


非上場株式は市場で売買されていないため、株価がいくらなのかを自分で調べることができません。国が定めた方法で計算した金額が、相続税の評価額になります。
計算には会社の決算書と法人税の申告書が必要で、相続人が自分だけで進められる財産ではありません。
評価額は同じ会社でも計算方法によって変わります。会社の規模と、株を受け取る人の立場の2つで方法が決まる仕組みです。
総資産3億円・従業員25人・売上5億円の製造業の株を10,000株相続した場合、評価額は1億4,160万円になります。会社の規模が1つ変わると2億1,256万円になり、7,100万円の差が出ます。
経営に関わらない親族が少しだけ受け取った場合は、別の計算方法で3,000万円です。同じ株なのに4.7倍の開きがあります。
2026年4月から評価のルールを見直す議論が始まっており、純資産で計算するときに差し引く割合は37%から38%に変わりました。
この記事では、評価方法を決める3つのステップ、会社からもらう資料、株価の2つの出し方、会社規模別の相続税額、株を少しだけ持つ人の計算方法、納税を猶予できる制度、税額を下げる方法、相続した後の選択肢、税務調査、評価ルールの見直しまでを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

非上場株式は市場価格がないため国が定めた方法で評価します。相続税の世界では「取引相場のない株式」と呼びます。上場株式でも気配相場のある株式でもない株式が、すべてこれに当たります。
上場株式なら証券取引所の終値を調べれば評価額が分かりますが、非上場株式にはその価格が存在しません。そこで国税庁が財産評価基本通達で計算方法を定めており、その方法で出した金額を時価として相続税を計算します。
相続税法22条が財産の価額を「取得の時における時価」と定めているためです。
違いは価格が公表されているかどうかです。それによって評価の手間も、必要な資料もまったく変わります。
| 項目 | 上場株式 | 非上場株式 |
|---|---|---|
| 価格 | 取引所の終値が公表されている | 公表されていない |
| 評価に使う資料 | 証券会社の残高証明書 | 会社の決算書・法人税申告書 |
| 評価の方法 | 4つの価格のうち最も低いもの | 会社の規模と株主の立場で決まる |
| 自分で計算できるか | できる | 実務上は難しい |
| 売却 | いつでも売れる | 買い手を探す必要がある |
| 納税資金にできるか | できる | すぐには難しい |
表の見方:相続税の申告で問題になるのは下の3行です。評価額は大きいのに、売って納税資金にすることができません。現金は入ってこないのに相続税だけがかかるという状態になります。
上場株式の相続税評価額の調べ方は、下記の記事で解説しています。

会社を経営していた人の相続では自社株が財産の半分以上を占めることも珍しくありません。
会社に利益が積み上がっているほど株価は上がります。事業が順調に続いてきた会社ほど、相続税の負担が重くなるという関係です。創業者が退いた後も配当を出さずに内部留保を厚くしてきた会社では、想定していなかった評価額になることがあります。
事業を続けてきたことが、そのまま相続税の負担に跳ね返る構造です。
注意点:会社の預金や不動産は会社のものであって相続人のものではありません。株の評価額に反映されるだけで、そこから直接お金を引き出して納税にあてることはできません。
実務では税理士が会社の決算書をもとに計算します。
計算そのものは国税庁が定めた手順に従うため、正しく進めれば誰が計算しても同じ金額になるはずのものです。
ただし会社が持っている土地や建物、取引先の株式などを相続税の評価に置き換える作業が入るため、そこで判断が分かれることがあります。会社が古くから持っている土地ほど、帳簿の金額と実際の評価額が離れています。
重要ポイント:会社が土地を持っている場合、その土地の評価だけで数千万円の差が出ることがあります。路線価の使い方や、面積による補正の適用で結論が変わります。
株式全般の相続税と売却したときの税金は、下記の記事で解説しています。


