遺贈にかかる税金は?相続税の計算方法と基礎控除・2割加算をシミュレーションで解説

遺贈_相続税

遺贈(いぞう)とは、遺言書によって財産の全部または一部を、特定の人に無償で譲ることです。財産を受け取る人を「受遺者」と呼びます。

遺贈で財産を受け取った人にかかる税金は、贈与税ではなく相続税です。不動産を受け取った場合は、登録免許税と不動産取得税もかかることがあります。

相続人以外の人が遺贈を受けると、相続税が2割加算されるうえ、生命保険の非課税枠などの優遇も使えません。同じ財産でも、誰が受け取るかで税負担が大きく変わります。

たとえば子2人の家庭で、遺産1億円のうち1,000万円を知人が受け取ると、知人の相続税は約92万円です。

不動産の遺贈では、登録免許税が相続人の5倍になり、特定遺贈なら不動産取得税もかかります。知らずに受け取ると、納税資金が足りなくなるおそれがあります。

一方で、遺贈は放棄することもできます。ただし包括遺贈の放棄には3ヶ月の期限があります。

この記事では、遺贈にかかる税金の種類、相続税の計算方法と基礎控除・2割加算、受け取る額別の早見表、受け取った後の手続きまでを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 遺贈にかかる税金は相続税。不動産なら登録免許税・不動産取得税もかかり、遺産総額が基礎控除を超えると申告が必要
  • 相続人以外の受遺者は相続税が2割加算。子2人・遺産1億円で1,000万円を受け取ると税額は約92万円
  • 包括遺贈の放棄は3ヶ月以内。相続人以外に渡すなら、遺贈より生前贈与のほうが家族全体の税が安くなることもある
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遺贈にかかる税金は相続税|受け取る人で変わる税金の一覧

まず押さえたいのは税金の種類です。遺贈でもらった財産にかかるのは、贈与税ではなく相続税です。不動産や法人への遺贈では、ほかの税金も関わります。

ここでは遺贈でかかる税金の一覧と、遺贈の仕組み、相続・死因贈与との違いを整理します。

遺贈でかかる税金の一覧|受け取る人と遺贈の種類で変わる

遺贈でかかる税金は、最大で5種類です。どれがかかるかは「相続人かどうか」「包括遺贈か特定遺贈か」「個人か法人か」で決まります。

税金 相続人が受け取る 相続人以外(包括遺贈) 相続人以外(特定遺贈) 法人が受け取る
相続税 かかる(兄弟姉妹などは2割加算) かかる(2割加算) かかる(2割加算) 原則かからない
登録免許税(不動産) 0.4% 2% 2% 2%
不動産取得税 かからない かからない かかる 特定遺贈ならかかる
みなし譲渡所得税 かからない かからない かからない 含み益があればかかる(相続人などが納める)
法人税 — — — 原則かかる(公益法人などは非課税の場合あり)

表の見方:黄色の相続税は、遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えたときだけかかります。相続人以外の個人は、相続税の2割加算と登録免許税2%が同時にかかる点が最大の違いです。

重要ポイント:不動産取得税は「相続人以外が特定遺贈で受け取った場合」だけかかります。同じ相続人以外でも、包括遺贈なら非課税です。

計算ロジック:登録免許税は固定資産税評価額×税率、不動産取得税は固定資産税評価額×3%(土地・住宅。宅地は2分の1に軽減。2027年3月31日までの取得)です。みなし譲渡所得税は準確定申告で納めます。

参照元:国税庁 No.4102 相続税がかかる場合

遺贈とは|遺言書で相続人以外にも財産を渡せる

遺言書がない場合、財産を受け取れるのは民法で決められた法定相続人だけです。内縁の妻や子の配偶者は、どれだけ貢献していても受け取れません。

遺贈を使えば、この壁を越えられます。遺言書に「〇〇に△△を遺贈する」と書くことで、法定相続人以外の個人や団体にも財産を渡せます。

「介護をしてくれた長男の妻に預金を残したい」「支援団体に寄付したい」といった希望は、遺贈でしか実現できません。

高齢化と家族の多様化を背景に、遺贈を選ぶ人は年々増えています。それに伴って、突然「遺贈を受けた」と知らされて戸惑う受遺者も増えているのが実情です。

なお、法定相続人に対して遺贈することも可能です。この場合、税務上は通常の相続とほぼ同じ扱いになります。

重要ポイント:遺贈は遺言書があって初めて成立します。遺言書の書き方に不備があると遺贈自体が無効になるため、形式のルールを守ることが大前提です。

遺贈できる相手|個人から法人・団体まで幅広い

遺贈の相手に法律上の制限はほとんどありません。個人でも法人でも受遺者になれます。

個人では、内縁の妻や夫・再婚相手の連れ子・子の配偶者・孫・甥姪・友人などが代表例です。法律上の家族でなくても、遺言書があれば財産を渡せます。

団体では、NPO法人・学校・医療機関・自治体などへの「遺贈寄付」も選ばれています。国や地方公共団体、一定の公益法人への遺贈は、相続税がかからない扱いもあります。

ただし受け取る相手によって、税金の種類も負担の重さも変わります。この記事では主に「個人が遺贈を受けた場合」の相続税を解説していきます。

重要ポイント:誰に遺贈するかで適用される税制がまったく変わります。特に法人への遺贈は相続税ではなく法人税などの世界になるため、設計段階から専門家の関与が必要です。

なぜ贈与税ではなく相続税がかかるのか

贈与税がかかるのは、生きている人から財産をもらった場合です。一方、遺贈で財産が移るのは遺言者が亡くなった時点です。

財産の移転が「死亡」をきっかけに起きるため、税法上は相続と同じグループとして扱われます。だから受遺者が払うのは相続税であり、贈与税の申告は不要です。

相続税は「もらった人ごと」ではなく「遺産全体」から計算する税金です。そのため受遺者の税額は、他の相続人が受け取る財産の額にも影響されます。

ここが贈与税との大きな違いです。贈与税なら自分がもらった額だけで計算できますが、相続税は遺産全体と他の相続人の情報がないと税額が出せません。

具体的な計算の流れは、このあとの章で解説します。

重要ポイント:遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら、受遺者にも相続税はかかりません。まず遺産全体の規模を確認しましょう。

