相続時精算課税制度とは?2,500万円の枠と使うべきケース・避けるべきケースを解説

相続時精算課税制度

相続時精算課税は、2,500万円まで贈与税をかけずに財産を渡せる制度です。60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与で使えます。

2024年1月から、年110万円の基礎控除が新設されました。この110万円は毎年使えて、しかも相続財産に加算されません。

一方の暦年課税は、亡くなる前7年以内の贈与が加算されます。110万円以下でも加算されるため、有利不利が逆転しました。

ただし注意点があります。一度選ぶと、その人からの贈与は暦年課税に戻せません。撤回もできません。

最も避けたいのは、自宅の土地を精算課税で贈与することです。小規模宅地等の特例が使えなくなり、大きな損失になります。

また2024年から、災害で被害を受けた土地建物の加算額を減らせる特例ができました。値下がりリスクの救済策です。

本記事では、制度の仕組みと計算、暦年課税との比較、使うべきケースと避けるべきケース、災害特例、手続き、選んだ後にできることを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 2,500万円まで贈与税ゼロ。2024年から年110万円の基礎控除が加わり、この分は相続財産に加算されない
  • 一度選ぶとその贈与者からは暦年課税に戻せない。自宅の土地は小規模宅地等の特例が使えなくなる
  • 贈与者ごとに選べるため、父は精算課税・母は暦年課税という組み合わせは可能
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結論|2,500万円まで贈与税がかからない制度

まず制度の全体像をお伝えします。累計2,500万円までの贈与に贈与税がかからず、超えた分にも一律20%しかかかりません

制度の全体像

相続時精算課税は「贈与のときは軽く、相続のときに精算する」仕組みです。2,500万円の特別控除に加えて、2024年から年110万円の基礎控除が使えます

項目 内容
特別控除 累計2,500万円(複数年にわたって使える)
基礎控除 年110万円(2024年1月1日以後の贈与から・毎年使える)
超えた分の税率 一律20%
相続のとき 贈与時の価額で相続財産に加算する(110万円の基礎控除分は加算しない)
払った贈与税 相続税から差し引き、超える分は還付される
撤回 できない(その贈与者からは暦年課税に戻せない)

重要ポイント:制度の本質は「非課税」ではなく「先送り」です。2,500万円の特別控除を使った分は、相続のときに必ず加算されます

ただし年110万円の基礎控除だけは例外です。この分は相続財産に加算されず、そのまま非課税で移転できます。

誰が使えるか|要件の一覧

年齢と関係の要件があります。判定は「贈与を受けた年の1月1日」時点の年齢で行うため、誕生日前でも年齢に達していなければ使えません

要件 内容
贈与する人 贈与した年の1月1日に60歳以上の父母または祖父母など
贈与を受ける人 贈与を受けた年の1月1日に18歳以上で、贈与者の直系卑属である推定相続人または孫
対象になる財産 制限なし(現金・不動産・株式など何でもよい)
金額の下限 なし(110万円以下でも選択できる)
回数の制限 なし(何回でも使える)

「直系卑属である推定相続人または孫」なので、子の配偶者や兄弟姉妹は使えません。婿や嫁への贈与には使えない点に注意してください

参照元:国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

2024年改正で何が変わったか

2024年1月1日以後の贈与から、年110万円の基礎控除が新設されました。この110万円以下の贈与なら、贈与税の申告も必要ありません

項目 2023年まで 2024年以後
基礎控除 なし 年110万円
110万円以下の贈与の申告 必要 不要
110万円以下の贈与の相続財産への加算 加算する 加算しない
特別控除 2,500万円 2,500万円(変更なし)

改正前は、1万円の贈与でも申告が必要でした。少額の贈与ごとに申告する負担が大きく、使いにくい制度でした。

改正後は年110万円までなら申告も不要です。使い勝手が大きく改善し、選択する人が増えています

相続税がかかるかどうかで意味が変わる

この制度の評価は、家庭の財産規模で正反対になります。相続税がかからない家庭なら「無税でまとめて渡せる制度」、かかる家庭なら「先送りの制度」です

財産の総額 精算課税の意味
基礎控除以下(相続税0円) 2,500万円を無税でまとめて渡せる。払った贈与税も全額還付される
基礎控除を少し超える 渡した分に相続税がかかるが、税率は低い
基礎控除を大きく超える 先送りにすぎない。値上がり資産でなければ効果が薄い

基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。相続人が2人なら4,200万円以下なら相続税はかかりません

まずは自分の家庭に相続税がかかるかを確認してください。かからないなら、精算課税は使いやすい制度になります。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

