孫への生前贈与はいくらまで非課税?やり方と7年の持ち戻しの例外

相続税_孫_生前贈与_節税

孫への生前贈与は、1年に110万円までなら贈与税がかかりません。祖父母それぞれから110万円ずつ受け取ると、合計220万円まで非課税です。

孫に渡す最大の利点は、相続の直前に贈与しても相続財産に戻されないことです。子への贈与は亡くなる前の一定期間分が戻されますが、孫は原則としてその対象外です。

ただし例外があります。孫が遺言で財産を受け取ったり生命保険金を受け取ったりすると、過去の贈与がまとめて相続財産に戻されます。

金額の決め方も判断が要ります。110万円を超えて一括で渡すと贈与税がかかり、1,000万円なら177万円を孫が納めることになります。

この177万円が高いか安いかは、渡し方を並べて初めて分かります。家族全体の税負担で比べると、毎年100万円ずつ10年かけて渡す方法が最も安く、一括贈与との差は177万円です。

制度の面では変化がありました。教育資金の一括贈与は令和8年3月31日で終わり、今から使えるのは暦年贈与・相続時精算課税・都度の教育費負担などに絞られます。

この記事では、贈与額別の贈与税の早見表、持ち戻しの例外にあたるかの判定、贈与と相続のどちらで渡すべきかの比較、渡し方の選び方、名義預金と判定されないための実務、手続きと申告までを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 孫は7年の持ち戻しの対象外。ただし遺言や生命保険金を受け取ると一転して対象になる
  • 一括で1,000万円を贈与すると贈与税177万円。毎年100万円ずつ渡せば0円で、家族全体の負担も最小になる
  • 教育資金の一括贈与は令和8年3月31日で終了。扶養義務者としての都度負担なら上限なく渡せる
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孫への贈与が非課税になるのはいくらまで

贈与税には年110万円の基礎控除があり、1月1日から12月31日までに受け取った額が110万円以下なら贈与税はかかりません。申告も不要です。

110万円は「もらった人」ごとに数える

基礎控除は贈与する側ではなく受け取る側で数えます。祖父から110万円、祖母から110万円を同じ年に受け取ると、合計220万円で110万円を超えます。この場合は差額に贈与税がかかります。

受け取り方 合計額 贈与税
祖父から110万円だけ 110万円 0円
祖父から110万円+祖母から110万円 220万円 11万円
祖父から55万円+祖母から55万円 110万円 0円
孫2人にそれぞれ110万円 1人あたり110万円 0円(人ごとに数えるため)

表の見方:薄赤の行が誤解の多いところです。渡す人が2人いても、もらう孫が1人なら枠は110万円のままです。

計算ロジック:220万円から110万円を引いた110万円が課税対象で、200万円以下の区分なので税率10%を掛けて11万円になります。孫が複数いれば、それぞれに110万円の枠があります。

18歳以上の孫は税率が下がる

110万円を超えたときの税率は2種類あり、贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の孫なら、低い特例税率が使えます。祖父母からの贈与は直系尊属からの贈与にあたるためです。

基礎控除後の課税価格 特例税率(18歳以上) 一般税率(18歳未満)
200万円以下 10% 10%
300万円以下 15%(控除10万円) 15%(控除10万円)
400万円以下 15%(控除10万円) 20%(控除25万円)
600万円以下 20%(控除30万円) 30%(控除65万円)
1,000万円以下 30%(控除90万円) 40%(控除125万円)
1,500万円以下 40%(控除190万円) 45%(控除175万円)
3,000万円以下 45%(控除265万円) 50%(控除250万円)
4,500万円以下 50%(控除415万円) 55%(控除400万円)

表の見方:黄色の行で10ポイント差がつきます。同じ金額を渡すなら、孫が18歳になるのを待つだけで税額が下がります。400万円以下の範囲では差がないため、少額なら年齢を待つ必要はありません。

重要ポイント:基準になるのは贈与を受けた年の1月1日の年齢です。年の途中で18歳になっても、その年の贈与には一般税率が適用されます。誕生日ではなく1月1日で判定する点に注意してください。

参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

贈与額別の贈与税の早見表

実際にいくら納めるのかを金額別に並べました。18歳以上と18歳未満で、最大159.5万円の差が出ます。

贈与額 課税価格 18歳以上の贈与税 18歳未満の贈与税 差
110万円 0円 0円 0円 —
200万円 90万円 9万円 9万円 —
300万円 190万円 19万円 19万円 —
500万円 390万円 48.5万円 53万円 4.5万円
1,000万円 890万円 177万円 231万円 54万円
1,500万円 1,390万円 366万円 450.5万円 84.5万円
2,000万円 1,890万円 585.5万円 695万円 109.5万円
3,000万円 2,890万円 1,035.5万円 1,195万円 159.5万円

表の見方:300万円までは18歳以上でも未満でも同じ税額です。差が出はじめるのは400万円を超えたあたりからです。

計算ロジック:贈与額から110万円を引いた課税価格に税率を掛け、控除額を引きます。1,000万円なら890万円 × 30% − 90万円 = 177万円です。贈与額そのものに税率を掛けるのではない点に注意してください。

重要ポイント:1,000万円で177万円という負担は軽くありません。渡し方を変えれば0円で済む場合があります。4つの方法を比べた結果は後ろのセクションで示します。

生活費や教育費の負担には贈与税がかからない

制度としてではなく贈与税法の原則として、祖父母が孫の学費や生活費を必要な都度そのまま払う場合は、金額の上限なく非課税になります。扶養義務者どうしのやりとりだからです。

【都度の負担なら非課税になるもの】

  • 入学金・授業料|学校へ直接振り込めば金額の上限はありません
  • 下宿の家賃・食費|生活費として必要な都度渡すもの
  • 教科書代・通学定期代|通常必要と認められる範囲
  • 医療費|治療のたびに負担するもの

