


生命保険の死亡保険金には、相続税がかからない枠があります。金額は「500万円×法定相続人の数」です。この枠は「生命保険控除」と呼ばれることが多いのですが、相続税にその名前の制度はありません。
正式には「死亡保険金の非課税枠」で、所得税の生命保険料控除とはまったく別の制度です。混同したまま計算すると、かかると思っていた相続税がかからなかったり、その逆になったりします。
さらに、この非課税枠は相続税の基礎控除とは別枠で、両方を使えます。ここを知らないと判定を誤ります。法定相続人が3人なら、非課税枠1,500万円と基礎控除4,800万円を合わせて6,300万円までは相続税がかかりません。
この記事では、3つの「控除」の違い、いくらまでかからないのかの早見表、判定の手順、計算例、非課税枠が使えないケースまでを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

生命保険と相続税を調べていると、「生命保険控除」「保険金控除」という言葉に行き当たります。しかし相続税に、その名前の制度は存在しません。使われているのは別の名前の制度です。
ここでは正しい制度名と、混同しやすい3つの「控除」の違いを整理します。ここを押さえるだけで、以降の計算がすべて正しくなります。
検索でよく使われる「生命保険控除」「相続税 生命保険控除」という言い方は、正式な制度名ではありません。税理士事務所のサイトでも「生命保険金特別控除」という表記を見かけますが、相続税法にその名称の規定はありません。
名前が違うだけで実務上の困りごとはありませんが、調べ物のときに問題が起きます。「生命保険控除」で検索すると、所得税の生命保険料控除の解説が混ざって出てきます。別の税金の話を読んでしまうのです。
注意:「生命保険控除」で調べた結果に、所得税の生命保険料控除(年間最大12万円など)の話が混ざります。その金額は相続税とは無関係です。
相続税で使える制度の正式な呼び方は、死亡保険金の非課税枠(非課税限度額)です。金額は「500万円×法定相続人の数」です。相続人が受け取った死亡保険金のうち、この金額までは相続税がかかりません。
法定相続人が3人なら1,500万円、4人なら2,000万円が非課税になります。この枠は、死亡保険金が遺族の生活資金という性質を持つことに配慮して設けられています。法律で認められた枠なので、使わない理由がありません。
なお、非課税枠は「1人あたり500万円」ではありません。相続人全員で使う合計の上限です。
重要ポイント:相続人が2人で、1人が1,000万円を受け取った場合も枠は1,000万円です。誰がいくら受け取っても、合計が枠の範囲なら非課税です。
参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
もっとも混同されやすいのが、所得税の生命保険料控除です。名前が似ていますが、対象がまったく違います。生命保険料控除は、契約者が「払った保険料」に応じて、毎年の所得税と住民税を軽くする制度です。年末調整や確定申告で申請します。
一方の相続税の非課税枠は、相続人が「受け取った保険金」に対する制度です。使うのは相続が起きたときの一度だけです。
払う側の税金と、受け取る側の税金という違いもあります。生命保険料控除をたくさん使ったからといって、相続税が軽くなることはありません。逆に、生命保険料控除を一度も使っていなくても、死亡保険金の非課税枠は満額使えます。両者は独立しています。
重要ポイント:一時払い終身保険では生命保険料控除が払込年の1回しか使えませんが、相続税の非課税枠には何の影響もありません。相続対策としての効果は変わりません。
正式名称でないのに「生命保険控除」という言い方が広まっているのには理由があります。1つは、計算上の扱いが控除とよく似ていることです。受け取った保険金から一定額を差し引くため、感覚的には控除と同じです。
もう1つは、申告書での見え方です。第9表で保険金の総額から非課税額を差し引いて記載するため、実務上も「引く」操作として現れます。
ただし相続税法での位置づけは「非課税財産」です。課税対象から最初から外れる財産という扱いで、税額から引く税額控除とは仕組みが違います。
呼び方の違いで税額が変わることはありません。ただし調べ物のときは正式名称で検索したほうが正確な情報にたどり着きます。
重要ポイント:税理士に相談するときは「死亡保険金の非課税枠」と伝えると話が早くなります。「生命保険控除」だと所得税の話と受け取られる可能性があります。
相続税と生命保険をめぐって出てくる「控除」は3つあります。表で区別しておきましょう。
| 名称 | 何に対する制度か | 誰のどの税金 | 使うタイミング |
|---|---|---|---|
| 死亡保険金の非課税枠 | 受け取った保険金 | 相続人の相続税 | 相続が起きたとき |
| 生命保険料控除 | 払った保険料 | 契約者の所得税・住民税 | 毎年(年末調整・確定申告) |
| 相続税の基礎控除 | 遺産の総額 | 相続人の相続税 | 相続が起きたとき |
表の見方:相続税で使うのは1行目と3行目の2つです。2行目の生命保険料控除は所得税の話なので、相続税の計算には登場しません。
重要ポイント:「生命保険控除」という言葉を見かけたら、1行目の非課税枠を指しているのか、2行目の所得税の制度を指しているのかを確認してください。金額の桁が違います。
相続税と所得税の申告の違いは、下記の記事で解説しています。


