


兄弟間の贈与税は、もらった人の1年間の合計が110万円を超えるとかかり、一般税率で計算します。1,000万円をもらうと贈与税は231万円で、親からもらう場合より54万円高くなります。
兄弟姉妹は直系の親族ではないため、親子間で使える特例税率や相続時精算課税、住宅資金の特例は使えません。
一方で、生活費や教育費をその都度渡す分は、兄弟間でも贈与税がかかりません。兄弟姉妹は民法上、互いに扶養する義務があるためです。
よく問題になるのが、親から相続した財産を兄弟で分ける場面です。遺産分割協議で決めた分け方なら贈与になりませんが、協議の後に分け直すと贈与税の対象になります。
渡した相手の兄弟が自分の相続人になる場合は、亡くなる前7年以内の贈与が相続税の計算に足し戻される点にも注意が必要です。
この記事では、兄弟間の贈与税の金額別の早見表と計算方法、贈与税がかからないケース、相続財産の分け直し、兄弟に財産を渡す4つの方法の比較、不動産や貸し借りの注意点を解説します。
▼ この記事の3行まとめ

兄弟間の贈与税は、親子間よりも高い一般税率で計算します。同じ金額でも、410万円を超えると親からもらう場合より税額が高くなります。まず金額別の税額を早見表で確認してください。
贈与税の税率には、一般税率と特例税率の2種類があります。特例税率を使えるのは、父母や祖父母などの直系尊属から、18歳以上の子や孫がもらう場合だけです。
兄弟姉妹は直系尊属ではないため、兄弟間の贈与には年齢に関係なく一般税率が適用されます。夫婦間や、おじ・おばからの贈与も同じ一般税率です。
| もらう相手 | 適用される税率 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 父母・祖父母(もらう人が18歳以上) | 特例税率 | 使える |
| 兄弟姉妹 | 一般税率 | 使えない |
| 夫婦・おじおば・他人 | 一般税率 | 使えない |
表の見方:薄赤の行が兄弟間の贈与です。税率が高い一般税率になるうえ、累計2,500万円まで贈与税がかからない相続時精算課税も使えません。
参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
1年間に兄弟から1回だけもらった場合の贈与税を、金額ごとに並べます。1,000万円で231万円、2,000万円で695万円と、金額が大きいほど負担率が上がります。
| もらった金額 | 兄弟から(一般税率) | 親から(特例税率) | 差額 | 兄弟からの負担率 |
|---|---|---|---|---|
| 110万円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0% |
| 200万円 | 9万円 | 9万円 | 0円 | 4.5% |
| 300万円 | 19万円 | 19万円 | 0円 | 6.3% |
| 500万円 | 53万円 | 48.5万円 | 4.5万円 | 10.6% |
| 700万円 | 112万円 | 88万円 | 24万円 | 16.0% |
| 1,000万円 | 231万円 | 177万円 | 54万円 | 23.1% |
| 1,500万円 | 450.5万円 | 366万円 | 84.5万円 | 30.0% |
| 2,000万円 | 695万円 | 585.5万円 | 109.5万円 | 34.8% |
| 3,000万円 | 1,195万円 | 1,035.5万円 | 159.5万円 | 39.8% |
表の見方:左から2列目が兄弟からもらった場合の税額です。黄色の行は相談の多い金額で、2,000万円を兄弟からもらうと、3分の1以上が贈与税になります。
重要ポイント:300万円までは一般税率と特例税率の税額が同じです。差が出るのは、基礎控除後の金額が300万円を超える部分からです。
計算ロジック:贈与税=(もらった金額-110万円)×税率-控除額です。1,000万円なら(1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円、親からなら890万円×30%-90万円=177万円です。負担率は税額÷もらった金額です。
同じ金額でも、何年かに分けて贈与すると、税率の低い区分を毎年使えます。1,000万円を一度に渡すと231万円、5年に分けると45万円です。
| 渡し方 | 1,000万円の場合 | 2,000万円の場合 |
|---|---|---|
| 一度に贈与する | 231万円 | 695万円 |
| 2年に分ける | 106万円(年500万円) | 462万円(年1,000万円) |
| 4年に分ける | 56万円(年250万円) | 212万円(年500万円) |
| 5年に分ける | 45万円(年200万円) | 167.5万円(年400万円) |
| 10年に分ける | 0円(年100万円) | 90万円(年200万円) |
表の見方:税額は各年の贈与税の合計です。2,000万円でも10年に分ければ90万円で、一度に渡す場合の7分の1以下になります。
計算ロジック:1年あたりの金額で(金額-110万円)×税率-控除額を計算し、年数を掛けています。年250万円なら140万円×10%=14万円で、4年分は56万円です。年400万円なら290万円×15%-10万円=33.5万円で、5年分は167.5万円です。
重要ポイント:最初から「毎年200万円を5年間」と約束すると、1年目に1,000万円をもらったとみなされることがあります。毎年その都度契約書を作り、金額や時期を変えてください。
兄弟からもらった金額が1年間で110万円以下なら、贈与税はかからず申告も要りません。110万円は兄弟ごとではなく、もらった人が1年間にもらった全員分の合計で判定します。
たとえば同じ年に兄から80万円、姉から50万円をもらうと合計130万円です。110万円を超える20万円に贈与税がかかり、税額は2万円になります。
親や祖父母から同じ年にもらった分も合計に含まれます。家族の複数の人からもらう年は、全員分を足してから判定してください。

