


家(住宅)を無償でもらうと、もらった人に贈与税がかかります。親から子への名義変更も、税務上は「家の贈与」として扱われます。
贈与税の額は、家の売買価格ではなく「評価額」をもとに計算されます。評価額から基礎控除110万円を引き、税率をかけた金額が納税額です。
家のような高額財産の贈与では、税率は最高55%まで上がります。評価額2,000万円の家なら、何も対策しなければ贈与税は500万円を超えます。
一方で、贈与税には相続時精算課税制度や配偶者控除など、大きな非課税枠を持つ制度が複数あります。使えるかどうかで、負担は桁違いに変わります。
注意したいのは、これらの特例の多くが「親子・夫婦」の関係を前提にしていることです。兄弟間の贈与では税率も高く、使える制度がほとんどありません。
また、贈与税以外にも登録免許税や不動産取得税がかかり、相続でもらう場合とは総コストが大きく異なります。
本記事では、家の贈与税の計算方法を評価額の出し方から解説し、評価額別の早見表、税負担を抑える4つの制度を紹介します。
▼ この記事の3行まとめ

最初に全体像を示します。家の贈与税は「評価額・誰からもらうか・どの制度を使うか」の3つで決まります。
家の贈与が話題になるのは、主に次のような場面です。自分がどれに当てはまるかで、読むべき章が変わります。
親子・夫婦のケースは特例で税負担を大きく抑えられます。一方、兄弟間のケースだけは特例がなく、別の戦略(売買・遺贈・相続時の調整)が必要です。
いずれの場面でも共通するのは、「名義を動かす前に試算する」という鉄則です。
この記事では親子・夫婦・兄弟の3つの関係を軸に、それぞれの最適な渡し方まで整理していきます。
家をもらったときの贈与税は、次の3つの要素で決まります。
同じ家でも、この組み合わせしだいで贈与税は数百万円にもゼロにもなります。
「家をもらったらいくら?」の答えは一律ではなく、自分のケースを3要素に当てはめて初めて分かるのです。
実務での失敗の多くは、この3要素を確認しないまま名義変更を先に進めてしまうことから生まれています。
重要ポイント:贈与税を計算する前に名義変更(登記)を済ませてしまうと、後から「こんなにかかると知らなかった」と後悔しても取り消せません。必ず試算が先、登記は後です。
贈与税の負担を分けるのが、贈与する人ともらう人の関係です。
親や祖父母から18歳以上の子・孫への贈与なら、低めの特例税率が適用され、相続時精算課税や住宅取得等資金の特例も選択肢に入ります。
婚姻20年以上の夫婦間なら、居住用不動産の贈与に2,000万円の配偶者控除が使えます。
一方、兄弟姉妹の間の贈与は一般税率が適用され、主要な特例はほぼすべて使えません。
「誰からもらうか」は変えられませんが、渡し方(贈与・売買・遺贈)は選べます。関係性ごとの最適解は後の章で解説します。
家の承継では、生前贈与だけが選択肢ではありません。相続でもらう場合と比べると、税負担の構造がまったく違います。
贈与は、贈与税に加えて登録免許税が評価額の2.0%、不動産取得税が原則3%かかります。
相続なら、登録免許税は0.4%と5分の1で、不動産取得税はかかりません。「今もらう」ことには、明確なコスト差というデメリットがあります。
それでも贈与が有利になるケースはあります。どちらが得かの判断は、後半の総コスト比較で確認してください。
重要なのは、この比較を「名義を動かす前」に行うことです。登記後に気づいても、支払った税金は戻りません。
重要ポイント:「早く名義を移したい」という気持ちだけで贈与を選ぶのは危険です。目的(争族対策・住み替え・資金援助)によって、最適な渡し方は変わります。

家の贈与では、贈与税だけを見ていると総額を見誤ります。かかる税金は3つ、さらに手続き費用も上乗せされます。
中心となるのが贈与税です。納税義務があるのは、家をあげた人ではなく「もらった人」です。
1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計から、基礎控除110万円を引いた額に課税されます。
合算されるのは家だけではありません。同じ年に現金の贈与も受けていれば、家の評価額と合計して計算されます。
家のような高額財産では基礎控除の効果は小さく、評価額がほぼそのまま課税対象になると考えてください。
申告と納税の期限は、もらった年の翌年2月1日から3月15日までです。原則として現金一括で納めます。
家という「現物」をもらっても、税金は現金で払う必要があります。納税資金の準備まで含めて、贈与を受けるかどうかを判断してください。
家の名義変更(所有権移転登記)には、登録免許税がかかります。