読者が本当に知りたいのは「うちは結局いくらまでかからないのか」です。答えを出すには2つの枠を足します。死亡保険金の非課税枠と相続税の基礎控除は別枠で、両方を使えます。
ここでは2つの枠の中身と、相続人の数ごとにいくらまでかからないのかを表で示します。
1つ目の枠が、死亡保険金の非課税枠です。金額は「500万円×法定相続人の数」です。この枠は、相続人が受け取った死亡保険金にだけ使えます。預金や不動産には使えません。
法定相続人の数で決まるため、実際に保険金を受け取った人数とは関係ありません。相続人が3人いれば、受取人が1人でも枠は1,500万円です。
相続を放棄した人も、法定相続人の数には含めて数えます。ただし放棄した人が受け取った保険金には枠を使えません。
2つ目の枠が、相続税の基礎控除です。金額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。こちらは遺産の総額に対する枠です。保険金だけでなく、預金・不動産・株式などをすべて合計した額から差し引きます。
法定相続人が3人なら4,800万円です。遺産の合計がこの金額以下なら、相続税は発生せず申告も不要です。
ここが最も誤解されやすい点です。非課税枠と基礎控除は、どちらか一方しか使えないわけではありません。保険金から非課税枠を引き、残った額を他の財産と合計してから基礎控除を引きます。順番に2回差し引ける仕組みです。
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重要ポイント:「二重に控除できる」わけではありません。保険金を非課税枠で圧縮したあと、財産全体を基礎控除で判定するという段階的な仕組みです。
非課税枠は、死亡保険金がなければ使えません。使わなかった分が翌年に繰り越されることもありません。法定相続人が3人なら枠は1,500万円です。死亡保険金が1,000万円なら、500万円分の枠が余ったまま相続が終わります。
保険にまったく入っていない家庭では、1,500万円の枠がそのまま使われずに消えます。
| 死亡保険金 | 非課税になる額 | 余る枠 | 課税価格に加わる額 |
|---|---|---|---|
| 0円(未加入) | 0円 | 1,500万円 | 0円 |
| 1,000万円 | 1,000万円 | 500万円 | 0円 |
| 1,500万円 | 1,500万円 | 0円 | 0円 |
| 2,000万円 | 1,500万円 | 0円 | 500万円 |
表の見方:枠をちょうど使い切るのは3行目です。未加入の1行目は1,500万円の枠を丸ごと捨てている状態になります。
重要ポイント:枠を超えた4行目も損ではありません。超えた500万円が課税価格に加わるだけで、1,500万円分の圧縮効果は変わりません。
2つの枠を足すと、相続税がかからない金額の目安が出ます。自分の家庭の行を確認してください。
| 法定相続人の数 | 死亡保険金の非課税枠 | 相続税の基礎控除 | 合計=この額までかからない |
|---|---|---|---|
| 1人 | 500万円 | 3,600万円 | 4,100万円 |
| 2人 | 1,000万円 | 4,200万円 | 5,200万円 |
| 3人 | 1,500万円 | 4,800万円 | 6,300万円 |
| 4人 | 2,000万円 | 5,400万円 | 7,400万円 |
表の見方:右端の金額は「死亡保険金で非課税枠を使い切った場合」の上限です。保険に入っていなければ、基礎控除の額までになります。
重要ポイント:非課税枠は保険金にしか使えません。保険に入っていない家庭では、この枠は使われないまま消えます。預金のまま持っていると差が出るのはここです。
計算ロジック:非課税枠=500万円×法定相続人の数、基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数。相続人3人なら1,500万円+4,800万円=6,300万円です。実際の税額は財産の内容や特例の適用で変わります。
相続税がかかるかどうかの判定は、下記の記事で解説しています。

