相続税路線価とは?路線価図の調べ方・見方と土地の相続税評価額の計算方法をわかりやすく解説

相続税_路線価

相続税路線価とは、土地の相続税評価額を計算するために国税庁が定めた1㎡あたりの価格です。道路ごとに決められています。

国税庁のサイトで誰でも無料で確認でき、毎年7月に、その年の1月1日時点の価格が公表されます。

紛らわしいのが固定資産税の路線価とは別物という点です。同じ土地に何種類もの価格があり、目的ごとに使い分けられています。

計算式そのものは単純で、路線価に土地の面積を掛けるだけです。ただしそれは出発点にすぎません。

土地の形が悪い、間口が狭い、道路と高低差があるといった事情があれば、補正を入れて評価額を下げられます。ここが金額を左右します。

この補正をどこまで拾えるかで金額が変わるため、同じ土地でも計算する人によって評価額が違ってきます。

この記事では、相続税路線価の意味と他の価格との違い、路線価図の調べ方と見方、評価額の計算方法、評価額を下げる補正、そして計算する人によって結果が変わる理由までを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 相続税路線価は公示価格の約8割が目安。固定資産税評価額(約7割)とは別物
  • 国税庁の路線価図で確認できる。数字は千円単位、アルファベットは借地権割合、図形は地区区分
  • 計算式は路線価×面積×補正率。補正をどこまで拾えるかで評価額が変わる
相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ

相続税路線価とは|土地の相続税評価額を計算するための価格

相続税路線価は、相続税や贈与税を計算するときに使う土地の価格です。国税庁が道路ごとに1㎡あたりいくらかを定めています。売買価格とは別の、税金の計算専用の数字です。

道路に価格が付いている

路線価は土地そのものではなく、土地が面している道路に付けられています。その道路に面した土地は、原則としてすべて同じ単価を出発点に評価します。同じ道路沿いなら、隣の家も同じ単価から計算が始まります。

たとえば「300C」と書かれた道路に面した土地なら、1㎡あたり30万円です。数字の単位は千円なので、300は30万円を意味します。

重要ポイント:路線価が定められているのは市街地にある道路が中心です。郊外や農村部では路線価が付いておらず、別の方法で計算します。

路線価は誰がどうやって決めているか

路線価は国税庁が毎年決めています。公示価格や不動産鑑定士の評価をもとに、公示価格の8割を目安に定められます。

項目 内容
決める人 国税庁(各国税局が調査して決定)
基準になるもの 公示価格・基準地価・不動産鑑定士の鑑定評価・売買実例
水準 公示価格の約80%
時点 その年の1月1日
対象 市街地にある道路(全国約33万地点が基準)

表の見方:8割という水準には理由があります。地価が下落しても納税者が不利にならないよう、あらかじめ低めに設定されています。1年間の地価変動を吸収する余裕を持たせた数字です。

重要ポイント:路線価は相続税と贈与税のためだけに作られた価格です。売買の目安として使われることもありますが、公式な用途は税金の計算だけです。

路線価と実際の売却価格の関係

路線価は税金の計算専用ですが、売却を考えるときの目安にはなります。路線価を0.8で割ると、公示価格に近い金額が出ます。

計算 出る金額 使い道
路線価×面積 相続税評価額 相続税の計算に使う公式な金額
路線価×面積÷0.8 公示価格の目安 土地の一般的な価値の目安
路線価×面積÷0.8×1.1程度 実勢価格の目安 実際に売れる金額のごく粗い見当

表の見方:黄色の行だけが公式な金額です。下の2つはあくまで目安で、実際の売却価格は立地・形状・時期・買主の事情で大きく変わります。

重要ポイント:相続税評価額より安くしか売れないこともあります。売りにくい土地は、評価額どおりの価値がないことがあるためです。その場合は減額の補正が使える可能性があります。

相続した土地を売却する場合の税金と特例は、下記の記事で解説しています。

いつの年の路線価を使うか

どの年の路線価を使うかは迷いやすいところです。使うのは亡くなった年の路線価で、申告する年でも相続の手続きをした年でもありません。年をまたぐと数字が変わります。

状況 使う路線価 注意点
2026年3月に亡くなった 2026年分 公表は7月なので、それまで確定した計算はできない
2025年11月に亡くなり2026年に申告 2025年分 申告した年の路線価ではない
生前贈与で2026年5月に贈与した 2026年分 贈与も亡くなった年と同じ考え方
1月〜6月に亡くなった場合 その年の分(7月に公表) 公表を待つ必要がある

表の見方:薄赤の行が実務で問題になります。年の前半に亡くなると、7月の公表を待たないと正確な計算ができません。申告期限は10か月なので、待っても間に合いますが逆算した準備が必要です。

重要ポイント:路線価は毎年7月1日ごろに、その年の1月1日時点の価格が公表されます。国税庁のサイトでは平成30年分以降の路線価を確認できます。

参照元:国税庁 財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)

7月の公表前に亡くなったときの概算のしかた

1月から6月に亡くなると、その年の路線価はまだ出ていません。ただし遺産分割の話し合いには、おおよその税額が早めに必要です。公表前は前年の路線価で概算し、7月の公表後に正式な計算をやり直します。

方法 やり方 向いている場面
前年の路線価で試算する 前年分の路線価図で、同じ道路の数字を読む まず概算を出したいとき
公示地価の変動率で補正する 3月に公表される公示地価の前年比を、前年の路線価に掛ける 地価が大きく動いている地域
公示地価から逆算する 近くの公示地価×0.8で、路線価の水準を見込む 近くに公示地価の地点があるとき
前年分で正式に申告する 使えない 正式な申告は亡くなった年の路線価で行う

計算ロジック:前年の路線価が30万円で、近くの公示地価が前年より3%上がっていれば、今年の路線価は30万円×1.03=約30.9万円と見込めます。路線価は公示地価の8割程度を目安に定められるため、公示地価の動きがほぼそのまま反映されます。

重要ポイント:概算はあくまで遺産分割や納税資金の準備のためです。申告書は7月の公表を待ち、亡くなった年の路線価で作ってください。申告期限の10か月には、公表後でも間に合います。

参照元:国税庁 令和8年分の路線価等について

何に使う価格なのか

路線価が使われるのは税金の計算だけです。売買価格の目安にはなりますが、そのままの金額で売れるわけではありません。

用途 路線価を使うか 説明
相続税の計算 使う 土地の評価額を出すための公式な基準
贈与税の計算 使う 相続税と同じ基準を使う
固定資産税の計算 使わない 固定資産税には別の路線価がある
売買価格の決定 使わない 目安にはなるが、実際の価格は市場で決まる

