持株会社(ホールディングス化)で相続対策|株価が下がる理由と相続税の節税効果

相続税_持株会社_対策

持株会社(ホールディングス)を作り、自社株を会社を通して持つ形に変えると、自社株の相続税評価額を下げられる場合があります。

自社株の評価額が高いまま相続が起きると、後継者が納税資金に困り、会社の資産を売る事態になりかねません。

評価額が下がる主な理由は、会社の規模によって類似業種比準価額方式が使えるようになることです。法人税等相当額38%の控除も効きますが、株式移転などで受け入れた時点の含み益には原則として効きません。

ただし設立した直後は株式保有特定会社に該当して効果がほぼ消えます。ここを外す作業に数年かかります。

後継者が持株会社を作り、借入で先代の株式を買い取る方法もあります。こちらは相続税を直接下げるより、株価の上昇分を後継者側に移す性格の対策です。

この記事では、評価額が下がる仕組み、納税額の比較、株式保有特定会社の外し方と否認の基準、設立方式の違い、後継者が買い取る方法、費用対効果と事業承継税制との比べ方を解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 評価額が下がる主な理由は類似業種比準価額方式が使えること。38%の控除は設立時の含み益には原則として効かない
  • 自社株5億円のモデルで、株特を外して大会社になれば子2人の相続税は8,680万円から2,860万円まで下がる(67%減)
  • 設立直後は株式保有特定会社に該当して効果が消える。外すには数年かかり、直前の対策は通達189のなお書きで否認される
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持株会社とは|自社株の評価が下がる形をまず押さえる

仕組みの前に、株式を「直接持つ」か「会社を通して持つ」かの違いを押さえてください。この形の違いが評価額の差を生みます。

直接持つ形と、会社を通して持つ形の違い

オーナーが事業会社の株式を自分名義で持っている状態が直接保有、持株会社を挟む形が間接保有です。直接保有では相続財産になるのが事業会社の株式そのものなので、評価を下げる余地が限られます。

直接保有 間接保有(持株会社あり)
株式の持ち方 オーナー → 事業会社 オーナー → 持株会社 → 事業会社
相続財産になるもの 事業会社の株式 持株会社の株式
法人税等相当額38%の控除 事業会社の含み益に使える 持株会社が株式を持ったあとに増えた含み益に使える
類似業種比準価額方式 事業会社の規模しだい 持株会社の規模しだいで適用の幅が広がる
設立直後の問題 なし 株式保有特定会社に該当して効果が消える

表の見方:黄色の行が出発点です。評価する対象が事業会社の株式から持株会社の株式に変わることで、評価の計算方法そのものが変わります。

重要ポイント:薄赤の行が最大の落とし穴です。設立した瞬間は持株会社の資産がほぼ子会社株式だけなので、ほぼ確実に株式保有特定会社に該当します。

非上場株式そのものの評価方法と計算手順は、下記の記事で解説しています。

純粋持株会社と事業持株会社

持株会社は2種類に分かれ、相続税対策で使われるのは主に純粋持株会社ですが、実務では事業を残す形を選ぶこともあります。

純粋持株会社 事業持株会社
自社の事業 持たない。子会社の株式管理だけを行う 自社でも事業を営む
主な収入 子会社からの配当・経営指導料 自社の売上+子会社からの配当
株式保有特定会社のリスク 高い。資産が株式に偏りやすい 低い。事業用資産があるため
向いている場面 グループを作って統括したい 既存事業を続けながら評価を下げたい

表の見方:薄赤の行が判断の分かれ目です。純粋持株会社ほど株式保有特定会社に当たりやすいため、設立後の資産構成の管理がより重要になります。

重要ポイント:どちらを選ぶかは節税だけで決めないでください。事業持株会社は資産構成の面では有利ですが、自社の事業リスクが持株会社の評価に直接跳ね返ります。

効果が出るまでに数年かかる

持株会社を作った日から評価が下がるわけではありません。株式保有特定会社の状態を抜けるまで、効果はほとんど出ません。

1年目
設立とスキーム設計|方式の選択、登記、株式の移転。この時点では資産のほぼ全部が子会社株式なので、株式保有特定会社に該当している

⬇

2〜4年目
資産構成の入れ替え|収益不動産の取得や事業投資で、株式等以外の資産を増やす。毎期末に株式等の割合を確認する

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3〜5年目
株式等の割合が50%未満で安定|類似業種比準価額方式が使えるようになり、ここではじめて評価圧縮の効果が出る

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以降毎年
判定の維持|株式等の割合と会社規模を毎年確認する。割合が50%を超えた期に相続が起きると効果が消える

重要ポイント:この期間があるため、60代後半以降の設立は完了前に相続が起きるリスクが高くなります。判断が早いほど選べる手が増えます。

相続税以外の目的でも使われる

持株会社は相続税だけの仕組みではありません。株式の分散を防ぐ目的で作られることも多く、節税と並んで実務では重視されています。

目的 内容 効果が出る時期
自社株の評価を下げる 評価方式が変わり、相続税の負担が軽くなる 株特を外してから数年後
株式の分散を防ぐ 相続のたびに株式が分かれるのを避け、持株会社に集約する 設立した時点から
経営権を安定させる 議決権が持株会社に集まり、後継者が経営判断をしやすくなる 設立した時点から
事業ごとにリスクを分ける 子会社を分けることで、一部の事業の不振が他に及びにくくなる 子会社を分けた時点から
後継者を決めずに始められる 株式の受け皿を先に作れる 設立した時点から

表の見方:黄色の相続税対策だけが効果の出るまでに数年かかります。他の4つは設立した時点から効きます。

重要ポイント:後継者がまだ決まっていない会社にとっては、株式の受け皿を先に用意できる点が大きな利点です。相続が起きてから慌てて集約するより負担が軽くなります。

相続税の効果だけを見て判断すると、コストに見合わないと結論づけてしまうことがあります。経営面の目的も含めて総合的に判断してください。

評価額が下がる2つのメカニズム

評価額が下がる理由は2つです。法人税等相当額38%の控除と、類似業種比準価額方式の適用です。38%の控除が効く範囲は、多くの解説が書くよりずっと狭いので、どこで効くのかを先に押さえてください。

メカニズム1|設立後に増えた含み益から38%を引く

非上場株式を純資産価額方式で評価するときは、相続税評価額と帳簿価額の差(評価差額)に38%を掛けた金額を引けます。将来その資産を売ったときにかかる法人税等を先に差し引く考え方です。

持株会社の場合、38%を引けるのは、持株会社が株式を受け入れたあとに増えた含み益の部分です。次の表は、設立時に5億円だった事業会社の評価額が、相続のときに8億円へ上がった例です。

項目 直接保有 持株会社を通して保有
相続のときの事業会社株式の評価額 8億円 8億円
持株会社の帳簿価額と設立時の含み益の合計 — 5億円(帳簿価額1億円+設立時の含み益4億円)
38%を掛ける評価差額 — 3億円(8億円−5億円)
法人税等相当額(38%) — 1億1,400万円
相続財産としての評価額 8億円 6億8,600万円

表の見方:38%を掛けるのは純資産の全額ではなく、設立後に増えた3億円の部分だけです。設立時からあった4億円の含み益には掛けません。

重要ポイント:この割合は2026年4月1日以後の相続・贈与から37%が38%に上がっています。3月31日以前の相続は37%のままです。通達の本文は法人税・地方法人税・防衛特別法人税・事業税・特別法人事業税・道府県民税・市町村民税の合計と定めています。