2024年改正で暦年課税との有利不利が逆転した

改正で最も大きいのは加算の扱いです。精算課税の110万円は加算されないのに、暦年課税の110万円は7年分が加算されるという逆転が起きました

110万円以下は相続財産に加算されない

暦年課税では、亡くなる前7年以内の贈与が相続財産に加算されます。年110万円以下で贈与税がかからなかった分も、加算の対象です

一方、精算課税の年110万円の基礎控除分は加算されません。同じ110万円を渡しても、扱いが正反対になります。

【暦年課税の場合】

年110万円ずつ渡しても、亡くなる前7年以内の分は相続財産に戻されます。7年分770万円が加算対象です。

【相続時精算課税の場合】

年110万円の基礎控除内なら、何年前の贈与でも加算されません。前日の贈与でも加算対象外です。

これは2024年改正でできた新しい構図です。「暦年課税のほうが有利」という古い常識は、110万円以下の贈与では通用しなくなりました

毎年110万円を10年贈与した場合の比較

具体的な数字で比べます。相続税の税率が30%の家庭なら、精算課税を選んだほうが231万円の差になります

項目 暦年課税 相続時精算課税
10年間の贈与額 1,100万円 1,100万円
贈与税 0円 0円
相続財産への加算 直近7年分770万円 0円
加算による相続税の増加(税率30%) 231万円 0円

計算ロジック:暦年課税では110万円×7年=770万円が相続財産に加算されます。相続税の税率が30%なら770万円×30%=231万円の負担増です。精算課税なら加算がないため0円です。

10年より長く贈与できるなら、暦年課税でも7年より前の分は加算されません。分かれ目は「あと何年贈与を続けられるか」です

加算の期間については、下記の記事で解説しています。

7年以内に相続が起きた場合の比較

高齢の親から贈与を受ける場合は、差がさらに大きくなります。贈与から3年後に相続が起きたケースでは、暦年課税の贈与はすべて加算されます

贈与から相続までの年数 暦年課税で加算される額 精算課税で加算される額
1年(110万円×1回) 110万円 0円
3年(110万円×3回) 330万円 0円
5年(110万円×5回) 550万円 0円
7年(110万円×7回) 770万円 0円
10年(110万円×10回) 770万円(直近7年分) 0円

表の見方:暦年課税は年数が短いほど不利になります。10年以上続けられるなら差は縮まりますが、7年以内に相続が起きると効果がほぼ消えます

親が80代なら、7年以上贈与を続けられる保証はありません。高齢の親からの贈与では、精算課税を選ぶほうが確実です

なお暦年課税の加算対象期間は、2024年からの贈与について段階的に7年へ延びます。2026年時点で亡くなった場合の対象は3年分です。

暦年課税との比較表

2つの制度を並べて整理します。大きく違うのは「加算の有無」「税率」「撤回できるか」の3点です

項目 暦年課税 相続時精算課税
非課税枠 年110万円 累計2,500万円+年110万円
税率 10〜55%の累進 一律20%
相続財産への加算 亡くなる前7年以内の贈与 特別控除を使った分すべて(110万円分は除く)
贈与者・受贈者の要件 なし(誰から誰へでもよい) 60歳以上から18歳以上の子・孫へ
届出 不要 選択届出書の提出が必要
撤回 できない
小規模宅地等の特例 贈与財産には使えない 贈与財産には使えない

暦年課税の詳細は、下記の記事で解説しています。

贈与税の計算方法

計算は3段階です。「贈与額-110万円-特別控除の残額」に20%をかけます

計算の順番

基礎控除を先に引き、その後で特別控除を使います。2,500万円を贈与した場合、110万円を引いた2,390万円が特別控除の対象です

段階 計算
①基礎控除 贈与額-110万円
②特別控除 ①-特別控除の残額(上限2,500万円)
③税額 ②×20%

【例】1年目に2,500万円を贈与した

2,500万円-110万円=2,390万円。特別控除2,500万円のうち2,390万円を使い、贈与税は0円です。残りの特別控除は110万円です。

【2年目に1,000万円を贈与した】

1,000万円-110万円=890万円。特別控除の残り110万円を使い、780万円に20%をかけて156万円の贈与税がかかります。

基礎控除110万円は毎年リセットされます。特別控除は累計2,500万円で使い切りですが、110万円は何年でも使えます

この違いは重要です。特別控除は一度使うと戻らない一方、基礎控除は使い切っても翌年また110万円分が復活します。

長期で見ると、基礎控除のほうが効果が大きくなることもあります。20年続けられるなら110万円×20年=2,200万円が相続財産に加算されずに移転します

特別控除2,500万円は相続時に加算されますが、基礎控除分は加算されません。節税効果があるのは基礎控除のほうだと理解しておいてください

2,500万円を渡す場合の比較

2,500万円をまとめて渡すなら、精算課税が圧倒的に有利です。暦年課税なら810万5,000円かかる贈与税が、精算課税なら0円になります

贈与額 暦年課税(特例税率) 相続時精算課税
300万円 19万円 0円
500万円 48万5,000円 0円
1,000万円 177万円 0円
2,000万円 585万5,000円 0円
2,500万円 810万5,000円 0円
3,000万円 1,035万5,000円 78万円

計算ロジック:暦年課税は「贈与額-110万円」に特例税率をかけます。3,000万円なら課税額2,890万円×45%-265万円=1,035万5,000円です。精算課税は3,000万円-110万円-2,500万円=390万円に20%で78万円です

注意:この表は「贈与のときにかかる税金」だけの比較です。精算課税で特別控除を使った分は、相続のときに必ず加算されます。目先の贈与税が0円でも、相続税が増える可能性がある点を忘れないでください。