贈与の場合の税率は、固定資産税評価額の2.0%です。評価額2,000万円の家なら40万円になります。
同じ名義変更でも、相続なら税率は0.4%。贈与は相続の5倍の登記コストがかかります。
この税金は登記のときに納めるため、「贈与税は来年でも登録免許税は今すぐ」という資金繰りにも注意が必要です。
なお、相続と違って贈与の登録免許税には軽減措置がありません。2.0%は評価額に対する固定のコストとして織り込んでください。
贈与で不動産を取得すると、都道府県から不動産取得税が課されます。税率は原則4%ですが、2027年3月末までの取得は土地・住宅で3%に軽減されています。
床面積などの要件を満たす住宅なら、評価額から最大1,200万円を控除できる軽減措置もあります。中古住宅も築年数等の要件を満たせば控除の対象です。
軽減の適用には都道府県への申告が必要な場合があります。通知書の金額が軽減前なら、申告で減額できないか必ず確認しましょう。
注意したいのは納付のタイミングです。登記から数ヶ月後に突然納税通知書が届くため、「忘れた頃に来る税金」として資金を確保しておきましょう。
なお、相続による取得なら不動産取得税はかかりません。ここも贈与と相続の大きな違いです。
家や不動産の名義変更でも、贈与税がかからないケースがあります。誤解しやすいポイントなので整理しておきます。
「名義変更=必ず贈与税」ではなく、名義を移す原因によって税金の種類が変わります。
どの原因でも登記は必要で、登録免許税の税率も原因ごとに異なります。「税金の合計が最も軽い移し方は何か」という視点で設計するのが専門家の発想です。
逆に、夫婦の共有名義を一方に寄せる、親の家を子名義で建て替えるといった行為は、意識していなくても贈与に該当することがあります。
名義に関する変更は、実行前に「これはどの原因に当たるか」を確認する癖をつけてください。
重要ポイント:「親が亡くなったら相続でもらえる家」をあえて生前にもらうかどうか、が本記事のテーマです。急ぐ理由がなければ、相続まで待つ選択も常に比較対象に入れましょう。
税金のほかに、手続きの実費もかかります。
贈与契約書は口約束でも贈与自体は成立しますが、税務署への説明資料・登記の根拠として必ず作成すべき書類です。
重要ポイント:家の贈与の総コスト=贈与税+登録免許税+不動産取得税+手続き費用。贈与税がゼロでも、他のコストは残ります。「特例で無税」の言葉だけで判断しないでください。

贈与税の計算は「評価額を出す→110万円を引く→税率をかける」の3段階です。出発点になる評価額は、実際の売買価格より低いのが通常です。
贈与税の計算に使うのは、市場での売買価格(実勢価格)ではなく、税法上の評価額です。
建物は、毎年届く固定資産税納税通知書に記載された「固定資産税評価額」をそのまま使います。一般に建築費の5〜7割程度の水準です。
土地は、国税庁が公表する路線価に面積をかけて計算します(路線価のない地域は固定資産税評価額×倍率)。実勢価格の8割程度が目安です。
土地の形状や接道状況による補正もあるため、正確な評価は専門的な作業になります。概算は自分で、確定値は税理士で、と使い分けましょう。
「3,000万円で買った家」でも、評価額は2,000万円前後ということが珍しくありません。まず通知書で数字を確認しましょう。
評価額を確認せずに「うちは3,000万円の家だから税金が払えない」と思い込み、検討自体をやめてしまうのはもったいない誤解です。
土地の評価方法と贈与税の詳細は、下記の記事で解説しています。

評価額が分かったら、基礎控除110万円を引き、残りに税率をかけます。
税率は10%から55%の累進構造で、「一般税率」と「特例税率」の2種類があります。
同じ金額でも一般税率のほうが高く設定されており、誰からもらうかで税額が変わります。
参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
親から18歳以上の子へ、評価額1,000万円の家を贈与したケースで計算してみます。
課税価格は1,000万円-110万円=890万円。特例税率では「890万円×30%-90万円=177万円」が贈与税です。
もし兄からの贈与(一般税率)なら「890万円×40%-125万円=231万円」となり、同じ家でも54万円高くなります。
計算ロジック:【前提】評価額1,000万円・他の贈与なし。課税価格890万円。特例税率30%(控除90万円)=177万円、一般税率40%(控除125万円)=231万円(2026年時点の速算表)。
家の贈与を受けたら、翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告が必要です。申告先は、もらった人の住所地の税務署です。
