


葬儀費用は、相続税を計算するときに遺産から差し引けます。国税庁や通達では「葬式費用」と呼び、相続税法13条が差し引けることを定めています。
差し引けるのは、お通夜・告別式から火葬・納骨までにかかった費用です。香典返しや四十九日の法要、お墓の購入費は対象になりません。
葬儀費用は一般的に100万〜200万円ほどかかり、遺産から引ければその分だけ相続税がかかる金額が下がります。
一方で、どこまでが引ける費用なのかは通達で線が引かれており、同じ葬儀の支出でも名目によって結果が分かれます。
領収書の出ないお布施をどう残すか、誰が負担した費用として申告するかでも、引ける額や家族の税額が変わります。
とくに負担者の決め方は、配偶者と子のどちらが払うかで、家族全体の相続税の合計に差が出る論点です。
本記事では、控除できる費用・できない費用の一覧、領収書がない費用の残し方と申告書の書き方、控除できる人の範囲、誰の負担にすると家族の相続税が少なくなるかを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

相続税の計算で引ける葬儀費用は、亡くなった人を葬るために欠かせない費用に限られます。通夜・告別式・火葬・納骨の費用は引けますが、葬儀のあとに行う法要や、お墓・仏壇の購入費は引けません。
この章では、葬儀費用を引くと相続税がどう減るのか、引ける・引けないの境目、遺産額別にいくら税額が下がるかを先に示します。細かな費目の一覧は次の章以降で取り上げます。
葬儀費用は、相続税の額から引くものではありません。遺産の額から差し引いて、税金がかかる金額そのものを小さくする仕組みです。
たとえば遺産が1億円で葬儀費用が200万円なら、9,800万円の遺産を相続したものとして相続税を計算します。借入金などの債務を引くのと同じ扱いで、通達では「債務控除」の一部に位置づけられています。
そのため減る相続税は「200万円×その人に当たる税率」です。税率が10%なら20万円、30%なら60万円が減る目安になります。
相続税の計算で葬儀費用が入る位置
何が葬儀費用に当たるかは、相続税法基本通達13-4と13-5が決めています。考え方は1つで、葬儀を行い、遺体を葬るために通常かかる費用かどうかです。
| 区分 | 通達の定め | 具体例 |
|---|---|---|
| 引ける(13-4) | 埋葬・火葬・納骨・遺骨の回送の費用 | 火葬料、納骨の手数料、霊柩車 |
| 引ける(13-4) | 葬式に際して施した金品で相当程度のもの | お布施、戒名料、読経料 |
| 引ける(13-4) | 葬式の前後に生じた通常の出費 | お通夜、通夜ぶるまい、会葬御礼 |
| 引ける(13-4) | 死体の捜索・遺体や遺骨の運搬の費用 | 病院からの搬送、事故時の捜索費 |
| 引けない(13-5) | 香典返戻費用 | 香典返し |
| 引けない(13-5) | 墓碑・墓地の買入費、墓地の借入料 | 墓石、墓地の永代使用料 |
| 引けない(13-5) | 法会に要する費用 | 初七日、四十九日、一周忌 |
| 引けない(13-5) | 医学上・裁判上の特別の処置の費用 | 病理解剖、司法解剖 |
表の見方:上の4行が引ける費用、下の4行が引けない費用です。通達は例示なので、表にない費用は「葬儀に通常欠かせないか」で判断します。
重要ポイント:お布施は「相当程度」という条件付きです。故人の職業や財産の規模に比べて極端に高い金額は、超えた部分を否認される可能性があります。
葬儀費用を引いたときに家族の相続税がいくら減るかを、遺産額別に計算しました。同じ200万円でも、減る額は0円から90万円まで開きます。
【前提】葬儀費用は200万円。相続人は「子2人」と「配偶者と子2人」の2通り。配偶者がいる場合は法定相続分どおりに分け、葬儀費用も法定相続分で負担し、配偶者の税額軽減を使うものとします。
| 遺産額 | 子2人:減る相続税 | 配偶者+子2人:減る相続税 |
|---|---|---|
| 4,000万円 | 0円 | 0円 |
| 5,000万円 | 20万円 | 10万円 |
| 6,000万円 | 20万円 | 10万円 |
| 8,000万円 | 30万円 | 12.5万円 |
| 1億円 | 30万円 | 15万円 |
| 1億5,000万円 | 60万円 | 22.5万円 |
| 2億円 | 60万円 | 25万円 |
| 3億円 | 80万円 | 35万円 |
| 5億円 | 90万円 | 42.5万円 |
表の見方:葬儀費用を引かなかった場合と引いた場合の、家族全員の納税額の合計の差です。遺産が大きいほど高い税率に当たるため、減る額が大きくなります。
重要ポイント:配偶者がいる場合の減る額が子だけの場合のおよそ半分なのは、配偶者の負担分が配偶者の税額軽減に吸われるからです。この差が、誰の負担にするかで税額が変わる理由になります。
計算ロジック:子2人・遺産1億円なら、基礎控除後の1人分は2,900万円×15%−50万円=385万円です。葬儀費用を引くと2,800万円×15%−50万円=370万円で、2人分の差は30万円です(2026年時点の速算表)。
早見表の4,000万円の行が0円なのは、葬儀費用を引く前から基礎控除以下で相続税がかからないからです。もともと相続税がかからない人は、葬儀費用を引いても税額は変わりません。
意味を持つのは、遺産が基礎控除の少し上にある場合です。申告が必要かどうかは、債務と葬儀費用を引いたあとの金額が基礎控除を超えるかで決まります。
【例】子2人・遺産4,300万円・葬儀費用150万円の場合
なお、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って0円になる場合は、申告書の提出が必要です。葬儀費用や債務を引いて基礎控除以下になる場合とは扱いが違います。
申告が要るかどうかの判定は、下記の記事で解説しています。