兄弟間の贈与税は、もらった財産の評価額を出し、基礎控除を引いて税率を当てるという3つの手順で計算します。現金以外の財産は、売買価格ではなく税法上の評価額で計算します。
現金や預金はそのままの金額ですが、土地や株などは決められた方法で評価します。評価額の出し方を誤ると、税額が大きくずれます。
| 財産 | 評価の方法 |
|---|---|
| 現金・預貯金 | もらった金額そのまま |
| 土地 | 路線価×面積(路線価のない地域は固定資産税評価額×倍率) |
| 建物 | 固定資産税評価額 |
| 上場株式 | 贈与の日の終値と、その月・前月・前々月の終値の月平均のうち最も低い額 |
| 車・貴金属 | 同じものを買う場合や売る場合の時価 |
表の見方:土地の路線価は売買価格の8割程度が目安で、建物は固定資産税評価額で計算するため、現金でもらう場合より評価額が低くなることが多くあります。
1年間にもらった評価額の合計から基礎控除110万円を引き、一般税率の速算表に当てます。税率を掛けたあと、控除額を差し引くのを忘れないでください。
| 基礎控除後の金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | なし |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
表の見方:兄弟間の贈与で使うのはこの一般税率の表だけです。親子間で使う特例税率の表と取り違えないでください。
計算ロジック:500万円をもらった場合、500万円-110万円=390万円は「400万円以下」の欄に当たります。390万円×20%-25万円=53万円が贈与税です。
同じ年に親から(特例税率)、兄弟から(一般税率)もらった場合は、それぞれの税率で全体を計算してから按分します。合計額を2つの税率で計算し、もらった金額の割合で分けて足すのが国税庁の示す方法です。
| 手順 | 計算(兄から100万円・父から400万円) |
|---|---|
| 1.全体を一般税率で計算 | (500万円-110万円)×20%-25万円=53万円 |
| 2.兄からの分の割合を掛ける | 53万円×100万円÷500万円=10.6万円 |
| 3.全体を特例税率で計算 | (500万円-110万円)×15%-10万円=48.5万円 |
| 4.父からの分の割合を掛ける | 48.5万円×400万円÷500万円=38.8万円 |
| 贈与税 | 10.6万円+38.8万円=49.4万円 |
表の見方:黄色の行が納める贈与税です。兄からの100万円も父からの400万円も、別々に110万円を引くことはできません。
重要ポイント:父からの贈与が特例税率になるのは、もらう人がその年の1月1日に18歳以上の場合です。父からの分を特例税率で申告するときは、戸籍謄本などで親子関係を示します。
参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
110万円を超えた年は、もらった人が翌年2月1日から3月15日までに申告し、同じ期限までに納税します。申告するのはもらった兄弟の側で、あげた側ではありません。
提出先は、もらった人の住所地を管轄する税務署です。e-Taxでも提出でき、国税庁の作成コーナーで申告書を作れます。
期限を過ぎると無申告加算税と延滞税がかかります。毎年110万円以下で贈与するときの申告の要否と注意点は、下記の記事で解説しています。