表の見方:相続税と贈与税だけが相続税路線価を使います。固定資産税には別の路線価があり、金額も違います。この2つを取り違えると、評価額が1割以上ずれます。

相続税路線価と固定資産税路線価・公示価格の違い

同じ土地に何種類もの価格があります。目的ごとに別の基準で決められているため、金額もそれぞれ違います。どの数字を使えばよいかを先に整理しておきましょう。

土地には5つの価格がある

土地の価格は用途によって5種類に分かれます。一物五価と呼ばれ、相続税路線価はそのうちの1つにすぎません。

価格の種類 決める人 公表時期 公示価格を100とした目安 使い道
実勢価格(時価) 市場 — 110前後 実際の売買
公示価格 国土交通省 3月 100 土地取引の指標
基準地価 都道府県 9月 100前後 公示価格の補完
相続税路線価 国税庁 7月 約80 相続税・贈与税
固定資産税評価額 市区町村 3年に1度 約70 固定資産税・登録免許税

表の見方:黄色と薄赤が混同されやすい2つです。相続税路線価は約8割、固定資産税評価額は約7割を目安に定められています。同じ土地でも1割以上の差があります。

重要ポイント:相続税の計算に使うのは黄色の相続税路線価です。毎年届く固定資産税の課税明細書に載っている評価額とは別物なので、そのまま使わないでください。

実際の金額に置き換えるとどれくらい違うか

実勢価格1億円の土地を例に、それぞれの価格を出してみます。相続税路線価と固定資産税評価額では900万円の差が生まれます。

価格の種類 金額 実勢価格との差
実勢価格(時価) 1億円 —
公示価格 9,000万円 △1,000万円
相続税路線価による評価額 7,200万円 △2,800万円
固定資産税評価額 6,300万円 △3,700万円

表の見方:相続税の計算では実際に売れる価格より3割ほど低い金額で評価されます。「売ったら1億円の土地に相続税がかかる」と身構える必要はありません。

計算ロジック:公示価格は実勢価格の9割前後、相続税路線価は公示価格の8割、固定資産税評価額は公示価格の7割が目安です。

あてはめ:1億円×0.9×0.8=7,200万円、1億円×0.9×0.7=6,300万円と計算しています。あくまで目安で、地域や物件によって幅があります。

相続税評価額と固定資産税評価額の違いを、土地・建物・貸家など財産の種類別に整理した記事はこちらです。

路線価は毎年どれくらい変わるか

路線価は毎年見直されるため、前年と数%動くのが通常で、地域によっては大きく変わります。

変動の傾向 起きやすい地域 評価額への影響
上昇 再開発が進む都市部・駅前 相続の時期が1年違うと評価額が上がる
横ばい 成熟した住宅地 ほとんど変わらない
下落 人口が減っている地方 相続の時期が遅いほど評価額が下がる

表の見方:相続の時期は選べませんが、生前贈与の時期は選べます。地価が上がり続ける地域では、早めに贈与したほうが評価額を抑えられます。

重要ポイント:路線価は1年間の地価変動を吸収できるよう、公示価格の8割に設定されています。年の途中で地価が2割下がっても、路線価が時価を上回らない仕組みです。

どちらの路線価か見分ける方法

固定資産税にも路線価があるため、名前だけでは区別できません。見ているサイトがどこかで判断するのが確実です。

調べる場所 わかる価格 運営
財産評価基準書(路線価図・評価倍率表) 相続税路線価 国税庁
全国地価マップ 両方(表示を切り替える) 一般財団法人資産評価システム研究センター
路線価の数字の単位 千円単位なら相続税路線価、円単位なら固定資産税路線価 —
固定資産税の課税明細書 固定資産税評価額 市区町村

表の見方:黄色の国税庁のサイトなら表示されているのは必ず相続税路線価です。全国地価マップは両方を扱うため、どちらを表示しているか確認が必要です。「300」のように桁が少なければ千円単位の相続税路線価、「300000」なら円単位の固定資産税路線価です。

注意:薄赤の課税明細書に載っているのは固定資産税評価額です。相続税の計算にそのまま使うと、評価額を1割ほど低く見積もります。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ

相続税路線価の調べ方|国税庁のサイトで無料で確認できる

路線価を調べるのに費用も手続きもいりません。国税庁のサイトで住所から地図をたどれば、5分程度で確認できます。専門家に頼む必要もありません。

国税庁のサイトで調べる手順

もっとも確実なのが国税庁のサイトを使う方法です。都道府県から順に絞り込んで、対象の土地が面する道路を探します。

STEP1
国税庁の財産評価基準書のページを開き、亡くなった年(贈与を受けた年)を選ぶ

⬇

STEP2
都道府県を選び、「路線価図」をクリックする

⬇

STEP3
市区町村を選び、町名や丁目から該当する路線価図のページ番号を選ぶ

⬇

STEP4
地図が表示されるので、対象の土地が面している道路の数字を読む

重要ポイント:STEP1の年の選択を間違えると、別の年の路線価で計算してしまいます。最初に亡くなった年を確認してから進めてください。

注意:探している場所が見つからない場合は倍率地域である可能性があります。路線価図に載っていない地域は、別の方法で評価します。

地図で対象の土地を見つけるコツ

路線価図は地図なので、目的の場所を探すのに手間取ることがあります。目印になる建物や交差点から探すと早く見つかります。

【地図で迷わないための手順】

  • 先に住居表示を確認する|登記事項証明書の「所在」は住居表示と違うことがある
  • ページ番号で絞り込む|町名を選ぶと、その町を含む路線価図のページ番号が一覧で出る
  • 目印から探す|駅・学校・公園・大きな交差点が地図に描かれている
  • 隣のページも確認する|土地がページの境目にあると、隣の図に載っていることがある

どうしても見つからない場合は、税務署に電話で問い合わせると教えてもらえます。

重要ポイント:登記事項証明書の「所在」は地番であって住所ではありません。「○○町1丁目23番4」は地番で、郵便物が届く住所とは別の番号です。

注意:路線価図は地番で描かれていません。道路と主な建物だけが描かれた簡略な地図なので、公図と見比べながら位置を特定する必要があることもあります。

3つの調べ方の使い分け

国税庁のサイト以外にも調べる方法があります。目的によって使い分けると早く済みます。

調べ方 費用 向いている場面
国税庁のサイト 無料 相続税の計算に使う。これが公式
全国地価マップ 無料 地図が見やすい。固定資産税の路線価も同時に確認したいとき
税務署で閲覧 無料 インターネットが使えないとき。過去の年分を確認したいとき