申告書は国税庁サイトの「確定申告書等作成コーナー」で作成でき、e-Taxでの提出も可能です。不動産の贈与は評価の記載が複雑なため、税理士に依頼するケースも多くあります。
家の贈与では、申告書に加えて次の書類を添付・保管します。
精算課税やおしどり贈与は「期限内の申告」が適用条件です。税額ゼロでも申告を忘れると特例が使えず、暦年課税の高額な税額を課されるおそれがあります。
注意:登記情報から贈与の事実は税務署に把握されます。「申告しなければ分からない」は通用せず、無申告加算税・延滞税の対象になるだけです。名義変更をしたら申告までがワンセットです。

評価額ごとの贈与税を早見表で確認します。家の贈与税は数百万円規模になり、対策なしの贈与がいかに重いかが分かります。
【前提】その年の他の贈与はなし。基礎控除110万円のみを適用し、特例は使わない単純計算です。
特例税率(親→18歳以上の子)と一般税率(兄弟間など)を並べて比較します。
| 家の評価額 | 特例税率(親→子) | 一般税率(兄弟間など) |
|---|---|---|
| 500万円 | 48.5万円 | 53万円 |
| 1,000万円 | 177万円 | 231万円 |
| 2,000万円 | 585.5万円 | 695万円 |
| 3,000万円 | 1,035.5万円 | 1,195万円 |
表の見方:評価額2,000万円の家をそのまま贈与すると、親子でも585万円かかります。兄弟間では常に特例税率より高く、3,000万円で1,195万円という重さです。
重要ポイント:この表は「何も対策しない場合」の数字です。親子間なら次章の相続時精算課税で贈与税を0円にできる可能性があり、早見表の税額をそのまま払うケースはむしろ少数派です。
計算ロジック:贈与税=(評価額-110万円)×税率-控除額。例:2,000万円の特例税率=1,890万円×45%-265万円=585.5万円、一般税率=1,890万円×50%-250万円=695万円(2026年時点の速算表)。
マンションの贈与でも、考え方は一戸建てと同じです。建物部分(専有部分)は固定資産税評価額、土地部分(敷地権)は路線価ベースで評価します。
タワーマンションなどでは、実勢価格と評価額の差が大きく開くことがあり、2024年からは市場価格との乖離が大きい区分マンションの評価を引き上げる新ルール(評価乖離率による補正)が適用されています。
「マンションは評価が低いから贈与向き」という古い知識のままだと、試算が大きくずれる可能性があります。
新ルールでは、市場価格の6割を下回る評価は原則として6割水準まで引き上げられます。乖離の大きい物件ほど、従来の想定より評価額が上がると考えてください。
区分マンションの贈与を検討する場合は、新ルール適用後の評価額で試算し直してください。
重要ポイント:マンションの固定資産税評価額は納税通知書で確認できますが、贈与税用の評価は補正計算が必要な場合があります。高層階・築浅の物件ほど、税理士による評価が安全です。
早見表を見て「高すぎる」と感じた人が大半でしょう。実際、暦年課税での家の一括贈与は、税負担の面で最も不利な渡し方です。
一方で、覚えておきたいのは評価額の低さです。実勢価格3,000万円の家でも、評価額が2,000万円なら税額は表の2,000万円の行で済みます。
特に築年数が古い建物は評価額が大きく下がっており、「築30年の実家の建物部分だけなら評価額数百万円」ということもよくあります。
評価額が数百万円なら、贈与税は数十万円台に収まります。「建物だけ贈与」なら現実的な負担で名義を移せるケースは意外と多いのです。
思い込みで諦めたり慌てたりせず、まず正確な評価額を把握することが、対策の第一歩です。
重要ポイント:建物と土地は別々の財産です。「建物だけ贈与」「土地だけ贈与」も可能で、評価額の低い建物だけ先に渡すという設計も実務ではよく使われます。

家の贈与税は、制度の活用で大きく減らせます。代表的な4つの制度の非課税枠と、見落としやすい注意点を確認しましょう。
親子間で家を贈与するなら、第一の選択肢が相続時精算課税制度です。
60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円まで贈与税がかからず、超えた部分も一律20%で済みます。
評価額2,000万円の家なら、暦年課税で585万円だった贈与税が0円になります。
2024年の改正で年110万円の基礎控除も新設され、この分は相続時の加算対象にもなりません。使い勝手は大きく向上しています。