兄弟間のお金のやり取りでも、贈与税がかからない場合があります。生活費や教育費をその都度渡す分は、金額にかかわらず非課税です。
もらった人の1年間の合計が110万円以下なら、贈与税はかかりません。申告も不要ですが、振込の記録と贈与契約書は残しておいてください。
毎年110万円ずつ渡すと、10年で1,100万円を贈与税なしで移せます。ただし最初から総額を約束していると、定期贈与として一度に課税されるおそれがあります。
民法では、兄弟姉妹は互いに扶養する義務がある親族です。そのため、兄弟の生活費や教育費を必要な都度渡す分は、贈与税がかかりません。
【贈与税がかからない生活費・教育費の例】
注意したいのは、まとめて渡して預金や投資に回した場合です。必要な都度ではなくなるため、その分は贈与税の対象になります。
重要ポイント:非課税になるのは「通常必要と認められる」範囲です。兄弟の家の購入資金や車の代金は生活費に当たらず、贈与税がかかります。
兄弟の結婚祝いや出産祝い、入院の見舞金、香典は、社会通念上相当な金額なら贈与税がかかりません。常識の範囲を超える高額なお祝いは、贈与税の対象になりえます。
結婚祝いとして数百万円を渡すような場合は、祝い金ではなく贈与とみられます。金額が大きい場合は、110万円の基礎控除の範囲に収めるか、申告を前提に渡してください。
親から相続した財産を、兄弟で話し合って分けるのは相続です。遺産分割協議で決めた分け方なら、誰が多く取っても贈与税はかかりません。ただし、協議が終わった後に分け直すと贈与になります。分け方を決める順番が、税金の有無を分けます。

親から相続した財産を兄弟で分けるときは、分け方を決める順番で税金が変わります。遺産分割協議で決めれば相続、協議の後に動かせば贈与です。
相続財産を相続人に振り分けることを遺産分割といいます。現物を分けるだけでなく、代償金を払う方法や、売って代金を分ける方法も遺産分割に含まれます。協議書に書いた分け方なら、贈与税はかかりません。
| 分け方 | 贈与税 | ポイント |
|---|---|---|
| 協議書で兄が実家を相続し、弟に代償金を払うと決めた | かからない | 代償分割。弟が受け取る代償金は相続で取得した財産として相続税の対象 |
| 協議書で実家を売り、代金を兄弟で分けると決めた | かからない | 換価分割。代表者の名義で売っても、協議書に分配の割合を書く |
| 兄が1人で相続登記した後、売却代金を弟に分けた(協議書に記載なし) | かかるおそれ | 兄が相続した財産を弟にあげたとみられる |
| 協議が成立した後で「やはり分け直す」 | かかる | 分割のやり直しは相続による取得とされず、贈与や交換になる |
表の見方:黄色の2つは遺産分割の範囲内です。薄赤の2つは、いったん兄のものになった財産を弟に移したとみられ、贈与税の対象になります。
重要ポイント:代償分割も換価分割も、協議書にその内容を書いておくことが前提です。口約束で分けたり、後から書き足したりすると、相続の分け方として認められにくくなります。
参照元:国税庁 第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》関係(19の2-8 分割の意義)
親の家を売って代金を兄弟で分ける場合は、売る前に遺産分割協議書を作ります。「売却して代金を分ける」と分配の割合を協議書に明記してから売るのが基本です。
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重要ポイント:代表者の単独名義で売ると、売却益の譲渡所得も代表者1人のものとみられがちです。協議書で換価分割と割合を示しておけば、各相続人が自分の持分で申告できます。
相続した不動産を売るときの税金と、相続税の一部を取得費に加える特例は、下記の記事で解説しています。

