


配偶者居住権は、配偶者が自宅を相続しなくても住み続けられる権利です。2020年4月から使えるようになり、取得した配偶者には相続税がかかります。
相続税の計算では、自宅を配偶者居住権・建物・敷地利用権・土地の4つに分けて評価します。
節税になると言われるのは、配偶者が亡くなると配偶者居住権が消滅し、二次相続で課税されないためです。
ただし節税になるかは子の住まいで決まります。子が二次相続で家なき子の特例を使える場合は、設定しないほうが安くなります。
建物1,000万円・土地5,000万円・預貯金4,000万円の家庭では、子が同居なら設定したほうが28.9万円、別居で持ち家ありなら145.5万円安くなります。
一方、子が別居で持ち家がなければ、設定しないほうが212.5万円安くなります。
この記事では、配偶者居住権にかかる相続税のしくみ、評価方法と計算例、年齢と遺産分割の時期による違い、節税になる条件、デメリット、設定後にできなくなること、手続きと登記を解説します。
▼ この記事の3行まとめ

配偶者居住権を取得すると、その価額に相続税がかかります。財産として価値がある権利だからです。一方で、配偶者が亡くなると配偶者居住権は消滅し、二次相続では課税されません。得かどうかは、一次相続と二次相続の合計で比べて判断します。
配偶者居住権を設定すると、自宅は建物と土地それぞれ2つ、合わせて4つの権利に分けて評価します。4つを足すと、設定しない場合の自宅の評価額と同じになります。
| 権利 | 内容 | 取得する人 | 二次相続 |
|---|---|---|---|
| 配偶者居住権 | 建物に無償で住み続ける権利 | 配偶者 | 消滅して課税されない |
| 居住建物 | 配偶者居住権が付いた建物の所有権 | 子など | 所有者の財産として残る |
| 敷地利用権 | 配偶者居住権に基づいて土地を使う権利 | 配偶者 | 消滅して課税されない |
| 居住建物の敷地 | 敷地利用権が付いた土地の所有権 | 子など | 所有者の財産として残る |
表の見方:黄色の2つが配偶者の取得分です。配偶者の課税価格に入り、配偶者の税額軽減の対象にもなります。
配偶者居住権は配偶者の死亡によって消滅します。相続される財産として残らないため、二次相続の課税対象になりません。これが配偶者居住権の節税効果と呼ばれるものの正体です。
配偶者が自宅を全部相続していれば、その自宅は二次相続で課税されます。配偶者居住権にしておけば、配偶者が取得した権利の分は二次相続で消えるという違いが生まれます。同じ自宅でも、渡し方によって次の相続での扱いが変わります。
| 一次相続で配偶者が取得したもの | 二次相続での扱い |
|---|---|
| 自宅の所有権 | 相続財産として課税される |
| 配偶者居住権 | 消滅するので課税されない |
| 預貯金 | 相続財産として課税される |
重要ポイント:消えるのは配偶者居住権と敷地利用権の分だけです。配偶者が持っていた預貯金や他の不動産は、これまでどおり二次相続で課税されます。
参照元:e-Gov 法令検索 民法(第1028条・第1036条)
二次相続まで含めて配偶者に渡す割合を決める考え方は、下記の記事で解説しています。

自宅を配偶者が全部相続する場合と比べると、配偶者居住権にした分だけ配偶者の取得が小さくなり、子の取得が増えます。他の財産の分け方を変えなければ、一次相続で子が納める税額は増えます。
計算ロジック:建物1,000万円・土地5,000万円の自宅を配偶者が全部相続すれば、配偶者の取得は6,000万円です。配偶者居住権にすると2,159.7万円になり、差額の3,840.3万円が子の取得分に回ります。
ただし、減った分は預貯金を配偶者に多めに渡すことで調整できます。一次相続の税額を下げるには、子の取得を小さくするのが近道です。
重要ポイント:配偶者の税額軽減で0円になるのは、配偶者の取得が1億6,000万円か法定相続分の多いほうまでの配偶者の税額だけです。子が納める税額は軽減されません。
配偶者の税額軽減の上限と申告の要件は、下記の記事で解説しています。


