


二次相続とは、一次相続で財産を受け取った配偶者が亡くなったときに発生する、2回目の相続のことです。
二次相続対策とは、この2回目まで見据えて一次相続の分け方を決めることを指します。
一次相続だけを見れば、配偶者に全部渡すのが最も有利です。配偶者の税額軽減があるため、多くのケースで納税額は0円になります。
ところが二次相続では配偶者がいないため、この軽減が使えません。相続人が1人減るので基礎控除も生命保険の非課税枠も下がります。
その結果、一次相続で0円にしたことが、二次相続で数百万円から数千万円の増税に跳ね返ります。合計で見ると「全部渡す」が最も高い選択になることが珍しくありません。
では何割を渡せばよいのか。この答えは遺産額だけでは決まらず、配偶者が自分の財産をいくら持っているか、子が何人いるかで最適値が動きます。
この記事では、二次相続で税額が上がる仕組みから、配偶者に渡す割合の決め方、固有財産と子の人数による補正、決めた配分を実行するときの注意点までを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

二次相続は制度の名前ではありません。父が亡くなった後に母が亡くなる、という2回続く相続を実務上こう呼び分けています。
重要なのは、この2回を切り離して考えると必ず損をするという点です。一次相続の分け方が二次相続の税額を決めるため、1回目の時点で2回目まで計算する必要があります。
両親と子がいる家庭では、多くの場合、相続は2回発生します。1回目が一次相続、2回目が二次相続です。
一次相続の相続人は配偶者と子です。二次相続の相続人は子だけになります。この「相続人が1人減る」ことが、税額を押し上げる出発点になります。
二次相続で課税される財産は、配偶者が一次相続で受け取った財産のうち残っているものと、配偶者がもともと持っていた財産の合計です。後者を本記事では固有財産と呼びます。
一次相続と二次相続では、相続人の数だけでなく使える制度そのものが変わります。最も大きいのは配偶者の税額軽減が使えなくなることです。
| 項目 | 一次相続(配偶者+子2人) | 二次相続(子2人) |
|---|---|---|
| 法定相続人の数 | 3人 | 2人 |
| 基礎控除 | 4,800万円 | 4,200万円 |
| 生命保険の非課税枠 | 1,500万円 | 1,000万円 |
| 死亡退職金の非課税枠 | 1,500万円 | 1,000万円 |
| 配偶者の税額軽減 | 使える | 使えない |
| 小規模宅地等の特例(自宅) | 配偶者なら無条件 | 子の同居などの要件が必要 |
| 3つの控除枠の合計 | 7,800万円 | 6,200万円 |
表の見方:相続人が1人減るだけで、非課税で持ち込める枠が合計1,600万円縮みます。加えて配偶者の税額軽減という最大の制度が使えなくなります。
重要ポイント:自宅の扱いが最も見落とされます。一次相続で配偶者が自宅を相続すると無条件で小規模宅地等の特例が使えますが、二次相続で子が相続するときは同居などの要件を満たす必要があります。要件を満たせないと評価額の80%減額を受けられません。
計算ロジック:基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。3人なら4,800万円、2人なら4,200万円です。生命保険と死亡退職金の非課税枠はそれぞれ500万円×法定相続人の数なので、1人減ると各500万円ずつ縮みます。
配偶者の税額軽減の1億6,000万円の上限と適用方法は、下記の記事で解説しています。

一次相続の申告期限は10か月です。この期限に追われると、目の前の税額を下げることだけを考えてしまいます。
配偶者に全部渡せば、多くのケースで一次相続の納税額は0円になります。手続きとしてはこれが最も簡単です。
しかし0円にした財産は、そのまま二次相続の課税対象として残ります。税金が消えたのではなく、支払いが後ろにずれただけです。
遺産2億円・子2人のケースで比べると、全部渡した場合の合計は3,880万円です。最適な31%にとどめた場合は2,063万円で、差は1,817万円になります。
この差は、一次相続の遺産分割協議書に押印する前でなければ作れません。申告後に配分をやり直すことは原則としてできないため、判断の期限は実質的に10か月です。


二次相続の負担が重くなる理由は5つあります。いずれも「相続人が1人減る」ことと「配偶者の財産が合算される」ことから生じます。理由を1つずつ金額で確認すると、どこに対策の余地があるかが見えてきます。
配偶者の税額軽減は、配偶者が取得した財産のうち1億6,000万円か法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかからない制度です。
二次相続では配偶者が被相続人になるため、この制度を使う人がいません。5つの理由のうち、金額の影響が最も大きいのがこれです。
遺産2億円・子2人のケースでは、一次相続で配偶者に全部渡すと納税額は540万円ですが、これは軽減の上限1億6,000万円を超えた4,000万円分に課税された結果です。二次相続では同じ2億円に3,340万円が課税されます。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。相続人が3人から2人に減れば、控除額は4,800万円から4,200万円に下がります。
課税価格が同じでも、課税対象になる金額が600万円増えます。税率が30%の帯なら約180万円の増税に相当します。
生命保険の死亡保険金と死亡退職金には、それぞれ500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。
相続人が1人減ると、この枠も各500万円ずつ縮みます。基礎控除と合わせると、非課税で持ち込める枠が合計1,600万円失われます。

