


相続税の無申告は、ほぼ確実に把握されます。税務署は人が亡くなった事実を、遅くとも2ヶ月ほどで知る仕組みになっています。
市区町村は死亡届を受理すると、税務署へ通知する義務があります。これは相続税法に定められた手続きです。
そして生前の所得、保険金、不動産の登記、海外送金などの情報が、納税者ごとに一元管理されています。
令和6事務年度の実地調査では、9,512件のうち82.3%で申告漏れが指摘されました。1件あたりの申告漏れは平均3,093万円です。
注目すべきは内訳です。申告漏れの財産で最も多いのは現金・預貯金で、837億円にのぼります。名義預金やタンス預金が見つかっているということです。
また文書や電話による「簡易な接触」が約22,000件と、実地調査の2倍以上に増えています。調査に来なければ大丈夫という話ではありません。
本記事では、税務署が把握する13のルート、バレるタイミング、時効を待つのが成り立たない5つの理由、ペナルティの差、今すぐすべきことを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

まず結論からお伝えします。税務署は亡くなった人の情報を自動的に受け取り、生前の所得から財産規模を推測できる状態にあります。
出発点は死亡届です。相続税法により、市区町村長は死亡届を受理したら税務署長へ通知する義務があります。
通知は死亡届を受理した月の翌月末日までに行われます。つまり遅くとも死亡から2ヶ月ほどで、税務署は死亡の事実を知ります。
重要ポイント:この通知は遺族が何もしなくても行われます。「申告しなければ気づかれない」という前提が、そもそも成り立ちません。
通知を受けた税務署は、その人の過去の申告内容を確認します。所得が高かった人ほど、財産があると推測されます。
国税庁はKSKシステム(国税総合管理システム)で情報を管理しています。全国の国税局と税務署がネットワークで結ばれ、納税者ごとに情報が集約されています。
死亡届の通知が入ると、その人に関する情報を横断的に検索できます。申告書、支払調書、登記情報などが1つの画面で確認できる仕組みです。
| 集約されている情報 | 分かること |
|---|---|
| 過去の確定申告書・源泉徴収票 | 生前の所得水準(財産規模の推測に使われる) |
| 不動産の登記情報 | 所有していた不動産 |
| 各種の支払調書 | 保険金・退職金・株式の売却代金など |
| 過去の贈与税の申告書 | 生前贈与や相続時精算課税の記録 |
| 国外送金等調書 | 海外への送金・海外からの入金 |
生前に高い所得があったのに相続税の申告がないと、不自然だと判断されます。申告の有無そのものが、システム上でチェックの対象になります。
ここは正確に押さえてください。遺産の総額が基礎控除以下なら、申告しないことが正しい対応です。無申告とは呼びません。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。相続人が1人なら3,600万円、3人なら4,800万円です。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
重要ポイント:問題は「基礎控除以下だと思い込んでいる」ケースです。名義預金や生前贈与、不動産の正しい評価を加えると超えていた、というパターンが最も多くあります。
まずは正確に数えてください。数えた結果が基礎控除以下なら、堂々と申告しなくて構いません。
実際の数字を確認します。実地調査9,512件のうち7,826件で申告漏れが指摘され、非違割合は82.3%です。
| 項目 | 令和6事務年度 |
|---|---|
| 実地調査の件数 | 9,512件(前年比+11.2%) |
| 申告漏れなどがあった件数 | 7,826件(非違割合82.3%) |
| 1件あたりの申告漏れ課税価格 | 3,093万円 |
| 1件あたりの追徴税額 | 867万円 |
| 申告漏れ課税価格の総額 | 2,942億円 |
| 追徴税額の合計 | 824億円 |
調査に入られると、8割以上で何らかの指摘を受けます。1件あたり867万円の追徴という数字は、指摘の重さを示しています。