参照元:国税庁 No.4102 相続税がかかる場合

遺贈・相続・死因贈与の違い比較表

死亡をきっかけに財産が移る方法には、遺贈のほかに「相続」と「死因贈与」があります。3つの違いを表で整理します。

項目 相続 遺贈 死因贈与
受け取れる人 法定相続人のみ 誰でも可(個人・法人) 誰でも可(個人・法人)
必要なもの 不要(法律上当然に発生) 遺言書(一方的な意思表示) 贈与契約(双方の合意)
かかる税金 相続税 相続税 相続税
不動産の登録免許税 0.4% 相続人0.4%/相続人以外2% 2%
不動産取得税 非課税 相続人以外の特定遺贈のみ課税 課税

表の見方:3つとも「相続税」がかかる点は共通です。ただし不動産関係の税金は方法と受け取る人によって大きく変わります。

重要ポイント:死因贈与は「もらう側の同意」が生前に必要な契約です。遺贈は遺言者が一方的にできる点、不動産の税負担がやや軽い点で違いがあります。

包括遺贈と特定遺贈|種類によって税金と手続きが変わる

遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。どちらの遺贈かで、引き継ぐ義務・税金・放棄の方法まで変わります。

自分が受けた遺贈がどちらのタイプか、まず遺言書の書き方で確認しましょう。

包括遺贈|割合で指定される・借金も引き継ぐ

包括遺贈は、「全財産の3分の1を〇〇に遺贈する」のように、財産を特定せず割合で指定する方法です。

包括受遺者は、法律上、相続人と同じ権利義務を持ちます。つまりプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も割合に応じて引き継ぎます。

たとえば「全財産の2分の1」の包括遺贈を受けた場合、預金の半分と同時に、住宅ローンや未払金の半分も背負うことになります。

また、具体的にどの財産を受け取るかを決めるため、相続人との遺産分割協議に参加する必要があります。面識のない相続人と話し合う負担が生じることもあります。

注意:包括遺贈を放棄するには、遺贈を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。期限を過ぎると、借金ごと引き受けたことになります。

特定遺贈|財産を指定される・借金は引き継がない

特定遺贈は、「〇〇銀行の預金を△△に遺贈する」「自宅の土地建物を△△に遺贈する」のように、財産を具体的に指定する方法です。

特定受遺者は指定された財産だけを受け取り、原則として借金は引き継ぎません。遺産分割協議への参加も不要です。

放棄したい場合は、相続人や遺言執行者に意思表示するだけでよく、家庭裁判所の手続きも期限もありません。

受け取る側の負担が軽く、トラブルも起きにくいことから、実際の遺言書では特定遺贈の形が多く使われています。

ただし税金面では注意が必要です。相続人以外の人が特定遺贈で不動産を受け取ると、不動産取得税がかかります。包括遺贈なら非課税です。

重要ポイント:相続開始の時点で、指定された財産がすでに処分されていた場合、その部分の特定遺贈は効力を失います。遺言書は財産の変動に合わせた見直しが必要です。

遺言書の文言でどちらの遺贈か見分ける

自分が受けた遺贈がどちらの種類かは、遺言書の書き方から判断します。見分けの基本は「割合か、特定の財産か」です。

【包括遺贈と読める文言の例】

「全財産を〇〇に遺贈する」「遺産の3分の1を〇〇に遺贈する」など、財産を特定せず全部または割合で示す書き方。

【特定遺贈と読める文言の例】

「〇〇銀行△△支店の預金を□□に遺贈する」「別紙目録1の土地を□□に遺贈する」など、対象の財産を具体的に示す書き方。

実際の遺言書には、どちらとも読める曖昧な文言も少なくありません。解釈しだいで借金の引き継ぎや税金が変わるため、曖昧なら自己判断は禁物です。

たとえば「自宅と預金の残り全部を〇〇に」という書き方は、特定と包括が混在した形になり、解釈が分かれる典型例です。

判断に迷う場合は、遺言執行者や弁護士・税理士に遺言書を見せて確認しましょう。

重要ポイント:「遺贈する」ではなく「相続させる」と書かれている場合、相手が相続人なら遺贈ではなく遺産分割方法の指定として扱われ、手続きが変わります。文言の違いは重要です。

包括遺贈と特定遺贈の比較表

2種類の違いを一覧で整理します。自分の立場に関わる行を確認してください。

項目 包括遺贈 特定遺贈
指定の方法 割合(全部・2分の1など) 特定の財産(この預金・この土地)
借金の引き継ぎ 割合に応じて引き継ぐ 原則引き継がない
遺産分割協議 参加が必要 参加不要
放棄の方法 家庭裁判所へ申述(3ヶ月以内) 意思表示のみ(期限なし)
不動産取得税 非課税 相続人以外は課税

表の見方:受遺者の立場では、包括遺贈は「借金と3ヶ月期限」、特定遺贈は「不動産取得税」が要注意ポイントです。

重要ポイント:包括遺贈を受けたら、まず遺産に借金がないかの調査が最優先です。判断がつかないうちに3ヶ月が迫る場合は、早急に専門家へ相談しましょう。

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遺贈の相続税の計算方法|5つのステップ

遺贈の相続税は、通常の相続と同じ流れで計算します。ただし「基礎控除の人数」と「2割加算」の2点で、受遺者ならではのルールがあります。

ここでは計算の流れと、受遺者が知っておくべき特有ルールを解説します。

基礎控除の計算に受遺者は含めない

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。遺産総額がこれ以下なら、受遺者を含めて誰にも相続税はかかりません。

ここで重要なのは、「法定相続人の数」に受遺者は含めないという点です。

たとえば法定相続人が配偶者と子1人で、ほかに受遺者が1人いる場合。基礎控除は3人分の4,800万円ではなく、2人分の4,200万円で計算します。

「もらう人が増えても基礎控除は増えない」と覚えておきましょう。

なお、遺産総額には生命保険金などのみなし相続財産や、一定期間内の生前贈与も含めて判定します。「預金と不動産だけなら控除以下」と早合点しないことが大切です。

申告が必要かどうかは、小規模宅地等の特例などを使う前の金額で判定します。特例で税額が0円になっても、基礎控除を超えていれば申告は必要です。

重要ポイント:法定相続人の数は、相続放棄した人がいても放棄がなかったものとして数えます。人数の数え方で基礎控除額が600万円単位で変わるため、正確な確認が必要です。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

基礎控除と申告が必要かどうかの判定は、下記の記事で解説しています。

計算の流れ|5ステップ

STEP1
遺産総額を計算する。預貯金・不動産・株式に加え、生命保険金などのみなし相続財産、一定期間内の生前贈与も含めます。借金・葬式費用は差し引きます

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STEP2
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引き、課税遺産総額を求めます。ゼロ以下なら相続税はかかりません