二次相続で課税されるのは、一次相続で受け取った財産だけではありません。配偶者がもともと持っていた財産も合算されます。
配偶者に預貯金や自分名義の不動産、専業主婦期間に積み立てた保険などがあれば、そのすべてが二次相続の課税対象です。
この固有財産の額が、配偶者に渡すべき割合を左右します。多くの記事が「配偶者の取得額」だけで最適値を示していますが、固有財産を無視すると答えがずれます。
相続税は累進課税です。課税される金額が大きくなるほど、適用される税率も上がります。
一次相続で配偶者に財産を集めると、二次相続では「配偶者の固有財産+受け取った財産」が1人分の相続財産として計算されます。分散させた場合より高い税率の帯に届きやすくなります。
| 課税価格 | 一次(配偶者+子1人) | 二次(子1人) | 一次(配偶者+子2人) | 二次(子2人) |
|---|---|---|---|---|
| 4,000万円 | 0円 | 40万円 | 0円 | 0円 |
| 5,000万円 | 40万円 | 160万円 | 10万円 | 80万円 |
| 6,000万円 | 90万円 | 310万円 | 60万円 | 180万円 |
| 8,000万円 | 235万円 | 680万円 | 175万円 | 470万円 |
| 1億円 | 385万円 | 1,220万円 | 315万円 | 770万円 |
| 1億5,000万円 | 920万円 | 2,860万円 | 748万円 | 1,840万円 |
| 2億円 | 1,670万円 | 4,860万円 | 1,350万円 | 3,340万円 |
表の見方:同じ課税価格でも、一次と二次で税額が大きく違います。1億円・子2人なら一次315万円に対し二次770万円で、2.4倍です。一人っ子の場合は385万円に対し1,220万円で3.2倍に開きます。
重要ポイント:子の人数が少ないほど、一次と二次の差は大きくなります。一人っ子の家庭では二次相続の負担が特に重くなるため、一次相続での配分がより重要になります。
計算ロジック:一次相続の税額は法定相続分どおりに分けた場合の納税額です。配偶者の分は税額軽減で0円になるため、子の負担分だけが残ります。
二次相続は配偶者の固有財産を0円とし、記載の課税価格をそのまま子が相続した場合の税額です。いずれも現金のみで特例を使わない前提です。
一人っ子の場合の税額と二次相続の対策は、下記の記事で解説しています。


ここからは実際の数字で確認します。配偶者に渡す割合を変えるだけで、一次と二次の合計税額は数百万円から数千万円動きます。
しかも「全部渡す」と「渡さない」の両端がどちらも不利で、間のどこかに最小値があります。この最小値の位置が遺産額によって変わることを、まず押さえてください。
遺産2億円を配偶者と子2人で相続し、配偶者が受け取った財産をそのまま残して亡くなったときに子2人が相続する前提で計算します。配偶者の固有財産は0円とします。
| 配偶者の取得 | 一次相続 | 二次相続 | 合計 | 全部渡した場合との差 |
|---|---|---|---|---|
| 100%(全部渡す) | 540万円 | 3,340万円 | 3,880万円 | — |
| 80% | 540万円 | 2,140万円 | 2,680万円 | ▲1,200万円 |
| 50%(法定相続分) | 1,350万円 | 770万円 | 2,120万円 | ▲1,760万円 |
| 31%(最適) | 1,863万円 | 200万円 | 2,063万円 | ▲1,817万円 |
| 0%(渡さない) | 2,700万円 | 0円 | 2,700万円 | ▲1,180万円 |
表の見方:黄色の行が最小値です。100%と0%の両端がどちらも不利で、31%付近に谷ができます。法定相続分どおりの50%でも2,120万円まで下がるので、最適値との差は57万円しかありません。
重要ポイント:最も避けるべきは「全部渡して一次相続を0円にする」選択です。この帯では540万円の納税が発生しますが、それでも二次相続の3,340万円が加わって最も重くなります。1%刻みで最適値を探すより、まず全部渡すのをやめる方が効果が大きいと考えてください。
計算ロジック:一次相続の相続税の総額は2,700万円です。基礎控除4,800万円を引いた課税遺産総額1億5,200万円を法定相続分で分けて計算します。
配偶者7,600万円に30%・控除700万円、子各3,800万円に20%・控除200万円を適用して合計します。
配偶者の税額は軽減で減りますが、上限は1億6,000万円か法定相続分1億円のいずれか多い1億6,000万円です。100%取得なら超過分4,000万円に対応する540万円が残ります。
最適な割合は遺産額によって変わります。遺産が大きくなるほど配偶者に渡す割合を下げた方が有利になる、という一方向の動きではありません。
| 一次相続の遺産 | 全部渡した場合 | 最適な配分 | 最適時の合計 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 6,000万円 | 180万円 | 70% | 36万円 | ▲144万円 |
| 8,000万円 | 470万円 | 52% | 168万円 | ▲302万円 |
| 1億円 | 770万円 | 42% | 365万円 | ▲405万円 |
| 1億5,000万円 | 1,840万円 | 28% | 1,076万円 | ▲764万円 |
| 2億円 | 3,880万円 | 31% | 2,063万円 | ▲1,817万円 |
| 3億円 | 9,589万円 | 34% | 4,575万円 | ▲5,014万円 |
表の見方:最適割合は6,000万円の70%から1億5,000万円の28%まで下がり、そこから2億円で31%、3億円で34%と反転して上がります。遺産が大きいほど渡さない方がよい、という単純な関係ではありません。
重要ポイント:1億5,000万円あたりで最適割合が底を打つのは、配偶者の税額軽減の上限が1億6,000万円で固定されているためです。
遺産が3億2,000万円を超えると法定相続分が1億6,000万円を上回り、上限が遺産額に比例して伸びます。そのため大きな遺産では再び配偶者に寄せる方が有利になります。
計算ロジック:いずれも子2人・配偶者の固有財産0円・現金のみで特例を使わない前提です。0%から100%まで1%刻みで一次と二次の合計を計算し、最小になる割合を採用しています。同額が並ぶ場合は配偶者に多く残る方を記載しました。
金額帯ごとの詳しい判定表は、それぞれの記事で用意しています。自分の遺産額に近いものを確認してください。