遺産分割協議が成立した後に、兄弟の間で財産を移し直すと、相続ではなく贈与として扱われます。一度決まった分け方を変えると、移した分に一般税率の贈与税がかかります。
| 例 | 移した財産 | 贈与税 |
|---|---|---|
| 兄が相続した預金から、協議の後で弟に300万円を渡した | 現金300万円 | 19万円 |
| 兄が相続した預金から、協議の後で弟に500万円を渡した | 現金500万円 | 53万円 |
| 兄が相続した土地(評価額1,000万円)を、協議の後で弟の名義に変えた | 土地1,000万円 | 231万円 |
表の見方:いずれも兄から弟への贈与として一般税率で計算しています。土地を移すと、贈与税に加えて登録免許税と不動産取得税もかかります。
計算ロジック:300万円は300万円-110万円=190万円が「200万円以下」の欄に当たり、190万円×10%=19万円です。500万円は390万円×20%-25万円=53万円、1,000万円は890万円×40%-125万円=231万円です。
重要ポイント:協議そのものに重大な誤りがあって無効や取消しになった場合は、改めて行う分割が相続として扱われる余地があります。分け直しを考えたら、実行する前に税理士に確認してください。
相続税の申告期限までに遺産分割がまとまらなくても、後から行う最初の分割は相続による取得です。申告期限を過ぎてから分けても、それが初めての分割なら贈与にはなりません。
申告期限までに分けられない場合は、いったん法定相続分で取得したものとして相続税を申告します。分割がまとまったら、各自の取り分に合わせて修正申告や更正の請求をします。
注意したいのは、未分割で申告した後に初めて分けた場合と、一度分けた後でやり直した場合を混同しないことです。前者は相続、後者は贈与として扱われます。
未分割での申告の方法と、分割後に取り戻せる特例は、下記の記事で解説しています。

代償分割で代償金を現金ではなく、自分がもともと持っていた不動産で払うことがあります。この場合、渡した側に譲渡所得税がかかる点に注意が必要です。
自分の不動産を代償金の代わりに渡すことは、その不動産を代償金の額で売ったのと同じに扱われるためです。値上がりしている土地を渡すと、思わぬ所得税がかかります。
代償金を払う側の資金が足りない場合は、分割の方法そのものを見直すことも検討してください。現金で払えない代償分割は、後のトラブルの原因にもなります。

親子間で使える贈与の特例は、兄弟間ではほとんど使えません。兄弟間で使えるのは、年110万円の基礎控除と障害のある兄弟のための信託の特例だけです。
贈与税の特例の多くは、父母や祖父母から子や孫へ、または夫婦の間の贈与に限られています。兄弟姉妹はどちらにも当たりません。
| 特例 | 対象になる関係 | 兄弟間 |
|---|---|---|
| 特例税率 | 父母・祖父母から18歳以上の子や孫 | 使えない |
| 相続時精算課税(累計2,500万円) | 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子や孫 | 使えない |
| 住宅取得等資金の非課税(最大1,000万円) | 父母・祖父母から子や孫 | 使えない |
| 結婚・子育て資金の一括贈与(最大1,000万円) | 父母・祖父母から子や孫 | 使えない |
| 配偶者控除(2,000万円) | 婚姻20年以上の夫婦 | 使えない |
| 基礎控除(年110万円) | 誰からでも | 使える |
| 特定障害者扶養信託(特別障害者6,000万円・その他の特定障害者3,000万円) | 個人から障害のある人へ信託で渡す | 使える |
表の見方:黄色の2つが兄弟間でも使える制度です。兄弟への大きな援助は、贈与税の負担を前提に計画する必要があります。
贈与税の非課税枠の全体像と限度額は、下記の記事で一覧にしています。

援助の原資が親の財産なら、兄を経由せずに親から直接渡すほうが有利です。親から18歳以上の子への贈与なら特例税率や相続時精算課税が使えます。
| 1,000万円を弟に渡す方法 | 贈与税 |
|---|---|
| 兄から弟へ贈与(一般税率) | 231万円 |
| 父から弟へ贈与(特例税率) | 177万円 |
| 父から弟へ贈与(相続時精算課税) | 0円(父の相続のときに相続税で精算) |
表の見方:同じ1,000万円でも、誰から渡すかで贈与税が最大231万円変わります。精算課税を使うと、その父からの贈与は暦年課税に戻せません。
計算ロジック:兄からは(1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円、父からは890万円×30%-90万円=177万円です。精算課税は特別控除2,500万円の範囲なので贈与税はかかりません。
親から子への贈与の計算と使える特例は、下記の記事で解説しています。