統計の内訳を見ると、何が把握されているかが分かります。申告漏れ課税価格2,942億円のうち、現金・預貯金等が837億円で最多です。
財産の種類別に見た内訳です。不動産より現金・預貯金のほうが多く見つかっているのが実態です。
| 財産の種類 | 申告漏れ課税価格 |
|---|---|
| 現金・預貯金等 | 837億円(最多) |
| 有価証券 | 393億円 |
| 土地 | 353億円 |
| その他 | 残り |
表の見方:不動産は登記で分かるため、そもそも隠しにくい財産です。現金・預貯金が最多という結果は、名義預金やタンス預金が実際に見つかっていることを示しています。
「現金なら分からない」という考えは、この統計と矛盾します。実際には最も多く指摘されている財産です。
税務署は金融機関へ照会できます。本人の同意がなくても、預金残高と入出金の履歴を確認できる権限があります。
照会の対象は亡くなった人の口座だけではありません。相続人や家族の口座も確認されます。
【確認される内容】
子や孫の名義でも、資金の出どころが親なら名義預金と判断されます。通帳と印鑑を親が管理していた口座は、親の財産として扱われます。
判定は4つの要素で行われます。名義が誰かではなく「実質的に誰の財産か」で判断されます。
| 基準 | 確認されること |
|---|---|
| ①原資を誰が出したか | お金の出どころが親なら親の財産の可能性が高い |
| ②誰が管理していたか | 通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が持っていたか |
| ③利息や配当を誰が受け取ったか | 実際に利益を得ていたのは誰か |
| ④贈与の事実があったか | 贈与契約書があるか・もらった人が認識していたか |
重要ポイント:もらった人が口座の存在を知らなければ、贈与は成立していません。「子に知らせずに子の名義で積み立てていた」預金は、ほぼ確実に名義預金と判断されます。
逆に、贈与契約書があり本人が自由に使える状態なら、贈与が成立していると主張できます。記録が残っているかが分かれ目です。
調査では「この口座は誰が作りましたか」「印鑑はどこにありましたか」と直接聞かれます。事実を正確に説明してください。
現金を家に置いていても、痕跡は残ります。口座から引き出した記録があるのに使途が説明できないと、現金で保有していたと推定されます。
| 推定の手がかり | 内容 |
|---|---|
| 大口の出金記録 | 引き出した現金の使途が説明できるか |
| 生前の所得と残高の差 | 収入に対して預金が少なすぎないか |
| 相続開始直前の引き出し | 亡くなる前後の大きな出金 |
| 相続人の預金の増加 | 相続前後に相続人の残高が増えていないか |
| 調査当日の質問 | 金庫や貸金庫の有無を確認される |
調査では貸金庫の開扉に立ち会うこともあります。現金を隠す行為は重加算税の対象になるため、負担がさらに重くなります。
照会した履歴のなかで、特に注目される動きがあります。相続開始の直前や直後の大きな資金移動は、必ず使途を確認されます。
| 着目される取引 | 疑われる内容 |
|---|---|
| 相続開始直前の大口出金 | タンス預金として隠していないか |
| 家族への定期的な送金 | 名義預金または申告していない贈与 |
| 相続人の収入に見合わない預金 | 生前に資金が移っていないか |
| 生前の不動産売却代金の行き先 | 売却代金がどこに消えたか |
| 保険料の負担者と契約者が違う契約 | 名義保険(実質は被相続人の財産) |
| 子や孫の名義の証券口座 | 名義株として相続財産になるか |
| 親族への貸付金・立替金 | 返済されていない貸金は相続財産 |
| 海外への送金 | 国外財産として申告されているか |
これらは通帳の履歴から機械的に抽出できます。大きな出金があれば「何に使ったのか」を必ず説明できるようにしてください。
医療費や施設費に使ったなら領収書を残しておきます。説明できない出金が、隠匿を疑われる原因になります。