計算ロジック:8億円−(8億円−5億円)×38%=6億8,600万円です。前提は、事業会社の株式を株式移転で受け入れ、持株会社の帳簿価額が1億円になったケースです。相続税の差は子2人の負担で約2,630万円(配偶者と子2人の場合)になります。

参照元:国税庁 財産評価基本通達 186-2(評価差額に対する法人税額等に相当する金額)

設立したときの含み益には原則として38%が効かない

株式移転・株式交換・現物出資で、事業会社の株式を帳簿価額より大きく低い価額で受け入れた場合、受け入れた時点の含み益は38%を引く対象から外れます。通達はこの差額を「現物出資等受入れ差額」と呼び、帳簿価額の側に足して計算させます。

「持株会社を作れば、その日から含み益の38%が引ける」という説明は、この定めと食い違います。設立時の含み益に38%を掛けた試算で判断すると、節税額を大きく見誤ります。

持株会社の作り方 受け入れた時点の含み益 38%を引ける部分
株式移転・株式交換 帳簿価額に足し戻す 設立後に増えた含み益だけ
現物出資 帳簿価額に足し戻す 設立後に増えた含み益だけ
株式譲渡(時価で買い取る) そもそも生じない(帳簿価額=買取価額) 買い取ったあとに増えた含み益だけ
例外:受け入れた株式が総資産の20%以下 足し戻さない 含み益の全体

表の見方:薄赤の2行が、持株会社の設立で一般的な方法です。どの作り方でも、設立時の含み益に38%は効きません。

重要ポイント:黄色の例外は、受け入れた株式の評価額が課税時期の総資産の20%以下のときだけです。設立直後の純粋持株会社は資産のほとんどが子会社株式なので、この例外にはまず当たりません。

計算ロジック:財産評価基本通達186-2(2)は、著しく低い価額で受け入れた株式について、受け入れた時の評価額と帳簿価額の差を帳簿価額に加算すると定めています。受け入れ後に評価額が下がった場合は、課税時期の評価額で計算します(同注2)。

参照元:国税庁 財産評価基本通達 186-2(評価差額に対する法人税額等に相当する金額)

38%の控除は持株会社の段階で1回だけ|二重には効かない

よくある誤解が事業会社と持株会社の両方で38%を引けるという説明です。通達はこれを明確に否定しています。

【二重に控除できない理由】

  • 持株会社の純資産価額を計算するとき、持株会社が持つ子会社株式も評価する必要がある
  • その子会社株式の1株当たり純資産価額を計算する場面では、法人税等相当額を控除しないと通達186-3の注書きが定めている
  • つまり38%の控除が効くのは持株会社の段階の1回だけ

「間接保有にすると二重に圧縮できる」という説明は、この注書きと食い違います。効果を過大に見積もらないでください。

通達186-3の注書きには「186-2の定めにより計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除しないのであるから留意する」と明記されています。

効果を二重に見込んだ試算をもとに設立を判断すると、想定より節税額が小さくなり、コストを回収できない事態が起きます。

参照元:国税庁 財産評価基本通達 186-3(評価会社が有する株式等の純資産価額の計算)

メカニズム2|類似業種比準価額方式が使えるようになる

もう1つの理由が評価方式そのものの切り替えです。類似業種比準価額は純資産価額より低くなることが多いため、こちらを使える割合が増えるほど評価額が下がります。

会社規模 評価方式 L(類似業種比準価額の割合)
大会社 類似業種比準価額方式 100%
中会社(大) 折衷 L=0.90
中会社(中) 折衷 L=0.75
中会社(小) 折衷 L=0.60
小会社 純資産価額方式(折衷も選択可) L=0.50

表の見方:折衷の計算式は類似業種比準価額×L + 純資産価額×(1−L)です。黄色の大会社ならすべて類似業種比準価額で評価できます。

重要ポイント:会社規模は総資産・売上高・従業員数で判定します。持株会社は子会社の資産を取り込むため、規模が大きく判定されやすくなります。これが評価方式の切り替えにつながります。

計算ロジック:類似業種比準価額は、同業種の上場会社の株価をもとに配当・利益・純資産の3要素を比較して求めます。3要素は1対3対1で加重平均するため、利益の水準が評価額に最も強く効きます。業績の良い年ほど評価が上がる点に注意してください。

参照元:国税庁 財産評価基本通達 178(取引相場のない株式の評価上の区分)

参照元:国税庁 財産評価基本通達 180(類似業種比準価額)

上場株式と非上場株式で評価の調べ方がどう違うかは、下記の記事で解説しています。

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納税額はいくら変わるか|3つのケースで比較する

仕組みだけでは判断できません。同じ会社で対策の有無によって納税額がいくら違うかを数字で確認してください。以下は同一の前提で3つの状態を並べたものです。

前提条件

比べる前に条件をそろえておきます。前提が違うと節税額は簡単に変わるので、自社の数字に置き換えるときは必ずここから確認してください。

【共通の前提】

  • 事業会社の株式の相続税評価額=5億円(相続のときまで変わらないものとする)
  • 持株会社は株式移転で作り、子会社株式の帳簿価額は1億円(設立時の含み益4億円には38%が効かない)
  • 自社株以外の財産(預貯金・不動産など)=1億円
  • 相続人=配偶者と子2人。配偶者は法定相続分(2分の1)を取得する
  • 持株会社の類似業種比準価額=2億円

配偶者が法定相続分の範囲で相続するため、配偶者の相続税は0円になります。実際に負担するのは子2人です。

相続税の総額を出す手順そのものは、持株会社があってもなくても変わりません。7つのステップと按分の方法は下記の記事で解説しています。

3ケースの比較

対策なし・中会社・大会社の3段階で並べます。子2人の負担は8,680万円から2,860万円まで下がります。

ケース 株式の評価額 遺産総額 相続税の総額 子2人の負担 対策なしとの差
1 対策なし(直接保有) 5億円 6億円 1億7,360万円 8,680万円 —
2 持株会社・中会社(L=0.75) 2億7,500万円 3億7,500万円 8,345万円 約4,173万円 約4,508万円減(52%減)
3 株特を外して大会社(類似100%) 2億円 3億円 5,720万円 2,860万円 5,820万円減(67%減)

表の見方:薄赤が何もしなかった場合、黄色が対策を完了させた場合です。差は5,820万円で、設立費用と維持費を大きく上回ります。

計算ロジック:ケース2は、持株会社の純資産価額5億円と類似業種比準価額2億円をL=0.75で折衷した金額です。2億円×0.75+5億円×0.25=2億7,500万円です。設立時の含み益には38%が効かないため、純資産価額は5億円のまま下がりません。

あてはめ:ケース1の相続税の総額は、課税遺産5億5,200万円を法定相続分で分けて計算します。配偶者2億7,600万円で9,720万円、子は1億3,800万円ずつで3,820万円ずつ、合計1億7,360万円です。

子2人の負担:配偶者の税額軽減で配偶者の分が0円になるため、子2人が総額の半分にあたる8,680万円を負担します。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