参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

不動産を贈与するときの評価

不動産は相続税評価額で計算します。時価ではなく、土地は路線価、建物は固定資産税評価額を使うため、市場価格より低くなるのが一般的です

財産 評価の方法
土地(自用地) 路線価方式または倍率方式
土地(貸家が建っている) 貸家建付地として評価減できる
建物(自用) 固定資産税評価額
建物(賃貸中) 固定資産税評価額×(1-借家権割合30%×賃貸割合)
上場株式 贈与日の終値など4つのうち最も低い額

賃貸物件なら評価減が使えます。評価減後の低い価額で固定されるため、収益物件は精算課税に向いています

注意:借金付きの不動産を渡す負担付贈与では、相続税評価額ではなく通常の取引価額(時価)で評価します。評価額が大きく上がるため、精算課税の枠をすぐに使い切ることになります。ローンが残る物件を渡すなら、完済してからにしてください。

参照元:国税庁 No.4602 土地家屋の評価

110万円は贈与者が複数だと按分される

見落としやすいのが基礎控除の按分です。父と母の両方から精算課税で贈与を受けても、基礎控除は合計で110万円です

1人あたり110万円ではありません。贈与を受けた金額の割合で按分します。

【例】父から300万円・母から200万円を精算課税で受けた

合計500万円に対する基礎控除は110万円です。父分は110万円×300/500=66万円、母分は110万円×200/500=44万円になります。

【誤解しやすい点】

「父から110万円・母から110万円で合計220万円が非課税」ではありません。両方から受けるなら、合計110万円が限度です。

両親の両方から精算課税で贈与を受ける予定なら、この按分を前提に計画してください。片方だけを精算課税にして、もう片方は暦年課税にする方法もあります

相続のときにどう精算するか

制度の名前どおり、相続のときに精算します。加算する価額は「相続時の価額」ではなく「贈与時の価額」です

贈与時の価額で加算する

加算する金額は贈与した時点で固定されます。贈与後に値上がりしても、加算されるのは贈与時の価額のままです

これが制度の最大の利点です。値上がりが見込める財産なら、早めに贈与するほど有利になります。

贈与時の価額 相続時の価額 加算する価額
3,000万円 1億円に上昇 3,000万円(7,000万円は課税されない)
3,000万円 3,000万円のまま 3,000万円
3,000万円 1,000万円に下落 3,000万円(高い価額で課税される)

値上がりすれば得、値下がりすれば損という構造です。将来の値動きを読む必要があるため、判断は慎重に行ってください

値上がり資産に有利|自社株の例

効果が大きいのは自社株や成長する不動産です。業績が上がる前に贈与すれば、値上がり分に相続税がかかりません

【例】自社株を3,000万円のときに精算課税で贈与

贈与時は3,000万円-110万円-2,500万円=390万円に20%で78万円の贈与税を払います。

【20年後に1億円になっていた場合】

加算されるのは贈与時の3,000万円です。値上がりした7,000万円分は相続税の対象になりません。相続税の税率が30%なら、2,100万円の差になります。

収益物件も同じ考え方が使えます。早めに贈与すれば、その後の家賃収入が親の財産に積み上がるのを止められます

払った贈与税は控除・還付される

精算課税で払った贈与税は、相続税から差し引きます。相続税より贈与税のほうが多かった場合は、差額が還付されます

暦年課税の贈与税額控除では還付を受けられません。この点は精算課税だけの利点です。

状況 結果
相続税 > 払った贈与税 差額を納付する
相続税 < 払った贈与税 差額が還付される
相続税が0円(基礎控除以下) 払った贈与税の全額が還付される

相続財産が基礎控除以下なら、払った贈与税は全額戻ってきます。財産が少ない家庭では、精算課税を使っても最終的な負担がゼロになります

相続税の申告で必要になる書類

相続のときは、過去の贈与を漏らさず申告する必要があります。選択届出書の控えと贈与税の申告書の控えが、加算額の根拠になります

書類 役割
相続時精算課税選択届出書の控え いつから制度を使ったかを示す
贈与税の申告書の控え(毎年分) 贈与額と使った特別控除の累計を示す
贈与契約書 贈与の事実と金額を示す
相続税の申告書 第11の2表 精算課税で取得した財産を記載する
登記事項証明書 不動産を贈与していた場合に添付する

控えを紛失していると、加算額を確定できません。申告書の控えは、相続が終わるまで必ず保管してください

他の相続人の贈与額を知る方法

困るのは、他の相続人が精算課税で贈与を受けていた場合です。その金額を知らないと相続税の総額を計算できないため、税務署に開示を請求できる制度があります

相続税法に定められた「贈与税の申告内容の開示請求」です。他の共同相続人が受けた精算課税の贈与額や、加算対象の生前贈与額を確認できます。

【開示請求ができる場面】

  • 兄弟が精算課税で贈与を受けていたが金額を教えてくれない
  • 関係が悪く、共同で申告書を作れない
  • 相続人が遠方にいて情報を集められない
  • 親が誰にいくら贈与したのか記録が残っていない

