「夫婦間の相続は税金がかからない」——この認識は半分正しく、半分間違いです。
配偶者が遺産を相続する場合、「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」という制度により1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。
しかし「税額がゼロでも申告が必要」「法律婚でなければ適用されない」「二次相続で子への税負担が激増するリスクがある」など、知らないと損をする重要なポイントが多くあります。
本記事では配偶者控除の仕組み・計算方法・適用要件から、一次・二次相続のトータル税負担シミュレーション、夫婦間の生前贈与(おしどり贈与)の活用法、よくある失敗パターンまで詳しく解説します。
▼ この記事の3行まとめ
- 配偶者は1.6億円または法定相続分まで相続税がかからないが、税額ゼロでも申告が必要
- 配偶者控除を最大限使うと二次相続で子への税負担が激増するリスクがある。トータル設計が不可欠
- 事実婚・内縁関係には配偶者控除は適用されない。戸籍上の婚姻が絶対条件
夫婦間の相続税の基本|「かからない」は誤解

夫婦間の相続税について最初に押さえるべきポイントは「相続税の対象にはなるが、配偶者控除によって税額がゼロになるケースが多い」という点です。
「夫婦間は相続税がかからない」という言い方は、配偶者控除の効果を表現したものであって、制度として相続税の課税対象外になるわけではありません。
夫婦間の相続税の基本的な流れ
配偶者が遺産を受け取る場合、まず通常の相続税計算を行い、その後「配偶者の税額軽減」を適用して最終的な納税額を算出します。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| STEP1 | 遺産総額と基礎控除を計算 | 基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人数 |
| STEP2 | 課税遺産総額を法定相続分で按分して相続税総額を計算 | 配偶者の法定相続分は1/2(子がいる場合) |
| STEP3 | 各人の実際の取得割合で按分して各人の税額を算出 | 実際の遺産分割に基づく |
| STEP4 | 配偶者の税額軽減を適用して配偶者の最終税額を確定 | 1.6億円または法定相続分まで0円 |
| STEP5 | 申告書を税務署に提出 | 税額ゼロでも申告は必須 |
この流れで重要なのは、配偶者控除の適用後に税額がゼロになる場合でも申告書の提出が必要なことです。申告なしに自動的に非課税になるわけではありません。申告期限(10ヶ月以内)を過ぎると配偶者控除が使えなくなるリスクがあります。
夫婦間の相続税が問題になる3つのケース
| ケース | 状況 | 相続税の影響 |
|---|---|---|
| ケース① | 遺産が基礎控除以下(例:法定相続人2名で遺産4,000万円) | そもそも相続税なし(配偶者控除の出番なし) |
| ケース② | 遺産が基礎控除超・配偶者の取得分が1.6億円以下 | 配偶者分は0円・子どもの分は課税 |
| ケース③ | 遺産が多く配偶者が1.6億円超を取得 | 超過分に相続税がかかる |
配偶者の税額軽減の仕組みと計算方法

配偶者の税額軽減(配偶者控除)は、配偶者が実際に取得した遺産のうち「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは相続税がかからない制度です。
控除限度額の決まり方
| ケース | 配偶者の法定相続分 | 控除限度額 | 配偶者が全額相続した場合 |
|---|---|---|---|
| 配偶者のみ(子なし) | 100% | 遺産全額(100%) | 全額0円 |
| 配偶者+子1名 | 1/2 | max(1.6億円, 遺産の1/2) | 遺産が3.2億円超なら一部課税 |
| 配偶者+子2名 | 1/2 | max(1.6億円, 遺産の1/2) | 遺産が3.2億円超なら一部課税 |
| 配偶者+親 | 2/3 | max(1.6億円, 遺産の2/3) | 遺産が2.4億円超なら一部課税 |
つまり遺産が3億2,000万円以下(子がいる場合)であれば、配偶者が全額相続しても配偶者の相続税はゼロになります。
具体的な計算例(遺産1億円・配偶者+子1名)
| 計算ステップ | 金額 |
|---|---|
| 遺産総額 | 1億円 |
| 基礎控除(3,000万円+600万円×2名) | ▲4,200万円 |
| 課税遺産総額 | 5,800万円 |
| 相続税の総額(法定相続分で計算) | 770万円 |