評価額は国税庁が算式を示しています。建物と土地を別々に計算し、それぞれを配偶者と所有者で分けます。4つの価額に分かれることになります。配偶者居住権・居住建物・敷地利用権・土地の4つです。
使う数字は4つです。建物の耐用年数、建物の経過年数、配偶者の平均余命から出す存続年数、そして存続年数に応じた複利現価率です。このうち3つは書類で確認でき、複利現価率は国税庁の表で調べます。
配偶者居住権と敷地利用権を先に求め、残りが所有者である子の取得分になります。配偶者と子の取得を足すと、自宅全体の評価額に戻ります。
【国税庁が示す算式】
重要ポイント:土地の算式は建物より単純で、複利現価率を掛けるだけです。土地は年数で価値が減らないため、耐用年数や経過年数を使いません。
計算に必要な数字は固定資産税の課税明細書と登記事項証明書、それに国税庁の表でそろいます。特別な資料を取り寄せる必要はありません。複利現価率と平均余命は国税庁と厚生労働省の表から読み取ります。法定利率は年3%で、複利現価率はこの利率で計算された値です。
| 数字 | 内容 | 調べ方 |
|---|---|---|
| 耐用年数 | 住宅用の法定耐用年数×1.5 | 木造なら22年×1.5=33年 |
| 経過年数 | 建物の新築から配偶者居住権を設定した時までの年数 | 登記事項証明書の新築年月日から数える |
| 存続年数 | 設定した時の配偶者の平均余命(第23回生命表) | 厚生労働省の完全生命表から国税庁が表を作成 |
| 複利現価率 | 法定利率3%で存続年数に応じた率 | 1÷1.03の存続年数乗 |
計算ロジック:耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令の住宅用の年数を1.5倍します。木造なら22年×1.5=33年、鉄筋コンクリート造は70.5年を切り上げて71年です。経過年数と存続年数はいずれも6月未満を切り捨て、6月以上を切り上げます。
注意点:複利現価率は法定利率で決まります。2020年4月の民法改正で法定利率が3%になりました。法定利率は3年ごとに見直されるため、古い記事の計算例は率が違っていることがあります。
国税庁が示している前提は耐用年数33年・経過年数10年・存続年数12年・複利現価率0.701です。木造で築10年の自宅を想定した例になっています。自分の家に当てはめるときは、この4つの数字を差し替えます。
建物1,000万円・土地5,000万円の自宅で計算します。存続年数12年は、平均余命12.25年を6月未満切捨てで12年としたものです。国税庁が示している具体例と同じ前提です。
| 計算 | 金額 | |
|---|---|---|
| 配偶者居住権 | 1,000万円 − 1,000万円×(33−10−12)÷(33−10)×0.701 | 664.7万円 |
| 居住建物(子) | 1,000万円 − 664.7万円 | 335.3万円 |
| 敷地利用権 | 5,000万円 − 5,000万円×0.701 | 1,495.0万円 |
| 土地(子) | 5,000万円 − 1,495.0万円 | 3,505.0万円 |
| 配偶者の取得 | 664.7+1,495.0 | 2,159.7万円 |
| 子の取得 | 335.3+3,505.0 | 3,840.3万円 |
計算ロジック:(33−10−12)÷(33−10)=11÷23=0.4783です。1,000万円×0.4783×0.701=335.3万円が居住建物の価額になり、1,000万円から引いた664.7万円が配偶者居住権です。
表の見方:配偶者と子の取得を足すと6,000万円で、自宅全体の評価額と一致します。配偶者居住権を設定しても、財産の総額は変わりません。
経過年数が進んでいると配偶者居住権の価額が建物の評価額と同額になります。子が取得する居住建物の価額は0円です。建物の権利は取得しても、相続税の計算には出てきません。古い家では建物部分の節税効果は生まれないということです。
残存耐用年数が存続年数以下になると、算式の(耐用年数−経過年数−存続年数)がゼロ以下になるためです。その場合は居住建物の価額が0円になり、子は建物の権利を取得しても相続税の計算上は評価額がありません。築年数が古い自宅では実際に起こりうる結果です。
| 経過年数 | 残存耐用年数 | 配偶者居住権 | 居住建物(子) |
|---|---|---|---|
| 10年 | 23年 | 664.7万円 | 335.3万円 |
| 15年 | 18年 | 766.3万円 | 233.7万円 |
| 20年 | 13年 | 946.1万円 | 53.9万円 |
| 25年 | 8年 | 1,000.0万円(建物の全額) | 0円 |
計算ロジック:経過年数25年なら残存耐用年数は33−25=8年です。存続年数12年を引くとマイナスになるため、算式の第2項が0になり配偶者居住権=建物の評価額です。
重要ポイント:築年数が古い家では建物の権利がほぼ全部配偶者に移ります。一次相続で配偶者の取得が増えるため、配偶者の税額軽減の枠内なら一次相続の負担は増えません。
配偶者居住権の評価では、経過年数と配偶者の年齢を、配偶者居住権を設定した時で数えます。遺贈なら相続開始の時、遺産分割なら分割が成立した時です(相続税法基本通達23の2-2)。
建物と土地の評価額は相続開始の時の金額のままです。分割が遅れると建物の経過年数が増え、配偶者の年齢が上がって存続年数が短くなります。
| 設定した時 | 経過年数 | 妻の年齢(存続年数) | 配偶者居住権 | 敷地利用権 | 配偶者の取得 |
|---|---|---|---|---|---|
| 相続開始の時(遺贈) | 10年 | 80歳(12年) | 664.7万円 | 1,495.0万円 | 2,159.7万円 |
| 1年後に遺産分割 | 11年 | 81歳(12年) | 681.4万円 | 1,495.0万円 | 2,176.4万円 |
| 2年後に遺産分割 | 12年 | 82歳(11年) | 656.2万円 | 1,390.0万円 | 2,046.2万円 |
| 3年後に遺産分割 | 13年 | 83歳(10年) | 628.0万円 | 1,280.0万円 | 1,908.0万円 |
表の見方:分割が3年遅れると、配偶者の取得は251.7万円小さくなります(2,159.7万円−1,908.0万円)。1年後は経過年数だけが増え、配偶者居住権がわずかに上がります。
計算ロジック:建物1,000万円・土地5,000万円・木造(耐用年数33年)、相続開始時に築10年4か月・妻80歳です。平均余命は国税庁の評価明細書に載る第23回生命表の女性の値で、複利現価率は法定利率3%の表の値です。
重要ポイント:配偶者の取得が小さくなるほど、二次相続で消える分も小さくなります。節税を考えるなら、遺言で遺贈しておくか、分割を早く済ませてください。法定利率と生命表も設定した時のものを使います(同23の2-4・23の2-5)。
配偶者居住権は終身のほかに、10年などの期間を定めることもできます。遺産分割の協議で決めることになります。期間を短くすれば配偶者居住権の価額は小さくなります。ただし期間が終われば住む権利は消えるため、実務では終身が大半です。
期間を短くすると評価額が下がり、配偶者の取得が小さくなります。一次相続の税額は下がりますが、期間が終われば住む権利を失います。税額と住まいの安定を引き換えにする選択になります。
| 存続期間 | 評価の基準 | 配偶者にとって |
|---|---|---|
| 終身(原則) | 平均余命で計算する | 亡くなるまで住み続けられる |
| 10年など期間を定める | 平均余命より短ければその年数で計算する | 期間が終われば出ていくことになる |
注意点:期間を定めると延長はできません。想定より長生きした場合に住む場所を失うため、税額を下げる目的で期間を短くするのは避けてください。
重要ポイント:平均余命より長い期間を定めても、評価は平均余命が上限です。20年と定めても平均余命が12年なら12年で計算します。