請求先は被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署です。金額だけが開示され、誰がいくらもらったかの内訳は分かりませんが、総額が分かれば申告できます

この制度があるため、他の相続人が協力しなくても申告は可能です。関係が悪い場合は税理士に依頼してください。

還付を受けるには申告が必要

還付は自動ではありません。相続税の申告書を提出しなければ、払った贈与税は戻ってきません

相続税がかからない場合でも、還付を受けるなら申告が必要です。期限は相続の開始を知った日の翌日から5年以内です。

重要ポイント:相続税の申告期限(10ヶ月)とは別に、還付請求は5年以内が期限です。「相続税がかからないから申告しない」と判断すると、還付を受け損ねます

使ってはいけないケース

精算課税には向かない財産があります。最も避けるべきは自宅の土地で、小規模宅地等の特例が使えなくなります

自宅の土地は避ける

精算課税で贈与した宅地には、小規模宅地等の特例が使えません。最大80%の評価減を失うため、損失は数百万円規模になります

【前提】自宅の土地4,000万円・他の財産6,000万円・相続人は子1人

精算課税で土地を贈与した場合と、相続で取得した場合を比べます。基礎控除は3,600万円です。

項目 精算課税で贈与 相続で取得
土地の評価額 4,000万円(特例なし) 800万円(80%減)
課税価格 1億円 6,800万円
課税遺産総額 6,400万円 3,200万円
相続税 1,220万円 440万円
登録免許税 80万円(2%) 16万円(0.4%)
不動産取得税 約60万円 0円
合計の負担差 約904万円多くなる

計算ロジック:相続税の差は1,220万円-440万円=780万円です。これに登録免許税の差64万円と不動産取得税60万円を加えると約904万円になります。目先の贈与税が0円でも、トータルでは900万円以上の損失です

自宅の土地は相続で渡すのが基本です。生前に渡したい理由があるなら、必ず税額を試算してから決めてください

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例

特例の要件は、下記の記事で解説しています。

値下がりしそうな資産も避ける

加算されるのは贈与時の価額です。値下がりすると、実際には持っていない価値に相続税がかかります

財産 精算課税の向き不向き
成長企業の自社株 向く(値上がり分が課税されない)
開発が進む地域の土地 向く
収益物件 向く(家賃収入も移せる)
現金 どちらでもない(価額が変わらない)
業績が落ちている自社株 向かない(高い価額で加算される)
人口が減る地域の土地 向かない
自宅の土地 向かない(小規模宅地等の特例が使えない)
築古の建物 向かない(評価が下がっていく)

建物は年々評価が下がります。古い建物を精算課税で贈与すると、相続時より高い価額で加算されることになります

贈与を受けた子が先に亡くなった場合

順番が逆になるケースもあります。精算課税で贈与を受けた子が親より先に亡くなると、その子の相続人が納税義務を引き継ぎます

引き継ぐのは子の相続人、つまり孫や子の配偶者です。将来の親の相続のときに、その人たちが精算課税分の相続税を負担します。

状況 扱い
贈与を受けた子が親より先に亡くなった 子の相続人が精算課税の権利義務を承継する
承継する人 子の相続人(孫・子の配偶者など)
贈与した親自身 承継しない
親の相続のとき 承継した人が精算課税分を申告・納税する

注意:子の配偶者が承継すると、その人は親の相続人ではないのに納税義務を負います。孫が代襲相続人になる一方で、子の配偶者は財産をもらわずに税金だけを負担する形になります。子が高齢または健康に不安がある場合は、この点も考えてください。

想定しにくい事態ですが、実際に起こります。精算課税は数十年先まで影響が続く制度なので、世代の順番が変わる可能性も見込んでおいてください

不動産の流通税も加わる

不動産を生前に渡すと、相続より税金が重くなります。登録免許税は0.4%から2%へ5倍になり、不動産取得税もかかります

税金 贈与 相続
登録免許税 固定資産税評価額×2% 固定資産税評価額×0.4%
不動産取得税(住宅・宅地) かかる(評価額×1/2×3%など) かからない
司法書士報酬 かかる かかる

評価額2,000万円の不動産なら、登録免許税の差は32万円です。不動産取得税も加わるため、生前に渡すなら数十万円の追加コストを見込んでください

孫に使うと2割加算になる

孫への贈与に精算課税を使う場合は、2割加算に注意が必要です。孫は代襲相続人でなければ、相続税が1.2倍になります

一方で孫は暦年課税なら7年加算の対象外です。相続や遺贈で財産を取得しなければ、加算されません。

注意:孫への贈与は、暦年課税のほうが有利になることが多くあります。精算課税を選ぶと相続税の対象になり、さらに2割加算まで適用されます。孫に渡すなら暦年課税を優先して検討してください。

