


相続税を軽くする制度は10種類以上あります。効くタイミングが2つに分かれることを知らないと、使い忘れや二重計算が起きます。
ひとつは遺産の金額そのものを減らすもので、基礎控除や小規模宅地等の特例が該当します。もうひとつは計算した税額から直接引くもので、配偶者の税額軽減などがこれに当たります。
後者には引く順番が法律で決まっています。順番を守らないと控除額が変わり、還付を受けられるはずの金額を取り逃がします。
もうひとつの落とし穴が申告の要否です。制度によって、税額が0円でも申告書を出さないと使えないものがあります。
小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減がこれに当たります。出し忘れると制度そのものが適用されず、本来の評価額で課税されてしまいます。
この記事では、使える制度の一覧、計算のどの段階で効くか、適用の順番、併用できる組み合わせ、制度ごとの申告の要否までを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

まず全体を一覧で確認してください。効くタイミングと申告の要否が制度ごとに違います。この2つを取り違えると使い忘れます。
相続税を計算する前の段階で効く制度です。遺産の総額そのものを小さくするため、減らした金額に税率を掛けた分だけ税額が下がります。
| 制度 | 減額の内容 | 対象 | 申告 |
|---|---|---|---|
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数 | すべての相続 | 不要 |
| 小規模宅地等の特例 | 土地の評価額を最大80%減 | 自宅・事業用・貸付用の土地 | 必要 |
| 生命保険金の非課税枠 | 500万円×法定相続人の数 | 相続人が受け取った死亡保険金 | 不要 |
| 死亡退職金の非課税枠 | 500万円×法定相続人の数 | 相続人が受け取った死亡退職金 | 不要 |
| 債務控除 | 借入金・未払金などの全額 | 亡くなった時点で存在した債務 | 不要 |
| 葬式費用の控除 | 実際にかかった金額 | 通夜・本葬の費用など | 不要 |
| 農地等の納税猶予 | 農業投資価格を超える部分の納税を猶予 | 農業を継ぐ場合 | 必要 |
表の見方:薄赤の2つが申告書を出さないと使えない制度です。税額が0円になる場合でも提出が必要になります。
重要ポイント:黄色の基礎控除は手続きなしで自動的に適用されます。遺産の総額がこの枠に収まれば、申告も納税も不要です。
相続税を計算した後に効く制度です。各相続人の税額から直接差し引くため、控除額がそのまま税額の減少になります。
| 制度 | 控除額 | 対象 | 申告 |
|---|---|---|---|
| 贈与税額控除(暦年課税分) | すでに払った贈与税の額 | 相続開始前7年以内の贈与を加算した人 | 不要 |
| 配偶者の税額軽減 | 1億6,000万円か法定相続分まで税額0円 | 配偶者 | 必要 |
| 未成年者控除 | 10万円×(18歳−相続時の年齢) | 18歳未満の相続人 | 不要 |
| 障害者控除 | 10万円または20万円×(85歳−相続時の年齢) | 障害のある相続人 | 不要 |
| 相次相続控除 | 前回納めた相続税の一部 | 10年以内に相続税を払った場合 | 不要 |
| 外国税額控除 | 外国で払った相続税に相当する税額 | 海外に財産がある場合 | 不要 |
| 精算課税分の贈与税額控除 | すでに払った贈与税の額。控除しきれない分は還付 | 相続時精算課税を使った人 | 還付を受けるなら必要 |
表の見方:黄色の行だけが控除しきれなかった金額の還付を受けられます。同じ贈与税額控除でも、暦年課税分は還付されません。
重要ポイント:薄赤の配偶者の税額軽減は申告書を出さないと適用されません。税額が0円になるからといって提出を省くと、軽減が使えず税額が発生します。
参照元:e-Gov法令検索 相続税法(第19条〜第20条の2)
一覧にすると多く見えますが、ほとんどの相続で使うのは基礎控除・小規模宅地・配偶者の税額軽減の3つです。残りは該当があるかを確認する程度で足ります。
| 制度 | 使う家庭の割合の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | すべて | 手続きなしで自動的に適用される |
| 小規模宅地等の特例 | 自宅がある家庭の多く | 効果が最も大きい |
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者が相続する場合の多く | 1億6,000万円まで税額0円 |
| 生命保険金・死亡退職金の非課税枠 | 保険や退職金がある場合 | 該当すれば自動 |
| 未成年者控除・障害者控除 | 該当者がいる場合 | 対象が限られる |
| 相次相続控除 | 10年以内に相続があった場合 | 該当が少ない |
| 外国税額控除・農地の納税猶予 | まれ | 対象が限定的 |
表の見方:黄色の3つを押さえれば大半の相続はカバーできます。残りは該当があるかを確認する程度で構いません。
重要ポイント:効果の大きさで言えば小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減が圧倒的です。この2つはどちらも申告が必要なので、使うつもりなら申告書の提出を前提に動いてください。