基礎控除内(年110万円以下)の贈与だけなら申告も不要になり、「精算課税を選ぶと毎年申告」という従来の負担も解消されました。
ただし、贈与された家は贈与時の評価額で相続財産に加算され、相続税で精算されます。「非課税」ではなく「課税の先送り」である点は正しく理解してください。
それでも、相続税は基礎控除が大きく税率も緩やかなため、トータルの負担は暦年課税での一括贈与より大幅に軽くなるのが通常です。
注意:精算課税で贈与した自宅には、相続時に小規模宅地等の特例(評価8割減)が使えなくなります。特例対象になり得る自宅の贈与は、トータルで損になる可能性があるため必ず事前試算してください。一度選択すると暦年課税には戻れません。
婚姻期間20年以上の夫婦の間で、居住用の不動産(またはその購入資金)を贈与した場合、2,000万円まで控除できる配偶者控除があります。
基礎控除110万円と合わせて、合計2,110万円までの自宅の贈与が非課税になります。
主な要件は「婚姻20年以上」「居住用不動産」「翌年3月15日までに住み、その後も住み続ける見込み」の3つで、同じ夫婦間では一生に一度しか使えません。
おしどり贈与には相続面の利点もあります。この特例で贈与した分は、相続開始前7年以内の贈与でも相続財産への加算対象になりません。
贈与税がゼロでも申告は必要です。また、登録免許税と不動産取得税は通常どおりかかる点も忘れないでください。
重要ポイント:配偶者は相続でも税額軽減(1億6,000万円まで非課税)が使えるため、おしどり贈与が本当に得かは家庭によります。自宅を確実に配偶者へ残したい・相続財産を減らしたい場合に検討する制度です。
親や祖父母から住宅の取得資金をもらう場合、省エネ等住宅で1,000万円、それ以外で500万円まで非課税になる特例があります。
ここで重大な注意があります。この特例の対象は「お金」の贈与であり、家そのものの贈与には使えません。
「親の家をもらう」ケースでは適用できず、「家を買うためのお金をもらう」ケースで使う制度です。混同が非常に多いので区別してください。
これから家を買う人への援助なら、暦年課税の110万円か精算課税と併用でき、強力な非課税枠になります。
この特例には省エネ基準や床面積、受贈者の所得制限(原則2,000万円以下)など細かい要件があります。適用前提で資金計画を立てる場合は、要件の確認を先に済ませてください。
参照元:国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
家の持分を毎年110万円分ずつ贈与すれば、理論上は無税で全体を移転できます。
ただし、この方法には実務上の落とし穴があります。
節税額より登記コストと手間が上回る「費用倒れ」になりやすく、家の贈与では推奨しにくい方法です。
使うなら、毎年独立した贈与契約書を作り、金額や時期を変えるなど、定期贈与と見られない工夫が必須です。
2024年からは相続人への贈与の相続財産への加算期間が7年に延びており、長期の持分贈与は終盤の数年分が加算で無効化されるリスクも高まっています。
重要ポイント:親子間の贈与制度の全体像(教育資金・結婚子育て資金なども含む)は、下記の記事で解説しています。
親から子への贈与で非課税になる範囲は、下記の記事で解説しています。

4つの制度を一覧で比較します。自分が使える制度と、家の贈与に向くかどうかを確認してください。
| 制度 | 非課税枠 | 使える関係 | 家の現物贈与 |
|---|---|---|---|
| 相続時精算課税 | 2,500万円+年110万円 | 60歳以上の親・祖父母→18歳以上の子・孫 | ◎ 主力 |
| おしどり贈与 | 2,000万円+110万円 | 婚姻20年以上の夫婦 | ◎ 居住用のみ |
| 住宅取得等資金 | 500万〜1,000万円 | 親・祖父母→18歳以上の子・孫 | × 資金のみ対象 |
| 暦年贈与(持分) | 年110万円 | 誰でも | △ 費用倒れに注意 |
表の見方:家そのものを渡すなら、実務の主力は精算課税とおしどり贈与の2つです。どの制度も「使える関係」が限定されており、兄弟間ではすべて使えません。
贈与税の非課税枠の全体像は、下記の記事で解説しています。


兄弟姉妹の間での家の贈与は、税務上もっとも不利な組み合わせです。一般税率が適用され、主要な特例がすべて使えないためです。
ここまで紹介した制度を、兄弟間で使えるかどうか整理します。
| 制度 | 兄弟間での利用 | 理由 |
|---|---|---|
| 特例税率 | 不可(一般税率) | 直系尊属からの贈与限定 |
| 相続時精算課税 | 不可 | 親・祖父母→子・孫限定 |
