


相続税を納める現金がないとき、多くの記事は延納や物納といった選択肢を並べて解説します。
しかし実際に期限が迫っている状況で必要なのは、選択肢の詳細より先に決めるべき順番です。
延納も物納も、申告期限までに申請書を出さなければ使えません。納付できないこと自体で失われるわけではありません。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例も、期限内に申告しなければ適用されません。
つまり「払えないから申告を後回しにする」という判断が、使えたはずの制度をすべて同時に失わせます。
コストで見ても放置が最も高くつきます。相続税1,000万円なら20年かけて延納する利子税より、1年放置した延滞税のほうが高くなります。
この記事では放置と延納のコスト差から始めて、期限で消える選択肢の一覧、今日から申告期限までにやることの順番、払えない原因別の対処、放置した場合に起きることまでを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

納税資金が足りないと分かったら、選択肢を調べる前に申告期限を確認してください。期限を過ぎると選べる手段そのものが減ります。
最初に押さえるべき原則から確認します。
相続税の申告と納付の期限は、いずれも相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。この2つは別の手続きで、片方だけを行うこともできます。
| 手続き | 期限 | 資金がない場合 |
|---|---|---|
| 申告 | 10ヶ月以内 | 資金がなくても提出できる |
| 納付 | 10ヶ月以内 | 払える分だけの納付も可能 |
| 延納の申請 | 申告期限まで | 申告書と一緒に申請書を出す |
| 物納の申請 | 申告期限まで | 申告書と一緒に申請書を出す |
表の見方:申告は資金の有無と関係なく提出できます。延納と物納の申請も申告期限までに行う必要があるため、申告を止めると同時に申請の道も閉じます。
重要ポイント:払えないことは申告しない理由になりません。納付が遅れた場合の延滞税は納付できていない金額に対してかかるものであり、申告書を出しておけば無申告加算税は避けられます。
申告期限の数え方と間に合わないときの対応は、下記の記事で解説しています。

「今は払えないから後で払う」という判断のコストを確認します。相続税1,000万円なら、20年かけて延納する利子税より1年放置した延滞税のほうが高くなります。
| 選択 | 期間 | 割合 | コスト |
|---|---|---|---|
| 20年かけて延納する | 20年 | 利子税 年0.4% | 42万円 |
| 1年放置する | 1年 | 延滞税 年2.8%→9.1% | 80万4,712円 |
表の見方:延納は利子税がかかりますが割合が低く、20年払い続けても42万円です。一方で放置した場合の延滞税は1年で80万4,712円になります。
重要ポイント:差は38万4,712円です。割合で見ると延納0.4%に対し延滞税は2か月経過後9.1%で、約23倍の開きがあります。
計算ロジック:延納は残りの税額に利子税がかかるため、20年で1,000万円を均等に払うと総額42万円です。放置した場合は納期限の翌日から2か月間が年2.8%、その後が年9.1%で、1年なら80万4,712円になります。
延滞税には計算期間の特例があり、実際の額はこれより小さくなる場合があります。ただし放置が延納より安くなることはありません。
参照元:国税庁 No.4211 相続税の延納/国税庁 延滞税の割合
延納の利子税の税率と計算方法は、下記の記事で解説しています。

払えないときに調べるべき順番は、多くの人が想像するものと逆です。制度の中身より先に、締切と残り時間を確認してください。
【先にやること】期限の確認
申告期限まで何日あるかを数えます。延納・物納の申請も同じ期限なので、残り時間が選べる手段を決めます。
【次にやること】原因の特定
現金がないのか、遺産分割が終わらず預金が凍結されているのか、税額が想定より大きかったのか。原因によって取る手段が変わります。
【最後にやること】制度の比較
延納・物納・売却・借入のどれを選ぶかは、期限内に申告する前提が固まってから検討します。ここで時間を使いすぎると期限に間に合いません。
この記事は期限と原因の整理を中心に扱います。各制度の要件や計算方法は個別の記事で詳しく解説していますので、判定が済んだ段階でそちらを参照してください。
申告期限までの残り時間によって、現実的に選べる手段は変わります。まず自分がどの行にいるかを確認してください。
| 申告期限までの残り | 現実的に選べる手段 | 優先してやること |
|---|---|---|
| 3か月以上 | 売却・延納・物納・借入のすべて | 税額の確定と評価の見直し |
| 1〜3か月 | 延納・借入。売却は成立しない可能性がある | 延納申請書と担保書類の準備 |
| 2週間〜1か月 | 延納の申請と概算・未分割での申告 | 申告書と延納申請書の提出を最優先 |
| 期限後 | 延納・物納は申請できない | 速やかに期限後申告(通知前なら加算税5%) |
表の見方:下に行くほど選べる手段が減ります。残り1か月を切ったら、完璧な申告書を目指すより提出そのものを優先してください。
重要ポイント:売却は買い手探しから決済まで3か月以上かかることが一般的です。残り3か月を切った時点で「売って払う」計画だけに頼るのは危険です。延納を併願してください。
重要ポイント:期限後でも打つ手はあります。税務調査の通知が来る前に自主的に申告すれば、無申告加算税は15%から5%に下がります。放置を続けるほど不利になります。