評価方法は株主の立場・会社の種類・会社の規模の3つで決まります。
この3つを順番に判定しないと、どの計算式を使うかが決まりません。最初のステップで結論が出ることもあり、その場合は会社の規模を調べる必要すらなくなります。順番には意味があるので、飛ばさずに確認してください。判定を誤ると、計算そのものをやり直すことになります。
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重要ポイント:STEP1で会社を支配していない側と判定されれば、それだけで評価額が大きく下がります。この記事の例では4.7倍の差になりました。
判定するのは会社を支配している側かどうかです。
親族などのグループで議決権の30%以上を持っていれば同族株主にあたります。50%を超えるグループがある会社では、そのグループだけが同族株主です。
そのうえで、株を受け取った本人が5%以上を持つか、役員になっているかといった条件で原則的評価方式になるかが決まります。
| 株を受け取る人 | 評価方法 | この記事の例での金額 |
|---|---|---|
| 会社を支配している側(後継者など) | 原則的評価方式 | 1億4,160万円 |
| 支配していない側(経営に関わらない親族) | 配当還元方式 | 3,000万円 |
表の見方:同じ10,000株でも誰が受け取るかで4.7倍の差が出ます。後継者が受け取ると高く、経営に関わらない親族が受け取ると安くなります。
注意点:安くなるからといって後継者以外に株を分散させると、会社の意思決定が難しくなります。税額だけで決める話ではありません。
次に確認するのが特定の評価会社に当てはまらないかです。
資産の内容がかたよっている会社は、通常の方法で評価すると実態と合わなくなるため、別の扱いになります。該当すると原則として純資産価額方式で評価することになり、会社の規模による組み合わせは使えません。
【特定の評価会社に当てはまる6つのケース】
重要ポイント:とくに注意が必要なのが株式等保有特定会社と土地保有特定会社です。節税のために持株会社を作ったり不動産を買ったりした結果、これに該当して逆に評価額が上がることがあります。
最後に総資産・従業員数・売上高の3つで規模を判定します。
従業員が70人以上いれば、それだけで大会社になります。70人未満の場合は、業種ごとに定められた金額と比べて判定します。業種は卸売業、小売・サービス業、それ以外の3つに分かれます。複数の事業を営んでいる場合は、取引金額の最も大きい事業で判定します。
| 規模 | 判定の基準(卸売業・小売サービス業以外の場合) |
|---|---|
| 大会社 | 従業員70人以上/総資産15億円以上(従業員35人超)/売上15億円以上 |
| 中会社 | 総資産5,000万円以上(従業員5人超)/売上8,000万円以上15億円未満 |
| 小会社 | 総資産5,000万円未満または従業員5人以下/売上8,000万円未満 |
計算ロジック:総資産と従業員数で見た規模と、売上高で見た規模を出し、大きいほうの規模を採用します。基準額は業種によって違い、卸売業は大会社が総資産20億円以上、小売・サービス業は15億円以上です(財産評価基本通達178)。
注意点:会社の規模は大きいほど評価額が下がる傾向があります。この記事の例では、中会社と判定されるか小会社と判定されるかで7,100万円の差が出ました。

評価を始めるには会社から決算書と法人税の申告書を出してもらう必要があります。
相続人が自分で用意できる資料はほとんどありません。株主名簿に名前が載っているだけでは計算できず、会社の中にある数字がそろわないと1円も評価できないというのが実際のところです。まず何を依頼すればよいかを整理しておくと、会社とのやり取りが1回で済みます。
必要なのは直近3期分の決算書と法人税申告書、株主名簿の3点が中心です。
【会社に依頼する資料】
重要ポイント:3期分が必要なのは、配当と利益を直前期と直前々期の平均で計算する場合があるためです。1期分だけでは計算できません。会社の経理担当者に依頼すれば、まとめて用意してもらえます。
注意点:会社が土地を持っている場合はその土地を相続税の評価額に置き換える作業が別に発生します。路線価と面積の資料が必要になるため、早めに登記事項証明書を取っておくと後が楽になります。
経営に関わっていない相続人の場合会社が決算書の開示に応じないことがあります。
株主には会社法上、計算書類の閲覧を請求する権利があります。ただし相続が起きた直後は株主名簿の書き換えが済んでおらず、会社側が「まだ株主ではない」として応じないことがあります。後継者と他の相続人が対立している場合は、この段階で止まります。
会社の顧問税理士が後継者側についていると、話がさらに進みません。
【資料が出てこないときに起こること】
重要ポイント:期限が迫っているなら先に株主名簿の書き換えを申し出てください。株主として認められれば、会社法に基づいて開示を求められます。
国税庁が取引相場のない株式(出資)の評価明細書という様式を用意しています。
第1表から第8表まであり、順番に埋めていくと株価が出る作りになっています。第1表で株主の立場と会社の規模を判定し、第4表で類似業種比準価額、第5表で純資産価額を計算し、第3表で最終的な1株当たりの金額を出します。
第2表以降は特定の評価会社に当たる場合に使う表です。
注意点:この明細書は相続税の申告書に添付します。計算の過程を示す書類なので、どの数字をどこから持ってきたかが分かるようにしておく必要があります。
相続税の申告に必要な書類の一覧は、下記の記事で解説しています。