条件は「必要な都度」であることです。何年分かをまとめて渡して孫の口座に残しておくと、その残額は贈与とみなされて贈与税の対象になります。

教育資金の一括贈与という制度は終わりましたが、この都度負担は制度ではなく贈与税法の原則なので、今も使えます。毎年110万円の枠とは別に使えるため、組み合わせると渡せる金額が大きくなります。

孫が何人いても枠はそれぞれに使える

110万円の枠は受け取る人ごとに独立しているので、孫の人数が増えれば、その分だけ無税で渡せる金額が増えます。同じ家族のなかでも合算されません。

家族構成 1年で無税で渡せる額 10年の累計
祖父から孫1人へ 110万円 1,100万円
祖父から孫3人へ 330万円 3,300万円
祖父と祖母から孫3人へ 330万円 3,300万円
祖父から子2人と孫3人へ 550万円 5,500万円

表の見方:黄色の2行が同じ金額なのは、枠は渡す側ではなく受け取る側で数えるためです。祖父と祖母の両方から贈与しても、孫1人あたりの枠は110万円のままです。

重要ポイント:最後の行のように子も含めると枠は広がりますが、子への贈与には持ち戻しがあります。亡くなる前の3年分(令和13年以降は7年分)は相続財産に戻されるため、効果を確実にしたいなら孫を優先します。

孫への贈与は7年の持ち戻しの対象外

亡くなる前の一定期間内の贈与は相続財産に戻して相続税を計算しますが、孫への贈与は原則としてこの対象になりません。子への贈与との決定的な違いがここにあります。

対象外になる理由

戻す対象は「相続または遺贈によって財産を取得した人」への贈与に限られます。孫は相続人ではないため、亡くなる直前に贈与しても戻されません。

贈与を受けた人 相続で財産を受け取ったか 持ち戻し
子(相続人) 受け取る される
孫(相続人でも受遺者でもない) 受け取らない されない
配偶者(相続人) 受け取る される

表の見方:黄色の1行だけが戻されません。相続対策を始めるのが遅くなった場合でも、孫への贈与なら効果が出ます。子への贈与では、亡くなる直前に渡した分がそのまま相続財産に戻されてしまいます。

重要ポイント:子への贈与は何年分が戻されるかが相続の時期で変わります。令和8年12月31日までに相続が起きた場合は3年以内、令和13年1月1日以降なら7年以内です。孫への贈与にはこの期間の話がそもそも関係しません。

参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

相続が起きた年と贈与した年の組み合わせごとの判定表は、下記の記事で解説しています。

例外にあたるかの判定表

孫が何かを受け取ると立場が変わります。相続や遺贈で財産を受け取った瞬間に、過去の贈与がまとめて戻されます。自分が例外にあたらないかを確認してください。

孫の状況 持ち戻し なぜそうなるか
何も受け取らない されない 相続人でも受遺者でもないため
遺言で財産を受け取った される 遺贈で財産を取得した人になるため
生命保険金を受け取った される みなし相続財産を取得した人になるため
死亡退職金を受け取った される 同じくみなし相続財産を取得するため
親が先に亡くなり代襲相続人になった される 相続人になるため
孫養子になっている される 養子は相続人になるため

表の見方:黄色の1行以外はすべて戻されます。少額の保険金を受け取っただけでも、過去10年分の贈与がすべて対象になります。

重要ポイント:実務でもっとも多い失敗が2行目です。毎年贈与を続けてきた孫に、感謝の気持ちで遺言に少額を書き加えると、贈与の効果が消えます。贈与と遺言を別々に考えていると、この組み合わせに気づけません。

例外にあたる場合いくら増えるか

影響の大きさを金額で確かめておきます。毎年110万円を10年間贈与してきた孫が、遺言で100万円を受け取った場合です。前提は遺産1億円・相続人は子2人とします。

遺言に書かなかった場合 遺言で100万円を渡した場合
過去10年の贈与額 1,100万円 1,100万円
相続財産に戻される額 0円 330万円(3年分)
孫が受け取る遺贈 0円 100万円
孫の課税価格 0円 430万円
孫が納める相続税 0円 41.3万円(2割加算を含む)

表の見方:薄赤の行が結果です。100万円を渡したせいで41.3万円の相続税が生じます。受け取った額の4割が税金に消える計算です。

計算ロジック:戻される期間は相続が起きた時期で決まり、令和8年中の相続なら3年分です。110万円×3年=330万円が相続財産に加算され、遺贈100万円と合わせて430万円が孫の課税価格になります。

あてはめ:課税価格の合計1億330万円に対する相続税の総額は826万円です。これを孫の取得割合で按分し、2割加算を足すと41.3万円になります。渡した100万円の4割が税金に消える計算です。

重要ポイント:令和13年以降の相続では7年分が戻されます。同じ状況で770万円+100万円=870万円が課税対象になり、影響はさらに大きくなります。贈与を続けている孫を遺言に書くかどうかは、慎重に判断してください。

子への贈与との違い

同じ金額を渡すのに、子に渡すか孫に渡すかで結果が変わります。違いは持ち戻しの有無と、財産が次の世代へ移るまでの課税回数の2つです。

子への贈与 孫への贈与
持ち戻し 亡くなる前の3年分(令和13年以降は7年分)が戻される 戻されない
直前の贈与の効果 戻されるので効果が出ない そのまま効果が出る
次の世代へ移るまでの課税 子の相続でもう一度課税される 一世代分を飛ばせる
特例税率 18歳以上なら使える 同じく18歳以上なら使える
特別受益 なる(相続分から差し引かれる) 原則としてならない

表の見方:薄赤と黄色の2行が決定的な差です。対策を始めるのが遅くなった家庭ほど、孫への贈与を選ぶ意味が大きくなります。子への贈与では、亡くなる直前に渡した分が相続財産に戻されてしまいます。