評価額を左右するのは配偶者の年齢です。若いほど平均余命が長く、配偶者居住権の評価額が高くなります。
同じ自宅でも、妻が70歳のときと90歳のときで評価額は倍以上違います。設定する時期によって効果が変わるという意味です。評価に使う年齢は、遺贈なら相続開始の時、遺産分割なら分割した時の満年齢です。
建物1,000万円・土地5,000万円・耐用年数33年・経過年数10年で、妻の年齢だけを変えて計算します。存続年数と複利現価率が年齢で変わります。建物・土地・経過年数はすべて同じ条件です。年齢が上がるほど配偶者が取得する価額は小さくなります。
| 妻の年齢 | 平均余命 | 存続年数 | 複利現価率 | 配偶者居住権 | 敷地利用権 | 配偶者の取得 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 70歳 | 20.45年 | 20年 | 0.554 | 927.7万円 | 2,230.0万円 | 3,157.7万円 |
| 75歳 | 16.22年 | 16年 | 0.623 | 810.4万円 | 1,885.0万円 | 2,695.4万円 |
| 80歳 | 12.25年 | 12年 | 0.701 | 664.7万円 | 1,495.0万円 | 2,159.7万円 |
| 85歳 | 8.73年 | 9年 | 0.766 | 533.7万円 | 1,170.0万円 | 1,703.7万円 |
| 90歳 | 5.85年 | 6年 | 0.837 | 381.3万円 | 815.0万円 | 1,196.3万円 |
計算ロジック:平均余命は第23回生命表の女性の値です。存続年数は6月未満を切り捨て、6月以上を切り上げます。複利現価率は1÷1.03の存続年数乗で、70歳なら1÷1.03の20乗=0.554になります。
表の見方:妻が70歳なら配偶者の取得は3,157.7万円、90歳なら1,196.3万円です。若いほど配偶者居住権の評価額が高くなります。
重要ポイント:評価額が高いほど二次相続で消える財産が大きくなります。つまり配偶者が若いほど節税効果は大きくなりますが、一次相続で配偶者の取得が増えるため、配偶者の税額軽減の枠を確認する必要があります。
多くの家庭では土地の評価額が建物より大きいため、敷地利用権のほうが金額の影響が大きくなります。
この例では配偶者居住権664.7万円に対し、敷地利用権は1,495.0万円です。建物は経過年数で減っていきますが、土地は減らないためです。都市部の自宅では、土地が評価額の8割以上を占めることもあります。
重要ポイント:敷地利用権には小規模宅地等の特例を使えます。配偶者が取得するので要件はなく、無条件で80%減額できます。面積は敷地利用権の価額の割合で按分します。
注意点:建物には小規模宅地等の特例が使えません。減額できるのは敷地利用権と土地の部分だけです。建物の評価額が大きい家では、思ったほど下がりません。
土地の評価額の計算手順は、下記の記事で解説しています。