把握の経路は多岐にわたります。遺族が申告しなくても、複数のルートから情報が集まる仕組みになっています。
主な13のルートを整理します。このうち多くは遺族が関与しないところで自動的に税務署へ届きます。
| ルート | 把握される内容 |
|---|---|
| ①死亡届の通知 | 死亡の事実(相続税法により市区町村から通知される) |
| ②KSKシステム | 納税者ごとの情報の一元管理 |
| ③過去の確定申告書・源泉徴収票 | 生前の所得水準から財産規模を推測 |
| ④生命保険金の支払調書 | 受取人と金額(100万円超) |
| ⑤退職手当金等の支払調書 | 死亡退職金の受取人と金額 |
| ⑥不動産の登記情報 | 所有していた不動産・相続による名義変更 |
| ⑦所有不動産記録証明制度 | 全国の不動産を一覧で確認できる(2026年2月開始) |
| ⑧金融機関への照会 | 預金残高と過去10年分の入出金(本人の同意は不要) |
| ⑨国外送金等調書 | 100万円を超える海外送金・海外からの入金 |
| ⑩国外財産調書 | 5,000万円を超える海外の財産 |
| ⑪過去の贈与税の申告書 | 生前贈与・相続時精算課税の記録 |
| ⑫株式等の譲渡の対価の支払調書 | 証券口座での売却代金 |
| ⑬不動産購入時のお尋ね | 購入資金の出どころ(相続人が不動産を買った場合) |
このうち①②③⑥⑪は、遺族が何もしなくても税務署の手元にあります。申告するかしないかを判断する前に、すでに情報は集まっています。
保険金や退職金は、支払った側が税務署へ報告します。100万円を超える生命保険金は、受取人の氏名と金額が支払調書で伝わります。
| 支払調書 | 提出する人 | 基準 |
|---|---|---|
| 生命保険金の支払調書 | 保険会社 | 100万円超 |
| 退職手当金等の支払調書 | 勤務先 | 一定額超 |
| 国外送金等調書 | 金融機関 | 100万円超の送金・受金 |
| 株式等の譲渡の対価の支払調書 | 証券会社 | 売却があった場合 |
| 信託に関する受益者別調書 | 信託銀行 | 信託の設定・変更時 |
保険金を受け取ったのに申告がないと、すぐに不整合が分かります。保険金を受け取ったなら、申告の必要性を必ず確認してください。
2026年2月から新しい制度が始まりました。所有不動産記録証明制度により、亡くなった人が全国に所有する不動産を一覧で確認できます。
これまでは市区町村ごとに調べる必要があり、遠方の不動産は把握されにくい面がありました。制度の開始で状況が変わっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度の開始 | 2026年2月 |
| 分かること | その人が名義人として登記されている全国の不動産の一覧 |
| 請求できる人 | 本人・相続人など |
| 請求先 | 法務局 |
相続人が財産を洗い出すためにも使える制度です。「遠方の山林を知らなかった」という申告漏れを、自分で防ぐこともできます。
逆に「知らなかった」という言い訳が通りにくくなった面もあります。制度を使って確認しておくほうが安全です。
海外に財産があっても分かります。共通報告基準(CRS)により、海外の金融口座情報が各国の税務当局間で自動的に交換されています。
日本も参加しており、100以上の国・地域と情報を交換しています。海外の口座残高が日本の税務当局に届く仕組みです。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 共通報告基準(CRS) | 海外の金融口座情報を各国の税務当局間で自動交換する |
| 国外送金等調書 | 100万円を超える海外送金・海外からの入金を金融機関が報告する |
| 国外財産調書 | 12月31日時点で5,000万円を超える国外財産を持つ人が提出する |
| 財産債務調書 | 一定の所得と財産がある人が提出する |
注意:「海外に移せば分からない」という時代は終わっています。CRSによる情報交換が始まってから、海外財産の申告漏れは把握されやすくなりました。国外財産調書を出していない場合は加算税が5%重くなる扱いもあります。
海外財産がある場合は、必ず申告に含めてください。意図的に隠したと判断されると、重加算税と7年の期間延長が適用されます。
申告が必要と思われる人には案内が届きます。これは「あなたは把握されています」という合図でもあります。
「相続税についてのお知らせ」または「相続税の申告等についてのご案内」という書面が、死亡から6〜8ヶ月ごろに届くことがあります。
注意:お知らせが届いたのに何もしないと、税務署は「申告義務があるのに放置している」と判断します。基礎控除以下で申告が不要なら、同封の書面で回答するだけで済むこともあります。無視するのが最も避けたい対応です。
お知らせが届いていなくても、申告義務がなくなるわけではありません。案内は全員に送られるものではないためです。
お知らせが届いたときの対応は、下記の記事で解説しています。


近年の変化として押さえておきたい点があります。文書や電話による「簡易な接触」が約22,000件と、実地調査9,512件の2倍以上に増えています。
自宅に調査官が来る実地調査とは別の手法です。文書や電話で問い合わせ、申告内容の確認や自主的な見直しを促します。
| 項目 | 実地調査 | 簡易な接触 |
|---|---|---|
| 件数(令和6事務年度) | 9,512件 | 約22,000件 |
| 非違件数 | 7,826件 | 約5,800件 |
| 1件あたりの申告漏れ課税価格 | 3,093万円 | 511万円 |
| 方法 | 調査官が訪問して確認する | 文書や電話で問い合わせる |
表の見方:簡易な接触は1件あたりの金額が小さい代わりに、件数が実地調査の2倍以上あります。「調査官が来なければ大丈夫」という考えは通りません。
接触の総数は3万件を超えます。相続税の申告をした人だけでなく、無申告の人も対象です。
簡易な接触が増えている理由は、限られた人員で幅広く確認するためです。実地調査は人手がかかるため、文書や電話で効率的に接触する方針が強まっています。
つまり「金額が小さいから調査に来ない」という想定も外れます。少額でも文書での確認は行われます。
1件あたりの申告漏れ511万円という数字は、比較的小規模なケースも対象になっていることを示します。高額の相続だけが確認されるわけではありません。
連絡が来た段階で対応すれば、負担は軽くなります。調査の通知を受ける前に自分から申告すれば、無申告加算税は5%に下がります。
【連絡が来たときにすること】
連絡を無視しても状況は改善しません。放置すると実地調査に移行し、加算税も重くなります。
税務調査の時期と流れは、下記の記事で解説しています。