株価の出し方は似た業種の上場企業と比べる方法と、会社の資産から出す方法の2つです。
前者を類似業種比準方式、後者を純資産価額方式と呼びます。会社の規模によって、どちらをどの割合で使うかが決まります。一般に類似業種比準方式のほうが金額が低くなるため、この方式をどれだけ使えるかで評価額が変わります。その割合を決めるのが会社の規模です。
同じ業種の上場企業の株価をもとに配当・利益・純資産の3つを比べて計算します。
国税庁が業種ごとに上場企業の平均値を公表しており、その数字と自社の数字を比べて倍率を出します。自社の数字が上場企業の平均より低ければ、株価もそれに応じて低くなります。中小企業は上場企業より利益率が低いことが多く、この方式が有利に働きます。
計算式:類似業種の株価 ×〔(自社の配当÷類似業種の配当)+(自社の利益÷類似業種の利益)+(自社の簿価純資産÷類似業種の簿価純資産)〕÷3 × 斟酌率 ×(1株当たり資本金等の額÷50円)
| 会社の規模 | 斟酌率 | この記事の例での金額 |
|---|---|---|
| 大会社 | 0.7 | 14,156円 |
| 中会社 | 0.6 | 12,133円 |
| 小会社 | 0.5 | 10,111円 |
計算ロジック:自社の1株当たり(資本金等の額を50円とした場合)は配当3円・利益10円・簿価純資産200円です。類似業種が配当5円・利益30円・簿価純資産250円・株価350円なら、比準割合は(3÷5+10÷30+200÷250)÷3=0.578になります。
重要ポイント:斟酌率は会社の規模で変わります。小さい会社ほど低く抑えられるため、この方式だけを見れば小会社が有利です。ただし小会社は次の純資産価額方式の比重が大きくなります。
会社の資産と負債を相続税の評価額に置き換えて計算します。
会社をいま解散したらいくら残るかという考え方です。帳簿上の金額ではなく相続税の評価額に洗い替えるため、含み益のある土地や有価証券を持っている会社では金額が上がります。創業から長い会社ほど、この方式での金額が大きくなります。
計算式:〔相続税評価額による純資産 −(相続税評価額による純資産 − 帳簿価額による純資産)× 38%〕÷ 発行済株式数
計算ロジック:相続税評価額による純資産が4億円、帳簿価額による純資産が2億円なら、差額の2億円が含み益です。ここに38%をかけた7,600万円を差し引き、3億2,400万円を10,000株で割って1株32,400円になります。
2026年の改正で37%から38%に引き上げられました。
この割合は、会社を解散して含み益を実現したときにかかる税金の分をあらかじめ差し引くという趣旨のものです。法人税・地方法人税・防衛特別法人税・事業税・特別法人事業税・道府県民税・市町村民税の税率の合計として定められています。
防衛特別法人税が新たに設けられたことで合計が上がり、財産評価基本通達186-2が改正されました。
| 差し引く割合 | 1株当たりの評価額 | 10,000株の総額 | |
|---|---|---|---|
| 改正前(37%) | 37% | 32,600円 | 3億2,600万円 |
| 現行(38%) | 38% | 32,400円 | 3億2,400万円 |
表の見方:含み益2億円の会社で200万円だけ評価額が下がります。差し引く割合が上がると、その分だけ評価額は小さくなります。
注意点:37%と書かれた解説はすべて改正前のものです。掛ける対象は純資産の全額ではなく、相続税評価額と帳簿価額の差だけです。ここを取り違えると評価額が大きく変わります。
2つの方式を会社の規模に応じた割合で組み合わせます。
組み合わせの割合をLといい、大会社に近いほどLが大きくなります。Lが大きいほど、金額の低い類似業種比準方式の比重が増えるという関係です。いずれの規模でも、純資産価額のほうが低ければそちらを採用できます。
| 会社の規模 | 計算方法 | L |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額(純資産価額を選ぶこともできる) | - |
| 中会社の大 | 類似業種比準価額×0.90+純資産価額×0.10 | 0.90 |
| 中会社の中 | 類似業種比準価額×0.75+純資産価額×0.25 | 0.75 |
| 中会社の小 | 類似業種比準価額×0.60+純資産価額×0.40 | 0.60 |
| 小会社 | 純資産価額(L=0.50で組み合わせることもできる) | 0.50 |
計算ロジック:Lは総資産と従業員数で見た割合と、売上高で見た割合の大きいほうを使います。この記事の例では総資産3億円・従業員25人で0.75、売上5億円で0.90となり、大きいほうの0.90を採用します(財産評価基本通達179)。
重要ポイント:Lが0.90か0.60かで評価額は1億4,160万円と2億240万円に分かれます。売上がわずかに基準を下回るだけで6,080万円の差になります。