あてはめ:78歳で対策を始めて3年後に相続が起きた場合、子に毎年110万円を3年渡した330万円はすべて相続財産に戻されます。同じ330万円を孫に渡していれば、戻されずに済みます。効果の差はそのまま税額の差になります。

重要ポイント:子を飛ばして孫に渡すと、子の世代が受け取る財産が減るため、家族のなかで不満が出ることがあります。税額だけで決めず、子にも説明したうえで進めてください。子が納得していれば、孫への贈与は家族全体にとって有利な選択になります。

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孫に渡すなら贈与と相続のどちらが安いか

孫への贈与は節税になると説明されますが、一括で渡すと4つの方法のなかでもっとも高くつくことがあります。同じ1,000万円を渡す方法を、家族全体の税負担で並べて比べます。

前提をそろえる

比べるための条件を先に固定します。贈与すれば祖父の財産がその分減るため、孫が払う税だけを見ると結論を誤ります。

  • 祖父の財産は1億円
  • 相続人は子2人(基礎控除4,200万円)
  • 孫に渡す金額はどの方法でも1,000万円
  • 孫は18歳以上(贈与税は特例税率)
  • 孫は相続人ではない(親が存命)
  • 比べるのは家族全体が納める税金の合計

重要ポイント:最後の条件が要点です。生前に1,000万円を渡せば祖父の財産は9,000万円に減り、相続税もその分下がります。この効果を入れないと、贈与の有利さを過大にも過小にも見誤ります。

4つの方法の比較

結果から先に出すと、毎年100万円ずつ10年かけて渡す方法が620万円でもっとも安く、一括贈与の797万円が最も高いです。

方法 贈与税 相続税(2割加算を含む) 家族全体
A 毎年100万円×10年(暦年贈与) 0円 620.0万円 620.0万円
C 相続時精算課税で1,000万円 0円 767.1万円 767.1万円
D 遺言で1,000万円を遺贈 — 785.4万円 785.4万円
B 一括1,000万円を暦年贈与 177.0万円 620.0万円 797.0万円

表の見方:黄色のAと薄赤のBは同じ1,000万円を渡すのに177万円の差がつきます。AとBの相続税が同額なのは、どちらも祖父の財産が9,000万円に減るためです。

計算ロジック:Aは1年あたり110万円の基礎控除に収まるため贈与税が0円です。Bは1,000万円から110万円を引いた890万円に特例税率30%を掛け、控除90万円を引いて177万円。CとDは相続税の総額に孫の2割加算を足しています。

あてはめ:Cが贈与税0円でもDとほぼ変わらないのは、相続時精算課税で渡した890万円が相続財産に戻され、しかも孫は2割加算の対象になるためです。贈与税がかからないことと、税負担が軽いことは別の話です。

遺産の規模で順位が入れ替わる

Aが最安なのはどの規模でも変わりませんが、BとDの順位は祖父の財産が1億400万円を超えたところで入れ替わります。

祖父の財産 A 毎年100万円 C 精算課税 D 遺贈 B 一括贈与
8,000万円 320.0万円 463.7万円 481.8万円 497.0万円
1億円 620.0万円 767.1万円 785.4万円 797.0万円
1億5,000万円 1,560.0万円 1,828.6万円 1,864.5万円 1,737.0万円
2億円 3,040.0万円 3,336.6万円 3,373.4万円 3,217.0万円
3億円 6,520.0万円 6,916.9万円 6,966.1万円 6,697.0万円

表の見方:黄色の1億円ではBがもっとも高いのに、1億5,000万円以上ではBがCとDを下回ります。贈与税177万円が固定なのに対し、相続税は財産が増えるほど重くなるためです。

計算ロジック:Bが有利になる分岐点は祖父の財産が約1億400万円です。これを超えると、177万円を払って先に渡したほうが家族全体では安くなります。

重要ポイント:ただしAはどの規模でも最安です。時間が取れるなら一括で渡す理由はありません。一括を選ぶのは、年齢や健康の事情で10年を確保できない場合に限られます。

孫本人の負担で見ると分岐点が変わる

家族全体ではなく孫が払う金額だけを見ると、分岐点は1億7,400万円まで動きます。どちらの視点で判断するかを決めてから比べてください。

見る範囲 B 一括贈与で孫が払う額 D 遺贈で孫が払う額 分岐点
孫本人の負担だけ 177.0万円(固定) 92.4万円(遺産1億円のとき) 祖父の財産 約1億7,400万円
家族全体の負担 797.0万円 785.4万円 祖父の財産 約1億400万円

表の見方:視点を変えると分岐点が7,000万円も動きます。孫に税負担をかけたくないなら遺贈、家族全体で最小にしたいなら毎年の贈与です。

重要ポイント:孫が贈与税を払えないという問題もあります。1,000万円を受け取っても、そこから177万円を納めれば手取りは823万円です。納税資金を別に用意できるかを確認してから金額を決めてください。

孫が相続で財産を受け取る場合の2割加算と計算方法は、下記の記事で解説しています。

孫への贈与のやり方|4つの選択肢

渡し方は大きく4つあり、制度の期限が変わったため、いま選べるものが以前より減っています。教育資金の一括贈与は令和8年3月31日で終わりました。

いま使えるものと使えなくなったもの

制度の現状を整理すると、教育資金の一括贈与だけが終了し、住宅取得等資金と結婚・子育て資金はまだ使えます。

制度 非課税の額 使えるか
暦年贈与 年110万円まで 使える(期限なし)
扶養義務者としての都度負担 必要な都度なら上限なし 使える(制度ではなく原則)
相続時精算課税 年110万円+累計2,500万円 使える(18歳以上の孫)
住宅取得等資金の贈与 省エネ住宅1,000万円/その他500万円 使える(令和8年12月31日まで)
結婚・子育て資金の一括贈与 1,000万円 使える(令和9年3月31日まで)
教育資金の一括贈与 1,500万円 令和8年3月31日で終了