控除できる費用は、葬儀社への支払いだけではありません。お寺へのお布施、手伝ってくれた人への心付け、死亡診断書の文書料まで含まれます。領収書のない支出が多いので、漏れやすい部分です。
ここでは支払先ごとに、引ける費用と、その中で線引きに迷いやすい点をまとめます。
葬儀社に払ったお通夜・告別式の費用は、見積書の基本プランもオプションも原則としてすべて引けます。葬儀費用の中で最も金額が大きい部分です。
葬儀社の請求書によく載っている費目
注意したいのは、葬儀社の請求書に香典返しや四十九日の料理が一緒に載っている場合です。引けない費目が混ざっているので、請求書の内訳を見て分けて計上してください。
家族葬や一日葬、火葬だけの直葬でも扱いは同じです。規模が小さくても、葬儀に欠かせない費用であれば引けます。
参照元:国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
お通夜や告別式で参列者に出す食事・飲み物の代金は、葬儀の前後に生じた通常の出費として引けます。通夜ぶるまい、精進落とし、火葬場での軽食がこれに当たります。
仕出し料理店に頼んだ分だけでなく、スーパーやコンビニで買ったお茶やお菓子も対象です。レシートを残しておけば、そのまま証拠になります。
一方、葬儀の数日後に親族だけで集まった食事や、四十九日の会食は法要の費用なので引けません。同じ「食事代」でも、葬儀の当日かどうかで分かれます。
お寺や神社、教会に払った謝礼は、名目にかかわらず葬儀のために払ったものであれば引けます。お布施は金額が大きいのに領収書が出ないことが多く、最も漏れやすい費用です。
| 名目 | 控除 | 補足 |
|---|---|---|
| お布施・読経料 | ○ | 通夜・告別式・火葬の読経の謝礼 |
| 戒名料(法名料) | ○ | 葬儀に際して授かる戒名の謝礼 |
| お車代 | ○ | 僧侶の交通費として渡すもの |
| 御膳料 | ○ | 僧侶が会食を辞退したときに渡すもの |
| 四十九日・一周忌のお布施 | × | 法要の費用なので対象外 |
重要ポイント:同じお寺へのお布施でも、葬儀のときの分と法要のときの分は分けて記録します。まとめて渡した場合は、内訳をお寺に確認しておくと説明しやすくなります。
火葬場の使用料、埋葬の費用、納骨の費用は通達13-4(1)に明記されています。ただし納骨については、墓石を開けて骨壺を納める作業の費用までで、墓石への彫刻は引けません。
石材店への支払いの分け方
四十九日に合わせて納骨する家庭は多いですが、納骨の作業費は葬儀費用として引けます。同じ日の法要のお布施や会食は引けないので、支払先ごとに分けてください。
納骨堂や樹木葬の場合も、遺骨を納める手数料は引けます。一方で、納骨堂の使用権や永代供養料はお墓と同じ扱いで、葬儀費用には入りません。
葬儀社以外への支払いでも、葬儀に欠かせないものは引けます。遺体の搬送費、死亡診断書の文書料、心付けの3つは見落とされやすいので、確認してください。
| 費用 | 控除 | 補足 |
|---|---|---|
| 病院から自宅・斎場への遺体搬送 | ○ | 遠方で亡くなった場合の搬送費も含む |
| 遺体の捜索費用 | ○ | 事故・災害で行方不明になった場合 |
| 死亡診断書・死体検案書の文書料 | ○ | 火葬の許可を受けるために必要なため |
| 受付や運転手への心付け | ○ | 社会通念上の金額(数千円〜1万円程度) |
| 喪主の斎場・火葬場までの交通費 | ○ | タクシー代など |
重要ポイント:心付けは「相当程度」の範囲に限られます。1人数千円が一般的で、極端に高い金額は、超えた部分を葬儀費用と認められないおそれがあります。