参照元:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

ケース2で止まると効果は5割にとどまる

注目すべきはケース2とケース3の差です。株式保有特定会社を外し切れるかどうかで約1,313万円の差が出ます。

状態 子2人の負担 ケース1からの削減
株特に該当したまま相続が発生 8,680万円 効果なし(純資産価額5億円のまま)
中会社で折衷評価(L=0.75) 約4,173万円 約4,508万円
大会社で類似業種比準100% 2,860万円 5,820万円

表の見方:1行目が最悪のケースです。株特に該当したまま相続が起きると、設立コストだけが残ります。

重要ポイント:この差が生まれるのは資産構成と会社規模の管理しだいです。作って終わりではなく、毎年の判定を続けることが前提の対策だと理解してください。

最大の落とし穴|株式保有特定会社に該当すると効果が消える

持株会社を作った直後は、資産のほとんどが子会社株式なのでほぼ必ず株式保有特定会社に該当します。この状態では類似業種比準価額方式が使えず、評価圧縮の効果が大きく削られます。

該当するかどうかの判定

株式等保有特定会社に当たるかどうかの判定は割合の計算だけで、総資産に占める株式等の割合が50%以上なら該当します。判定に使うのは帳簿価額ではなく相続税評価額です。

項目 内容
判定の式 株式等の価額の合計 ÷ 総資産の価額の合計 ≧ 50%
使う金額 相続税評価額(帳簿価額ではない)
判定する時点 課税時期(相続が起きた日、または贈与の日)
「株式等」に入るもの 株式・出資・新株予約権付社債
「株式等」に入らないもの 国債・地方債・社債・公募投資信託・貸付金・不動産・現金預金
該当した場合の評価 原則は純資産価額方式。類似業種比準価額方式は使えない

表の見方:黄色の1行がすべてです。50%を1%でも超えていれば該当し、49%なら該当しません。相続が起きた日の一時点で判定されます。

重要ポイント:新株予約権付社債は株式等に含まれます。社債だから大丈夫と考えて保有すると、判定の分子に入って想定が狂います。普通社債や国債は分子に入りません。

計算ロジック:判定は相続税評価額ベースで行うため、含み損のある不動産を持っていると総資産の評価額が下がり、株式等の割合はかえって上がります。帳簿の数字で49%だから安心とは言えません。

参照元:国税庁 財産評価基本通達 189(特定の評価会社の株式)

該当してもS1+S2方式を選べる

該当したら打つ手がないわけではありません。納税義務者の選択でS1+S2方式を使えます。通達189-3のただし書に定めがあります。

純資産価額方式(原則) S1+S2方式(選択できる)
考え方 会社全体を純資産で評価する 株式等以外の部分と株式等の部分を分けて評価する
S1の部分 — 株式等以外の資産について、通常の評価方法で計算する
S2の部分 — 株式等について、純資産価額方式で計算する
有利になる場面 — 株式等以外の事業が大きく、利益が出ている場合

表の見方:S1+S2方式は株式等以外の部分に類似業種比準価額方式を使える点が違います。黄色の行に当てはまるなら、原則の純資産価額方式より低くなることがあります。

重要ポイント:どちらが有利かは計算してみないと分かりません。株式保有特定会社に該当した瞬間に諦めず、両方を試算してください。選択は納税義務者が行うため、有利なほうを選べます。

参照元:国税庁 財産評価基本通達 189-3(株式等保有特定会社の株式の評価)

株特外しの4つの手法

該当を避けるには、株式等以外の資産を増やして割合を50%未満に下げます。これを株特外しと呼びます。手法は大きく4つです。

手法 内容 効果 注意点
収益不動産の取得 持株会社が賃貸物件を買う 大きい 賃料収入があり説明しやすい。空室リスクは残る
事業用資産への投資 設備やシステムを持株会社が持つ 中程度 事業の実態が必要
子会社への貸付 貸付金は株式等に入らない 中程度 金利や返済条件など事業上の合理性が要る
現金の注入 持株会社に現金を入れる 即効性がある 形だけの対策とみなされやすい

表の見方:黄色が最も使われる手法です。賃料収入という事業上の理由を説明できるため、否認されにくい点が理由になります。

重要ポイント:薄赤の現金注入は割合をすぐ動かせますが、事業上の理由を説明できないと否認の対象になります。効果の速さと否認のリスクは表裏の関係です。

不動産を使って株式評価を下げる仕組みそのものは、下記の記事で解説しています。

株特外しの進み方と、毎年やること

株特外しは一度やって終わりではありません。毎年の決算で判定をやり直す必要があります。割合が50%を超えた期に相続が起きれば、その時点で効果が消えます。

1年目
計画を立てる|現在の株式等の割合を数値で把握し、どの資産をいくら増やせば50%未満になるかを試算する。取締役会の議事録に検討の経緯を残す

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2〜4年目
資産を取得する|収益不動産などを取得し、賃貸管理の体制を整える。契約書・稟議書・事業計画を保管する

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3〜5年目
割合が安定する|株式等の割合が50%未満で落ち着き、類似業種比準価額方式が使えるようになる

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毎年
判定をやり直す|決算のたびに株式等の割合と会社規模を確認する。子会社の業績が伸びると株式の評価額が上がり、割合が再び50%に近づく

重要ポイント:最後の行が見落とされがちです。子会社が成長するほど株式等の割合は上がっていきます。一度50%未満にしたら安心という対策ではありません。

毎年の確認を怠ると、相続が起きた期にだけ該当していたという結果になりかねません。判定は課税時期の一時点だけで行われるため、その年の資産構成がすべてを決めます。

株特外しが否認される基準|通達189のなお書き

株特外しには明確な歯止めがあります。合理的な理由なく資産構成を動かした場合、その変動はなかったものとして判定されます。通達189の本文に書かれている「なお書き」がその根拠です。

なお書きの中身

条文の作りを踏まえて、直前の対策は最初から効かない仕組みになっている点を押さえてください。

【財産評価基本通達189 なお書き】

  • 株式等保有特定会社などに該当するかどうかを判定する場合において
  • 課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり
  • その変動が該当すると判定されることを免れるためのものと認められるときは
  • その変動はなかったものとして当該判定を行う

つまり、否認されると株特外しをする前の資産構成に戻して判定されます。争点になるのは「合理的な理由があったか」の一点です。

この定めがあるため、相続が近づいてからの株特外しは効果を期待できません。税務署は課税時期からさかのぼって資産の動きを確認します。

参照元:国税庁 財産評価基本通達 189(特定の評価会社の株式・なお書き)

合理的な理由があると言えるかの判断材料

争点はその資産を取得した事業上の理由(経済合理性)を説明できるかです。説明できる状態を作るには、取得の前後で残す記録が決め手になります。

見られる点 説明できる状態 否認されやすい状態
取得の時期 相続の数年前。取得後も保有を続けている 相続の直前。取得後すぐ売却する予定がある
収益性 賃料収入が継続して発生している 収益を生まない資産を買っただけ
価格の妥当性 第三者との取引で相場に沿った価格 相場より著しく高い価格で取得
意思決定の記録 取締役会議事録・稟議書・事業計画が残っている 記録がない
その後の動き 資産構成が安定している 判定後に元の構成へ戻している

表の見方:黄色の収益性が中心です。賃料が入り続けている資産は、節税だけが目的だと言われにくくなります。

重要ポイント:薄赤の行は最も分かりやすい否認の材料です。判定を通した後に資産構成を戻すと、一時的な対策だったと認定されます。株特外しは元に戻さない前提で設計してください。