相続税で怖いのは延滞税だけではありません。期限を過ぎると制度そのものが使えなくなり、税額が増えます。
何がいつまでなのかを整理します。
延納と物納は「納付が難しい場合の制度」ですが、申請には期限があります。納付できないと分かった時点で申請する必要があります。
| 制度 | 申請期限 | 必要なもの | 過ぎるとどうなる |
|---|---|---|---|
| 延納 | 申告期限まで | 延納申請書+担保提供関係書類 | 申請できない |
| 物納 | 申告期限まで | 物納申請書+物納財産目録 | 申請できない |
表の見方:どちらも申告書と同じ期限内に申請書を提出します。担保提供関係書類が期限までに揃わない場合は、提出期限の延長届出書を出せば最長6か月延長できます。
重要ポイント:申請書は期限内、担保書類は延長可能という違いを押さえてください。書類が揃わないことを理由に申請そのものを諦める必要はありません。
参照元:国税庁 No.4211 相続税の延納/国税庁 No.4214 相続税の物納
延納の4つの要件と申請手続きは、下記の記事で解説しています。

物納の要件と延納・売却との3択比較は、下記の記事で解説しています。

税額を大きく下げる2つの制度は、いずれも申告書の提出が適用条件です。申告しなければ税額そのものが増えます。
| 制度 | 効果 | 申告しなかった場合 |
|---|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 1億6,000万円または法定相続分まで非課税 | 適用されず税額が大幅に増える |
| 小規模宅地等の特例 | 自宅の土地の評価を80%減額 | 評価が下がらず税額が増える |
表の見方:この2つは「使えば税額が減る」制度ではなく「申告して初めて使える」制度です。払えないから申告しないという選択は、税額を増やす方向に働きます。
重要ポイント:払えない状況ほどこの2つの適用が重要になります。特例を適用すれば納付すべき額が下がり、延納の必要すらなくなる場合があります。
参照元:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減/国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
配偶者の税額軽減の1億6,000万円の上限と適用方法は、下記の記事で解説しています。

小規模宅地等の特例の4類型の要件と計算方法は、下記の記事で解説しています。

納税資金のために相続財産を売却する場合、譲渡所得税を軽減できる特例があります。こちらは申告期限より長い期限です。
| 期限の起算 | 期限 | 内容 |
|---|---|---|
| 相続税の申告期限から | 3年以内 | この期間内の売却が対象 |
| 相続開始から | 3年10ヶ月以内 | 申告期限10ヶ月+3年 |
表の見方:起算日が2通りあるため混同しやすい期限です。相続開始から数えると3年10ヶ月になります。
重要ポイント:納付期限の10ヶ月と混同しないでください。売却して納税する場合、10ヶ月以内に売る必要はありません。ただし納付が遅れれば延滞税はかかります。
参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
取得費加算の特例の計算方法とタイムラインは、下記の記事で解説しています。

ここまでの期限をまとめます。申告期限の10ヶ月に集中しているものが多い点に注意してください。
| 期限 | 対象 | 過ぎるとどうなる |
|---|---|---|
| 3ヶ月 | 相続放棄・限定承認 | 単純承認となり債務も承継する |
| 4ヶ月 | 準確定申告 | 無申告加算税・延滞税 |
| 10ヶ月 | 相続税の申告・納付/延納の申請/物納の申請/配偶者の税額軽減/小規模宅地等の特例/3年以内の分割見込書 | 延納・物納が申請できず、特例も使えない |
| 3年10ヶ月 | 取得費加算の特例(売却) | 譲渡所得税が増える |
| 申告期限から3年 | 未分割申告後の分割(更正の請求) | 特例を適用できない |
| 申告期限から5年 | 払いすぎた税金の更正の請求 | 取り戻せない |
表の見方:赤い行に6つの手続きが集中しています。10ヶ月の期限を守れないと、延納・物納・2つの特例・分割見込書のすべてを同時に失います。
重要ポイント:失うのは「納付を遅らせる権利」だけではありません。税額を下げる制度も同時に失うため、払えない状況がさらに悪化します。

残り時間が少ない場合の動き方を示します。完璧な申告書を目指すより、期限内に提出することを優先してください。
金額が確定していなくても、概算での申告や未分割での申告が可能です。
最初にやるのは金額の把握です。いくら足りないのかが分からないと、延納の申請額も決まりません。
納税額を概算で出す
財産の集計が終わっていなくても、分かっている範囲で税額を試算します。特例を適用した場合と適用しない場合の両方を出してください。
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すぐ動かせる現金を数える
相続人自身の預金も含めて、納付に充てられる現金を集計します。延納の判定では相続人本人の財産も考慮されます。
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差額を出して延納・物納を検討すると決める
納税額から現金を引いた差額が延納を申請する金額の目安です。この判断を先延ばしにすると申請期限に間に合いません。
重要ポイント:延納は「金銭で納付することを困難とする事由がある」場合に、その困難な金額を限度として認められます。差額の計算がそのまま申請額の根拠になります。
相続税の計算の7ステップと端数処理は、下記の記事で解説しています。