制度を覚える前に、相続税の計算がどう進むかを知っておくと整理が早くなります。制度は決まった段階でしか効かないため、段階と結びつけて覚えると混同しません。
相続税の計算は5段階に分かれています。どの段階でどの制度が効くかが決まっているので、段階と制度を結びつけて覚えると混乱しません。
| 段階 | 計算の内容 | ここで効く制度 |
|---|---|---|
| ①財産を評価する | 土地・建物・預貯金などを金額に換算する | 小規模宅地等の特例 |
| ②遺産の総額を出す | 財産の合計から債務と葬式費用を引く | 非課税枠・債務控除・葬式費用 |
| ③課税される遺産を出す | 遺産の総額から基礎控除を引く | 基礎控除 |
| ④相続税の総額を出す | 法定相続分で分けて税率を掛け、合計する | なし |
| ⑤各人の税額を出す | 取得割合で按分し、加算と控除をする | 2割加算・6つの税額控除 |
表の見方:薄赤の⑤に税額控除が集まっています。ここで順番が問題になります。①〜③の制度は順番を気にする必要がありません。
重要ポイント:黄色の③で課税される遺産が0以下になれば、そこで終わりです。④以降の計算も、税額控除の検討も不要になります。
段階を飛ばすと結論が変わります。各ステップの具体的な計算方法と、端数の処理のルールは下記の記事で解説しています。

よくある誤りが遺産を減らす制度と、税額から引く制度を混ぜてしまうことです。同じ「控除」という言葉でも、効くタイミングと効果の大きさがまったく違います。
| 遺産の金額を減らす制度 | 税額から直接引く制度 | |
|---|---|---|
| 効くタイミング | 税額を計算する前 | 税額を計算した後 |
| 単位 | 万円(財産の金額) | 万円(税金の金額) |
| 効果の大きさ | 減らした金額×税率の分だけ税額が下がる | 控除額がそのまま税額から引かれる |
| 代表例 | 基礎控除・小規模宅地等の特例 | 配偶者の税額軽減・未成年者控除 |
| 順番 | 気にしなくてよい | 法律で決まっている |
表の見方:黄色の行が重要です。財産を1,000万円減らしても、税率15%なら税額は150万円しか下がりません。一方で税額控除は100万円の控除がそのまま100万円の減額になります。
重要ポイント:金額の大きさだけで比べないでください。小規模宅地等の特例は減額幅が数千万円になるため、税額への影響も大きくなります。

相続税を計算する前の段階で効く制度をまとめます。効果がもっとも大きいのは小規模宅地等の特例で、土地の評価額を最大80%減らせます。
唯一、手続きなしで自動的に適用される制度です。遺産の総額がこの枠に収まれば、申告も納税も不要になり、ここで終わる家庭が多数派です。
| 法定相続人の数 | 基礎控除 | この金額以下なら |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 相続税0円・申告不要 |
| 2人 | 4,200万円 | 同じ |
| 3人 | 4,800万円 | 同じ |
| 4人 | 5,400万円 | 同じ |
| 5人 | 6,000万円 | 同じ |
重要ポイント:人数の数え方に例外があります。相続を放棄した人も、放棄がなかったものとして人数に入れます。養子は実子がいれば1人まで、いなければ2人までです。
相続放棄や養子がいると人数の数え方でつまずきます。数え方の細かいルールと、遺産額別の控除額は下記の記事で解説しています。

土地の評価額を最大80%減らせる制度です。数千万円単位で課税価格が下がるため、税額への影響が最大になります。自宅の土地があるなら、まずこの特例が使えるかを確認してください。
| 区分 | 対象になる土地 | 面積の上限 | 減額の割合 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 亡くなった人の自宅の土地 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 個人事業に使っていた土地 | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 同族会社に貸していた土地 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | アパート・貸駐車場などの土地 | 200㎡ | 50% |
表の見方:黄色の自宅がもっとも使われる区分です。評価額5,000万円の土地が1,000万円になります。
注意:この制度は申告期限までに申告書を出さないと使えません。また誰が相続するかで使えるかどうかが変わります。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
4つの区分のどれに当てはまるかで、減額の割合と上限面積が変わります。区分ごとの要件と、誰が相続すると得かは下記の記事で解説しています。

どちらも500万円×法定相続人の数までが非課税になります。2つは別枠なので、保険金と退職金の両方があれば合計1,000万円×人数まで使えます。
| 法定相続人の数 | 生命保険金の非課税枠 | 死亡退職金の非課税枠 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 500万円 | 500万円 | 1,000万円 |
| 2人 | 1,000万円 | 1,000万円 | 2,000万円 |
| 3人 | 1,500万円 | 1,500万円 | 3,000万円 |
表の見方:2つは別々の枠なので合算できます。相続人2人なら、合わせて2,000万円まで非課税です。
注意:この枠を使えるのは相続人が受け取った分だけです。相続を放棄した人や相続人以外が受け取った分には使えません。
プラスの財産だけでなくマイナスの財産も引けます。亡くなった時点で存在していた債務が対象で、死亡後に発生した費用は原則として引けません。
| 項目 | 引けるか | 説明 |
|---|---|---|
| 借入金・未払金 | 引ける | 亡くなった時点で存在していた本人の債務 |
| 未払いの医療費・税金 | 引ける | 亡くなった後に相続人が払ったものも含む |
| 葬式費用 | 引ける | 債務ではないが特別に認められている |
| 香典返し・法要の費用 | 引けない | 葬式費用に含まれない |
| 墓地・墓石の購入費 | 引けない | 非課税財産に関する債務 |
表の見方:薄赤の2つが間違えやすいところです。通夜と本葬の費用は引けますが、香典返しと四十九日の法要は引けません。
葬式費用は引けるものと引けないものが細かく決まっています。債務と葬式費用それぞれの区分は、下記の記事で解説しています。