基礎控除の計算式と早見表は、下記の記事で解説しています。


枠の中身が分かったら、実際に自分の家庭に当てはめて判定します。手順は3ステップで、電卓があればその場で概算できます。ここでは順を追って計算し、途中で判定が終わるケースも確認します。
最初に、受け取った死亡保険金の合計から非課税枠を引きます。法定相続人が3人で保険金が1,000万円なら、枠1,500万円で引ききれます。この場合、保険金は課税価格に一切入りません。
保険金が3,000万円なら、枠1,500万円を引いた1,500万円が次のステップへ進みます。ここで引ききれれば、保険金については相続税を考えなくてよくなります。
次に、STEP1で残った金額を他の財産と合計します。預金・不動産・株式・車などがすべて対象です。ここから借入金などの債務と、葬式費用を差し引きます。差し引いた結果が課税価格です。
不動産は時価ではなく相続税評価額で計算します。土地は路線価、建物は固定資産税評価額が基本です。
重要ポイント:亡くなる前7年以内に相続人へ贈与した財産は、この合計に加算されます。贈与した分だけ財産が減っているとは限りません。
最後に課税価格から基礎控除を引きます。0以下になれば相続税はかからず、申告も不要です。0を超えた場合は、その金額を法定相続分で仮に分けて税率を当て、各人の税額を合計します。
そこから配偶者の税額軽減などの控除を適用して、実際に納める金額が決まります。配偶者は1億6,000万円または法定相続分まで相続税がかかりません。配偶者が受け取る分は税負担が軽くなります。
判定の精度は、STEP2でどれだけ財産を拾えるかで決まります。漏れがあれば答えが変わります。預金と不動産は誰でも思い浮かびますが、見落とされやすい財産があります。
| 種類 | 見落とされやすいもの |
|---|---|
| 現金・預貯金 | ネット銀行・休眠口座・手元の現金 |
| 有価証券 | ネット証券・単元未満株・未収配当金 |
| 不動産 | 先代名義のまま・共有持分・私道・田畑 |
| その他 | ゴルフ会員権・貸付金・車・貴金属・電子マネー |
| みなし相続財産 | 死亡退職金・生命保険契約に関する権利 |
表の見方:下段の死亡退職金には生命保険とは別に500万円×法定相続人の非課税枠があります。両方あれば枠を2つ使えます。
重要ポイント:債務と葬式費用は差し引けます。借入金・未払いの医療費・未払いの税金と、通夜と告別式の費用が対象です。香典返しと法要の費用は対象外です。
「非課税枠を超えたから相続税がかかる」と考えるのは早すぎます。まだ基礎控除が残っています。たとえば遺産が死亡保険金3,000万円だけで、法定相続人が1人のケースを考えます。
非課税枠は500万円なので、2,500万円が課税価格になります。しかし基礎控除は3,600万円なので、相続税はかかりません。非課税枠を超えることと、相続税がかかることは別の話です。必ずSTEP3まで計算してください。
計算ロジック:【前提】遺産は死亡保険金3,000万円のみ・法定相続人1人。非課税枠500万円×1人=500万円を引いて課税価格2,500万円。基礎控除3,000万円+600万円×1人=3,600万円を引くとマイナスになるため相続税は0円です。
申告が必要ないケースの判定は、下記の記事で解説しています。