| おしどり贈与 | 不可 | 夫婦間限定 |
| 住宅取得等資金の特例 | 不可 | 直系尊属からの資金贈与限定 |
| 基礎控除110万円 | 利用可 | 関係を問わない |
表の見方:兄弟間で使えるのは基礎控除110万円だけです。評価額2,000万円の家なら贈与税695万円と、親子間の特例活用(0円も可能)とは桁違いの差になります。
兄弟間で家を渡したい場合は、贈与以外の方法も含めて比較するのが鉄則です。
| 方法 | かかる主な税金 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 贈与 | 贈与税(一般税率)+登録免許税2%+不動産取得税 | 評価額が低い家を無償で渡したい |
| 売買(適正価格) | 売主に譲渡所得税+買主に登録免許税・不動産取得税 | 高額の家。贈与税を避けたい |
| 遺贈(遺言で渡す) | 相続税(2割加算)+登録免許税2% | 急がない。生前は住み続けたい |
表の見方:評価額の高い家では、贈与税の高さから適正価格での売買のほうが総負担が軽くなることが多くあります。遺贈は兄弟姉妹への相続として2割加算がかかる点に注意してください。
注意:「売買」を選ぶ場合は、必ず適正な時価で取引してください。相場より著しく安い売買は、差額が「みなし贈与」として贈与税の対象になります。兄弟だからと1円売買や格安売買をするのは、贈与税回避にならないどころか最も疑われる形です。
それでも兄弟間の贈与を選ぶ場合、負担を抑える現実的な工夫は「分ける」ことです。
贈与税は累進課税のため、1回でまとめて贈与するより、持分を数年に分けて贈与するほうが適用税率が下がります。
たとえば評価額1,500万円の家を一括贈与すると税額約450万円ですが、3年に分けて500万円分ずつなら年53万円×3回=約159万円と、3分の1近くまで下がります。
この差は、累進税率の低い帯域を毎年使い直せることから生まれます。分ける年数が長いほど税額は下がりますが、登記費用と手間、途中死亡のリスクは増える、というトレードオフです。
ただし、毎年の登記費用・定期贈与認定リスク・完了前に死亡するリスクという持分贈与の弱点はここでも同じです。
金額が大きいほど設計の巧拙が効くため、実行前に税理士へ相談する価値があります。
また、兄弟の一方が先に亡くなる可能性も現実的なリスクです。長期計画は「途中で止まっても損しない設計」になっているかまで確認してください。
計算ロジック:【前提】評価額1,500万円・一般税率。一括:1,390万円×45%-175万円≒450万円。3分割:各回(500万円-110万円)×20%-25万円=53万円×3年=159万円(2026年時点の速算表・登記費用は別途)。
「兄が相続した実家を自分が使いたい」など、兄弟間の家の移転を考える場面では、一歩手前で防げたケースが多くあります。
親が健在なら、実家は親から使う人へ直接渡すのが最も安上がりです。親→子なら特例税率・精算課税が使え、兄弟間移転の高コストを丸ごと回避できます。
すでに相続が発生している場合は、遺産分割協議のやり直しではなく、代償分割(家をもらう代わりに他の相続人へ現金を払う)などの設計で調整します。
協議がまだ成立していなければ、家を使う人が相続する形に組み直すのが最善です。分割協議の段階なら、贈与税も登録免許税2%もかかりません。
いったん兄弟の1人の名義にしてから動かすのは、税務上いちばん高くつくルートです。「誰の名義にするか」は相続の段階で決め切ることが重要です。
「とりあえず長男名義」「とりあえず共有」は、後の移転コストと共有トラブルの種になります。とりあえずの名義は避けてください。
重要ポイント:遺産分割協議の成立後に「やっぱり交換したい」となると、贈与や売買として課税されます。分割協議は将来の利用予定まで見据えて行いましょう。

家の承継で最も重要な判断が「生前贈与か、相続か」です。3つの税金の合計で比べると、コスト構造の違いがはっきり見えます。
【前提】評価額2,000万円の自宅を、親から18歳以上の子へ渡すケース。3つの渡し方で総コストを比較します。
| 項目 | 暦年贈与 | 精算課税で贈与 | 相続 |
|---|---|---|---|
| 贈与税・相続税 | 585.5万円 | 0円(相続時に精算) | 財産次第(0円も多い) |
| 登録免許税 | 40万円 | 40万円 | 8万円 |
| 不動産取得税 | 約60万円 | 約60万円 | 0円 |
| 当面の合計 | 約685万円 | 約100万円 | 約8万円+相続税 |