表の見方:薄赤の教育資金は令和8年4月1日以後の贈与には使えません。期限までに金融機関と契約した資金は、引き続き非課税のまま使えます。

重要ポイント:黄色の2つが軸になります。暦年贈与と都度負担は別枠なので、両方を同じ年に使えます。年110万円の現金贈与に加えて、学費を都度払うことができます。

参照元:国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

参照元:国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

参照元:国税庁 No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税

教育資金の一括贈与をやめた後は何で代わるか

1,500万円をまとめて渡す手段はなくなりましたが、目的別に置き換えれば同じ結果に近づけられます。孫の年齢と使いみちで選び分けてください。

やりたかったこと 置き換える方法 渡せる金額
学費をまとめて確保したい 扶養義務者として学費を都度負担する 上限なし(必要な都度)
まとまった金額を早く移したい 相続時精算課税 累計2,500万円+年110万円
毎年こつこつ移したい 暦年贈与 年110万円×人数×年数
住宅を買う予定がある 住宅取得等資金の贈与 省エネ住宅1,000万円/その他500万円
結婚や出産の費用を援助したい 結婚・子育て資金の一括贈与 1,000万円(結婚関連は300万円まで)

表の見方:黄色の1行目が実質的な代わりになります。金額の上限がないので、教育資金の1,500万円より多く渡せることもあります。

重要ポイント:違いは「まとめて渡せるかどうか」です。都度負担では、あらかじめ祖父母の口座から孫の口座へ移しておくことができません。認知症や急な相続で払えなくなるリスクは残ります。そこを埋めたいなら相続時精算課税を検討します。

暦年贈与が基本になる理由

4つのうち最初に検討すべきなのは暦年贈与です。孫には持ち戻しがないため、年110万円を何年でも積み上げられます。手続きも贈与契約書と振込だけで済みます。

孫の人数 1年で渡せる額 10年で渡せる額
孫1人 110万円 1,100万円
孫2人 220万円 2,200万円
孫3人 330万円 3,300万円
孫3人+祖父母2人から 660万円 6,600万円

表の見方:黄色の行のとおり、孫の人数が増えるほど渡せる額が増えます。祖父と祖母の両方から贈与すれば、さらに倍になります。

計算ロジック:110万円の枠は受け取る孫ごとに1つです。祖父と祖母の両方から受け取る場合は、孫1人で合計110万円までが非課税なので、祖父から55万円・祖母から55万円のように分けます。最後の行は孫3人がそれぞれ祖父と祖母から合計110万円ずつ受け取る形です。

あてはめ:孫3人に10年続ければ3,300万円が無税で移ります。遺産1億円が6,700万円まで下がり、相続税は770万円から275万円へ減ります。495万円の差です。

暦年贈与の仕組みと7年加算のルールは、下記の記事で解説しています。

孫にいくら贈るのが最適か

金額の決め方には3つの考え方があり、残された時間と遺産の規模で選ぶものが変わります。110万円に抑えるのが常に正解というわけではありません。

3つの考え方

時間があるなら110万円、時間がないならあえて贈与税を払って一気に渡すという判断もあります。

考え方 向いている場合 税負担
110万円に抑える 10年以上の時間がある 0円
年310万円まで渡す 5年程度の時間がある 1年あたり20万円
一括で渡す 時間がない/遺産が1億7,400万円を超える 1,000万円で177万円

表の見方:黄色の110万円がもっとも効率的です。贈与税0円で確実に移せるうえ、孫には持ち戻しもありません。

計算ロジック:2行目は310万円から110万円を引いた200万円に税率10%を掛けた20万円です。相続税率が20%を超える家庭なら、20万円を払って310万円移すほうが得になります。相続税率と贈与税率を比べて決めるという考え方です。

相続税率との比べ方

あえて贈与税を払うかどうかは、自分の家の相続税率が贈与税率を上回っているかで判断します。上回っていれば、贈与税を払って移したほうが家族全体の負担が減ります。

1年の贈与額 贈与税 実質の税率 得になる相続税率
110万円 0円 0% すべての場合
210万円 10万円 4.8% 10%以上
310万円 20万円 6.5% 10%以上
510万円 50万円 9.8% 15%以上
1,110万円 210万円 18.9% 20%以上

表の見方:黄色の310万円が使いやすい水準です。実質6.5%の負担で310万円を動かせるので、相続税率が10%以上の家庭なら検討の価値があります。

計算ロジック:実質の税率は贈与税を贈与額で割った値です。310万円なら20万円 ÷ 310万円 = 6.5%になります。相続で残した場合にかかる税率と比べてください。

重要ポイント:自分の家の相続税率は遺産の総額と相続人の数で決まります。遺産1億円・子2人なら実効の税率は7.7%なので、この場合は110万円に抑えるほうが有利です。遺産2億円なら16.7%なので、310万円まで渡す価値が出てきます。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

自分の家の相続税がいくらになるかは、下記の記事で計算できます。

渡しすぎないための上限

金額を決めるときに忘れやすいのが、渡す側の生活費と、他の相続人の取り分です。税金の計算だけで決めると別の問題が起きます。

【渡しすぎたときに起きること】

  • 渡す側の生活費が足りなくなる|医療費や介護費が必要になっても取り戻せません
  • 他の相続人の遺留分を侵害する|相続人が請求すれば、孫が金銭を払うことになります
  • 孫の間で不公平が生じる|特定の孫にだけ贈与すると、相続のときにもめる原因になります
  • 孫が浪費してしまう|未成年のうちに多額を渡すと、使いみちを管理できません