実際の数字で3つのケースを比べます。同じ非課税枠でも、財産の総額によって結果がまったく変わります。前提は法定相続人が配偶者と子2人の合計3人で統一します。非課税枠1,500万円・基礎控除4,800万円です。
死亡保険金1,000万円、他の財産3,000万円のケースです。保険金1,000万円は非課税枠1,500万円に収まるため、全額が非課税になります。課税価格に加わる保険金は0円です。
課税価格は他の財産3,000万円だけです。基礎控除4,800万円を下回るため、相続税は0円で申告も不要です。
重要ポイント:この規模なら保険金があっても申告は発生しません。ただし非課税枠は1,500万円まで使えるので、500万円分の枠が余っています。
死亡保険金3,000万円、他の財産2,000万円のケースです。保険金3,000万円から非課税枠1,500万円を引くと、1,500万円が課税価格に加わります。
他の財産2,000万円と合わせて課税価格は3,500万円です。基礎控除4,800万円を下回るため、こちらも相続税は0円です。非課税枠を超えていても、基礎控除で吸収されました。枠を超えた時点で諦めなくてよい典型例です。
死亡保険金3,000万円、他の財産6,000万円のケースです。保険金は非課税枠1,500万円を引いて1,500万円が加算されます。他の財産6,000万円と合わせて課税価格は7,500万円です。
基礎控除4,800万円を引くと課税遺産総額は2,700万円になり、相続税の総額は287万5,000円です。ここで初めて相続税が発生します。配偶者が相続する分には税額軽減が使えるため、実際の納税額はさらに小さくなります。
3つを並べると、どこで課税に切り替わるかが見えます。
| 項目 | ケース1 | ケース2 | ケース3 |
|---|---|---|---|
| 死亡保険金 | 1,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 他の財産 | 3,000万円 | 2,000万円 | 6,000万円 |
| 非課税になる保険金 | 1,000万円(全額) | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 課税価格 | 3,000万円 | 3,500万円 | 7,500万円 |
| 基礎控除を引いた額 | 0円(下回る) | 0円(下回る) | 2,700万円 |
| 相続税の総額 | 0円 | 0円 | 287万5,000円 |
表の見方:ケース2とケース3の違いは他の財産だけです。保険金の額が同じでも、財産全体で結果が決まります。
重要ポイント:非課税枠を使い切ったケース2とケース3では、枠の効果はどちらも1,500万円です。効果が税額に現れるのは、課税される家庭だけです。
計算ロジック:【前提】配偶者と子2人・非課税枠1,500万円・基礎控除4,800万円・配偶者の税額軽減は考慮せず総額で比較。ケース3は課税遺産2,700万円を法定相続分で分け、配偶者152万5,000円・子各67万5,000円で合計287万5,000円です。
これから加入する場合、いくらにすべきかは目的で決まります。節税だけが目的なら、非課税枠が上限の目安です。枠を超える部分には圧縮効果がありません。
納税資金の確保が目的なら、枠を超える金額にも意味があります。相続税は原則10か月以内に現金で一括納付するためです。代償分割の原資にする場合も同じです。自宅を相続する子が他の子へ払う現金として、必要額から逆算します。
重要ポイント:迷ったら控えめから始めてください。後から追加はできますが、早期解約の元本割れは取り返せません。
ケース3と同じ総資産9,000万円を、保険を使わず現金のまま持っていた場合と比べます。非課税枠が使えないため課税価格は9,000万円です。基礎控除4,800万円を引くと課税遺産総額は4,200万円になります。
相続税の総額は480万円です。保険を使ったケース3は287万5,000円なので、差は192万5,000円になります。預金1,500万円を保険に置き換えただけで、この差が生まれます。財産の総額も、渡す相手も変わっていません。
計算ロジック:【前提】総資産9,000万円・法定相続人は配偶者と子2人。現金のままなら課税遺産4,200万円で、配偶者2,100万円×15%−50万円=265万円、子各1,050万円×15%−50万円=107万5,000円で合計480万円です。
財産6,000万円台で相続税が0円になる帯は、下記の記事で解説しています。


非課税枠は、条件を満たさないと使えません。受取人を誰にするかだけで、枠が丸ごと消えることがあります。ここでは使えない5つのケースを解説します。契約前に必ず確認してください。
非課税枠が使えるのは、法定相続人が受け取った死亡保険金だけです。孫(代襲相続人でない場合)・内縁のパートナー・兄弟姉妹などが受取人だと、保険金の全額が課税対象になります。
さらに法定相続人以外が財産を受け取ると、相続税が2割加算されます。負担が二重に重くなります。
注意:「かわいい孫に直接渡したい」という理由で孫を受取人にすると、非課税枠が使えず2割加算もかかります。渡す意図と税負担を分けて考えてください。
孫が受け取る場合の2割加算は、下記の記事で解説しています。

相続放棄をした人でも、受取人に指定されていれば死亡保険金は受け取れます。保険金は受取人固有の財産だからです。ただし相続放棄をした人は非課税枠を使えません。受け取った保険金の全額が課税対象になります。
紛らわしいのは、非課税枠の金額を計算するときの「法定相続人の数」には放棄した人も含める点です。枠の大きさには影響しないが、放棄した本人は枠を使えない。この2つを混同しないでください。
重要ポイント:相続放棄をした人が受け取った分は、非課税枠の按分計算からも除外されます。残った相続人が枠を多く使える結果になります。
死亡保険金にかかる税金は、契約者・被保険者・受取人の組み合わせで決まります。相続税になるのは、保険料を払った人と被保険者が同じ場合だけです。所得税や贈与税になる形では、非課税枠は使えません。
名義だけを子にして親の口座から保険料を払っていた場合、実際の負担者は親と判定されます。名義ではなく実質で決まります。
重要ポイント:保険料を誰の口座から払ったかが記録に残ります。契約形態を整えたつもりでも、払込口座で判定が変わります。
被相続人が保険料を払っていて、被保険者が別の人(配偶者や子)だった場合、相続時点では保険金が出ません。この場合に相続するのは「生命保険契約に関する権利」で、解約返戻金相当額が相続財産になります。
死亡保険金ではないため、非課税枠は使えません。掛け捨ての保険なら返戻金がないので課税もされません。見落とされやすい財産です。被相続人が契約者になっている保険を全部洗い出す必要があります。
みなし相続財産の種類と扱いは、下記の記事で解説しています。