兄弟がマイホームを買うときに資金を出しても、住宅取得等資金の非課税は使えません。兄弟からの住宅資金は、110万円を超える分に一般税率の贈与税がかかります。
| 援助の方法 | 贈与税 | ポイント |
|---|---|---|
| 兄が資金を贈与する | かかる(一般税率) | 1,000万円なら231万円 |
| 親が自分の財産から資金を出す | 最大1,000万円まで非課税 | 親から子への住宅資金の特例(2026年12月31日までの贈与) |
| 兄も出資して共有名義で買う | かからない | 兄の出資の割合どおりに持分を登記する |
| 兄が資金を貸す | かからない | 借用書を作り、決めたとおりに返済する |
表の見方:黄色の行は、援助の原資が親の財産である場合に使える方法です。兄の財産で援助するなら、共有名義か貸し付けにすれば贈与税はかかりません。
重要ポイント:共有名義にした兄の持分は兄の財産のままなので、兄が亡くなったときは兄の相続財産になります。持分の割合と資金の出し方が食い違うと、その差が贈与になります。
兄が父にお金を渡し、父から弟に渡したことにする方法は通用しません。誰の財産が実際に移ったかで判断され、兄から弟への贈与として課税されるおそれがあります。
税務署は、預金の出入りや資金の出どころを確認します。兄の口座から父の口座を経て弟の口座へ同じ時期に同じ金額が動いていれば、実質は兄からの贈与とみられます。
親から直接渡す方法が使えるのは、あくまで親自身の財産を渡す場合です。兄の財産を渡したいなら、兄から弟への贈与として正面から計画してください。

兄弟に財産を渡す方法は、生前の贈与だけではありません。渡す時期と方法を変えるだけで、同じ1,000万円でも税額が0円から231万円まで変わります。
兄から弟へ1,000万円を渡すケースで、方法ごとの税金を並べます。兄には妻と子がいて、弟は兄の相続人ではないものとします。
| 方法 | 弟が払う税金 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一度に贈与する | 贈与税231万円 | 翌年3月15日までに申告 |
| 5年に分けて年200万円ずつ贈与 | 贈与税 計45万円 | 毎年契約書を作り、定期贈与とみなされないようにする |
| 10年に分けて年100万円ずつ贈与 | 0円 | 毎年の合計が110万円以下なら申告も不要 |
| 遺言で遺贈する | 相続税(2割加算) | 兄の遺産全体が基礎控除以下なら0円 |
| 生命保険の受取人を弟にする | 相続税(2割加算) | 弟は相続人でないため非課税枠が使えない |
| 時価で売る | 贈与税0円 | 弟に代金が必要。兄に売却益の所得税 |
表の見方:黄色の行は税金の少ない方法の一つですが、10年かかります。一度に渡すと231万円、5年に分けると45万円で、差は186万円です。
計算ロジック:一度に贈与すると(1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円です。年200万円なら(200万円-110万円)×10%=9万円で、5年分は45万円です。
重要ポイント:遺贈や生命保険で弟が兄の財産を受け取ると、亡くなる前7年以内に兄から弟へ贈与した分も相続税の計算に足し戻されます。生前の贈与と組み合わせるときは注意してください。
兄弟に遺言で財産を渡すと、受け取った兄弟に相続税がかかります。兄弟姉妹は配偶者や子と違い、相続税が2割加算されます。
相続税は、兄の遺産全体が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかります。兄に妻と子が2人いれば、基礎控除は4,800万円です。
兄の遺産が基礎控除以下なら、遺贈で受け取っても相続税はかかりません。贈与税より負担が軽くなることが多い方法ですが、兄が亡くなるまで受け取れません。
兄弟が受け取る場合の相続税の計算と2割加算は、下記の記事で解説しています。

兄が保険料を払い、兄が亡くなったときに弟が受け取る生命保険金は、相続税の対象です。弟が兄の相続人でなければ、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠は使えません。
非課税枠を使えるのは、保険金を受け取った人が相続人の場合だけです。兄に子や親がいて弟が相続人にならないなら、保険金の全額が課税の対象になり、2割加算もかかります。
一方、兄に子も親もいなければ弟が相続人になり、非課税枠を使えます。兄の家族構成によって結論が変わるため、受取人を決める前に確認してください。
生命保険金などのみなし相続財産と非課税枠の計算は、下記の記事で解説しています。