表の見方:相続税の申告に使うなら黄色の国税庁のサイトを見てください。全国地価マップは地図が見やすいので、場所を特定するときに便利です。

過去の年分の路線価を調べる方法

数年前の相続の申告を見直すときは、亡くなった年の路線価が必要です。国税庁のサイトで見られるのは平成30年分以降です。それより前の年分は、別の方法で確認します。

知りたい年分 調べ方 費用
平成30年分〜令和8年分 国税庁の財産評価基準書で年分を選ぶ 無料
平成29年分以前 税務署で閲覧する。図書館で冊子を閲覧できる場合もある 無料

重要ポイント:申告から5年以内なら、更正の請求で払いすぎた相続税を取り戻せます。見直すときは、申告した年ではなく亡くなった年の路線価図を開いてください。

私道にしか接していない土地は特定路線価を申請する

路線価図に載っていない私道にしか接していない土地があります。この場合は税務署に申請して、その私道の路線価を設定してもらいます。特定路線価と呼ばれる仕組みです。

土地の状況 使う価格 手続き
路線価のある道路に接している 路線価図の数字 不要
路線価のない私道にしか接していない 特定路線価 税務署に申出書を提出して設定してもらう
どの道路にも接していない(無道路地) 近い路線価から計算 無道路地としての減額を適用する

表の見方:黄色の行が該当する場合、申請から回答まで1か月程度かかります。申告期限から逆算して早めに動く必要があります。

重要ポイント:特定路線価の申請は義務ではありません。近くの路線価から計算する方法もあり、どちらが有利かは土地によって変わります。判断が難しいところなので、専門家に相談する価値があります。

注意:どの道路にも接していない土地は無道路地として大幅な減額が認められます。建物が建てられないため、通常の宅地より価値が低いと評価されます。

参照元:国税庁 No.4620 無道路地の評価

特定路線価を申請するか、申請しないで旗竿地として評価するかの比べ方は、下記の記事で私道の入口からの距離別に試算しています。

路線価が付いていない地域だった場合

郊外や農村部では路線価が定められていません。この場合は固定資産税評価額に決められた倍率を掛けて評価します。倍率方式と呼ばれる方法です。

倍率も同じ国税庁のサイトで確認できます。路線価図のページで「評価倍率表」を選ぶと、地域ごとの倍率が一覧で載っています。

計算ロジック:倍率方式の評価額=固定資産税評価額×評価倍率。固定資産税評価額1,000万円で倍率1.1なら、相続税評価額は1,100万円です。補正率を掛ける必要はありません。

自分の土地がどちらの方式になるかは調べればすぐわかります。倍率方式の詳しい手順と、路線価方式との使い分けは下記の記事で解説しています。

路線価図の見方|数字・アルファベット・図形の意味

路線価図には3種類の情報が書かれています。数字は単価、アルファベットは借地権の割合、図形は地区の区分です。この3つを読めれば、路線価図は理解できます。

数字は1㎡あたりの価格(千円単位)

道路の上に書かれた数字が路線価です。単位は千円なので、1,000倍すると円になります。ここを取り違えると桁が3つずれます。

路線価図の表示 1㎡あたりの価格 100㎡の土地なら
150 15万円 1,500万円
300 30万円 3,000万円
500 50万円 5,000万円
1,200 120万円 1億2,000万円

表の見方:「300」を300円だと思うと評価額が1,000分の1になってしまいます。必ず千円単位であることを確認してください。

重要ポイント:この段階で出るのは補正を入れる前の概算です。実際の評価額は、この後の補正で下がることがほとんどです。

アルファベットは借地権の割合(A〜G)

数字の右にあるアルファベットは、その土地を借りている人の権利がどれだけあるかを示す記号です。自分名義の土地に自分で住んでいるなら気にしなくて構いません。

記号 借地権割合 土地を借りている人の評価額 土地を貸している人の評価額
A 90% 路線価の90% 路線価の10%
B 80% 路線価の80% 路線価の20%
C 70% 路線価の70% 路線価の30%
D 60% 路線価の60% 路線価の40%
E 50% 路線価の50% 路線価の50%
F 40% 路線価の40% 路線価の60%
G 30% 路線価の30% 路線価の70%

表の見方:市街地では黄色のCとDが多く見られます。「300C」なら1㎡30万円・借地権割合70%という意味です。

重要ポイント:この記号が効いてくるのは土地を人に貸している場合と、借りて建物を建てている場合だけです。自分名義の土地に自分の家が建っているなら、割合は使いません。

図形は地区の区分

数字を囲む図形にも意味があります。どの地区に当たるかで、後で使う補正率の表が変わります。見落とすと補正率を間違えます。

図形 地区区分 主な場所
六角形 ビル街地区 大都市の中心部
楕円 高度商業地区 主要駅の周辺
八角形 繁華街地区 商店街・飲食店街
円 普通商業・併用住宅地区 住宅と店舗が混在する地域
囲みなし 普通住宅地区 一般的な住宅地。もっとも多い
ひし形 中小工場地区 町工場が集まる地域
長方形 大工場地区 大規模な工場地帯

表の見方:黄色の「囲みなし」がもっとも多い区分です。住宅地なら、たいてい図形で囲まれていません。

重要ポイント:地区区分は奥行価格補正率や間口狭小補正率の表を選ぶときに使います。同じ奥行きでも、地区によって補正率が変わります。

路線価図でよく見る他の表記

数字とアルファベット以外にも表記があります。どれも見落とすと計算を誤る要素なので確認しておいてください。

表記 意味 対応
道路に矢印が付いている その区間だけ路線価が適用される範囲 矢印の範囲内かどうかを確認する
路線価が書かれていない道路 路線価が設定されていない私道など 特定路線価の申請を検討する
「地区区分」の凡例 路線価図の上部に説明がある 図形の意味を確認できる
倍率地域と書かれている 路線価が設定されていない地域 評価倍率表を使って計算する

表の見方:路線価が書かれていない道路にしか接していないときは、税務署に申し出て特定路線価を設定してもらいます。回答は申し出た人に個別に届き、路線価図には載りません。