ここからは相続税を計算した後に効く制度です。遺産の金額ではなく、各相続人が納める税額から直接引きます。対象になる人が限られる制度が多いので、該当するかどうかを順に確認してください。
生前に贈与を受けて贈与税を払った人が、その贈与を相続財産に加算された場合に使います。同じ贈与でも、加算のされ方によって還付の扱いが正反対です。
| 暦年課税分(19条) | 精算課税分(21条の15第3項) | |
|---|---|---|
| 加算される贈与 | 相続開始前7年以内の贈与 | 精算課税を選んだ後のすべての贈与 |
| 引ける金額 | その贈与にかかった贈与税額 | 払った贈与税額の全額 |
| 引ききれない分 | 切り捨て(還付なし) | 還付される |
| 還付を受ける手続き | なし | 相続税の申告書を提出する |
表の見方:薄赤の行が実務でもっとも差が出るところです。暦年課税分は払いすぎていても返ってきません。精算課税分は控除しきれない金額が現金で戻ります。
重要ポイント:還付は自動では行われません。精算課税を使った人は、税額が0円でも申告書を出さないと還付を受けられません。納税が不要だからと提出を省くと、払った贈与税がそのまま戻らなくなります。
計算ロジック:精算課税分の還付は相続税法33条の2に定めがあります。この条文が対象にしているのは21条の15から21条の18までで、19条1項の暦年課税分は対象外です。つまり還付の有無は運用ではなく条文上の違いです。
精算課税を選ぶかどうかの判断と、2,500万円の枠の使い方は下記の記事で解説しています。

配偶者が相続した財産について、1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い金額まで税額が0円になります。6つの税額控除のなかで金額の効果がもっとも大きい制度です。
| 配偶者が取得した財産 | 税額軽減の結果 |
|---|---|
| 1億6,000万円以下 | 配偶者の税額は0円 |
| 法定相続分以下 | 配偶者の税額は0円 |
| 上の2つをどちらも超える | 超えた部分に相続税がかかる |
| 未分割のまま申告期限を迎えた | いったん適用できない |
表の見方:基準は2つあり、多いほうを使えます。配偶者が法定相続分の範囲で相続するなら、金額がいくらでも税額は0円です。
重要ポイント:この制度は申告書を出さないと適用されません。税額が0円になるからといって提出を省くと、軽減が受けられず本来の税額が発生します。
一次相続で使いすぎると二次相続の税額が増えます。上限の考え方と申告後に適用する方法は下記の記事で解説しています。

相続人が18歳未満の場合に使えます。10万円×(18歳−相続開始時の年齢)が税額から引かれ、年齢の1年未満の端数は切り捨てて計算します。
| 相続開始時の年齢 | 18歳までの年数 | 控除額 |
|---|---|---|
| 0歳 | 18年 | 180万円 |
| 5歳 | 13年 | 130万円 |
| 10歳 | 8年 | 80万円 |
| 15歳6か月 | 2年(端数切り捨て) | 20万円 |
| 17歳 | 1年 | 10万円 |
表の見方:黄色の行が端数処理の例です。15歳6か月なら18歳まで2年6か月ありますが、1年未満は切り捨てて2年として計算します。
重要ポイント:控除額がその人の税額より大きい場合は、引ききれない分を扶養義務者の税額から引けます。子の税額が20万円で控除額が180万円なら、残る160万円を親などの税額から引けます。
過去に使ったことがある場合は控除額が減ります。計算方法と適用要件は下記の記事で解説しています。

障害のある相続人が使える控除で、一般障害者は10万円、特別障害者は20万円に85歳までの年数を掛けます。未成年者控除と同じく、引ききれない分は扶養義務者の税額から引けます。
| 区分 | 1年あたり | 40歳の場合 | 60歳の場合 |
|---|---|---|---|
| 一般障害者 | 10万円 | 450万円 | 250万円 |
| 特別障害者 | 20万円 | 900万円 | 500万円 |
表の見方:85歳から相続開始時の年齢を引いた年数が基準です。40歳なら45年、60歳なら25年で計算します。
重要ポイント:黄色の特別障害者は単価が2倍になります。区分の判定を誤ると控除額が半分になります。障害者手帳の等級などで区分が決まるので、申告前に確認してください。
区分の判定と、扶養義務者への引き継ぎの手順は下記の記事で解説しています。