税務署に説明できる状態にするための記録

合理的な理由があったかどうかは、相続が起きた後になって記憶で説明することはできません。取得した当時に残した書類だけが根拠になります。

場面 残す書類 書いておく内容
資産を取得すると決めたとき 取締役会議事録・稟議書 なぜその資産が必要かという事業上の理由
物件や設備を選んだとき 比較検討の資料・査定書 複数の候補を比べて選んだ経緯と価格の妥当性
取得したとき 売買契約書・重要事項説明書 取引の相手方と価格・条件
貸付を行ったとき 金銭消費貸借契約書 金利・返済期限・担保の有無
運用しているとき 賃貸借契約書・入出金の記録 賃料が実際に入っている事実
毎期末 株式等の割合の計算書 相続税評価額ベースでの割合の推移

表の見方:黄色の行が起点です。決めた時点の議事録に事業上の理由が書かれているかが、後から最も強く効きます。

重要ポイント:最後の行を続けているかどうかで印象が変わります。毎期末に割合を計算していれば、管理の一環だったと説明できます。相続の年だけ計算していると、相続対策そのものだったと見られます。

書類は取得した時点でそろえてください。相続が起きてから作成した書類は、作成日から意図を疑われます。税務調査では作成の時期まで確認されます。

否認された場合に何が起きるか

否認されると評価をやり直すことになります。本来より低く申告していた分の相続税に、加算税と延滞税が乗ります。

発生するもの 内容
本税の追加 株式保有特定会社として評価し直した差額に対する相続税
過少申告加算税 追加の税額の10%(一定額を超える部分は15%)
重加算税 仮装・隠蔽があると認定された場合は35%
延滞税 法定納期限の翌日から納付日までの期間に応じて発生

表の見方:薄赤の2つが上乗せ部分です。節税できたはずの金額を超える負担になることもあります。

重要ポイント:持株会社を使った取引そのものについても、法人税法132条の同族会社の行為計算の否認という別の規定があります。通達の判定と法人税法132条の否認は別々に働きます。

参照元:e-Gov法令検索 法人税法(第132条 同族会社等の行為又は計算の否認)

相続税にも同じ趣旨の規定があります。同族会社を使った取引で相続税や贈与税の負担が不当に減ると認められると、その取引がなかったものとして計算し直されます(相続税法64条)。

参照元:e-Gov法令検索 相続税法(第64条 同族会社等の行為又は計算の否認等)

申告後に評価の誤りが分かったときの手続きは、下記の記事で解説しています。

通達どおりに計算しても否認されることがある

株式保有特定会社の判定を通り、計算も通達どおりでも、最後にもう1つの規定が残っています。財産評価基本通達の総則6項と呼ばれる定めです。

通達189のなお書き 総則6項 法人税法132条
何を否定するか 株式等の割合を下げた資産構成の変動 通達どおりの評価額そのもの 同族会社の行為や計算
結果 変動がなかったものとして判定し直す 国税庁長官の指示を受けて評価し直す その行為がなかったものとして計算し直す
使われる場面 課税時期の直前に資産を入れ替えた 通達どおりの評価が著しく不適当と認められる 税負担を不当に減らしていると認められる
対象 相続税の評価 相続税の評価 法人税など

表の見方:3つは別々に働きます。1つをかわしても、残りの2つが残ります。黄色の行のとおり、どれも「なかったことにして計算し直す」形で効きます。

重要ポイント:総則6項は通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産について、国税庁長官の指示を受けて評価すると定めています。借入で資産を取得して評価額だけを大きく下げた事例で問題になってきました。

通達どおりに計算したから安全とは言い切れません。節税だけが目的で、事業上の理由を説明できない設計は、どの規定からも狙われます。

参照元:国税庁 財産評価基本通達 6(この通達の定めにより難い場合の評価)

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持株会社を作る3つの方式|税負担が変わる

持株会社を作る方法は主に3つあります。どれを選ぶかで、その場で発生する税金と、あとで38%を引ける範囲が変わります。入口のコストと出口の効果を並べて比べてください。

3方式の比較

違いは、株式を移すときにオーナー個人へ課税されるかどうかです。課税されない方式は手続きが重く、簡単な方式は課税されます。

株式移転 現物出資 株式譲渡
やること 組織再編で持株会社を新設し、株式を移す 個人が株式を出資して持株会社を作る 個人が株式を持株会社に売る
個人への課税 持株会社の株式だけを受け取れば課税されない 譲渡所得税(20.315%) 譲渡所得税(20.315%)
手続きの重さ 重い。株主総会の特別決議と登記が必要 中程度。検査役の調査が要る場合がある 軽い。売買契約で足りる
資金の要否 不要 不要 必要(借入や配当で用意する)
設立時の含み益への38%控除 効かない 効かない 含み益が生じない(時価で買うため)
向いている場面 株主がオーナー一族だけで、グループ経営を目指す 株価がまだ低い時期に移してしまいたい 後継者が決まっていて早く形を作りたい

表の見方:黄色の行が選択の決め手です。株式移転だけは、持株会社の株式以外に金銭などを受け取らなければ課税されずに移せます。

重要ポイント:株式移転で株主に課税されないかどうかは、金銭などを受け取ったかで決まります。一方、税法上の要件(適格株式移転)を満たさないと、事業会社が持つ土地などの含み益に法人税がかかる場合があります。

計算ロジック:譲渡所得税の20.315%は、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の合計です。株式の時価が3億円なら、取得費を引く前の概算でおよそ6,000万円の税負担が入口で発生します。

参照元:国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)

参照元:e-Gov法令検索 所得税法(第57条の4 株式交換等に係る譲渡所得等の特例)

株価が低いうちに動かすほど入口が軽い

現物出資と株式譲渡は課税されますが、株価が低い時期に実行すれば負担は小さく済みます。動かしたあとの値上がり分は持株会社側で生じ、そこには38%の控除が効きます。

実行した時期の株式の時価 譲渡所得税(20.315%)の目安 将来の含み益の扱い
1億円 約2,000万円 値上がり分は持株会社側で生じる
3億円 約6,000万円 同上
5億円 約1億円 同上

表の見方:黄色の行が理想的な時期です。株価が上がってからでは、入口の税負担が節税額を食います。

重要ポイント:株式譲渡では売却代金がオーナー個人の手元に残ります。その現金がそのまま相続財産になるので、受け取った後の使い道まで設計しないと効果が相殺されます。

株式を相続したときと売却したときで税金がどう違うかは、下記の記事で解説しています。

株式移転|課税されない代わりに手続きが重い

株式移転は、会社法に定められた組織再編の手続きです。オーナーが持株会社の株式だけを受け取る形にすれば、株主に課税されずに完全な親子関係を作れます。

項目 内容
手続きの流れ 株式移転計画の作成 → 株主総会の特別決議 → 新設登記
株主への課税 持株会社の株式以外に金銭などを受け取らなければ課税されない(所得税法57条の4第2項)
適格要件を満たさない場合 事業会社が持つ一定の資産を時価で評価し直し、含み益に法人税がかかる
適格の判定で見られること 株式移転のあとも完全な親子関係が続く見込みがあるか
手続きの期間 計画の作成から登記まで3〜6か月
そろえる書類 株式移転計画書・取締役会と株主総会の議事録・株主名簿

