相続税申告に税理士は必要?頼まないで自分でできるケースと判断基準

相続税申告は税理士に頼まない

相続税の申告は、税理士に頼まなくても自分で行えます。税理士への依頼は、法律上の義務ではありません。

ただし自分で申告している人は令和6年度で13.5%にとどまり、86.5%は税理士に頼んでいます。

自分で調べ始めると、多くの人が土地の評価か申告書の様式で手が止まります。そこで要るのは、割に合うかを決める判断基準です。

判断の軸は2つです。1つは約200時間の作業を税理士費用と比べた損益分岐で、遺産1億円なら時給4,000円が分かれ目になります。

もう1つは特例の使い忘れです。自宅の土地の特例を見落とすと、遺産8,000万円の家庭でも470万円を余分に払います。

逆に、財産が預貯金だけで土地がなく、特例も使わない家庭なら、自分で申告しても損をしにくくなります。

この記事では、自分でできるケースの5つの条件、自分では詰まる4つの壁、相続の手続きのうち税理士が要る部分、200時間の損益分岐、途中で税理士に切り替える判断基準を解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 相続税申告に税理士は必須ではない。ただし自分で申告している人は13.5%(令和6年度)
  • 自分でできるのは、土地がないか自宅1件の整形地で、特例を使わず、分け方が決まっている家庭
  • 本当の分かれ目は特例の使い忘れ。自宅の土地の特例1つで470万円=税理士費用の7.3倍の差
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結論|相続税申告に税理士は必須ではない

最初に結論を示します。相続税の申告は、税理士に頼まなくても自分で行えます。ただし自分で申告している人は13.5%と少数派です。ここでは法律上の位置づけ、実際の割合と推移、自分でできるかを3分で見分ける方法を順に確認します。

法律上は自分で申告してよい|税理士への依頼は義務ではない

相続税の申告義務は、財産を受け取った相続人や受遺者にあります(相続税法27条)。税理士に頼むことを求める規定はありません。相続人が自分で申告書を作って出すことは、法律上まったく問題ありません。

相続人が複数いる場合は、全員で1通の申告書を共同で出せます(相続税法27条5項)。代表の1人が作り、ほかの相続人が署名する形で進めるのが一般的です。

注意したいのは、相続人でない知人や親族に作ってもらう場合です。税理士でない人が他人の申告書を作ると、無償でも税理士法に反するおそれがあります(税理士法2条・52条)。

参照元:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

自分で申告している人は13.5%|5年間の推移

財務省が公表する「国税庁実績評価書」には、相続税の税理士関与割合が載っています。令和6年度は86.5%で、自分で申告した人は13.5%という計算になります。

年度 令和2 令和3 令和4 令和5 令和6
税理士関与割合 86.1% 86.1% 85.9% 86.3% 86.5%
自分で申告した割合 13.9% 13.9% 14.1% 13.7% 13.5%

表の見方:自分で申告した割合は13.5〜14.1%の範囲で動いているだけで、令和6年度の13.5%は5年間で最も低い数字です。

重要ポイント:「自分で申告する人が増えている」という説明を見かけますが、割合は横ばいから微減です。相続税は所得税(関与割合20.4%)と逆で、専門家に任せる人が多い税金です。

計算ロジック:数値は財務省「令和6事務年度 国税庁実績評価書」の参考指標2「税理士関与割合」です。相続税はその年の10月末までに出された前年の相続の申告書が対象で、自分で申告した割合は100%から関与割合を引いて出しています。

参照元:財務省 令和6事務年度 国税庁実績評価書

自分でできるかを3分で見分ける4つの質問

細かい条件は次の章で扱います。まず4つの質問で大まかに見分けてください。1つでも「はい」でないものがあれば、見積りだけでも取ってから決めるのが安全です。

質問1

土地がないか、自宅1件だけか

土地がなければ評価の壁はありません。自宅1件でも、形が整い道路に1面だけ接しているなら自分で評価できます。

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質問2

特例を使わずに税額が出るか

自宅の土地の特例や配偶者の税額軽減を使わないなら、要件の判断が要りません。

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質問3

分け方が決まっているか

相続人が1人か、全員が分け方に合意していれば、協議書を作るだけで済みます。

⬇

質問4

期限まで5か月以上あるか

申告期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。残りが5か月を切っているなら、自分で始めないでください。

重要ポイント:4つすべて「はい」なら、自分で申告しても損をしにくい家庭です。見積りと初回相談は無料の事務所が多いので、迷ったら費用をかけずに確かめられます。

相続税申告の全体の流れと、10か月の期限から逆算した予定の立て方は、下記の記事で解説しています。

税理士に頼まないで自分でできるケース|5つの条件

自分で申告しても損をしにくいのは、判断の要らない相続です。次の5つの条件をすべて満たすなら、税理士に頼まないで自分で申告して構いません。ここでは5つの条件を1つずつ確認し、最後にチェックリストにまとめます。

5つの条件の一覧|満たすと自分で申告しやすい理由

5つの条件は、どれも「答えが1つに決まるかどうか」で選んでいます。答えが1つに決まる作業なら、時間さえかければ自分でも正しく仕上げられます。

条件 満たすと自分でできる理由 満たさないと起きること
1. 相続人が少なく、分け方が決まっている 分割の比較や協議の調整が要らない 未分割のまま期限を迎え、特例が使えない
2. 財産が現金・預貯金・上場株式だけ 残高や公表価格がそのまま評価額になる 非上場株式などの評価が専門領域になる
3. 土地がない、または自宅1件の整形地 路線価に面積を掛けるだけで済む 補正を使わず評価が高く出る
4. 特例を使わずに税額が出る 要件の判断ミスが起きない 使える特例を見落として払いすぎる
5. 申告期限まで5か月以上ある 待ち時間を含めても間に合う 加算税と延滞税がかかる