引けない費用は、通達13-5に4つ挙がっています。どれも葬儀に関係する支出ですが、香典のお返し、供養のための設備、葬儀のあとの儀式という点で、葬るための費用とは区別されます。
ここでは4つの理由と、例外として引けるケース、通達にない費用の判断をまとめます。
香典返しが引けないのは、受け取った香典に相続税がかからないことの裏返しです。香典は喪主への贈り物で故人の財産ではないため、そのお返しも故人の葬儀費用には入りません。
| 会葬御礼 | 香典返し | |
|---|---|---|
| 渡す相手 | 参列者全員 | 香典をくれた人 |
| 渡す時期 | 通夜・告別式の当日 | 四十九日のあとが一般的 |
| 性質 | 参列へのお礼 | 香典へのお返し |
| 葬儀費用として | 引ける | 引けない |
重要ポイント:当日に渡す品でも、香典の額に応じて渡す「即日返し」は香典返しに当たります。会葬御礼として計上するのは、香典の有無にかかわらず参列者全員に渡す品の分だけにしてください。
お墓や仏壇は、もともと相続税がかからない財産です(相続税法12条)。そのため亡くなったあとに買っても、葬儀費用として遺産から引くことはできません。
お墓・仏具まわりの扱い
葬儀のときに使う白木の位牌は葬儀の道具として引けますが、四十九日に作り替える本位牌は仏具なので引けません。似た名前でも扱いが分かれます。
お墓や仏壇は、生前に現金で買っておけばその分の現金が遺産から減ります。ただし生前に買って代金が未払いのまま亡くなった場合、その未払金は債務として引けません(相続税法基本通達13-6)。
仏具・仏壇の扱いは、下記の記事で解説しています。

初七日・四十九日・一周忌などの法要は、故人を供養する儀式で、葬るための費用ではありません。そのため法要のお布施・会食・引き物はすべて対象外です。
例外は、告別式の当日に初七日をまとめて行う「繰上げ初七日」です。葬儀社の請求で葬儀と初七日の費用が分かれていない場合は、まとめて葬儀費用に含めてよいと考えられています。
反対に、請求書で初七日の費用が別の行に分かれている場合は、その行だけ外します。分かれているかどうかで結論が変わるので、請求書の内訳を確認してください。
通達に名前は出てきませんが、遠方から来た親族の旅費や喪服の購入費は、葬儀費用になりません。参列する人それぞれの支出で、葬儀を行うための費用ではないからです。
迷いやすい「人にかかる費用」
喪主の旅費のように判断が分かれるものは、無理に含めず、含めるなら理由を説明できるようにしておきます。金額が小さいものは、外しても税額への影響はわずかです。
ここまでの内容に、実務で質問が多い費用を加えて一覧にしました。迷ったら「葬儀の当日までに、葬るために払ったものか」で考えると、ほとんどの費用は判断できます。
| 費用 | 控除 | 理由 |
|---|---|---|
| 喪主が出した生花・花輪 | ○ | 葬儀の祭壇を飾る費用 |
| 親族や知人が出した供花 | × | 出した人自身の弔意の支出 |
| 2回目の葬儀(本葬・お別れの会) | ○ | 仮葬式と本葬式は両方引ける(通達13-4(1)) |
| 四十九日に合わせた納骨の作業費 | ○ | 納骨の費用は日付を問わない |
| 墓石への戒名の彫刻 | × | 墓碑の費用に当たる |
| 遺品整理・家の片付け | × | 葬儀の費用ではない |
| 葬儀の案内状・訃報の郵送 | ○ | 葬儀の前後に通常かかる出費 |
| 喪中はがき | × | 葬儀のあとの挨拶 |
表の見方:○は葬儀費用として遺産から引けるもの、×は引けないものです。生花のように、同じ費目でも誰が払ったかで分かれるものがあります。
重要ポイント:引けない費用を混ぜて申告すると、税務調査で否認され、追加の相続税に加えて過少申告加算税と延滞税がかかります。迷う費目は、外すか、含める理由を書き残してください。
参照元:国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
葬儀費用以外に、相続の手続きでかかった費用の扱いは、下記の記事で解説しています。