表の見方:黄色と薄赤の差が分かれ目です。株主の課税と会社の課税は別に判定されるので、両方を設立前に試算してください。

重要ポイント:株主総会は特別決議(議決権の3分の2以上)で可決でき、全員の同意は要りません。ただし反対した株主には株式を買い取るよう求める権利があり、その代金の準備が必要になります。

参照元:e-Gov法令検索 会社法(第309条2項・第804条・第806条 株式移転)

現物出資|株価が低い時期に使う

現物出資は、株式そのものを出資して持株会社を作る方法です。個人に譲渡所得税がかかるため、株価が低い時期に実行するほど負担が軽くなります。

項目 内容
手続きの流れ 持株会社の設立 → 現物出資の登記
個人への課税 時価で譲渡したものとして譲渡所得税(20.315%)が発生する
検査役の調査を省ける場合 出資する財産の価額が500万円以下、または弁護士・税理士などの証明がある場合
向いている時期 創業期・成長期など株価がまだ低い段階
将来の含み益 出資した後の値上がり分は持株会社側で生じる

表の見方:薄赤が入口のコストです。株価が上がってから実行すると、この負担が節税額を食います。

重要ポイント:黄色の検査役の調査は手続きの重さを左右します。非上場株式の評価額は500万円を超えることが多いので、証明を得る形が一般的です。

株式譲渡|手続きは軽いが資金と出口の設計が要る

株式譲渡は、個人が持つ株式を持株会社に売る方法です。手続きは最も軽い一方、持株会社側に買い取る資金が必要になります。

項目 内容
手続きの流れ 持株会社の設立 → 売買契約 → 代金の決済・株主名簿の更新
個人への課税 譲渡所得税(20.315%)が発生する
持株会社の資金 金融機関からの借入・子会社からの配当・オーナーからの貸付
返済の原資 子会社からの配当。完全な親子関係なら受取配当は全額が益金に入らない
売却代金の扱い オーナー個人の現金として、そのまま相続財産になる

表の見方:薄赤の最後の行が見落とされます。株式が現金に変わっただけでは相続財産は減りません。受け取った代金の使い道まで決めて、はじめて対策になります。

重要ポイント:持株比率によって受取配当の扱いが変わります。完全な親子関係でない場合は一部が課税されるので、借入の前に返済計画と合わせて確認してください。

計算ロジック:時価3億円の株式を譲渡すると、取得費を引く前の概算で約6,000万円の譲渡所得税が発生します。持株会社が買い取る形は、持株会社をオーナーが持つか後継者が持つかで、相続税への効き方がまったく変わります。

参照元:e-Gov法令検索 法人税法(第23条 受取配当等の益金不算入)

既存の会社を使う方法|株式交換・会社分割

新しく会社を作らず、今ある会社を持株会社にする方法もあります。グループにすでに複数の会社があるなら、こちらのほうが手間が少ない場合があります。

方法 やること 向いている場面
株式交換 オーナーが持つ別の会社(資産管理会社など)を親会社にし、事業会社を完全子会社にする 資産管理会社がすでにある
会社分割(抜け殻方式) 事業会社の事業を新しい子会社に移し、元の会社を持株会社として残す 許認可や取引先との契約を整理しても事業を移せる

重要ポイント:株式交換で受け入れた株式も、株式移転と同じく設立時の含み益には38%が効きません。会社分割は許認可の引き継ぎや契約の名義変更が必要になることがあり、事業への影響を先に確認してください。

後継者が持株会社を作って株式を買い取る方法

持株会社を使った事業承継では、後継者が新しく持株会社を作り、借入で先代から株式を買い取る方法もよく使われます。先代が持株会社を持つ形とは、相続税への効き方がまったく違います。

ここでは仕組み、税金の比較、買取価格の決め方、事業承継税制との関係を整理します。

仕組みと進め方

後継者が出資して持株会社を作り、その会社が金融機関から借りたお金で先代の株式を買います。借入の返済は、事業会社から持株会社への配当でまかないます。

STEP1
後継者が持株会社を設立する。資本金は少額でもよいが、借入の審査に耐える事業計画を用意する

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STEP2
持株会社が金融機関から買取資金を借りる。返済の原資は事業会社からの配当になる

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STEP3
先代が事業会社の株式を持株会社へ売る。価格は所得税の基準で計算した時価にそろえる

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STEP4
先代は翌年の確定申告で譲渡所得税(20.315%)を納める。手元には税引き後の現金が残る

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STEP5
事業会社が持株会社へ配当し、持株会社が借入を返す。完全な親子関係なら受取配当は全額が益金に入らない

重要ポイント:STEP5の配当が出せなくなると、持株会社の返済が止まります。事業会社の業績が下がった年でも返せる金額で借入の額と期間を決めてください。

先代が持つ持株会社との違い

同じ「持株会社」でも、株式を誰が持つかで目的が変わります。先代が持つ形は評価を下げる対策、後継者が持つ形は株式そのものを先代の財産から外す対策です。

先代が持つ持株会社 後継者が持つ持株会社
先代の相続財産になるもの 持株会社の株式 売却代金(税引き後の現金)
株価が上がった分 先代の相続財産として課税される 後継者側に残り、先代の相続財産にならない
先代にかかる税 入口では原則なし(株式移転の場合) 譲渡所得税20.315%
資金 不要 持株会社の借入が必要
経営権 先代が持株会社を通して持ち続ける 後継者に移る

表の見方:黄色の行が最大の違いです。後継者が持つ形では、売却した後に会社が成長しても、先代の相続税は増えません。

重要ポイント:先代の手元に残る現金は相続財産になります。株式が現金に置き換わるだけなので、株価が上がらない会社ではかえって税負担が増えることがあります。

税金はいくら変わるか|売却する場合と相続する場合

後継者の持株会社に売ると、先代には譲渡所得税がかかり、相続財産は手元の現金になります。売却後に会社がどれだけ成長するかで、どちらが有利かが逆転します。

【前提】

  • 事業会社の株式の時価=5億円(取得費1,000万円)。ほかの財産1億円
  • 相続人は子2人(配偶者はすでに亡くなっている)
  • 売却代金は使わずに相続財産として残る
パターン 譲渡所得税 子2人の相続税 合計
株価が5億円のまま・株式を相続 0円 1億9,710万円 1億9,710万円
株価が5億円のまま・持株会社に売却 約9,954万円 約1億5,230万円 約2億5,184万円
株価が8億円に上昇・株式を相続 0円 3億4,500万円 3億4,500万円
株価が8億円に上昇・持株会社に売却 約9,954万円 約1億5,230万円 約2億5,184万円

表の見方:株価が変わらなければ、売却のほうが約5,474万円多く税を払います。株価が8億円に上がれば、売却のほうが約9,316万円少なくなります。

重要ポイント:この例では、株価が約6億1,400万円を超えて上がると売却のほうが有利になります。売却時の約1.2倍が分かれ目です。成長が見込めない会社では、この方法は節税になりません。

計算ロジック:譲渡所得税は(5億円−1,000万円)×20.315%=約9,954万円です。売却後の遺産は手取り約4億46万円+ほかの財産1億円=約5億46万円、株式を相続する場合は6億円(8億円に上昇なら9億円)です。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