無申告は意図的なものだけではありません。むしろ「申告が必要だと思わなかった」という思い込みが最も多い原因です。
実務で多いパターンを整理します。どれも悪意はないのに、結果として無申告になってしまう構図です。
| パターン | なぜ無申告になるか |
|---|---|
| ①基礎控除以下だと思い込んだ | 預金だけを見て判断し、不動産や保険金を数えていない |
| ②名義預金を数えなかった | 子や孫の名義だから自分の財産だと思っていた |
| ③不動産の評価を低く見た | 固定資産税の通知書の金額で判断し、路線価で計算していない |
| ④生前贈与を加算しなかった | 相続開始前の贈与や相続時精算課税の分を足していない |
| ⑤分割がまとまらず放置した | 協議が終わらないまま期限を過ぎてしまった |
①③④は「数え方の誤り」です。正しく数えれば基礎控除を超えていたというケースが、無申告の大半を占めます。
特に多いのが不動産の評価です。固定資産税評価額は時価の7割程度、土地の相続税評価は路線価で8割程度なので、固定資産税の金額で判断すると過小になります。
【例】固定資産税の通知書で土地1,500万円と書かれていた
路線価で計算すると2,000万円前後になることがあります。預金2,000万円と合わせて3,500万円と思っていたのが、実際は4,000万円だったというケースです。
【結果】
相続人1人なら基礎控除3,600万円を超えるため、申告が必要でした。判断を誤ったまま期限を過ぎることになります。
不動産があるなら、必ず路線価で計算し直してください。固定資産税の通知書の金額だけで判断するのは危険です。
協議が終わらなくても申告はできます。未分割のまま法定相続分で計算して期限内に申告し、後から更正の請求で調整する方法があります。
放置すると加算税と延滞税がかかるうえ、3年を超えると特例まで失います。協議が難航しても、申告は先に済ませてください。
| 対応 | 結果 |
|---|---|
| 未分割で期限内に申告する | 加算税なし。分割見込書を出せば3年以内に特例を適用できる |
| 協議が終わるまで待って申告しない | 無申告加算税と延滞税がかかる |
| 3年を超えて分割した | 配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例が使えなくなる |
「まとまってから申告しよう」という判断が最も損をします。期限内に未分割で申告するのが正しい対応です。

時効まで待とうという考えは危険です。相続税の期間制限は「時効」とは仕組みが違い、待っている間に負担が増え続けます。
相続税の期間制限は除斥期間と呼ばれるものです。申告期限の翌日から原則5年で税務署が課税できなくなりますが、これは民事の時効とは別の考え方です。
期間内に税務署が動けば、その後に課税が確定します。期間の満了を待つという発想が通用しません。
意図的に隠した場合は期間が延びます。偽りその他不正の行為があると認められれば、5年ではなく7年になります。
| 状況 | 期間 |
|---|---|
| 単純な申告漏れ・計算間違い | 申告期限の翌日から5年 |
| 意図的な隠匿・虚偽の申告 | 申告期限の翌日から7年 |
財産を隠す行為をすると、7年になるうえに重加算税40%が加わります。「隠せば時効まで逃げ切れる」ではなく「隠すほど期間が延びて負担が重くなる」構造です。
期間の詳細は、下記の記事で解説しています。