葬儀費用を引くには、申告書の第13表に支払いごとの明細を書き、領収書の写しを添えます。領収書が出ないお布施や心付けは、メモで代わりにできます。
この章では、メモに書く項目、第13表の書き方、添える書類、入れ忘れたときの取り戻し方を順に説明します。
領収書がない支払いでも、実際に払ったことが分かる記録があれば葬儀費用として引けます。記録は葬儀の直後、記憶が新しいうちに作ってください。
メモに書く5項目
お布施はお寺に頼めば受領書を出してもらえることもあります。出してもらえなくても、預金から引き出した記録とメモが合っていれば、説明の材料になります。
税務署は、金額が社会通念に照らして相当かどうかを見ます。メモだけで申告できるからといって、実際より多く書くことは絶対にしないでください。
葬儀費用は、相続税の申告書の第13表「債務及び葬式費用の明細書」に書きます。支払い1件ごとに1行で書き、負担した人の名前と金額まで記入するのが要点です。
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第13表には、お布施の支払先として寺院名を書きます。メモで残した5項目は、ここにそのまま書き写せる形になっています。
参照元:国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
申告書全体の書き方と書く順番は、下記の記事で解説しています。

第13表に書いた支払いには、裏づけとなる書類の写しを添えます。原本は手元に残し、申告書には写しを付けてください。税務調査で原本の提示を求められることがあります。
葬儀費用で用意する書類
重要ポイント:領収書がない場合は請求書や納品書でも差し支えないとされています。最後の「誰が払ったか」の記録は、後の章で扱う負担者の決め方で必要になるので、早めにそろえておいてください。
葬儀費用を入れ忘れて申告すると、その分だけ相続税を多く払ったことになります。この場合は「更正の請求」という手続きで、申告期限から5年以内であれば払いすぎた税金を取り戻せます(国税通則法23条1項)。
【例】子2人・遺産1億円で、お布施50万円を入れ忘れた場合
反対に、引けない費用を入れていたことに気づいた場合は、修正申告で税額を直します。税務署から調査の連絡が来る前に自分で直せば、過少申告加算税はかかりません。
更正の請求の期限と手続きは、下記の記事で解説しています。