注意:薄赤のとおり、地図全体に「倍率地域」と書かれていたら路線価では計算しません。近くに路線価があっても使わず、評価倍率表を確認してください。

図形が塗り分けられている場合

図形の一部が黒く塗られていることがあります。その方向の道路沿いだけが別の地区区分という意味です。道路の片側だけが商業地区で、反対側は住宅地区というときに使われます。自分の土地がどちら側にあるかで区分が変わるため、位置関係の確認が必要です。

注意:塗り分けの読み方は慣れが必要です。判断がつかない場合は税務署か税理士に確認してください。区分を間違えると補正率も変わり、評価額がずれます。

参照元:国税庁 財産評価基準書(路線価図の説明)

路線価から土地の相続税評価額を計算する方法

計算式そのものは単純で、路線価×面積×補正率で評価額が出ます。難しいのは補正率をどこまで拾えるかという点だけです。

基本の計算式

まずは補正を考えずに概算を出してみます。路線価に土地の面積を掛けるだけなので、電卓があれば十分です。

項目 数値 説明
路線価 30万円/㎡ 路線価図の「300」を1,000倍した金額
土地の面積 200㎡ 登記事項証明書か課税明細書で確認
概算の評価額 6,000万円 30万円×200㎡

表の見方:この6,000万円は補正を一切入れていない上限に近い金額です。実際の評価額はここから下がることがほとんどです。

重要ポイント:面積は亡くなった時点の実際の面積で評価します(財産評価基本通達8)。ふだんは登記事項証明書の「地積」を使い、実測と違う場合は実測で計算します。

土地の面積はどこで調べるか

評価に使うのは実際の面積です。手元の資料では登記事項証明書の「地積」を出発点にし、測量図があれば実測の数字を確認します。

書類 入手方法 費用 使えるか
登記事項証明書 法務局またはオンライン 480〜600円 まず確認する
固定資産税の課税明細書 毎年4〜6月に自宅へ届く 0円 概算の確認には使える
測量図 手元にあれば — 実際の面積の根拠になる
公図 法務局 450円 形状の確認に使う

表の見方:黄色の登記事項証明書が基本です。課税明細書の面積は端数処理が入っていることがあるため、課税明細書だけで計算しないでください。

重要ポイント:古い土地は、実際に測ると登記と面積が違うことがあります。実測のほうが大きければ実測で申告する必要があり、小さければ評価額が下がります。測量図があるなら確認してください。

補正率を掛けて評価額を下げる

土地の形や道路との関係で使いにくい土地は、評価額を下げられます。補正率を掛けるだけなので計算自体は簡単ですが、どの補正が使えるかの判断が難しいところです。

項目 数値 計算
路線価 30万円/㎡ —
面積 500㎡ —
奥行価格補正率 0.98 奥行きが長いため
間口狭小補正率 0.97 間口が狭いため
評価額 1億4,259万円 30万円×500㎡×0.98×0.97

表の見方:補正がなければ1億5,000万円でしたが、2つの補正で741万円下がりました。補正率は掛け算で重ねられるため、該当するものを漏らさず拾うことが大切です。

計算ロジック:30万円×500㎡=1億5,000万円が補正前の金額です。これに0.98と0.97を掛けて1億4,259万円になります。741万円の差は、相続税率20%なら約148万円の税額差です。

2つの道路に面している場合

角地など2つの道路に面する土地は、使い勝手がよいぶん評価額が上がります。どちらを正面とするかで金額が変わるため、判定が必要です。

土地のタイプ 計算 200㎡での評価額
正面と側方(角地) 正面30万×0.98+側方25万×0.03=30.15万円/㎡ 6,030万円
正面と裏面 正面30万×0.98+裏面20万×0.02=29.80万円/㎡ 5,960万円
1つの道路だけ 30万×0.98=29.40万円/㎡ 5,880万円

表の見方:薄赤の2つは加算されるため評価額が上がります。角地では150万円、裏面接道では80万円高くなる計算です。

重要ポイント:正面になるのは路線価に奥行価格補正率を掛けた金額が高いほうの道路です。路線価が高いほうとは限らないため、両方を計算して比べます。

計算ロジック:側方路線影響加算率と二方路線影響加算率は地区区分ごとに定められています。普通住宅地区なら側方0.03・二方0.02です。正面の単価に、側方や裏面の単価×加算率を足して1㎡あたりの価額を出します。

参照元:国税庁 No.4602 土地家屋の評価

正面路線の判定と3方向・4方向に道路がある土地

2つ以上の道路に面する土地では、まずどの道路を正面とするかを決めます。ここを誤ると評価額全体がずれます。正面になるのは路線価に奥行価格補正率を掛けた金額が最も大きい道路です。路線価が高いほうとは限りません。

道路 路線価 その方向の奥行き 奥行価格補正率 路線価×補正率 判定
A道路 30万円 12m 1.00 30.00万円 正面
B道路 32万円 42m 0.91 29.12万円 側方

表の見方:B道路のほうが路線価は高いのに、奥行きが長くて補正率が下がるため、A道路が正面になります。路線価だけを見て正面を決めると判定を誤ります。

重要ポイント:奥行きは道路ごとに測ります。A道路から見た奥行きとB道路から見た奥行きは別の数字です。それぞれの方向で測ってから補正率を調べてください。

道路が3方向・4方向にある場合も、加算していく考え方は同じです。正面を決めてから、残りを側方または裏面として加算します。

接している道路 1㎡あたりの価額 200㎡での評価額 1方向との差
1方向(正面のみ) 30.00万円 6,000万円 —
2方向(正面+側方) 30.75万円 6,150万円 +150万円
3方向(正面+側方2つ) 31.35万円 6,270万円 +270万円
4方向(+裏面) 31.65万円 6,330万円 +330万円

表の見方:接する道路が増えるほど評価額は上がります。4方向に接する土地では330万円高くなる計算です。使い勝手がよいぶん価値が高いと評価されます。

計算ロジック:普通住宅地区では側方路線影響加算率0.03、二方路線影響加算率0.02です。正面30万円×1.00に、側方25万円×0.03=0.75万円、側方20万円×0.03=0.60万円、裏面15万円×0.02=0.30万円を足していきます。

注意:加算率は地区区分で変わります。繁華街地区なら側方0.10、ビル街地区なら0.07など、住宅地より大きく設定されています。地区区分を先に確認してください。

評価額から相続税額までを計算してみる

土地の評価額が出たら、遺産の総額に足して相続税を計算します。土地だけで判定するのではなく、預貯金なども合わせた合計で判断します。

土地の評価額 その他の財産 課税価格 相続税の総額
6,000万円(補正なし) 1,000万円 7,000万円 320万円
5,880万円(補正あり) 1,000万円 6,880万円 302万円
4,000万円 1,500万円 5,500万円 130万円
3,000万円 2,000万円 5,000万円 80万円