期間が満了する前に調査が始まれば意味がありません。実際の調査は申告期限から1〜2年後に集中するため、5年を待つ前に接触があるのが通常です。
無申告の場合は、申告した人よりも優先して確認されることがあります。申告書という比較対象がないため、資料からの推測で接触が始まります。
名義預金は最も見落とされやすい論点です。贈与が成立していない預金は「まだ親の財産」なので、贈与税の期間制限とは無関係です。
【なぜ期間制限にかからないのか】
20年前に子の名義で作った口座でも、親が通帳と印鑑を管理していたなら贈与は成立していません。贈与がなかったのだから、贈与税の期間制限を数える起算点がありません。
【結果】
その預金は相続財産として扱われます。「昔のことだから時効」という主張は通りません。
これが現金・預貯金の申告漏れが最多である理由の1つです。年数が経っても、名義預金は相続財産のままです。
待っている間も延滞税が発生し続けます。2026年の延滞税は年2.8%で、納期限から2ヶ月を経過すると年9.1%に上がります。
| 税額500万円の場合 | 延滞税の概算 |
|---|---|
| 1年放置 | 約40万円 |
| 3年放置 | 約131万円 |
| 5年放置 | 約222万円 |
計算ロジック:最初の2ヶ月は年2.8%、以降は年9.1%で概算しています。5年待つと本税の約44%が延滞税として加算されます。ここに無申告加算税と重加算税も加わります。
待つことに利益はありません。気づいた時点で申告するほうが、確実に負担が軽くなります。
延滞税には特例があり、一定の期間は計算から除かれることもあります。ただし無申告の場合はこの特例が適用されず、期間の全部が計算対象になります。
つまり申告していた人より、無申告の人のほうが延滞税の面でも不利です。ここでも早く申告するほうが有利になります。
さらに納付が遅れると、財産の差押えを受ける可能性もあります。預金や不動産が差し押さえられると、生活や事業にも影響が出ます。
放置して状況が良くなることはありません。1日でも早く動くのが唯一の対策です。

タイミングで加算税の率が変わります。調査の通知を受ける前に自分から申告すれば5%、指摘されると15〜30%になります。
状況別の税率を整理します。隠したと判断されると、無申告の場合は40%の重加算税になります。
| 状況 | 加算税の率 |
|---|---|
| 調査の通知前に自分から申告した | 無申告加算税5% |
| 通知後・調査前に申告した | 無申告加算税10%(50万円超15%・300万円超25%) |
| 調査で指摘された | 無申告加算税15%(50万円超20%・300万円超30%) |
| 隠匿・仮装があった(無申告) | 重加算税40% |
| 隠匿・仮装があった(過少申告) | 重加算税35% |
| 過去5年内に無申告などを繰り返した | さらに10%が加重される |
5%と40%では8倍の差です。気づいた時点ですぐ申告するかどうかで、負担が大きく変わります。
具体的な金額で比べます。自主申告なら25万円の加算税ですが、隠して指摘されると200万円になります。
| 状況 | 加算税 | 延滞税(1年) | 合計の追加負担 |
|---|---|---|---|
| 通知前に自主申告(5%) | 25万円 | 約40万円 | 約65万円 |
| 調査で指摘(20%相当) | 約98万円 | 約40万円 | 約138万円 |
| 隠匿があった(40%) | 200万円 | 約40万円 | 約240万円 |
計算ロジック:本税500万円、延滞税は1年分の概算です。調査での指摘は50万円までを15%、超える部分を20%として計算しています。自主申告と隠匿の差は175万円です。
ペナルティの詳細は、下記の記事で解説しています。

40%の重加算税がかかるのは、隠匿や仮装があった場合です。単純な計算間違いや数え忘れでは重加算税になりません。
| 行為 | 重加算税 |
|---|---|
| 財産を意図的に申告書に記載しなかった | 対象になる |
| 調査で「その口座は知らない」と虚偽の答弁をした | 対象になる |
| 通帳や書類を隠した・破棄した | 対象になる |
| 架空の債務を作って財産を減らした | 対象になる |
| 現金を貸金庫や自宅に隠した | 対象になる |
| 評価の方法を誤った | 対象にならない(過少申告加算税) |
| 名義預金の判断を誤った | 原則として対象にならない(事情により判断される) |
分かれ目は「隠す意図があったか」です。調査で虚偽の答弁をすると、それ自体が重加算税の理由になります。
知らなかった財産が出てきた場合は、正直に説明してください。隠そうとした瞬間に、税率が15%から40%に跳ね上がります。
悪質な場合は刑事罰もあります。偽りその他不正の行為で税を免れた場合は、10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金です。
単純な無申告でも、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金の対象になります。実際に起訴されるのは金額が大きく悪質なケースです。
| 行為 | 罰則 |
|---|---|
| 偽りその他不正の行為による脱税 | 10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(併科もある) |
| 正当な理由なく申告しなかった | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金 |
刑事罰まで至るのはまれですが、可能性としては存在します。金額が大きく意図的な隠匿があると、告発の対象になり得ます。