葬儀費用は、払った人なら誰でも引けるわけではありません。引けるのは相続人と、遺言で遺産の一定割合をもらった人に限られ、さらに住所や国籍によっては引けない人もいます(相続税法13条)。
この章では、引ける人の範囲と、相続放棄した人・海外に住む人・会社が払った場合の扱い、払った額が取り分を超えた場合を整理します。
葬儀費用を引けるのは、相続人と「包括受遺者」です。包括受遺者とは、遺言で「遺産の3分の1を与える」のように、遺産全体に対する割合で財産をもらった人を指します。
| 葬儀費用を払った人 | 控除 | 理由 |
|---|---|---|
| 相続人(配偶者・子など) | ○ | 相続税法13条1項の対象 |
| 遺言で遺産の一定割合をもらった人 | ○ | 相続人と同じ権利義務を持つため |
| 相続を放棄した人 | △ | 遺贈で財産を取得していれば引ける(通達13-1) |
| 遺言で特定の財産だけもらった人 | × | 相続人でなければ対象外 |
| 相続人でない親族(内縁の配偶者・兄弟など) | × | 財産を取得していないか、対象者でない |
重要ポイント:喪主かどうかは関係ありません。相続人でない人が喪主として払った分は、誰の遺産からも引けないので、相続人が負担する形に整理できないかを先に検討してください。
相続を放棄した人は相続人ではなくなるため、原則として葬儀費用を引けません。ただし通達13-1により、現実に葬儀費用を負担し、遺贈で財産を取得していれば、その財産から引いてよいとされています。
【例】借金が多くて相続放棄した長男が、葬儀費用150万円を払った場合
なお、相続を放棄した人は生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使えません。保険金にはそのまま相続税がかかるので、葬儀費用を引けるかどうかの差が大きくなります。
反対に、相続を放棄して何も財産を受け取っていない人が葬儀代を払った場合は、引ける財産がないので控除の余地はありません。
相続放棄をした場合の相続税の扱いは、下記の記事で解説しています。

相続人でも、日本国内の財産にしか相続税がかからない人は、葬儀費用を引けません(相続税法13条2項)。国税庁はこの人たちを「制限納税義務者」と呼んでいます。
海外に住んでいても、日本国籍があり、亡くなる前の10年以内に日本に住所があった人などは、国内外の財産すべてに課税される側に入ります。この場合は日本に住む相続人と同じように葬儀費用を引けます。
海外に住む相続人が喪主を務めるときの注意
海外に住む相続人と相続税の関係は、下記の記事で解説しています。

経営者が亡くなり、会社が社葬を行った場合、会社が払った費用は相続人の葬儀費用として引けません。遺産から引けるのは、相続人が実際に負担した分だけだからです。
| 費用 | 払った人 | 相続税 |
|---|---|---|
| 家族だけで行った密葬 | 相続人 | 葬儀費用として引ける |
| 会社が主催した社葬 | 会社 | 引けない(会社の経費として扱う) |
| 社葬の費用のうち遺族が持った分 | 相続人 | 葬儀に欠かせない費用なら引ける |
重要ポイント:密葬と社葬の2回行う場合は、仮葬式と本葬式に当たります。遺族が負担した分は両方とも引けるので、会社の負担分と混ざらないよう、請求書を分けてもらってください。
社葬の費用は、社会通念上相当な金額であれば会社の経費(損金)にできます(法人税基本通達9-7-19)。会社が払ったうえに相続人の葬儀費用としても引く、という二重の計上はできません。
葬儀費用は、負担した人の取り分から引きます。そのため取り分が少ない人が多額を負担すると、取り分を超えた部分は引ききれず、税額を減らす効果がなくなります。
【例】長女の取り分が100万円で、葬儀費用250万円を長女が負担した場合
例外は、負担する人がまだ決まっていない場合です。通達13-3は、負担者が決まっていないときは相続分に応じて負担したものとして扱い、その結果取り分を超える人が出たら、超えた分をほかの相続人から引く申告を認めるとしています。
重要ポイント:実際に負担した人が決まっている場合は、その人の取り分の範囲でしか引けません。取り分の少ない人が立て替えたときは、遺産分割で取り分を増やすか、負担を分けるかを申告前に決めておいてください。