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STEP3
課税遺産総額を「法定相続人が法定相続分どおりに分けた」と仮定して各人分に税率を適用し、合計して相続税の総額を出します(受遺者はここでは登場しません)

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STEP4
相続税の総額を、受遺者を含めた各人が「実際に受け取った割合」であん分します。受遺者の負担分はここで決まります

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STEP5
2割加算・各種控除を適用して納税額を確定します。相続人以外の受遺者は税額を1.2倍にします

重要ポイント:相続税は遺産全体から計算するため、受遺者だけでは自分の税額を計算できません。相続人側の情報(遺産総額・分け方)の共有が不可欠です。

相続税の速算表|税率は10%〜55%

STEP3で使う相続税の速算表を掲載します。法定相続分で仮分割した各人の取得金額に、対応する税率と控除額を適用します。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% ―
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

表の見方:この表を適用するのは「遺産全体」ではなく「法定相続分で仮分割した後の各人の金額」です。遺産総額に直接税率をかけると大きく誤ります。

重要ポイント:計算式は「取得金額×税率−控除額」です。たとえば1,900万円なら、1,900万円×15%−50万円=235万円となります。

2割加算の対象者|相続人以外の受遺者はほぼ該当

相続税には、財産を受け取った人によって税額が2割増しになる「2割加算」のルールがあります。

加算されないのは、被相続人の配偶者と一親等の血族(子・父母。代襲相続人になった孫を含む)です。それ以外の人が遺贈を受けると、相続税は1.2倍になります。

血縁の近い人ほど税負担を軽くするという相続税の考え方に基づくルールで、受遺者側で回避する方法は基本的にありません。

兄弟姉妹・甥姪・孫(代襲相続人でない場合)・子の配偶者・内縁のパートナー・友人などは、すべて2割加算の対象です。

2割加算は「相続人かどうか」ではなく「続柄」で決まります。兄弟姉妹は法定相続人として相続する場合でも加算対象になる、という点が誤解されやすいポイントです。

節税目的で孫を養子にした「孫養子」も加算対象になる点に注意しましょう。一方、孫以外の養子や、相続放棄した子が遺贈を受けた場合は加算されません(相続税法基本通達18-1)。

加算は、取得割合であん分した税額に1.2を掛けてから、税額控除を差し引く順番で計算します。順番を逆にすると税額を少なく見積もります。

孫が受け取る場合の2割加算のパターンは、下記の記事で解説しています。

計算ロジック:2割加算の金額=各人の税額控除前の相続税額×0.2。たとえば相続税額が100万円なら、加算後は100万円×1.2=120万円になります(相続税法第18条)。

参照元:国税庁 No.4157 相続税額の2割加算

遺贈の相続税シミュレーション|3パターンの比較

実際の数字で税額の変化を見てみましょう。同じ遺産総額でも、受遺者への遺贈が増えるほど一家全体の税負担は増えていきます。

ここでは遺贈の有無・金額を変えた3パターンを比較します。

前提条件と3つのパターン

【前提】遺産総額(課税価格の合計)8,000万円。法定相続人は配偶者と長男の2人。基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。

課税遺産総額は8,000万円−4,200万円=3,800万円。これを法定相続分(各2分の1=1,900万円ずつ)で仮分割し、速算表(税率15%・控除50万円)を適用します。

各人235万円ずつで、相続税の総額は470万円。この総額は3パターン共通です(受遺者は総額計算に影響しないため)。

パターン 配偶者 長男 知人(相続人以外)
A:遺贈なし 4,000万円 4,000万円 —
B:知人に1,000万円を遺贈 4,000万円 3,000万円 1,000万円
C:知人に2,000万円を遺贈 4,000万円 2,000万円 2,000万円

表の見方:配偶者の取得額は3パターンとも4,000万円で固定し、長男の取り分を知人への遺贈に回した場合を比べます。

試算結果|遺贈が増えるほど総負担が増える

相続税の総額470万円を実際の取得割合であん分し、知人(相続人以外)には2割加算を適用した結果です。

負担者 パターンA
遺贈なし
パターンB
知人へ1,000万円
パターンC
知人へ2,000万円
配偶者 0円(税額軽減) 0円(税額軽減) 0円(税額軽減)
長男 235万円 176万2,500円 117万5,000円
知人(2割加算後) ― 70万5,000円 141万円
全員の合計 235万円 246万7,500円 258万5,000円

表の見方:縦に「誰が払うか」、横に「遺贈の有無・金額」を並べています。パターンAとCでは、全体の負担に23万5,000円の差が生まれます。

重要ポイント:差が生まれる原因は知人分の2割加算です。また配偶者の取得分を増やすと当面の税額は下がりますが、二次相続で不利になる場合があります。分け方は全体設計で考えましょう。

計算ロジック:【前提】課税遺産総額3,800万円。仮分割1,900万円×15%−50万円=235万円×2人=総額470万円。各人の負担=470万円×取得割合(知人はさらに×1.2)。税率は2026年時点の速算表によります。

受け取る額別の相続税早見表|子2人の家庭

自分がいくら払うかは、遺産総額と自分の取得額で決まります。遺産1億円のうち1,000万円を受け取ると約92万円、5,000万円なら462万円です。

遺産総額 500万円 1,000万円 2,000万円 3,000万円 5,000万円
5,000万円 9.6万円 19.2万円 38.4万円 57.6万円 —
8,000万円 35.2万円 70.5万円 141万円 211.5万円 352.5万円
1億円 46.2万円 92.4万円 184.8万円 277.2万円 462万円
1億5,000万円 73.6万円 147.2万円 294.4万円 441.6万円 736万円
2億円 100.2万円 200.4万円 400.8万円 601.2万円 1,002万円
3億円 138.4万円 276.8万円 553.6万円 830.4万円 1,384万円

表の見方:縦が遺産総額、横が受遺者の取得額です。数字は相続人以外の受遺者が払う相続税(2割加算後)です。遺産総額が大きいほど、同じ取得額でも税額が上がります。

重要ポイント:受遺者が子・父母などの一親等の血族なら、表の金額を1.2で割った額になります。生命保険金を受け取った場合は、非課税枠が使えないため保険金の全額を取得額に含めてください。

計算ロジック:【前提】法定相続人は子2人、税額控除なし。総額は(遺産総額−4,200万円)を2分の1ずつ速算表に当てて合計します。例:遺産1億円は総額770万円で、770万円×1,000万円÷1億円×1.2=92.4万円です。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