孫への贈与の使い分けは、下記の記事で解説しています。

値下がりの救済|災害による再計算の特例

2024年から、値下がりリスクに対する救済策ができました。精算課税で贈与を受けた土地建物が災害で被害を受けた場合、加算する価額を減らせます

特例の内容

令和6年1月1日以後に発生した災害が対象です。相続税に加算する価額を「贈与時の価額-被災価額」に減額できます

精算課税は原則として贈与時の価額で固定されます。災害で価値が失われても加算額は変わらないのが原則でしたが、この特例で例外が設けられました。

項目 内容
対象の財産 特定贈与者から精算課税で取得した土地または建物
対象の災害 令和6年1月1日以後に発生した災害
被害を受ける時期 贈与の日から相続税の申告期限までの間
所有の要件 贈与の日から災害の発生日まで引き続き所有していたこと
加算する価額 贈与時の価額-被災価額

建物だけでなく土地も対象です。地震や豪雨で土地の形状が変わった場合も、被害額を控除できます

被災価額の計算

被災価額は、被害額から保険金などで補填される金額を差し引いた額です。保険金で全額カバーされた場合は、控除できる金額がありません

【計算式】

被災価額=被害額-保険金などで補填される金額。土地は贈与時の価額、建物は想定価額が限度になります。

【例】3,000万円の建物を贈与し、災害で1,500万円の被害・保険金500万円

被災価額は1,500万円-500万円=1,000万円です。加算する価額は3,000万円-1,000万円=2,000万円になります。

保険に加入していれば被災価額は小さくなります。保険金で補填された分は、実質的な損失がないため控除の対象外です

手続きと期限

この特例は申請して承認を受ける必要があります。災害の発生日から3年を経過する日までに、申請書と「り災証明書」などを提出します

項目 内容
提出期限 災害の発生日から3年を経過する日まで
提出先 贈与税の納税地の所轄税務署長
提出するもの 被害額や保険金などを記載した申請書
添付書類 り災証明書など一定の書類
効果 税務署長の承認を受けて加算価額を減額できる

相続が起きてから申請するのではなく、災害の後に申請します。3年の期限を過ぎると使えなくなるため、被害を受けたらすぐ動いてください

精算課税で不動産をもらっている人は、この制度の存在を覚えておく価値があります。災害後に忘れていると、救済を受けられません。

災害特例が使えないケース

この特例は対象が限定されています。土地と建物だけが対象で、現金や株式が値下がりしても使えません

状況 特例の適用
贈与された建物が地震で損壊した 使える
贈与された株式が値下がりした 使えない(災害ではない)
土地の地価が下落した 使えない(災害ではない)
贈与後に売却し、その後に災害が起きた 使えない(引き続き所有していない)
令和5年以前の災害 使えない(令和6年1月1日以後の災害が対象)
保険金で全額補填された 控除できる金額がない
災害発生日から3年を過ぎた 使えない(申請期限切れ)

値下がり全般の救済ではありません。災害という限られた場面での例外なので、通常の値下がりリスクは依然として残ります

だからこそ、値下がりしそうな資産は最初から選ばないことが大切です。特例に頼る前提で判断しないでください。

使うべきケースの判定

制度が向く場面は限られます。「値上がりする財産」「余命が短い」「財産が基礎控除以下」の3つが典型です

判定の順番

次の順番で確認すると判断しやすくなります。最初に「渡す相手が子か孫か」を確認してください

STEP1
渡す相手を確認する。孫なら暦年課税が有利なことが多い(7年加算の対象外・精算課税だと2割加算)。子なら次へ

STEP2
渡す財産を確認する。自宅の土地なら精算課税は避ける(小規模宅地等の特例が使えない)。それ以外なら次へ

STEP3
あと何年贈与を続けられるかを見積もる。7年以内に相続が起きそうなら精算課税が有利。長く続けられるなら暦年課税も選べる

STEP4
財産の総額を確認する。基礎控除以下なら精算課税で払った贈与税は全額還付される。多額なら長期の暦年贈与も検討する

STEP5
贈与者ごとに決める。父は精算課税・母は暦年課税という組み合わせも可能。両方を精算課税にすると110万円が按分される

重要ポイント:STEP2で止まるケースが多くあります。自宅の土地を渡そうとしているなら、そこで精算課税は候補から外してください

使うべき4つのケース

精算課税が有利になる場面を整理します。共通しているのは「相続税が増えないか、増えても他の効果が上回る」ケースです

【ケース1】財産が基礎控除以下で相続税がかからない

相続税がかからないなら、加算されても税額は増えません。払った贈与税は全額還付されます。まとまった金額を無税で渡せます。

【ケース2】値上がりが見込める自社株や不動産がある

贈与時の価額で固定されるため、値上がり分に相続税がかかりません。事業承継では定番の使い方です。

【ケース3】高齢で贈与を続ける年数が短い

暦年課税だと7年加算で効果が消えます。精算課税なら年110万円が確実に非課税で移転します。

【ケース4】収益物件を早めに移したい

家賃収入が子に移るため、親の財産が増えるのを止められます。所得の分散にもなります。

ケース1は見落とされやすい使い方です。相続税がかからない家庭なら、精算課税は「無税でまとめて渡せる制度」として機能します

事業承継での使い方

自社株の承継では、精算課税が定番の手段です。株価が低いうちに移すことで、その後の値上がり分を相続税の対象から外せます

また事業承継税制(非上場株式の納税猶予)と併用できます。猶予が打ち切られた場合の税額を抑える効果があります。

組み合わせ 効果
精算課税のみ 株価が低いときの価額で固定できる
事業承継税制のみ 贈与税が猶予される。打ち切り時は暦年課税の高い税率で課税される
精算課税+事業承継税制 猶予を受けつつ、打ち切り時の税率が一律20%に抑えられる