4つの方法は、渡したい時期と兄の家族構成で選びます。今すぐ必要なら贈与、急がないなら分割贈与や遺贈が基本の考え方です。
| 状況 | 向いている方法 |
|---|---|
| 弟が今すぐまとまったお金を必要としている | 贈与(申告を前提に)または時価での売買 |
| 急がず、10年以上かけられる | 年110万円以下の分割贈与 |
| 兄の遺産が基礎控除以下に収まる見込み | 遺言で遺贈 |
| 兄に子も親もいない(弟が相続人になる) | 生命保険の受取人を弟にする(非課税枠が使える) |
表の見方:黄色の行が税負担の最も軽い方法です。どの方法でも、兄の相続人の遺留分を侵さない配分にする必要があります。

兄弟間で土地や家を贈与すると、贈与税のほかに登記と取得の税金もかかります。評価額が110万円以下で贈与税が0円でも、登録免許税と不動産取得税は別にかかります。
不動産を贈与でもらうと、もらった兄弟に次の4つの税金がかかります。登録免許税と不動産取得税は、固定資産税評価額をもとに計算します。
| 税金 | 計算 | いつ払うか |
|---|---|---|
| 贈与税 | (評価額-110万円)×一般税率-控除額 | 翌年2月1日〜3月15日 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額×2% | 名義変更の登記のとき |
| 不動産取得税 | 宅地は固定資産税評価額×1/2×3%、住宅は×3%(2027年3月31日まで) | 登記の数か月後に通知 |
| 印紙税 | 贈与契約書1通につき200円 | 契約書の作成時 |
表の見方:登録免許税は相続なら0.4%ですが、贈与は2%で5倍です。兄弟間の贈与は、贈与税だけでなく登記の費用も相続より重くなります。
重要ポイント:自分が住む中古住宅なら、不動産取得税に建物の控除があります。1997年4月1日以後に新築された住宅なら控除額は1,200万円です。
家の贈与の総コストと、相続で渡す場合との比較は、下記の記事で解説しています。

兄弟の間で不動産を売買しても、時価より著しく低い価格なら、時価との差額をもらったものとみなされます。安く売れば贈与税がかからない、ということにはなりません。
| 例 | 差額 | 贈与税(一般税率) |
|---|---|---|
| 時価2,000万円の土地を1,500万円で売った | 500万円 | 53万円 |
| 時価2,000万円の土地を500万円で売った | 1,500万円 | 450.5万円 |
表の見方:差額を兄からもらったものとして、一般税率で計算しています。差額が大きいほど、贈与税はもらった金額の3割近くまで重くなります。
計算ロジック:差額500万円は(500万円-110万円)×20%-25万円=53万円、差額1,500万円は1,390万円×45%-175万円=450.5万円です。土地の売買では、相続税評価額ではなく通常の取引価格(時価)と比べます。
親から相続した土地を兄弟で共有していると、後から名義を整理したくなることがあります。持分を無償で相手に移すと、移した持分の評価額が贈与になります。
共有をやめる方法には、持分を売る、土地を持分どおりに分けて別々の名義にする、などがあります。持分の割合どおりに土地を分ける共有物分割なら、贈与税はかかりません。
土地の評価と贈与税の計算は、下記の記事で解説しています。


兄弟の間でお金を貸したつもりでも、返済の実態がなければ贈与とみられます。返さなくてよいとした時点で、その金額に贈与税がかかります。
兄が弟に貸したお金の返済を免除すると、免除した金額を弟が兄からもらったものとみなされます。免除した年に、免除した金額が110万円を超えれば贈与税がかかります。
| 免除した金額 | 贈与税(一般税率) |
|---|---|
| 100万円 | 0円 |
| 300万円 | 19万円 |
| 500万円 | 53万円 |
表の見方:ほかにその年にもらった贈与がない場合の税額です。少しずつ返済を免除しても、その年の合計で判定します。
計算ロジック:300万円は(300万円-110万円)×10%=19万円、500万円は(500万円-110万円)×20%-25万円=53万円です。
兄が弟の借金を代わりに返すと、返した金額を弟がもらったものとみなされます。ただし、弟が資力を失って返せない状態のとき、扶養義務者の兄が肩代わりした分は、返済が困難な部分の金額まで贈与税がかかりません。
兄弟姉妹は互いに扶養義務者なので、この扱いを受けられる可能性があります。ただし弟に返済できる財産や収入がある部分は対象になりません。借金の肩代わりは金額が大きくなりやすいため、弟の資産と収入の状況を記録したうえで、事前に税理士に確認してください。
兄弟間の貸し借りを贈与とみられないためには、本当に返すお金であることを書類と実績で示します。借用書を作り、決めたとおりに振込で返済することが基本です。
重要ポイント:利息を取らない貸し借りでは、本来払うべき利息の分が贈与とされることがあります。金額が大きい貸し付けでは、相場に近い利息を決めておくのが安全です。