配偶者居住権が得かどうかは、子が二次相続で小規模宅地等の特例を使えるかどうかで決まります。自宅を妻が取得する・子が取得する・配偶者居住権を設定する、の3案を合計税額で比べます。
比べるときは、それぞれの案で預貯金の分け方を変え、合計が最も小さくなる分け方どうしを並べます。分け方をそろえずに比べると結論を誤ります。
建物1,000万円・土地5,000万円・預貯金4,000万円、相続人は妻(80歳)と子1人の家庭で、一次相続と二次相続の合計を比べます。
| 子の住まい | 妻の固有財産 | 自宅を妻が取得 | 自宅を子が取得 | 配偶者居住権を設定 | 最も安い案 |
|---|---|---|---|---|---|
| 同居 | 0円 | 72.0万円 | 72.0万円 | 43.1万円 | 設定する |
| 同居 | 3,000万円 | 280.0万円 | 162.0万円 | 133.1万円 | 設定する |
| 別居・持ち家あり | 0円 | 430.0万円 | 492.8万円 | 284.5万円 | 設定する |
| 別居・持ち家あり | 3,000万円 | 1,040.0万円 | 723.8万円 | 485.7万円 | 設定する |
| 別居・持ち家なし | 0円 | 72.0万円 | 492.8万円 | 284.5万円 | 設定しない |
| 別居・持ち家なし | 3,000万円 | 280.0万円 | 723.8万円 | 485.7万円 | 設定しない |
表の見方:子が同居か、別居で持ち家がある場合は配偶者居住権を設定する案が最も安くなります。子が別居で持ち家がない場合だけ、自宅を妻が取得する案が最も安くなります。
重要ポイント:設定しない案との差は、子が同居で28.9万円、別居で持ち家ありなら145.5万円です。子が別居で持ち家なしなら、逆に設定しないほうが212.5万円安くなります(いずれも固有財産0円)。
計算ロジック:配偶者居住権664.7万円・敷地利用権1,495.0万円(国税庁の例と同じ前提)。各案で妻が取得する預貯金を100万円刻みで変え、一次+二次の合計が最小の分け方を採りました。
妻の一次相続の税額は配偶者の税額軽減で0円のため、相次相続控除は生じません。二次相続までの財産の増減は考えていません。
設定が最安になるのは、配偶者居住権に加えて預貯金も妻に多めに渡す分け方です。妻の取得は配偶者の税額軽減で0円になり、子の取得が小さくなるので一次相続の税額が下がります。
二次相続では配偶者居住権と敷地利用権が消えます。妻が受け取った預貯金が基礎控除3,600万円の範囲に収まれば、二次相続も0円です。
| 案(子が同居・固有財産0円) | 妻が取得する預貯金 | 一次相続 | 二次相続 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 自宅を妻が取得 | 1,600万円 | 72.0万円 | 0円 | 72.0万円 |
| 自宅を子が取得 | 3,600万円 | 72.0万円 | 0円 | 72.0万円 |
| 配偶者居住権を設定 | 3,600万円 | 43.1万円 | 0円 | 43.1万円 |
計算ロジック:設定する案の子の取得は、居住建物335.3万円+土地701.0万円(同居で80%減)+預貯金400万円の1,436.3万円です。相続税の総額180万円×1,436.3÷6,000=43.1万円が子の税額です。
注意点:妻の固有財産が多いと二次相続に税額が出ます。固有財産3,000万円なら、設定する案は妻の預貯金を600万円に抑えた分け方が最安でした(合計133.1万円)。
子が別居で持ち家がない場合は、自宅を妻が取得し、二次相続で子が家なき子の特例を使う案が最も安くなります。家なき子の特例は、亡くなった人に配偶者も同居の相続人もいないことが要件です。一次相続では妻がいるため子は使えず、二次相続で初めて使えます。
【二次相続で家なき子の特例を使う主な要件】
| 案(子が別居・持ち家なし・固有財産0円) | 妻が取得する預貯金 | 一次相続 | 二次相続 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 自宅を妻が取得 | 1,600万円 | 72.0万円 | 0円 | 72.0万円 |
| 配偶者居住権を設定 | 3,600万円 | 284.5万円 | 0円 | 284.5万円 |
計算ロジック:設定する案では、子が取得する土地3,505.0万円に一次相続で特例が使えず、そのまま課税されます。自宅を妻が取得すれば、一次相続は妻、二次相続は家なき子として、2回とも80%減額を使えます。
重要ポイント:差は212.5万円です。家なき子の要件は二次相続の時点で判定するため、子が二次相続までに家を買うと使えなくなります。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
小規模宅地等の特例を誰が相続すると得かは、下記の記事で解説しています。

配偶者居住権を設定すると敷地利用権と土地に分かれ、それぞれで特例の判定をします。1つの土地に2つの判定が生じるという形です。面積の枠330平方メートルも2つに分けて使うことになります。同居しているかどうかで、どちらが特例を使えるかが変わります。
敷地利用権を取得する配偶者は無条件で特例を使えます。一方で土地を取得する子は、同居や持ち家の要件を満たす必要があります。面積は評価額の割合で按分します。同じ土地を2人で分けて、それぞれで判定するという形です。
| 面積 | 評価額 | 特例の適用 | |
|---|---|---|---|
| 配偶者の敷地利用権 | 59.8平方メートル | 1,495.0万円 | 無条件で使える |
| 子が取得する土地 | 140.2平方メートル | 3,505.0万円 | 同居・持ち家の要件が必要 |
計算ロジック:土地200平方メートル・評価額5,000万円のうち、敷地利用権の価額1,495.0万円に対応する面積は200×1,495÷5,000=59.8平方メートルです。子の土地は140.2平方メートルになります。
重要ポイント:子に持ち家がある場合、配偶者居住権を設定すれば敷地利用権の59.8平方メートル分だけは80%減できます。設定しなければ子の土地5,000万円に一切の減額がありません。
注意点:この点だけを見れば配偶者居住権が有利ですが、一次相続と二次相続の合計で比べてください。子が別居で持ち家がない場合は、二次相続で特例を使うほうが有利になることがあります。
次の順に確認すると、どの案を軸に試算するかが決まります。最後は3案の合計税額で比べます。
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重要ポイント:税額の差が小さいときは、配偶者が住み続けられることを優先して決めてください。配偶者居住権の本来の目的は配偶者の住まいを守ることです。
二次相続まで含めた分け方の考え方は、下記の記事で解説しています。