同じ会社の同じ株でも会社規模の判定が1つ変わると7,100万円の差が出ます。
評価額だけを見ても実感がわかないので、相続税額まで通して計算します。会社の数字はすべて同じにして、規模の判定だけを変えた場合の比較です。判定が微妙な会社ほど、この差が現実の問題になります。売上や総資産が基準の境目にある会社では、期によって判定が動きます。
計算に使うのは製造業の中小企業と、配偶者と子2人という家族です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 製造業(卸売業・小売サービス業以外) |
| 総資産(帳簿価額) | 3億円 |
| 従業員数 | 25人 |
| 売上高(直前期) | 5億円 |
| 発行済株式数 | 10,000株 |
| 1株当たり資本金等の額 | 5,000円 |
| 相続税評価額による純資産 | 4億円 |
| 帳簿価額による純資産 | 2億円 |
| 年間の配当 | 300万円 |
| 年間の利益 | 1,000万円 |
計算ロジック:類似業種の数字は株価350円・配当5円・利益30円・簿価純資産250円としました。1株当たり資本金等の額を50円とした場合の株数は100万株となり、自社の1株当たりは配当3円・利益10円・簿価純資産200円です。
重要ポイント:この会社は総資産3億円・従業員25人・売上5億円なので中会社の大(L=0.90)と判定されます。以下の表は、比較のために規模の判定だけを変えたものです。
規模が変わると1億4,156万円から2億1,256万円まで開きます。
| 会社の規模 | 類似業種比準価額 | 純資産価額 | 1株の評価額 | 10,000株の総額 |
|---|---|---|---|---|
| 大会社 | 14,156円 | 32,400円 | 14,156円 | 1億4,156万円 |
| 中会社の大(この会社) | 12,133円 | 32,400円 | 14,160円 | 1億4,160万円 |
| 中会社の中 | 12,133円 | 32,400円 | 17,200円 | 1億7,200万円 |
| 中会社の小 | 12,133円 | 32,400円 | 20,240円 | 2億240万円 |
| 小会社 | 10,111円 | 32,400円 | 21,256円 | 2億1,256万円 |
表の見方:純資産価額は規模に関係なく32,400円で同じです。変わるのは類似業種比準価額をどれだけ使えるかだけで、それが7,100万円の差を生んでいます。
計算ロジック:中会社の大は12,133円×0.90+32,400円×0.10=14,160円、中会社の小は12,133円×0.60+32,400円×0.40=20,240円です。
重要ポイント:小会社は斟酌率が0.5に下がるため類似業種比準価額が10,111円まで下がりますが、組み合わせが半分ずつなので結果としては高くなります。
重要ポイント:会社の規模が大きいほど評価額が低くなります。国の検査でも同じ傾向が確認されており、この点が評価ルールを見直す議論のきっかけになっています。
評価額の差はそのまま相続税額の差になります。
| 会社の規模 | 自社株の評価額 | 課税価格の合計 | 相続税の総額 |
|---|---|---|---|
| 大会社 | 1億4,156万円 | 1億9,156万円 | 2,488.9万円 |
| 中会社の大(この会社) | 1億4,160万円 | 1億9,160万円 | 2,490.0万円 |
| 中会社の中 | 1億7,200万円 | 2億2,200万円 | 3,250.0万円 |
| 中会社の小 | 2億240万円 | 2億5,240万円 | 4,054.0万円 |
| 小会社 | 2億1,256万円 | 2億6,256万円 | 4,409.4万円 |
計算ロジック:課税価格は自社株に自宅3,000万円と預貯金2,000万円を加えた金額です。基礎控除3,000万円+600万円×3人=4,800万円を差し引き、法定相続分で分けたと仮定して総額を計算しています。
表の見方:中会社の大と小会社では相続税が1,919.4万円違います。会社の数字は1つも変えていません。規模の判定が変わっただけでこの差になります。
注意点:この総額は相続人全体で納める金額です。実際には配偶者の税額軽減が使えるため、配偶者がどれだけ取得するかで納税額はさらに変わります。
配偶者の税額軽減を使った分け方は、下記の記事で解説しています。

この会社では1株1円の引き下げが約3,000円の相続税に相当します。
10,000株なので、1株1円下げると評価額が1万円下がります。この財産規模だと相続税の限界税率は30%前後なので、1万円の評価減が約3,000円の税額減につながる計算です。
重要ポイント:逆にいえば1株1,000円の評価の違いが約300万円の税額の違いになります。土地の評価や従業員数の数え方といった細かい判断が、この規模で効いてきます。