表の見方:右の列は、条件を満たさないまま自分で進めた場合に起きやすいことです。条件2と3は評価、条件1と4は税額、条件5は期限の問題にかかわります。

相続人と財産の条件|分け方が決まり評価が簡単な財産だけ

相続人が1人なら、分け方を話し合う必要がありません。2人以上でも、分け方に争いがなく協議がすぐまとまるなら、協議書の作成は難しくありません。

危ないのは、分け方が決まらないまま申告期限が近づくケースです。未分割のまま申告すると、自宅の土地の特例も配偶者の税額軽減も使えず、いったん高い税額を納めることになります。

財産の側では、預貯金は死亡日の残高がそのまま評価額です。上場株式も、死亡日の終値と3か月分の月平均のうち最も低い価格を選ぶだけで決まります。

一方で、非上場株式・ゴルフ会員権・書画骨董・海外資産があると、評価そのものが専門領域になります。生命保険金と死亡退職金は相続税の対象に含める点も忘れないでください。

未分割で申告した場合のやり方と、後から特例を取り戻す手続きは、下記の記事で解説しています。

土地と特例の条件|自宅1件の整形地で特例を使わない

土地は自分で申告するときの最大の関門です。自宅1件だけで、形が整っていて道路に1面だけ接しているなら、路線価に面積を掛けるだけで評価額が出ます。

2件以上ある場合や、角地・旗竿地・間口が狭い土地がある場合は、補正の判断が入ります。貸している土地やアパートの敷地も、借地権割合などの計算が加わります。

特例については、使わなくても税額が出るなら判断ミスが起きません。遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら、そもそも申告が要りません。

【注意】特例で0円になる場合は申告が必要

自宅の土地の特例や配偶者の税額軽減を使って税額が0円になる場合でも、申告書を出さないと特例は使えません。「0円だから出さなくてよい」と判断するのは誤りです。

基礎控除の計算式と、申告が必要かどうかの判定手順は、下記の記事で解説しています。

期限の条件|申告期限まで5か月以上あるか

自分で進めると、作業時間とは別に待ち時間がかかります。完了までの期間は5〜7か月を見込み、残りが5か月を切っているなら自分で始めないでください。

段階 期間の目安 待ち時間が生じる理由
財産の洗い出しと書類集め 1〜2か月 戸籍の取り寄せ・残高証明書の発行待ち
遺産の分け方の話し合い 1日〜数か月 相続人全員の合意が取れるまで進まない
財産の評価 数日〜2か月 土地の資料取得と現地の確認
申告書の作成 1日〜2週間 —
提出と納付 1日〜数日 —

表の見方:合計すると長い場合で5〜7か月です。10か月の期限のうち、余裕は3か月ほどしかありません。最も読めないのは分け方の話し合いです。

重要ポイント:期限に遅れても、期限後申告で自宅の土地の特例や配偶者の税額軽減は使えます。ただし無申告加算税と延滞税は避けられません。「遅れたら特例が使えない」と思い込んで諦めないでください。

参照元:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

5つの条件のチェックリスト

次の項目にすべて印が付くか確認してください。1つでも欠けるなら、税理士の見積りを取ってから決めてください。

  • □ 相続人が1人、または少人数で分け方に争いがない
  • □ 財産が現金・預貯金・上場株式だけで、非上場株式や海外資産がない
  • □ 土地がない、または自宅1件だけで形が整っている
  • □ 特例を使わずに税額が出る、または基礎控除以下で申告が要らない
  • □ 申告期限まで5か月以上ある
  • □ 平日の日中に10日以上動ける
  • □ 生命保険金・死亡退職金の有無を確認した

重要ポイント:最後の2項目は条件の外ですが、自分で申告した人がつまずきやすい点です。役所・法務局・金融機関は平日の日中しか開いていないため、休みを取れるかも確かめてください。

税理士に頼んだほうがよいケース|自分では詰まる4つの壁

自分で申告を始めた人が手を止めるのは、決まった4か所です。どれも「調べれば分かる」ではなく、答えが1つに決まらず判断が要る領域です。ここでは4つの壁と、それぞれで何が起きるかを解説します。

壁1|土地の評価は補正の判断で数百万円変わる

路線価に面積を掛けるだけで済む土地は、実はそう多くありません。形や道路との接し方に応じて補正をかけ、判断を誤ると評価額が数百万円単位で変わります。

土地の状況 必要な処理 難しさ
形が整い、道路に1面だけ接する 路線価×面積 低い
角地・2面が道路に接する 側方路線の加算 中
形がいびつな土地・旗竿地 不整形地の補正 高い
間口が狭い・奥行が長い 間口と奥行の補正 高い
私道に接する・私道を含む 私道の評価(3割または0円) 高い
貸している土地・アパートの敷地 借地権割合・借家権割合 高い
面積が大きい土地 地積規模の大きな宅地の評価 非常に高い

表の見方:上の2行までなら自分で対応できます。3行目から下は補正を使うかどうかの判断が入るため、答えが1つに決まりません。

重要ポイント:補正を使わずに評価すると、評価額は必ず高く出ます。税務署は「高すぎます」とは教えてくれず、払いすぎがそのまま確定します。

参照元:国税庁 No.4602 土地家屋の評価

壁2|名義預金を相続財産に含めるかの線引き

子や孫の名義の預金でも、中身が亡くなった人のお金なら相続財産に含めます。決め手はお金の出どころで、通帳や印鑑を誰が管理していたか、贈与の事実があったかも見られます。

「これは贈与済みだから含めない」と自分で決めると、税務調査で覆されることがあります。税務調査で見つかる申告漏れは、財産の種類別では現金・預貯金等が最も多く29.1%を占めます。

【名義預金と判定されやすい預金の特徴】

  • お金を出したのが亡くなった人で、名義人に収入がなかった
  • 通帳と印鑑を亡くなった人が管理し、名義人は口座の存在を知らなかった
  • 贈与契約書がなく、贈与税の申告もしていない