いつ何が起きるのかを整理します。死亡から2ヶ月で税務署が把握し、申告期限を過ぎた1〜2年後に接触が集中します。
時系列で確認してください。申告期限の10ヶ月までに動けば、加算税はかかりません。
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重要ポイント:接触が集中するのは1〜2年後です。5年という期間より前に、接触を受ける可能性が高いという前提で考えてください。
調査の目的が変わります。申告済みなら「漏れがないか」の確認ですが、無申告なら「そもそも申告義務があるか」の確認から始まります。
| 項目 | 申告済みの調査 | 無申告の調査 |
|---|---|---|
| 目的 | 申告内容に漏れがないかの確認 | 申告義務があるかどうかの確認 |
| 出発点 | 提出された申告書 | 資料から推測した財産 |
| 調査の範囲 | 申告書に記載された財産が中心 | 財産の全体を洗い出す |
| 加算税 | 過少申告加算税10〜15% | 無申告加算税15〜30% |
| 心証 | 誤りとして扱われやすい | 意図的と見られやすい |
無申告は「意図的に出していない」と見られやすい点が不利です。先に申告しておけば、後で漏れが見つかっても過少申告加算税の扱いで済みます。
不安があるなら、概算でも先に申告しておくほうが安全です。後から修正するほうが、無申告で指摘されるより負担が軽くなります。
期限後でも申告は受け付けられます。これを期限後申告といい、税務署からの連絡前に提出すれば加算税は5%です。
期限後申告でも、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は使えます。適用のために申告することが条件なので、遅れても提出する意味があります。
この2つの特例は効果が大きいものです。配偶者の税額軽減は1億6,000万円まで、小規模宅地等の特例は最大80%の評価減が使えます。
特例を適用すると税額が0円になることも多くあります。その場合も申告書の提出が必要です。
| 期限後申告での扱い | 使えるか |
|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 使える(申告が適用要件) |
| 小規模宅地等の特例 | 使える(申告が適用要件) |
| 未成年者控除・障害者控除 | 使える |
| 農地等の納税猶予 | 期限内申告が要件のため使えない |
| 事業承継税制 | 期限内申告が要件のため使えない |
納税猶予の制度は期限内申告が要件です。農地や自社株を引き継ぐ人は、期限を過ぎると猶予が受けられなくなります。
注意:期限後3年を超えると使えなくなる特例もあります。特に未分割のまま3年を過ぎると、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例が使えなくなります。放置すると、本来なら0円だった税金を払うことになります。
期限を過ぎたときの対応は、下記の記事で解説しています。


無申告の調査は、申告済みの人の調査と進み方が違います。比較する申告書がないため、資料の収集から始まり調査の範囲も広くなります。
連絡から終了までの流れです。連絡を受けた段階でも、実地調査が始まる前なら加算税を抑えられる余地があります。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ①事前の資料収集 | 金融機関への照会・登記情報の確認(本人には知らされない) |
| ②文書または電話での接触 | 「申告の必要がないか確認したい」という連絡が来る |
| ③調査の通知 | 日程を調整して実地調査を行う旨が伝えられる |
| ④実地調査 | 自宅などで聞き取りと現物の確認を行う(1〜2日) |
| ⑤指摘と申告 | 期限後申告を求められる。納得できなければ更正処分を受ける |
③の通知を受ける前に自分から申告すれば、加算税は5%です。②の連絡が来た段階で急いで申告するかどうかが、大きな分かれ目になります。
実地調査では家族の状況まで確認されます。財産の話だけでなく、亡くなった人の生活状況や家族の職業まで幅広く質問されます。
【よく聞かれること】
相続人自身の収入も聞かれます。収入に見合わない預金があると、名義預金や贈与を疑われるためです。
現物の確認として、通帳・印鑑・保険証券・金庫の中身を見せるよう求められることもあります。
指摘に従わない選択もできます。期限後申告に応じなければ、税務署は更正処分を行い、それに対して不服を申し立てられます。
| 手続き | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 再調査の請求 | 処分をした税務署長に見直しを求める | 処分の通知から3ヶ月以内 |
| 審査請求 | 国税不服審判所に審査を求める | 処分の通知から3ヶ月以内 |
| 訴訟 | 裁判所に提起する | 審査請求の裁決から6ヶ月以内 |
ただし争っている間も延滞税は発生します。名義預金の判断など見解が分かれる論点でなければ、素直に応じたほうが負担は軽くなります。
争うかどうかの判断は税理士に相談してください。見込みのない争いは費用と時間の負担が増えるだけです。