経営に関わらない親族が受け取ると評価額は4.7分の1になります。
会社を支配しない立場の株主にとって、株の価値は配当を受け取れることだけです。そこで、受け取れる配当の金額から逆算して評価するという考え方が用意されています。これを配当還元方式といい、原則的な方法とは別枠の特例です。
会社の資産がいくらあっても、配当の金額だけで評価額が決まります。
使えるのは会社を支配する側に入らない株主です。
親族などのグループで議決権の30%未満しか持たない場合や、同族株主のいる会社で、同族株主に当たらない人が受け取った場合が典型です。同族株主であっても、議決権が5%未満で役員でもなく、中心的な同族株主がほかにいる場合には使えることがあります。
| 株を受け取る人 | 配当還元方式 |
|---|---|
| 同族株主のいる会社で、同族株主に当たらない人 | 使える |
| 議決権5%未満で役員でもない同族株主(中心的な同族株主が別にいる) | 使える |
| 後継者として株を集約する人 | 使えない |
| 議決権を5%以上持つ人・役員になっている人 | 使えない |
注意点:判定するのは相続で株を取得した後の状態です。相続前は少ししか持っていなくても、相続で集まって5%以上になれば使えません。
計算式は年間の配当を10%で割り戻すだけです。
計算式:(1株当たりの年配当金額 ÷ 10%)×(1株当たり資本金等の額 ÷ 50円)
計算ロジック:この会社の年間配当は300万円です。1株当たり資本金等の額を50円とした場合の株数100万株で割ると1株3円になり、3円÷10%=30円に、5,000円÷50円=100を掛けて1株3,000円です。
重要ポイント:1株当たりの年配当が2円50銭を下回る場合は2円50銭として計算します。配当をまったく出していない会社でも、この方式では評価額がゼロにはなりません。
同じ10,000株が1億4,160万円と3,000万円に分かれます。
| 評価方法 | 1株の評価額 | 10,000株の総額 | 課税価格 | 相続税の総額 |
|---|---|---|---|---|
| 原則的評価方式(後継者) | 14,160円 | 1億4,160万円 | 1億9,160万円 | 2,490.0万円 |
| 配当還元方式(経営に関わらない親族) | 3,000円 | 3,000万円 | 8,000万円 | 350.0万円 |
表の見方:評価額の差は1億1,160万円、相続税の差は2,140.0万円です。同じ株を誰が受け取るかだけの違いでこれだけ変わります。
注意点:税額が安いからといって株を後継者以外に分散させるのは危険です。議決権が分かれると会社の意思決定ができなくなり、将来の買い戻しにも多額の資金が必要になります。事業を続けるなら、後継者に集約するのが原則です。

要件を満たせば自社株にかかる相続税の全額の納税が猶予されます。
後継者が会社を継いで経営を続けることを条件に、納税を先送りできる制度です。一定の期間が経過し、次の世代へ引き継ぐか一定の事由が生じれば猶予税額は免除されます。この記事の例では2,490.0万円の納税を猶予できる可能性があります。
ただし猶予であって免除ではない点に注意が必要です。
納税が免除ではなく猶予から始まるのが特徴です。
申告期限までに手続きをして担保を提供すると、自社株に対応する相続税の納付が猶予されます。その後、後継者が代表者として経営を続けるなどの要件を満たしている間は猶予が続き、後継者が死亡した場合や次の後継者へ引き継いだ場合に免除されます。
重要ポイント:猶予が取り消されると猶予されていた税額に利子税を付けて一括で納めることになります。使うかどうかは、その先の経営まで見通して判断する必要があります。
確認すべきなのは期限と、猶予が続く条件の2つです。
【事業承継税制で注意すべき点】
注意点:この制度は資料の準備と手続きに時間がかかります。相続が起きてから検討を始めると間に合わないことがあるため、早い段階で税理士に相談してください。
参照元:国税庁 No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等
参照元:国税庁 事業承継税制特集
事業承継税制の要件と手続きの全体像は、下記の記事で解説しています。