重要ポイント:事業承継税制は要件を満たせなくなると猶予が打ち切られ、贈与税を一括で納めることになります。精算課税を併用しておけば、その税率が最大55%ではなく一律20%になります

株価が上がる前に動くことが重要です。業績が伸びてから贈与すると、高い価額で固定されてしまいます。

ただし要件と手続きが複雑です。事業承継税制には特例承継計画の提出など期限のある手続きがあるため、専門家と進めてください

使うべきケース・避けるべきケースの判定表

両方を並べて整理します。1つでも「避けるべき」に当てはまるなら、選択前に必ず試算してください

状況 判定
財産が基礎控除以下 使うべき
値上がりが見込める自社株・土地 使うべき
高齢で贈与できる年数が短い 使うべき
収益物件を移したい 使うべき
自宅の土地を渡したい 避けるべき
値下がりしそうな資産 避けるべき
孫に渡したい 避けるべき(暦年課税を優先)
まだ長く贈与を続けられる 暦年課税も検討する

手続きと選択届出書

使うには届出が必要です。最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、選択届出書を提出します

手続きの流れ

贈与から申告までの流れです。選択届出書は最初の年だけ提出し、2年目以降は申告書に記載するだけです

STEP1
要件を確認する。贈与する年の1月1日に贈与者が60歳以上・受贈者が18歳以上であること

STEP2
贈与契約書を作り、銀行振込で実行する。不動産なら登記も行う

STEP3
□ 相続時精算課税選択届出書
□ 贈与税の申告書(第二表)
□ 受贈者の戸籍謄本など(贈与者との関係を示す書類)

STEP4
翌年2月1日〜3月15日に、受贈者の住所地の税務署へ提出する。e-Taxでも可能

STEP5
2年目以降は110万円を超えた年だけ申告する。届出書の再提出は不要

重要ポイント:2024年からは年110万円以下の贈与なら申告も不要です。ただし最初の年は、110万円以下でも届出書の提出が必要です

届出書を出し忘れた場合

期限を過ぎると精算課税は選択できません。その年の贈与は暦年課税で計算されるため、多額の贈与税がかかります

注意:2,500万円を渡したのに届出書を出し忘れると、暦年課税で810万5,000円の贈与税がかかります。期限後の提出は認められないため、取り返しがつきません。贈与を実行したら、翌年3月15日までの提出を必ずカレンダーに入れてください。

贈与を受けた本人が提出します。贈与した親ではなく、もらった子が自分の住所地の税務署に出す点を間違えないでください

贈与を実行するときの注意点

贈与が成立していないと、制度そのものが使えません。名義を変えただけで親が管理を続けていると、名義預金として親の財産のまま扱われます

【贈与を成立させるために必要なこと】

  • 贈与契約書を作り、双方が署名・押印する
  • 現金は銀行振込で渡し、記録を残す
  • 不動産は登記、株式は名義書換を行う
  • 受け取った人が通帳と印鑑を自分で管理する
  • 受け取った人が自由に使える状態にする

子の名義の口座に振り込んでも、通帳と印鑑を親が持っていれば贈与になりません。相続税の調査で最も多く指摘されるのが、この名義預金です

不動産の場合は登記が重要です。登記をしていないと、贈与の事実を示すことが難しくなります。

また未成年の子に贈与する場合は、親権者が受け取る形になります。ただし精算課税は18歳以上が要件なので、未成年の子には使えません

毎年の申告と管理

選択後は贈与額の累計を管理する必要があります。2,500万円の特別控除をいくら使ったかを、贈与者ごとに記録してください

贈与額 申告
1年目(選択する年) 金額を問わず 届出書+申告書が必要
2年目以降・110万円以下 100万円など 不要
2年目以降・110万円超 500万円など 申告書が必要
贈与がなかった年 0円 不要

相続のときに累計額を申告するため、記録がないと困ります。贈与契約書と申告書の控えは、相続が終わるまで必ず保管してください

選んだ後にできること・できないこと

撤回できないのは「同じ贈与者からの贈与」だけです。他の贈与者との関係は自由に選べるため、組み合わせの余地が残ります

贈与者ごとに選択できる

「暦年課税と精算課税は併用できない」という説明をよく見かけます。正確には「同じ贈与者について併用できない」だけで、贈与者が違えば組み合わせられます

組み合わせ 可否
父から精算課税・母から暦年課税 できる
父から精算課税・祖父から暦年課税 できる
父から精算課税と暦年課税を年ごとに使い分ける できない
父から精算課税を選んだ後に暦年課税に戻す できない
父と母の両方から精算課税 できる(110万円は按分される)