買取価格の決め方|安すぎても高すぎても課税される

個人が法人に株式を売るときは、所得税の基準で計算した時価に価格をそろえます。時価の2分の1未満で売ると、時価で売ったものとして先代に譲渡所得税がかかります。

価格の水準 先代(売り手) 持株会社(買い手)
時価の2分の1未満 時価で売ったものとして譲渡所得税がかかる(所得税法59条) 時価との差額が受贈益として法人税の対象になる
時価の2分の1以上で時価未満 実際の価格で課税されるが、行為計算の否認を受けることがある 時価との差額が受贈益になる
時価 実際の価格で課税される 課税なし
時価を超える 超えた部分が一時所得や給与として課税されることがある 超えた部分は寄附金などとして損金にならない

表の見方:黄色の時価で売るのが原則です。安く売って先代の税を抑えようとすると、買い手の持株会社に課税されます。

重要ポイント:所得税の基準で計算した時価は、相続税評価額とは違います。土地や上場株式を課税時期の時価で評価し直し、法人税等相当額38%を引かないなど、いくつかの修正を加えて計算します(所得税基本通達59-6)。

計算ロジック:時価の2分の1未満の価格で法人に譲渡すると、所得税法59条1項2号と同施行令169条により、時価で譲渡したとみなされます。先代の手取りは減るのに税は時価で計算されるため、最も不利な形になります。

参照元:国税庁 所得税基本通達 59-6(株式等を贈与等した場合の「その時における価額」)

事業承継税制は使えない|選ぶ前に比べる

後継者の持株会社が株式を買い取ると、先代から後継者への相続や贈与が起きないため、事業承継税制の納税猶予は使えません。どちらを使うかは、実行の前に決める必要があります。

後継者の持株会社が買い取る 事業承継税制を使う
先代の手元に残るもの 税引き後の現金 なし(株式を渡す)
後継者側の負担 持株会社の借入と返済 猶予の要件を守り続けること
株価上昇分 後継者側に残る 後継者に移る
打ち切りのリスク 配当が出せず返済が滞る 要件を外すと猶予税額と利子税を一括で納める

重要ポイント:先代が老後資金や納税資金として現金を必要としているなら買取、現金が不要で後継者の負担を抑えたいなら事業承継税制が候補になります。両方の試算を並べてから選んでください。

事業承継税制の要件と手続きは、下記の記事で解説しています。

持株会社のデメリットと、向かない会社

評価が下がる話だけで判断すると失敗します。コストが節税額を上回る会社が実際にあります。導入しないほうがよい条件を先に確認してください。

メリットとデメリットの整理

持株会社は相続税以外の面にも影響するので、経営面の利点と、税務・資金面の負担を並べて比べてください。

内容
メリット1 自社株の評価額が下がり、相続税の負担が軽くなる
メリット2 株式が持株会社に集まるため、後継者以外への分散を防げる
メリット3 子会社を増やしてグループとして統括できる
メリット4 事業ごとにリスクを切り分けられる
デメリット1 設立直後は株式保有特定会社に該当し、数年間は効果が出ない
デメリット2 法人がもう1社増えるため、申告と顧問料が毎年かかる
デメリット3 現物出資と株式譲渡では入口で譲渡所得税がかかる
デメリット4 株特外しの資産構成が否認されるリスクが残り続ける
デメリット5 一度作ると元の形に戻すのが難しい

表の見方:黄色の1行が導入の目的で、薄赤の5行がその代償です。デメリットのほとんどは時間とコストに関するものです。

重要ポイント:見落とされやすいのが最後の1行です。組織再編は元に戻すのに再び手続きと課税が発生します。設立の判断は、将来のグループの形まで見てから行ってください。

向かない会社の条件

次のどれかに当てはまる場合、持株会社より別の方法を先に検討したほうが有利です。

【持株会社が向かない条件】

  • 自社株の評価額が1〜2億円以下|設立と維持のコストが節税額を上回りやすい
  • オーナーが60代後半以降|株特外しが完了する前に相続が起きるおそれがある
  • 含み益がほとんどない|評価差額が小さいと38%の控除がほとんど効かない
  • 株特外しに使える資金がない|資産構成を変えられないと該当したままになる
  • 後継者が決まっていて経営を早く渡せる|株式の移転そのものを先に検討したほうが早い

とくに1つ目と3つ目は、いくら時間をかけても効果が出ません。設立の前に評価差額の大きさを必ず確認してください。

含み益が小さい会社では38%の控除がほとんど働かないため、残る効果は類似業種比準価額方式が使えるかどうかだけになります。

自社株以外の財産も含めた対策全体の組み立ては、下記の記事で解説しています。

持株会社にすると経営と資金の流れが変わる

相続税以外の変化も見ておいてください。会社が2社になることで、お金の流れと事務の量が変わります。

項目 設立前 設立後
法人税の申告 事業会社の1社分 事業会社と持株会社の2社分
オーナーの役員報酬 事業会社から受け取る 持株会社と事業会社に分けて設定できる
子会社からの配当 オーナー個人が受け取り、所得税がかかる 持株会社が受け取り、受取配当等の益金不算入の対象になりうる
借入で株式を買った場合 なし 持株会社が配当で返済を続ける必要がある
グループ内の取引 なし 配当・貸付・役員報酬などを時価で行う必要がある

表の見方:黄色の行は利点です。報酬を2社に分けると所得税の負担を調整できる場合があります。

重要ポイント:薄赤の行は資金繰りの制約になります。子会社の業績が落ちると配当が出せず、返済が滞ります。借入を使う場合は、業績が下振れしたときの返済計画まで用意してください。

グループ内の取引を時価から外れた条件で行うと、寄附金や役員給与として扱われて課税されるおそれがあります。配当も貸付も、第三者と同じ条件かどうかを確認してください。

費用対効果|いくらの会社なら見合うか

判断の基準は単純です。10年分のコスト合計より節税額が大きいかどうかを見てください。コストは初期費用と毎年の維持費に分かれます。

かかるコストの内訳

かかる費用は専門家報酬が中心で、初期に200〜500万円、毎年70〜150万円が目安になります。

費目 金額の目安 発生の仕方
設立の登記費用(登録免許税は資本金の0.7%で最低15万円・定款認証3万〜5万円・司法書士報酬) 25〜45万円 初期のみ
組織再編の専門家報酬 100〜300万円 初期のみ
株式評価とスキーム設計 50〜150万円 初期のみ
税務申告と顧問料 50〜100万円/年 毎年
法人住民税の均等割 年7万円〜 毎年(赤字でもかかる)
社会保険・事務コスト 20〜50万円/年 毎年(役員報酬を出す場合)
株特外しの資産取得 数千万円〜 初期。ただし資産として残る

表の見方:黄色が最も大きい初期費用です。組織再編は税理士・弁護士・司法書士が関わるため報酬が積み上がります。

重要ポイント:薄赤の資産取得は支出ですが消えません。賃料を生む不動産に替わるだけなので、単純なコストとは違います。ただし空室や値下がりのリスクは負うことになります。

計算ロジック:初期200〜500万円に毎年70〜150万円を10年分足すと、10年間の総コストは900〜2,000万円になります。これを上回る節税額が見込めるかが判断の分かれ目です。

見合う規模の目安

先ほどの試算では節税額が5,820万円でした。10年コストの3〜6倍に当たるため、この規模なら十分に見合います。

判断の材料 目安 理由
自社株の相続税評価額 3億円以上 これ未満だとコストを回収しにくい
評価差額(含み益) 大きいほどよい 38%の控除が効く部分だから
見込める節税額 2,000万円以上 10年コストの上限を超える水準
相続までの見込み期間 10年以上 株特外しと規模の安定に必要
オーナーの年齢 50〜60代前半 完了前に相続が起きるリスクを避けられる

