相続税申告の見積もりを比較する方法|相見積もりの取り方と注意点

相続税申告_複数見積り_比較方法

相続税申告を税理士に頼むときは、2〜3の事務所から見積もりを取って比べるのが基本です。税理士の報酬は事務所が自由に決めており、同じ遺産でも金額が割れるためです。

公開されている料金表を並べると、同じ遺産額でも報酬に1.6〜2.4倍の開きがあります。1つの事務所だけで決めると、その金額が高いのか安いのかを判断できません。

ただ、見積もりは集めれば比べられるわけではありません。伝えた情報が事務所ごとに違えば、届いた金額も前提が違い、横に並べても意味がなくなります。

とくに多いのが「遺産総額」の伝え方のずれです。借入金や特例を引いた後の金額で伝えると見積もりが安く出て、契約後に増額されることがあります。

比べるべきなのは報酬だけではありません。特例を検討しない事務所に頼めば、相続税が数百万円多くなることがあります。

時期も大切で、申告期限まで3か月を切ると報酬に20〜50%を上乗せする料金表もあります。

この記事では、相見積もりは失礼か、いくつの事務所に頼むか、依頼に必要な情報と依頼文の例、見積もりの取り方4つ、取る時期の日程表、届いた見積もりの比べ方を解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 相続税申告の報酬は事務所が自由に決めており、同じ遺産額でも1.6〜2.4倍違う。2〜3の事務所から見積もりを取る
  • すべての事務所に同じ7項目を伝え、遺産総額は借入金や特例を引く前の金額でそろえる
  • 3〜5か月目に集めて7か月目までに決める。比べるのは報酬と相続税の合計
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相続税申告の見積もりを比較すべき理由|同じ遺産でも報酬は割れる

相続税申告の税理士報酬には定価がありません。同じ遺産額でも事務所によって報酬が1.6〜2.4倍違うため、1つの事務所だけでは金額の妥当性を判断できません。ここでは報酬が割れる理由と、報酬より大きい相続税の差を確認します。

税理士の報酬は事務所が自由に決めている

かつて税理士の報酬には、税理士会が定める上限の規定がありました。平成13年の税理士法改正でこの規定がなくなり、今は各事務所が自分の基準で報酬を決めています。

多くの事務所は、遺産総額に応じた基本報酬に、土地の数や相続人の数による加算を足す形を取っています。ただし区切りの金額も加算の基準も、事務所ごとにばらばらです。

そのため「相場は遺産総額の0.5〜1%」という目安はあっても、自分の相続でいくらになるかは、見積もりを取らないと分かりません。

【報酬の決め方の主な型】

  • 遺産総額の区切りごとに基本報酬を決め、土地・相続人・株式で加算する
  • 遺産総額に一定の割合を掛けて基本報酬を出す
  • 条件を満たす相続だけ定額にし、外れると通常の料金にする

基本報酬に何が含まれるかも事務所ごとに違います。財産の評価と申告書の作成はどこでも含まれますが、分け方の提案や書面添付、書類の取り寄せは、含む事務所と別料金の事務所に分かれます。

同じ遺産額でも報酬は1.6〜2.4倍違う

料金表を公開している4つの事務所で、同じ遺産額の基本報酬を比べると、最も高い事務所と安い事務所で1.6〜2.4倍の開きがありました。

遺産総額 A事務所 B事務所 C事務所 D事務所 開き
4,500万円 18.37万円 25.3万円 33万円 44万円 2.4倍
7,500万円 31.57万円 41.8万円 60.5万円 55万円 1.9倍
9,500万円 38.17万円 52.8万円 60.5万円 66万円 1.7倍
1億4,000万円 54.67万円 69.3万円 77万円 88万円 1.6倍
1億9,000万円 66.77万円 85.8万円 93.5万円 110万円 1.6倍
2億8,000万円 77.77万円 121万円 143万円 132万円 1.8倍

表の見方:金額は各事務所の公開料金表の基本報酬(税込)です。土地や相続人の数による加算は含めていません。

重要ポイント:基本報酬が安くても、加算の基準が厳しい事務所では総額が逆転することがあります。比べるのは基本報酬ではなく、加算まで含めた税込の総額です。

計算ロジック:2026年9月30日時点で各事務所が公開している料金表から、表の遺産額が入る区分の基本報酬を拾いました。開きは最も高い報酬÷最も安い報酬です。

定額制をうたう事務所もありますが、多くは「預貯金中心」「土地1か所まで」などの条件付きです。条件から外れると通常の料金になるため、自分の相続が条件に入るかを見積もりで確かめてください。

税理士費用の相場と、遺産額別の報酬の早見表は、下記の記事で解説しています。

報酬より大きいのは相続税の差|合計で比べる

見積もりを比べる目的は、報酬を安くすることだけではありません。報酬の差は数十万円でも、特例を使うかどうかで相続税は数百万円変わります。

遺産1億円で同居の長男が自宅の土地5,000万円を相続する場合、自宅の土地の特例を使うかどうかで相続税は590万円変わります。報酬の差より一桁大きい金額です。

見積もりを取るときは、報酬と一緒に「相続税がいくらになりそうか」「どの特例を使えそうか」も聞いてください。報酬と相続税を足した合計で比べると、判断を誤りにくくなります。

提案の違い 前提 相続税の差
自宅の土地の特例を使うか 遺産1億円・子2人・自宅の土地5,000万円 590万円
土地の形による減額を使うか 遺産1億2,000万円・子2人・土地の評価が20%下がる 240万円
次の相続まで見て分けるか 遺産1億円・母と子2人 404.6万円

表の見方:どれも、事務所の提案の違いだけで動く相続税の額です。報酬の差が数十万円でも、提案の差はその何倍にもなります。

計算ロジック:相続人が法定相続分どおりに取得した場合の相続税の合計の差です。3行目は、母が全部を相続して次の相続で子2人が納める場合と、母の取得を次の相続の基礎控除までにした場合の、2回の相続税の合計の差です。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