表の見方:相続人が子2人・基礎控除4,200万円の場合です。補正で120万円下げただけで、税額が18万円変わります。補正の効果は評価額の差だけでなく、税額の差として表れます。

計算ロジック:課税価格から基礎控除4,200万円を引き、法定相続分で2人に分けて税率を掛け、合計します。7,000万円−4,200万円=2,800万円を1,400万円ずつに分け、税率15%・控除額50万円で各160万円、合計320万円です。

重要ポイント:自宅の土地なら小規模宅地等の特例で評価額を8割減らせます。土地6,000万円が1,200万円になり、課税価格は2,200万円で相続税は0円です。補正より効果が大きい制度です。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ

評価額を下げられる補正の種類

補正はここまでに出てきたもの以外にも数多くあります。該当するものを拾えるかどうかで、評価額が大きく変わります。まずどんな補正があるかを知り、自分の土地に当てはまるものを探してください。

土地の形による補正

もっとも使う機会が多いのがこの分類です。形がいびつ・間口が狭い・奥行きが極端といった土地が対象になり、整形地でないなら一度は確認する価値があります。

補正の種類 対象になる土地 減額の目安
奥行価格補正 奥行きが長すぎる、または短すぎる土地 数%〜20%
不整形地補正 形がいびつで使いにくい土地 最大40%
間口狭小補正 道路に接する幅が狭い土地 数%〜10%
奥行長大補正 奥行きが間口の2倍以上ある土地 数%〜10%
がけ地補正 通常の用途に使えない斜面がある土地 最大47%
特別警戒区域補正 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に入っている土地 最大30%

表の見方:黄色の2つが金額への影響が大きい補正です。不整形地補正だけで最大4割下がります。旗のような形の土地や、三角形に近い土地は必ず確認してください。

重要ポイント:これらは掛け算で重ねられます。奥行価格補正0.90と不整形地補正0.80が両方使えれば、0.72まで下がります。

補正率はどこで調べるか

補正率は国税庁が表で定めています。地区区分と、奥行きや間口の数値を当てはめれば決まります。

STEP1
国税庁の財産評価基準書で、路線価図と同じ年分の「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」を開く

⬇

STEP2
路線価図で確認した地区区分を選ぶ

⬇

STEP3
土地の奥行きの長さを測り、奥行価格補正率表から該当する数字を読む

⬇

STEP4
間口や形状に該当があれば、間口狭小・奥行長大・不整形地の各表からも読む

重要ポイント:同じ奥行きでも地区区分が違えば補正率も変わります。普通住宅地区と繁華街地区では、有利な奥行きの範囲が異なります。

注意:不整形地補正は地区区分・面積・かげ地割合の3つを組み合わせて決まるため、他の補正より計算が複雑です。かげ地割合の計算から必要になります。

参照元:国税庁 No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価

道路や周辺の状況による補正

土地の形が整っていても減額できることがあります。道路との高低差や、周辺の環境が理由になるためです。

補正の種類 対象になる土地 減額の目安
セットバックが必要な土地 道路の幅が4m未満で、建て替え時に敷地を後退させる必要がある 後退部分の評価額の70%
都市計画道路の予定地 将来道路になることが決まっている区域内 1%〜50%(住宅地は最大20%)
利用価値が著しく低下している宅地 道路と高低差がある、騒音・振動・悪臭が著しい 10%
地積規模の大きな宅地 三大都市圏で500㎡以上など 規模に応じた補正

表の見方:黄色の行が見落とされやすい補正です。道路より1m以上低い土地や、線路沿いの土地は10%減額できる可能性があります。現地を見ないと気づけないため、図面だけの評価では拾えません。

注意:これらの補正は自動的には適用されません。自分で該当を主張し、根拠を示して申告する必要があります。

セットバックが必要な土地の計算例

道路の幅が4m未満だと、建て替えのときに敷地を後退させる必要があります。後退する部分は評価額を7割減らせます。

項目 数値 計算
路線価 30万円/㎡ —
土地の面積 200㎡ —
セットバックが必要な面積 10㎡ 道路の幅が3mで、0.5m後退が必要
通常部分の評価額 5,700万円 30万円×190㎡
後退部分の評価額 90万円 30万円×10㎡×0.3
合計の評価額 5,790万円 補正なしなら6,000万円(△210万円)

表の見方:後退する10㎡の部分が300万円から90万円まで下がります。面積は小さくても、実際の減額は210万円になります。

重要ポイント:自分の家の前の道路が4m未満かどうかを一度測ってみてください。古い住宅地では、4m未満の道路が今も多く残っています。

計算ロジック:道路の中心から2mまで後退する必要があるため、幅3mの道路なら片側0.5mずつが対象です。後退部分は将来道路になるため、評価額の30%だけを計上します。

土地の使い方による評価減

人に貸している土地や、アパートを建てている土地は評価が下がります。自分で自由に使えない分だけ減額されるという考え方によるものです。

土地の使い方 評価の考え方 減額の目安
自分で使っている(自用地) 路線価×面積×補正率 減額なし
人に貸している(貸宅地) 自用地の評価額×(1−借地権割合) 30%〜90%
アパートの敷地(貸家建付地) 自用地×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合) 15%〜25%程度
借りている土地(借地権) 自用地の評価額×借地権割合 —(借りている側の財産になる)

表の見方:黄色の貸宅地がもっとも下がります。借地権割合70%の地域なら、評価額は自用地の30%です。

重要ポイント:使い方による減額と、形による補正は両方を重ねて使えます。形が悪いうえに貸している土地なら、両方を適用します。

参照元:国税庁 No.4611 借地権の評価

補正より効果が大きい小規模宅地等の特例

補正で評価額を下げるより、はるかに効果が大きい制度があります。自宅の土地なら330㎡まで評価額を80%減らせます。

方法 減額の割合 適用の条件 申告
土地の形による補正 数%〜40% 形がいびつ・間口が狭いなど 不要
周辺の状況による補正 1%〜50% 高低差・騒音など 不要
小規模宅地等の特例(自宅) 80% 配偶者・同居親族などが相続すること 必要
小規模宅地等の特例(貸付用) 50% アパートなどの敷地 必要