遺産2億円のときの税額と最適な配分は、下記の記事で解説しています。

全部渡すのが不利になるのは、一定の金額を超えてからです。それ以下なら二次相続でも基礎控除に収まるため、どう分けても税額は変わりません。
子2人のケースでは、二次相続の基礎控除は4,200万円です。配偶者が受け取る財産と固有財産の合計が4,200万円以内なら、二次相続の税額は0円になります。
つまり配偶者に渡す上限の目安は、固有財産を差し引いた「4,200万円まで」です。遺産1億円で固有財産が0円なら4,200万円=42%が最適値になるのは、この境界に一致するためです。
【判定の目安】
配偶者に渡す金額 = 二次相続の基礎控除 − 配偶者の固有財産
子2人なら 4,200万円 − 固有財産。子1人なら 3,600万円 − 固有財産。子3人なら 4,800万円 − 固有財産です。
この金額に収まれば二次相続は0円になります。遺産がこれより大きい場合は、残りを子に渡して一次相続で納税する方が合計は軽くなります。
重要ポイント:この目安は遺産が3億2,000万円以下の場合に有効です。それを超えると配偶者の税額軽減の上限が伸びるため、二次相続で税額が出ても配偶者に寄せた方が有利になるケースが出てきます。高額帯では個別の試算が必要です。

ここが最も見落とされる論点です。配偶者が自分の財産を持っている場合、最適な配分は大きく下がります。
多くの解説記事は配偶者の取得額だけで最適値を示していますが、固有財産を無視した数字を使うと合計税額が数百万円ずれます。自分のケースにはこの補正が必要です。
遺産1億円を配偶者と子2人で相続するケースで、配偶者の固有財産だけを変えて計算します。
| 配偶者自身の財産 | 最適な配分 | 最適時の合計 | 全部渡した場合 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 0円 | 42% | 365万円 | 770万円 | ▲405万円 |
| 1,000万円 | 32% | 428万円 | 960万円 | ▲532万円 |
| 2,000万円 | 22% | 491万円 | 1,160万円 | ▲669万円 |
| 3,000万円 | 12% | 554万円 | 1,360万円 | ▲806万円 |
| 5,000万円 | 0% | 710万円 | 1,840万円 | ▲1,130万円 |
| 8,000万円 | 0% | 1,100万円 | 2,740万円 | ▲1,640万円 |
| 1億円 | 0% | 1,400万円 | 3,340万円 | ▲1,940万円 |
表の見方:固有財産が1,000万円増えるごとに最適割合が約10%ずつ下がります。42%から32%、22%、12%と規則的に減り、5,000万円を超えると最適は0%=配偶者に渡さないのが正解になります。
重要ポイント:固有財産0円の前提で「42%が最適」という数字だけを見て分けると、実際に固有財産が3,000万円ある家庭では最適値12%から30ポイントずれます。
この場合の合計税額は最適の554万円に対し、42%で分けると715万円です。161万円を余分に払うことになります。
計算ロジック:1,000万円ごとに10%下がるのは、二次相続の基礎控除4,200万円という枠を固有財産が先に埋めてしまうためです。
遺産1億円の10%は1,000万円なので、固有財産が1,000万円増えるたびに渡せる金額が10%分減ります。42%×1億円=4,200万円が基礎控除の額に一致します。
遺産額が変わると刻み幅も変わります。2億円のケースでは、固有財産1,000万円あたり約5%の下がり方になります。
| 配偶者自身の財産 | 最適な配分 | 最適時の合計 | 全部渡した場合 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 0円 | 31% | 2,063万円 | 3,880万円 | ▲1,817万円 |
| 1,000万円 | 26% | 2,198万円 | 4,180万円 | ▲1,982万円 |
| 2,000万円 | 21% | 2,333万円 | 4,480万円 | ▲2,147万円 |
| 3,000万円 | 16% | 2,468万円 | 4,780万円 | ▲2,312万円 |
| 5,000万円 | 6% | 2,738万円 | 5,460万円 | ▲2,722万円 |
| 8,000万円 | 0% | 3,170万円 | 6,660万円 | ▲3,490万円 |
| 1億円 | 0% | 3,470万円 | 7,460万円 | ▲3,990万円 |
表の見方:刻み幅が1億円のときの10%から5%に半減しています。遺産額が2倍になると、同じ1,000万円が占める割合が半分になるためです。0%になる境界も5,000万円から8,000万円に上がります。
重要ポイント:金額の絶対値で覚える方が実用的です。遺産1億円でも2億円でも、配偶者に渡す上限は「4,200万円−固有財産」です。割合ではなく金額で判断すれば、遺産額が変わっても同じ基準が使えます。
計算ロジック:2億円の5%は1,000万円です。1億円のときは10%が1,000万円でした。どちらも「渡す金額を1,000万円減らす」という同じ調整をしており、割合の見た目が変わるだけです。
この判定を使うには、配偶者の財産を先に洗い出す必要があります。一次相続の申告のために被相続人の財産を調べるとき、同時に配偶者の分も確認してください。
【確認すべき配偶者の財産】
重要ポイント:配偶者名義の預貯金でも、原資が被相続人の収入なら名義預金として一次相続の課税対象になることがあります。この場合は固有財産ではなく一次相続の遺産に含めて計算します。名義だけで判断せず、原資が誰の収入かで判定してください。