相見積もりは失礼?税理士の受け止め方と断られるケース

「複数の税理士に見積もりを頼むのは失礼ではないか」と気にする人は少なくありません。相見積もりは失礼ではなく、相続税申告では当たり前の進め方です。ここでは税理士側の受け止め方と、注意したい場面を整理します。

相見積もりは失礼ではない|相続の依頼は1回きり

報酬が自由に決められている以上、依頼する側が比べるのは自然なことです。相続税を扱う事務所の多くは、他の事務所と比べられる前提で見積もりを出しています。

相続税申告は、会社の顧問契約と違って1回きりの依頼です。長く付き合う関係を気にして比べるのを遠慮する必要はありません。むしろ比べずに決めて後悔するほうが、取り返しがつきません。

令和6年度の相続税の申告の86.5%は税理士が関わっており、多くの相続人が事務所を選ぶ立場にあります。比べて選ぶのは特別なことではありません。

参照元:財務省 令和6事務年度 国税庁実績評価書

比べることを歓迎し、「他の事務所の話も聞いてください」と言う事務所もあります。逆に、その場で契約を急がせる事務所は、比べられると困る事情があるのかもしれません。

比べた結果、最初に会った事務所に決めるのも自然なことです。比べたうえで選んだという納得があれば、依頼したあとも疑問を率直に聞きやすくなります。

料金を比べるためだけの相談は断る事務所もある

一方で、「料金の比較だけが目的の相談は受けない」と明記している事務所もあります。料金だけで比べられると、手間をかける方針の事務所は勝負できないためです。

こうした事務所も、人柄や方針を知ってから決めたいという相談なら受けています。相見積もりの目的は値引きではなく、自分の相続に合う事務所を探すことだと伝えれば、話は進めやすくなります。

方針は、事務所のサイトの「よくある質問」に書かれていることがあります。最初の連絡で「複数の事務所に相談していますが、面談をお願いできますか」と聞けば、すぐに確かめられます。

【相見積もりで嫌がられる進め方】

  • 他の事務所の見積書を見せて、同じ額まで下げるよう迫る
  • 面談で提案だけ聞き、その内容を別の事務所に持ち込む
  • 5つ以上の事務所に声をかけ、最も安い事務所に決めると伝える

相見積もりだと伝えてよい|伝え方の文例

見積もりを頼むときに、他の事務所にも相談していることを伏せる必要はありません。正直に伝えるほうが、各事務所も前提をそろえた見積もりを出しやすくなります。

伝え方の文例

「相続税の申告をお願いする事務所を決めるため、2〜3の事務所にお話を伺っています。報酬だけでなく、進め方や提案の内容も含めて検討したいと考えています。」

値引きの交渉をしたい場合も、他の事務所の金額を材料にするのは避けてください。依頼したい気持ちと、ためらっている理由を正直に伝えるほうが受け入れられやすくなります。

【受け入れられやすい相談の例】

  • 「戸籍と残高証明書は自分で集めるので、その分を調整できますか」
  • 「ぜひお願いしたいのですが、予算が少し足りません。作業の範囲で調整できる部分はありますか」

いくつの事務所に頼むか|遺産の規模と財産の種類で決める

見積もりは多く集めるほど良いわけではありません。目安は2〜3の事務所で、遺産の規模と財産の種類で増減させます。ここでは、状況別の目安の事務所の数と、頼みすぎたときに起きることを整理します。

状況別の目安の事務所の数|報酬が相続税の何割にあたるか

事務所の数を決める手がかりは、報酬が相続税に対してどれくらいの重さを持つかです。遺産5,000万円では、報酬が相続税の34%〜69%にあたります。遺産が小さいほど、報酬の差が負担に効きます。

遺産総額(子2人) 相続税 報酬の目安(税込) 報酬÷相続税
5,000万円 80万円 27.5万円〜55万円 34%〜69%
1億円 770万円 55万円〜110万円 7%〜14%
2億円 3,340万円 110万円〜220万円 3%〜7%
3億円 6,920万円 165万円〜330万円 2%〜5%

表の見方:遺産が大きくなるほど、報酬が相続税に占める割合は小さくなります。遺産3億円では報酬の差より、相続税の差のほうが大きな意味を持ちます。

計算ロジック:【前提】相続人は子2人で法定相続分どおりに取得。報酬は遺産総額の0.5〜1%に消費税10%を足した額です。相続税は特例を使わない場合の合計額です。

遺産5,000万円なら相続税は80万円で、報酬は27.5万円〜55万円です。報酬の差がそのまま家計の負担の差になるため、2つの事務所を比べるだけでも意味があります。

状況 目安の事務所の数 理由
遺産が基礎控除以下か、判定に迷う 判定だけ1事務所 申告が要るかを先に確かめる
5,000万円前後で預貯金が中心 2事務所 報酬の差が相続税に比べて大きい
自宅の土地がある・1億円前後 3事務所 特例と土地の評価で税額が大きく動く
土地が複数・非上場株式がある 3事務所 評価の方針で税額と報酬の両方が割れる
申告期限まで3か月未満 1〜2事務所 比べる時間より引き受け先の確保を優先する

重要ポイント:黄色の行のように自宅の土地がある相続は、提案の中身で税額が数百万円変わります。報酬が近くても、提案を比べるために3つの事務所に当たる価値があります。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

4つ以上の事務所に頼むと比べきれない

事務所の数を増やすほど良い事務所に当たるとは限りません。4つ以上の事務所になると、面談と資料の説明に時間を取られ、比べる前に疲れてしまいます。

無料面談は1事務所あたり1時間前後かかり、事務所によっては2回目の打ち合わせも入ります。4つの事務所なら、それだけで平日を何日も使うことになります。

面談の前には、通帳や固定資産税の通知書を用意し、同じ説明を毎回くり返します。移動と準備を含めると、1事務所あたり半日は見ておく必要があります。

見積書の書き方も事務所ごとに違うため、事務所の数が増えるほど読み替えの手間が増えます。候補を2〜3の事務所に絞ってから声をかけるほうが、事務所ごとの話を深く聞けます。