3つとも当てはまる預金は、名義にかかわらず相続財産に含めて申告するのが安全です。1つでも迷うものがあれば、その預金だけでも専門家に確かめてください。

名義預金と判定されたときに相続税がいくら増えるかと、夫婦と親子で違う判定の基準は、下記の記事で解説しています。

壁3|特例の要件は書類だけでは決まらない

自宅の土地の特例(小規模宅地等の特例)は、誰が取得するかで要件が変わります。配偶者なら無条件ですが、同居していた子や持ち家のない子が取得する場合は、細かい要件の判断が要ります。

同居の実態があったか、3年以内に自分や配偶者の持ち家に住んでいなかったかは、書類だけでは決まりません。老人ホームに入っていた場合も、別の要件を確かめます。

宅地が複数ある場合は、どの宅地に特例を使うと有利かの選択も必要です。面積の上限があるため、選び方で税額が変わります。

自宅の土地の特例の4つの類型と、誰が相続すると得かは、下記の記事で解説しています。

壁4|非上場株式は評価の方法から選ぶ

亡くなった人が会社を経営していた場合、その会社の株式を評価します。会社の規模を判定し、似た業種の上場会社と比べる方法か、会社の純資産から出す方法かを決めます。

決算書3期分から数字を拾い、業種ごとの比較の数値と照らし合わせる作業で、自分で正確に出すのは現実的ではありません。非上場株式がある時点で、税理士に頼む前提で進めてください。

【4つの壁の共通点】

どの壁も、計算そのものより「どれを使うか」の判断が難しい点が共通しています。ツールや税務署の窓口は計算を助けても、判断は代わりにしてくれません。

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相続の手続き全体で税理士が要る部分・要らない部分

「相続の手続きは税理士に頼むもの」と考える人もいますが、税理士の仕事は税金にかかわる部分だけです。相続税がかからない家庭なら、相続の手続きに税理士は要りません。ここでは手続きごとの担当と期限、税理士が要るかどうかの分かれ目を整理します。

相続の手続きごとの担当と期限の一覧

相続の手続きは、期限の早いものから順に進みます。税理士が担当するのは相続税の申告と、亡くなった人の所得税の申告(準確定申告)です。

手続き 期限 主な担当 自分でできるか
相続放棄・限定承認 知った日から3か月以内 弁護士・司法書士 できる(家庭裁判所)
準確定申告(所得税) 知った日の翌日から4か月以内 税理士 できることが多い
相続税の申告・納付 知った日の翌日から10か月以内 税理士 条件しだい
不動産の名義変更(相続登記) 取得を知った日から3年以内 司法書士 できる(法務局)
預金の解約・名義変更 期限なし 相続人本人 できる(金融機関)
遺産分割の交渉・調停 期限なし 弁護士 争いがなければできる

表の見方:黄色の行が、税理士に頼むかどうかで最も差が出る手続きです。ほかの手続きは担当する専門家が別で、多くは自分でも進められます。

重要ポイント:相続登記は2024年4月から義務になり、正当な理由なく3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象です。税理士ではなく司法書士の領域です。

参照元:法務省:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~

税理士に相談できることと頼めないことの境界は、下記の記事で解説しています。

相続税がかからない家庭なら税理士は要らない

遺産総額が基礎控除以下なら、相続税の申告は要りません。この場合、税理士に頼む必要はほぼなく、名義変更や預金の解約は自分で進められます。

子2人なら基礎控除は4,200万円、配偶者と子2人なら4,800万円です。自宅の評価額は、固定資産税の通知書ではなく路線価で見積もると実際の評価に近づきます。

基礎控除との差が小さい家庭は、判定そのものを税理士に確かめる価値があります。生命保険金や3年以内(令和6年以後の贈与は段階的に7年以内)の贈与を足し忘れると、判定が逆になるためです。

税理士が要るかどうかの分かれ目

  • 遺産が基礎控除以下で特例も使わない → 税理士は要らない
  • 遺産が基礎控除を少し超えるか、判定に迷う → 判定だけ相談する
  • 特例を使って0円にする・土地がある → 申告を頼むかを検討する

司法書士・弁護士とどちらに先に相談するか

相続税がかかる家庭では、税理士と司法書士の両方が関わることが多くなります。相続税がかかりそうなら、分け方を決める前に税理士へ相談してください。誰が何を取得するかで、使える特例と税額が変わるためです。

相続人の間で争いがある場合は、先に弁護士です。税理士は中立の立場で税額を試算できますが、相続人どうしの交渉には入れません。

司法書士と税理士のどちらに先に相談するかと、頼む順番は、下記の記事で解説しています。

本当の分かれ目は特例の使い忘れ|数百万円の差

自分で申告するときの最大のリスクは、時間ではなく金額です。自宅の土地の特例を1つ見落とすだけで、税理士費用の7倍を超える税金を余分に払うことがあります。ここでは使い忘れで払いすぎる額を、実際の計算で示します。

自宅の土地の特例を使い忘れた場合の払いすぎ額

亡くなった人が住んでいた土地は、要件を満たせば330㎡まで評価額が80%減ります。土地5,000万円が1,000万円になる制度で、使い忘れると4,000万円分に課税されたままです。

財産の内訳 子1人の払いすぎ額 子2人の払いすぎ額
土地5,000万円+建物1,000万円+預金2,000万円 640万円 470万円
土地8,000万円+建物1,000万円+預金3,000万円 1,570万円 1,020万円
土地1億円+建物2,000万円+預金5,000万円 2,740万円 1,820万円

表の見方:一番上の行でも子2人で470万円です。この規模の遺産(8,000万円)なら税理士費用は約64万円なので、使い忘れの損失は税理士費用の7.3倍になります。

重要ポイント:相続人が少ないほど損失が大きくなります。基礎控除が小さく、税率の帯が上がるためです。子1人で土地1億円なら2,740万円です。

計算ロジック:【前提】自宅の土地の評価額を80%減らす・相続人は子のみで法定相続分どおりに取得。特例を使わない相続税の総額から、使った総額を引いた差額です。1行目の子2人は、特例を使うと課税価格4,000万円が基礎控除4,200万円を下回り0円になります。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