贈与は一度渡すと取り戻せません。生活費として何年分を残しておくかを先に決めてから、残りの範囲で贈与の金額を決めてください。

とくに1つ目は取り返しがつきません。平均寿命まで生きる前提で、年間の生活費と介護費用を差し引いた残りを贈与の原資にするのが安全な考え方です。

残り時間から逆算する

金額を決める前に、何年続けられるかを見積もるほうが先です。年数が決まれば、必要な年額が計算できます。

渡したい総額 10年で渡す 5年で渡す 3年で渡す
1,000万円 年100万円(税0円) 年200万円(税9万円/年) 年334万円(税22.4万円/年)
2,000万円 年200万円(税9万円/年) 年400万円(税33.5万円/年) 年667万円(税101.4万円/年)
3,000万円 年300万円(税19万円/年) 年600万円(税68万円/年) 年1,000万円(税177万円/年)

表の見方:黄色の行で比べると、同じ2,000万円でも10年なら年9万円、3年なら年101.4万円の税負担です。10年で総額90万円、3年で総額304万円になります。

計算ロジック:孫が複数いれば1人あたりの年額を下げられます。孫3人に2,000万円を10年で渡すなら1人あたり年67万円なので、110万円の枠に収まり贈与税は0円です。人数を使って年額を下げるのが、もっとも負担の少ない設計です。

重要ポイント:年数を長く取れるかは年齢と健康状態で決まります。60代なら10年、70代後半なら5年を目安に見積もるのが現実的です。判断できなくなると贈与そのものができなくなるため、早く始めるほど選択肢が増えます。

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名義預金・定期贈与と判定されないために

毎年きちんと110万円を渡していても、渡し方を誤ると贈与がなかったことにされます。判定されると全額が相続財産に戻り、加算税と延滞税も加わります。

名義預金と判定される状態

孫の名義で口座を作っただけでは贈与になりません。通帳と印鑑を祖父母が持っていれば、その預金は祖父母の財産のままと扱われます。毎年振り込んでいても、孫が使える状態になっていなければ贈与は成立していません。

【名義預金と判定されやすい4つの状態】

  • 通帳と印鑑を祖父母が管理している|孫が自由に引き出せない状態は贈与になっていません
  • 孫が口座の存在を知らない|もらったという認識がなければ贈与契約が成立しません
  • 贈与契約書がない|毎年の贈与を書面で残していない
  • 孫名義の印鑑を祖父母が作った|祖父母の印鑑と同じものを使っているケースも含みます

判定されると、その預金は相続財産に加算されたうえで過少申告加算税と延滞税がかかります。孫が受け取っていれば2割加算の対象にもなります。

避けるには、通帳と印鑑を孫本人(未成年なら親権者)が管理し、贈与のたびに契約書を作ることです。孫が実際に引き出して使った記録が残っていれば、さらに説明しやすくなります。

名義預金と判定されたときにいくら増えるかは、下記の記事で解説しています。

定期贈与と判定される状態

もうひとつの落とし穴が定期贈与です。最初から1,000万円を10年に分けて渡す約束だったと判断されると、初年度に1,000万円の贈与として課税されます。

判定されやすい状態 避けるための対応
毎年同じ日に同じ金額を振り込んでいる 金額と時期を毎年変える
10年間の贈与をまとめて1通の契約書にしている 贈与のたびに契約書を作る
贈与の総額を先に決めて記録に残している 各年の贈与を独立した判断として行う
祖父母が孫の口座へ自動振込を設定している 毎年その都度手続きをする

表の見方:薄赤の2つがとくに指摘されやすい形です。毎年110万円を同じ日に10年続けると、定期贈与を疑われます。

計算ロジック:定期贈与と判定されると、1,000万円から110万円を引いた890万円に一度で課税され、贈与税は177万円になります。毎年0円で済んでいたはずのものが、まとめて課税される計算です。

参照元:国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合

残しておく書類

後から説明できるようにするため、贈与のたびに3つの記録を残すのが基本です。税務調査で問われるのは、贈与があったという事実を示せるかどうかです。

  • □ 贈与契約書(贈与する人と受け取る人の双方が署名・押印)
  • □ 銀行振込の記録(現金の手渡しは避ける)
  • □ 孫本人が通帳と印鑑を管理していること
  • □ 未成年の孫なら、親権者が管理していることの記録
  • □ 110万円を超えた年は贈与税の申告書の控え

重要ポイント:2つ目を軽く見ないでください。現金で渡すと、いつ・いくら渡したかを客観的に示せません。振込であれば通帳に日付と金額が残るため、それだけで証拠になります。

税務調査で見られる点

相続税の税務調査では、孫名義の預金が本当に孫のものかを確かめる質問が出ます。何を聞かれるかを知っておけば、必要な記録の意味も分かります。

調査で問われること 答えられる状態にしておく方法
いつ・いくら贈与したか 贈与契約書と振込の記録を年ごとに保管する
孫は贈与を受けたことを知っていたか 孫本人に説明し、契約書に署名させる
通帳と印鑑を誰が持っているか 孫本人(未成年なら親権者)が保管する
孫はその口座を使っているか 一部を引き出して使った記録を残す
印鑑は誰が作ったか 祖父母のものと別の印鑑を孫側で用意する

表の見方:黄色の2つが核心です。贈与は契約なので、渡す側と受け取る側の両方に意思があったことを示す必要があります。書類がそろっていても、孫が何も知らなければ贈与は成立していません。

重要ポイント:孫が未成年のうちは本人の認識を問えないため、親権者が代理して受け取ったことを契約書に残しておくことが要点になります。そのうえで、孫が18歳になったら本人に管理を引き継いでください。引き継ぎの時期も記録に残すと、説明しやすくなります。