表の見方:黄色の行が最初に確認する数字です。自社株の評価額が3億円を下回るなら、慎重に判断してください。

重要ポイント:5項目のうち3つ以上に当てはまるかで見当がつきます。年齢と期間の条件は後から変えられません。当てはまるうちに判断することが結果を左右します。

【導入を検討する価値があるかのチェックリスト】

  • □ 自社株の相続税評価額が3億円以上ある
  • □ 相続税評価額と帳簿価額の差(含み益)が大きい
  • □ 相続が起きるまでに10年以上の見込みがある
  • □ 株特外しに充てられる資金または借入枠がある
  • □ 後継者がまだ決まっていない、または経営権を手放したくない

最後の項目に当てはまる場合は、株式を直接渡す方法が使えないぶん持株会社の価値が上がります。逆に後継者が決まっているなら、制度の比較を先に行ってください。

二次相続まで見ると効果はさらに大きい

先ほどの試算は一次相続だけを見たものです。評価額を下げる効果は二次相続にも続きます。配偶者が相続した持株会社の株式は、次の相続でも下がった評価額のまま扱われます。

一次相続 二次相続 合計
対策なし 8,680万円 配偶者が引き継いだ財産にさらに課税される 大きい
持株会社あり(大会社) 2,860万円 下がった評価額のまま課税される 小さい

表の見方:二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、相続人も1人減ります。そのぶん税率の高い帯に届きやすくなります。

重要ポイント:評価額を下げる対策は、相続が起きるたびに効き続ける点が特徴です。納税を先送りする制度とは性質が違います。

計算ロジック:一次相続で配偶者が取得した財産は、配偶者自身の財産と合わさって二次相続の対象になります。持株会社の株式は評価額が下がった状態で引き継がれるため、2回分の相続を通して効果が積み上がります。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

配偶者にどれだけ渡すのが二次相続まで含めて有利かは、下記の記事で解説しています。

事業承継税制との比較|特例措置は令和9年9月まで計画を出せる

相続税_事業承継税制

自社株の対策には、事業承継税制という別の選択肢があります。有利な特例措置は、特例承継計画を令和9年9月30日までに出せば今からでも間に合います。持株会社と比べるときは、この期限を前提にしてください。

特例承継計画は令和9年9月30日まで出せる

特例措置を使うには、事前に特例承継計画を都道府県に出す必要があります。この提出期限は令和8年度の税制改正で延び、令和9年(2027年)9月30日までになりました。

特例措置 一般措置
事前の計画 特例承継計画の提出が必要(平成30年4月1日〜令和9年9月30日) 不要
適用期限 平成30年1月1日〜令和9年12月31日の相続等・贈与 なし
対象となる株数 全株式 総株式数の3分の2まで
納税猶予の割合 100% 相続は80%・贈与は100%
後継者の人数 最大3人 1人

表の見方:黄色の行が特例措置の有利な点です。計画を出して令和9年12月31日までに贈与・相続をすれば、全株式の100%が猶予の対象になります。

重要ポイント:薄赤の適用期限は延びていません。計画を出しても、令和9年12月31日までに贈与か相続が起きなければ特例措置は使えないため、残りの期間で贈与まで進めるかを先に決めてください。

計算ロジック:期限は2つあります。計画の提出期限が令和9年9月30日、制度の適用期限が令和9年12月31日です。提出期限の後ろ倒しは、制度を延長するものではありません。

参照元:国税庁 No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)

事業承継税制と持株会社のどちらを選ぶか

事業承継税制は納税を先送りする制度、持株会社は評価額そのものを下げる対策です。令和9年までに後継者へ株式を渡せるなら特例措置、渡せないなら持株会社と一般措置が比較の軸になります。

事業承継税制 持株会社スキーム
効果の性質 納税を猶予し、要件を満たし続ければ免除される 評価額そのものを下げる
効果の大きさ 特例措置は全株式の100%、一般措置は3分の2の株式について相続なら80%を猶予 会社規模と、設立後に増えた含み益しだい
取り消しのリスク 要件を満たせなくなると猶予税額と利子税を一括で納める 株特に再び該当する・否認される
後継者 特定が前提 決まっていなくても始められる
経営の自由度 代表者であり続けるなどの要件がある 制約はない

表の見方:黄色の行が実務で重い違いです。事業承継税制は後継者が経営を続けることが条件になります。

重要ポイント:薄赤の行はどちらにもあります。猶予は取り消されると利子税まで付いて一括で戻ってきます。持株会社は評価が確定した時点で終わるため、性質が違います。

納税猶予の要件と、猶予が打ち切られる条件は下記の記事で解説しています。

両方を組み合わせる考え方

持株会社と事業承継税制は二者択一とは限りません。持株会社で評価額を下げてから、持株会社の株式について猶予を受ける形も取れます。

1〜5年目
持株会社を設立して評価額を下げる|株特外しを進め、類似業種比準価額方式が使える状態にする

⬇

5年目以降
後継者を決める|特例措置は令和9年末で終わるため、この時期に使えるのは一般措置になる

⬇

後継者決定後
猶予の適用を検討する|下がった評価額を基準に、持株会社の株式の3分の2について猶予を受ける

重要ポイント:先に評価額を下げておけば、猶予が取り消されたときの負担も小さくなります。猶予だけに頼ると、要件を外した瞬間に満額の税負担が戻ってきます。

注意:持株会社が猶予を受けるには、特定資産が総資産の70%以上の資産保有型会社に当たらないことが要件です。子会社株式は原則として特定資産に入りませんが、株特外しで増やした賃貸不動産や現預金は特定資産に入ります。

参照元:e-Gov法令検索 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(第1条 特定資産)

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ

持株会社での相続税対策は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

持株会社スキームは、会社法・法人税法・相続税法・財産評価基本通達が同時に関わります。判断が必要な場面が多く、依頼先によって結果が数千万円単位で変わります。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

このスキームは作った後の管理が本体です。毎年の判定と証拠の積み上げを続けられるかどうかで結果が決まります。

【対応実績がある税理士に依頼すべき理由】

  • 株式等の割合の管理|毎期末に相続税評価額ベースで割合を計算し、50%未満を維持できているか確認する
  • 会社規模の判定|総資産・売上高・従業員数から適用されるLを毎年確認し、評価方式の変化を先に把握する
  • 否認されない資産構成の設計|通達189のなお書きを踏まえ、事業上の理由を説明できる形で資産を入れ替える
  • 設立方式の選択|株式移転・現物出資・株式譲渡のどれが入口の負担を抑えられるかを試算して選ぶ
  • 証拠書類の整備|取締役会の議事録・稟議書・契約書を残し、税務調査で説明できる状態にする

自社株の評価額5億円のモデルで見積りを取ると、A税理士は中会社での折衷評価までを前提に子2人の税額約4,173万円、B税理士は株特外しを完了させる計画まで組んで2,860万円という差が出ることがあります。