被相続人が生前に受け取った給付金には、非課税枠は使えません。死亡による取得ではないためです。入院給付金や生存給付金は、受取人が被相続人本人なら相続財産になります。使い切っていなければ課税対象です。
リビングニーズ特約で余命6か月以内と診断されて受け取った生前給付金も同じです。受け取った時点は非課税ですが、使い残しは相続財産になり非課税枠も使えません。次の項目を確認しておくと、枠が使えるかどうかを判定できます。
| 使えないケース | 課税される額 | 直せるか |
|---|---|---|
| 受取人が法定相続人以外 | 全額+2割加算 | 受取人の変更で直せる |
| 相続放棄をした人が受け取った | 全額 | 放棄の判断次第 |
| 契約形態が所得税・贈与税パターン | 全額(別の税目) | 契約者・受取人の変更で直せる |
| 生命保険契約に関する権利 | 解約返戻金相当額 | 直せない(性質上) |
| 生存給付金・入院給付金の使い残し | 残額 | 直せない(性質上) |
表の見方:上の3つは契約の見直しで直せます。下の2つは財産の性質上どうにもならないため、他の対策で補うことになります。
重要ポイント:チェックが外れた項目は、そのまま非課税枠が使えない原因になります。契約前に直せるものは直しておいてください。
入院給付金の扱いは、下記の記事で解説しています。


非課税枠を使う前提として、税金の種類が相続税になっていることが必要です。契約者・被保険者・受取人の組み合わせを1つ間違えるだけで、所得税や贈与税に変わります。ここでは3パターンの課税と、非課税枠が使える形を整理します。
父が亡くなった場合を例に、組み合わせと税金の種類を並べます。
| 契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | かかる税金 | 非課税枠 |
|---|---|---|---|---|
| 父 | 父 | 子 | 相続税 | 使える |
| 子 | 父 | 子 | 所得税(一時所得) | 使えない |
| 母 | 父 | 子 | 贈与税 | 使えない |
表の見方:非課税枠が使えるのは1行目だけです。3行目の贈与税パターンは税率が高く、最も負担が重くなりやすい形です。
重要ポイント:所得税パターンは「受取額−払込保険料−50万円」の半分が課税対象なので、必ずしも不利とは言えません。ただし非課税枠を使いたいなら1行目以外は選べません。
非課税枠が使えないからといって、所得税パターンが必ず不利とは限りません。所得税では、受け取った保険金から払込保険料と特別控除50万円を差し引き、残った額の半分だけが課税対象になります。一時所得の計算です。
払込保険料に近い保険金額なら、課税対象がほとんど残りません。相続税の税率が高い家庭では、こちらが軽くなることもあります。ただし子が自分の資金で保険料を払える前提が必要です。親から資金を渡すなら、贈与として成立させる記録が欠かせません。
重要ポイント:設計が複雑になるため、実行前に試算が必要です。まずは非課税枠を使い切ることを優先し、余力があれば検討する順序が安全です。
相続税対策として非課税枠を使うなら、契約形態は1つに決まります。契約者=被保険者=親、受取人=子(法定相続人)です。保険料は親自身の口座から払います。
申込書の契約者欄・被保険者欄・受取人欄の3か所を、自分の目で確認してください。ここが正しければ課税関係で大きく間違うことはありません。
すでに加入している保険も同じです。契約形態が意図と違っていれば、受取人や契約者の変更で直せる場合があります。
契約形態の判定で決め手になるのは、契約者の名義ではなく実際に保険料を負担した人です。申込書の契約者欄に子の名前が書かれていても、保険料が親の口座から引き落とされていれば、税務上は親が負担者と扱われます。
名義を整えただけでは、意図した課税関係になりません。払込口座の記録が判定材料になります。子の口座から払う形にしたい場合は、その資金の出所も問われます。親が子の口座に入金していれば、贈与として扱うための記録が必要です。
保険料の一部を被相続人が負担していた場合は、負担割合に応じて課税関係が分かれます。被相続人が半分払っていれば、保険金の半分が相続税の対象です。
注意:残りの半分は、もう一方の負担者から受取人への贈与とみなされる場合があります。負担者が複数いる契約は課税関係が複雑になるため、契約前に確認してください。
受取人を誰にするかで、非課税枠の効き方が変わります。配偶者には1億6,000万円または法定相続分までの税額軽減があるため、配偶者に非課税枠を使うのはもったいない結果になりがちです。
さらに配偶者が受け取った保険金は、次の相続(二次相続)で再び課税対象になります。子を受取人にすれば1世代先へ直接渡せます。受取人が複数いる場合、非課税枠は受け取った保険金の割合で按分します。誰にいくら渡すかで各人の非課税額が変わります。
重要ポイント:古い契約は受取人が配偶者のままになっていることが多くあります。二次相続まで考えるなら、受取人を子へ変更する手続きを検討してください。
受取人の指定と変更の注意点は、下記の記事で解説しています。