| 配偶者の取得割合(法定相続分1/2) | 385万円 |
| 配偶者の税額軽減(5,000万円 ≤ 1.6億円 → 全額控除) | ▲385万円 |
| 配偶者の最終納税額 | 0円 |
| 子の最終納税額 | 385万円 |
この例では配偶者が法定相続分通りに取得した場合、配偶者の税額はゼロになります。ただし税額がゼロでも申告書の提出が必要です。
配偶者控除の適用要件5つ|失敗ケース付き詳細解説

配偶者控除は「自動的に適用される」ものではなく、5つの要件を全て満たした上で申告書を提出する必要があります。要件を満たさなかった場合は配偶者控除が使えず、多額の相続税が発生します。
要件①|戸籍上の法律婚であること
要件の内容:配偶者控除の適用を受けられるのは「法律上の配偶者(婚姻届を提出した配偶者)」のみです。
| 関係の種類 | 配偶者控除の適用 | 備考 |
|---|---|---|
| 法律婚(婚姻届提出済み) | 適用できる | 婚姻期間の長短は問わない |
| 事実婚・内縁関係 | 適用できない | 婚姻届の提出がないため |
| 離婚後の元配偶者 | 適用できない | 相続発生時に婚姻関係がないため |
| 婚姻届提出直後(短期婚) | 適用できる | 婚姻期間の制限なし |
| 外国人配偶者(婚姻届提出済み) | 適用できる | 国籍は問わない |
よくある失敗ケース:
長年同居していたが婚姻届を提出していなかった「事実婚」のパートナーが配偶者控除を前提に遺産分割を行ったが、適用できないと判明して多額の相続税が発生した事例があります。内縁関係の場合は遺言書による遺贈が唯一確実に財産を渡せる手段ですが、配偶者控除は使えません。
要件②|申告期限(10ヶ月)以内に申告書を提出すること
要件の内容:配偶者控除は申告書を申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに提出することが条件です。
よくある失敗ケース:
「どうせ税額ゼロになるから申告は不要」と思い込み、10ヶ月の申告期限を過ぎてしまった。期限後に申告書を提出しても配偶者控除が認められないケースがあります。税額がゼロであっても必ず申告期限内に申告書を提出してください。
要件③|申告期限内に遺産分割が確定していること
要件の内容:配偶者控除は「配偶者が実際に取得した財産」に基づいて計算されます。申告期限内に遺産分割協議が完了していない財産は、配偶者控除の対象になりません。
| 状況 | 配偶者控除の適用 | 対処法 |
|---|---|---|
| 申告期限内に遺産分割が完了 | 完全に適用できる | — |
| 申告期限内に分割が完了しない(未分割申告) | 原則として適用できない | 「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば後から適用できる |
| 申告期限から3年以内に分割が完了 | 更正の請求で後から適用できる | 分割確定後4ヶ月以内に更正の請求を提出 |
よくある失敗ケース:
相続人間で不動産の扱いについて意見が割れ、遺産分割協議がまとまらないまま申告期限を迎えた。未分割申告をしたが「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出を忘れたため、後から配偶者控除を適用できなかった事例があります。未分割申告をする場合は必ず見込書を同時に提出してください。
要件④|相続税申告書を税務署に提出すること
要件の内容:配偶者控除は申告書の提出が適用の前提条件です。口頭での申告や確定申告では代替できません。
提出先:被相続人(亡くなった方)の住所地を管轄する税務署(配偶者の住所地の税務署ではない点に注意)。
要件⑤|相続を放棄していないこと(実際に財産を取得していること)
要件の内容:相続放棄をした配偶者には配偶者控除が適用されません。実際に財産を取得することが要件です。
ただし相続を放棄しても、遺言による遺贈や生命保険の受取人として財産を受け取る場合は、そちらに配偶者控除が適用されることがあります。相続放棄を検討している場合は税理士・弁護士に相談の上で判断してください。
夫婦間の相続税申告手続き(税額ゼロでも申告必要)

夫婦間の相続で最も重要な手続き上の注意点は「配偶者の相続税がゼロになる場合でも、申告書の提出は必須」という点です。申告書の提出によって配偶者控除が確定するため、申告なしでは控除が適用されません。
申告が必要なケース・不要なケースの判定
| 状況 | 申告の要否 | 理由 |
|---|---|---|
| 遺産が基礎控除以下(配偶者控除も不要) | 原則不要 | そもそも課税対象でない |