配偶者の税額軽減を使わなかった場合の差

配偶者は、1億6,000万円か法定相続分の多いほうまでなら相続税がかかりません。この軽減は申告書に書いて初めて使え、自動では適用されません。

遺産総額 相続税の総額 配偶者の分=軽減で0円になる額
8,000万円 350万円 175万円
1億円 630万円 315万円
2億円 2,700万円 1,350万円
3億円 5,720万円 2,860万円
5億円 13,110万円 6,555万円

表の見方:配偶者が法定相続分の2分の1を取得した場合、軽減を使えば配偶者の分の税額はすべて消えます。遺産2億円なら1,350万円が要らなくなります。

重要ポイント:配偶者の税額軽減は使い忘れる人が少ない制度です。危ないのは「どこまで配偶者に寄せるか」の判断で、配偶者が亡くなったときの相続税で跳ね返ります。

計算ロジック:【前提】相続人は配偶者と子2人・配偶者が2分の1を取得。相続税の総額×配偶者の取得割合50%が配偶者の分で、1億6,000万円の枠内なら軽減で0円になります。遺産3億円・5億円の行は法定相続分の上限の範囲です。

参照元:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

配偶者の税額軽減の上限と、申告後に適用する方法は、下記の記事で解説しています。

払いすぎは税務署が教えてくれない|後から直せる特例・直せない特例

税務署は、申告漏れは調査で指摘しますが、払いすぎを指摘することはありません。自分で申告した人が払いすぎに気づくのは、多くの場合、何年も後です。

気づくきっかけの多くは、配偶者が亡くなったときの相続で税理士に相談した場面です。そのときには、最初の申告から5年を過ぎていることも少なくありません。

払いすぎに気づいたら、「更正の請求」という手続きで取り戻せます。期限は申告期限から5年以内です。ただし特例によって、後から加えられるかどうかが違います。

特例 後から加えられるか 根拠
配偶者の税額軽減 更正の請求で加えられる 相続税法19条の2第3項
自宅の土地の特例 申告書に書くことが条件で、更正の請求では加えられない 租税特別措置法69条の4第7項・8項
土地の評価の見直し 根拠を示せば更正の請求で直せる 国税通則法23条1項

表の見方:赤い行の自宅の土地の特例は、期限後申告や修正申告の申告書に書けば使えますが、更正の請求の書類では加えられない仕組みです。

重要ポイント:税務署長がやむを得ない事情を認めた場合の救済はありますが、当てにはできません。最初の申告で特例を書き漏らさないことが何より重要です。

更正の請求の期限・必要書類と、修正申告との違いは、下記の記事で解説しています。

200時間の損益分岐|時給で比べる

「自分でやると手間がかかる」とはよく言われますが、何時間かかるかを示した説明は多くありません。作業ごとの目安を積み上げると約200時間です。これを税理士費用と比べると、自分でやるか頼むかの損益分岐が出せます。

自分で申告すると約200時間かかる|作業ごとの内訳

200時間は、1日8時間なら25日分です。1日2時間ずつ進めると100日かかります。重いのは書類集めと申告書の作成で、この2つで約90時間を占めます。

作業 目安の時間 内訳
必要書類の収集 約40時間 役所・法務局の手続きと往復、金融機関ごとの手続き
財産の評価 約10〜50時間 土地5〜25時間・投資信託2〜10時間など
分け方の話し合いと協議書 約10〜50時間 相続人が多いほど伸びる
申告書の作成 約50時間 調べながらの記入が大半
提出と納付 約10時間 税務署への提出と金融機関での納付
合計 約200時間 —

表の見方:財産の評価と分け方の話し合いは幅が大きく、土地が多い家庭や相続人が多い家庭では200時間を超えます。

重要ポイント:戸籍の広域交付を使えば、書類集めの時間は縮められます。一方で土地の評価と申告書の作成は縮めにくく、ここが自分でやる限界を決めます。

計算ロジック:時間は、相続税に不慣れな人が調べながら進めた場合の目安を作業ごとに積み上げたものです。財産の数と相続人の数で大きく変わるため、自分のケースに当てはめて調整してください。

時間の数字に表れない制約もあります。役所・法務局・金融機関の手続きは平日の日中が中心で、口座が5つあれば5回足を運ぶことになります。休みを取る日数も費用として数えてください。

相続税申告に必要な書類の一覧と集め方は、下記の記事で解説しています。

損益分岐の時給の早見表|遺産総額ごと

税理士費用を200時間で割ると、時給に換算できます。自分の時給がこの額を超えるなら、税理士に頼むほうが安く済みます。

遺産総額 税理士費用(0.8%) 損益分岐の時給
4,000万円 32万円 1,600円
5,000万円 40万円 2,000円
8,000万円 64万円 3,200円
1億円 80万円 4,000円
2億円 160万円 8,000円
3億円 240万円 12,000円
5億円 400万円 20,000円

表の見方:遺産1億円なら時給4,000円、2億円なら8,000円が分かれ目です。遺産が大きいほど費用が上がるため、分かれ目の時給も上がります。

重要ポイント:これは時間だけの比較で、特例の使い忘れのリスクは入っていません。土地がある家庭では、次の表とあわせて見てください。

計算ロジック:【前提】税理士費用=遺産総額×0.8%(相場0.5〜1%の中ほど)・自分でやる作業時間200時間。損益分岐の時給=税理士費用÷200時間で、遺産1億円なら80万円÷200時間=4,000円です。

税理士費用の相場と、遺産額別の報酬の早見表は、下記の記事で解説しています。

年収別|頼んだほうが得になる遺産総額

自分の時給は、年収を年間の労働時間で割って出します。年収600万円で年2,000時間働く人なら時給3,000円で、遺産7,500万円を超えると頼んだほうが得になります。