相続税の計算とは別に、葬儀費用を誰が払うかについて法律の定めはありません。多くは喪主が立て替え、あとで遺産や相続人の間で精算します。
この章では、裁判例の考え方、遺産から払う3つの方法、香典との関係、相続放棄との関係、精算でもめる事例を取り上げます。ここで決めた負担者が、次の章で扱う家族の税額に影響します。
民法には葬儀費用の負担者を決めた条文がありません。参考になるのが名古屋高裁平成24年3月29日判決で、故人が生前に決めておらず、関係者の合意もない場合は、葬儀を主宰した人(喪主)が負担すると判断しました。
葬儀費用の負担を決める順番(裁判例の考え方)
裁判例はあくまで争いになった場合の判断です。実際には、相続人全員で話し合って「遺産から払う」「法定相続分で分ける」と決める家庭が大半です。
亡くなると故人の預金口座は凍結されますが、遺産分割の前でも葬儀費用を遺産から払う方法は3つあります。
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相続人全員の合意 | 全員の同意で預金を解約・払い戻して葬儀代に充てる | 金融機関に全員の書類が必要で時間がかかる |
| 預金の仮払い制度 | 各相続人が単独で一定額を払い戻せる(民法909条の2) | 1つの金融機関につき150万円が上限 |
| 死亡保険金 | 受取人が保険金から葬儀代を払う | 保険金は受取人の財産なので、払った分は受取人の負担になる |
計算ロジック:仮払い制度で払い戻せるのは「相続が始まったときの預金額×3分の1×その人の法定相続分」で、1つの金融機関あたり150万円までです。預金900万円・子2人なら、子1人あたり900万円×1/3×1/2=150万円になります。
香典は、参列者から喪主への贈り物と考えられています。故人の財産ではないので、香典に相続税はかからず、社会通念上相当な金額なら贈与税も所得税もかかりません。
そのため、香典を葬儀費用の支払いに充てた場合でも、通達には葬儀費用から香典の額を差し引く定めはありません。葬儀費用は払った総額で計上し、香典は相続税の計算に入れません。
【例】葬儀費用200万円のうち、香典80万円を充てた場合
なお、健康保険から受け取る葬祭費・埋葬料(数万円程度)も、葬儀費用の控除額を減らすものではありません。受け取った給付も相続財産には入りません。
遺産を使うと、相続を承認したとみなされて相続放棄ができなくなることがあります(民法921条)。ただし葬儀費用については、社会的に相当な範囲で遺産から払っても、承認には当たらないと判断した裁判例があります。
とはいえ、すべての場合に認められると決まっているわけではありません。借金が多く相続放棄を考えている場合は、葬儀代を遺産から払う前に専門家に相談してください。
喪主が自分のお金で払い、あとで相続放棄をすることもできます。その場合も、相続を放棄した人は遺贈で財産を取得していなければ葬儀費用を引けないので、相続税の面では控除の機会がなくなります。
葬儀費用のトラブルは、誰がいくら払い、どう精算するかを決めないまま申告期限が近づくことで起きます。よくある3つの事例と対策をまとめます。
【事例1】喪主の長男が全額を立て替え、ほかの相続人が精算に応じない
長男は「遺産から払うのが当然」、次男は「喪主が決めた規模だから長男が払うべき」と主張し、遺産分割が止まったケースです。
対策:葬儀の前に、規模と費用の上限、遺産から精算するかを相続人の間で決め、メッセージや書面で残しておきます。
【事例2】香典が葬儀費用を上回り、余った分の扱いでもめる
香典が葬儀費用を30万円上回り、喪主が受け取るのか、相続人で分けるのかで意見が割れたケースです。
対策:香典帳と葬儀費用の明細を相続人全員に見せ、余った分の使い道(法要費用に充てるなど)を合意しておきます。
【事例3】相続税の申告で、負担者が実際の支払いと食い違う
実際は長女が払ったのに、申告書では配偶者が負担したことにして申告し、あとで精算の話と合わなくなったケースです。
対策:申告書に書く負担者と、実際に払った人・精算の結果を一致させます。食い違いは税務調査で確認されます。
チェックリスト:葬儀費用の精算でもめないための確認項目
重要ポイント:精算の結論は、そのまま相続税の申告の負担者になります。遺産分割協議書に葬儀費用の負担者と金額を書いておくと、申告と食い違うことがなくなります。