一人っ子の場合の二次相続まで含めた分け方は、下記の記事で解説しています。


配偶者居住権は売ることができず、貸すにも所有者の承諾が要る権利です。登記をしても、自由に換金する道はありません。
住み続けられることと引き換えに、自由度を失います。施設に入ることになったときに現金化できないため、設定する前に将来の生活まで考えておく必要があります。
民法1032条2項は配偶者居住権は譲渡することができないと定めています。例外はありません。相続で取得した権利でありながら、換金する道がない財産です。相続税は課税されるのに、売って納税資金にすることはできません。
納税資金は預貯金など他の財産から用意する必要があります。自宅の評価額が大きい家庭では、預貯金を誰が相続するかも同時に決めてください。配偶者居住権が付いた建物と土地は物納劣後財産で、ほかに物納に充てる財産がない場合にしか物納できません。
第三者に売ることも、子に譲ることもできません。老人ホームの入居費用が必要になっても、この権利を換金する手段がないという意味です。住み続けることだけを目的にした権利だと理解してください。
| したいこと | できるか | 条件 |
|---|---|---|
| 配偶者居住権を売る | できない | 民法1032条2項で禁止されている |
| 第三者に貸して家賃を得る | 所有者の承諾が必要 | 民法1032条3項 |
| 大規模なリフォームをする | 所有者の承諾が必要 | 同じ |
| 自分が住み続ける | できる | 本来の目的 |
| 子と協力して建物ごと売る | できる | 配偶者居住権を放棄して所有者が売る |
重要ポイント:施設に入ることになった場合、自分だけでは何もできません。所有者である子の協力がなければ、貸すことも売ることもできません。子との関係が良好であることが前提の制度です。
固定資産税の納税義務者は登記上の所有者である子です。ただし通常の必要費は配偶者が負担すると定められています。納める人と負担する人が分かれる形です。民法1034条が通常の必要費を配偶者の負担としています。実務では所有者が納めて配偶者が同額を渡す形で精算します。
実務では子がいったん納付し、配偶者に請求する形になります。毎年の負担を誰がどう払うかを決めておかないと、あとで揉める原因になります。毎年発生する費用なので、金額は小さくても回数が重なります。
| 費用 | 負担する人 | 根拠 |
|---|---|---|
| 固定資産税の納付 | 所有者(子) | 地方税法上の納税義務者 |
| 固定資産税の実質負担 | 配偶者 | 通常の必要費にあたる(民法1034条) |
| 小規模な修繕 | 配偶者 | 同じ |
| 大規模な修繕・建て替え | 所有者(子) | 通常の必要費を超える部分 |
| 火災保険料 | 配偶者 | 通常の必要費にあたる |
注意点:負担の取り決めを遺産分割協議書に書いておくと揉めにくくなります。固定資産税を子が払い続けたまま数年が経つと、返してもらえないまま関係が悪化することがあります。
民法1028条1項のただし書きにより、相続開始時に建物を配偶者以外の人と共有していた場合は設定できません。検討する前に必ず確認する項目です。登記事項証明書を取れば数分で分かります。前の相続で子と共有にしていた場合が典型的な例です。
被相続人と子が建物を共有していた場合が典型です。被相続人と配偶者の共有であれば設定できますが、子や第三者が持分を持っていると対象外になります。生前に子と共有名義にしていると、この制度は使えなくなります。
| 相続開始時の建物の名義 | 配偶者居住権 |
|---|---|
| 被相続人が単独で所有 | 設定できる |
| 被相続人と配偶者の共有 | 設定できる |
| 被相続人と子の共有 | 設定できない |
| 被相続人と第三者の共有 | 設定できない |
重要ポイント:共有名義になっている自宅ではそもそも配偶者居住権を検討できません。設定を前提にした対策を考える前に、建物の名義を確認してください。
共有名義の不動産の評価と共有を解消する方法は、下記の記事で解説しています。

もっとも現実的な問題が配偶者が自宅に住めなくなった場合です。高齢の配偶者に設定する制度なので、現実に起こります。設定から10年後に必要になることも珍しくありません。介護施設の入居費用をどう用意するかも合わせて考えてください。
自宅を売って費用にあてるという選択ができなくなります。所有者である子が売ろうとしても、配偶者居住権が登記されていれば買主が現れません。
配偶者居住権は売れないため、入居費用に充てられません。所有者である子の協力を得て対応することになります。選べる手段は3つですが、いずれも税金がかかります。無税で権利を手放す方法はありません。
| 手段 | 内容 | かかる税金 |
|---|---|---|
| 所有者の承諾を得て第三者に貸す | 家賃収入を入居費用に充てる | 配偶者に不動産所得の所得税 |
| 配偶者居住権を無償で放棄する | 子が完全な所有者に戻る | 子に贈与税 |
| 対価を受け取って放棄する | 子から配偶者にお金を払う | 配偶者に譲渡所得税(総合課税) |
| 放棄したうえで子が建物を売る | 売却代金から入居費用を出す | 子に譲渡所得税 |
重要ポイント:いずれの手段も所有者である子の協力が前提です。子が応じなければ、配偶者は何もできません。設定する前に、将来の可能性を家族で話しておいてください。
注意点:配偶者居住権を設定せず自宅を配偶者が相続していれば、自分の判断で売却して入居費用に充てられます。税額が多少高くても、この自由度を選ぶ価値がある家庭もあります。