前回の相続から10年以内に次の相続が起きた場合に使えます。前回納めた相続税の一部を、今回の税額から引けます。前回から今回までの期間が短いほど控除額が大きくなります。
| 前回の相続からの経過年数 | 控除できる割合の目安 |
|---|---|
| 1年以内 | 前回の税額のほぼ全額 |
| 3年 | 前回の税額の約70% |
| 5年 | 前回の税額の約50% |
| 9年 | 前回の税額の約10% |
| 10年を超える | 使えない |
表の見方:経過年数が1年増えるごとに10%ずつ減る仕組みです。10年を1日でも超えると、控除額は0になります。
計算ロジック:実際の計算式は前回の相続税額に、今回取得した財産の割合と(10年−経過年数)÷10年を掛けたものです。割合の計算に前回の課税価格を使うので、前回の申告書が手元にないと計算できません。
前回の申告書がない場合の対応と計算例は下記の記事で解説しています。

海外にある財産について現地でも相続税に相当する税を払った場合に使えます。同じ財産に日本と海外の両方で課税される二重課税を調整する制度です。
【使える条件】
現地で払った税額が上限を超える場合、超えた分は引けません。為替は納付日の相場で円に換算します。
海外財産が課税対象になるかどうかは、亡くなった人と相続人がどこに住んでいたかで決まります。判定を誤ると、そもそも申告の対象範囲が変わります。
参照元:国税庁 No.4138 相続人が外国に居住しているとき
住所と国籍による課税範囲の判定は、下記の記事で解説しています。


6つの税額控除は、どれから引くかが相続税法で決められています。順番を入れ替えると、還付を受けられる金額や扶養義務者に回せる金額が変わります。
引く順番は条文の並びがそのままで、贈与税額控除から始まり、精算課税分の贈与税額控除で終わります。
⬇
⬇
⬇
⬇
⬇
⬇
重要ポイント:この順番は覚えるものではなく、最後に精算課税分が来ることだけ押さえれば十分です。還付が発生するのは7番目だけなので、そこが末尾に置かれています。
参照元:e-Gov法令検索 相続税法(第19条〜第21条の15)
控除額がその人の税額より大きいとき、余った分の行き先が制度ごとに違います。ここを知らないと使えるはずの控除を捨ててしまいます。
| 制度 | 引ききれない分の扱い |
|---|---|
| 贈与税額控除(暦年課税分) | 切り捨て。還付されない |
| 配偶者の税額軽減 | 切り捨て |
| 未成年者控除 | 扶養義務者の税額から引ける |
| 障害者控除 | 扶養義務者の税額から引ける |
| 相次相続控除 | 切り捨て |
| 外国税額控除 | 切り捨て |
| 精算課税分の贈与税額控除 | 還付される |
表の見方:黄色の3つだけが余った控除を活かせます。未成年者控除と障害者控除は他の相続人の税額に回せるため、家族全体で見ると税額が下がります。
重要ポイント:薄赤の4つは余っても消えます。配偶者の税額軽減が余っているからといって、他の相続人の税額に振り替えることはできません。
順番の影響がもっとも出るのは、暦年課税分と精算課税分の両方の贈与税額控除がある場合です。同じ控除額でも、引く順番によって還付される金額が変わります。
| 前提:税額300万円・暦年課税分の控除100万円・精算課税分の控除400万円 | 正しい順番(暦年→精算) | 誤った順番(精算→暦年) |
|---|---|---|
| 最初に引く控除 | 暦年課税分100万円 | 精算課税分400万円 |
| 引いた後の税額 | 200万円 | 0円(100万円が残る) |
| 次に引く控除 | 精算課税分400万円 | 暦年課税分100万円 |
| 還付される金額 | 200万円 | 100万円 |
| 切り捨てになる金額 | 0円 | 100万円 |
表の見方:還付されるのは精算課税分だけです。先に精算課税分を引いてしまうと、還付の枠を暦年課税分に食われます。
計算ロジック:正しい順番では暦年課税分の100万円を先に引いて税額200万円にし、精算課税分400万円を引いてマイナス200万円になります。この200万円が還付されます。
誤った順番の場合:精算課税分を先に引くとマイナス100万円しか出ないため、暦年課税分の100万円が切り捨てになります。
あてはめ:還付が200万円と100万円に分かれるので、順番を間違えるだけで100万円の差が出ます。精算課税を使っていて生前贈与も受けていた人は、順番を必ず確認してください。