| 遺産が基礎控除超・配偶者控除で税額ゼロ | 必要(申告しないと控除が使えない) | 控除の適用には申告が条件 |
| 小規模宅地等の特例を使う場合 | 必要 | 申告書の提出が特例適用の条件 |
| 遺産が基礎控除超・配偶者控除後も子に税額がある | 必要(全員分) | 子の相続税申告が必要 |
申告書の提出に必要な主な書類
| 書類の種類 | 取得場所 |
|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡まで連続したもの) | 市区町村役場 |
| 相続人全員の戸籍謄本・住民票 | 各本籍地の市区町村役場 |
| 遺産分割協議書(実印・印鑑証明書付き) | 自分で作成 |
| 不動産の固定資産税評価証明書・登記簿謄本 | 市区町村・法務局 |
| 預貯金の残高証明書(死亡日時点) | 各金融機関 |
| 配偶者の税額軽減の明細書(申告書第5表) | 税務署・国税庁ウェブサイト |
特に配偶者の税額軽減の明細書(申告書第5表)の記載方法は複雑なため、相続専門の税理士への依頼を強くお勧めします。
一次・二次相続のトータル税負担シミュレーション

配偶者控除を使うと一次相続の税額はゼロに近くなりますが、その後の「二次相続(配偶者が亡くなったとき)」で子への税負担が大きくなるリスクがあります。
一次相続だけを見て判断するのではなく、一次・二次を合わせたトータルで最適化することが重要です。
シミュレーション前提条件
- 遺産総額:2億円
- 相続人:配偶者+子1名
- 二次相続時の遺産:配偶者が一次相続で取得した財産と仮定
プランA|配偶者が全額2億円を相続(配偶者控除を最大利用)
| 一次相続 | 二次相続(子1名に2億円) | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 基礎控除 | 4,200万円 | 3,600万円 | — |
| 課税遺産 | 1億5,800万円 | 1億6,400万円 | — |
| 相続税 | 0円(配偶者控除) | 4,860万円 | 4,860万円 |
プランB|法定相続分通り(配偶者1億円・子1億円)
| 一次相続 | 二次相続(子1名に1億円) | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 基礎控除 | 4,200万円 | 3,600万円 | — |
| 課税遺産 | 1億5,800万円 | 6,400万円 | — |
| 相続税 | 子分:1,670万円 配偶者:0円 | 1,220万円 | 2,890万円 |
プランC|配偶者に6,000万円・子に1億4,000万円
| 一次相続 | 二次相続(子1名に6,000万円) | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 子の一次相続税 | 約2,338万円 | — | — |
| 配偶者の一次相続税 | 0円(配偶者控除) | — | — |
| 二次相続税(子1名に6,000万円) | — | 基礎控除3,600万円→課税遺産2,400万円→310万円 | — |
| 合計 | 約2,648万円 |
3プランの比較まとめ
| プラン | 配偶者の取得 | 子の取得 | 一次+二次合計税額 |
|---|---|---|---|
| A(配偶者が全額) | 2億円 | 0円 | 4,860万円 |
| B(法定相続分1/2) | 1億円 | 1億円 | 2,890万円 |
| C(配偶者に6,000万円) | 6,000万円 | 1億4,000万円 | 約2,648万円 |
プランAとプランCの差は2,212万円にのぼります。「配偶者控除を最大限使う=最も節税になる」という発想は間違いで、二次相続まで含めたトータル設計が最も重要です。最適な配分は財産構成・配偶者の年齢・生活費によって異なるため、税理士への個別シミュレーションが不可欠です。
配偶者控除の最適活用|最適な取得割合の考え方

一次・二次相続のトータル税負担を最小化するために、配偶者の取得割合をどう設定するかは相続設計の核心です。
配偶者の取得割合を決める3つの視点
視点①:配偶者の生活費・老後資金を確保すること(最優先)
節税を優先するあまり、配偶者の生活費が不足する設計にしてはいけません。配偶者が亡くなるまでの生活費・医療費・介護費を試算した上で必要最低限の財産を確保します。生活費の確保が最優先事項で、節税はその次です。
視点②:二次相続の法定相続人の数を把握する