年収 時給 頼んだほうが得になる遺産総額
400万円 2,000円 5,000万円超
500万円 2,500円 6,250万円超
600万円 3,000円 7,500万円超
800万円 4,000円 1億円超
1,000万円 5,000円 1億2,500万円超
1,500万円 7,500円 1億8,750万円超

表の見方:年収が高い人ほど時給が高く、頼んだほうが得になる遺産額の境目は上がります。相続税がかかる家庭の多くは、年収600万円の境目を超えます。

重要ポイント:時給の比較には、休みを取って平日に動く負担や、親を亡くした直後に手続きを進める心理的な負担は入っていません。数字は判断の材料の1つです。

計算ロジック:【前提】年間労働時間2,000時間・作業時間200時間・税理士費用は遺産総額の0.8%。境目の遺産額=時給×200時間÷0.8%で、年収600万円なら3,000円×200時間=60万円÷0.8%=7,500万円です。

遺産規模別|自分でやる場合と頼む場合のトータル比較

時間の費用に、特例の使い忘れのリスクを足して比べます。遺産1億円では使い忘れのリスクが670万円になり、税理士費用の8倍を超えます。

遺産総額 税理士費用 自分でやる時間の費用 頼む場合の時間の費用 使い忘れのリスク
5,000万円 40万円 60万円 6万円 80万円
8,000万円 64万円 60万円 6万円 470万円
1億円 80万円 60万円 6万円 670万円
2億円 160万円 60万円 6万円 2,500万円
3億円 240万円 60万円 6万円 4,900万円

表の見方:時間の費用は遺産の規模にかかわらず一定ですが、使い忘れのリスクは遺産が大きいほど急に増えます。遺産3億円なら4,900万円で、税理士費用の20倍を超えます。

重要ポイント:遺産5,000万円ではリスクが80万円で、税理士費用の2倍にとどまります。土地がない家庭ならリスクはほぼ0で、時間の費用だけの比較になります。

計算ロジック:【前提】時給3,000円・自分で200時間・頼んで20時間・税理士費用は遺産の0.8%・相続人は子2人。リスクは遺産の6割が自宅の土地で特例が使えたと仮定した税額の差です。8,000万円の行だけは上の表の1行目と同じ内訳で示しています。

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税理士に頼まないで被る5つのリスク

自分で申告するリスクは「ミスをするかもしれない」という漠然としたものではなく、それぞれ金額に置き換えられます。5つのうち最も大きく、しかも気づけないのが払いすぎです。ここではリスクを金額とともに整理します。

5つのリスクの一覧|損失の大きさと気づけるか

リスクを損失の大きい順に並べました。払いすぎだけは誰も指摘しないため、自分で気づかない限り損失が確定します。

リスク 損失の目安 気づけるか 防ぎ方
特例の使い忘れ・評価の払いすぎ 数百万〜数千万円 気づけない 特例を使えるかを専門家に確かめる
申告漏れの追徴 追加の税額+加算税+延滞税 調査で判明 調査の通知前に自分で修正申告する
税務調査を自分で受ける 時間と精神的な負担 連絡が来る 調査に立ち会える税理士に頼む
期限に間に合わない 無申告加算税+延滞税 気づける 残り5か月で判断する
分け方のやり直し 贈与税がかかるおそれ 後から判明 複数の分け方を試算して決める

表の見方:赤い行だけが「気づけない」リスクです。ほかの4つは発覚してから手を打てますが、払いすぎは気づかないまま終わることがあります。

重要ポイント:優先して防ぐべきは払いすぎです。特例を使えるかどうかだけなら、税理士の初回相談で確かめられます。無料で相談できる事務所も多くあります。

申告漏れの追徴|調査の前に自分で直せば加算税は0円

少なく申告していた場合は、追加の税額に加算税と延滞税がかかります。名義預金1,000万円の漏れを調査で指摘されると、追加で納める額は約169.2万円です。

内訳 金額 計算
追加の相続税 150万円 遺産9,000万円の税額-8,000万円の税額
過少申告加算税 15万円 追加の税額×10%
延滞税 4.2万円 追加の税額×年2.8%×1年
合計 169.2万円 —

表の見方:追加の相続税は本来払うべき税額なので、税理士に頼んでいても払います。頼んでいれば避けられたのは、加算税と延滞税の19.2万円です。

重要ポイント:調査の通知が来る前に自分で修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません。漏れに気づいたら、通知を待たずに直してください。財産を隠したと判断されると、重加算税35%がかかります。

計算ロジック:【前提】遺産8,000万円・子2人で期限内に470万円を申告済み・名義預金1,000万円の漏れを調査で指摘。追加の税額が期限内の税額以下なので加算税は全額10%です。延滞税は令和8年の年2.8%で、期限内申告なので計算期間は最長1年です。

参照元:国税庁 No.9205 延滞税について

修正申告のやり方と、加算税・延滞税の計算は、下記の記事で解説しています。

税務調査を自分で受ける|実地調査の82.3%で申告漏れ

令和6事務年度の相続税の実地調査は9,512件で、そのうち82.3%にあたる7,826件で申告漏れなどが見つかっています。1件あたりの追徴税額は867万円でした。

税理士に頼んでいれば、調査に立ち会ってもらえます。自分で申告した場合は、亡くなった人の生前の暮らしぶりやお金の動きについての質問に、自分で答えることになります。

実地調査のほかに、文書や電話で申告内容を確かめる「簡易な接触」も令和6事務年度に21,969件ありました。自分で申告した人にも、書き漏れの確認として届くことがあります。

調査の連絡が来てから税理士を探すこともできます。ただ、申告書を作った本人ではないため、内容を把握し直す時間と費用がかかります。

参照元:国税庁 令和6事務年度における相続税の調査等の状況

相続税の税務調査でどこまで調べられるかと、当日の質問への対応は、下記の記事で解説しています。

書面添付は税理士に頼んでも4件に3件はない|24.6%

「税理士に頼めば税務調査が来にくい」という説明の根拠は、書面添付制度です。ただし書面添付が付くのは、税理士が関わった相続税の申告書のうち24.6%だけです。

年度 令和2 令和3 令和4 令和5 令和6
相続税 22.2% 23.1% 23.4% 24.3% 24.6%
所得税 1.4% 1.5% 1.5% 1.5% 1.5%
法人税 9.8% 9.8% 10.0% 10.0% 10.2%