制度は基本的に併用できますが、例外があります。併用できると思って両方を前提に分け方を決めると、後から税額が変わります。よく問題になる組み合わせを表で確認してください。
遺産を減らす制度と税額から引く制度は、効くタイミングが違うので基本的にすべて併用できます。
| 小規模宅地 | 生命保険の非課税枠 | 配偶者の税額軽減 | 未成年者・障害者控除 | |
|---|---|---|---|---|
| 基礎控除 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 小規模宅地 | − | ○ | ○ | ○ |
| 生命保険の非課税枠 | ○ | − | ○ | ○ |
| 配偶者の税額軽減 | ○ | ○ | − | ○ |
| 農地等の納税猶予 | 同じ土地は選択 | ○ | ○ | ○ |
表の見方:○は併用できる組み合わせです。制度の重複を心配する必要があるのは薄赤の1行だけです。
重要ポイント:同じ土地に小規模宅地等の特例と農地等の納税猶予は重ねられません。どちらか有利なほうを選びます。土地が複数あるなら、土地ごとに別の制度を使うことは可能です。
併用できない代表例は同じ土地に複数の評価減を重ねようとする場合です。制度の対象が重なると、どちらかを選ぶことになります。
【選択が必要になる組み合わせ】
いずれも申告書の提出時点で選択が確定します。提出後に有利なほうへ変更することは原則できません。
小規模宅地等の特例は、居住用330平方メートル・事業用400平方メートルまでなら両方をフルに使えます。ただし貸付事業用を混ぜる場合は面積の調整計算が必要です。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
制度の併用は、誰がどの財産を相続するかによって使えるかどうかが変わります。分け方を決めた後に判定すると、使えない制度が出てきて配分をやり直すことになります。
| 先に決めること | 判定できるようになる制度 |
|---|---|
| 自宅を誰が相続するか | 小規模宅地等の特例(区分と上限面積) |
| 配偶者がいくら相続するか | 配偶者の税額軽減の効き方 |
| 申告期限までに分割できるか | 小規模宅地・配偶者の税額軽減の両方 |
| 未成年や障害のある相続人がいるか | 未成年者控除・障害者控除の控除額 |
表の見方:黄色の行が最重要です。申告期限までに分け方が決まらないと、効果の大きい2つがどちらも使えません。
重要ポイント:分け方が決まらない場合は、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を出しておいてください。これを出しておけば、後から分割したときに特例を適用し直せます。

同じ遺産でも、誰が相続人になるかで使える制度の数が大きく変わります。制度の一覧を眺めるより、自分の家族構成に当てはめて絞り込んだほうが早く判断できます。
相続人の組み合わせごとに、該当しやすい制度を整理しました。自分の欄だけを見れば、検討すべき制度が3〜5個に絞れます。
| 相続人 | 基礎控除 | 配偶者の税額軽減 | 小規模宅地 | 未成年者・障害者控除 | 2割加算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 配偶者と子 | 4,200万円〜 | 使える | 使える | 子が18歳未満なら使える | なし |
| 子のみ | 3,600万円〜 | 使えない | 同居などの要件を満たせば使える | 該当者がいれば使える | なし |
| 配偶者のみ | 3,600万円 | 使える | 使える | 該当すれば使える | なし |
| 配偶者と親 | 4,200万円 | 使える | 要件次第 | 該当すれば使える | なし |
| 兄弟姉妹 | 3,600万円〜 | 使えない | 同居していれば可能性あり | 該当すれば使える | あり |
| 孫(遺言や養子) | 3,600万円〜 | 使えない | 同居していれば可能性あり | 該当すれば使える | あり |
表の見方:黄色の配偶者と子の組み合わせが使える制度がもっとも多い形です。薄赤の2つは配偶者の税額軽減が使えないうえに2割加算がかかります。
重要ポイント:基礎控除の金額は相続人の数で変わります。子が2人なら4,200万円、3人なら4,800万円と広がるので、まず人数を確定させてから制度の検討に進んでください。
計算ロジック:基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。配偶者と子1人なら2人で4,200万円、子のみ1人なら3,600万円になります。人数の数え方を間違えると600万円単位でずれます。
自分の遺産額で課税されるかどうかの判定は、下記の記事で解説しています。

配偶者の税額軽減は効果が大きい制度ですが、一次相続で使い切ると二次相続の税額が増えます。目先の税額だけで配分を決めると、家族全体の負担が重くなることがあります。
| 配偶者に渡す割合 | 一次相続の税額 | 二次相続の税額 | 2回の合計 |
|---|---|---|---|
| 全部(100%) | 0円 | 大きくなる | 中〜大 |
| 法定相続分(50%前後) | 小さい | 中程度 | もっとも小さくなりやすい |
| ゼロ(子が全部) | 大きい | 小さい | 中 |
表の見方:黄色の行が合計でもっとも軽くなりやすい配分です。一次相続を0円にすることが最適とは限りません。
計算ロジック:配偶者に全部渡すと一次相続は0円になりますが、その財産は配偶者の相続財産としてそのまま残ります。二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、相続人も1人減るため基礎控除が600万円分小さくなります。
あてはめ:最適な割合は遺産の規模と配偶者自身の財産で変わります。配偶者に固有の財産が多いほど、渡す割合を下げたほうが有利になります。
配偶者に渡す割合の決め方と、固有財産を含めた最適値の出し方は下記の記事で解説しています。