重要ポイント:この使い分けは実務でよく使われます。値上がりする財産を持つ父からは精算課税、現金を渡す母からは暦年課税という形にすれば、両方の利点を取れます

母からの暦年贈与は年110万円まで非課税で、父からの精算課税でも別に110万円が使えます。合計220万円を非課税で受け取れます。

ただし母からの暦年贈与は7年加算の対象です。母の相続が近いと予想されるなら、母も精算課税に切り替える判断もあります

この場合は110万円が按分されるため、父母合わせて110万円になります。加算されない確実性を取るか、非課税枠の総額を取るかの選択です。

どちらが有利かは、余命の見通しと財産規模で変わります。父母それぞれの年齢を踏まえて、別々に判断してください

住宅取得等資金なら60歳未満でも選択できる

年齢要件には例外があります。住宅取得等資金の贈与なら、贈与者が60歳未満でも精算課税を選択できます

家を買うための資金を親からもらう場合に使える特例です。親がまだ50代でも、この制度を選べます。

項目 内容
贈与者の年齢 60歳未満でもよい(通常は60歳以上)
受贈者 18歳以上の子・孫(通常と同じ)
使い道 自己の居住用家屋の新築・取得・増改築等の資金
期限 贈与を受けた年の翌年3月15日までに取得して居住すること
住宅取得等資金の非課税との併用 できる

住宅取得等資金の非課税(最大1,000万円)と併用できます。非課税枠1,000万円を使い、超えた分に精算課税を適用すれば大きな金額を渡せます

参照元:国税庁 No.4503 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例

併用できる特例

精算課税を選んでも使える特例があります。住宅取得等資金の非課税と事業承継税制は、精算課税と組み合わせられます

特例 精算課税との併用
住宅取得等資金の非課税 できる(2026年12月31日まで)
事業承継税制(非上場株式の納税猶予) できる
結婚・子育て資金の一括贈与 できる(2027年3月31日まで)
贈与税の配偶者控除 関係しない(配偶者間の贈与のため)
小規模宅地等の特例 できない(贈与財産は対象外)

非課税枠を先に使い、残りに精算課税を適用するのが基本の順番です。組み合わせれば、住宅資金なら3,500万円以上を贈与税ゼロで渡せます

非課税制度の一覧は、下記の記事で解説しています。

暦年課税に戻れないことの実務的な影響

撤回できない点は最大のデメリットですが、影響の大きさは状況によります。2024年から年110万円の基礎控除ができたため、少額の贈与を続ける分には支障がなくなりました

その後の贈与 精算課税での扱い
年110万円以下 贈与税0円・申告不要・相続財産に加算されない(暦年課税と同等以上)
年110万円超で特別控除が残っている 贈与税0円だが相続財産に加算される
年110万円超で特別控除を使い切った 一律20%の贈与税がかかる

110万円以下の贈与を続けるなら、精算課税のほうが有利です。改正前は「戻れない」ことが大きな痛手でしたが、今は影響が小さくなっています

問題になるのは、後から多額の贈与をしたくなった場合です。特別控除2,500万円を使い切っていると、超えた分に必ず20%かかります。

よくある5つの誤解

この制度には誤解が多くあります。特に「2,500万円が非課税になる」という理解は、相続税を見落としています

誤解 正しい理解
2,500万円が非課税になる 贈与税がかからないだけ。相続時に加算される(年110万円分は除く)
暦年課税と併用できない 同じ贈与者について併用できないだけ。贈与者が違えば可能
父と母から各110万円が非課税になる 合計110万円に按分される
選択後は毎年申告が必要 2024年から110万円以下なら申告不要
相続放棄すれば課税されない 放棄しても相続税の対象になる

「2,500万円が無税」という説明は不正確です。相続税がかからない家庭でのみ、結果的に無税になります

財産が基礎控除を超える家庭では、贈与税を払わない代わりに相続税を払う形になります。制度の性質を理解してから選んでください。

相続放棄しても課税される

精算課税で受けた贈与は、相続放棄しても相続税の対象です。「相続または遺贈により取得したものとみなす」規定があるため、放棄では逃れられません

何も相続しなくても、過去の贈与分について申告と納税が必要になります。贈与された財産を使い切っていると、納税資金がありません。

注意:精算課税を選ぶと、将来の相続放棄という選択肢が実質的に制限されます。親に多額の借金がある、または将来できる可能性があるなら、この点も考慮してください。

相続時精算課税の相談は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

相続時精算課税は一度選ぶと戻せません。相続税の対応実績がある税理士なら、選択前に相続まで含めたトータルの税額を試算できます。複数の税理士に一括で相談し、比較して選ぶのがおすすめです。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

この制度の判断には、相続税の見通しが欠かせません。贈与税だけを見て選ぶと、相続のときに数百万円の差が出ます

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

  • 贈与税と相続税を通したトータルの税額を試算できる
  • 小規模宅地等の特例が使えなくなる影響を数値で示せる
  • 暦年課税と精算課税のどちらが有利かを財産構成から判断できる
  • 贈与者ごとの使い分けを設計できる
  • 不動産の流通税まで含めたコストを比較できる