配偶者居住権は設定した後にやめると贈与税がかかります。一度設定すると引き返しにくい制度です。設定する前に、やめる場合の税負担まで確認してください。合意解除でも配偶者居住権の価額に対して贈与税が計算されます。
相続税を下げるつもりで設定したのに、数年後に解除して別の税金を払うことになるケースがあります。解除の場面ごとに扱いが違うので確認してください。課税されないのは死亡・期間満了・建物の全部滅失の3つです。
配偶者が配偶者居住権を放棄したり、子と合意して解除すると、子が経済的な利益を得たことになります。
その時点の配偶者居住権の価額に相当する利益を無償で受けたものとして、子に贈与税がかかります。対価を受け取れば贈与にはなりませんが、配偶者に譲渡所得税がかかります。どちらを選んでも誰かに課税されるという構造です。
| 配偶者居住権が消える理由 | 課税される人 | かかる税金 |
|---|---|---|
| 配偶者の死亡 | 誰にもかからない | なし(節税の仕組み) |
| 無償で放棄する・合意解除する | 所有者(子) | 贈与税 |
| 対価を受け取って解除する | 配偶者 | 譲渡所得税(総合課税・居住用の3,000万円控除は使えない) |
| 存続期間が満了する | 誰にもかからない | なし |
| 建物が火災などで全部滅失する | 誰にもかからない | なし |
重要ポイント:課税されないのは配偶者の死亡・存続期間の満了・建物の全部滅失だけです。合意解除や放棄でやめると、所有者か配偶者のどちらかに税金がかかります(相続税法基本通達9-13の2)。
注意点:施設に入ることになって自宅を売りたいと思っても、放棄すれば子に贈与税がかかります。配偶者が対価を受け取れば贈与税は避けられますが、今度は配偶者に譲渡所得税がかかります。
配偶者の税額軽減は、配偶者が納める税額を0円にする制度です。子が納める税額は軽減されません。上限は1億6,000万円か法定相続分の多いほうです。配偶者居住権を設定して配偶者の取得が増えても、この範囲なら配偶者の税額は0円のままです。
| 配偶者の取得 | 配偶者の税額 | 子の税額 |
|---|---|---|
| 1億6,000万円か法定相続分の多いほう以下 | 0円 | 子の取得の割合に応じてかかる |
| それを超える | 超えた割合に応じてかかる | 子の取得の割合に応じてかかる |
重要ポイント:一次相続の税額を下げるには、子の取得を小さくすることが必要です。配偶者居住権と預貯金を配偶者に渡すほど、子の税額は下がります。
注意点:配偶者に寄せすぎると二次相続の税額が増えます。一次相続と二次相続の合計で確認してください。
相続税に使える控除と特例の一覧、適用の順番は下記の記事にまとめています。

配偶者居住権は配偶者の死亡で消滅するので、次の世代に引き継がれません。相続の対象にならない権利です。この性質が二次相続で課税されない理由でもあります。
再婚した配偶者に設定した場合、その配偶者が亡くなれば所有権を持つ子が完全な所有者に戻ります。配偶者の連れ子には何も残りません。実の子に自宅を確実に戻したい場合に向いた仕組みです。
重要ポイント:再婚家庭では配偶者居住権が有効に働きます。配偶者が住み続けられる一方で、最終的には実の子に自宅が戻る形を作れます。
子が配偶者より先に亡くなっても、配偶者居住権は消えずに残ります。子の相続人は、配偶者居住権が付いたままの建物と土地を相続します。
その建物と土地は、配偶者居住権の算式に準じて評価します(相続税法基本通達23の2-6)。存続年数と経過年数は、子の相続で取得した時を基準に数え直します。
重要ポイント:子の相続でも、配偶者居住権の分を差し引いた価額で評価できます。孫などが所有者になっても、配偶者は住み続けられます。

配偶者居住権は遺産分割・遺贈・死因贈与・家庭裁判所の審判のいずれかで取得します。どれかを経ないと発生しません。
自動的に発生する権利ではありません。さらに登記をしないと第三者に対抗できないため、設定した後の手続きまで押さえておく必要があります。登記までを一連の流れとして考えてください。
民法1028条と1029条が遺産分割・遺贈・審判を定め、死因贈与には遺贈の規定が準用されます(民法554条)。
| 方法 | 内容 | 確実性 |
|---|---|---|
| 遺産分割 | 相続人全員の協議で決める | 協議がまとまらないと使えない |
| 遺贈 | 遺言で配偶者居住権を遺贈すると書く | もっとも確実 |
| 家庭裁判所の審判 | 協議が調わないときに申し立てる | 配偶者の生活の維持に必要と認められる場合 |
| 死因贈与 | 生前の契約で決める | 使えるが遺贈のほうが一般的 |
重要ポイント:確実に残したいなら遺言で遺贈すると書いておくことです。遺産分割に委ねると、子が反対すれば設定できません。
注意点:民法は遺言の場合、配偶者居住権を「遺贈の目的とされたとき」に取得すると定めています。遺言には「配偶者居住権を遺贈する」と書いてください。遺贈なら配偶者は配偶者居住権だけを放棄することもできます。
参照元:e-Gov 法令検索 民法(第1028条・第1029条)
遺産分割協議書の書き方と遺言がある場合の進め方は、下記の記事で解説しています。