表の見方:暦年贈与での一括移転は論外レベルの負担です。精算課税でも登記コスト約100万円がかかり、単純なコスト比較では相続が最安になります。
計算ロジック:【前提】評価額2,000万円。登録免許税=2,000万円×2%(相続は0.4%)。不動産取得税=2,000万円×3%(住宅の課税標準の軽減は考慮外の概算・相続は非課税)。贈与税は早見表参照(2026年時点)。
コスト面に加えて、相続には税制上の強力な味方があります。小規模宅地等の特例です。
同居する子などが自宅の土地を相続する場合、330㎡まで評価額を80%減額でき、相続税そのものを大きく減らせます。
生前贈与(精算課税を含む)で渡した自宅には、この特例が使えません。特例が使える見込みの家庭では、相続まで待つほうが明確に有利です。
遺産全体が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)以下の家庭も、相続税ゼロ+登記コスト最安で渡せる相続が正解になります。
相続税の課税対象になる家庭は全体の1割程度です。多くの家庭では「そもそも相続なら税金がかからないのに、贈与で数百万円払う」という逆転が起きています。
家の相続税の計算と特例の詳細は、下記の記事で解説しています。

一方、コスト差を払ってでも生前贈与を選ぶ合理性があるケースもあります。
「税金の損得」と「確実に渡せる安心」は別の価値です。争いの防止に数十万円のコストを払う判断は、十分に合理的といえます。
なお、遺言書の作成でも「特定の人に渡す」目的はある程度果たせます。贈与のコストと遺言の確実性を比べてから決めても遅くありません。
重要ポイント:贈与か相続かの判断は、家単体ではなく財産全体の相続税試算とセットで行うものです。自己判断で登記まで進めず、実行前に税理士の試算を挟んでください。
ここまでの内容を、シンプルな判断フローに整理します。
多くの家庭では「相続で渡す」が最適解になりますが、例外に当たる家庭では贈与の価値が際立ちます。
自分がどれに当たるか判断できない場合こそ、専門家の試算の出番です。フローのどこで迷ったかを伝えるだけでも、相談は具体的に進みます。
重要ポイント:贈与と相続は二者択一ではありません。「建物だけ先に贈与し土地は相続」など、組み合わせ設計も可能です。選択肢は思っているより多くあります。

贈与を実行すると決めたら、手続きは4ステップで進みます。「契約書→登記→翌年の申告」の順番と期限を押さえましょう。
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登記自体は申請から1〜2週間程度で完了します。全体では、準備を含めて1〜2ヶ月を見込んでおくとよいでしょう。
贈与の日付は契約書と登記で整合させておきます。年をまたぐと基礎控除の年分や税制改正の適用関係が変わるため、12月の駆け込み贈与は特に日付管理が重要です。
おしどり贈与のように「翌年3月15日までに居住」という要件がある制度では、引っ越しのスケジュールまで含めた逆算が必要になります。
贈与による名義変更で必要になる主な書類です。
申告時には、契約書と登記後の登記事項証明書が贈与の事実を示す資料になります。すべて保管してください。
重要ポイント:登記は自分でもできますが、贈与登記は書類の不備が起きやすい手続きです。司法書士報酬5〜10万円は、確実性への保険と考える価値があります。

家の贈与には、知らないと損をする落とし穴があります。「みなし贈与」「ローン残債」「他の相続人との関係」の3大リスクを確認してください。
【事例:時価2,000万円の家を500万円で売買】
贈与税を避けるため、親子間で格安売買の形をとった。税務署の調査で時価との差額1,500万円が「みなし贈与」と認定され、贈与税に加えて加算税・延滞税まで課された。
対策:親族間売買は時価を基準に。価格設定に迷ったら不動産鑑定や税理士の意見を挟む。
「お金を払ったことにすれば贈与税はかからない」という発想は通用しません。時価より著しく低い価格での譲渡は、差額が贈与とみなされます。
実際にお金が動いていない偽装売買なら、事実の仮装として重加算税の対象にもなり得ます。
親族間売買では、金融機関の住宅ローンも使いにくく、資金の流れの証拠(振込記録)も必須です。「形だけの売買」は入口から成立しないと考えてください。
税務署は登記の異動情報を把握しており、名義変更があると「お尋ね」文書で取得の経緯と資金源を確認してきます。ごまかしは利きません。
住宅ローンの残っている家を贈与する場合、金融機関への確認が必須です。
ローン契約には、無断で名義変更や担保物件の処分をしてはならない条項が入っているのが通常で、勝手な名義変更は契約違反として一括返済を求められるリスクがあります。