もう1つの補正要素が子の人数です。直感と逆ですが、子が多いほど配偶者に多く渡した方が有利になります。子が増えれば二次相続の基礎控除も増えるため、配偶者に渡せる枠が広がるからです。この関係を知らないと、子の人数にかかわらず同じ割合で分けてしまいます。
| 子の人数 | 一次遺産1億円の最適 | 合計税額 | 一次遺産2億円の最適 | 合計税額 |
|---|---|---|---|---|
| 1人 | 36% | 493万円 | 33% | 2,638万円 |
| 2人 | 42% | 365万円 | 31% | 2,063万円 |
| 3人 | 48% | 273万円 | 39% | 1,785万円 |
| 4人 | 54% | 207万円 | 47% | 1,592万円 |
表の見方:一次遺産1億円では、子1人の36%から4人の54%まで6%刻みで上がります。合計税額も493万円から207万円へと下がり、子が3人増えるだけで286万円軽くなります。
重要ポイント:一人っ子の家庭が最も不利です。二次相続の基礎控除が3,600万円しかなく、しかも相続税の総額を1人で負担するため税率も上がります。一人っ子の場合は配偶者に渡す割合を最も低く設定する必要があります。
計算ロジック:6%刻みになるのは、二次相続の基礎控除が子1人につき600万円増えるためです。遺産1億円の6%は600万円なので、子が1人増えるたびに渡せる金額が6%分増えます。
2億円のケースで刻みが不規則に見えるのは、軽減の上限1億6,000万円と法定相続分の大小関係が人数によって変わるためです。
養子縁組による節税の仕組みと2割加算のリスクは、下記の記事で解説しています。

固有財産と子の人数の2つを踏まえると、渡す金額は次の手順で出せます。割合ではなく金額で計算する方が確実です。
二次相続の基礎控除を出す
3,000万円+600万円×子の人数。子1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円です。
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配偶者の固有財産を差し引く
STEP1の金額から配偶者自身の財産を引きます。これが配偶者に渡せる上限です。マイナスになる場合は渡さないのが最適です。
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生命保険の非課税枠を足す
配偶者が契約者で子が受取人の保険があれば、500万円×子の人数まで非課税枠が使えます。その分だけ上限を増やせます。
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配偶者の生活費で下限を確認する
STEP3で出した金額が配偶者の生活に足りるかを確認します。足りない場合は税額よりも生活を優先してください。判断の詳細は次の章で解説します。
重要ポイント:この手順で出るのは税額を最小にする金額であって、必ずそう分けるべき金額ではありません。配偶者の生活費と納税資金を確保した上で、余裕がある範囲で近づけるという使い方をしてください。