配偶者居住権は登記をして初めて第三者に主張できます。設定しただけでは足りません。建物の所有者と共同で申請する必要があります。
所有者である子が建物を売ってしまった場合、登記がなければ買主に対して住む権利を主張できません。登記は所有者と共同で申請するため、子の協力が必要です。登録免許税は建物の固定資産税評価額の1000分の2です。
注意点:登記の申請は配偶者と所有者の共同申請です。子が協力しなければ登記できません。遺産分割協議書に登記に協力する旨を書いておいてください。
相続税の申告では配偶者居住権等の評価明細書を作成します。国税庁のホームページから入手できます。4つの価額をこの1枚で計算する様式になっています。
国税庁が用意している様式で、耐用年数・経過年数・存続年数・複利現価率を書き込んで評価額を計算します。第11表に転記する前の計算過程を示す書類です。添付を忘れると評価額の根拠を示せなくなります。
| 書類 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 配偶者居住権等の評価明細書 | 4つの数字から評価額を計算する | 国税庁の様式を使う |
| 第11表 | 相続税がかかる財産の明細 | 配偶者居住権・居住建物・敷地利用権・土地を別々に記載 |
| 第11・11の2表の付表1 | 小規模宅地等の特例 | 敷地利用権と土地でそれぞれ判定する |
| 第5表 | 配偶者の税額軽減 | 配偶者の取得額を記載 |
重要ポイント:第11表には4つに分けて記載します。配偶者居住権と敷地利用権は配偶者、居住建物と土地は所有者である子の取得分です。
相続税の申告書の書き方と提出までの流れは、下記の記事で解説しています。


配偶者居住権とよく混同されるのが配偶者短期居住権です。名前は似ていますが別の制度で、設定の手続きも税務上の扱いも違います。自動的に発生するため、遺産分割の期間中に役立ちます。協議が長引いても、その間に追い出されることはありません。
配偶者短期居住権は遺産分割が終わるまでの短い期間だけ住める権利です。配偶者居住権とは別に用意された保護の仕組みです。相続開始の直後に住まいを失わないための規定です。
民法1037条により、相続開始時に無償で住んでいた配偶者は、遺産分割が終わる日か相続開始から6か月を経過する日のいずれか遅い日まで無償で住み続けられます。手続きも申請も必要ありません。
| 配偶者居住権 | 配偶者短期居住権 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 民法1028条 | 民法1037条 |
| 取得の方法 | 遺産分割・遺贈・審判が必要 | 自動的に発生する |
| 期間 | 原則として終身 | 遺産分割まで、または6か月のいずれか遅い日 |
| 相続税 | 課税される(財産として評価) | 課税されない |
| 登記 | できる(第三者への対抗要件) | できない |
| 共有の場合 | 設定できない | 共有でも発生する |
重要ポイント:配偶者短期居住権に相続税はかかりません。財産として評価されないため、申告書に書く必要もありません。
注意点:短期居住権は最長でも遺産分割が終わるまでです。長く住み続けたいなら、配偶者居住権を設定するか自宅を相続する必要があります。

ここまでの内容を順番に確認すれば判定できます。税額だけでなく、住み続けられるかという本来の目的も含めて判断してください。金額の差が小さければ、住まいの安定を優先する選択もあります。
この4つを順に確認すれば、どの案を軸に試算するかが決まります。建物の名義で設定できないと分かれば、自宅を誰が相続するかという通常の遺産分割に戻ります。
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重要ポイント:設定しないほうが安くなりやすいのは子が二次相続で家なき子の特例を使える場合です。それ以外は、設定する案を必ず試算に入れてください。
提出前に見落としがないかを確認します。設定してからでは変更できない項目が含まれています。
チェックリスト:配偶者居住権を検討するときに確認すること
重要ポイント:もっとも見落としやすいのは預貯金の分け方をそろえて比べることです。設定する案だけ預貯金を子に寄せて比べると、得な案を損と見誤ります。
金額だけで決めるべきではありません。配偶者が住み続けられることを法的に保障するのが本来の目的です。2020年の民法改正で設けられた趣旨もそこにあります。
【税額が高くても設定を検討する場面】
重要ポイント:配偶者居住権はもともと節税のための制度ではありません。配偶者の住まいと生活資金の両方を確保するために作られました。税額の比較は、その目的を果たしたうえでの確認事項です。
相続税の節税対策の全体像と優先順位は、下記の記事で解説しています。