二次相続では配偶者がいないため基礎控除が減ります。一次相続時の法定相続人数と二次相続時の法定相続人数を確認し、基礎控除額の変化を把握します。
視点③:不動産などの特例適用を考慮する
小規模宅地等の特例(自宅の土地評価80%減)は「誰が相続するか」によって適用可否が変わります。配偶者が自宅を相続するか、子が相続するかで特例の使い方が変わるため、二次相続まで含めて最適な分割を設計する必要があります。
「法定相続分通り」が最適とは限らない理由
法定相続分通りに分けることが習慣的に行われますが、最適とは限りません。配偶者の年齢・健康状態・財産の内訳(不動産比率・金融資産比率)によって最適な取得割合は変わります。税理士に「一次・二次のトータルシミュレーション」を依頼し、複数のプランを比較した上で判断することをお勧めします。
夫婦間の生前贈与(おしどり贈与)と相続税

夫婦間の生前贈与には「おしどり贈与」と呼ばれる特例があります。これを活用することで相続税の対象となる財産を生前に圧縮できます。さらに令和6年(2024年)の改正でこの特例が大幅に使いやすくなりました。
おしどり贈与(夫婦間の居住用不動産の贈与特例)の基本
婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産(または居住用不動産を購入するための資金)を贈与した場合、贈与税の基礎控除110万円に加えて最大2,000万円まで贈与税が非課税になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用要件 | 婚姻期間20年以上の法律婚の配偶者への贈与 |
| 対象財産 | 居住用不動産または居住用不動産取得のための金銭 |
| 非課税限度額 | 2,000万円(基礎控除110万円と合わせて合計2,110万円まで非課税) |
| 適用回数 | 同じ配偶者からは一生に1回のみ |
| 手続き | 贈与税の申告書の提出が必要 |
参照元:国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
令和6年改正で「7年加算から除外」になった重要ポイント
令和6年(2024年)1月1日以降の贈与から、おしどり贈与の対象となった居住用不動産は相続開始前7年以内に贈与した場合でも相続財産への加算(7年加算)の対象外になりました。これは非常に重要な改正で、以前は「贈与後7年以内に亡くなると贈与した財産が相続財産に戻される」というデメリットがありましたが、この改正によりそのリスクがなくなりました。
| 項目 | 改正前(令和5年12月31日以前の贈与) | 改正後(令和6年1月1日以降の贈与) |
|---|---|---|
| 7年以内に贈与者が死亡した場合 | 贈与財産が相続財産に加算される | 加算されない(7年加算の対象外) |
| 節税効果 | 不確実(死亡時期によって変わる) | 確実(いつ死亡しても相続財産に戻らない) |
おしどり贈与を活用するメリットと注意点
主なメリット:
- 居住用不動産を生前に配偶者に渡すことで、相続発生時の遺産総額を圧縮できる
- 配偶者が自宅を確実に取得できる(遺産分割の争いを防げる)
- 令和6年改正後は7年加算のリスクなしに使える
注意点:
- 同じ配偶者からは一生に1回のみ(何度も使えない)
- 贈与税の申告書の提出が必要(申告なしには適用されない)
- 贈与した不動産に登録免許税・不動産取得税がかかるため、総コストを計算した上で判断が必要
- 二次相続での小規模宅地等の特例との兼ね合いを検討すること
夫婦間の相続でよくある失敗パターン5つ

失敗①|「申告しなくていい」と思い申告期限を過ぎる
状況:「配偶者には相続税がかからないと聞いたので申告は不要」と判断し、申告期限(10ヶ月)を過ぎてしまった。
結果:期限後申告では配偶者控除の適用が認められないケースがあり、多額の相続税・延滞税・加算税が発生することがあります。
正しい行動:税額がゼロになる場合でも申告期限内に申告書を必ず提出してください。相続が発生したら1ヶ月以内に税理士に相談することをお勧めします。
失敗②|配偶者に全財産を相続させて二次相続で激増
状況:「配偶者には相続税がかからないから」という理由で遺産分割協議において配偶者に全額渡した。数年後、配偶者が亡くなったとき子への税額が4,860万円(遺産2億円の場合)になった。
正しい行動:一次相続と二次相続のトータルシミュレーションを行い、最適な配分を決める。法定相続分通りに分けるだけで数千万円のトータル節税になるケースが多くあります。
失敗③|事実婚のパートナーが配偶者控除を前提に相続手続きを進める