ここまでの判定表には、実は大きな前提があります。配偶者が受け取った財産をそのまま残して亡くなる、という前提です。
現実には生活費で取り崩されますし、賃貸物件なら逆に増えます。この動きを織り込むと最適な配分は変わり、場合によっては答えが逆転します。
解説記事のほとんどがこの前提に触れていないため、数字をそのまま使うと判断を誤ります。
配偶者が年間300万円を生活費として使う前提で計算します。二次相続までの年数が長いほど、配偶者の財産は減っていきます。
| 二次相続までの年数 | 取り崩し累計 | 一次遺産1億円の最適 | 合計税額 | 一次遺産2億円の最適 | 合計税額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0年(そのまま残す) | 0円 | 42% | 365万円 | 31% | 2,063万円 |
| 5年 | 1,500万円 | 57% | 271万円 | 39% | 1,862万円 |
| 10年 | 3,000万円 | 72% | 176万円 | 46% | 1,658万円 |
| 15年 | 4,500万円 | 87% | 82万円 | 54% | 1,457万円 |
| 20年 | 6,000万円 | 100% | 0円 | 61% | 1,253万円 |
表の見方:年数が長くなるほど最適割合が上がります。一次遺産1億円で20年続くなら、最適は100%=全部渡すのが正解に逆転します。取り崩し6,000万円で二次相続の課税財産が基礎控除以下になるためです。
重要ポイント:配偶者が60代なら20年以上、80代なら10年以内という見積りが現実的です。配偶者が若いほど配偶者に多く渡してよく、高齢なら子に多く渡すべきという関係になります。年齢を無視して割合だけで判断すると逆の選択をしかねません。
計算ロジック:配偶者が取得した財産から年間300万円×年数を差し引いた残額を、二次相続の課税価格として計算しています。
一次遺産2億円で20年でも61%どまりなのは、取り崩し6,000万円では2億円の大半が残るためです。遺産が大きいほど取り崩しの影響は小さくなります。
取り崩す金額そのものも結果を左右します。一次遺産1億円・子2人で10年後に二次相続が発生する前提で、年間の生活費だけを変えて計算します。
| 年間の生活費 | 10年の累計 | 最適な配分 | 合計税額 |
|---|---|---|---|
| 0円(取り崩さない) | 0円 | 42% | 365万円 |
| 200万円 | 2,000万円 | 62% | 239万円 |
| 300万円 | 3,000万円 | 72% | 176万円 |
| 400万円 | 4,000万円 | 82% | 113万円 |
| 500万円 | 5,000万円 | 92% | 50万円 |
表の見方:生活費が100万円増えるごとに最適割合が10%上がります。取り崩す金額が大きいほど、配偶者に多く渡しても二次相続の課税財産が残らないためです。
重要ポイント:この表は「配偶者の生活費を確保すると税額も下がる」ことを示しています。生活費の確保と節税は対立しません。配偶者に必要な額を渡し、それを使ってもらうことが結果的に合計税額も下げます。
配偶者が賃貸物件を相続すると、財産は減るのではなく増えます。動きが完全に逆になります。
| 二次相続までの年数 | 増加累計 | 最適な配分 | 合計税額 |
|---|---|---|---|
| 0年 | 0円 | 42% | 365万円 |
| 5年 | 1,000万円 | 32% | 428万円 |
| 10年 | 2,000万円 | 22% | 491万円 |
| 15年 | 3,000万円 | 12% | 554万円 |
表の見方:年200万円の家賃収入が配偶者に入る前提です。取り崩す場合は42%から100%へ上がりましたが、増える場合は42%から12%へ下がります。同じ遺産額でも、渡す財産の性質で答えが真逆になります。
重要ポイント:固有財産の表と数字が一致します。年200万円×5年=1,000万円で32%、10年で2,000万円なら22%です。将来の収入累計は固有財産と同じように扱えます。
賃貸物件を配偶者に渡すなら、その物件が生む収入の累計を固有財産に足して判定してください。
計算ロジック:家賃収入は所得税と住民税を差し引いた手取りが財産として残ります。表では手取り200万円が全額残る前提で計算しています。実際には固定資産税や修繕費も出ていくため、増加額はこれより小さくなります。
ここまでの判定は、配偶者の税額軽減の上限が1億6,000万円で固定されている前提です。遺産が一定額を超えると、この前提が崩れます。
| 一次相続の遺産 | 軽減の上限 | 上限の基準 | 最適な配分 | 合計税額 |
|---|---|---|---|---|
| 2億円 | 1億6,000万円 | 1億6,000万円 | 31% | 2,063万円 |
| 3億円 | 1億6,000万円 | 1億6,000万円 | 34% | 4,575万円 |
| 3億2,000万円 | 1億6,000万円 | ここが境界 | 44% | 5,171万円 |
| 3億5,000万円 | 1億7,500万円 | 法定相続分 | 40% | 6,042万円 |
| 4億円 | 2億円 | 法定相続分 | 35% | 7,553万円 |
| 5億円 | 2億5,000万円 | 法定相続分 | 29% | 1億998万円 |
表の見方:遺産3億2,000万円までは上限が1億6,000万円で固定されます。これを超えると法定相続分が1億6,000万円を上回るため、上限が遺産額に比例して伸び始めます。
重要ポイント:「二次相続の基礎控除−固有財産」という目安が使えるのは、遺産3億2,000万円以下の場合です。それを超える場合は上限の伸びを踏まえた個別の試算が必要になります。この帯では税理士に一次と二次の同時試算を依頼してください。
計算ロジック:配偶者の税額軽減の上限は、1億6,000万円か法定相続分相当額のいずれか多い金額です。
配偶者と子の場合、法定相続分は遺産の2分の1です。遺産3億2,000万円でちょうど1億6,000万円になり、それより大きい遺産では法定相続分が上限になります。
夫婦間の相続で配偶者控除をどう使うかは、下記の記事で解説しています。


判定表で出た金額をそのまま実行できるとは限りません。配偶者の生活費と子の納税資金という2つの制約が先にあります。税額を最小にする配分が、家族にとって最善の配分とは一致しないことがあります。ここでは制約が出たときにどう調整するかを整理します。
最適配分では配偶者の取得額が4,200万円程度に抑えられます。配偶者が70代で自宅以外に収入源がない場合、この金額で残りの人生を過ごせるかを確認する必要があります。
年間の生活費を300万円とすると、20年で6,000万円です。4,200万円では14年分しかありません。
この場合の選択は2つです。1つは税額を優先せず配偶者に多く渡すこと。もう1つは子が取得した財産から生活費を援助することです。
【注意】子からの援助には贈与税がかかる場合がある
子が親の生活費を負担する場合、通常必要と認められる範囲であれば贈与税はかかりません。ただし一括で数百万円を渡すと贈与と判定されることがあります。
毎月必要な額を渡す形にするか、年110万円の基礎控除内に収める形にしてください。子が親を扶養する義務の範囲での支出は課税対象外です。
最適配分では一次相続で子が納税します。遺産2億円・子2人の31%配分なら、一次相続の納税額は1,863万円です。
この納税額を子2人で負担できるかを先に確認してください。相続税は現金で一括納付が原則で、期限は10か月です。
遺産が不動産中心の場合、子が取得した財産は換金できないのに納税義務だけが発生します。この状態を避けるため、子には現金を優先して配分します。
| 状況 | 調整の方向 | 注意点 |
|---|---|---|
| 子に現金がなく遺産も不動産中心 | 配偶者に多く渡して一次の納税を抑える | 二次相続の税額は増えるが、期限内納付を優先する |
| 遺産に現金があり子に配分できる | 判定表どおりに配分する | 納税分を残した上で使途を決める |
| 配偶者に現金、子に不動産となる | 代償分割で調整する | 代償金の額と評価額の関係で課税価格が変わる |
| どうしても現金が足りない | 延納・物納を検討する | 延納は利子税がかかり、審査に通る件数は限られる |
表の見方:上から順に望ましい選択です。延納・物納は最後の手段で、まず配分の調整で解決できるかを検討します。
重要ポイント:節税のために納税できない配分を選ぶのは本末転倒です。期限を過ぎると延滞税が加算され、節税で得た分を上回ることがあります。納税できる範囲で最適値に近づけるという順序を守ってください。
相続税が払えないときの選択肢と優先順位は、下記の記事で解説しています。