表の見方:黄色の行が圧倒的に効きます。形の補正は多くても数割程度なのに対し、こちらは8割です。まずこの制度が使えるかを確認してください。

重要ポイント:両方を重ねて使えます。補正で評価額を下げてから、さらに8割減を適用する順番です。ただし8割減は申告書を出さないと使えません。

誰が相続すれば使えるかと、区分ごとの要件は下記の記事で解説しています。

貸している土地・借りている土地の計算例

借地権割合を使う場面を実際の数字で確認します。貸している側と借りている側で、評価額が分かれます。

立場 計算 評価額
自分で使っている(自用地) 30万円×200㎡ 6,000万円
人に貸している(貸宅地・C=70%) 6,000万円×(1−0.7) 1,800万円
借りて家を建てている(借地権) 6,000万円×0.7 4,200万円
アパートの敷地(貸家建付地・借家権30%・満室) 6,000万円×(1−0.7×0.3×1.0) 4,740万円

表の見方:黄色の2つを足すと6,000万円になります。土地の価値が、貸している人と借りている人に分かれているためです。

重要ポイント:借りている側も借地権という財産を相続します。建物の名義が亡くなった人なら、土地の権利も相続財産に含めてください。

計算ロジック:路線価図で「300C」なら借地権割合は70%です。貸宅地は自用地×(1−借地権割合)、借地権は自用地×借地権割合で計算します。貸家建付地はさらに借家権割合30%と賃貸割合を掛けて減額します。

参照元:国税庁 No.4611 借地権の評価

自分の土地にどの補正が使えるかは、条件を一つずつ当てはめて判断します。補正の全体像とチェックリストは、下記の記事で解説しています。

評価額が時価を上回るとき|鑑定評価で申告できる

路線価は公示地価の8割程度に定められますが、土地によっては実際に売れる価格のほうが低いことがあります。路線価で出した評価額が時価を上回るときは、不動産鑑定士の鑑定評価額で申告できます。

状況 路線価による評価額 鑑定評価額 相続税率20%での税額差
再建築できない・極端に細長いなど売りにくい土地 4,000万円 2,800万円 約240万円
整形地で道路にも普通に接している土地 4,000万円 5,000万円 鑑定は不利なので使わない

計算ロジック:(4,000万円−2,800万円)×20%=約240万円です。鑑定には費用がかかるため、税額の差が鑑定の報酬を上回るかを先に見積もります。

重要ポイント:逆に、路線価による評価額が時価より極端に低く、相続直前の借入れで不動産を買ったような場合は、時価で評価し直されることがあります(財産評価基本通達6項、最高裁令和4年4月19日判決)。

同じ土地でも計算する人によって評価額が変わる

路線価そのものは誰が見ても同じ数字です。しかし最終的な評価額は、計算する人によって変わります。補正をどこまで拾うかに差が出るためです。

なぜ差が生まれるのか

路線価と面積は誰が計算しても同じです。差がつくのは補正の部分だけで、ここは自分で該当を見つけて主張する必要があります。

計算の要素 人による差 理由
路線価 差は出ない 国税庁が公表した数字を使う
面積 差が出ることがある 登記と実測が違えば実測で評価する
土地の形による補正 大きく差が出る どこまで細かく測るかで変わる
周辺の状況による補正 大きく差が出る 現地を見ないと気づけない
土地の使い方による減額 差が出る 契約内容の確認が必要

表の見方:薄赤の3つが差の原因です。税務署は「もっと減額できますよ」とは教えてくれません。自分で該当を見つけて申告しない限り、補正は適用されません。

重要ポイント:多く申告してしまっても税務署から指摘されることはまずありません。足りない場合だけ指摘されるため、払いすぎに気づきにくい構造です。

補正を重ねるとどれだけ変わるか

同じ土地を3段階で計算してみます。補正を拾うほど評価額が下がります。

計算のしかた 評価額 概算との差 相続税率20%での税額差
路線価×面積だけ 1億5,000万円 — —
奥行価格補正と間口狭小補正を適用 1億4,259万円 △741万円 約148万円
さらに不整形地補正を適用 1億2,833万円 △2,167万円 約433万円

表の見方:薄赤の行は補正を1つも使っていない状態です。黄色まで拾えれば税額が約433万円変わります。同じ土地・同じ路線価でも、これだけの幅があります。

計算ロジック:【前提】路線価30万円・面積500㎡・普通住宅地区。奥行価格補正0.98、間口狭小補正0.97、不整形地補正0.90を順に適用しています。30万円×500㎡×0.98×0.97×0.90=1億2,833万円です。

注意:補正率は土地ごとに違います。この例の数字をそのまま自分の土地に当てはめないでください。実際の測量図と地区区分から、該当する補正率を確認する必要があります。

過去の申告も見直せる

すでに申告を終えていても取り戻せる場合があります。申告期限から5年以内なら、更正の請求で還付を受けられます。

確認
過去の申告書を見て、土地の評価に補正が使われているかを確認する。路線価×面積だけで計算されていたら見直しの余地がある

⬇

調査
土地の形状・道路との関係・周辺の状況を確認する。現地の調査が必要になることが多い

⬇

請求
根拠をそろえて更正の請求書を提出する。期限は申告期限から5年以内

⬇

還付
認められれば納めすぎた相続税が還付される

重要ポイント:税務署から「納めすぎです」と連絡が来ることはありません。自分で気づいて請求しない限り、そのままになります。

注意:5年を過ぎると請求できません。相続から4年以上経っている場合は早めに確認してください。

現地を見ないと拾えない補正がある

図面だけでは気づけない減額の要素があります。道路との高低差や周辺の環境は、現地に行かないとわかりません。

【現地でしか確認できない主な減額の要素】

  • 道路との高低差|道路より1m以上高い、または低い土地は10%減額できることがある
  • 騒音・振動|線路沿いや幹線道路沿いで、周辺と比べて明らかに条件が悪い場合
  • 日照・眺望の阻害|隣接する建物で著しく条件が悪い場合
  • 実際の間口と奥行き|登記の形状と現況が違うことがある
  • 私道の負担|敷地の一部が通路として使われている場合

いずれも「周辺の土地と比べて著しく低い」ことが要件になります。

重要ポイント:これらは写真や測量図などの根拠を添えて申告します。主張するだけでは認められないため、記録を残しておくことが必要です。

土地の評価を下げる方法を財産の種類ごとに整理した記事は、下記のとおりです。

路線価の計算でつまずきやすいポイント

自分で計算するときに間違えやすい箇所があります。どれも結果が大きくずれる原因なので、申告の前に確認しておいてください。単位の読み違いや年分の取り違えは、経験のある人でも起こします。