相続人が1人だと基礎控除が3,600万円と最小になり、控除の余りも活かせません。同じ遺産額でも、相続人が複数いる場合より税額が重くなります。
| 項目 | 相続人1人 | 相続人3人 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 3,600万円 | 4,800万円 |
| 生命保険の非課税枠 | 500万円 | 1,500万円 |
| 税率の適用 | 1人に集まるので高い帯に届きやすい | 分散して低い帯に収まりやすい |
| 控除が余ったとき | 回す相手がいないため切り捨て | 扶養義務者の税額に回せる |
表の見方:薄赤の行が1人のときの不利な点です。未成年者控除や障害者控除が余っても、回す相手がいません。
重要ポイント:相続人が1人の場合は生前の対策で差がつきます。生命保険の非課税枠や生前贈与を使えるのは相続が起きる前なので、該当しそうな家庭は早めに検討してください。

制度を使えるかどうかは、申告書を出すかどうかで変わります。税額が0円になる制度こそ、申告書の提出が条件になっているので、納税が不要だからと提出を省くと制度そのものが使えません。
申告が要るかどうかで制度は3つに分かれ、申告が絶対条件のもの、申告なしでも使えるもの、還付を受けるなら必要なものです。
| 制度 | 申告の要否 | 出さなかった場合 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 不要 | 影響なし。枠内なら申告も納税も不要 |
| 小規模宅地等の特例 | 必要 | 評価減が使えず、本来の評価額で課税される |
| 配偶者の税額軽減 | 必要 | 軽減が使えず、税額が発生する |
| 農地等の納税猶予 | 必要 | 猶予が受けられず、一括で納税することになる |
| 生命保険金・死亡退職金の非課税枠 | 不要 | 影響なし |
| 債務控除・葬式費用 | 不要 | 影響なし |
| 未成年者控除・障害者控除 | 不要 | 影響なし |
| 相次相続控除・外国税額控除 | 不要 | 影響なし |
| 精算課税分の贈与税額控除 | 還付を受けるなら必要 | 払った贈与税が戻らない |
表の見方:薄赤の3つが申告書を出さないと使えない制度です。この3つは適用できるかどうかが提出の有無で決まります。
重要ポイント:黄色の精算課税分は少し性質が違います。納税は不要でも、還付を受けたいなら申告書が必要です。出さなければ還付されないまま終わります。
計算ロジック:申告が必要なのは、制度の適用を選んだことを申告書で明らかにする仕組みになっている制度です。小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減は、申告書に記載してはじめて適用される形になっています。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
申告が必要かどうかの判定手順と、0円でも提出が必要になるケースは下記の記事で解説しています。

申告が必要な制度のなかでも、期限内の申告が条件になっているものと、期限後でも間に合うものがあります。違いを押さえておかないと、遅れに気づいた時点で打つ手が変わります。
| 制度 | 期限後申告でも使えるか | 条件 |
|---|---|---|
| 小規模宅地等の特例 | 使える | 申告書に記載し、分割が済んでいること |
| 配偶者の税額軽減 | 使える | 申告書に記載し、分割が済んでいること |
| 農地等の納税猶予 | 使えない | 期限内申告が絶対条件 |
表の見方:薄赤の農地等の納税猶予だけが期限内申告でなければ一切使えません。1日遅れただけで猶予が受けられず、全額を一括で納めることになります。
重要ポイント:黄色の2つは期限後でも適用できますが、無申告加算税と延滞税は別に発生します。制度が使えることと、ペナルティがないことは別の話です。
納税猶予の要件と、猶予が打ち切られる条件は下記の記事で解説しています。

申告期限までに遺産の分け方が決まらないと、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減がいったん使えなくなります。ただし手続きを踏めば、後から適用し直せます。
⬇
⬇
重要ポイント:この流れで注意すべきは最初の1つです。分割見込書を添付し忘れると、後から特例を適用できません。未分割で申告する場合は、添付漏れがないか必ず確認してください。
計算ロジック:未分割の申告では特例を使わずに納税するため、いったん本来より多い税額を納めます。分割が済んだ後の更正の請求で、納めすぎた分が戻る仕組みです。手元の資金がその期間だけ拘束される点は織り込んでおいてください。
参照元:国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
未分割で申告する具体的な手順と、特例を取り戻す方法は下記の記事で解説しています。