納税を猶予できる4つの制度の違いは、下記の記事で解説しています。


株価を下げる方法は利益を圧縮するか、純資産を減らすかの2つに分かれます。
類似業種比準方式は配当・利益・簿価純資産の3つで決まり、純資産価額方式は会社の資産と負債の差で決まります。どちらの方式が使われるかによって、効く対策が変わります。ただし相続が起きた後にできることは限られており、本来は生前に手を打っておく分野です。
相続が起きてから使える手は、実質的に死亡退職金だけです。
相続が起きた後でも使えるのがこれです。会社から死亡退職金を支給すると株価が下がります。
退職金は会社の損金になるため利益が減り、支払った分だけ純資産も減ります。類似業種比準方式でも純資産価額方式でも評価額が下がる、数少ない方法です。
重要ポイント:受け取った遺族の側でも500万円×法定相続人の数までは相続税がかかりません。相続人が3人なら1,500万円までが非課税です。会社側の株価も下がり、遺族側にも非課税枠があるという二重の効果があります。
注意点:不相当に高額な部分は会社の損金として認められません。在職年数や功績に見合った金額であることが必要です。株主総会の決議と支給規程を整えておいてください。功績倍率法で計算した金額が一つの目安になります。
参照元:国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
もっとも効果が大きいのは株価が下がったタイミングで贈与することです。
業績が落ち込んだ年や、大きな設備投資をした年は株価が下がります。そのタイミングで後継者に贈与しておけば、相続財産そのものを減らせます。相続時精算課税を使えば2,500万円までの贈与に贈与税がかからず、相続時には贈与時の評価額で計算されます。
重要ポイント:相続時精算課税で贈与した株は相続のときに贈与時の評価額で加算されます。株価が上がっていく会社なら、低いときの評価額で固定できます。逆に下がる会社では不利になります。
見落とされやすいのが名義だけ他人になっている株です。
会社を設立した当時、発起人が7人必要だった時代に、親族や知人の名義を借りて株主にしたケースがあります。出資したのが被相続人であれば、名義が誰であっても被相続人の財産として相続税の対象になります。
【名義株式が問題になる場面】
注意点:整理するなら被相続人が生きているうちに進めてください。出資の経緯を知っている人がいなくなると、名義株だと証明することも難しくなります。
名義預金と判定される基準は、下記の記事で解説しています。

相続税を減らす対策の全体像と優先順位は、下記の記事で解説しています。


相続した非上場株式は持ち続ける・会社に買い取ってもらう・第三者に売るの3つです。
後継者でない相続人にとって、非上場株式は配当も少なく売却も難しい財産です。持っていても議決権を行使する機会はほとんどなく、相続税だけを負担することになります。
どの選択肢を採るかで、その後の税金がまったく変わります。選ぶ前に、それぞれの期限と税率を確認してください。
何もしなければ相続税を納めたうえで株を持ち続けることになります。
配当が出ていれば配当所得として毎年課税されますが、中小企業では無配のことも多く、その場合は何の収入も生みません。そして次の相続でまた評価され、相続税の対象になります。
注意点:持ち続けると次の相続でも同じ問題が起きます。会社の業績が伸びていれば評価額はさらに上がっています。
後継者でない相続人にとって、これが現実的な出口になります。相続した株を発行会社に売ると税率が20.315%で済む特例があります。
通常、会社が自社株を買い取ると、出資した金額を超える部分は配当を受け取ったものとみなされ、総合課税で最高55%の税率がかかります。ところが相続で取得した株を一定期間内に発行会社へ譲渡した場合は、その全額を譲渡所得として扱う特例が使えます。
重要ポイント:この特例を使うには相続税の申告期限の翌日から3年以内に譲渡する必要があります。相続開始から数えると3年10か月です。期限を過ぎると配当扱いに戻り、税率が大きく変わります。
注意点:会社に買い取る資金がなければ成立しません。分配できる利益の額にも会社法上の制限があります。事前に会社と話をしておく必要があります。
買い手を見つけて売る方法ですが非上場株式は買い手を探すこと自体が難しいです。
会社の株式に譲渡制限がついている場合は、会社の承認がなければ売ることができません。承認されなかった場合、会社または会社が指定した買取人が買い取ることになります。価格が折り合わなければ裁判所に価格の決定を申し立てる流れです。
時間も費用もかかるため、実際にここまで進む例は多くありません。
| 選択肢 | 税金 | 実現しやすさ | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 持ち続ける | 相続税のみ(配当があれば配当所得) | - | 次の相続でまた課税される |
| 会社に買い取ってもらう | 譲渡所得20.315%(特例) | 会社に資金があれば可能 | 申告期限の翌日から3年以内 |
| 第三者に売る | 譲渡所得20.315% | 買い手を探すのが難しい | 譲渡制限があると会社の承認が必要 |
表の見方:後継者でない相続人にとって現実的な出口は会社に買い取ってもらう方法です。ただし期限があるので、相続税の申告と並行して動く必要があります。
重要ポイント:相続税を納めた財産を売る場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例も使えます。こちらも申告期限の翌日から3年以内が条件です。
相続した財産を売ったときの取得費加算の特例は、下記の記事で解説しています。