延納を申請するなら、申請書と担保提供関係書類が必要です。書類の準備には時間がかかるため早めに着手します。
| 書類 | 期限 | 備考 |
|---|---|---|
| 延納申請書 | 申告期限まで(延長不可) | 金銭納付を困難とする理由書を添付 |
| 担保提供関係書類 | 申告期限まで(延長可能) | 不動産の登記事項証明書など |
| 担保提供関係書類提出期限延長届出書 | 申告期限まで | 最長6か月まで延長できる |
表の見方:申請書本体は延長できませんが、担保書類は延長届出書を出せば最長6か月猶予されます。書類が揃わないことを理由に申請を諦める必要はありません。
重要ポイント:延納税額100万円以下かつ延納期間3年以下なら担保は不要です。この条件に当てはまれば担保書類の準備自体が要りません。
延納をあきらめる理由として多いのが担保です。ただし担保が不要になる条件があり、相続した財産そのものを担保にすることもできます。
| 状況 | 担保の要否 | 対応 |
|---|---|---|
| 延納税額100万円以下かつ延納期間3年以下 | 不要 | 担保書類の準備が要らない |
| 相続した不動産がある | 必要 | 相続財産そのものを担保にできる |
| 相続人自身の不動産がある | 必要 | 相続人の財産も担保にできる |
| 担保にできる財産がない | 必要 | 物納や売却を検討する |
表の見方:1行目に当てはまれば担保そのものが不要です。税額が大きくても、延納期間を3年以内に抑えて100万円以下の部分だけ延納する組み方もあります。
重要ポイント:担保は相続した財産で足ります。現金がなくて延納するのですから、相続した不動産を担保に出すのが通常の流れです。担保がないと思い込んで申請を見送らないでください。
期限日までにやることを確認します。金額が確定していない場合の対応も含めます。
分割が終わらなければ未分割で申告する
法定相続分で仮に計算して申告します。3年以内の分割見込書を必ず添付してください。後から特例を適用できます。
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資料が揃わなければ概算で多めに申告する
少なく申告すると過少申告加算税がかかります。多めに申告しておけば、後から更正の請求で取り戻せます。
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払える分だけを納付する
全額でなくても納付できます。納付した分には延滞税がかからないため、未納額を減らすほど負担が軽くなります。
重要ポイント:3つはいずれも「完璧を待たずに動く」ための手段です。期限内に何もしないことが最も損失が大きい選択です。
参照元:国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
遺産分割前に申告する方法と特例の取り戻し方は、下記の記事で解説しています。


納税資金が足りない理由は3つに分かれます。原因によって取るべき手段が変わるため、選択肢を比べる前に原因を特定してください。
それぞれの入口を示します。制度の詳細は個別の記事で解説しています。
最も多い原因です。財産の大半が不動産で、納税に充てる現金が足りないケースです。
| 手段 | 特徴 | 期限 |
|---|---|---|
| 売却 | 時価で現金化できる。取得費加算の特例で譲渡所得税を軽減できる | 売却は3年10ヶ月以内が有利 |
| 延納 | 最長20年の分割。利子税は年0.4%程度(不動産等の割合が高い場合) | 申告期限までに申請 |
| 物納 | 相続税評価額で納付できるが要件が厳しい | 申告期限までに申請 |
| 借入 | 金融機関の納税ローン。金利は延納の利子税より高いことが多い | 審査期間が必要 |
表の見方:売却と借入は期限内の申請が不要ですが、延納と物納は申告期限までに申請書を出す必要があります。判断を先延ばしにすると選択肢が2つに減ります。
重要ポイント:売却するつもりでも延納を申請しておく選択肢があります。売却が期限までに成立しない場合の備えになり、成立すれば延納を繰上げ返済できます。
各制度の要件・比較は下記の記事で詳しく解説しています。