遺留分で持戻しになる条件は、下記の記事で解説しています。


非課税枠は使わなければ消えます。預金のまま持っていると、枠が丸ごと余ったまま相続が起きます。ここでは枠を使い切るために確認すべきことを、順を追って解説します。
最初に確認するのは、すでに入っている保険です。非課税枠はその人の保険全体で計算します。法定相続人が3人(枠1,500万円)で、既契約の死亡保険金が800万円あるなら、残っている枠は700万円です。
枠が埋まっているのに気づかず加入すると、節税効果ゼロで資金が固定されるだけです。保険証券で確認するのは、死亡保険金の金額・契約形態・受取人の3点です。
| 既契約の死亡保険金 | 非課税枠(相続人3人) | 残っている枠 | 追加加入の節税効果 |
|---|---|---|---|
| 0円 | 1,500万円 | 1,500万円 | あり |
| 500万円 | 1,500万円 | 1,000万円 | あり |
| 800万円 | 1,500万円 | 700万円 | あり |
| 1,500万円 | 1,500万円 | 0円 | なし |
| 2,000万円 | 1,500万円 | 0円 | なし |
表の見方:下2行は枠が埋まっているため、追加で加入しても節税効果はありません。資金が固定されるだけです。
計算ロジック:残っている枠=非課税枠−既契約の死亡保険金の合計。相続人3人で枠1,500万円、既契約800万円なら残りは700万円です。枠を超えている場合の残りは0円です。
重要ポイント:保険証券が見つからない場合は、生命保険契約照会制度で契約の有無を一括照会できます。「入っていたはずだが分からない」ときの手段になります。
枠を埋める手段として実務でよく使われるのが、一時払い終身保険です。保険料を契約時に一括で払い込むタイプで、終身保障なので何歳で亡くなっても必ず保険金が出ます。
加入時の健康審査が緩やかで、80代でも入れる商品が多いのが特徴です。持病があっても加入できる場合があります。ただし契約から数年内に解約すると元本割れします。使う予定のない余裕資金で入るのが前提です。
一時払い終身保険の効果と注意点は、下記の記事で解説しています。

枠が残っていると分かったら、埋めるかどうかを判断します。埋めることが常に正解とは限りません。判断の順序は3つです。第一に、相続税がかかるかどうかを確認します。基礎控除以下なら枠を埋めても節税効果はありません。
第二に、余裕資金の範囲かを確認します。生活費や医療・介護の備えを保険に回すのは危険です。第三に、残っている枠の額と加入額を合わせます。枠を超えて加入しても、超えた分の圧縮効果はありません。
節税以外の目的があるなら、枠を超える加入にも意味があります。納税資金の確保や、特定の子へ確実に渡す目的です。
重要ポイント:枠が余っていても、相続税がかからない家庭では急ぐ必要はありません。まず基礎控除を超えるかの確認が出発点です。
受取人が法定相続人でなければ非課税枠は使えません。指定の確認は必須です。古い契約では、受取人が先に亡くなった配偶者のままになっていることがあります。この状態だと保険金が受取人の法定相続人に分散し、意図しない人に渡ります。
受取人の変更は、被保険者の同意があれば契約者がいつでも手続きできます。家族構成が変わったら見直してください。複数人を受取人に指定する場合は、割合も設定できます。誰にいくら渡すかで各人の非課税額が変わります。
非課税枠の金額は法定相続人の数で決まるため、数え方を間違えると枠の額を誤ります。養子は人数に制限があります。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか算入できません。
特別養子縁組による養子と、配偶者の連れ子を養子にした場合は実子として扱われ、この制限を受けません。相続を放棄した人も人数には含めます。代襲相続人がいる場合は、その人数で数えます。次の項目を確認しておくと、枠の額を正しく計算できます。
重要ポイント:養子の数え方を誤ると、非課税枠と基礎控除の両方の金額がずれます。影響が二重に出るので、人数は慎重に確認してください。
法定相続人の数え方と範囲は、下記の記事で解説しています。