受遺者の手取りで考える|納税資金の確認が必須

受遺者の立場では、「もらえる額」ではなく「税引き後の手取り」で考えることが大切です。

パターンCの知人は、2,000万円の遺贈に対して141万円の相続税を負担します。現金の遺贈なら受け取った中から払えますが、問題は不動産だけを遺贈された場合です。

不動産だけをもらうと、納税資金を自分の預金から持ち出すことになります。さらに登録免許税などの費用も自己負担です。

納税資金が用意できない場合は、遺贈の放棄や不動産の売却も含めて、早めに選択肢を検討する必要があります。

どうしても一括で払えない場合は、担保提供を条件に分割払いにする「延納」という制度もあります。ただし利子税がかかるうえ、審査もあるため、まずは税理士に相談して現実的な資金計画を立てましょう。

重要ポイント:相続税は原則現金一括納付です。不動産の遺贈を受けたら、まず税額の概算を出し、手元資金で払えるかを確認することが最初の仕事になります。

相続人がいない場合の遺贈|基礎控除は3,000万円で税額も重い

身寄りのない人が友人や団体に全財産を遺贈するケースも増えています。法定相続人がゼロの場合、計算はどうなるのでしょうか。

基礎控除は「3,000万円+600万円×0人」で、最低額の3,000万円になります。遺産がこれを超えれば、受遺者に相続税がかかります。

さらに受遺者は配偶者でも一親等の血族でもないため、全員が2割加算の対象です。相続人がいる場合より税負担は重くなりがちです。

なお、遺言書がないまま相続人ゼロで亡くなると、財産は最終的に国庫に入ります。「誰かに残したい」なら遺言書の作成が唯一の手段です。

遺産総額(全額を1人に遺贈) 相続税(2割加算後) 遺産に対する割合
3,000万円 0円 0%
4,000万円 120万円 3.0%
5,000万円 300万円 6.0%
8,000万円 960万円 12.0%
1億円 1,680万円 16.8%
2億円 6,120万円 30.6%
3億円 1億1,340万円 37.8%

表の見方:相続人がいない遺産1億円を1人に遺贈すると、相続税は1,680万円です。相続人がいる場合と比べて基礎控除が小さく、法定相続分で分けて税率を下げることもできないため、税額が重くなります。

計算ロジック:法定相続人が0人の場合、課税遺産総額(遺産総額−3,000万円)全体に速算表を当てて相続税の総額を出し、2割加算します。例:1億円なら7,000万円×30%−700万円=1,400万円、×1.2=1,680万円です。

重要ポイント:おひとりさまの遺贈は、遺言執行者の指定と納税資金の設計がセットで必要です。生前のうちに専門家を交えて準備しておきましょう。

相続人と受遺者で変わる税負担|特例・非課税枠の制限

相続税には税負担を軽くする特例や非課税枠が多くありますが、その多くは「法定相続人」や「親族」限定で、相続人以外の受遺者は使えません。

ここでは受遺者が制限を受ける制度を整理します。

生命保険金・死亡退職金の非課税枠が使えない

死亡保険金と死亡退職金には、それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。

ただしこの非課税枠が使えるのは、法定相続人が受け取った場合だけです。相続人以外の人が遺贈などで受け取ると、全額が課税対象になります。

たとえば法定相続人2人の場合、非課税枠は1,000万円。同じ1,000万円の保険金でも、相続人が受け取れば課税ゼロ、内縁の妻が受け取れば1,000万円全額が課税対象です。

注意:保険金の受取人を相続人以外に指定している場合、非課税枠なし+2割加算のダブルで負担が重くなります。受取人の設定は非課税枠まで考慮して決めましょう。

参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

死亡保険金の非課税枠と受取人の設定は、下記の記事で解説しています。

小規模宅地等の特例・債務控除など使える制度の一覧

土地の評価額を最大80%減額できる小規模宅地等の特例は、取得者が「親族」であることが要件です。友人など親族以外への遺贈では使えません。

一方、親族であれば遺贈による取得でも適用の可能性があります。同居していた子の配偶者は親族にあたるため、要件を満たせば検討できます。

主な優遇制度の適用可否を表で整理します。

制度 法定相続人 相続人以外の受遺者
基礎控除(人数カウント) 含まれる 含まれない
生命保険・死亡退職金の非課税枠 使える 使えない
小規模宅地等の特例 要件を満たせば可 親族なら可・親族以外は不可
配偶者の税額軽減 配偶者のみ可 不可(内縁は対象外)
債務控除・葬式費用 可 包括遺贈なら可・特定遺贈は不可
未成年者控除・障害者控除・相次相続控除 要件を満たせば可 不可
2割加算 配偶者・一親等の血族はなし(兄弟姉妹・孫養子は加算) あり(1.2倍)

表の見方:右列に「不可」が並ぶとおり、相続人以外の受遺者は優遇制度のほぼすべてが使えません。同じ額でも実質負担は相続人より重くなります。

重要ポイント:法律上の配偶者には1億6,000万円まで無税の税額軽減がありますが、内縁のパートナーは対象外です。事実婚の相手に財産を残す場合、税負担の重さを織り込んだ設計が必要です。

特定遺贈で財産を受け取った相続人以外の人は、亡くなった人の借金や葬式費用を差し引けません。借金がある遺産でも、受遺者は指定された財産の全額に課税される点に注意してください(相続税法13条)。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

小規模宅地等の特例の要件と取得者別の扱いは、下記の記事で解説しています。

相続人への遺贈は「相続」とほぼ同じ扱い

ここまでの制限は「相続人以外」の受遺者の話です。法定相続人が遺贈で財産を受け取る場合は、扱いが大きく変わります。

相続人への遺贈では、2割加算はなく(配偶者・子・父母の場合)、生命保険の非課税枠も使えます。不動産の登録免許税も相続と同じ0.4%で、不動産取得税もかかりません。

つまり「遺贈だから税金が重い」のではなく、「相続人以外が受け取るから重い」のです。誰が受け取るかが税負担の分かれ目になります。

重要ポイント:兄弟姉妹は法定相続人になる場合でも2割加算の対象です。「相続人だから加算なし」ではなく「配偶者・一親等の血族か」で判定される点に注意しましょう。

法人・団体への遺贈は相続税がかからない

ここまでは個人が受け取る場合の話です。法人が遺贈を受けた場合、相続税はかかりません。相続税は個人に課される税金だからです。

ただし課税がなくなるわけではなく、受け取った法人には原則として法人税がかかります。国や地方公共団体、一定の公益法人などへの遺贈は非課税の扱いがあります。

注意したいのは、不動産や株式など値上がりした財産を法人に遺贈すると「みなし譲渡所得税」が発生することです。

亡くなった人が時価で売却したものとみなされ、含み益に所得税がかかります。この税金は受遺者の法人ではなく、相続人が準確定申告で納めることになります。

「団体に寄付したのに、家族に税負担が残る」という想定外を避けるため、法人への遺贈は現金・預貯金で行うのが無難です。

注意:遺贈寄付を検討するなら、値上がりした不動産・株式をそのまま遺贈するのは要注意です。現金化してから渡す設計も含め、事前に税理士へ相談しましょう。

公益法人などへの寄付が非課税になる要件は、下記の記事で解説しています。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
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不動産を遺贈されたら|相続税以外にかかる税金と費用