また、ローンごと引き継ぐ「負担付贈与」にすると、税務上は時価ベースの計算になったり、贈与者側に譲渡所得税がかかったりと、課税関係が複雑になります。
ローン付きの家の移転は、完済後に行うか、金融機関・税理士を交えて設計するのが安全です。
残債が少ないなら「完済してから贈与」が最もシンプルです。完済を待つ間に、精算課税の届出準備や他の相続人への説明を進めておけば、時間も無駄になりません。
注意:団信(団体信用生命保険)はローン契約者の死亡でローンが完済される仕組みです。名義だけ先に子へ移すと、この仕組みが想定どおり機能しなくなる可能性もあります。ローンが残る家は「動かす前に銀行へ相談」が鉄則です。
【事例:長男だけが実家の贈与を受けていた】
親の生前に長男が実家の贈与を受け、他の兄弟には知らせなかった。相続時に発覚し、「特別受益だ」と主張する二男との間で遺産分割協議が紛糾。関係の修復が難しくなった。
対策:生前贈与は他の相続人にも事前に説明する。必要に応じて遺言書で残りの財産の分け方も決めておく。
家の生前贈与は、特定の相続人への大きな利益供与です。相続時には特別受益として持ち戻し計算の対象になり得ますし、遺留分侵害の請求を受ける可能性もあります。
また、相続人への贈与は相続開始前7年以内の分が相続財産に加算されます(暦年課税の場合)。「贈与すれば相続と無関係」にはならないのです。
特別受益の持ち戻しには期限の定めがなく、10年20年前の家の贈与でも遺産分割の計算で考慮され得ます。贈与の記録は長期保管が前提です。
税金の設計と同じくらい、家族への説明と全体の分割設計が重要と考えてください。
実家は金額の大きさに加えて思い入れも絡む財産です。「税金は解決したのに家族関係が壊れた」では、贈与は成功とはいえません。
参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
逆に、「贈与したつもりなのに成立していなかった」という失敗もあります。
「この家はお前にやる」という口約束だけで、契約書も登記もないまま親が亡くなったケース。贈与の証拠がなければ、家は相続財産として遺産分割協議の対象に戻ります。
他の相続人が「そんな約束は聞いていない」と主張すれば、もらったはずの家をめぐって争いになります。
贈与は「契約書の作成」と「登記」の2点セットで完成させてください。特に登記は、第三者に権利を主張するための対抗要件です。
親の判断能力があるうちに完了させることも重要です。認知症が進んでからでは、有効な贈与契約自体ができなくなります。
登記を先延ばしにするメリットは何もなく、贈与の意思が固まったら速やかに名義まで移すのが原則です。
2024年からは相続登記が義務化されるなど、不動産の名義を実態に合わせる流れが強まっています。「名義は昔のまま」を放置できる時代ではなくなりました。
重要ポイント:「登記すると税金がかかるから登記しない」という発想は本末転倒です。登記なしの贈与は法的に不安定なうえ、贈与税の時効も登記などで贈与が明らかになった時点から争われ、結局は課税されます。
もらった家を将来売る予定があるなら、譲渡所得税の仕組みも知っておく必要があります。
贈与でもらった家を売却すると、売却益に譲渡所得税がかかります。このとき、取得費は「贈与時の評価額」ではなく「贈与者が買ったときの価格」を引き継ぎます。
親が数十年前に安く買った家なら、売却益が大きく計算され、税負担も重くなります。取得時の契約書が見つからない場合、取得費は売却額の5%とされ、さらに不利になります。
これは相続で取得した場合も同じ仕組みですが、相続なら取得費加算の特例(相続税の一部を取得費に上乗せ)が使える分、売却前提では相続が一歩有利です。
「もらってすぐ売る」計画なら、贈与ではなく親が売却して現金を贈与するほうが、3,000万円特別控除(マイホーム売却の特例)を使えて有利なこともあります。
出口(売却)まで含めて渡し方を設計することが、トータルの税負担を最小にするコツです。
重要ポイント:親の家の購入時の売買契約書は、贈与・相続のどちらで渡す場合でも将来の売却時に重要な書類です。実家に保管されているうちに所在を確認しておきましょう。
家の贈与を実行する前に、以下を確認してください。
重要ポイント:登記をしてしまうと後戻りはできません。1つでも未確認の項目があるうちは、名義変更を実行しないでください。

家の贈与は、制度の選択と設計で結果が数百万円変わる分野です。登記の前に、一括相談・見積りで複数の税理士に設計を確認しましょう。
家の贈与の相談では、税理士の提案の幅が結果を大きく左右します。