相続時精算課税を孫に使うときの注意

相続時精算課税は累計2,500万円まで贈与税がかからない制度で、孫も受贈者になれます。ただし孫に使うと不利になる要素が2つ重なります。

制度の要件

使えるかどうかは年齢で決まり、贈与する年の1月1日に祖父母が60歳以上、孫が18歳以上であることが条件です。

項目 内容
贈与する人 その年の1月1日に60歳以上の父母または祖父母
受け取る人 その年の1月1日に18歳以上の推定相続人または孫
特別控除 累計2,500万円まで贈与税がかからない
基礎控除 令和6年1月1日以後は年110万円が別に使える
撤回 いったん選ぶと暦年贈与に戻せない

表の見方:黄色の行のとおり孫も受け取る側になれます。推定相続人でなくてもかまいません。

重要ポイント:薄赤の行が最大の制約です。その祖父母からの贈与は、以後すべて相続時精算課税になります。毎年110万円の基礎控除は使えますが、暦年贈与の枠には戻れません。

参照元:国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

制度の仕組みと使うべきケース・避けるべきケースは、下記の記事で解説しています。

孫に使うと不利になる2つの理由

孫の場合は、相続財産に戻されるうえに2割加算もかかるという二重の不利があります。子に使う場合とは条件が違います。

子に使う場合 孫に使う場合
贈与時の贈与税 2,500万円まで0円 同じ
相続時の扱い 贈与した額を相続財産に戻す 同じく戻す
2割加算 かからない かかる(孫は一親等の血族ではないため)
暦年贈与の持ち戻し 3年(令和13年以降は7年)分が戻される 戻されない(=暦年贈与のほうが有利)

表の見方:黄色の行が判断の分かれ目です。孫は暦年贈与なら戻されないのに、精算課税を選ぶと必ず戻されることになります。子とは逆の結論です。

計算ロジック:本文の試算では、遺産1億円で1,000万円を渡す場合、精算課税767.1万円に対して毎年100万円ずつなら620.0万円でした。147万円の差です。

重要ポイント:孫に精算課税を使う意味があるのは、値上がりする見込みの財産を早く移したい場合に限られます。相続時に加算するのは贈与時の価額なので、その後の値上がり分は課税されません。現金を渡すだけなら、暦年贈与のほうが有利です。

もめないための配慮

税金の計算が合っていても、他の相続人や他の孫との関係で争いになることがあります。生前に手を打てる部分を整理します。

孫への贈与は特別受益になるか

結論から言うと原則としてなりません。特別受益は相続人が受けた贈与を対象にするため、相続人でない孫への贈与は含まれないためです。ただし例外が3つあります。

孫の状況 特別受益 なぜそうなるか
相続人でない孫への贈与 ならない 特別受益は相続人が対象のため
孫養子になっている なる 養子は相続人になるため
親が先に亡くなり代襲相続人になった なる 相続人になるため
孫名義だが実質は子への贈与 なる 子が受けた贈与と評価されるため

表の見方:黄色の1行が原則です。孫への贈与は、他の相続人の取り分を計算するときに持ち戻されません。

重要ポイント:薄赤の3行目に注意してください。孫の口座に入れたお金を親が生活費に使っていると、親への贈与と判断されます。その場合は特別受益として持ち戻され、親の相続分から差し引かれます。

特別受益の計算方法と相続税申告への影響は、下記の記事で解説しています。

遺留分を侵害しないか

特別受益にならなくても、相続開始前1年間の贈与は遺留分の計算に入ります。直前に多額を渡すと、孫が請求を受ける立場になります。

贈与の時期 遺留分の計算に入るか
相続開始前1年より前 原則として入らない
相続開始前1年以内 入る
遺留分を侵害すると知って行った贈与 1年より前でも入る

表の見方:薄赤の2つが該当します。亡くなる直前の贈与は、税金では持ち戻されないのに遺留分では持ち戻されるというねじれがあります。

重要ポイント:孫が請求されると金銭で払うことになります。受け取った現金を使ってしまっていると、自分の財産から払うことになります。直前に大きな金額を渡す場合は、他の相続人の取り分を計算してから決めてください。

参照元:e-Gov 民法(第1044条 遺留分を算定するための財産の価額)

孫の間で不公平にしない

孫が複数いるときは、人数と年齢の違いで結果的に差がつきます。生前に説明しておかないと、相続のときに不満が出ます。

  • 年上の孫は贈与を受ける年数が長くなる(同じ年110万円でも総額が違う)
  • 18歳未満の孫には特例税率が使えない(同じ額でも税額が高い)
  • 子の人数が違えば、孫1人あたりの取り分も変わる
  • 進学や結婚の時期がそろわないため、都度負担の額に差が出る
  • 孫が生まれる時期によっては贈与を受ける機会がない

重要ポイント:差をなくすことは現実的ではありません。なぜその配分にしたのかを、生前に本人の言葉で伝えておくことがもっとも効果のある対策です。

あてはめ:遺言に付言として理由を書き添える方法もあります。付言には法的な効力はありませんが、配分の意図を残しておくことで、相続人の納得を得やすくなります。孫への贈与を長く続けてきた場合は、その経緯も書き添えておくと誤解を防げます。

手続きと申告

贈与の手続き自体は簡単ですが、書面と振込の記録がないと贈与として認められません。110万円を超えた年は申告も必要です。

贈与するときの手順

毎年繰り返す作業なので、4つの段階を型として決めておくと負担が少なくなります。

STEP1
贈与契約書を作る
贈与する人と受け取る人の双方が署名・押印します。未成年の孫の場合は親権者が代わりに署名します。
□ 金額・日付・双方の氏名を明記する
□ 毎年の贈与ごとに別の契約書を作る

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STEP2
銀行振込で渡す
祖父母の口座から孫の口座へ振り込みます。現金の手渡しは避けます。
□ 金額と時期を毎年変える(定期贈与とみなされないため)
□ 振込の記録を通帳に残す