財産はあるのに使えないケースです。金融機関は名義人の死亡を知ると口座を凍結し、相続人全員の同意がないと払い出しに応じません。
【手段1】預貯金の払戻し制度
遺産分割前でも、相続人単独で預貯金の一部を払い出せる制度があります。上限は「口座ごとの残高×1/3×自分の法定相続分」で、1金融機関につき150万円までです。
【手段2】一部分割
納税に必要な財産だけを先に分割します。全体の合意を待たずに納税資金を確保できます。
【手段3】未分割申告
法定相続分で仮に申告します。特例は一旦使えませんが、3年以内に分割すれば後から適用できます。
払戻し制度は1金融機関150万円が上限なので、納税額が大きい場合は足りません。一部分割や未分割申告を組み合わせる必要があります。
重要ポイント:一部分割には注意点があります。先に分けた財産の扱いを残りの分割協議で覆せない可能性があるため、合意内容を書面に残してください。
試算より税額が大きくなるのは、財産の評価か集計に原因があります。この場合は税額そのものを見直す余地があります。
| 確認する箇所 | 見直しの内容 |
|---|---|
| 土地の評価 | 不整形地・接道状況・高低差などの減額補正が反映されているか |
| 小規模宅地等の特例 | 適用できる宅地を選んでいるか(併用の有利判定) |
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者の取得額を調整できるか |
| 債務・葬式費用 | 差し引ける費用の領収書が揃っているか |
| 非課税財産 | 保険金・退職金の非課税枠を正しく引いているか |
表の見方:上2つは専門的な判断が必要ですが、影響が大きい項目です。下3つは領収書や書類の確認で対応できます。
重要ポイント:税額が下がれば延納も物納も不要になる場合があります。資金調達を検討する前に、税額そのものが正しいかを確認してください。
資金のある相続人が他の人の分を立て替えることがあります。この場合、返済の約束がないと贈与とみなされる可能性があります。
| 立て替え方 | 扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 返済の約束なく肩代わりする | 贈与とみなされる可能性 | 年110万円を超えると贈与税がかかる |
| 金銭消費貸借契約を結んで貸す | 貸付金 | 契約書を作成し、返済実績を残す |
| 連帯納付義務として納付する | 贈与にならない | 税務署から請求を受けて納付した場合 |
| 遺産分割で調整する | 分割の一部 | 納税額を考慮した配分にする |
表の見方:1行目が最も問題になります。善意で肩代わりしたつもりが、相続税に加えて贈与税まで課される事態になりかねません。
重要ポイント:最も安全なのは遺産分割の段階で納税額を考慮することです。現金が必要な相続人に預貯金を多めに配分すれば、立て替え自体が不要になります。
計算ロジック:500万円を返済の約束なく肩代わりした場合、贈与税の基礎控除110万円を差し引いた390万円が課税対象です。一般贈与財産の税率20%・控除額25万円で53万円の贈与税がかかります。
参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
3つの原因と対応する手段を整理します。自分の原因に対応する行だけを見てください。
| 原因 | 最初に検討する手段 | 期限内の申請が必要か |
|---|---|---|
| ①現金がなく不動産しかない | 売却・延納・物納・借入 | 延納と物納は必要 |
| ②分割が終わらず預金が凍結 | 払戻し制度・一部分割・未分割申告 | 未分割申告は期限内に |
| ③想定より税額が大きかった | 評価と集計の見直し | 申告期限までに反映 |
表の見方:原因が複数重なることもあります。その場合は③の見直しを先に行い、確定した税額に対して①や②の手段を検討します。
重要ポイント:どの原因でも共通するのは期限内に申告書を提出することです。原因の特定に時間をかけすぎて期限を逃さないでください。

分割が終わらないことは、申告しない理由になりません。法定相続分で仮に計算して申告する方法があります。
手続きと注意点を確認します。
遺産分割協議が成立していない場合、民法に定める法定相続分で財産を取得したものとして計算し、申告します。
| 項目 | 未分割申告の場合 |
|---|---|
| 計算の前提 | 法定相続分で取得したものとみなす |
| 配偶者の税額軽減 | 一旦使えない |
| 小規模宅地等の特例 | 一旦使えない |
| 納税額 | 特例を使えないため一旦高くなる |
| 分割後の取り戻し | 3年以内に分割すれば更正の請求で還付を受けられる |
表の見方:特例が使えないため納税額は一旦高くなります。ただし分割が終われば更正の請求で取り戻せるため、失われるわけではありません。
重要ポイント:未分割申告をしなければ、特例は取り戻せません。申告しないまま3年が過ぎると、分割が終わっても特例は使えません。
未分割申告で最も重要な書類です。これを出し忘れると分割後に特例を適用できません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式な書類名 | 申告期限後3年以内の分割見込書 |
| 提出時期 | 未分割申告の申告書に添付 |
| 記載内容 | 分割されていない理由、分割の見込みの詳細、適用を受けようとする特例 |
| 提出しなかった場合 | 分割後も配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例が使えない |
表の見方:1枚の書類ですが、これがないと特例を取り戻す道が閉じます。未分割で申告する場合は必ずセットで提出してください。
重要ポイント:3年以内に分割できないやむを得ない事情がある場合は、さらに「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出すれば期間を延長できます。申請には期限があるため早めに確認してください。
参照元:国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
分割が成立したら、更正の請求で払いすぎた税金の還付を受けます。手続きには期限があります。
遺産分割協議を成立させる
申告期限から3年以内に分割します。協議書を作成し、全相続人が署名・押印します。
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特例を適用して税額を再計算する
配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例を適用し、正しい税額を出します。
⬇
分割の日から4か月以内に更正の請求をする
この4か月を過ぎると還付を受けられません。分割が成立したらすぐ手続きしてください。
重要ポイント:期限が2段階あります。分割は申告期限から3年以内、更正の請求は分割の日から4か月以内です。両方を守る必要があります。