自宅を子が相続し、配偶者に現金を渡したいが遺産に十分な現金がない場合、代償分割を使います。
子が自宅を取得し、その代わりに子の自己資金から配偶者に代償金を支払う方法です。これにより取得する財産の種類と金額を切り離して調整できます。
ただし代償金の額をどう決めるかで課税価格が変わります。相続税評価額を基準にするか時価を基準にするかで結果が異なるため、事前の確認が必要です。


一次相続を0円にする選択には、税額が後ろにずれるだけではない別の代償があります。相次相続控除という、二次相続の税額を減らせる制度が使えなくなります。この相互作用は解説記事でもほとんど触れられていませんが、国税庁が公式のQ&Aで明記している内容です。
相次相続控除は、10年以内に相続が2回続いた場合に二次相続の税額を減らせる制度です。前の相続で納めた相続税のうち、1年につき10%ずつ減らした金額を控除できます。
要件は3つあります。このうち3つ目が問題になります。
【相次相続控除が受けられる人】
3つ目の要件は「配偶者に相続税が課された」ことを求めています。一次相続で配偶者の税額軽減を使って納税額を0円にすると、この要件を満たせません。
国税庁のQ&Aは、2年前に父が死亡し本年母が死亡したケースについてこう答えています。
今回の被相続人(母)は、前回の父の相続において配偶者の税額の軽減により納めた相続税がないため、今回の母の相続税の申告において相次相続控除額は算出されませんので、相次相続控除を受けることはできません。
それなら配偶者に全部渡して一次相続で納税させ、控除を使った方が有利なのではないかと考えるかもしれません。数値で確認します。
遺産2億円・子2人・配偶者の固有財産0円で、一次相続から3年後に二次相続が発生した前提です。
| 配偶者の取得 | 一次相続 | うち配偶者の納税 | 相次相続控除 | 二次相続 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 100% | 540万円 | 540万円 | 378万円 | 2,962万円 | 3,502万円 |
| 80% | 540万円 | 0円 | 0円 | 2,140万円 | 2,680万円 |
| 50% | 1,350万円 | 0円 | 0円 | 770万円 | 2,120万円 |
| 30% | 1,890万円 | 0円 | 0円 | 180万円 | 2,070万円 |
| 0% | 2,700万円 | 0円 | 0円 | 0円 | 2,700万円 |
表の見方:100%渡した場合だけ配偶者が540万円を納税するため、控除378万円が使えます。しかし合計は3,502万円で最も重くなります。控除378万円を得るために1,432万円多く払う計算です。
重要ポイント:80%以下の配分では、配偶者の納税額が軽減で0円になるため控除も0円です。相次相続控除を使えるかどうかは、配分を決める理由にはなりません。控除は使えたら使う制度であって、そのために配分を歪めるものではないと考えてください。
計算ロジック:控除額はA×min(1, C÷(B−A))×D÷C×(10−E)÷10で計算します。
Aは配偶者が一次相続で納めた540万円、Bは配偶者が取得した純資産2億円、Cは二次相続の純資産合計2億円、Dは各相続人の純資産、Eは経過年数3年です。
C÷(B−A)が1を超えるため1として計算し、540万円×0.7=378万円となります。
相次相続控除が実際に発生するのは、配偶者の取得額が税額軽減の上限を超えたケースに限られます。
上限は1億6,000万円か法定相続分相当額のいずれか多い金額です。遺産2億円で配偶者が全部取得すると、上限1億6,000万円を超えた4,000万円分に課税されます。
逆に言えば、遺産が3億2,000万円以下で配偶者の取得を法定相続分以内に収めれば、配偶者の納税は発生せず控除も発生しません。多くの家庭ではこのパターンになります。
相次相続控除の計算方法や適用の落とし穴は、専門の記事で詳しく解説しています。