数字の読み方でつまずくケース

単位や年分の取り違えが最も多い失敗です。桁が3つずれる、別の年で計算するといった致命的なミスにつながります。事例1:路線価図の「300」を300円と読み、200㎡の土地を6万円と評価した。正しくは30万円×200㎡で6,000万円だった。

対策:路線価図の数字は必ず1,000倍する。概算が明らかに安すぎる・高すぎる場合は単位を疑う。事例2:申告する年の路線価図を見て計算していた。正しくは亡くなった年の路線価で、1年分ずれていた。

対策:最初に亡くなった年を確認し、その年分の路線価図を開く。国税庁のサイトは最新年が初期表示になるため、年の選択を忘れやすい。

  • □ 路線価図の年分が亡くなった年になっているか確認した
  • □ 数字を1,000倍して円に直した
  • □ 面積は登記の地積と実測が合っているか確認した
  • □ 地区区分(図形)を確認した
  • □ 2つ以上の道路に面していないか確認した
  • □ 路線価が付いていない地域でないか確認した

重要ポイント:路線価が見つからない場合は倍率地域である可能性があります。無理に近くの道路の路線価を使わず、評価倍率表を確認してください。

概算と実際の評価額はどれくらい違うか

自分で出した概算と、専門家が計算した評価額には差が出ます。どちらが正しいかではなく、拾えた補正の数の違いです。

土地の状態 概算との差の目安 主な理由
整形地で道路も普通 ほとんど差が出ない 使える補正が少ない
奥行きが長い・間口が狭い 5%前後 奥行価格補正・間口狭小補正
形がいびつ(旗竿地・三角形) 10%〜30% 不整形地補正
道路と高低差がある・線路沿い 10%前後 利用価値が著しく低下している宅地
道路が4m未満・私道負担がある 10%〜20% セットバック・私道の評価

表の見方:黄色の行なら概算のままで大きくずれません。薄赤の3つに当てはまるなら、専門家に見てもらう価値があります。

重要ポイント:判断の目安は土地が四角く、道路に普通に接しているかどうかです。そうでないなら、概算と実際の評価額には差が生まれます。

共有の土地・複数の土地がある場合

相続する土地が1つとは限らず、共有なら持分の割合だけ、複数あるなら1つずつ評価します。

状況 評価のしかた 注意点
共有している土地 土地全体を評価してから持分を掛ける 持分で分けてから評価するのではない
隣接する2筆の土地 一体として利用していれば合わせて評価 登記が分かれていても使い方で判断する
離れた場所の複数の土地 1つずつ別々に評価 それぞれ路線価図を確認する
自宅と隣の駐車場 用途が違えば別々に評価 小規模宅地の区分も変わる

表の見方:黄色の共有地は順番が大切です。先に土地全体を評価し、最後に持分を掛けます。持分で面積を割ってから評価すると、補正率が変わって結果がずれます。

重要ポイント:薄赤のように用途が違う土地は小規模宅地等の特例でどちらを選ぶかの判断も必要になります。自宅は80%減、駐車場は50%減で面積の上限も違います。

共有名義の不動産の評価と、共有を解消する方法は下記の記事で解説しています。

補正の適用でつまずくケース

補正は自分で見つけて主張するものです。該当するのに使わなければ、そのぶん多く納税することになります。事例3:土地が旗のような形をしていたが、不整形地補正を使わずに申告した。後から気づいたときには申告期限を過ぎていた。

対策:整形地でないなら、必ず不整形地補正の該当を確認する。期限後に気づいた場合でも、5年以内なら更正の請求で取り戻せる。

事例4:角地なのに正面をどちらにするか判定せず、路線価が高いほうを正面として計算した。奥行価格補正を掛けると反対側のほうが高く、評価額がずれていた。対策:両方の道路で「路線価×奥行価格補正率」を計算して比べる。大きいほうが正面になる。

重要ポイント:多く納めすぎた場合は申告期限から5年以内なら更正の請求で還付を受けられます。気づいた時点で手遅れとは限りません。

納めすぎた相続税を取り戻す手続きは、下記の記事で解説しています。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ

相続税路線価での土地の評価は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

路線価を調べるところまでは誰でもできます。差がつくのは、そこから先の補正をどこまで拾えるかです。同じ土地でも、税理士によって評価額に数千万円の差が出ることがあります。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

土地の評価は該当する減額を自分で見つけて主張する仕組みです。税務署が教えてくれることはありません。

【相続税の対応実績がある税理士に依頼する理由】

  • 現地を見て減額の要素を拾える|道路との高低差・騒音・私道の負担など、図面ではわからない条件を確認する
  • 補正率を漏れなく適用できる|奥行・不整形・間口・がけ地などを重ねて適用し、評価額を下げる
  • 正面路線の判定を正しくできる|角地で判定を誤ると評価額がずれる
  • 根拠を残した申告ができる|写真や測量図を添えて、後から否認されないようにする
  • 払いすぎに気づける|過去の申告を見直し、5年以内なら還付を受けられる

具体例で見てみます。路線価30万円・面積500㎡の土地で、A税理士は路線価×面積の1億5,000万円で申告しました。

B税理士は奥行・間口・不整形の3つの補正を適用して1億2,833万円と評価しました。評価額の差は2,167万円、相続税率20%なら税額で約433万円の差です。報酬の差を大きく上回ります。

複数の税理士に相談するメリット

土地の評価では、確認の仕方に事務所ごとの差が出ます。次の3つを比べれば実務力が見えます。

判定ポイント1:現地を見るかどうか|図面だけで評価する事務所と、現地で高低差や道路の状況を確認する事務所があります。→ 現地を見る事務所のほうが、減額の要素を拾えます。

判定ポイント2:見積りに土地の評価が明記されているか|「相続税申告一式」とだけ書かれた見積りか、土地の評価を別項目で示す見積りか。→ 後者のほうが、評価に時間をかける前提だと判断できます。

判定ポイント3:書面添付に対応しているか|評価の根拠を書面で税務署に示す制度に対応しているかを確認します。→ 対応している事務所のほうが、評価に自信があり調査のリスクも下がります。