申告も納付もしないまま放置した場合の流れを確認します。延滞税と加算税が重なり、最終的には差押えに至ります。
金額と時系列で押さえてください。
延滞税は納期限の翌日から納付日までの日数に応じてかかります。割合は毎年見直されます。
| 期間 | 納期限の翌日から2か月以内 | 2か月を経過した日以後 |
|---|---|---|
| 令和3年 | 2.5% | 8.8% |
| 令和4年〜令和7年 | 2.4% | 8.7% |
| 令和8年 | 2.8% | 9.1% |
表の見方:原則は年7.3%と14.6%ですが、「延滞税特例基準割合+1%」「+7.3%」の低い方が適用されるため、実際はこの表の割合になります。
重要ポイント:2か月を境に割合が3倍以上に跳ね上がります。令和8年なら2.8%から9.1%です。放置するなら最初の2か月で決着させるかどうかが分かれ目になります。
参照元:国税庁 延滞税の割合
納付できていない税額が1,000万円の場合、放置期間に応じた延滞税を示します。令和8年の割合で計算しています。
| 放置期間 | 延滞税 | 内訳 |
|---|---|---|
| 1か月(30日) | 2万3,014円 | 2.8%×30日 |
| 2か月(61日) | 4万6,795円 | 2.8%×61日 |
| 3か月(90日) | 11万9,096円 | 2.8%×61日+9.1%×29日 |
| 6か月(180日) | 34万3,479円 | 2.8%×61日+9.1%×119日 |
| 1年(365日) | 80万4,712円 | 2.8%×61日+9.1%×304日 |
表の見方:2か月までは4万6,795円ですが、3か月で11万9,096円に増えます。1か月延びるごとに約7万5,000円ずつ増える計算です。
重要ポイント:1年放置した80万4,712円は、20年かけて延納した場合の利子税42万円を上回ります。分割払いを20年続けるより、1年放置するほうが高くつきます。
計算ロジック:1,000万円×2.8%×61日÷365日=4万6,795円、1,000万円×9.1%×304日÷365日=75万7,918円で、合計80万4,712円です。延滞税には計算期間の特例があるため、実際の額はこれより小さくなる場合があります。
全額用意できなくても、払える分だけ納付できます。延滞税は未納額に対してかかるため、納めた分だけ確実に負担が減ります。
税額1,000万円で1年放置した場合、納付額ごとの延滞税を比べます。
| 期限内に納付した額 | 未納額 | 1年後の延滞税 | 全額未納との差 |
|---|---|---|---|
| 0円 | 1,000万円 | 80万4,712円 | — |
| 300万円 | 700万円 | 56万3,298円 | 24万1,414円の軽減 |
| 500万円 | 500万円 | 40万2,356円 | 40万2,356円の軽減 |
| 700万円 | 300万円 | 24万1,414円 | 56万3,298円の軽減 |
表の見方:延滞税は未納額に比例します。700万円を納めておけば、全額未納の場合より56万3,298円軽くなります。
重要ポイント:「全額払えないから何も納めない」という判断に合理性はありません。手元にある現金を納付するだけで、延滞税は納付額に比例して減ります。
計算ロジック:未納額700万円なら700万円×2.8%×61日÷365日+700万円×9.1%×304日÷365日=56万3,298円です。未納額が3割減れば延滞税も3割減ります。
同じ「払えない」でも、申告したかどうかで負担が大きく変わります。申告していれば無申告加算税はかかりません。
| 状況 | 延滞税 | 無申告加算税 | 1年後の合計 |
|---|---|---|---|
| 申告した・納付が遅れた | 80万4,712円 | なし | 80万4,712円 |
| 申告せず・通知前に自主申告 | 80万4,712円 | 50万円(5%) | 130万4,712円 |
| 申告せず・調査で指摘された | 80万4,712円 | 150万円(15%) | 230万4,712円 |
表の見方:税額1,000万円で1年経過した場合の比較です。延滞税は3つとも同じで、差は無申告加算税だけです。
重要ポイント:申告しただけで150万円の差がつきます。しかも申告していれば延納の申請もできたため、実際の差はさらに広がります。
計算ロジック:無申告加算税は本税の15%(50万円超の部分は20%、300万円超の部分は30%)です。ここでは本税1,000万円に対する概算として15%=150万円、自主申告の場合5%=50万円で比較しています。
延滞税とは別に、申告しなかったこと自体へのペナルティがあります。
| 種類 | 税率 | 適用される場面 |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 15%(50万円超の部分20%/300万円超の部分30%) | 期限内に申告しなかった |
| 無申告加算税(調査の通知前に自主申告) | 5% | 自主的に期限後申告した |
| 過少申告加算税 | 10%(一定額超は15%) | 申告額が少なかった |
| 重加算税 | 35〜40% | 意図的に隠した |
表の見方:黄色の行が重要です。税務調査の通知が来る前に自主的に申告すれば、15%が5%に下がります。
重要ポイント:本税1,000万円なら15%で150万円、5%なら50万円です。差は100万円になります。気づいた時点で早く動くほど負担が小さくなります。
申告漏れのペナルティと気づいたときの対処法は、下記の記事で解説しています。

納付しないまま放置すると、次の順序で手続きが進みます。
督促状の送付
納期限から50日以内に発送されます。この時点で納付すれば延滞税のみで済みます。
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電話・文書による催告、最終督促状
税務署から連絡が入ります。この段階で相談すれば分割納付の相談に応じてもらえる場合があります。
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差押予告通知書、差押調書
預金・不動産・有価証券・給与などが差押えの対象になります。差押えられた財産は換価処分され、納税に充てられます。
重要ポイント:②③の段階で税務署に相談することが重要です。連絡を無視し続けると④⑤に進みます。事情を説明すれば猶予の余地があります。
相続税には連帯納付義務があります。自分が納付しないと、他の相続人に請求が行きます。
連帯納付義務のしくみ
放置は自分だけの問題では終わりません。親族間のトラブルにつながるため、払えない状況は早めに他の相続人に共有してください。
申告期限を過ぎた場合のペナルティと今すぐやることは、下記の記事で解説しています。