迷ったときは、まず2つの事務所で比べ、見積もりや提案の差が大きければ3つ目の事務所に当たる、という順番でも構いません。

相続人が複数いるときは窓口を1人に決める

相続人が複数いる場合、見積もりは相続人ごとに取る必要はありません。相続税の申告書は相続人全員で1通にまとめて出せるため、見積もりも1件で足ります。

相続人がそれぞれ別の事務所に声をかけると、伝える内容がずれ、同じ相続なのに比べられない見積もりが集まります。事務所の側も、誰と話を進めればよいか分からなくなります。

窓口になる1人を決め、その人がすべての事務所に同じ依頼文を送る形にしてください。届いた見積もりと面談の記録は、ほかの相続人とも共有しておきます。

【注意】相続人の間で争いがある場合

分け方で対立している場合、税理士は中立の立場でしか関われず、交渉には入れません。先に弁護士に相談し、分け方の見通しが立ってから税理士の見積もりを取るほうが、二度手間になりません。

見積もりの依頼に必要な情報|事務所が報酬を決める項目

見積もりを比べられる形にするには、すべての事務所に同じ情報を渡すことが前提です。伝えるべきなのは、事務所が報酬を決めるときに使う項目です。ここでは7つの項目と、最も食い違いやすい「遺産総額」の伝え方、依頼文の例を示します。

報酬を決める7つの項目と伝え方

事務所は、次の7つの項目から報酬を見積もります。1つでも伝え漏れると、その事務所だけ前提の違う見積もりが届きます。

伝える項目 何の報酬に関わるか 伝え方の例
遺産総額 基本報酬 借入金や特例を引く前の、プラスの財産の合計
相続人の数 相続人の数による加算 配偶者と子2人の計3人
土地の数と所在地 土地の加算・現地調査の実費 自宅と駐車場の2か所(○○市)
非上場株式の有無 株式の評価の加算 父が経営していた会社1社
預貯金の口座数 口座ごとの加算(一部の事務所) 3つの銀行に計5口座
亡くなった日 期限が近い場合の加算 令和8年6月10日
遺言・分け方・生前贈与の状況 打ち合わせの回数・通帳の調査 遺言なし、分け方はほぼ合意済み

表の見方:中央の列は、その項目で何の報酬が決まるかです。上から4つは多くの事務所の料金表に載っている加算で、下の3つは事務所によって扱いが分かれます。

重要ポイント:土地の数は「所在地の数」ではなく、使い方ごとに数える事務所が多くあります。自宅の敷地の一部を駐車場として貸していれば、2つと数えられることがあります。

依頼文を送る前に、通帳・固定資産税の通知書・保険証券・遺言書の有無を手元で確かめておくと、7つの項目をほぼ埋められます。書類がそろっていなくても、見積もりは頼めます。

相続税申告に必要な書類の一覧と集め方は、下記の記事で解説しています。

遺産総額は借入金や特例を引く前の金額で伝える

見積もりが最も食い違いやすいのが遺産総額です。基本報酬の基準は、借入金や特例を引く前のプラスの財産の合計にしている事務所が多くあります。

ところが、相続税の計算で使う金額(課税価格)は、借入金や自宅の土地の特例を引いた後の金額です。こちらを遺産総額として伝えると、見積もりは実際より安く出ます。

事務所 引いた後の5,400万円で伝えた場合 引く前の9,500万円で伝えた場合
A事務所 24.97万円 38.17万円
B事務所 30.8万円 52.8万円
C事務所 44万円 60.5万円
D事務所 44万円 66万円

表の見方:同じ相続なのに、伝える金額を変えただけで基本報酬が変わります。引いた後の金額で見積もってもらうと、契約後に財産の資料を見た段階で増額されます。

重要ポイント:すべての事務所に「借入金や特例を引く前の金額」でそろえて伝えてください。特例を使えそうなことは、別の項目として添えれば十分です。

生命保険金や死亡退職金も、非課税枠を引く前の金額で遺産総額に含める料金表があります。受け取った保険金があれば、金額を添えて伝えてください。

計算ロジック:【前提】自宅の土地4,500万円・預貯金5,000万円・借入金500万円。自宅の土地の特例で土地を80%(3,600万円)減らすと、引いた後の金額は5,400万円です。報酬は各事務所の公開料金表の基本報酬(税込)です。

参照元:国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務

分からない項目は「分からない」と伝えてよい

亡くなって間もない時期は、財産の全体が分からないのが普通です。分からない項目は推測で埋めず、「未確認」と書いて伝えてください。

推測で少なめに伝えると、その事務所の見積もりだけ安く見えて、比べる判断を誤ります。「預貯金は3,000万〜4,000万円ほど」のように幅で伝えるのも1つの方法です。

分からない項目 伝え方の例
預貯金の残高 通帳の最終記帳の残高と、口座の数だけ伝える
土地の評価額 固定資産税の通知書の評価額と、所在地を伝える
株式や投資信託 取引のある証券会社の名前だけ伝える
生前の贈与 「あったかどうか未確認」と伝える

表の見方:正確な金額が分からなくても、右の列の情報があれば事務所は報酬の見当を付けられます。固定資産税の評価額は、相続税の評価額とは違う点に注意してください。

未確認の項目がある場合は、事務所によって「確認後に見積もりを出し直す」「幅で見積もる」と対応が分かれます。どちらの対応かも、比べる材料になります。

そのまま使える見積もり依頼文の例

すべての事務所に同じ文面を送ると、届いた見積もりの差がそのまま事務所の差になります。次の文例の【】を埋めて、同じ内容をすべての事務所に送ってください。

見積もり依頼文の例

相続税の申告をお願いしたく、見積もりをお願いします。2〜3の事務所に同じ内容でご相談しています。

亡くなった日:【令和○年○月○日】/相続人:【配偶者と子2人】/遺産総額(借入金・特例を引く前):【約○万円】

土地:【自宅と駐車場の2か所・○○市】/非上場株式:【なし】/預貯金:【○つの銀行に計○口座】/遺言:【なし】

報酬は税込の総額と内訳、相続税の概算、使えそうな特例をあわせて教えてください。【○月○日】までにご返事をいただけると助かります。

返事の期限を書いておくと、返事の速さそのものも比べる材料になります。期限を過ぎても連絡がない事務所は、依頼後のやり取りも遅くなりがちです。

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見積もりの取り方4つ|自動見積り・問い合わせ・無料面談・一括相談