兄弟への贈与は、贈与した人が亡くなったときの相続にも影響します。受け取った兄弟が相続や遺贈で財産を取得すると、生前の贈与が相続税に足し戻されます。
亡くなる前の一定期間の贈与は、相続や遺贈で財産を取得した人に限って相続税の計算に足し戻されます。弟が兄の財産を何も受け取らなければ、生前の贈与は足し戻されません。
| 兄が亡くなったとき、弟が | 生前の贈与の足し戻し |
|---|---|
| 相続人として財産を相続する(兄に子も親もいない場合など) | 足し戻される |
| 遺言で財産を受け取る | 足し戻される |
| 兄の生命保険金を受け取る | 足し戻される(保険金は遺贈で取得したものとみなされる) |
| 何も受け取らない | 足し戻されない |
表の見方:薄赤の3つは、兄から弟への生前の贈与が相続税の計算に足し戻されます。生命保険金を受け取るだけでも対象になる点を見落としやすいので注意してください。
重要ポイント:足し戻す期間は、2026年中の相続なら亡くなる前3年以内で、2031年1月1日以後の相続から7年以内になります。延びた4年分は合計100万円まで足し戻しません。足し戻した分は、兄弟の場合さらに相続税の2割加算の対象です。
参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
遺留分は、一定の相続人に最低限の取り分を保障する制度です。兄弟姉妹には遺留分がないため、ほかの兄弟から取り戻しを請求されることはありません。
一方、贈与した兄に妻や子がいる場合、その家族には遺留分があります。兄が亡くなる前1年以内の贈与や、兄と弟の双方が家族の遺留分を侵すと知って行った贈与は、取り戻しを請求される対象になります。
| 兄の相続人 | 弟への贈与に遺留分を請求できるか |
|---|---|
| 兄の妻・子 | できる(亡くなる前1年以内の贈与など) |
| 兄の父母(兄に子がいない場合) | できる(同上) |
| ほかの兄弟姉妹 | できない(兄弟姉妹に遺留分はない) |
表の見方:黄色の行のとおり、兄弟どうしの争いでは遺留分は使えません。問題になるのは、贈与した兄の妻や子からの請求です。
参照元:e-Gov法令検索 民法(第1042条・第1044条)
兄弟本人ではなく、兄弟の子である甥や姪に財産を渡すこともあります。甥・姪への贈与も一般税率で、遺贈なら相続税の2割加算の対象です。
| 渡す相手 | 贈与税の税率 | 遺贈したときの相続税 |
|---|---|---|
| 兄弟姉妹 | 一般税率 | 2割加算 |
| 甥・姪 | 一般税率 | 2割加算 |
| 自分の子 | 特例税率(18歳以上) | 2割加算なし |
表の見方:甥・姪は兄弟姉妹と同じ扱いです。兄弟が先に亡くなり、甥・姪が代わりに相続人になる場合も、相続税は2割加算されます。
重要ポイント:110万円の基礎控除は、もらう人ごとに判定します。兄弟と甥・姪の両方に渡せば、それぞれ年110万円まで贈与税はかかりません。
兄弟間の贈与でも、贈与のたびに契約書を作り、振込で渡して記録を残してください。記録がないと、贈与ではなく貸し借りや預け金とみられることがあります。
重要ポイント:兄が弟名義の口座に入金し、兄が通帳を持っていると、贈与ではなく兄の名義預金とみられます。兄が亡くなったとき、兄の相続財産として相続税の対象になります。
名義預金と判断される基準と、名義預金にしない渡し方は、下記の記事で解説しています。