見積りを取るだけなら費用はかかりません。3〜5の事務所に同時に打診して、評価額と提案内容を横に並べて比べてください。

相談しないまま進めるリスク

土地の評価を自分だけで済ませると、気づかないまま多く納税している状態になりがちです。

【相談しないまま進めた場合に起きること】

  • 補正を使わずに申告する|該当するのに気づかず、本来より高い評価額で納税する
  • 現地の条件を拾えない|道路との高低差や騒音による10%減額を見落とす
  • 正面路線を誤る|角地の判定を間違えて評価額がずれる
  • 年分や単位を間違える|桁がずれたまま申告し、後から修正申告になる
  • 払いすぎに気づかない|税務署は多い分を指摘しないため、5年の期限を過ぎてしまう

どれも申告する前に相談していれば避けられるものです。評価額は一度申告すると、修正に手間がかかります。

依頼した場合の費用対効果

税理士に依頼すると報酬がかかります。土地の評価では、報酬を上回る減額が出ることが珍しくありません。

土地の状態 想定される減額 税額の差(税率20%) 報酬との比較
整形地で条件が良い ほぼなし 0円 報酬分が持ち出しになる
奥行きが長い・間口が狭い 5%前後 数十万円 報酬と同程度
形がいびつ 10%〜30% 数百万円 報酬を大きく上回る
高低差・私道負担がある 10%〜20% 数百万円 報酬を大きく上回る

表の見方:薄赤の2つに当てはまるなら依頼したほうが手元に残る金額が多くなります。黄色の場合は、申告そのものの手間をどう考えるかで判断してください。

重要ポイント:見積りの段階でどれくらい減額できそうかを聞いてみるのが確実です。現地や図面を見ずに答えられる事務所なら、その程度の評価しかしないということです。

相続税申告の税理士報酬の相場と、見積書の見方は下記の記事で解説しています。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

見積りを集めて比べる流れは4段階です。フォームの記入は5分程度で終わります。

STEP1
相続の概要を整理する
亡くなった人の資産の内容と概算額、相続人の構成と年齢、遺言の有無を書き出す。土地の所在地・面積・登記事項証明書を手元に用意する

⬇

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する
希望内容として「相続税申告・土地の評価・準確定申告」などを明記し、3〜5の事務所への同時打診を依頼する。土地の所在地と広さ、形が整っているかどうかを必ず記載する。財産の種類と相続人の人数はできるだけ正確に伝える

⬇

STEP3
見積りと初回相談を受ける
各事務所から提案内容・試算した相続税額・報酬額が届く。気になる事務所と初回相談を行い、土地の評価をどう進めるか、現地を見るかを確認する

⬇

STEP4
税理士を選定して正式に依頼する
提案内容の質・説明の丁寧さ・報酬の納得性で選ぶ。相続開始から7か月以内に決めれば、申告期限まで余裕を持って進められる

重要ポイント:土地がある相続では相続開始から7か月以内に依頼先を決めてください。評価には現地確認や役所での調査が必要で、時間がかかります。

よくある質問

Q1. 路線価はいつ発表されますか?

毎年7月1日ごろに、その年の1月1日時点の価格が公表されます。国税庁のサイトで無料で確認でき、過去の年分も引き続き閲覧できます。使うのは亡くなった年の路線価です。1月から6月に亡くなった場合は、7月の公表を待たないと正確な計算ができません。

Q2. 相続税路線価と固定資産税路線価は何が違いますか?

決める人と金額の水準が違います。相続税路線価は国税庁が定め公示価格の約8割、固定資産税評価額は市区町村が定め公示価格の約7割が目安です。

相続税の計算に使うのは相続税路線価です。毎年届く固定資産税の課税明細書に載っている評価額をそのまま使うと、評価額を1割ほど低く見積もることになります。

Q3. 路線価図の「300C」はどういう意味ですか?

「300」は1㎡あたり30万円という意味です。路線価図の数字は千円単位なので、1,000倍すると円になります。

「C」は借地権割合が70%であることを示します。この記号が効いてくるのは土地を貸している場合と借りている場合だけで、自分名義の土地に自分の家が建っているなら使いません。

Q4. 路線価が付いていない地域はどうすればいいですか?

倍率方式で計算します。固定資産税評価額に、国税庁が定めた倍率を掛けるだけです。倍率は路線価図と同じページの「評価倍率表」で確認できます。

倍率方式では、土地の形による補正率は原則として掛けません。固定資産税評価額の時点で形などが反映されているためです。ただし地積規模の大きな宅地の評価などは、倍率地域でも使えることがあります。

Q5. 自分で計算した評価額で申告してもいいですか?

できます。ただし補正を使わずに計算すると、本来より高い評価額で申告することになります。税務署は多く納めた分を指摘しないため、払いすぎに気づけません。

土地の形が整っていない、角地である、道路と高低差があるといった場合は税理士に相談する価値があります。多く納めていた場合でも、申告期限から5年以内なら更正の請求で還付を受けられます。

まとめ

路線価を調べること自体は誰でもできます。評価額の差が生まれるのは、そこから先の補正をどこまで拾えるかです。

  • 相続税路線価は公示価格の約8割が目安。固定資産税評価額(約7割)とは別物
  • 使うのは亡くなった年の路線価。毎年7月1日ごろに公表される
  • 路線価図の数字は千円単位、アルファベットは借地権割合、図形は地区区分
  • 計算式は路線価×面積×補正率。路線価×面積は出発点にすぎない
  • 土地の形・道路との関係・使い方で評価額を下げられる
  • 補正は自分で見つけて主張するもの。税務署は多く納めた分を指摘しない
  • 路線価30万円・500㎡の土地なら、補正の有無で評価額が2,167万円変わる
  • 多く納めていた場合は申告期限から5年以内なら還付を受けられる

もっとも損をしやすいのは、路線価×面積だけで計算して申告してしまうことです。該当する補正を使わなければ、そのぶん多く納税することになります。

今すぐ取るべき行動

  • 国税庁の財産評価基準書で、亡くなった年の路線価図を開く
  • 対象の土地が面する道路の数字・アルファベット・図形を読む
  • 登記事項証明書で土地の面積と形を確認する
  • 路線価×面積で概算を出し、遺産の総額と基礎控除を比べる
  • 土地の形が整っていない・角地・道路と高低差があるなら補正の該当を確認する
  • 判定に迷う場合は、相続税の対応実績がある税理士へ相談する

※本記事は2026年10月時点の法令に基づいて作成しています。相続税法・財産評価基本通達の改正により内容が変わる場合があります。最新の制度については国税庁のウェブサイトまたは税理士にご確認ください。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!