無申告に関する誤解は根強くあります。統計や制度の仕組みと照らすと、多くが成り立たないことが分かります。
よく聞かれる誤解を整理します。「少額だからバレない」という考えは、そもそも論点がずれています。
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 現金なら分からない | 申告漏れの最多は現金・預貯金等(837億円) |
| 調査官が来なければ大丈夫 | 簡易な接触が約22,000件で実地調査の2倍以上 |
| 少額だからバレない | 基礎控除以下なら申告不要。問題は超えているのに気づいていないケース |
| 昔の名義預金は時効 | 贈与が成立していないため相続財産のまま。期間制限の起算点がない |
| お知らせが来ないなら申告不要 | お知らせは全員に送られるものではない |
「少額だからバレない」という言い方は、判断を混同しています。遺産の総額が基礎控除以下なら、そもそも申告義務がありません。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。まずこれを超えるかどうかを確認してください。
周囲からそういう話を聞くこともあります。しかし多くは「そもそも申告不要だった」か「まだ期間内でリスクが残っている」だけです。
| 「バレなかった」の実態 | 解釈 |
|---|---|
| 基礎控除以下だった | 申告義務がなかった。バレる・バレないの話ではない |
| まだ5年経っていない | 期間内なのでリスクは残っている |
| 簡易な接触で修正して済んだ | 実際には指摘を受けている(本人が話していないだけ) |
| 10年以上前の相続だった | 制度が現在と違う。名義預金は今も相続財産のまま |
| 調査対象に選ばれなかった | 優先順位の問題。選ばれれば8割以上で指摘される |
調査は件数に限りがあるため、優先順位で選ばれます。選ばれなかっただけの事例を「バレない証拠」と考えるのは危険です。
また近年は簡易な接触が増えており、以前より接触を受ける確率が上がっています。過去の経験談は参考になりません。
申告しないことが正しい場合もあります。遺産の総額が基礎控除以下なら、申告も納税も不要です。
| 状況 | 申告 |
|---|---|
| 遺産の総額が基礎控除以下 | 不要(無申告ではない) |
| 基礎控除超だが特例で税額0円 | 必要(申告が適用要件) |
| 基礎控除超で税額が出る | 必要 |
| 名義預金を含めると基礎控除超 | 必要(気づいていないケースが危険) |
危ないのは「基礎控除以下だと思い込んでいる」ケースです。名義預金や生前贈与を数えると超えていた、というパターンが最も多くあります。

申告していない、または不安がある場合の手順です。まず財産を洗い出し、基礎控除を超えるかを確認してください。
順番に進めれば判断できます。名義預金と生前贈与を数え忘れないことが最も重要です。
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重要ポイント:STEP2の名義預金の確認が最も重要です。申告漏れで最も多く指摘されているのが現金・預貯金だからです。
申告するときに使える仕組みがあります。税理士が計算の根拠を記した書面を添付すると、調査の前に税理士への意見聴取が行われます。
意見聴取で疑問が解消されれば、実地調査に移行しないこともあります。無申告を解消するときにも有効です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度の内容 | 税理士が申告書に計算の根拠と検討内容を記した書面を添付する |
| 効果 | 調査の前に税理士への意見聴取が行われる |
| 意見聴取で解消した場合 | 実地調査に移行しないことがある |
| 費用 | 対応している事務所なら追加費用なし〜数万円 |
| 注意点 | すべての税理士が対応しているわけではない |
依頼するときに「書面添付に対応していますか」と確認してください。名義預金の判断など説明が必要な論点があるなら、この制度の価値は大きくなります。
報酬の目安を知っておくと比較しやすくなります。相続税の申告報酬は遺産総額の0.5〜1%が相場で、期限後申告では加算されることがあります。
| 遺産の総額 | 報酬の目安 |
|---|---|
| 5,000万円 | 25〜50万円 |
| 1億円 | 50〜100万円 |
| 2億円 | 100〜200万円 |
| 期限後申告の加算 | 基本報酬の10〜30%程度 |
| 相続人が多い場合の加算 | 1人あたり10〜15%程度 |
報酬はかかりますが、加算税と延滞税を抑えられれば元が取れることも多くあります。重加算税40%を避けられれば、報酬を大きく上回る効果になります。
複数の事務所から見積りを取れば、金額の妥当性も判断できます。無申告であることを隠さずに伝えてください。
お金がないから申告しないという判断は最悪です。申告だけ先に済ませ、納税は延納や物納で分けて考えてください。
申告と納税は別の手続きです。申告書を出しておけば加算税を抑えられ、納税は延納の申請で分割できます。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 延納 | 最長20年で分割納付する。利子税がかかり、担保が必要な場合がある |
| 物納 | 延納でも金銭で納めることが困難な場合に、不動産などで納める |
| 遺産から払う | 相続した預金や不動産の売却代金で納める |
| 金融機関から借りる | 延納の利子税より金利が低いこともある |
延納と物納の申請は、申告書の提出と同時に行います。期限後申告でも、提出のときに申請すれば検討の対象になります。
納められないまま放置すると、延滞税に加えて財産の差押えを受けることもあります。まず申告してから納税方法を相談してください。
次の項目を確認してください。1つでも該当するなら、申告が必要な可能性があります。