たとえば評価額2,000万円の自宅を子へ渡したいケース。A税理士は依頼どおり精算課税で贈与を実行。B税理士は財産全体を試算し「小規模宅地等の特例が使えるため相続まで待つべき」と提案。総負担で数百万円の差になりました。
贈与の実行だけなら誰でもできます。価値があるのは「実行しない」を含めた選択肢の提示です。
複数の税理士に相談することで、依頼者の希望をなぞるだけの提案か、全体最適の提案かを見分けられます。
複数の税理士から見積りを取ると、次の3つの判定ポイントで実務力を比較できます。
判定ポイント1:相続まで含めた比較を出すか。A税理士は贈与税の計算のみ、B税理士は「贈与した場合/相続した場合」の総コスト比較表を提示 → B税理士の方が、資産承継全体の設計力があると判定できます。
判定ポイント2:制度の副作用まで説明するか。精算課税の「小規模宅地等の特例が使えなくなる」など、デメリットを先に言えるか → 副作用から説明する税理士の方が、失敗案件への対応経験が豊富と判定できます。
判定ポイント3:司法書士との連携があるか。贈与の設計(税理士)と登記(司法書士)はセットの手続きのため、連携体制の有無でスムーズさが変わる → ワンストップ対応の事務所の方が、不動産贈与の実務に慣れていると判定できます。
1人の専門家だけに相談すると、その提案が最適かどうかを判断する材料がありません。
特に注意したいのは、登記が主業務の事務所に最初に相談した場合です。名義変更の実行はスムーズでも、税務の比較検討が抜けたまま登記が完了してしまうことがあります。
登記は取り消せません。「もっと安い渡し方があった」と後から気づいても、贈与税は戻らないのです。
実行前に複数の視点を通すことが、後戻りできない手続きへの唯一の保険になります。
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 提案内容 | 贈与以外の選択肢(相続・売買)との比較があるか |
| 試算の前提 | 登録免許税・不動産取得税・将来の相続税まで含めた総額か |
| 報酬額 | 試算・申告・登記(司法書士)まで含めた総額か |
重要ポイント:「贈与税の申告だけで〇万円」という安い見積りより、比較検討まで含めた提案のほうが、結果として何百万円も安くつくことがあります。
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重要ポイント:税理士にも得意分野があります。法人税メインの事務所より、資産税(相続・贈与)専門の事務所のほうが、この分野の設計力は高い傾向があります。
重要ポイント:固定資産税納税通知書が1枚あるだけで、相談の精度は大きく上がります。「なぜ渡したいのか」の目的も言葉にしておくと、最適な方法の判定が早くなります。
評価額が110万円を超える家なら、原則として贈与税がかかります。名義変更だけのつもりでも、税務上は贈与です。
ただし、相続時精算課税を選択すれば2,500万円まで贈与税はかかりません(相続時に精算)。かかるかどうかではなく「どの制度で受け取るか」を先に設計することが重要です。
建物は、毎年4〜6月頃に届く固定資産税納税通知書(課税明細書)に記載された評価額で確認できます。
土地は国税庁サイトの路線価図で1㎡あたりの価額を調べ、面積をかけて概算できます。通知書が見当たらない場合は、市区町村役場で固定資産評価証明書を取得してください。
理論上は可能ですが、おすすめしにくい方法です。贈与のたびに登記が必要で、登録免許税と司法書士報酬が毎年かかり、費用倒れになりがちです。
また「最初から全部を贈与する約束だった」と認定されると、定期贈与として全体に一括課税されるリスクもあります。実行するなら毎年独立した契約書の作成が必須です。
避けられません。時価より著しく低い価格での売買は、差額が「みなし贈与」として贈与税の対象になります。
兄弟間で高額の家を移すなら、適正な時価での売買が現実的な選択肢です。売主側の譲渡所得税も含めて、総負担の比較を税理士に依頼しましょう。
贈与税を納めるのは、家をもらった人(受贈者)です。
親が代わりに贈与税を払うと、その税金分がさらに贈与とみなされて課税対象が増えます。納税資金がない場合は、納税資金分も含めた贈与設計や、精算課税の利用を検討してください。
家をもらうときの贈与税について、重要なポイントを整理します。
【贈与税の基本】
【税負担を抑える制度】
【贈与か相続かの判断】
【今すぐ取るべき行動】
※本記事は2026年7月時点の法令・情報に基づいて作成しています。税制改正により、内容が変更となる可能性があります。最新の制度については国税庁の公式サイトや税理士にご確認ください。