110万円を超えたのに申告しなかった場合は、気づいた時点で期限後申告をしてください。税務署から連絡が来る前に自分から申告すれば、無申告加算税は5%に下がります。
贈与税の時効は、原則として申告期限から6年、偽りや不正があれば7年です。兄弟間の贈与でも、相続税の調査で預金の動きから見つかることがあります。
贈与税の時効の起算日と、時効が成立しないケースは、下記の記事で解説しています。


兄弟間の贈与は、渡す時期と方法を変えるだけで税額が大きく変わります。実行する前に、相続税の対応実績がある税理士に複数の方法を試算してもらってください。
兄弟間の贈与は、贈与税だけでなく、兄の相続や親の遺産分割と一緒に考える必要があります。相続まで見通せる税理士でないと、贈与しないほうがよい場面を見落とします。
【相続税の対応実績がある税理士が必要な理由】
たとえば親の遺産から弟に1,000万円多く渡したい場合、A税理士は遺産分割の後に兄から弟へ贈与する形で申告し、B税理士は遺産分割協議で弟の取り分を増やす形を提案したとします。
Aは贈与税231万円がかかり、Bは贈与税がかかりません。分け方を決める順番だけで231万円の差が出ます。
計算ロジック:Aは兄から弟への1,000万円の贈与として、(1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円です。Bは遺産分割で弟が相続した財産なので贈与税はかからず、相続税の計算に含まれます。
見積りや初回相談では、次の3点を比べてください。報酬の安さより、比べた方法の数で選ぶのが失敗しないコツです。
判定ポイント1:渡し方を何通り試算するか。一括贈与だけの見積りと、分割贈与・遺贈・生命保険まで並べた見積りがあれば、後者のほうが兄弟間の贈与の実務に慣れていると判定できます。
判定ポイント2:遺産分割との関係を確認するか。親の相続の途中かどうかを質問してくる税理士は、贈与にしなくて済む方法を探せると判定できます。
判定ポイント3:相続税の申告実績があるか。兄の相続で足し戻しや2割加算がかかるかまで説明できる税理士は、贈与と相続をつないで判断できると判定できます。
兄弟間の贈与は、実行した後では取り消せません。分け方や渡し方を誤ると、払わなくてよかった贈与税が残ります。
【相談しないまま進めた場合に起きること】
いずれも、渡す前に試算していれば避けられたものです。特に親の遺産分割が終わる前なら、選べる方法が多く残っています。
一括相談・見積りは、次の4つのステップで進みます。親の遺産分割が終わる前に依頼すると、選べる方法が多く残ります。
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重要ポイント:親の遺産分割がまだなら、分割協議書を作る前に相談してください。協議書に書く前なら、贈与にしない分け方を選べます。
もらった兄弟がその年にほかから贈与を受けていなければ、かかりません。贈与税は、もらった人の1年間の合計が110万円を超えた場合にかかるためです。親など別の人からもらった分があれば合計して判定します。
一般税率で、基礎控除後の金額に応じて10%から55%です。兄弟間では、親子間で使える特例税率は使えません。1,000万円をもらうと贈与税は231万円です。
遺産分割協議で決めた分け方なら、贈与税はかかりません。代償金を払う方法や、売って代金を分ける方法も遺産分割に含まれます。協議が成立した後に分け直すと、移した分は贈与として扱われます。
兄弟姉妹は互いに扶養する義務があるため、通常必要な生活費や教育費をその都度渡す分には、贈与税はかかりません。まとめて渡して預金や投資に回すと、その分は贈与税の対象になります。
兄の遺産全体が基礎控除以下なら、遺言で遺贈するほうが相続税もかからず有利なことが多くあります。今すぐ渡す必要があるなら、年110万円以下に分けた贈与が税負担の軽い方法です。どちらが有利かは兄の家族構成と財産額で変わります。
兄弟間の贈与税は、親子間より高い一般税率で計算します。重要なポイントを整理します。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年10月時点の法令に基づいて作成しています。税制改正により内容が変わる場合があります。具体的な判断については、相続税の対応実績がある税理士にご確認ください。