不動産の遺贈では、相続税に加えて登録免許税と不動産取得税がかかります。相続人以外の受遺者は、この2つの税金だけで評価額の数%を負担することになります。

ここでは不動産特有の税金と、費用の総額シミュレーションを解説します。

登録免許税|相続人以外は税率5倍の2%

遺贈で不動産を受け取ったら、名義変更(所有権移転登記)が必要です。このとき登録免許税がかかります。

税率は「固定資産税評価額×0.4%」が相続の場合の原則ですが、相続人以外への遺贈では5倍の2%になります。

評価額2,000万円の不動産なら、相続人は8万円、相続人以外の受遺者は40万円。同じ不動産でも32万円の差が生まれます。

登録免許税は登記を申請するときに納めます。相続税とは別に、登記のタイミングで現金が必要になる点も資金計画に入れておきましょう。

重要ポイント:法定相続人が遺贈で受け取る場合は、相続人であることを証明する書類を添付すれば0.4%が適用されます。証明書類の準備を忘れると高い税率で計算されるおそれがあります。

参照元:国税庁 No.7191 登録免許税の税額表

不動産取得税|相続人以外の特定遺贈のみ課税

不動産取得税は、不動産を取得した人に一度だけかかる都道府県税です。相続で取得した場合は非課税ですが、遺贈では課税されるケースがあります。

課税されるのは、相続人以外の人が「特定遺贈」で不動産を取得した場合だけです。包括遺贈や、相続人への遺贈なら非課税です。

税率は原則4%ですが、土地と住宅は3%に軽減されています(2027年3月31日までの取得)。宅地は評価額を2分の1にして計算する特例もあります。

注意:同じ財産でも「特定遺贈か包括遺贈か」で不動産取得税の有無が変わります。遺言書を書く側は、割合指定(包括遺贈)も含めて方式を検討する価値があります。

費用総額シミュレーション|相続人と受遺者の差

評価額2,000万円の宅地(住宅用地)を受け取った場合の、相続税以外の負担を比較します。

費用項目 法定相続人 相続人以外(特定遺贈)
登録免許税 8万円(0.4%) 40万円(2%)
不動産取得税 0円(非課税) 30万円(1/2×3%)
合計 8万円 70万円

表の見方:同じ土地でも、受け取る人の立場だけで62万円の負担差が生まれます。これに相続税の2割加算も上乗せされます。

計算ロジック:【前提】固定資産税評価額2,000万円の宅地。登録免許税=2,000万円×0.4%または2%。不動産取得税=2,000万円×1/2×3%=30万円(1/2特例・3%税率は2027年3月31日までの取得に適用)。

税金以外の実費と維持費も見込んでおく

不動産の遺贈では、税金のほかにも費用がかかります。受け取る前に総額を見込んでおきましょう。

登記手続きを司法書士に依頼する場合、報酬の目安は数万円〜十数万円です。遺贈登記は相続登記より書類が複雑になりやすく、自力での手続きは難易度が高めです。

受け取った後は、毎年の固定資産税・都市計画税が受遺者の負担になります。マンションなら管理費・修繕積立金も続きます。

「もらった年の税金」だけでなく「持ち続ける費用」まで含めて受けるかどうかを判断するのが賢明です。

重要ポイント:使う予定のない遠方の不動産は、受けてから持て余すケースが目立ちます。売却の見込みも含めて、受ける前に出口を考えておきましょう。

相続登記の義務化にも注意|3年以内

2024年4月から、相続や遺贈(相続人への遺贈)で不動産を取得した相続人には、取得を知った日から3年以内の相続登記が義務付けられています。

正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料の対象になります。「税金の申告は済んだが登記は後回し」は通用しなくなりました。

2024年4月より前に発生した相続・遺贈も義務化の対象で、こちらは2027年3月末までの登記が求められています。昔の遺贈で名義変更していない不動産がある人は、早めの対応が必要です。

相続人以外の受遺者はこの義務の直接の対象ではありませんが、登記をしないと不動産を売ることも担保にすることもできません。実務上は速やかな登記が必要です。

重要ポイント:遺言執行者がいれば、受遺者と遺言執行者だけで登記申請できます。遺言執行者がいない場合は相続人全員の協力が必要になり、手続きが難航しがちです。

遺贈を受けたらやること|期限別タイムライン

遺贈を受けた人には、放棄の判断から申告・納税まで複数の期限が待っています。特に包括遺贈の3ヶ月と申告の10ヶ月は絶対に外せない期限です。

ここでは受遺者の行動を時系列で整理します。

受遺者の行動タイムライン

すぐに
遺言書の内容を確認する。自分への遺贈が「包括遺贈か特定遺贈か」、遺言執行者がいるかを確認します。自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要な場合があります

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〜3ヶ月
受けるか放棄するかを決める。包括遺贈の放棄は知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述が必要。遺産に借金がないかの調査もこの期間に行います

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〜7ヶ月
税額の見通しを立て、税理士への依頼を決める。相続税は遺産全体から計算するため、相続人側と情報を共有しながら進めます。不動産の名義変更もこの時期までに着手します

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〜10ヶ月
相続税の申告・納税。期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内で、納付は原則現金一括です。相続人と共同で申告書を提出するのが一般的です

重要ポイント:受遺者は相続人と違い、遺産の全体像を知らされていないことが多い立場です。遺言執行者または相続人への早期の連絡が、すべての手続きの出発点になります。

参照元:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

遺贈の放棄の方法|包括と特定で異なる

「税負担が重い」「借金が含まれる」「関わりたくない」という場合、遺贈は放棄できます。方法は遺贈の種類で異なります。

放棄すると、その財産は原則として相続人のものになります。放棄した人に相続税がかかることはありません。

包括遺贈の放棄は、自分のために遺贈があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所で申述します。相続放棄と同じ手続きです。

特定遺贈の放棄は、遺言執行者や相続人に「放棄します」と意思表示するだけで足ります。期限もありません。

ただし、遺贈の一部だけを受けて一部だけを放棄できるかは、遺贈の種類や遺言の内容によって扱いが変わります。「土地はいらないが預金は欲しい」といった希望がある場合は、行動する前に専門家へ確認しましょう。