延納と物納は制度として用意されていますが、実際に許可されている件数は非常に少ないのが実態です。
申請すれば通るものと考えて計画を立てると、期限直前に行き詰まります。
国税庁が公表している実績です。同じ年の相続税の申告書提出に係る被相続人数と比べてください。
| 項目 | 件数 | 申告に係る被相続人数との比率 |
|---|---|---|
| 相続税の申告書提出に係る被相続人数(令和4年分) | 150,858人 | — |
| 延納の許可件数(令和4年度) | 856件 | 約0.6% |
| 物納の許可件数(令和4年度) | 54件 | 約0.04% |
表の見方:申告した人のうち延納が許可されたのは約0.6%、物納は約0.04%です。実務では売却や借入による現金化が主流だということを示しています。
重要ポイント:件数が少ない理由は2つあります。そもそも申請する人が少ないことと、要件が厳しいことです。特に物納は管理処分に適さない財産が除外されるため、認められる範囲が限られます。
延納も物納も申請すれば自動的に認められるわけではありません。判定される項目を確認してください。
| 制度 | 判定される項目 | 通らない主な理由 |
|---|---|---|
| 延納 | 金銭で納付することが困難な事由/担保の適格性 | 相続人自身に納付できる資産がある/担保が不適格 |
| 物納 | 延納でも納付が困難/財産の管理処分適格性/優先順位 | 延納で払えると判断された/物納劣後財産・管理処分不適格財産にあたる |
表の見方:物納は「延納でも払えない場合」に初めて検討される制度です。延納が可能と判断されれば物納は認められません。
重要ポイント:延納の判定では相続人自身の財産も考慮されます。相続財産に現金がなくても、相続人に預金や換金しやすい資産があれば認められない場合があります。
申請が却下された場合、納付期限はすでに過ぎています。その後どうなるかを確認してください。
【延納が却下された場合】
納期限の翌日から延滞税がかかります。ただし申請から却下までの審査期間については、一定の要件のもとで利子税に置き換わる取扱いがあります。却下後は速やかに納付するか、物納への変更を検討します。
【物納が却下された場合】
延納への変更申請ができる場合があります。物納申請を取り下げて延納に切り替える選択肢も残ります。
【いずれも共通】
審査には数か月かかります。却下されてから資金を用意しようとすると、その間の延滞税が積み上がります。
申請と並行して売却の準備を進めるのが現実的です。許可されればそのまま延納し、却下されれば売却で対応できます。
許可件数の実態を踏まえると、納税資金の確保は売却か借入が中心になります。それぞれの位置づけを整理します。
| 手段 | 期限内の申請 | コストの目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 売却 | 不要 | 譲渡所得税(取得費加算で軽減可) | 買い手が見つかるまで時間がかかる |
| 借入 | 不要 | 金融機関の金利 | 審査に通る必要がある |
| 延納 | 必要 | 利子税 年0.4%〜1.0%程度 | 担保と審査が必要 |
| 物納 | 必要 | 相続税評価額で納付(時価より不利な場合がある) | 要件が厳しく件数が少ない |
表の見方:コストだけで見れば延納の利子税が最も低くなります。ただし期限内の申請と審査が必要なため、確実性では売却が上回ります。
重要ポイント:物納は相続税評価額で納付するため、時価が評価額を上回る財産では売却したほうが有利です。逆に売れにくい土地なら物納に意味があります。

ここまでは相続が発生した後の対応でした。生前に準備できれば、払えない状況そのものを避けられます。
優先順位の高いものから確認します。
最初にやるべきは税額の把握です。いくら必要かが分からないと準備もできません。
| 確認する項目 | やること |
|---|---|
| 法定相続人の数 | 基礎控除(3,000万円+600万円×人数)を計算する |
| 財産の内訳 | 不動産・預貯金・保険・有価証券を分けて集計する |
| 現金の比率 | 納税額に対して現金がいくらあるかを確認する |
| 特例の適用可否 | 小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減が使えるか |
表の見方:黄色の行が納税資金の問題を左右します。財産の総額ではなく、現金がいくらあるかで払えるかどうかが決まります。
重要ポイント:財産の大半が不動産の場合、税額を計算した段階で資金不足が分かります。その時点で準備を始められれば、延納や物納を検討する必要がなくなります。
相続税がいくらから発生するかの判定は、下記の記事で解説しています。

生命保険は納税資金の準備に向いています。理由は2つあります。
【理由1】受け取りが早い
保険金は受取人が請求すれば数日から2週間程度で支払われます。遺産分割の対象にならないため、口座凍結の影響を受けません。
【理由2】非課税枠がある
「500万円×法定相続人の数」が非課税になります。相続人3人なら1,500万円まで課税価格に入りません。
預貯金で残すより保険にしておくほうが、納税資金としては使いやすくなります。非課税枠の分だけ税額も下がります。
参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
生命保険の非課税枠の計算と3つの税目の違いは、下記の記事で解説しています。

不動産を残す場合、売りやすさが納税資金の確保に直結します。売れない土地は物納も認められにくくなります。
| 財産の種類 | 納税資金としての使いやすさ |
|---|---|
| 預貯金・生命保険 | そのまま使える |
| 上場株式・投資信託 | 売却しやすい |
| 市街地の宅地 | 売却できるが時間がかかる |
| 市街化調整区域の土地・共有名義の不動産 | 売却が難しく物納も認められにくい |
表の見方:下に行くほど現金化が難しくなります。赤い行に該当する財産が多い場合は、生前に整理するか納税資金を別に用意する必要があります。
重要ポイント:共有名義の不動産は単独で売却できません。相続で共有にすると次の相続でさらに持分が細分化されるため、納税資金の確保が難しくなります。
年代別・財産規模別の生前対策のやることは、下記の記事で解説しています。