表の見方:相続税は3つの税目で最も書面添付が多いものの、それでも24.6%です。税理士に頼んでも、4件に3件は書面添付なしで出されています。

重要ポイント:書面添付は、税理士が確かめた内容を書面にして申告書に付ける制度で、税務署は調査の前に税理士の意見を聞きます(税理士法33条の2・35条)。自分で申告した場合は使えません。

計算ロジック:数値は財務省「令和6事務年度 国税庁実績評価書」の参考指標1「書面の添付割合」です。分母は税理士が関わった申告書の件数で、申告書全体ではありません。

参照元:財務省 令和6事務年度 国税庁実績評価書

自分で申告する手順とツールの限界

自分で申告すると決めたら、5つの手順で進めます。無料で申告書まで作れるツールもありますが、どのツールも土地の補正と名義預金の線引きは判断してくれません。ここでは手順、ツールで足りる範囲、税務署で聞けることを整理します。

自分で申告する手順|STEP1〜STEP5

手順は次の5つです。分け方が決まらないと評価も申告書も進まないため、STEP3を早めに始めてください。

STEP1

相続人と財産を洗い出す

戸籍で相続人を確定し、預金の残高証明書・固定資産税の通知書・保険の支払通知書を集めます。亡くなる前7年分の通帳も手元に置きます。

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STEP2

財産を評価する

土地は路線価、建物は固定資産税評価額、預金は死亡日の残高で評価します。

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STEP3

分け方を決めて協議書を作る

相続人全員で分け方を決め、遺産分割協議書に署名と実印の押印をします。分け方で使える特例が変わるため、評価と並行して進めます。

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STEP4

申告書を作る

財産の明細の表から書き始め、税額を計算して第1表にまとめます。

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STEP5

提出して納付する

亡くなった人の住所地の税務署に、書面かe-Taxで出します。納付も申告期限までに済ませてください。

重要ポイント:申告書は第1表から順に書くのではなく、財産の明細(第11表など)から書いて第1表で合計します。順番を間違えると計算がやり直しになります。

相続税申告書の必要な表の選び方と、書く順番は、下記の記事で解説しています。

ツールで足りる範囲|計算はできても判断はしない

入力フォームに財産と相続人を入れると、税額の計算と申告書の出力まで進むツールがあります。財産が預貯金と上場株式だけなら、ツールだけで仕上げられます。

ツールの種類 費用 できること 土地の補正
無料の申告書作成サービス 無料 財産の入力から申告書の出力まで 対応しないものが多い
有料の個人向けソフト 数千円〜数万円 申告書の作成と簡単な土地の評価 一部のみ
税理士向けの業務ソフト 年に数万円〜 評価の明細書を含むすべての表 入力すれば計算する
国税庁の申告書の様式 無料 様式のダウンロードのみ 対応しない

表の見方:無料のサービスは入力の手間を大きく減らしますが、形が整った自宅1件までが守備範囲です。

相続税は令和元年10月からe-Taxでも出せるようになり、書面の持参や郵送は必須ではなくなりました。ただしe-Taxは提出の手段で、どの表に何を書くかを教えてくれるわけではありません。

重要ポイント:税理士向けのソフトも、補正の値を入れれば計算するだけで、どの補正を使うかは利用者が決めます。ツールで作った申告書でも、誤りの責任と加算税は提出した本人が負います。

参照元:国税庁 B1-2 相続税の申告手続

税務署で聞けること・聞けないこと

税務署は書き方は教えてくれますが、有利か不利かの助言はしません。「どの特例を使うと得か」「この土地にどの補正を使うか」は、税務署では答えてもらえません。

質問の内容 税務署の回答
申告書のどの欄に何を書くか ○
添付書類は何が必要か ○
基礎控除の計算方法 ○
この土地にどの補正を使うか ×
複数の宅地のどれに特例を使うと得か ×
この預金は名義預金にあたるか ×
申告書の内容が正しいかの確認 ×

表の見方:○が付くのは書き方と手続きだけです。×が付く項目は、自分で申告して詰まる部分とほぼ重なります。

重要ポイント:税務署の相談は事前予約制です。窓口で聞いたとおりに書いても、内容の責任は提出した本人にあります。

税務署・税理士・無料相談会など、7つの相談窓口の使い分けは、下記の記事で解説しています。

途中で税理士に切り替える判断基準

自分で始めても、途中から税理士に頼むことはできます。全部を頼むか全部を自分でやるかの二択でもありません。判断の決め手は、壁にぶつかった場所と、期限までの残りの月数です。ここでは切り替えの目安と、部分的に頼む方法を整理します。

税理士に切り替えるべき5つのサイン

次のどれかに当てはまったら、切り替えを検討してください。2つ以上当てはまるなら、自分で続けるより頼んだほうが早く、結果も確実です。

切り替えを考えるサイン

  • 土地の評価で、どの補正を使うか決められない
  • 自宅の土地の特例を使えるかどうか、要件の判断がつかない
  • 家族名義の預金を含めるか迷っている
  • 分け方の話し合いがまとまらず、期限が近づいている
  • 申告期限まで3か月を切ったのに、評価が終わっていない

【事例】自宅の土地の特例で手が止まったケース

母が亡くなり、実家に同居していた長男が自分で申告を始めました。財産の洗い出しは2か月で終えましたが、同居の要件を満たすかで判断がつかず、1か月が過ぎました。

残り6か月の時点で初回相談を受け、特例を使えると判定されたため、評価と申告書の作成だけを頼んで期限内に申告しました。

どれも、時間をかけても答えが出にくい問題です。調べる時間が延びるほど期限が迫るため、早めに見切りを付けてください。

部分だけ頼む3つの方法|判定・評価・確認

全部を頼まなくても、リスクの大きい部分だけを専門家に任せる方法があります。まず「特例を使えるか」の判定だけを初回相談で確かめるのが、費用をかけずにできる第一歩です。