申告していない状態は、時間が経つほど負担が増えます。相続税の対応実績がある税理士なら、期限後申告でも最小限の負担で処理できます。複数の税理士に一括で相談し、比較して選ぶのがおすすめです。
無申告の案件は通常の申告と進め方が違います。税務署から連絡が来る前に提出できるかで、加算税が5%と15〜30%に分かれます。
相続税の対応実績がある税理士が必要な理由
スピードが結果を左右します。連絡が来る前に提出できるかどうかで、数十万円から数百万円の差が出ます。
相続税に対応している税理士でも、無申告案件への対応力には差があります。見積りや初回相談で、次の3点を比べてみてください。
「申告実績数・期限後申告に対応できるか・着手までの日数」の3点で見分けられます。
判定ポイント1:相続税申告の実績数
年間の相続税申告の件数を確認します。「年間5件」と「年間100件以上」では、名義預金の判断や財産評価の精度に差が出ます。→ 実績数が多い税理士のほうが、指摘を受けにくい申告ができると判定できます。
判定ポイント2:期限後申告に対応できるか
「すでに期限を過ぎている」と伝えて対応可能か確認します。→ 期限後申告の実績がある税理士のほうが、加算税を最小限にする進め方を知っていると判定できます。
判定ポイント3:着手までの日数
依頼してから何日で作業を始められるかを聞きます。→ すぐ動ける事務所のほうが、税務署からの連絡前に提出できる可能性が高いと判定できます。
自己判断で放置すると、負担が積み上がります。延滞税は年9.1%で加算され続けるため、待つほど支払う金額が増えます。
また期限後3年を超えると使えなくなる特例もあります。具体的には次のようなリスクがあります。
相談せずに進めた場合のリスク
これらの多くは、早く動くだけで防げます。相談は無料のことが多く、動くなら早いほど選択肢が広がります。
実際に一括相談・見積りを利用する流れは、次の4ステップです。フォームの記入自体は5分ほどで終わります。
税務署からの連絡前に提出できるかが分かれ目です。今日から動いてください。
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重要ポイント:「すでに期限を過ぎている」と最初に伝えてください。隠すと適切な段取りが組めず、かえって負担が重くなります。
ほぼ確実に把握されます。相続税法により市区町村長は死亡届を税務署長へ通知する義務があり、遅くとも死亡から2ヶ月ほどで税務署は死亡の事実を知ります。生前の所得や保険金の支払調書などから、財産規模も推測されています。
分かります。令和6事務年度の統計では、申告漏れ課税価格2,942億円のうち現金・預貯金等が837億円で最多でした。口座からの出金記録と使途の説明が合わないと、現金で保有していたと推定されます。
いいえ。令和6事務年度は文書や電話による「簡易な接触」が約22,000件あり、実地調査9,512件の2倍以上です。1件あたりの申告漏れは511万円で、非違件数は約5,800件でした。
成り立ちません。相続税の期間制限は原則5年(不正があれば7年)ですが、期間内に税務署が動けば課税が確定します。調査は申告期限から1〜2年後に集中し、延滞税も年9.1%で積み上がります。名義預金は贈与が成立していないため、期間制限の起算点もありません。
できます。期限後申告といい、税務署からの調査の通知前に提出すれば無申告加算税は5%で済みます。指摘されると15〜30%、隠していたと判断されると40%になるため、早く提出するほど負担が軽くなります。
相続税の無申告はほぼ確実に把握されます。市区町村は死亡届を税務署へ通知する義務があり、生前の所得・保険金の支払調書・登記情報・金融機関への照会など13のルートから情報が集まります。
申告漏れで最も多く指摘されているのは現金・預貯金です。名義預金やタンス預金は実際に見つかっています。
待つことに利益はありません。以下のアクションから始めましょう。
※本記事は2026年8月時点の情報にもとづいて作成しています。相続税法の改正により内容が変わる場合があります。最新の制度については国税庁の公式サイトで確認するか、相続税の対応実績がある税理士にご相談ください。