実際に起きやすい失敗を3つ挙げます。いずれも期限の理解が原因です。
金額の規模とあわせて確認してください。
相続税1,200万円に対して現金が300万円しかなかったケースです。「払えないのに申告しても意味がない」と考え、資金の目処が立つまで申告を見送りました。
期限から3か月後に税務署から連絡が入り、申告と納付を行いました。この時点で延納の申請期限は過ぎており、分割払いは認められませんでした。無申告加算税と延滞税も加わりました。
対策:払えなくても申告書は提出できます。延納申請書を申告書と一緒に出しておけば、最長20年の分割が選択肢に残りました。
相続人の間で自宅の扱いがまとまらず、遺産分割協議が長引いたケースです。分割が決まらないため申告もできないと判断し、期限を過ぎました。
3年後に分割が成立しましたが、未分割申告と3年以内の分割見込書を出していなかったため、小規模宅地等の特例が適用できませんでした。自宅の土地の評価が80%下がらず、税額が大幅に増えました。
対策:分割が終わらなくても法定相続分で未分割申告ができます。3年以内の分割見込書を添付しておけば、分割後に更正の請求で取り戻せました。
納税資金のために相続した土地を売却する予定だったケースです。買い手が見つからず交渉が長引き、売却が成立したのは相続開始から4年後でした。
取得費加算の特例は相続開始から3年10ヶ月以内の売却が条件です。期限を過ぎていたため特例が使えず、譲渡所得税が想定より大きくなりました。
対策:売却には時間がかかることを前提にスケジュールを組みます。3年10ヶ月の期限から逆算し、遅くとも3年目には売却に着手してください。
払えないほど税額が大きい場合、相続放棄が選択肢になることがあります。ただし期限が3か月と短く、判断を誤ると取り消せません。
| 状況 | 放棄の検討 | 理由 |
|---|---|---|
| 債務が財産を上回る | 検討する | そもそも相続税は発生しない |
| 売れない不動産しかない | 検討する | 納税資金を作れず維持費だけかかる |
| 財産はあるが現金が足りない | 放棄は不適切 | 延納・物納・売却で対応できる |
| 遺産分割でもめている | 放棄は不適切 | 放棄しても税負担は他の相続人に移るだけ |
表の見方:赤い行が最も多い誤解です。現金が足りないだけなら放棄する必要はありません。財産を失ったうえに次順位の相続人へ負担が移るだけです。
重要ポイント:相続放棄の期限は相続開始を知った日から3か月以内です。相続税の申告期限10ヶ月より先に来るため、迷っている間に期限が過ぎます。
重要ポイント:放棄しても基礎控除の計算上は法定相続人の数に含まれます。放棄によって他の相続人の基礎控除が減ることはありません。
相続放棄をした場合の基礎控除と使える控除は、下記の記事で解説しています。

払えないと分かった時点で確認する項目です。上から順に確認してください。
確認項目
重要ポイント:最初の2項目が最も重要です。「払えないから申告しない」という判断を避けるだけで、延納・物納・2つの特例のすべてが選択肢に残ります。
参照元:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税/国税庁 No.4211 相続税の延納