500万円という金額は、長い間変わっていません。引き上げの要望が出ている一方で、法令化はされていません。ここでは金額の経緯と、設計するときの注意点を解説します。
死亡保険金の非課税枠は、昭和63年の税制改正で「250万円×法定相続人の数」から「500万円×法定相続人の数」に引き上げられました。それ以降、金額は変わっていません。30年以上にわたって500万円のまま据え置かれています。
この間、物価も賃金も動いています。実質的な価値は当時より小さくなっている計算です。
| 時期 | 死亡保険金の非課税枠 | 相続税の基礎控除 |
|---|---|---|
| 昭和62年まで | 250万円×法定相続人の数 | - |
| 昭和63年〜平成26年 | 500万円×法定相続人の数 | 5,000万円+1,000万円×法定相続人の数 |
| 平成27年〜現在 | 500万円×法定相続人の数(据え置き) | 3,000万円+600万円×法定相続人の数(引き下げ) |
表の見方:平成27年に基礎控除だけが引き下げられ、保険金の非課税枠は動いていません。課税対象者が増えた一方で枠は変わらなかった形です。
非課税枠の引き上げは、税制改正要望として繰り返し取り上げられています。理由として挙げられるのは、死亡保険金が遺族の生活資金という性質を持つことです。遺族の経済的な備えへの配慮という位置づけです。
ただし要望が出ていることと、実際に改正されることは別です。現時点で法令は変わっていません。
背景には、平成27年の基礎控除の引き下げがあります。「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から現行の水準になり、課税対象者が増えました。
重要ポイント:基礎控除は引き下げられたのに、保険金の非課税枠は据え置かれています。相対的に枠の価値は下がっているという見方ができます。
「いずれ引き上げられるだろう」という前提で計画を立てるのは危険です。改正されるかどうか、いつ改正されるかは決まっていません。現行の500万円×法定相続人の数で計算し、改正されたら見直すのが正しい進め方です。
逆に、引き下げられる可能性も理屈上は否定できません。使える枠は使えるうちに使うという判断も成り立ちます。
注意:金額が変わったという情報を見かけたら、必ず国税庁の公表資料で確認してください。要望の段階の話が「決まったこと」として流通することがあります。

非課税枠を使えることが分かっても、申告での扱いを間違えると意味がありません。「保険金は非課税だから申告しなくてよい」という思い込みが、最も多い誤りです。ここでは申告時に気をつける点を解説します。
申告が必要かどうかは、保険金だけでなく遺産全体で判定します。保険金が非課税枠に収まっていても、他の財産を合わせた課税価格が基礎控除を超えれば申告が必要です。
逆に、遺産全体が基礎控除以下なら申告は不要です。非課税枠は小規模宅地等の特例と違い、申告しなくても適用されます。この点は特例と大きく違います。申告が要件になっている制度と混同しないでください。
保険金を受け取った場合の申告要否は、下記の記事で解説しています。

保険会社は、一定額を超える保険金を支払うと支払調書を税務署に提出します。誰がいくら受け取ったかは、申告しなくても税務署が把握しています。申告が必要なのに保険金を記載しなかった場合、突き合わせで判明します。隠せる財産ではありません。
税務署が財産を把握するルートは、下記の記事で解説しています。

申告が必要な場合、死亡保険金は第9表(生命保険金などの明細書)に記載します。受取人が複数いる場合は、非課税枠を受け取った保険金の割合で按分します。全員が均等に500万円ずつ使えるわけではありません。
たとえば法定相続人3人(枠1,500万円)で長男2,000万円・次男2,000万円を受け取った場合、各人の非課税額は750万円ずつです。相続放棄をした人や法定相続人以外が受け取った分は、この按分計算の分母に入れません。
| 受け取り方(相続人3人・枠1,500万円) | 各人の非課税額 |
|---|---|
| 長男2,000万円・次男2,000万円 | 長男750万円・次男750万円 |
| 配偶者2,000万円・長男1,000万円・次男1,000万円 | 配偶者750万円・長男375万円・次男375万円 |
| 同上で次男が相続放棄 | 配偶者1,000万円・長男500万円・次男0円 |
表の見方:3行目では次男の1,000万円が分母から外れるため、残った2人の非課税額が増えます。枠の総額1,500万円は変わりません。
計算ロジック:各人の非課税額=非課税枠×(その人の保険金÷相続人が受け取った保険金の合計)。長男の例は1,500万円×2,000万円÷4,000万円=750万円。3行目は分母が3,000万円になり配偶者は1,000万円です。
相続税の計算手順と按分割合は、下記の記事で解説しています。