渡す金額が決まったら、次は何を渡すかを決めます。同じ金額でも財産の種類によって二次相続での結果が変わります。将来値上がりするもの、収入を生むもの、特例が使えるものはそれぞれ扱いが違います。
自宅の土地には小規模宅地等の特例があり、330平方メートルまで評価額を80%減額できます。
一次相続で配偶者が相続する場合、この特例は無条件で使えます。同居していなくても、取得後に売却しても適用されます。
一方で二次相続で子が相続する場合は要件があります。同居していたか、持ち家がない状態が続いているかを問われます。子が持ち家を持っている場合、二次相続では特例が使えません。
| 誰が相続するか | 一次相続 | 二次相続 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 無条件で適用 | 該当なし |
| 同居している子 | 申告期限まで居住・保有 | 申告期限まで居住・保有 |
| 別居で持ち家がない子 | 家なき子の要件 | 家なき子の要件 |
| 別居で持ち家がある子 | 適用できない | 適用できない |
表の見方:配偶者だけが無条件です。子は一次でも二次でも同じ要件を満たす必要があります。持ち家のある別居の子はどちらでも使えません。
重要ポイント:子が特例を使えるなら一次相続で子に自宅を相続させる方が有利です。評価額が80%下がった状態で子に移り、二次相続では課税対象から外れます。
逆に子が要件を満たせない場合は、配偶者が相続して二次相続で誰かが要件を満たせる状態を作る方が有利になることもあります。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
小規模宅地等の特例の4類型の要件と計算方法は、下記の記事で解説しています。

自宅を子に相続させたいが配偶者の住む場所を確保したい場合、配偶者居住権を使う方法があります。
所有権を子が取得し、住む権利だけを配偶者が取得します。配偶者居住権は配偶者の死亡で消滅するため、二次相続では課税対象になりません。
ただし居住権の評価額は配偶者の年齢によって変わり、設定と登記の手続きも必要です。使うべきかの判断は個別の事情によります。

賃貸物件や配当のある株式を配偶者が相続すると、その収入が配偶者の財産として積み上がります。積み上がった分は二次相続で課税されます。
年間家賃収入が300万円の物件なら、10年で3,000万円が配偶者の財産に加算されます。これは判定表で計算した最適配分を後から崩す動きになります。
値上がりが見込まれる財産も同じです。一次相続時の評価額で子に移しておけば、その後の値上がり分は二次相続の課税対象になりません。
【配偶者に渡すのに向く財産】
現金・預貯金、収入を生まない自宅、評価が上がりにくい財産。生活費として取り崩せるものが望ましいです。
【子に渡すのに向く財産】
賃貸物件、配当の高い株式、開発予定地など値上がりが見込まれる不動産、小規模宅地等の特例を使える自宅。
重要ポイント:配偶者に現金を渡すのは、生活費として取り崩されて自然に減っていくためです。取り崩した分は二次相続の課税対象から外れます。増える財産を配偶者に渡し、減る財産を子に渡すのが最も不利な組み合わせです。

配分の方針が決まっても、実行できなければ意味がありません。二次相続対策が崩れる原因は、税額の計算ミスよりも手続き上の事情にあります。実際に起きる3つの失敗と、その回避方法を確認します。
一次相続の遺産分割協議には配偶者本人の意思表示が必要です。認知症などで判断能力を失うと、協議に参加できません。
この場合は成年後見人を選任する必要があります。選任には数か月かかり、後見人は配偶者の利益を最優先するため法定相続分を下回る配分に同意しないのが原則です。
つまり判定表で出した最適配分は実行できなくなります。対策は判断能力があるうちに準備することです。
【判断能力を失った後にできなくなること】
家族信託と相続税の関係と課税のタイミングは、下記の記事で解説しています。

一次相続の分割協議がまとまらないうちに配偶者が亡くなると、手続きが一気に複雑になります。
一次相続の相続人の地位が子に引き継がれ、一次と二次の両方を同時に処理することになります。さらに未分割のままでは配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も使えません。
期限内に分割できない場合は、申告期限後3年以内の分割見込書を提出しておくことで後から特例を適用できます。この書類の提出を忘れると特例が確定的に使えなくなります。

一次相続では配偶者が調整役になります。二次相続ではその調整役がいません。
一次相続で子の間に配分差をつけた場合、二次相続でその差を埋めようとして対立が起きます。税額を最小にする配分は、必ずしも子の間で均等になりません。
対策は配偶者が遺言書を作成しておくことです。一次相続の配分理由を記録し、二次相続でどう分けるかを指定しておけば対立を防げます。
【チェックリスト|実行前に確認する項目】
重要ポイント:最も期限が厳しいのは配偶者の判断能力です。一次相続の申告期限10か月より前に、配偶者の遺言書と今後の方針を決めておく必要があります。一次相続の手続きと並行して進めてください。
遺言書で特例を活かす書き方と申告への影響は、下記の記事で解説しています。