同じ会社で約1,313万円の差が生まれるのは、株式等の割合をどこまで下げ切る計画を立てられるかの違いです。

複数の税理士から見積りを取るメリット

見積りを比べると、持株会社スキームを実際に扱った経験があるかが分かります。報酬額ではなく次の3点を比較してください。

判定ポイント1:株式等の割合の現状値を出してくるか|相続税評価額ベースで現在何%かを数字で示せるか。「設立すれば下がります」で終わる見積りより、現状値と目標値を出す見積りのほうが実務経験があると判定できます。

判定ポイント2:設立方式ごとの入口の税負担を試算しているか|株式移転・現物出資・株式譲渡それぞれで、いくら課税されるかの比較があるか。比較がある見積りは3方式を実際に扱っている証拠になります。

判定ポイント3:株特外しの年数と手段が具体的か|何年でどの資産をいくら取得するかまで書かれているか。年数が書かれていない見積りは管理まで請け負う想定がない可能性があります。

3点すべてに数字がある見積りを選べば、設立したのに効果が出なかったという結果を避けられます。見積りの具体性は、そのまま検討量の差だと考えてください。

相談しないまま進めるリスク

自社の判断だけで進めると、取り返しがつかない形で損失が確定します。起きやすいのは次の5つです。

【相談せずに進めた場合に起きること】

  • 株式保有特定会社に該当したまま相続が起きる|類似業種比準価額方式が使えず、設立と維持のコストだけが残る
  • 設立時の含み益に38%を掛けて試算する|受け入れた時点の含み益には控除が効かず、節税額を過大に見積もる
  • 株特外しが否認される|通達189のなお書きで資産構成の変動がなかったものとされ、評価をやり直すことになる
  • 効果を二重に見込む|38%の控除が持株会社の段階で1回だけであることを知らず、節税額を過大に試算する
  • 入口の税負担で持ち出しになる|株価が上がってから譲渡し、譲渡所得税が将来の節税額を上回る

いずれも設立の前か、資産構成を動かす前に判断すれば避けられます。実行した後では戻せません。

株特外しが否認されて追加の相続税が2,000万円発生した場合、過少申告加算税が200万円(10%)、延滞税がさらに加わります。

合計で2,200万円を超える追加負担になりますが、設立前に複数の見積りを取っていれば防げた金額です。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

見積りを取る流れは4段階に分かれ、最初の資料をそろえておけば、試算の精度が上がります。

STEP1
会社と相続人の状況を整理する|事業会社の直近3期分の決算書、株主名簿、固定資産台帳、借入の明細をそろえる。相続人の構成と年齢、後継者が決まっているかどうかも書き出す

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STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する|希望内容(自社株の評価・持株会社スキームの設計・事業承継税制との比較など)を明記し、3〜5の事務所へ同時に打診する。不動産があれば所在地と広さを記載し、財産の種類と相続人の人数はできるだけ正確に伝える。フォームの記入は5分程度で終わる

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STEP3
見積りと初回相談を受ける|各事務所から提案内容・試算した相続税額・報酬額が届く。初回相談では、現在の株式等の割合、株特外しに何年かかるか、どの設立方式が有利か、その根拠を必ず質問する

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STEP4
税理士を選定して正式に依頼する|提案内容の質・説明の丁寧さ・報酬の納得性で選ぶ。設立から効果が出るまで数年かかるため、長く付き合える体制かどうかを判断の軸に入れる

重要ポイント:STEP1で決算書を3期分そろえておくことが、見積りの精度をもっとも大きく左右します。会社規模の判定にも類似業種比準価額の試算にも必要な資料です。

よくある質問

Q1. 持株会社を作るだけで相続税は下がりますか?

作った直後は下がりません。持株会社の資産がほぼ子会社株式だけの状態では株式保有特定会社に該当し、類似業種比準価額方式が使えないためです。収益不動産の取得などで株式等の割合を50%未満に下げ、その状態が安定してはじめて効果が出ます。数年かかると考えてください。

Q2. 法人税等相当額の控除は37%ではないのですか?

2026年4月1日以後の相続・遺贈・贈与なら38%、3月31日以前なら37%です。財産評価基本通達186-2の本文は、法人税・地方法人税・防衛特別法人税・事業税・特別法人事業税・道府県民税・市町村民税の税率の合計として38%と定めています。

使う割合は亡くなった日(贈与なら贈与の日)で決まります。また掛ける対象は相続税評価額と帳簿価額の差だけで、株式移転や現物出資で受け入れた時点の含み益は原則として対象外です。

Q3. 事業会社と持株会社の両方で評価を圧縮できますか?

できません。通達186-3の注書きが、持株会社の純資産価額を計算する際に子会社株式について法人税等相当額を控除しないと定めているためです。

38%の控除が効くのは持株会社の段階の1回だけです。二重に圧縮できる前提で試算すると、節税額を過大に見積もることになります。

Q4. 相続が近いのですが、今から株特外しをして間に合いますか?

間に合わない可能性が高く、否認のリスクもあります。通達189のなお書きは、課税時期の前に合理的な理由もなく資産構成に変動があり、それが該当を免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして判定すると定めています。

直前の対策は最初から効かない仕組みになっています。数年前から資産構成を変え、事業上の理由を記録に残しておく必要があります。

Q5. 事業承継税制の特例措置は今から使えますか?

使えます。特例承継計画の提出期限は令和8年度の税制改正で延び、令和9年9月30日までに出せば特例措置の対象になります。

ただし制度の適用期限は令和9年12月31日のままです。それまでに贈与か相続が起きないと特例措置は使えず、使えるのは一般措置になります。

まとめ

持株会社は自社株の評価額を下げる有効な手段ですが、効果が出るまでに数年かかり、管理を続けることが前提の対策です。

  • 評価額が下がる主な理由は類似業種比準価額方式の適用。38%の控除は設立時の含み益には原則として効かない
  • 38%の控除が効くのは持株会社の段階で1回だけ。通達186-3の注書きにより二重には効かない
  • 自社株5億円のモデルで、株特を外して大会社になれば子2人の相続税は8,680万円から2,860万円まで下がる(5,820万円減)
  • 設立直後は株式保有特定会社に該当し、外すまでの数年間は効果がほとんど出ない
  • 直前の株特外しは通達189のなお書きで否認される。事業上の理由と記録が必要
  • 設立方式は主に3つ。3つのうち株式移転だけは持株会社の株式だけを受け取れば課税されない
  • 後継者の持株会社が買い取る方法は、売却後に株価が上がらない会社ではかえって税負担が増えることがある
  • 事業承継税制の特例措置は、令和9年9月30日までに計画を出し、令和9年12月31日までに贈与・相続をすれば、要件を満たす限り使える
  • 自社株の評価額が1〜2億円以下ならコストが節税額を上回りやすい

今すぐ取るべき行動

  • 自社株の相続税評価額と、持株会社を作った場合に38%を引ける含み益がいくらかを確認する
  • 事業会社の直近3期分の決算書・株主名簿・固定資産台帳をそろえる
  • 事業承継税制の特例措置を使うかどうかを決め、使うなら令和9年9月30日までに特例承継計画を出す
  • 相続税の対応実績がある税理士3〜5の事務所から見積りを取り、株式等の割合の現状値と株特外しの年数を出してもらう
  • 先代が持つ持株会社と後継者が買い取る方法の両方で、入口の税負担と相続税を試算する

※本記事は2026年10月時点の法令および財産評価基本通達に基づいて作成しています。法令や通達の改正により内容が変わる場合があります。具体的な対策については相続税の対応実績がある税理士にご確認ください。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
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