見積もりの取り方には4つあり、手間と精度が違います。最初は手間の少ない方法で候補を絞り、最後は面談で精度の高い見積もりを取るのが効率的です。ここでは4つの方法を比べ、注意点を整理します。

4つの取り方の比較|手間・精度・得られるもの

どの方法も無料で使えることが多いものの、得られる情報の深さが違います。概算の相続税や使える特例まで聞けるのは、面談を伴う方法です。

取り方 手間 見積もりの精度 相続税の概算 注意点
事務所サイトの自動見積り 小さい 概算 別の計算になることが多い 入れる金額の前提が事務所ごとに違う
問い合わせフォーム・メール 中くらい 中くらい 事務所しだい 1つずつ同じ内容を送る必要がある
事務所の無料面談 大きい 高い 出ることが多い 事務所ごとに予約と移動の時間がかかる
一括相談・見積りサービス 小さい 中くらい〜高い 面談で出ることが多い 複数の事務所から連絡が来る

表の見方:上の2つは候補を絞る段階、下の2つは見積もりを固める段階に向いています。一括相談は、1回の入力で複数の事務所に同じ条件を渡せる点が特徴です。

重要ポイント:自分で1つずつ連絡すると、伝える内容が少しずつずれていきます。同じ条件を複数の事務所に渡せるかが、比べられる見積もりになるかの分かれ目です。

一括相談・見積りサービスでは、入力のあと複数の事務所から連絡が来ます。連絡を負担に感じる人もいますが、そのぶん自分で候補を探して1つずつ説明する手間は省けます。

自動見積りは入れる金額の前提を確かめる

事務所のサイトには、遺産総額や相続人の数を入れると報酬が出る自動見積りがあります。便利ですが、入れる金額の前提が画面ごとに違う点に注意してください。

報酬の自動見積りは「借入金や特例を引く前の遺産総額」を入れさせるのに対し、同じサイトの相続税の計算では「特例などを引いた後の金額」を入れさせることがあります。

2つの画面に同じ数字を入れると、どちらかの結果がずれます。入力欄の説明を読み、何を引く前の金額かを確かめてから入れてください。

自動見積りの結果は、加算の一部しか反映していないこともあります。結果の画面は保存しておき、面談後の見積もりと比べて、何が増えたかを確かめる材料にしてください。

【自動見積りの入力欄で確かめること】

  • 遺産総額は、借入金や特例を引く前か後か
  • 土地の数は、所在地ごとか使い方ごとか
  • 結果は税込か税別か、加算が含まれるか

一括相談・見積りサービスの使い方

一括相談・見積りサービスは、1回の入力で複数の事務所に同じ条件を渡せる方法です。自分で1つずつ連絡するより、伝える内容のずれが起きにくくなります。

入力する項目は、この記事で挙げた報酬を決める7つの項目とほぼ同じです。遺産総額は、ここでも借入金や特例を引く前の金額で入れてください。

入力のあとは、複数の事務所から電話やメールで連絡が来ます。連絡が来た順に面談の日程を決め、同じ週のうちに面談を集めると、記憶が新しいうちに比べられます。

【使うときのコツ】

  • 連絡を受けやすい時間帯を、入力欄に書いておく
  • 面談の日程は、なるべく近い日にまとめる
  • 合わないと感じた事務所には、早めに見送りを伝える

無料面談は聞く順番を決めて臨む

面談では、相続の状況を伝えてから提案を聞き、報酬の話は最後に置くと情報が集まります。報酬から話し始めると、会話が値段の説明に寄ってしまいます。

すべての事務所に同じ質問をすることも大切です。質問が違えば、返ってきた答えを比べられません。聞いた内容は、その日のうちに同じ書式に書き写してください。

【面談に持っていくもの】

  • 見積もり依頼文の控え(すべての事務所に伝えた内容)
  • 通帳・固定資産税の通知書・保険証券の写し
  • 遺言書がある場合はその写し
  • 比較シート(その場で答えを書き込む)

面談で担当者の実力を見極める質問と、避けたい税理士のサインは、下記の記事で解説しています。

見積もりはいつ確定するか|精度の3段階と金額が変わる条件

最初に受け取る見積もりは、多くの場合まだ確定した金額ではありません。見積もりは概算・面談後・確定の3段階で精度が上がり、途中で金額が変わることがあります。ここでは段階ごとの違いと、契約書で確かめる点を整理します。

概算・面談後・確定の3段階

見積もりの精度は、事務所がどこまで資料を見たかで決まります。比べるときは、同じ段階の見積もりどうしで比べてください。

段階 もとになる情報 金額がずれる主な理由
概算(自動見積り・料金表) 自分で伝えた遺産総額など 財産の漏れ・土地の数え方の違い
面談後の見積もり 資料を見たうえでの聞き取り 通帳の調査や分け方の調整が増える
確定(申告書の完成時) 評価と申告書の作成が終わった段階 新しく見つかった財産

表の見方:黄色の面談後の見積もりが、比べる基準に向いた段階です。契約前の聞き取りで8割以上の相続は難しさを判定できる、と説明する事務所もあります。

重要ポイント:ある事務所は概算、別の事務所は面談後の見積もりという状態で比べると、概算のほうが安く見えます。段階をそろえてから並べてください。

たとえば自動見積りで土地を1区分と入れていても、面談で自宅の敷地の一部を貸駐車場にしていると分かれば、2区分に数え直されます。

段階 基本報酬 相続人の加算 土地の加算 合計(税込)
概算(土地1区分と伝えた) 38.17万円 7.63万円 5.5万円 51.3万円
面談後(土地2区分と分かった) 38.17万円 7.63万円 11万円 56.8万円