株も含めて相続を放棄した場合の扱いは、下記の記事で解説しています。


非上場株式の申告では名義株・資産の評価替え・特定会社の判定の3つが狙われます。
株価の計算は手順が決まっているため、計算そのものを争われることは多くありません。問題になるのは、計算の前提となる数字をどう置いたかという部分です。とくに会社の実態を確認したかどうかが見られます。
もっとも多いのがこれです。他人名義の株が被相続人の財産と認定されます。
調査では、出資した資金を誰が出したか、配当を誰が受け取っていたか、株券や印鑑を誰が管理していたかが確認されます。名義人が出資した事実を証明できなければ、被相続人の財産と判断されます。設立が古い会社ほど、当時の資料が残っていないことが問題になります。
注意点:申告漏れとされると過少申告加算税と延滞税が加わります。意図的に隠したと判断されれば重加算税の対象です。
純資産価額方式では会社の資産を相続税の評価額に置き換えます。
帳簿価額のまま計算していると、含み益のある土地や有価証券が評価に反映されません。とくに古くから持っている土地は、帳簿価額と相続税評価額が大きく違うことがあります。
重要ポイント:会社が3年以内に取得した土地や建物は相続税評価額ではなく通常の取引価額で評価します。評価を下げる目的で直前に不動産を買っても効果が出ない仕組みです。
資産の内容によっては通常の方法で評価できない会社になります。
総資産に占める株式や土地の割合が高い会社は、株式等保有特定会社や土地保有特定会社として純資産価額方式で評価することになります。この判定を飛ばすと、本来より低い評価額で申告することになります。
注意点:節税のために持株会社を作ったり不動産を購入したりした結果、これらに該当して評価額が上がってしまうことがあります。対策をした後に必ず判定し直してください。
重要ポイント:この3つはいずれも計算式ではなく前提の置き方の問題です。税理士がどこまで会社の実態を確認したかで結果が変わります。

国税庁が2026年4月から評価ルールの見直しに向けた議論を始めています。
いま相続が起きた場合に適用されるのは、この記事で説明してきた現行のルールです。見直しはまだ議論の段階で、内容も時期も確定していません。
ただし生前の対策を考えている場合は、将来の変更を前提に判断する必要が出てきます。効果が出るまでに数年かかる対策ほど、この影響を受けます。
きっかけは国の検査で評価方式の間に大きな開きがあると指摘されたことです。
会計検査院が2024年11月に公表した検査結果では、無作為に抽出した1,600件の申告を分析したところ、類似業種比準価額の中央値が純資産価額の中央値の4分の1程度になっていました。
| 会社の規模 | 純資産価額に対する申告評価額の中央値 |
|---|---|
| 大会社 | 0.32倍 |
| 中会社 | 0.50倍 |
| 小会社 | 0.61倍 |
表の見方:会社の規模が大きいほど純資産価額に対する評価額が低くなっています。規模が大きいほど類似業種比準方式の比重が増える仕組みが原因です。
重要ポイント:この記事のシミュレーションでも大会社1億4,156万円・小会社2億1,256万円と同じ傾向が出ました。評価方式の選び方だけで税額が変わる状態が問題視されています。
配当還元方式についても指摘があります。割り戻すときに使う10%という率は昭和39年の通達制定当時から変わっておらず、現在の金利水準に合っていないという内容です。
会社の規模による区分を一本化する案が示されています。
現在は大会社・中会社・小会社で計算方法が分かれていますが、これを統一する方向で検討が進んでいます。また、残余利益方式という新しい計算方法を導入する案も出ています。会社が生み出す利益のうち、資産から通常得られる分を超える部分に着目する考え方です。
【議論されている主な論点】
注意点:いずれも議論の段階であって決まったものではありません。有識者会議は2026年4月20日に第1回が開かれ、8月時点で第5回まで開催されています。
適用は2028年ごろという見通しが示されています。
通達の改正には議論のとりまとめとパブリックコメントの手続きが必要で、実際に適用されるまでには時間がかかります。確定していない以上、いま相続が起きた人が心配する必要はありません。
| 状況 | 適用されるルール | いますべきこと |
|---|---|---|
| すでに相続が起きている | 現行のルール | この記事の方法で評価して申告する |
| これから生前対策をする経営者 | 将来は変わる可能性がある | 議論の進み方を見ながら判断する |
重要ポイント:すでに相続が起きているなら見直しの議論は関係ありません。相続が起きた日に有効だったルールで評価します。
注意点:生前対策として持株会社を作ったり会社の規模を変えたりする方法は、見直しによって効果が失われる可能性があります。効果が出るまで数年かかる対策ほど、この点を織り込む必要があります。
会社経営者の相続税対策の全体像は、下記の記事で解説しています。