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STEP3
孫本人が口座を管理する
通帳と印鑑とキャッシュカードを孫が持ちます。
□ 印鑑は祖父母のものと別にする
□ 孫が自由に使える状態にしておく

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STEP4
110万円を超えた年は申告する
贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに、孫が贈与税の申告をします。
□ 申告して納税するのは受け取った孫
□ 申告書の控えを保管しておく

重要ポイント:STEP3を飛ばすと、契約書と振込の記録があっても名義預金と判定されることがあります。書面をそろえるだけでは足りず、孫が実際に使える状態にすることが必要です。

贈与税の申告と納税

申告するのは受け取った孫で、期限は贈与を受けた翌年の3月15日です。110万円以下なら申告は不要です。

項目 内容
申告する人 贈与を受けた孫(未成年なら親権者が代理)
期限 贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日まで
提出先 孫の住所地を管轄する税務署
納税の期限 申告期限と同じ日
申告しなかった場合 無申告加算税15%〜30%と延滞税がかかる

表の見方:黄色の期限は相続税と違って翌年の3月15日です。贈与した年の年末で1年を区切って判断します。

重要ポイント:納税するのは孫です。祖父母が孫の贈与税を代わりに払うと、その分も贈与になります。納税資金まで含めて渡す場合は、税額を足した金額を贈与してください。

参照元:国税庁 No.4429 贈与税の申告と納税

未成年の孫に贈与する場合

孫が未成年でも贈与はできますが、親権者が代わりに受け取る意思を示す必要があります。本人が内容を理解していなくても契約は成立します。

  • 贈与契約書は親権者が代理して署名する
  • 通帳と印鑑は親権者が管理する(祖父母が持つと名義預金になる)
  • 親権者が生活費に使うと、親への贈与と判断される
  • 孫が18歳になったら本人に管理を引き継ぐ
  • 18歳未満の年は特例税率が使えないため、110万円以内に抑えるのが基本

重要ポイント:3つ目がもっとも多い失敗です。孫名義の口座から親が学費や生活費を出していると、実質は親への贈与と判断されます。その場合は特別受益として持ち戻され、親の相続分から差し引かれます。

あてはめ:孫名義の口座は、孫のためにしか使わないのが原則です。学費を祖父母が負担するなら、孫の口座を経由せず学校へ直接振り込むほうが安全です。都度負担として非課税になり、名義預金の問題も起きません。

祖父母が認知症になると贈与できなくなる

金額や年数を決める前に確かめておきたい制約があります。贈与は契約なので、渡す側に判断する能力がないと成立しません。認知症が進むと、その時点で贈与の計画が止まります。

祖父母の状態 贈与できるか 取れる手段
判断できる できる 暦年贈与・精算課税・都度負担のすべて
認知症などで判断できない できない 成年後見人がついても、後見人は贈与できない
家族信託を設定してある 信託の内容に従って可能 判断できなくなる前に設定しておく必要がある

表の見方:薄赤の行が要点です。成年後見人は本人の財産を守る役割なので、財産を減らす贈与はできません。

重要ポイント:この制約があるため、孫への贈与は「いつか始める」ではなく「今年から始める」ものになります。毎年110万円という金額の小ささに油断すると、始める前に機会を失います。

親が認知症になる前にやっておくべき対策は、下記の記事で解説しています。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ

孫への生前贈与の相談は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

孫への贈与は渡し方を変えるだけで家族全体の税負担が177万円変わる判断です。複数の税理士から見積りを取って、提案の中身を比べてください。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

孫への贈与の判断には、贈与税と相続税の両方を同じ前提で試算する力が必要です。どちらか一方だけを見ると結論を誤ります。

【相続税の対応実績がある税理士に相談すべき理由】

  • 贈与と相続を同じ前提で比べられる|贈与税だけを見ると一括贈与を勧められることがあります
  • 持ち戻しの例外を見抜ける|遺言や保険金を受け取ると過去の贈与が戻されます
  • 名義預金と判定されない形を設計できる|書面と管理の実態の両方が必要です
  • 精算課税を孫に使うべきかを判断できる|孫の場合は2割加算が重なって不利になります
  • 遺留分まで含めて金額を決められる|税額を下げても争いになれば意味がありません

たとえば祖父の財産1億円・相続人は子2人・孫に1,000万円を渡す場合、A税理士は贈与税の非課税枠を使い切る形として一括1,000万円の贈与を提案しました。

B税理士は毎年100万円ずつ10年かけて渡す形を提案しています。家族全体の税負担はA案797.0万円に対しB案620.0万円で、177万円の差です。

複数の税理士に相談するメリット

比べるべきなのは試算の範囲と、示された選択肢の数です。報酬の安さだけで選ぶと、1つの方法しか示されないことがあります。

判定ポイント1:家族全体で試算しているか孫が払う贈与税だけでなく、祖父の相続税がいくら下がるかまで含めた金額を出しているかを見てください。→ 孫の負担だけを示す試算では、有利不利を判断できません。

判定ポイント2:遺言との組み合わせを確認するか見積りの依頼時に孫を遺言に書く予定があるかを聞いてくる事務所かどうかです。→ 聞かない事務所は、持ち戻しの例外に該当することを見落とします。

判定ポイント3:何年続けられるかを前提に置くか年齢と健康状態から続けられる年数を確認し、そこから年額を逆算しているかどうかです。→ 年数の前提がない提案は、実行できない金額になりがちです。