税額控除を引く前に、相続人によっては税額が1.2倍になる加算があります。控除の話に集中していると見落としやすく、税額が合わない原因になります。
対象は配偶者・子・親以外の人です。亡くなった人と血縁が近い人ほど加算されないという考え方になっています。
| 続柄 | 2割加算 | 理由 |
|---|---|---|
| 配偶者 | なし | 一親等の血族に準じる扱い |
| 子 | なし | 一親等の血族 |
| 親 | なし | 一親等の血族 |
| 兄弟姉妹 | あり | 二親等になる |
| 孫(代襲相続ではない) | あり | 世代を飛ばす相続になる |
| 孫(代襲相続) | なし | 子の立場を引き継ぐため |
| 孫を養子にした場合 | あり | 養子でも世代を飛ばす点は変わらない |
| 甥・姪・友人・法人 | あり | 血族でないか、二親等より遠い |
表の見方:薄赤の行が加算の対象です。孫は代襲相続かどうかで結論が正反対になります。子が先に亡くなっていて孫が相続人になった場合は加算されません。
重要ポイント:養子縁組で孫を養子にした場合は加算の対象です。相続人の数を増やして基礎控除を広げても、その孫の税額は1.2倍になります。節税効果を計算するときは、この加算を含めて比較してください。
孫が相続する4つのパターンと加算の有無は、下記の記事で解説しています。

順番は先に2割加算をして、その後に税額控除を引きます。加算は相続税法18条、控除は19条以降なので、条文の並びどおりです。
| 前提:本来の税額200万円・未成年者控除50万円・2割加算の対象 | 正しい順番 | 誤った順番 |
|---|---|---|
| 1番目 | 加算:200万円×1.2=240万円 | 控除:200万円−50万円=150万円 |
| 2番目 | 控除:240万円−50万円=190万円 | 加算:150万円×1.2=180万円 |
| 最終の税額 | 190万円 | 180万円 |
表の見方:同じ数字でも順番で結果が変わります。正しい順番は加算が先で、税額は190万円です。
計算ロジック:加算の対象は本来の税額なので、控除を引いた後の金額に1.2を掛けてはいけません。控除分にまで加算が及ばないよう、加算を先に計算します。10万円の差が出るのはこの構造によるものです。
加算の対象になる人は税額が増えるので、控除が余りにくくなります。逆に言えば、控除の効果をより大きく受けられる立場でもあります。
【加算対象者に控除がある場合の考え方】
加算の対象だからといって控除が使えなくなるわけではありません。加算で増えた税額に対して、通常どおり控除を引きます。
兄弟姉妹が相続人になる場合は、加算に加えて相続人の数が少ないことも税額を押し上げます。基礎控除も小さくなるため、二重に負担が重くなります。
兄弟姉妹が相続人になる場合の税額と対策は、下記の記事で解説しています。


申告した後に使える制度を見つけた場合でも、5年以内なら払いすぎた税金を返してもらえます。ただし制度によって手続きと期限が違うので、気づいた時点で確認してください。
申告した税額が多すぎたときの手続きが更正の請求です。期限は申告期限から5年以内で、認められれば差額が還付されます。
| 気づいた内容 | 手続き | 期限 |
|---|---|---|
| 小規模宅地等の特例を使っていなかった | 更正の請求(申告書に記載していれば可能) | 申告期限から5年以内 |
| 未成年者控除・障害者控除を引いていなかった | 更正の請求 | 申告期限から5年以内 |
| 相次相続控除を引いていなかった | 更正の請求 | 申告期限から5年以内 |
| 未分割だった遺産の分割が済んだ | 更正の請求 | 分割が確定した日から4か月以内 |
| 申告書に特例の記載がなかった | 原則として認められない | − |
表の見方:黄色の行だけ期限の数え方が違います。未分割からの分割は4か月以内という短い期限なので、分割が成立したらすぐ動いてください。
重要ポイント:薄赤の行が最も重い落とし穴です。申告書に特例の記載がまったくない場合、後から適用するのは原則として認められません。使うかどうか迷う制度は、いったん記載しておくのが安全です。
参照元:e-Gov法令検索 国税通則法(第23条 更正の請求)
更正の請求と修正申告のどちらを使うかの判定は、下記の記事で解説しています。

使い忘れは知識不足よりも確認する順番を間違えたときに起きます。実際に起きやすい3つのパターンを挙げます。
| 何が起きたか | 原因 | 結果 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 0円だから申告しなかった | 配偶者の税額軽減で0円になると自分で計算した | 軽減が適用されず本来の税額が発生 | 0円でも申告書を出す |
| 分割見込書を添付し忘れた | 未分割で申告する際に添付書類を確認しなかった | 分割後も特例を適用できない | 未分割申告の添付書類を一覧で確認する |
| 前回の相続を伝えなかった | 8年前の父の相続を申告に関係ないと考えた | 相次相続控除を使わないまま申告 | 過去10年の相続を必ず申告する |
表の見方:3件はいずれも制度を知らなかったのではなく、確認するタイミングを逃したことが原因です。対策の欄はすべて申告書を作る前にできることです。
対策はひとつです。申告書を作る前に、制度ごとの該当と申告要否をチェックしてください。作った後の確認では、記載漏れに気づいても間に合わないことがあります。
重要ポイント:このうち前回の相続と生前贈与は、相続人が申告しないと誰も気づけません。10年前の相続や5年前の贈与は記録が手元にないことが多いので、早めに確認してください。
期限を過ぎたと気づいたときは、まず制度が期限後申告でも使えるかを確認します。使えるなら、加算税を払っても申告したほうが税額は下がります。
| 状況 | 取れる手段 | 結果 |
|---|---|---|
| 申告していない(期限後) | 期限後申告をする | 小規模宅地・配偶者の税額軽減は適用できる |
| 申告したが控除を引き忘れた | 更正の請求をする | 差額が還付される |
| 申告したが財産を申告していなかった | 修正申告をする | 追加の納税と加算税 |
| 申告書に特例の記載がない | ほぼ手段がない | 本来の評価額での課税が確定する |
表の見方:黄色の行が重要です。期限を過ぎていても、申告すれば効果の大きい2つは使えます。放置して税務署の指摘を待つより、自分から申告したほうが負担は軽くなります。
重要ポイント:薄赤の行だけは回復が難しいところです。特例を使うつもりがあるなら、迷っていても申告書に記載してください。記載があれば後から更正の請求で調整できます。