ただし後のトラブルを防ぐため、特定遺贈の放棄も内容証明郵便など記録が残る形で行いましょう。

注意:包括遺贈は3ヶ月以内に何もしないと承認したとみなされ、借金も引き継ぎます。迷っている間に期限が来そうなら、家庭裁判所への期間伸長の申立ても検討してください。

申告は相続人と共同が基本|受遺者の実務

相続税の申告書は、相続人と受遺者が共同で1通を提出するのが原則的な運用です。遺産全体の情報をもとに計算するため、バラバラに作るより合理的だからです。

実務では、相続人側が依頼した税理士に受遺者も加わり、まとめて申告するケースが多くなります。受遺者は早めに相続人側と連絡を取り、申告の進め方を確認しましょう。

相続人と関係が良くない・連絡が取れないなどの事情があれば、受遺者が単独で申告することも可能です。その場合も遺産全体の情報が必要になるため、税理士のサポートがほぼ必須になります。

提出先は、受遺者の住所地ではなく「亡くなった人の住所地」を管轄する税務署です。間違えやすいポイントなので注意しましょう。

重要ポイント:共同申告なら税理士報酬の分担も相談できます。単独申告になりそうな場合は、情報収集に時間がかかるため、通常より早めに動き出す必要があります。

生前贈与を受けていた場合は加算に注意

遺贈で財産を受け取った人が、亡くなった人から生前に贈与を受けていた場合、一定期間内の贈与は相続税の計算に加算されます。

2024年の改正で、加算対象の期間は相続開始前3年から7年へ段階的に延長されています。「生前にもらった分は関係ない」と思っていると、申告漏れになるおそれがあります。

延長された4年分(相続開始前4年〜7年)の贈与は、合計100万円までは加算されません。

この加算が適用されるのは「相続または遺贈で財産を取得した人」です。つまり遺贈を受けなければ加算されなかった贈与が、遺贈を受けたことで課税対象に戻るケースもあります。

重要ポイント:過去の贈与の記録(贈与契約書・通帳の履歴)は申告前に必ず確認しましょう。加算期間の延長は経過措置があるため、対象期間の判定は税理士への確認が確実です。

参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

生前贈与の7年加算ルールは、下記の記事で解説しています。

遺贈する側の注意点|遺言書の設計で受遺者の負担が変わる

遺贈は「渡すと決めれば終わり」ではありません。遺言書の設計しだいで、受遺者の税負担とトラブルのリスクは大きく変わります。

ここでは遺言書を作る側が押さえるべき3つの配慮を解説します。

遺留分に配慮する|侵害すると請求される

配偶者・子・父母などの相続人には、遺言でも奪えない最低限の取り分「遺留分」があります。

遺贈で財産の大半を第三者に渡すと、相続人から受遺者に対して遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。請求されると、受遺者は侵害分を金銭で支払わなければなりません。

「財産をあげたはずが、もらった人が現金の支払いに追われる」という本末転倒な事態になりかねません。遺留分の割合を確認し、侵害しない範囲で設計するのが基本です。

なお、兄弟姉妹には遺留分がありません。相続人が兄弟姉妹だけの場合は、遺言書で全財産を第三者に遺贈しても遺留分の請求は起きない、という違いも覚えておくと設計に役立ちます。

重要ポイント:遺留分は相続財産の2分の1(父母のみが相続人の場合は3分の1)を、各相続人の法定相続分で分けた割合です。遺贈額を決める前に必ず計算しておきましょう。

遺留分の請求を受けて金銭を支払った受遺者は、その分だけ相続税が減ります。支払う額が確定したことを知った日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求をすれば、納めすぎた相続税が戻ります(相続税法32条)。

遺留分を請求された場合、受遺者の相続税はどう変わるのでしょうか。計算方法と請求された時期ごとの手続きは、下記の記事で解説しています。

納税資金に配慮する|不動産だけの遺贈は危険

受遺者の相続税は2割加算され、不動産なら登録免許税・不動産取得税も自己負担です。

不動産だけを遺贈すると、受遺者は納税資金を自分の蓄えから出すことになります。払えなければ、せっかくの遺贈を放棄するか、受け取った不動産を売るしかありません。

不動産を遺贈するなら、納税資金として現金も併せて遺贈するのが実務的な配慮です。

目安として、遺贈財産の1〜2割程度の現金を上乗せしておくと、受遺者は納税と諸費用に対応しやすくなります。

生命保険の受取人を受遺者に指定して納税資金を用意する方法もありますが、相続人以外は非課税枠が使えない点は織り込んでおきましょう。

重要ポイント:遺贈を計画する段階で、受遺者側の税額を試算しておくことが最大の思いやりです。税理士に「受遺者がいくら払うことになるか」を確認してから遺言書を作りましょう。

相続税が払えないときの対処法は、下記の記事で解説しています。

相続人以外に渡すなら遺贈と生前贈与のどちらが安いか

子の配偶者や知人など相続人以外に財産を渡す方法は、遺贈だけではありません。遺贈を受けない人には生前贈与の7年加算がかからないため、早めの生前贈与のほうが安くなることがあります。

渡し方(子の配偶者に約1,000万円) 子の配偶者が払う税 子2人の相続税 家族全体の税
遺贈で1,000万円 92.4万円(相続税・2割加算) 693万円 785.4万円
年100万円ずつ10年間贈与(遺贈はしない) 0円 620万円 620万円
亡くなる前に一括で1,000万円を贈与 231万円(贈与税) 620万円 851万円

表の見方:黄色の分割贈与がもっとも安く、遺贈より165万4,000円少なくなります。一括の贈与は贈与税が重く、遺贈より65万6,000円多くなります。

重要ポイント:分割贈与で7年加算を避けられるのは、受け取った人が相続や遺贈で財産を取得しない場合だけです。生命保険金の受取人になっていると遺贈で取得したものとみなされ、7年以内の贈与が加算されます。

計算ロジック:【前提】遺産1億円、法定相続人は子2人。遺贈は総額770万円をあん分し子の配偶者分に1.2を掛けます。贈与すると遺産は9,000万円で総額620万円です。一括贈与は一般税率で(1,000万円−110万円)×40%−125万円=231万円です。