撤回できない制度なので、判断のやり直しができません。届出書を出す前に相談すれば、取り返せない失敗を防げます

税理士を比較するときの3つの判定ポイント

相続税に対応している税理士でも、生前対策の設計力には差があります。見積りや初回相談で、次の3点を比べてみてください。

「申告実績数・暦年と精算課税の両方を試算するか・相続まで含めて示すか」の3点で見分けられます

判定ポイント1:相続税申告の実績数
年間の相続税申告の件数を確認します。「年間5件」と「年間100件以上」では、財産評価と将来の見通しの精度に差が出ます。→ 実績数が多い税理士のほうが、判断に迷いがないと判定できます。

判定ポイント2:暦年と精算課税の両方を試算するか
「精算課税を選んだ場合」と「暦年課税を続けた場合」を並べて示してくれるかを見ます。→ 両方を試算する税理士のほうが、家族全体で損しない案を出せると判定できます。

判定ポイント3:相続まで含めて示すか
贈与税だけでなく、将来の相続税と不動産の流通税まで含めた総額を示すかを確認します。→ トータルで比較する税理士のほうが、実質的な有利不利を判断できると判定できます。

相談しないまま進めるリスク

自己判断で選ぶと、取り返しがつかないことがあります。特に自宅の土地を精算課税で贈与すると、900万円規模の損失になります

届出書を出した後では、暦年課税に戻せません。具体的には次のようなリスクがあります。

相談せずに進めた場合のリスク

  • 自宅の土地を贈与し、小規模宅地等の特例を失って数百万円の損失になる
  • 値下がりする資産を贈与し、高い価額で相続税を課される
  • 孫に精算課税を使い、7年加算の対象外という利点を捨てて2割加算まで負う
  • 選択届出書を出し忘れ、暦年課税で多額の贈与税を課される
  • 父母の両方を精算課税にして、110万円が按分されることに気づかない

これらの多くは、選択前の試算で防げます。相談は無料のことが多く、動くなら早いほど選択肢が広がります。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

実際に一括相談・見積りを利用する流れは、次の4ステップです。フォームの記入自体は5分ほどで終わります。

届出書の提出期限は翌年3月15日です。贈与を実行する前に相談してください

STEP1
財産と家族構成を整理する。渡したい財産の種類と評価額・贈与者の年齢・受け取る人の関係・財産の総額をまとめる

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する。相続時精算課税の検討・生前対策などの希望内容を明記し、相続税の対応実績がある税理士3〜5社へ同時に打診する。不動産があれば所在地と広さも伝える(記入は5分程度)

STEP3
各税理士から「提案内容」「試算した税額」「報酬額」が記載された見積りが届く。暦年課税との比較を出してもらい、気になる事務所と初回相談を行う

STEP4
「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で最適な事務所を選び、正式に依頼する。贈与を実行する前に方針を固める

重要ポイント:「精算課税を選んだ場合」と「選ばなかった場合」の両方を試算してもらってください。撤回できない制度なので、比較なしで決めるのは危険です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続時精算課税は誰が使えますか?

贈与した年の1月1日に60歳以上の父母や祖父母から、贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の子や孫への贈与で使えます。判定は1月1日時点の年齢なので、誕生日前だと使えないことがあります。

Q2. 2024年の改正で何が変わりましたか?

年110万円の基礎控除が新設されました。この110万円以下の贈与は贈与税の申告も不要で、しかも相続財産に加算されません。暦年課税は110万円以下でも7年加算されるため、有利不利が逆転しました。

Q3. 暦年課税と併用できますか?

同じ贈与者については併用できませんが、贈与者が違えば組み合わせられます。父から精算課税、母から暦年課税という形は可能です。ただし父母の両方を精算課税にすると、110万円の基礎控除は合計で110万円に按分されます。

Q4. 自宅の土地を精算課税で贈与してもよいですか?

おすすめできません。精算課税で贈与した宅地には小規模宅地等の特例(最大80%減)が使えません。土地4,000万円・他の財産6,000万円・相続人が子1人のケースでは、相続で取得する場合より約904万円多く負担します。

Q5. 一度選んだら撤回できませんか?

できません。その贈与者からの贈与は、以後すべて精算課税になります。ただし他の贈与者との関係は自由に選べます。届出書を出す前に、相続まで含めた試算をしてください。

まとめ|2,500万円の枠より「何を渡すか」が重要

相続時精算課税は2,500万円まで贈与税がかからず、2024年から年110万円の基礎控除も加わりました。110万円分は相続財産に加算されないため、暦年課税より有利になる場面が増えています。一方で撤回できず、自宅の土地では小規模宅地等の特例を失います。

判断を分けるのは金額より財産の種類です。以下のアクションから始めましょう。

  • 渡したい財産が値上がりするか値下がりするかを見極める
  • 自宅の土地なら精算課税を候補から外す
  • 孫に渡すなら暦年課税を優先して検討する
  • 父母それぞれについて、精算課税か暦年課税かを別々に決める
  • 届出書を出す前に、相続税の対応実績がある税理士へ一括で相談・見積りを依頼する

※本記事は2026年8月時点の情報にもとづいて作成しています。相続税法の改正により内容が変わる場合があります。最新の制度については国税庁の公式サイトで確認するか、相続税の対応実績がある税理士にご相談ください。

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