控除と特例は、どの制度を選んで申告書にどう記載するかで税額が変わります。判断が必要な部分が多いため、依頼先によって結果に差が出ます。
相続税の申告は、制度の選び方と申告書の記載で税額が決まります。記載を1つ落とすだけで特例が使えなくなるため、経験の差がそのまま金額に出ます。
【対応実績がある税理士に依頼すべき理由】
遺産1億円・相続人が配偶者と子2人のケースで見積りを取ると、A税理士は小規模宅地を1区分だけ適用して税額385万円、B税理士は区分を組み替えて配偶者の配分も見直し税額185万円という差が出ることがあります。
同じ遺産で200万円の税額差が生まれるのは、制度の組み合わせと配分の設計を検討したかどうかの違いです。
見積りを比べると、提案の内容から実務の経験値が読み取れます。報酬額だけでなく、次の3点を比較してください。
判定ポイント1:分割パターンの提案数|配偶者に渡す割合を変えた試算を何通り出してくるか。A税理士は1パターン、B税理士は5パターンなら、B税理士は二次相続まで含めて検討していると判定できます。
判定ポイント2:小規模宅地の区分の検討|土地が複数ある場合に、どの土地にどの区分を当てるかの比較があるか。比較がある見積りは、面積の上限まで踏み込んで計算している証拠になります。
判定ポイント3:申告後の対応の明記|未分割になった場合の分割見込書や、更正の請求への対応が見積りに書かれているか。書かれていれば、分割が長引くケースを扱った経験があると判断できます。
3点のすべてで具体的な記載があるほうを選べば、制度の使い忘れが起きる可能性を下げられます。見積りの厚みは、そのまま検討量の差だと考えてください。
制度を自分で判断して申告すると、後から取り返せない形で損失が確定することがあります。起きやすいのは次の5つです。
【相談せずに進めた場合に起きること】
いずれも申告書を提出した時点で選択が固まります。提出前に複数の税理士へ相談すれば回避できる損失です。
遺産1億円で追加の納税500万円が発生した場合、過少申告加算税が約75万円、延滞税が数十万円加わります。
合計で600万円前後の追加負担になりますが、提出前に複数の見積りを取っていれば防げた金額です。
見積りを取る流れは4段階に分かれ、最初の整理を済ませておけば、見積りの精度が上がります。
⬇
⬇
⬇
重要ポイント:STEP1で過去の相続と生前贈与を洗い出しておくことが、相次相続控除と贈与税額控除の見落としを防ぐもっとも確実な方法です。
遺産の金額を減らす制度が7つ前後、税額から直接引く制度が7つあります。ただし全部を検討する必要はありません。ほとんどの相続で使うのは基礎控除・小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減の3つで、残りは該当者がいるかどうかを確認する程度で足ります。
制度によって違います。基礎控除の枠内に収まって0円になる場合は申告も納税も不要です。ただし小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って0円になる場合は、申告書を出さないと制度そのものが適用されません。提出を省くと本来の税額が発生します。
還付される金額が減ることがあります。引ききれない分が還付されるのは精算課税分の贈与税額控除だけで、暦年課税分は切り捨てになります。精算課税分を先に引いてしまうと、還付の枠を暦年課税分に使ってしまい、本来戻るはずの金額が戻りません。
申告期限から5年以内なら更正の請求ができます。未成年者控除や相次相続控除の引き忘れは、この手続きで還付を受けられます。ただし申告書に特例の記載がまったくない場合は、原則として後から適用できません。使うか迷う制度は、いったん記載しておくのが安全です。
ほとんどの制度は併用できます。遺産の金額を減らす制度と税額から引く制度は効くタイミングが違うので、重複を気にする必要はありません。例外は同じ土地に小規模宅地等の特例と農地等の納税猶予を重ねる場合で、このときはどちらか有利なほうを選びます。
相続税の控除と特例は数が多く見えますが、2つの種類に分けて考えれば整理できます。実際に使う制度は3つ前後に絞られます。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年8月時点の法令に基づいて作成しています。相続税法の改正により内容が変わる場合があります。最新の制度については国税庁の公式サイトまたは税理士にご確認ください。