順位の放棄によって自分が相続人になったことを知った日から、自分の3ヶ月が始まります。突然「あなたが相続人です」という通知が来る可能性があるのはこのためです。
なお、全員が放棄しても、相続税の基礎控除の計算に使う「法定相続人の数」は当初の人数のまま変わりません。
相続欠格・相続廃除で相続権を失った場合、その人の子が代襲相続します。
「本人に相続させたくない」という廃除の意思があっても、財産はその子(被相続人の孫)に渡る可能性があります。
特定の血縁の系統に財産を渡したくない場合、廃除だけでは目的を達成できないことがある、ということです。遺言や生前贈与との組み合わせを検討してください。
放棄(代襲しない)との違いをまとめると次のとおりです。
| 事由 | 代襲相続 | 人数カウント |
|---|---|---|
| 死亡 | する | 代襲人を含める |
| 相続放棄 | しない | 放棄者本人を含める |
| 欠格・廃除 | する | 本人は含めず代襲人を含める |
表の見方:「代襲するか」と「人数に含めるか」は別問題として整理すると混乱しません。放棄だけが「代襲なし・カウントあり」という独特の組み合わせです。

法定相続人は、思い込みではなく戸籍で確定させます。相続手続きのすべてが「戸籍による証明」を前提に動くため、最初に済ませるべき実務です。
相続税の申告期限は10ヶ月ですが、相続人の確定はその最初の関門です。全体の流れの中での位置づけを押さえましょう。
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相続人の確定が遅れると、後ろの工程がすべて押します。「まず戸籍」が相続手続きの鉄則です。
法定相続人の確定には、被相続人の「出生から死亡までの連続した戸籍謄本」が必要です。
現在の戸籍だけでは、過去の婚姻や認知、養子縁組の記録が見えないためです。
「うちは家族仲がよくて全員知っている」という家庭でも、戸籍を開いて初めて分かる事実はあります。確定作業は省略しないでください。
戸籍は転籍や法改正のたびに作り直されるため、死亡時の戸籍から出生までさかのぼって、途切れなく集める必要があります。
あわせて、相続人になる人全員の現在の戸籍謄本も取得します。
子が先に亡くなっている場合は、その子の出生から死亡までの戸籍も必要です。代襲相続人(孫)を確定するためです。
2024年からは広域交付制度により、本籍地が遠方でも最寄りの市区町村窓口で他の自治体の戸籍をまとめて請求できるようになり、収集の負担は大幅に軽くなりました。
まずは死亡の記載がある戸籍を1通取り、そこから過去へたどるのが基本の順路です。窓口で「相続で出生までさかのぼりたい」と伝えれば案内してもらえます。
重要ポイント:広域交付で請求できるのは本人・配偶者・直系の親族などに限られ、兄弟姉妹の戸籍は対象外です。また、コンピューター化前の一部の古い戸籍も窓口請求が必要になる場合があります。
戸籍集めにかかるコストの目安を知っておくと、計画が立てやすくなります。
日数は、広域交付を使って窓口でそろう場合は1日〜数日です。
ただし、古い戸籍が広域交付の対象外だったり、兄弟姉妹の戸籍が必要だったりすると、郵送請求で2〜4週間かかることもあります。
兄弟姉妹相続のケースは必要な戸籍が一気に増えるため(被相続人の親の出生までさかのぼる)、1〜2ヶ月を見込んでください。
郵送請求では定額小為替での支払いになるなど、細かい作法もあります。請求先の自治体サイトで案内を確認してから送ると往復のロスを防げます。
時間が取れない場合は、司法書士・行政書士に収集を依頼できます(報酬の目安は数万円程度)。
相続税申告を税理士に依頼する場合も、戸籍収集をセットで代行してくれる事務所が多くあります。見積り時に確認しましょう。
集めた戸籍一式をもとに、法務局で「法定相続情報一覧図」の写しを無料で発行してもらえます。
一覧図は、法定相続人の関係を1枚にまとめた公的な証明書です。
銀行・法務局・税務署などの手続きで、戸籍の束の代わりにこの1枚を提出できます。
必要な通数を無料で発行できるため、複数の銀行手続きを並行して進められるのが最大の利点です。
戸籍の束を各銀行に順番に提出して返却を待つ、という直列作業から解放されます。相続人や口座が多いほど効果は大きくなります。
相続税の申告書にも、戸籍謄本の代わりに一覧図の写しを添付できます。
作成の申出は、被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地などを管轄する法務局で行えます。郵送申出も可能です。
戸籍をたどると、家族が知らなかった相続人が見つかることがあります。認知された子、前婚の子、養子縁組の記録などです。
その場合でも、その人を除外した遺産分割協議は無効です。必ず連絡を取り、協議に加える必要があります。
面識のない相続人への連絡は、感情的な対立を避けるため、手紙で事情を丁寧に伝えるところから始めます。
いきなり「実印を押してほしい」という依頼から入ると、警戒されて協議が止まります。相続の発生と経緯の説明を先に、が鉄則です。