計算ロジック:【前提】A事務所の公開料金表・プラスの財産9,500万円・相続人3人。基本報酬38.17万円に、相続人が1人増すごとの10%加算(2人分)と、土地1区分あたり5.5万円を足しています。

契約後に報酬が変わる条件|契約書で確かめる条項

面談後の見積もりでも、契約後に事実が変われば報酬が変わることがあります。契約の前に、どんなときに報酬が変わるかが書面に書かれているかを確かめてください。

  • □ 新しい財産が見つかった場合の再見積もりの基準
  • □ 土地や相続人の数が増えた場合の加算額
  • □ 分け方がまとまらず申告を2回に分ける場合の費用
  • □ 税務調査の立会いの報酬と、基本報酬に含まれるか
  • □ 途中で解約した場合の精算方法

重要ポイント:途中で解約した場合、報酬はそれまでに終えた作業の割合に応じて払うのが民法の原則です(民法648条3項)。精算の方法が契約書に書かれていれば、揉めにくくなります。

見積もりに有効期限が書かれている場合もあります。比べている間に期限が切れると、出し直しで金額が変わることがあるため、期限の日付も比較シートに控えておいてください。

参照元:e-Gov法令検索 民法

申告の途中で税理士を変える場合の手続きと費用は、下記の記事で解説しています。

見積もりの金額が下がることもある

見積もりは上がるだけではありません。自分で集められる書類を自分で集めると、書類の取り寄せの代行費用を省けます。

戸籍や残高証明書の取り寄せを事務所に任せると、手数料と実費がかかることが多くあります。自分で取るか任せるかを、見積もりの段階で分けて聞いておくと総額を調整できます。

相続人の間で分け方がほぼ決まっている場合も、打ち合わせの回数が減るため、報酬が下がることがあります。決まっている事実は、依頼の時点で伝えてください。

【自分で引き受けると報酬を抑えやすい作業】

  • 戸籍謄本と住民票の取り寄せ
  • 預貯金の残高証明書と、固定資産税の評価証明書の取り寄せ
  • 財産の一覧のたたき台づくり(通帳・保険証券・証券会社の報告書から)

どの作業を引き受けると報酬がいくら変わるかは、事務所によって違います。見積もりの段階で「この作業を自分でやった場合の金額」も出してもらうと、比べやすくなります。

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見積もりを取る時期|相続開始から逆算した日程表

相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。見積もりは相続開始から3〜5か月目に集め、7か月目までに依頼先を決めるのが目安です。ここでは月別の日程と、遅れた場合の加算を示します。

月別の日程表|見積もりから依頼まで

依頼してから申告書が仕上がるまでには、少なくとも3か月は見ておきたいところです。そこから逆算すると、遅くとも7か月目には依頼先を決めておく必要があります。

1〜2か月目

財産の概要をつかむ

通帳・固定資産税の通知書・保険証券を集め、財産の全体をメモにします。相続放棄の期限(3か月)より前に、借金の有無も確かめます。

⬇

3〜4か月目

見積もりを依頼して面談を受ける

同じ依頼文で2〜3の事務所に見積もりを頼み、面談を受けます。亡くなった人の所得税の申告(4か月)も、あわせて相談できます。

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5〜6か月目

比較シートで比べて決める

面談後の見積もりを比較シートに書き写し、報酬と相続税の合計で比べます。

⬇

7か月目

依頼先と契約する

遅くともこの時点で契約を済ませてください。報酬が変わる条件と日程を書面で確かめます。

⬇

8〜10か月目

評価・申告書の作成と提出

税理士が財産を評価して申告書を作り、期限までに提出と納付を済ませます。

重要ポイント:分け方の話し合いが長引きそうな家庭は、1〜2か月前倒しにしてください。分け方で使える特例が変わるため、話し合いの前に税理士の意見を聞けると有利です。

遺言で分け方が決まっている家庭は、話し合いの時間がいらないぶん日程に余裕が生まれます。その場合も、7か月目までに依頼先を決める目安は変わりません。

参照元:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

相続税申告の流れと、10か月の期限から逆算した予定の立て方は、下記の記事で解説しています。

期限まで3か月を切ると報酬が20〜50%上がる

申告期限が迫ってから頼むと、特急の対応として報酬が上乗せされることがあります。公開料金表では、期限まで3か月以内の依頼に報酬総額の20〜50%を加える例があります。

依頼の時期 報酬の目安(遺産1億円) 上乗せ
期限まで3か月以上 88万円 —
期限まで3か月以内(20%加算) 105.6万円 +17.6万円
期限まで3か月以内(50%加算) 132万円 +44万円

表の見方:赤い行のように50%を加える事務所なら、同じ相続でも44万円多く払うことになります。加算の割合は事務所ごとに違います。

重要ポイント:期限が迫ると、引き受け自体を断られることもあります。見積もりを比べる時間も取れなくなるため、4〜5か月目には動き出してください。

計算ロジック:【前提】遺産1億円・報酬は相場の中ほどの遺産総額の0.8%に消費税10%を足した88万円。上乗せは88万円×20%または50%で計算しています。

期限まで3か月を切ってから探す場合

期限まで3か月を切ってから探す場合は、比べることより引き受け先を確保することが先です。まず電話で「この日程で引き受けられるか」を確かめ、1〜2の事務所に絞って面談してください。

見積もりには、特急の加算がいくらかを明記してもらいます。加算の割合は事務所で違うため、ここだけは2つの事務所で比べる価値があります。

期限に間に合わない場合でも、期限後申告で自宅の土地の特例などは使えます。ただし無申告加算税と延滞税がかかるため、1日でも早く出すことが大切です。

相続税の申告期限を過ぎた場合のペナルティと、今からでも使える特例は、下記の記事で解説しています。

四十九日のあとに動き出す場合の目安

四十九日の法要を終えてから相続の手続きに取りかかる家庭も多くあります。その時点で残りは8か月ほどで、見積もりに使える期間は2〜3か月です。

この場合は、法要の前に財産の概要だけでもメモしておくと、法要のあとすぐに見積もりを頼めます。通帳・固定資産税の通知書・保険証券が手元にあるかを確かめるだけでも十分です。