参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

遺言執行者を指定する|手続きが格段にスムーズに

遺言の内容を実現する担当者が「遺言執行者」です。遺言書の中で指定できます。

遺言執行者がいない場合、不動産の遺贈登記には相続人全員の協力が必要です。相続人が非協力的だと、登記が進まず受遺者が困ります。

遺言執行者がいれば、受遺者と遺言執行者だけで登記を申請できます。相続人以外への遺贈では、指定はほぼ必須と考えましょう。

また、形式不備で無効になるリスクを避けるため、遺言書は公正証書遺言で作成するのが確実です。

重要ポイント:遺言執行者には信頼できる人のほか、弁護士・司法書士などの専門家も指定できます。相続人と受遺者の利害が対立しそうなケースでは、第三者の専門家が適任です。

遺言書は定期的に見直す|財産と家族の変化に合わせる

遺言書は一度作れば終わりではありません。作成後に状況が変わると、遺贈が想定どおりに機能しなくなります。

たとえば特定遺贈で指定した不動産を生前に売却すると、その遺贈は効力を失います。受遺者に「代わりに現金を」という意思があっても、書いていなければ実現しません。

受遺者が先に亡くなった場合も、その遺贈は原則無効になります。「受遺者が先に死亡した場合は△△に遺贈する」という予備的な条項を入れておくと安心です。

税制も毎年のように変わります。数年に一度、財産の内容・家族の状況・法改正の3点をチェックし、必要なら書き直しましょう。

重要ポイント:遺言書は日付の新しいものが優先されます。書き直す場合は古い遺言書との矛盾が残らないよう、全体を作り直す形が確実です。

遺贈のトラブル事例と対策|失敗から学ぶ

遺贈は制度を知らないまま実行すると、受遺者・相続人の双方にトラブルを残します。実際に起こりがちな失敗は、事前の設計でほぼ防げます。

ここでは典型的な3つの事例と対策を紹介します。

事例から学ぶ3つの失敗パターン

【事例1:納税資金が足りず遺贈を放棄】

内縁の妻が自宅(評価額3,000万円)の特定遺贈を受けたが、相続税の2割加算・登録免許税2%・不動産取得税で200万円超の現金が必要になった。蓄えがなく、住み続けたかった自宅の遺贈を放棄せざるを得なかった。

対策:遺贈する側が納税資金分の現金を併せて遺贈する。受遺者側は早期に税額を試算し、延納などの選択肢も税理士に相談する。

【事例2:遺留分侵害額請求で予定外の支払い】

全財産を支援団体と友人に遺贈する遺言を残したところ、子どもたちが遺留分侵害額請求を実施。受遺者は受け取った財産の半分近くを金銭で支払うことになり、関係もこじれた。

対策:遺言作成時に遺留分を計算し、侵害しない配分にする。あえて侵害する場合は、付言事項で理由を説明し、請求に備えた現金を受遺者に残す。

【事例3:申告漏れで加算税・延滞税】

知人から預金の遺贈を受けたが、「もらったのは少額だから」と申告しなかった。遺産全体では基礎控除を超えており、税務署の指摘で本税に加えて無申告加算税・延滞税を払うことになった。

対策:自分の受取額ではなく「遺産全体」が基礎控除を超えるかで申告の要否が決まる。受遺者は相続人・遺言執行者に遺産総額を確認し、10ヶ月の期限内に申告する。

3つに共通する原因は「受遺者側の負担を試算していなかったこと」です。遺贈は渡す側ともらう側の共同作業と考えましょう。

トラブル回避のチェックリスト

遺贈に関わることになったら、次の項目を確認しましょう。

  • □ 遺贈の種類(包括か特定か)を遺言書で確認したか
  • □ 遺産全体が基礎控除を超えるか確認したか
  • □ 自分が2割加算の対象か確認したか
  • □ 不動産の場合、登録免許税・不動産取得税を試算したか
  • □ 納税資金(原則現金一括)を用意できるか確認したか
  • □ 包括遺贈の場合、借金の有無を3ヶ月以内に調査したか
  • □ 遺留分を侵害する遺贈になっていないか確認したか
  • □ 申告期限(10ヶ月)から逆算したスケジュールを立てたか

重要ポイント:1つでもチェックできない項目があるなら、自己判断で進めず税理士に相談するのが安全です。遺贈は通常の相続より判断ポイントが多い手続きです。

迷ったら早めに専門家へ|受遺者は情報弱者になりやすい

受遺者は相続人と違い、遺産の全体像や他の相続人の動きを知らされにくい立場です。それでも申告義務と期限は相続人と同じように課されます。

「相続人が申告してくれるだろう」と待っているだけでは、期限に間に合わないリスクがあります。遺贈を受けたと分かった時点で、自分から動くことが自衛になります。

申告漏れや期限超過のペナルティ(無申告加算税・延滞税)は、受遺者にもそのまま適用されます。「知らなかった」では免除されません。

税額の試算・放棄の判断・申告の段取りは、相続税の対応実績がある税理士に早めに相談しましょう。初回無料相談を使えば、方向性の確認だけなら費用はかかりません。

遺留分の請求を受けた・相続人と対立しているなど法的な争いがある場合は、税理士に加えて弁護士への相談も必要になります。窓口の使い分けも含めて、最初の相談で確認すると効率的です。

重要ポイント:特に包括遺贈の3ヶ月期限は、迷っているうちに過ぎてしまいがちです。「受けるべきか放棄すべきか」の判断こそ、最初に専門家の意見を聞くべきテーマです。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
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遺贈の税金は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

遺贈は「誰が受け取るか」で税額と使える特例が変わります。2割加算・非課税枠の不適用・登録免許税5倍が同時に効くため、相続人が受け取る場合とは負担が別物です。複数の税理士に一括で相談し、比較して選ぶのがおすすめです。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

遺贈は通常の相続と扱いが異なる論点が多く、経験がないと判断を誤ります。包括か特定かの読み取りひとつで、借金を引き継ぐかどうかまで変わります。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

  • 遺言書の文言から包括遺贈か特定遺贈かを読み分けられる
  • 2割加算の対象になるかを続柄から正確に判定できる
  • 生命保険金・死亡退職金の非課税枠が使えないケースを織り込んで試算できる
  • 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の適用可否を判定できる
  • 登録免許税2%・不動産取得税を含めた受遺者の手取りまで計算できる

受遺者は相続人と違い、財産の全体像を知らないまま申告に加わることになります。自分がいくら払うのかを把握できる相談先を、早い段階で確保しておくことが大切です。

税理士を比較するときの3つの判定ポイント

相続税に対応している税理士でも、遺贈が絡む申告の経験には差があります。見積りや初回相談で、次の3点を比べてみてください。

「申告実績数・受遺者の手取りまで試算するか・遺言執行者や他士業と連携できるか」の3点で見分けられます。

判定ポイント1:相続税申告の実績数
年間の相続税申告の件数を確認します。「年間5件」と「年間100件以上」では、2割加算や特例の判定の精度に差が出ます。→ 実績数が多い税理士のほうが、判断を誤らないと判定できます。