申告が必要な場合、期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。提出先は被相続人の住所地を管轄する税務署です。相続人の住所地ではありません。
保険金の請求から入金までは1週間程度ですが、財産の洗い出しと評価には数か月かかります。10か月は余裕のある期間ではありません。期限を過ぎると無申告加算税と延滞税がかかります。遺産分割が終わっていなくても、期限内の申告は必要です。
なお保険金の請求権には別の期限(一般に3年)があります。葬儀が落ち着いたら早めに保険会社へ連絡してください。
重要ポイント:申告を税理士に依頼する場合、資料集めの時間を含めると相続開始から7か月以内に決めておくと余裕が持てます。
保険金を受け取ると、保険会社から支払通知書や支払明細書が届きます。これらは申告書を作るときの基礎資料です。受け取った金額・受取人・契約内容がすべて書かれています。
税理士に依頼する場合も、この書類がないと非課税枠の計算ができません。必ず保管してください。
重要ポイント:複数の保険会社から受け取った場合は、すべての通知書をそろえてください。1社分が漏れると非課税枠の按分計算がずれます。

生命保険の非課税枠は、契約形態と受取人の設計で効果が決まります。相続税の対応実績がある税理士なら、既契約を含めて枠の残りを計算し、二次相続まで見た受取人を設計できます。複数の税理士に一括で相談し、比較して選ぶのが確実です。
保険の提案は銀行や保険会社の窓口から来ることが多く、商品の説明はあっても税務の設計までは踏み込めません。
相続税の対応実績がある税理士が必要な理由
効果の差は具体的です。法定相続人3人で枠1,500万円を使い切れば、課税価格が1,500万円圧縮されます。逆に既契約で枠が埋まっていることに気づかず加入すると、節税効果はゼロで資金だけが固定されます。
相続税に対応している税理士でも、保険の設計力には差があります。見積りや初回相談で次の3点を比べてください。「保険証券を全部見るか・受取人の両案を試算するか・契約形態を申告前に確認するか」の3点で見分けられます。
判定ポイント1:保険証券をすべて確認するか
「加入中の保険証券を全部見せてください」と言うかを見ます。既契約を確認しないと枠の残りは計算できません。→ 証券から確認する税理士のほうが、効果のない加入を止められると判定できます。
判定ポイント2:受取人を配偶者にした場合と子にした場合の両方を試算するか
配偶者は税額軽減があるため、枠を使うと効果が薄れます。両案を並べてくれるかを確認します。→ 両方試算する税理士のほうが、二次相続まで含めて損しない案を出せると判定できます。
判定ポイント3:契約形態を申告前に確認するか
契約者・被保険者・受取人と、保険料の払込口座まで確認するかを見ます。→ 払込口座まで見る税理士のほうが、所得税や贈与税に転ぶ事故を防げると判定できます。
非課税枠は仕組みが単純に見えるため、自己判断で進めがちです。しかし受取人を1人変えるだけで、枠が丸ごと使えなくなります。具体的には次のようなリスクがあります。
相談せずに進めた場合のリスク
これらの多くは、契約前と申告前の確認で防げます。相談は無料のことが多く、早いほど選択肢が広がります。
実際に一括相談・見積りを利用する流れは次の4ステップです。フォームの記入自体は5分ほどで終わります。加入前でも受け取った後でも相談できます。契約してからでは設計を直せません。
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重要ポイント:相談時は加入中の保険証券をすべて用意してください。非課税枠の残りはこれがないと計算できないため、見積りの精度が大きく上がります。
相続税に「生命保険控除」という名前の制度はありません。正式には「死亡保険金の非課税枠」で、金額は500万円×法定相続人の数です。似た名前の「生命保険料控除」は所得税の制度で、払った保険料に応じて毎年の所得税と住民税を軽くするものです。まったく別の制度です。
非課税枠と基礎控除の合計が目安になります。法定相続人が1人なら4,100万円、2人なら5,200万円、3人なら6,300万円、4人なら7,400万円です。この金額は保険金だけでなく遺産全体の合計に対する上限で、非課税枠を使い切った場合の数字です。
両方使えます。まず死亡保険金から非課税枠を引き、引ききれなかった分を他の財産と合計してから基礎控除を引きます。順番に2回差し引ける仕組みで、どちらか一方しか選べないわけではありません。二重に控除しているのではなく、段階的に判定しています。
対象が違います。生命保険料控除は契約者が「払った保険料」に対する所得税・住民税の制度で、毎年使います。相続税の非課税枠は相続人が「受け取った保険金」に対する制度で、相続時に一度使います。生命保険料控除を使ったかどうかは、相続税の非課税枠には影響しません。
かかるとは限りません。非課税枠を超えた分は他の財産と合計されますが、その合計が基礎控除以下なら相続税は発生しません。たとえば遺産が保険金3,000万円だけで法定相続人が1人なら、課税価格2,500万円に対して基礎控除3,600万円なので相続税は0円です。
制度の正しい理解
いくらまでかからないか
非課税枠が使えないケース
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年8月時点の法令に基づいて作成しています。相続税法の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度や個別の判断については、国税庁の情報や相続税の対応実績がある税理士に必ずご確認ください。