相続放棄の期限(知った日から3か月)や、亡くなった人の所得税の申告(4か月)が先に来る点にも注意してください。財産の全体を早めにつかむことが、どの手続きにも役立ちます。

亡くなった人に事業や不動産の収入があった場合、所得税の申告(準確定申告)も税理士に頼むことが多くなります。相続税とまとめて見積もりを頼めば、4か月の期限にも間に合わせやすくなります。

届いた見積もりの比べ方|比較シートで横に並べる

見積書の書き方は事務所ごとに違うため、届いたまま並べても比べられません。自分の比較シートに書き写し、同じ項目どうしで並べると差が見えます。ここでは比較シートの項目と、報酬と相続税を合わせた比べ方を示します。

比較シートの項目|そのまま使える表

次の表を書き写し、各事務所の答えを埋めてください。埋まらなかった欄は、追加で問い合わせる項目になります。

比べる項目 A事務所 B事務所 C事務所
報酬の総額(税込・加算込み)
含まれる作業(準確定申告・書類の取り寄せ・分け方の提案)
書面添付の有無と費用
税務調査の立会いの費用
相続税の概算と、使えそうな特例
担当者(面談した人と同じか)
申告までの日程
報酬が変わる条件

表の見方:上の4行が報酬、黄色の行が相続税、下の3行が進め方の比較です。黄色の行が空欄の事務所は、特例の検討がまだ浅い可能性があります。

重要ポイント:項目ごとに点数を付けて合計すると、どこで差がついたかが見えなくなります。点数にせず、項目ごとに書き写したまま比べてください。

シートは面談のたびに更新し、その日のうちに書き込みます。数日たつと、どの事務所が何を言ったかの記憶が混ざるためです。空欄は、メールで追加の質問を送って埋めてください。

追加の質問への返事の速さや丁寧さも、シートの余白に書いておきます。依頼したあとのやり取りも、ほぼ同じ調子で進むことが多いからです。

総額は税込・加算込みでそろえる

料金表の金額は税別で書かれていることが多く、見積書でも税込と税別が混ざります。比べる前に、すべて税込・加算込みの総額に直してください。

基本報酬が安い事務所でも、土地や相続人の加算を足すと他より高くなることがあります。書類の取り寄せの手数料や、現地調査の交通費などの実費が別になっていないかも確かめます。

【税込・加算込みに直す例】

「基本報酬60万円(税別)・土地1区分5万円(税別)」で土地が2区分なら、税別70万円に消費税10%を足して税込77万円です。「税込66万円」の見積もりと比べると、実は11万円高いことになります。

成功報酬を設けている事務所なら、計算の基礎と上限も確かめます。上限がないと、下がった税額に応じて基本報酬を上回る請求になることがあります。

見積もりの差が大きいときに確かめること

同じ条件で頼んだのに1つの事務所だけ極端に安い、または高い場合は、まず前提の違いを疑ってください。差の多くは、事務所の実力より見積もりの前提の違いから生まれます。

差が出る原因 確かめる質問
遺産総額の基準が違う 借入金や特例を引く前の金額で見積もりましたか
土地の数え方が違う 土地は何区分として見積もりましたか
含まれる作業が違う 準確定申告や書類の取り寄せは含まれますか
書面添付の扱いが違う 書面添付は付けますか、費用は別ですか
見積もりの段階が違う この金額は概算ですか、確定に近い見積もりですか

表の見方:左の列の原因を1つずつ確かめると、多くの差は説明がつきます。前提をそろえても差が残る場合に、初めて事務所の方針の違いとして比べてください。

重要ポイント:相続税を多く扱う事務所どうしなら、前提をそろえた見積もりは近い金額になりやすいと説明する事務所もあります。極端に安い見積もりは、作業を省く前提になっていないかを確かめてください。

報酬と相続税の合計で比べる|3つの事務所の例

比較シートの最終的な判断は、報酬と相続税の合計で行います。報酬が最も安い事務所が、合計でも最も安いとは限りません。

事務所 報酬(税込) 提案の内容 相続税 合計
A事務所 55万円 自宅の土地の特例を検討しない 770万円 825万円
B事務所 88万円 自宅の土地の特例を使う 180万円 268万円
C事務所 110万円 自宅の土地の特例を使う 180万円 290万円

表の見方:A事務所は報酬が最も安いものの、特例を検討しないため合計が最も高くなります。BとCは同じ提案なので相続税も同じで、差は報酬の分だけです。

重要ポイント:AとBの合計の差は557万円です。一方でBとCのように提案が同じなら、報酬の安いほうが有利になります。高い報酬が低い税額を約束するわけではありません。

計算ロジック:【前提】遺産1億円(自宅の土地5,000万円・その他5,000万円)・相続人は子2人・同居の長男が自宅を相続。報酬は遺産総額の0.5%・0.8%・1.0%に消費税10%を足した額です。特例は自宅の土地を80%減らす計算です。

自宅の土地の特例を誰が相続すると使えるかと、要件の判定は、下記の記事で解説しています。

決めたあとにすること|断りの連絡と契約前の確認

依頼する事務所を決めたら、選ばなかった事務所への連絡と、契約前の確認を済ませます。断りの連絡は、決めたらすぐに入れるのが礼儀です。ここでは連絡の仕方と、契約前に確かめる項目を整理します。

選ばなかった事務所への連絡と資料の返却

断りの連絡に、細かな理由は要りません。面談や見積もりのお礼と、別の事務所に決めたことを簡潔に伝えれば十分です。他の事務所の名前や金額を伝える必要もありません。

断りの連絡の文例

「先日はお時間をいただき、ありがとうございました。家族で検討した結果、今回は別の事務所にお願いすることにしました。丁寧にご説明いただいたことに感謝しております。」