頼み方 費用の目安 向いている状況
特例を使えるかの判定だけ 無料の初回相談で足りることが多い 財産は簡単だが特例を使うか迷う
土地の評価だけ 事務所ごとに異なる(見積りで確認) 土地以外は自分で進められている
作った申告書の確認だけ 事務所ごとに異なる(見積りで確認) 自分で作ったが誤りが心配
全部を頼む 遺産総額の0.5〜1%が目安 壁が2つ以上ある・期限まで余裕がない

表の見方:上の3つが部分的な頼み方です。部分的な依頼に応じるかは事務所によって違うため、見積りを取る段階で聞いてください。

重要ポイント:公開料金表を見ると、土地1区分ごとに5.5万円前後を加える事務所があります。土地の評価だけを頼む場合の費用の目安の1つになります。

残りの期間別|自分で続けるか頼むかの目安

同じ状況でも、期限までの残りの月数で答えが変わります。残り3か月を切ってから頼むと、断られたり割増しの報酬がかかったりすることがあります。

期限までの残り 判断の目安
6か月以上 自分で続けてよい。壁が出たら部分的に頼む
3〜6か月 壁が1つでも残っているなら、全部を頼むことを考える
3か月未満 すぐに頼む。引き受けてもらえる事務所を早く探す
期限を過ぎた 期限後申告を急ぐ。特例は使えるが、加算税と延滞税は増えていく

残りの月数は「亡くなったことを知った日の翌日から10か月」で数えます。多くの場合は、亡くなった日と同じ日付の10か月後が期限です。

表の見方:赤い行から先は、自分で続けるほど損失が膨らみます。期限を過ぎても特例そのものは使えるため、諦めずに申告を急いでください。

相続税の申告期限を過ぎた場合のペナルティと、今からでも使える特例は、下記の記事で解説しています。

すでに税理士に頼んでいて、途中で別の税理士に変えたい場合の手続きと費用は、下記の記事で解説しています。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ

自分で申告するか迷ったら相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

自分でやるか頼むかは、見積りを取ってから決めても遅くありません。複数の税理士に同じ条件で相談し、特例を使えるかと費用を並べて決めるのがおすすめです。見積りと初回相談は無料の事務所が多く、断っても費用はかかりません。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

自分で申告するときの最大のリスクは、特例の使い忘れによる払いすぎです。払いすぎは税務署が指摘しないため、判定できる専門家に確かめない限り防げません。

相続税の対応実績がある税理士に相談する理由

  • 自宅の土地の特例を使えるかを、同居や持ち家の状況から判定できる
  • 土地の補正を現地と役所で調べ、評価を適正に下げられる
  • 名義預金を含めるかを、お金の出どころと管理の状況から判断できる
  • 書面添付を使い、税務調査の前に意見を述べられる
  • 判定だけ・評価だけといった部分的な依頼にも応じられることがある

遺産8,000万円(土地5,000万円・建物1,000万円・預金2,000万円)で子2人の場合、A税理士は「自分でもできますよ」と答え、B税理士は特例を使えると判定しました。特例を使えば相続税は0円、使わなければ470万円で、税理士費用の7.3倍の差です。

一括相談・見積りのメリット|提案の中身で実務力が見える

見積りを並べると費用を比べられますが、差が大きいのは提案の中身です。次の3点を各事務所に同じ質問で聞き、答えを突き合わせてください。

判定ポイント1:特例を使えるかを初回相談で判定するか

A税理士は「資料を見てから」で終わり、B税理士は同居の有無と持ち家の状況を聞いて「この条件なら使えます」と答えました。

→ B税理士の方が、払いすぎを防ぐ実務経験が豊富と判定できます。

判定ポイント2:部分的な依頼に応じるか

A税理士は「一式でお願いします」、B税理士は「土地の評価だけでもお受けします」と答え、費用も示しました。

→ B税理士の方が、依頼者の状況に合わせた対応の実務経験が豊富と判定できます。

判定ポイント3:書面添付の方針を示すか

A税理士は見積りに記載がなく、B税理士は書面添付を付ける方針と、費用が基本報酬に含まれるかを明記しました。

→ B税理士の方が、税務調査まで見すえた申告の実務経験が豊富と判定できます。

相談しないまま自分で進めるリスク

見積りも取らずに自分で始めると、次のような結果になりかねません。いずれも、見積りと初回相談の段階で防げたものです。

相談しないまま進めると起きること

  • 自宅の土地の特例を使えたのに気づかず、数百万円を余分に納める
  • 土地の補正を使わずに評価し、払いすぎが確定する
  • 名義預金を含め忘れ、税務調査で加算税と延滞税を払う
  • 200時間をかけたうえで期限に遅れ、無申告加算税がかかる
  • 税務調査の対応を、ひとりで抱えることになる

相談したうえで自分で申告すると決めるなら、問題ありません。特例を使えるかどうかを確かめてから始めるだけで、最大のリスクは消せます。

自分でやるか頼むかのシミュレーション|3つのケース

遺産8,000万円・子2人の家庭で、自分でやる場合と頼む場合の負担を比べます。何も起きなければ自分でやるほうが10万円安く、特例を使い忘れると逆転します。

ケース 自分でやる場合の負担 頼む場合の負担 差
何も起きなかった 60万円 70万円 自分でやるほうが10万円安い
名義預金1,000万円を調査で指摘された 79.2万円 70万円 頼むほうが9.2万円安い
自宅の土地の特例を使い忘れた 530万円 70万円 頼むほうが460万円安い