状況:10年以上共に生活していた事実婚のパートナーが「配偶者として相続できる」と思い込み、遺産分割協議に参加しようとした。しかし婚姻届がないため法定相続人でも配偶者控除の対象でもないことが判明した。
正しい行動:事実婚の場合は遺言書による遺贈が財産を渡す唯一の確実な手段です。事実婚のパートナーに財産を残したい場合は、生前に公正証書遺言を作成してください。ただし配偶者控除は適用されないため2割加算の対象になります。
失敗④|遺産分割が決まらないまま申告期限を過ぎる
状況:不動産の扱いについて相続人間で意見が割れ、遺産分割協議がまとまらないまま申告期限が来てしまった。未分割申告をしたが「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し忘れた。
結果:その後に遺産分割が確定したが、配偶者控除を更正の請求で適用できなかった。
正しい行動:未分割申告をする場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書と同時に必ず提出してください。
失敗⑤|配偶者が1.6億円を大幅に超えて相続し過大納税になる
状況:遺産4億円のうち配偶者が4億円全額を相続。「1.6億円まで無税」という知識はあったが「法定相続分(1/2=2億円)まで無税」というルールを知らなかった。配偶者の取得4億円のうち2億円(控除上限)を超えた2億円分に相続税がかかった。
正しい行動:控除の上限は「max(1.6億円, 法定相続分相当額)」です。遺産が多い場合は法定相続分相当額が1.6億円を超えることがあります。配偶者の取得額の上限を正確に計算するために税理士への相談が不可欠です。
事実婚・内縁関係・離婚後の相続税の扱い

法律婚でない関係の場合、配偶者控除の適用はありません。それぞれのケースで利用できる制度が異なります。
事実婚・内縁関係の場合
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法定相続人になるか | ならない |
| 配偶者控除の適用 | なし |
| 財産を受け取る方法 | 遺言書による遺贈のみ(法定相続はできない) |
| 相続税の扱い | 2割加算の対象(一親等の血族・配偶者以外のため) |
| 生前贈与の活用 | 暦年贈与・相続時精算課税の活用は可能 |
事実婚のパートナーに財産を残したい場合は、早めに公正証書遺言を作成することが不可欠です。遺言書がない場合は財産の一切を受け取れません。
離婚後の元配偶者の場合
離婚した元配偶者は法定相続人ではなく、配偶者控除も適用されません。ただし離婚後も子どもとの親子関係は続くため、元配偶者との間の子は法定相続人として相続権を持ちます。
税理士に依頼すべき理由と費用対効果

夫婦間の相続は「配偶者控除によって税額がゼロになる」という単純なケースでも、二次相続の設計・小規模宅地等の特例との組み合わせ・おしどり贈与の活用など、専門的な判断が求められる場面が多くあります。
依頼を特に推奨するケース
| 状況 | なぜ税理士が必要か | 対策の複雑度 |
|---|---|---|
| 遺産に不動産が含まれる | 土地評価の補正・小規模宅地等の特例との最適な組み合わせ | 高 |
| 遺産が2億円超 | 一次・二次のトータルシミュレーションが必要 | 高 |
| 遺産分割が決まっていない | 見込書の提出・後からの更正の請求の設計が必要 | 高 |
| おしどり贈与を活用したい | 登録免許税・不動産取得税のコスト計算・小規模宅地特例との兼ね合い | 中〜高 |
| 事実婚で遺言書を作成したい | 遺言書の内容設計・公正証書作成のサポート | 中 |
費用の目安と費用対効果
| 依頼の内容 | 費用の目安 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 相続税申告(配偶者控除適用) | 遺産額の0.5〜1.0% | 正確な申告・申告漏れリスクの回避 |
| 一次・二次相続のトータルシミュレーション | 10万〜30万円 | 数百万〜数千万円のトータル節税 |
| おしどり贈与のコンサルティング | 5万〜20万円 | 7年加算リスクなしの資産移転 |
無料相談で確認すべき質問リスト
初回の無料相談では以下を確認することで、最適な設計の方向性がわかります。
- 「一次・二次相続のトータルシミュレーションをしてもらえますか?」
- 「配偶者の最適な取得割合はいくらですか?」
- 「おしどり贈与を活用した場合としない場合を比較してもらえますか?」
- 「小規模宅地等の特例は適用できますか?誰が相続するのが最適ですか?」
- 「遺産分割協議書の作成もサポートしてもらえますか?」
よくある質問(FAQ)