配偶者居住権を使わずに自宅を1人が取得して他の相続人に代償金を払う方法もあります。配偶者が自宅を取得し、子には代償金を払うという形です。配偶者が完全な所有者になるため売却も自由にでき、施設に入ることになっても対応できます。
| 方法 | 配偶者の立場 | 売却できるか | 二次相続 |
|---|---|---|---|
| 配偶者居住権を設定 | 住む権利だけを持つ | できない | 課税されない |
| 配偶者が自宅を相続し代償金を払う | 完全な所有者 | できる | 自宅が課税される |
| 子が自宅を相続し配偶者に代償金を払う | 現金を受け取る | - | 現金が課税される |
重要ポイント:代償分割なら配偶者が完全な所有者になるので自由度が高いです。ただし代償金を払う資力が必要で、二次相続では自宅が課税されます。
代償分割の代償金の決め方と相続税の計算は、下記の記事で解説しています。


配偶者居住権は設定するかどうかの判定で数百万円変わります。複数の税理士から見積りを取り、提案の中身を比べてください。
判定には子の住まい・預貯金の分け方・小規模宅地等の特例の3つが絡みます。1つを見落とすと結論が逆になります。
【相続税の対応実績がある税理士に相談すべき理由】
たとえば建物1,000万円・土地5,000万円・預貯金4,000万円で、妻80歳と子1人(別居・持ち家あり)、妻の固有財産3,000万円という家庭を考えます。
A税理士は自宅を子が取得する案を提案しました。預貯金の分け方を工夫しても、合計は723.8万円です。
B税理士は配偶者居住権を設定し、預貯金600万円を妻に渡す案を提案しました。二次相続は0円で、合計485.7万円です。238.1万円の差が生まれています。
比べるべきなのは二次相続まで試算しているかです。一次相続だけの比較では、配偶者居住権は不利に見えることがあります。
判定ポイント1:配偶者の固有財産を聞くか初回相談で「奥様ご自身の財産はいくらありますか」と聞いてくるかどうかです。→ 聞かない事務所は、二次相続を試算していません。
判定ポイント2:子の住まいを確認するか「お子様は同居されていますか。持ち家はありますか」という質問があるかです。→ 小規模宅地等の特例の判定に直結します。
判定ポイント3:設定しない案も出すか配偶者居住権を勧めるだけの事務所と、設定しない案と並べて比べる事務所があります。→ 3案を並べられるかが実務力の差になります。
配偶者居住権は設定した後にやめると別の税金がかかります。
【相談しないまま進めた場合のリスク】
納めすぎた税金を取り戻すには更正の請求が必要で、申告期限から5年を過ぎると請求できなくなります。複数の事務所から見積りを取っていれば、判定の違いはその時点で見えます。
見積りはフォームの記入5分から始められます。
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重要ポイント:STEP1で配偶者ご自身の財産とお子様の住まいを整理しておくことが、判定の精度を大きく左右します。この2つで結論が逆転するためです。
条件によります。配偶者が亡くなったときに配偶者居住権が消滅し、その分に相続税がかからないという仕組みで節税になります。
ただし子が別居で持ち家がなく、二次相続で家なき子の特例を使える場合は、設定しないほうが安くなります。一次相続と二次相続の合計で比べてください。
建物は「建物の評価額 − 建物の評価額×(耐用年数−経過年数−存続年数)÷(耐用年数−経過年数)× 複利現価率」で計算します。土地の敷地利用権は「土地の評価額 − 土地の評価額×複利現価率」です。
建物1,000万円・土地5,000万円で、耐用年数33年・経過年数10年・存続年数12年・複利現価率0.701なら、配偶者居住権は664.7万円、敷地利用権は1,495.0万円になります。
子が同居している場合や、別居で持ち家がある場合です。配偶者居住権に加えて預貯金も配偶者に多めに渡すと、一次相続と二次相続の合計が最も小さくなりました。
建物1,000万円・土地5,000万円・預貯金4,000万円の例では、子が同居で28.9万円、別居で持ち家ありなら145.5万円安くなります。
できません。民法1032条2項が配偶者居住権は譲渡することができないと定めているためです。第三者に貸すことも、所有者の承諾がなければできません。
施設に入ることになって放棄すると、所有者である子が経済的な利益を受けたものとして贈与税がかかります。対価を受け取れば贈与税は避けられますが、配偶者に譲渡所得税がかかります。
相続開始時に被相続人が配偶者以外の人と共有していた場合は設定できません(民法1028条1項ただし書き)。被相続人と子が共有していた自宅が典型例です。
被相続人と配偶者の共有であれば設定できます。検討する前に、登記事項証明書で建物の名義を確認してください。
変わります。経過年数と配偶者の年齢は、配偶者居住権を設定した時で数えるためです。遺産分割で設定するなら分割が成立した時が基準になります。
分割が遅れると配偶者の年齢が上がり、存続年数が短くなって配偶者居住権の評価額は下がります。節税を考えるなら、遺言で遺贈しておくのが確実です。
配偶者居住権は節税のための制度ではありません。配偶者の住まいと生活資金を確保するために作られた権利です。税額の面では、子の住まいによって設定しないほうが安くなるケースがあります。この記事の要点をまとめます。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年10月時点の法令等に基づいて作成しています。相続税法の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度については国税庁のホームページや税理士にご確認ください。