非上場株式の評価は税理士の判断で税額が数千万円変わります。複数の事務所から見積りを取り、提案の中身を比べてください。
評価額を左右するのは会社規模の判定・会社が持つ資産の評価・特定会社の判定の3つです。どれも計算式ではなく、前提をどう置くかで結果が変わります。
【相続税の対応実績がある税理士に相談すべき理由】
たとえば総資産3億円・従業員25人・売上5億円の製造業で、相続税評価額による純資産が4億円という会社があるとします。
A税理士は会社規模を小会社と判定しました。自社株の評価額は2億1,256万円、相続税の総額は4,409.4万円です。
B税理士は売上高の基準で判定し直し、中会社の大としました。評価額は1億4,160万円、相続税の総額は2,490.0万円です。1,919.4万円の差が生まれています。
比べるべきなのは会社の実態をどこまで確認するかです。決算書を受け取るだけの事務所と、会社の資産を1つずつ見る事務所があります。
判定ポイント1:会社規模の判定根拠を説明できるか「総資産と従業員数で見た規模」と「売上高で見た規模」の両方を出し、どちらを採用したかを説明できるかどうかです。→ 片方だけで判定している事務所は、評価額が高くなる可能性があります。
判定ポイント2:会社が持つ土地を見に行くか「会社名義の不動産はありますか」と聞いたうえで、登記事項証明書と路線価を確認するかどうかです。→ 帳簿価額のまま計算すると、含み益が反映されず後で問題になります。
判定ポイント3:複数の評価方法を並べて示すか類似業種比準価額と純資産価額の両方を計算し、組み合わせた結果まで示す事務所かどうかです。→ 1つの数字しか出さない事務所は、選択の余地を検討していません。
非上場株式は間違えても気づきにくい財産です。市場価格がないため、比べる相手がいません。
【相談しないまま進めた場合のリスク】
納めすぎた相続税を取り戻すには更正の請求が必要で、申告期限から5年を過ぎると請求できなくなります。複数の事務所から見積りを取っていれば、判定の違いはその時点で見えます。
払いすぎた相続税を取り戻す手続きは、下記の記事で解説しています。

見積りはフォームの記入5分から始められます。
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重要ポイント:非上場株式がある相続では会社から資料をもらう時間を見込んでください。決算書と法人税申告書がそろわないと試算もできないため、相続開始から3か月以内には動き出す必要があります。
計算式は国税庁が公表しているので、理屈のうえでは可能です。ただし会社の決算書と法人税申告書に加えて、会社が持つ土地や有価証券を相続税の評価額に置き換える作業が必要になります。
国税庁の「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」を使えば手順どおりに進められますが、会社規模の判定や特定の評価会社の判定で誤ると評価額が大きく変わります。実務では税理士に依頼するのが一般的です。
現在は38%です。財産評価基本通達186-2が2026年に改正され、法人税・地方法人税・防衛特別法人税・事業税・特別法人事業税・道府県民税・市町村民税の税率の合計として38%と定められました。
37%と書かれた解説は改正前のものです。また掛ける対象は純資産の全額ではなく、相続税評価額による純資産と帳簿価額による純資産の差額だけです。
かかります。利益がゼロでも、会社に資産が残っていれば純資産価額方式で評価額が出るためです。土地や建物を持っている会社では、赤字でも高い評価額になることがあります。
ただし配当・利益・簿価純資産のうち2つ以上が2期続けてゼロの場合は比準要素数1の会社となり、原則として純資産価額方式で評価します。この場合、類似業種比準方式による引き下げは使えません。
会社を支配する側に入らなければ、配当還元方式で評価できます。この記事の例では、後継者が受け取ると1億4,160万円、経営に関わらない親族が受け取ると3,000万円で、4.7倍の差になりました。
ただし議決権が分散すると会社の意思決定が難しくなります。相続した後に会社へ買い取ってもらう方法もありますが、相続税の申告期限の翌日から3年以内という期限があります。
いま相続が起きている場合は、現行のルールで評価します。相続が起きた日に有効だったルールが適用されるため、見直しの議論が申告に影響することはありません。
国税庁は2026年4月から有識者会議を開いており、会社規模による区分の一本化や残余利益方式の導入が議論されています。適用は2028年ごろという見通しですが、内容も時期も確定していません。
非上場株式の相続税は、株価をどう評価するかで決まります。計算式そのものは国が定めていますが、その前提となる会社規模の判定や資産の評価で結果が変わります。
この記事の要点をまとめます。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年9月時点の法令等に基づいて作成しています。相続税法の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度については国税庁のホームページや税理士にご確認ください。