表の見方:負担は「税理士費用+時間の費用+避けられたはずの損失」です。本来払うべき相続税は、どちらでも同じなので含めていません。

重要ポイント:自分でやるほうが安いのは、何も起きなかった場合だけです。特例を使える可能性があるなら、判定だけでも先に確かめてください。

計算ロジック:【前提】税理士費用64万円(遺産の0.8%)・時給3,000円・自分で200時間・頼んで20時間。使い忘れは自宅の土地の特例の差額470万円、名義預金は加算税と延滞税の19.2万円です。

一括相談・見積りの手順|STEP1~STEP4

STEP1

相続の概要を整理する

被相続人の資産内容・資産額概算・相続人構成・年齢・遺言の有無をメモにまとめます。土地の件数と形、同居していた人がいるかも書き添えます。

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STEP2

一括見積り・相談サービスに依頼する

複数の税理士事務所に一括で見積りを依頼できるサービスを使います。希望内容を「相続税申告・相続税の節税・確定申告・準確定申告など」と明確に記し、複数の税理士(目安3~5の事務所)への同時打診を依頼します。

不動産がある場合は所在地・広さなども記載します。フォームでは「財産の種類」「相続人の人数」をできるだけ正確に伝えると見積りの精度が上がります。フォーム記入自体は5分程度です。

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STEP3

見積りと初回相談を受ける

各事務所から「提案内容」「試算相続税額」「報酬額」が記載された見積りが届きます。初回相談では「特例は使えますか」「部分的に頼めますか」の2つを必ず聞いてください。

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STEP4

税理士を選定・正式依頼する

「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で、頼むか自分でやるかと依頼先を決めます。相続開始から7ヶ月以内に決めて、期限直前の割増しを避けてください。

初回相談で確認すべきチェックリスト|自分でできるかを見極める

聞く順番より、同じ質問をすべての事務所に投げて答えを並べることが大事です。

  • □ 自宅の土地の特例を使えるか、その場で見通しを示すか
  • □ 土地の補正を使う余地があるか、現地の調査をするか
  • □ 家族名義の預金を含めるべきかを判断できるか
  • □ 自分で申告した場合と頼んだ場合の違いを説明できるか
  • □ 判定だけ・評価だけの部分的な依頼に応じるか
  • □ 年間の相続税の申告件数を数字で答えられるか

重要ポイント:「自分でできますか」とそのまま聞いて構いません。できる場合にそう答え、できない理由を具体的に示せる事務所は信頼できます。

見積りで確認すべきチェックリスト|費用と対応範囲

見積書は基本報酬に何が含まれるかと、税込の総額が書面で出ているかを先に確かめてください。

  • □ 基本報酬の金額と、税別か税込かが明記されているか
  • □ 土地の数・相続人の数による加算の基準が書かれているか
  • □ 部分的な依頼の費用が示されているか
  • □ 書面添付の有無と費用が書かれているか
  • □ 期限が近い場合の割増しの有無が書かれているか

重要ポイント:見積りは費用の安さだけでなく、特例の判定の中身とあわせて比べてください。

相続税の対応実績がある税理士の探し方と、選ぶときのポイントは、下記の記事で解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続税の申告は税理士に頼まないといけませんか?

頼まなくても構いません。法律上、税理士への依頼は義務ではなく、相続人が自分で申告書を作って出せます。ただし実際に自分で申告している人は令和6年度で13.5%で、86.5%は税理士に頼んでいます。

Q2. 自分で申告すると税務調査が入りやすくなりますか?

自分で申告したこと自体が調査の理由になるわけではありません。ただ、名義預金の含め忘れなどの誤りが起きやすく、令和6事務年度は実地調査の82.3%で申告漏れなどが見つかっています。税理士に頼んでも調査が0になるわけではなく、書面添付が付くのは24.6%です。

Q3. 自分で申告するとどれくらい時間がかかりますか?

作業時間は約200時間が目安です。書類集め約40時間、財産の評価10〜50時間、分け方の話し合い10〜50時間、申告書の作成約50時間、提出と納付約10時間です。待ち時間を含めると、完了まで5〜7か月かかります。

Q4. 途中まで自分でやって、税理士に切り替えられますか?

できます。財産の洗い出しまで自分で進め、評価や申告書の作成から頼むこともできます。ただし期限まで3か月を切ると、断られたり割増しの報酬がかかったりすることがあるため、早めに判断してください。

Q5. 税務署に相談すれば自分で申告できますか?

書き方や添付書類は教えてもらえますが、どの特例を使うと得か、土地にどの補正を使うかといった判断はしてもらえません。窓口で聞いたとおりに書いても、内容の責任は提出した本人にあります。

まとめ|土地と特例がなければ自分で申告できる

相続税申告に税理士は必須ではない

  • 税理士への依頼は法律上の義務ではなく、相続人が自分で申告できる
  • 自分で申告している人は令和6年度で13.5%。割合は横ばいから微減
  • 相続税がかからない家庭なら、相続の手続きに税理士は要らない

自分でできるかは5つの条件で決まる

  • 分け方が決まり、財産が預貯金中心で、土地がないか自宅1件の整形地
  • 特例を使わずに税額が出て、期限まで5か月以上ある
  • 土地の評価・名義預金・特例の要件・非上場株式の4つは判断が要る壁

本当の分かれ目は特例の使い忘れ

  • 時給の損益分岐は遺産1億円で4,000円、2億円で8,000円
  • 自宅の土地の特例の使い忘れで、遺産8,000万円でも470万円を払いすぎる
  • 自宅の土地の特例は、更正の請求では後から加えられない

今すぐ取るべき行動

  • 遺産の概算が基礎控除を超えるかを確かめる
  • 土地の件数と形、同居していた人がいるかを書き出す
  • 申告期限までの残りの月数を数え、5か月を切っていれば頼む前提で動く
  • 複数の税理士に一括相談・見積りを頼み、特例を使えるかと費用を比べる

※本記事は2026年9月時点の法令・実務に基づいて作成しています。税理士の報酬額は各事務所が自由に設定しており、記載の金額は目安です。最新の制度や個別の判断については、国税庁の情報や相続税の対応実績がある税理士にご確認ください。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
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