当事者同士での交渉が難しければ、弁護士に間に入ってもらう選択も検討してください。
相続税の計算も、判明した相続人を含めた人数でやり直すことになります。基礎控除が増えて税額が減る方向に働くこともあります。
申告後に相続人の存在が判明した場合は、修正申告や更正の請求で対応します。だからこそ、申告前の戸籍精査で先に見つけておくことが大切です。
戸籍謄本など相続税申告に必要な書類の集め方は、下記の記事で解説しています。


法定相続人の判定は、家族関係が複雑なほど専門的になります。数え方を誤ると税額も申告要否も狂うため、迷ったら一括相談・見積りで複数の税理士に確認しましょう。
法定相続人の数え方は、放棄・養子・代襲が絡むと一気に難しくなります。
たとえば養子2人と実子1人、放棄1人が絡むケース。A税理士は民法どおり全員を数えて基礎控除5,400万円と判定しました。
B税理士は養子の算入制限を正しく適用して4,800万円と判定。A税理士の判定のまま申告していれば、過少申告として追徴課税を受けるところでした。
人数の判定は申告書の最初の1行であり、ここが違えばすべての計算が崩れます。専門家の確認に値する論点です。
複数の税理士から見積りを取ると、次の3つの判定ポイントで実務力を比較できます。
判定ポイント1:戸籍の精査まで行うか。A税理士は家族からの聞き取りのみ、B税理士は出生までの戸籍を自ら精査して隠れ相続人の有無まで確認 → 戸籍まで見る税理士の方が、申告後の相続人判明リスクを防げると判定できます。
判定ポイント2:人数カウントの根拠を明示するか。放棄・養子・代襲の扱いを一覧にして「なぜこの人数か」を説明できるか → 根拠を示す税理士の方が、税務署への説明力も高いと判定できます。
判定ポイント3:人数を活かす対策まで提案するか。生命保険の非課税枠の活用や二次相続を見据えた分割まで提案があるか → 対策型の税理士の方が、トータルの税負担を減らせると判定できます。
法定相続人の判定を1社だけに任せると、その判定が正しいか検証する機会がありません。
人数を多く数えれば過少申告で追徴、少なく数えれば払いすぎです。
払いすぎた相続税は、自分で更正の請求をしない限り戻ってきません。
複数の税理士の判定を突き合わせれば、見解の食い違いからミスの兆候を早期に発見できます。
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 提案内容 | 相続人確定の進め方(戸籍精査・法定相続情報一覧図の作成支援を含むか) |
| 試算相続税額 | 法定相続人の数の根拠と、非課税枠を織り込んだ税額か |
| 報酬額 | 戸籍収集・相続人調査の代行費用まで含めた総額か |
重要ポイント:再婚・養子・放棄予定など複雑な事情は、見積り依頼の段階で伝えてください。事情を先に伝えるほど、見積りの精度と比較のしやすさが上がります。
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重要ポイント:相続人間に対立の火種がある場合は、税理士だけでなく弁護士への相談も視野に入れてください。連携体制のある事務所なら、窓口1つで両方に対応できます。
重要ポイント:家系図メモが1枚あるだけで、初回相談の精度が大きく変わります。「誰が相続人か」の判定材料を最初に渡せるからです。
減りません。相続税の基礎控除を計算する「法定相続人の数」には、相続放棄した人も含めるルールだからです。
ただし、放棄した本人が生命保険金を受け取る場合は非課税枠が使えないなど、別の場面で不利が生じることがあります。
無制限にはできません。相続税の人数計算に含められる養子は、実子がいる場合1人・いない場合2人までです。
また、節税だけが目的と認められる養子縁組は、税務署に人数計算を否認される可能性もあります。孫養子には2割加算の問題もあるため、慎重に検討してください。
兄弟姉妹が法定相続人になります。兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その子(甥・姪)が代襲相続します。
甥・姪もいなければ相続人不存在となり、特別縁故者への分与や国庫帰属の手続きに進みます。
できません。前妻の子も法定相続人であり、相続人全員が参加しない遺産分割協議は無効です。
連絡先が分からない場合は、戸籍の附票で住所を調べて手紙で連絡するのが一般的です。難しければ弁護士や司法書士に相談してください。
家庭裁判所が選任する相続財産清算人が債務などを清算した後、特別縁故者からの申立てがあれば、その人への分与が認められることがあります。
最終的に残った財産は国庫に帰属します。渡したい相手がいる場合は、生前に遺言を作成しておくことが唯一の確実な方法です。
法定相続人と相続税について、重要なポイントを整理します。
【範囲と順位】
【相続税の人数カウント】
【確定の実務】
【今すぐ取るべき行動】
※本記事は2026年7月時点の法令・情報に基づいて作成しています。税制改正により、内容が変更となる可能性があります。最新の制度については国税庁の公式サイトや税理士にご確認ください。