通帳の写しや固定資産税の通知書などを預けていた場合は、返してもらうよう頼みます。どの事務所に何を渡したかは、見積もりを頼んだ時点で控えておくと確認が楽になります。

決めた事務所と、選ばなかった理由は、ほかの相続人にも共有しておきます。報酬は相続人全員に関わる費用なので、決めた経緯が分かれば後で揉めにくくなります。

契約前に確かめる5つの項目

口頭の説明だけで契約すると、後で「聞いていた話と違う」となりがちです。次の5つが書面に書かれているかを、契約の前に確かめてください。

  • □ 報酬の税込の総額と、支払いの時期(着手金・完了時)
  • □ 報酬が変わる条件と、その場合の金額の基準
  • □ 基本報酬に含まれる作業と、含まれない作業
  • □ 担当者の名前と、税理士が確認する体制
  • □ 申告までの日程と、資料を渡す期限

重要ポイント:報酬を相続人の誰が払うかも、契約の前に家族で決めておきます。配偶者が払うと、配偶者が亡くなったときの相続税が減る場合があります。

税理士費用を誰が払うと得になるかと、負担割合の決め方は、下記の記事で解説しています。

契約後に見積もりと違う請求が来たら

契約後に見積もりより高い請求が来た場合は、まず契約書の「報酬が変わる条件」と照らし合わせます。見積もりの段階の記録が、話し合いの根拠になります。

条件に当てはまる増額なら、何が増えたのかの内訳を書面で出してもらいます。条件にない増額なら、見積もりのときに伝えた情報と比較シートを示して説明を求めてください。

見積もりのときに財産を少なめに伝えていた場合は、増額に応じるのが筋です。依頼文の控えを残しておけば、どちらの言い分が正しいかを落ち着いて確かめられます。

話し合っても納得できない場合は、解約して別の税理士に引き継ぐこともできます。その場合の報酬は、終えた作業の割合に応じて精算するのが原則です。

見積もりを取ったうえで自分で申告すると決めた場合

見積もりを比べた結果、報酬が相続税に比べて重すぎると感じ、自分で申告すると決める人もいます。財産が預貯金中心で土地がなく、特例も使わない相続なら、自分で申告する選択肢もあります。

ただし、自宅の土地の特例を使える可能性があるなら、その判定だけは面談で確かめてから決めてください。使い忘れると、報酬の何倍もの税金を余分に払うことがあります。

自分で申告する場合も、見積もりの面談で聞いた相続税の概算は、自分の計算を確かめる目安として使えます。大きく違えば、どこかで評価や特例を取り違えている可能性があります。

相続税申告に税理士が必要かどうかと、自分でできるケースの判断基準は、下記の記事で解説しています。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ

相続税申告の見積もりは相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

見積もりを比べるなら、複数の税理士に同じ条件で相談し、報酬と相続税の合計で比べて選ぶのがおすすめです。一括相談・見積りを使えば、1回の入力で同じ条件を複数の事務所に渡せます。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

見積もりの差のうち、最も大きいのは提案の中身です。特例や土地の評価を検討できる税理士でなければ、報酬の差を超える税額の差が生まれます。

相続税の対応実績がある税理士に相談する理由

  • 面談の段階で、相続税の概算と使えそうな特例を示せる
  • 報酬の見積もりを、加算まで含めた総額で出せる
  • 土地の数え方や評価の方針を、根拠をもって説明できる
  • 報酬が変わる条件を、契約の前に書面で示せる
  • 書面添付を使い、税務調査のときに根拠を説明できる

本記事の例では、報酬が最も安いA事務所と、特例を使ったB事務所で、報酬と相続税の合計に557万円の差が出ました。報酬の差は33万円だけです。

一括相談・見積りのメリット|提案の中身で実務力が見える

見積もりを並べると報酬を比べられますが、差が大きいのは提案の中身です。次の3点を各事務所に同じ質問で聞き、答えを突き合わせてください。

判定ポイント1:相続税の概算を報酬と一緒に示すか

A事務所は報酬だけを示し、B事務所は相続税の概算と使えそうな特例を報酬と並べて示しました。

→ B事務所の方が、報酬と税額の合計で考える実務経験が豊富と判定できます。

判定ポイント2:遺産総額の前提を確かめるか

A事務所は伝えた金額のまま見積もり、B事務所は「借入金や特例を引く前の金額ですか」と確かめてから見積もりました。

→ B事務所の方が、契約後の増額を防ぐ実務経験が豊富と判定できます。

判定ポイント3:報酬が変わる条件を先に示すか

A事務所は「あとで調整します」と答え、B事務所は財産が増えた場合の再見積もりの基準を書面に書きました。

→ B事務所の方が、追加請求の揉めごとを防ぐ実務経験が豊富と判定できます。

相談しないまま進めるリスク

1つの事務所だけで決めると、その金額と提案が妥当かを判断する材料がありません。相場より高いのか、提案が足りないのかを知らないまま契約することになります。

相談しないまま進めると起きること

  • 引いた後の金額で見積もってもらい、契約後に増額される
  • 特例を検討しない事務所に頼み、相続税を払いすぎる
  • 期限が近づいてから動き、特急の加算を払う
  • 報酬が変わる条件を確かめず、追加の請求で揉める
  • 税務調査の対応を、ひとりで抱えることになる

これらの多くは、契約の前に複数の見積もりを同じ条件で取るだけで防げます。相談は無料のことが多く、比べるだけなら費用はかかりません。

見積もり比較シミュレーション|1つの事務所で決めた場合と比べた場合

同じ相続で、1つの事務所だけで決めた場合と3つの事務所を比べた場合の負担を並べます。比べることで避けられるのは、報酬の払いすぎより相続税の払いすぎです。

決め方 選んだ事務所 報酬と相続税の合計 最も安い合計との差
最初の事務所で決めた(最初がA事務所) A事務所 825万円 +557万円
最初の事務所で決めた(最初がC事務所) C事務所 290万円 +22万円
3つの事務所を比べて決めた B事務所 268万円 —