二次相続対策は、税理士によって提案内容が大きく変わる領域です。一次相続の申告だけを請け負う事務所は、納税額を0円にする提案をしがちです。
二次相続まで計算に入れるかどうかで、家族の合計負担が1,000万円以上変わります。複数の事務所から見積りを取り、提案の内容そのものを比較してください。
二次相続対策は判断の余地が大きく、同じ財産でも税理士の提案によって合計税額が変わります。実績のある税理士が必要な理由は次のとおりです。
【二次相続対策で実績が問われる理由】
具体例で確認します。相続財産1億円・配偶者の固有財産3,000万円・子2人のケースで、A税理士は一次相続の納税を0円にする提案をしました。この場合の合計税額は1,360万円です。
B税理士は二次相続まで試算し、配偶者の取得を12%に抑える提案をしました。この場合の合計は554万円です。同じ財産で806万円の差が出ます。
見積りを比較する目的は報酬額の比較ではありません。提案内容から実務力を判定することです。3つの判定ポイントを確認してください。
判定ポイント1|二次相続の試算が見積りに含まれているか:「一次相続の申告一式」だけの見積りと、「二次相続を含む配分シミュレーション」が明記された見積りを比べます。
A事務所は一次のみ、B事務所は配分3パターンの試算を含む、という差が見えれば、後者の方が二次相続の実務経験が豊富と判定できます。
判定ポイント2|配偶者の財産を聞いてくるか:初回相談で配偶者自身の財産を質問してくる事務所は、固有財産が最適配分を左右することを理解しています。被相続人の財産だけを聞いて配分を提案する事務所は、この補正を計算に入れていません。
判定ポイント3|提案するパターン数:A事務所は「法定相続分どおり」の1案、B事務所は「全部配偶者・法定相続分・最適配分」の3案以上を提示、という違いが出ます。パターン数が多い方が、比較して選ぶ材料を用意できていると判定できます。
一次相続の申告を1つの事務所だけに任せ、二次相続まで検討しないまま進めた場合のリスクを整理します。
【検討しないまま進めるリスク】
最も重いのは最後の項目です。遺産分割は一度成立すると原則としてやり直せません。やり直せたとしても、財産の移動が贈与とみなされて贈与税がかかります。
判断の期限は一次相続の申告期限である10か月です。この期間内に複数の事務所から提案を取り、比較してから決めてください。
相続の概要を整理する
被相続人の財産の内容と概算額、相続人の構成と年齢、遺言の有無を整理します。二次相続対策では配偶者自身の財産額も必ず整理してください。
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一括見積り・相談サービスに依頼する
希望内容として「相続税申告・二次相続を含む配分シミュレーション・相続税の節税」を明記し、3〜5社への同時打診を依頼します。
不動産がある場合は所在地と広さを記載してください。財産の種類と相続人の人数を正確に伝えることで見積りの精度が上がります。フォームの記入は5分程度です。
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見積りと初回相談を受ける
各事務所から提案内容・試算した相続税額・報酬額が記載された見積りが届きます。気になる事務所と初回相談を実施してください。
相談では「配偶者にいくら渡すのが最適か」を必ず質問してください。金額で答えられるか、根拠を示せるかで実務力が分かります。
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税理士を選定・正式依頼する
提案内容の質・説明の丁寧さ・報酬の納得性で選定します。相続開始から7か月以内に決定してください。残り3か月で財産評価と申告書作成を終える必要があります。
合計で見ると多くのケースで損になります。遺産2億円・子2人・配偶者の固有財産0円なら、全部渡した場合の合計は3,880万円です。最適な31%なら2,063万円で、差は1,817万円です。
ただし配偶者が受け取る財産と固有財産の合計が二次相続の基礎控除以内なら、どう分けても税額は変わりません。子2人なら4,200万円が境界です。
この金額以下の遺産であれば、配偶者に全部渡しても不利にはなりません。
割合ではなく金額で決めてください。目安は「二次相続の基礎控除−配偶者の固有財産」です。子2人なら4,200万円から配偶者自身の財産を引いた額が上限になります。
配偶者の固有財産が3,000万円なら1,200万円です。子1人なら3,600万円、子3人なら4,800万円が起点になります。
生命保険で子を受取人にしている場合は、500万円×子の人数の非課税枠を上限に加算できます。
この金額が配偶者の生活費として足りるかを確認し、足りない場合は税額よりも生活を優先してください。
最適な配分が大きく下がります。遺産1億円・子2人のケースでは、固有財産0円なら42%が最適ですが、1,000万円あると32%、2,000万円で22%、3,000万円で12%まで下がります。
5,000万円を超えると最適は0%で、配偶者に渡さないのが正解になります。固有財産1,000万円ごとに約10%下がる関係です。遺産2億円なら刻みは約5%です。
多くの解説記事は固有財産0円を前提に最適値を示しているため、その数字をそのまま使うと最適値から大きくずれます。
いいえ、逆効果です。相次相続控除は前の相続で被相続人が相続税を納めていることが要件です。配偶者の税額軽減で納税額が0円になった場合、国税庁のQ&Aでも「相次相続控除額は算出されません」と明記されています。
遺産2億円・子2人で3年後に二次相続が発生する前提なら、配偶者に全部渡した場合は控除378万円が使えますが合計は3,502万円です。30%に抑えた場合は控除0円でも合計2,070万円です。
控除378万円を得るために1,432万円多く払う計算になります。控除は使えたら使う制度で、そのために配分を変えるものではありません。
一次相続の遺産分割協議書に押印する前です。分割が成立すると原則としてやり直せず、やり直しても財産の移動が贈与とみなされて贈与税がかかります。判断の期限は一次相続の申告期限である10か月です。
ただし配偶者の判断能力という別の期限もあります。認知症などで判断能力を失うと遺産分割協議に参加できなくなり、成年後見人が選任されると法定相続分を下回る配分に同意しないのが原則です。
配偶者の遺言書作成や生前贈与も同時にできなくなります。一次相続の手続きと並行して進めてください。
二次相続対策の核心は、一次相続で配偶者にいくら渡すかという1点に集約されます。この記事で扱った内容を整理すると次のとおりです。
ただしこれは税額を最小にする金額であって、必ずそう分けるべき金額ではありません。配偶者の生活費と子の納税資金を先に確保し、余裕がある範囲で近づけてください。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年8月時点の税制に基づいて作成しています。相続税法の改正により内容が変更される場合があります。最新の制度については国税庁のウェブサイトまたは税理士にご確認ください。