払えない状況で税理士に相談する価値は、資金の調達方法を教わることではありません。期限内に何を提出すべきかを判断し、税額そのものを下げられるかを見極めることです。
残り時間が少ないほど、判断の速さが結果を左右します。
払えないケースでは、通常の申告に加えて延納・物納・未分割申告といった手続きが絡みます。これらは経験がないと期限内に判断できません。
この状況で実績が問われる場面
実際の金額差で見ると次のようになります。相続税1,200万円で現金が300万円しかないケースです。
| 対応 | 延納の申請 | 1年後までのコスト |
|---|---|---|
| 払えないため申告を見送った | できない | 延滞税+無申告加算税 |
| 期限内に申告し延納を申請した | できる | 利子税のみ |
表の見方:未納額900万円を1年放置した場合の延滞税は72万4,241円で、これに無申告加算税が加わります。期限内に申告して延納を申請すれば利子税だけで済みます。
重要ポイント:最初に確認すべきは税額が正しいかどうかです。土地の評価を見直して税額が下がれば、延納も物納も不要になる場合があります。
計算ロジック:未納額900万円を令和8年の割合で1年放置すると、900万円×2.8%×61日÷365日+900万円×9.1%×304日÷365日=72万4,241円です。
見積りを比較するときは金額だけを見るのではなく、次の3つで実務力を判定できます。
判定ポイント1:期限までの残り日数を最初に確認するか。A税理士は「相続開始日はいつですか」「あと何日ありますか」を最初に質問し、B税理士は財産の内容だけを聞きました。→ A税理士の方が、期限が迫った案件の経験が豊富と判定できます。
判定ポイント2:税額を下げる余地を先に検討するか。A税理士は「土地の形状と接道状況を確認させてください」と伝え、B税理士は延納の手続き費用だけを提示しました。→ A税理士の方が、評価の見直しの実務経験が豊富と判定できます。
判定ポイント3:延納申請書の作成が見積りに含まれているか。A税理士は「金銭納付を困難とする理由書の作成」を明記し、B税理士は申告書の作成のみでした。→ A税理士の方が、延納を伴う申告の経験が豊富と判定できます。
報酬の目安は遺産5,000万円規模なら20万〜30万円です。延納申請書の作成は別途費用がかかることが多いため、見積りの内訳を確認してください。
自分で判断して進めた場合に起きうることを整理します。
相談しないまま進めた場合のリスク
いずれも期限内に判断していれば避けられます。残り時間が少ない場合ほど、早く相談することの価値が大きくなります。
複数の税理士に同時に相談する場合の流れです。
相続の概要を整理する
被相続人の資産内容(預貯金・不動産・保険)、資産額の概算、相続人の構成と人数、遺言の有無を整理します。
相続開始日と申告期限までの残り日数を必ず記載してください。
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一括見積り・相談サービスに依頼する
「相続税申告」「延納の申請」「土地の評価の見直し」「未分割申告」など希望内容を明記し、相続税の対応実績がある税理士3〜5社への同時打診を依頼します。
不動産がある場合は所在地と広さを記載してください。納税に充てられる現金の額も伝えると提案の精度が上がります。フォーム記入は5分程度です。
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見積りと初回相談を受ける
各税理士から「提案内容」「試算相続税額」「報酬額」が記載された見積りが届きます。気になる事務所と初回相談を行ってください。
この段階で税額を下げられる余地があるかが分かります。
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税理士を選定・正式依頼する
「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で最適な事務所を選びます。
延納を申請する場合は相続開始から7ヶ月以内に決めてください。担保提供関係書類の準備に時間がかかります。
重要ポイント:期限が2〜3か月を切っている場合は、STEP2で「期限が迫っている」旨を明記してください。対応可能な事務所が絞られるため、早い段階で分かったほうが動きやすくなります。
税理士の無料相談を含む7つの窓口の使い分けは、下記の記事で解説しています。

税理士費用の相場と費用を抑える方法は、下記の記事で解説しています。

必ず申告してください。申告と納付は別の手続きで、資金がなくても申告書は提出できます。
期限内に申告しておけば無申告加算税がかかりません。さらに延納と物納の申請期限は申告期限と同じなので、申告を見送ると分割払いや現物納付の選択肢も同時に失います。
配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例も期限内申告が適用条件です。申告しないことで税額そのものが増えるため、払えない状況がさらに悪化します。
相続税1,000万円を1年放置した場合の延滞税は80万4,712円です。令和8年の割合(納期限の翌日から2か月以内は年2.8%、その後は年9.1%)で計算した金額です。
一方で同じ1,000万円を20年かけて延納した場合、利子税の総額は42万円です。不動産等の割合が75%以上で利子税が年0.4%の場合の計算です。
つまり20年分割の利子税より、1年放置した延滞税のほうが高くなります。割合で見ると0.4%対9.1%で約23倍の開きがあります。ただし延滞税には計算期間の特例があるため、実際の額はこれより小さくなる場合があります。
法定相続分で仮に計算して申告する「未分割申告」を行います。分割が終わっていないことは申告しない理由になりません。
このとき「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず添付してください。この書類がないと、分割が成立しても配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例を適用できません。
分割が成立したら、その日から4か月以内に更正の請求をすれば払いすぎた税金の還付を受けられます。分割は申告期限から3年以内、更正の請求は分割の日から4か月以内という2段階の期限を守る必要があります。
認められるとは限りません。令和4年度の許可件数は延納が856件、物納が54件です。同年の相続税の申告書提出に係る被相続人数150,858人と比べると、延納は約0.6%、物納は約0.04%にとどまります。
延納は「金銭で納付することが困難な事由」があるかを判定され、相続人自身の財産も考慮されます。物納は「延納でも納付が困難」な場合に初めて検討される制度で、管理処分に適さない財産は除外されます。
申請と並行して売却の準備を進めるのが現実的です。許可されればそのまま延納し、却下されれば売却で対応できます。
納付期限は10ヶ月ですが、売却そのものに期限はありません。ただし取得費加算の特例を使うなら相続開始から3年10ヶ月以内の売却が条件です。
この特例は納めた相続税の一部を譲渡所得の取得費に加算できるもので、譲渡所得税が軽減されます。期限は「相続税の申告期限から3年以内」と定められており、申告期限10ヶ月を加えると相続開始から3年10ヶ月になります。
売却が納付期限に間に合わない場合、その間の延滞税はかかります。延納を申請しておけば延滞税ではなく利子税で済むため、売却と並行して延納を申請する方法があります。
相続税が払えないとき最も重要なのは、選択肢を比べることではなく期限内に申告することです。延納と物納の申請期限は申告期限と同じで、過ぎると申請できません。
配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例も期限内申告が条件です。「払えないから申告しない」という判断が、使えたはずの制度をすべて同時に失わせます。
この記事で扱った内容を整理すると次のとおりです。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。相続税法の改正により内容が変更される場合があります。最新の制度については国税庁のウェブサイトまたは税理士にご確認ください。