相談しないまま進めるリスク

自分で判断して始めた場合に起きることです。何年か続けた後に、まとめて課税される形が含まれます。

【相談しないまま進めた場合のリスク】

  • 名義預金と判定されて全額が相続財産に戻る|10年続けた1,100万円が加算され、加算税と延滞税も加わります
  • 定期贈与と判定されて初年度に一括課税される|毎年0円だったはずのものが177万円になります
  • 孫を遺言に書いて過去の贈与が持ち戻される|100万円を渡したために41.3万円の相続税が生じた例があります
  • 精算課税を選んで暦年贈与に戻れなくなる|孫の場合は2割加算が重なって不利になります
  • 渡しすぎて生活費が足りなくなる|贈与は一度渡すと取り戻せません

いずれも始める前に確認しておけば避けられたものです。数年続けてから気づくと、それまでの贈与をやり直すことはできません。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

依頼から契約までは4つの段階で進み、フォームの記入は5分程度で終わります。

STEP1
相続の概要を整理する
財産の内容と概算額、相続人の構成、孫の人数と年齢、これまでの贈与の実績、遺言の有無を整理します。
□ 孫へこれまでいくら贈与したかを年ごとに書き出す
□ 孫の年齢(18歳以上かどうか)を控える

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STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する
希望内容として「孫への生前贈与の設計・贈与税と相続税の試算」を明記し、3〜5の税理士事務所に同時に打診します。
□ 財産の種類と相続人の人数を正確に伝える
□ 所有している不動産があれば所在地と広さを記載する
□ フォームの記入は5分程度

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STEP3
見積りと初回相談を受ける
各事務所から提案内容・試算した税額・報酬額が記載された見積りが届きます。
□ 家族全体の税負担で比べた試算を出してもらう
□ 何年続ける前提かが書かれているか確認する

⬇

STEP4
税理士を選定・正式依頼する
提案内容の質・説明の丁寧さ・報酬の納得性で選びます。
□ 生前対策は年内に始められるよう早めに決める
□ 業務の範囲と報酬を契約書で確認する

よくある質問

Q1. 孫への生前贈与はいくらまで非課税ですか?

1年に110万円までなら贈与税がかかりません。この枠は受け取る孫ごとに数えるため、孫が3人いれば合計330万円まで無税で渡せます。

ただし祖父と祖母の両方から受け取る場合は合算します。祖父から110万円・祖母から110万円を同じ年に受け取ると合計220万円になり、110万円を超えた分に贈与税11万円がかかります。

Q2. 孫への贈与は7年の持ち戻しの対象になりますか?

原則として対象外です。持ち戻しの対象は「相続または遺贈によって財産を取得した人」への贈与に限られ、孫は相続人ではないためです。亡くなる直前に贈与しても戻されません。

ただし孫が遺言で財産を受け取ったり、生命保険金や死亡退職金を受け取ったりすると一転して対象になります。親が先に亡くなって代襲相続人になった場合や、孫養子になっている場合も対象です。

Q3. 一括で1,000万円を贈与すると税金はいくらですか?

孫が18歳以上なら贈与税は177万円です。1,000万円から110万円を引いた890万円に特例税率30%を掛け、控除90万円を引いた金額です。18歳未満なら一般税率が適用され231万円になります。

ただし毎年100万円ずつ10年かけて渡せば贈与税は0円です。祖父の財産1億円・相続人が子2人の場合、家族全体の税負担は一括贈与797.0万円に対して毎年の贈与620.0万円で、177万円の差がつきます。

Q4. 教育資金の一括贈与はまだ使えますか?

使えません。教育資金の一括贈与の非課税制度は令和8年3月31日で期限を迎え、令和8年4月1日以後の贈与には適用できません。期限までに金融機関と契約した資金は引き続き非課税のまま使えます。

代わりに使えるのが、扶養義務者としての都度負担です。祖父母が孫の学費や生活費を必要な都度そのまま払う場合は、金額の上限なく非課税です。学校へ直接振り込む形なら、1,500万円を超える金額も渡せます。

Q5. 孫に相続時精算課税を使ってもよいですか?

孫も受贈者になれますが、多くの場合は暦年贈与のほうが有利です。孫の場合は相続時に贈与した額が相続財産に戻されるうえ、2割加算の対象にもなるためです。

暦年贈与なら持ち戻しがないので、この二重の不利を避けられます。精算課税を選ぶ意味があるのは、値上がりする見込みの財産を早く移したい場合です。いったん選ぶと暦年贈与には戻せない点にも注意してください。

まとめ

孫への生前贈与は、相続直前の贈与でも相続財産に戻されないという強みがあります。ただし渡し方と金額の決め方で、家族全体の税負担が大きく変わります。

  • 非課税は年110万円まで。受け取る孫ごとに数えるので、人数が多いほど渡せる額が増える
  • 孫は7年の持ち戻しの対象外。ただし遺言・保険金・死亡退職金を受け取ると一転して対象になる
  • 一括で1,000万円を渡すと贈与税177万円。毎年100万円ずつ10年なら0円で、家族全体でも177万円の差
  • 18歳以上の孫は特例税率。1,000万円の贈与で18歳未満より54万円安くなる
  • 教育資金の一括贈与は令和8年3月31日で終了。扶養義務者としての都度負担なら上限なく渡せる
  • 孫に相続時精算課税は不利。相続財産に戻されるうえ2割加算も重なる
  • 通帳と印鑑を孫本人が管理していないと名義預金と判定される

今すぐ取るべき行動

  • 孫の人数と年齢(18歳以上かどうか)を書き出す
  • 何年続けられるかを年齢から見積もり、年額を逆算する
  • 孫を遺言に書く予定があるかを確認する(持ち戻しの例外にあたる)
  • 孫名義の口座の通帳と印鑑を、孫本人が管理しているか確認する
  • 3〜5の税理士事務所に一括で見積りを依頼し、家族全体の税負担で比べる

※本記事は2026年8月時点の法令にもとづいて作成しています。相続税法および租税特別措置法の改正により内容が変わる場合があります。最新の制度については国税庁のホームページまたは税理士にご確認ください。

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