Q. 夫婦間の相続は相続税がかかりませんか?
「かからないケースが多い」が正確な答えです。配偶者の税額軽減により、配偶者が取得した財産が「1億6,000万円または法定相続分相当額」以下であれば相続税はかかりません。しかし税額がゼロでも申告書の提出は必要です。また遺産が非常に多い場合は超過分に相続税がかかります。
Q. 配偶者控除を使うと申告は不要ですか?
不要ではありません。配偶者控除は申告書を提出することで初めて適用される制度です。税額がゼロになる場合でも申告期限(10ヶ月)内に必ず申告書を提出してください。申告なしでは自動的に非課税になるわけではありません。
Q. 内縁の妻(夫)にも配偶者控除は適用されますか?
適用されません。配偶者控除は戸籍上の法律婚の配偶者のみに適用されます。内縁関係・事実婚のパートナーは法定相続人でもないため、遺言書による遺贈が財産を渡す唯一の方法です。ただし遺贈を受けた内縁のパートナーには2割加算が適用されます。
Q. 配偶者に全財産を相続させれば一番節税になりますか?
一次相続のみで見ればそうなりますが、二次相続まで含めたトータルでは配偶者に全額渡すプランが最も税負担が重くなるケースが多くあります。遺産2億円の場合、配偶者が全額相続すると一次・二次合計で4,860万円になりますが、法定相続分通りに分けると2,890万円に抑えられます。
Q. おしどり贈与とは何ですか?令和6年の改正で何が変わりましたか?
おしどり贈与とは、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与した場合に2,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。令和6年(2024年)1月1日以降の贈与から、この特例を使った財産は相続開始前7年以内に贈与しても相続財産への加算(7年加算)の対象外になりました。これにより、贈与後7年以内に亡くなっても贈与した財産が相続財産に戻らなくなり、より確実に活用できます。
Q. 遺産分割が決まらないまま10ヶ月を過ぎた場合、配偶者控除はどうなりますか?
未分割のまま申告期限を迎えた場合でも対処法があります。申告期限内に申告書と同時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、3年以内に遺産分割が確定した時点で更正の請求により配偶者控除を適用できます。この見込書の提出を忘れると後から配偶者控除が使えなくなるため、未分割の場合は必ず税理士に相談してください。
まとめ|夫婦間の相続は「二次相続まで含めたトータル設計」が最重要
配偶者控除の基本について
- 配偶者が取得した財産が「1.6億円または法定相続分相当額」以下であれば相続税はかからない
- 税額ゼロでも申告書の提出は必須。申告期限(10ヶ月)を守ることが最優先
- 内縁・事実婚には適用されない。法律婚が絶対条件
二次相続の設計について
- 配偶者に全財産を渡すと一次相続の税額はゼロになるが、二次相続で子への税負担が激増する
- 一次・二次のトータルシミュレーションを必ず行い、最適な配分を決めてください
今すぐ取るべき行動について
- 配偶者が亡くなったら1ヶ月以内に税理士に相談してスケジュールを確認する
- 遺産分割協議と申告書の提出を10ヶ月以内に完了させることが最重要です
- 事実婚の場合は今すぐ公正証書遺言の作成を検討してください
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断や法律判断を保証するものではありません。具体的な相続対策・申告は、必ず税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。