判定ポイント2:受遺者の手取りまで試算するか
相続税だけでなく、登録免許税・不動産取得税・登記費用を含めた手取りを示してくれるかを見ます。→ 手取りまで試算する税理士のほうが、放棄すべきかの判断材料を出せると判定できます。

判定ポイント3:遺言執行者や他士業と連携できるか
遺贈の実務は登記・執行者との調整が伴います。司法書士や弁護士と提携しているかを確認します。→ 連携できる税理士のほうが、手続き全体を止めずに進められると判定できます。

相談しないまま進めるリスク

受遺者は相続人ほど情報が入らず、期限だけが進みます。放棄するなら3ヶ月、申告と納税は10ヶ月が期限です。

判断を誤ると、財産をもらったのに手元が減ることもあります。具体的には次のようなリスクがあります。

相談せずに進めた場合のリスク

  • 包括遺贈と気づかず、財産と一緒に借金まで引き継いでしまう
  • 包括遺贈の放棄の期限(3ヶ月)を過ぎ、放棄できなくなる
  • 2割加算を織り込まずに資金計画を立て、納税資金が足りなくなる
  • 不動産だけを遺贈され、登録免許税2%と不動産取得税で手元が持ち出しになる
  • 相続人と連絡が取れないまま申告期限を過ぎ、加算税・延滞税を負う

これらの多くは、遺言書を見た段階の相談で防げます。相談は無料のことが多く、早いほど放棄という選択肢も残ります。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

実際に一括相談・見積りを利用する流れは、次の4ステップです。フォームの記入自体は5分ほどで終わります。

放棄を検討するなら3ヶ月が期限です。遺言書の内容を知った時点で動いてください。

STEP1
状況を整理する。遺言書の写し・遺贈される財産の内容と概算額・被相続人との続柄・相続人の人数・遺言執行者の有無をまとめる

⬇

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する。遺贈を受けた場合の相続税・相続税申告などの希望内容を明記し、相続税の対応実績がある税理士3〜5の事務所へ同時に打診する。不動産を遺贈される場合は所在地と広さも伝える(記入は5分程度)

⬇

STEP3
各税理士から「提案内容」「試算した相続税額」「報酬額」が記載された見積りが届く。2割加算の有無と受遺者の手取りを示してもらい、気になる事務所と初回相談を行う

⬇

STEP4
「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で最適な事務所を選び、正式に依頼する。相続開始から7ヶ月以内に決めると余裕を持って進められる

重要ポイント:相談時は「遺言書の写し」を必ず用意してください。包括遺贈か特定遺贈かはこれで判断するため、見積りの精度が大きく上がります。

遺贈の税金に関するよくある質問(FAQ)

Q1:遺贈でもらった財産に贈与税はかかりますか?

かかりません。遺贈で受け取った財産には、贈与税ではなく相続税がかかります。

財産が移るのが遺言者の死亡時点であるため、税法上は相続と同じ扱いになるからです。生前にもらう贈与とは税金の種類が異なります。

Q2:遺贈の税金はいくらになりますか?

遺産総額と受け取る額で決まります。子2人の家庭で遺産1億円のうち1,000万円を相続人以外の人が受け取ると、相続税は2割加算後で約92万円です。

遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら0円です。不動産を受け取った場合は、別に登録免許税2%と、特定遺贈なら不動産取得税がかかります。

Q3:相続税の2割加算の対象になるのはどんな人ですか?

被相続人の配偶者・子・父母(および代襲相続人になった孫)以外の人です。兄弟姉妹・甥姪・孫・子の配偶者・内縁のパートナー・友人などが該当します。

対象者は、通常どおり計算した相続税額が1.2倍になります。節税目的の孫養子も加算対象です。

Q4:受遺者がいると基礎控除は増えますか?

増えません。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の人数に、相続人以外の受遺者は含めないためです。

たとえば法定相続人2人+受遺者1人でも、基礎控除は2人分の4,200万円のままです。

Q5:遺贈は断る(放棄する)ことができますか?

できます。特定遺贈は、相続人や遺言執行者への意思表示だけで放棄でき、期限もありません。

包括遺贈の放棄は、遺贈を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。期限を過ぎると借金も含めて承認したとみなされるため、早めの判断が必要です。

Q6:遺贈と死因贈与はどちらが税金面で有利ですか?

不動産を渡す場合は、一般に遺贈のほうが有利です。かかる相続税は同じですが、死因贈与は登録免許税が必ず2%で、不動産取得税もかかります。

遺贈なら、相続人への遺贈で登録免許税0.4%、包括遺贈なら不動産取得税が非課税になります。ただし確実性など税金以外の違いもあるため、目的に応じた選択が必要です。

まとめ|遺贈の税金は「誰が受け取るか」で大きく変わる

遺贈にかかる税金について、重要なポイントを整理します。

  • 遺贈でもらった財産には贈与税ではなく相続税がかかり、不動産なら登録免許税・不動産取得税もかかる
  • 遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら課税なし。人数に受遺者は含めない
  • 相続人以外の受遺者は相続税が2割加算で1.2倍になる
  • 子2人・遺産1億円で1,000万円を受け取ると相続税は約92万円、相続人がいない遺産1億円を1人に遺贈すると1,680万円
  • 生命保険の非課税枠・配偶者の税額軽減・未成年者控除・相次相続控除は相続人以外は使えない。特定遺贈の受遺者は借金・葬式費用も差し引けない
  • 不動産は登録免許税2%(相続人の5倍)、特定遺贈なら不動産取得税も課税
  • 包括遺贈の放棄は知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ。相続税の申告・納税は10ヶ月以内
  • 相続人以外に渡すなら、遺贈を受けない人への分割贈与のほうが家族全体の税が安くなることがある

今すぐ取るべき行動

  • 遺言書で遺贈の種類(包括か特定か)と遺言執行者の有無を確認する
  • 遺産全体が基礎控除を超えるか、相続人・遺言執行者に確認する
  • 早見表で自分の相続税と登記費用の概算をつかむ(2割加算を忘れずに)
  • 一括相談・見積りで複数の税理士に相談し、提案と費用を比較する

※本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づいて作成しています。相続税法や関連制度の改正により、内容が変わる可能性があります。最新の制度については国税庁の公式サイトや税理士への相談で必ずご確認ください。

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