表の見方:最初に相談したのがA事務所だった場合、比べずに決めると合計が最も高くなります。3つの事務所を比べればB事務所を選べます。

重要ポイント:比べる意味は、報酬の差よりも提案の差を見つけることにあります。提案の中身を必ず並べてください。

計算ロジック:数値は「報酬と相続税の合計で比べる」の表と同じ前提です。最も安い合計はB事務所の268万円です。

一括相談・見積りの手順|STEP1~STEP4

STEP1

相続の概要を整理する

被相続人の資産内容・資産額概算・相続人構成・年齢・遺言の有無をメモにまとめます。遺産総額は借入金や特例を引く前の金額で書き出します。

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STEP2

一括見積り・相談サービスに依頼する

複数の税理士事務所に一括で見積りを依頼できるサービスを使います。希望内容を「相続税申告・相続税の節税・確定申告・準確定申告など」と明確に記し、複数の税理士(目安3~5の事務所)への同時打診を依頼します。

不動産がある場合は所在地・広さなども記載します。フォームでは「財産の種類」「相続人の人数」をできるだけ正確に伝えると見積りの精度が上がります。フォーム記入自体は5分程度です。

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STEP3

見積りと初回相談を受ける

各事務所から「提案内容」「試算相続税額」「報酬額」が記載された見積りが届きます。答えは当日のうちに比較シートへ書き写してください。

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STEP4

税理士を選定・正式依頼する

「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で事務所を選びます。相続開始から7ヶ月以内に税理士を決めて、期限直前の加算を避けてください。

初回相談で確認すべきチェックリスト|見積もりの前提をそろえる

聞く順番より、同じ質問をすべての事務所に投げて答えを並べることが大事です。

  • □ 遺産総額は、借入金や特例を引く前の金額で見積もったか
  • □ 相続税の概算と、使えそうな特例を示したか
  • □ 土地の数を、使い方ごとに数えたか
  • □ 報酬を税込・加算込みの総額で示したか
  • □ 担当者が誰になるかを説明したか
  • □ 年間の相続税の申告件数を数字で答えられるか

重要ポイント:答えを当日のうちに比較シートへ書き写してください。2つ目の面談の印象で、1つ目の事務所の記憶が上書きされるのを防げます。

見積もりで確認すべきチェックリスト|報酬体系と対応範囲

見積書は基本報酬に何が含まれるかと報酬が変わる条件が書面で出ているかを先に確かめてください。

  • □ 基本報酬の金額と、税別か税込かが明記されているか
  • □ 土地・相続人・株式の加算の基準が書かれているか
  • □ 書類の取り寄せの手数料と実費が分けて書かれているか
  • □ 期限が近い場合の加算の有無が書かれているか
  • □ 財産が増えた場合の再見積もりの基準が書かれているか

重要ポイント:見積もりは報酬の安さだけでなく、提案される特例と相続税の概算を合わせて判断してください。

すでに依頼した税理士の見積もりや申告の内容に納得できない場合の相談先は、下記の記事で解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続税申告で税理士に相見積もりを取るのは失礼ですか?

失礼ではありません。税理士の報酬は事務所が自由に決めており、比べられる前提で見積もりを出す事務所がほとんどです。ただし、他の事務所の見積書を見せて値下げを迫るのは嫌がられます。

Q2. 見積もりはいくつの事務所から取ればよいですか?

2〜3の事務所が目安です。自宅の土地がある相続や遺産1億円前後なら3つの事務所、預貯金中心で5,000万円前後なら2つの事務所で足ります。4つ以上の事務所になると、面談と読み比べの負担が大きくなります。

Q3. 相続税申告の見積もりは無料ですか?

多くの事務所は、見積もりと初回の面談を無料にしています。自動見積りや一括相談・見積りサービスも無料で使えることがほとんどです。有料の場合は、予約の時点で案内があります。

Q4. 見積もりを取ったあとに断ってもよいですか?

断って構いません。見積もりの作成は事務所の営業活動の一部で、断ったことで費用を請求されることは通常ありません。決めたらすぐに、お礼とあわせて連絡してください。

Q5. 見積もりから契約までの期間はどれくらいが目安ですか?

見積もりの依頼から決定まで1か月ほどを見込み、相続開始から7か月目までに依頼先を決めるのが目安です。申告期限まで3か月を切ると、報酬に20〜50%を上乗せする事務所もあります。

まとめ|見積もりは同じ条件で集め、報酬と相続税の合計で比べる

相見積もりは相続税申告の基本

  • 報酬は事務所が自由に決めており、同じ遺産額でも1.6〜2.4倍の開きがある
  • 相見積もりは失礼ではない。目的は値引きでなく、合う事務所を探すこと
  • 目安は2〜3の事務所。自宅の土地がある相続は3つの事務所で提案を比べる

比べられる見積もりにする

  • 報酬を決める7つの項目を、すべての事務所に同じ文面で伝える
  • 遺産総額は借入金や特例を引く前の金額で伝える
  • 概算と面談後の見積もりを混ぜず、同じ段階どうしで比べる

時期と比べ方

  • 相続開始から3〜5か月目に見積もりを集め、7か月目までに決める
  • 期限まで3か月を切ると、報酬に20〜50%が上乗せされることがある
  • 比較シートに書き写し、報酬と相続税の合計で比べる

今すぐ取るべき行動

  • 亡くなった日・相続人・遺産の概算・土地の数をメモにまとめる
  • 遺産総額を、借入金や特例を引く前の金額で書き出す
  • 複数の税理士に一括相談・見積りを頼み、報酬と相続税の概算を並べて比べる

※本記事は2026年9月時点の法令・実務に基づいて作成しています。税理士の報酬額は各事務所が自由に設定しており、記載の金額は目安です。最新の制度や個別の判断については、国税庁の情報や相続税の対応実績がある税理士にご確認ください。

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