葬儀費用は負担した人の取り分から引くため、同じ200万円でも、配偶者と子のどちらが負担するかで家族の相続税の合計が変わります。しかも、1回目の相続だけを見たときと、配偶者が亡くなったあとの相続まで含めたときで、結論が逆になることがあります。
この章では、その仕組みを計算で示し、遺産額と子の人数別にどちらの負担が有利かの判定表を載せます。最後に、負担者を決めるときに守るべき条件を説明します。
相続税は、まず家族全体の「相続税の総額」を出し、それを各人の課税される金額の割合で割り振ります。葬儀費用を誰が負担しても総額は同じですが、割り振りの割合が変わるので、各人の税額が動きます。
ここに配偶者の税額軽減が関わります。配偶者は、法定相続分か1億6,000万円のどちらか多い額までの取り分には相続税がかかりません。配偶者の割合が小さくなると、そのぶん子の割合が大きくなり、子が払う税額が増えます。
配偶者が負担すると子の税額が増える流れ
1回目の相続だけで比べると、子が負担した方が家族の納税額は少なくなります。配偶者が負担した分は、もともと税金がかからない配偶者の取り分を減らすだけで、家族の税額を下げる効果がほとんど出ないからです。
【前提】遺産1億円、相続人は配偶者と子2人。配偶者が遺産の2分の1を取得し、子2人が残りを均等に取得。葬儀費用は200万円とします。
| 配偶者が負担 | 子が負担 | |
|---|---|---|
| 配偶者の課税される金額 | 4,800万円 | 5,000万円 |
| 子2人の課税される金額 | 5,000万円 | 4,800万円 |
| 相続税の総額 | 600万円 | 600万円 |
| 配偶者の納税額 | 0円 | 0円 |
| 子2人の納税額の合計 | 306.1万円 | 293.9万円 |
表の見方:どちらが負担しても相続税の総額は600万円で変わりません。変わるのは子2人に割り振られる額で、子が負担した方が12.2万円少なくなります。
重要ポイント:配偶者の納税額はどちらでも0円です。配偶者が負担すると、税金がかかっていない取り分から葬儀費用を引くことになり、控除の効果が子に回りません。
計算ロジック:総額600万円×子の割合で、配偶者負担なら5,000万円÷9,800万円=約51%で306.1万円、子負担なら4,800万円÷9,800万円=約49%で293.9万円です(相続税法17条・19条の2)。
配偶者が葬儀費用を負担すると、その分だけ配偶者の手元の財産が減ります。すると、将来配偶者が亡くなったときの相続(二次相続)で、子が払う相続税が減ります。2回の相続を合わせると、結論が入れ替わることがあります。
【前提】前の表と同じ条件に、負担を法定相続分で分けるパターンCを加えました。配偶者は取得した財産から葬儀費用を払い、残りをそのまま持って亡くなり、子2人が均等に相続するものとします。配偶者自身の財産はなく、1回目の相続から10年以上たって亡くなる想定です。
| パターンA:配偶者が全額負担 | パターンB:子が全額負担 | パターンC:法定相続分で分けて負担 | |
|---|---|---|---|
| 負担額 | 配偶者200万円 | 子200万円 | 配偶者100万円・子50万円ずつ |
| 1回目の相続の納税額 | 306.1万円 | 293.9万円 | 300.0万円 |
| 配偶者の手元に残る財産 | 4,800万円 | 5,000万円 | 4,900万円 |
| 配偶者が亡くなったときの相続税 | 60.0万円 | 80.0万円 | 70.0万円 |
| 2回の相続の合計 | 366.1万円 | 373.9万円 | 370.0万円 |
表の見方:1回目の相続だけならパターンBが最も少なく、2回の合計ではパターンAが最も少なくなります。パターンCはその中間です。
重要ポイント:パターンAとパターンBの2回の合計の差は7.8万円で、パターンAの方が少ない結果です。1回目だけで判断すると、逆の選択をすることになります。
計算ロジック:2回目の基礎控除は子2人で4,200万円です。パターンAは残り600万円を2人で分けて300万円×10%×2人=60万円、パターンBは残り800万円で400万円×10%×2人=80万円です。
配偶者に遺産をどれだけ渡すと2回の合計が最も少なくなるかは、下記の記事で解説しています。

同じ計算を、遺産額と子の人数を変えて行いました。配偶者の取り分が、配偶者が亡くなったときの基礎控除を超えるかどうかで、有利な負担者が分かれます。
【前提】配偶者が遺産の2分の1を取得、葬儀費用は200万円、配偶者自身の財産はなし。表の数字は2回の相続の合計で、配偶者が負担した場合と子が負担した場合の差です。
| 遺産額 | 子1人 | 子2人 | 子3人 |
|---|---|---|---|
| 6,000万円 | 子が有利(5.5万円) | 子が有利(3.5万円) | 子が有利(1.4万円) |
| 8,000万円 | 配偶者が有利(8.7万円) | 子が有利(8.3万円) | 子が有利(6.4万円) |
| 1億円 | 配偶者が有利(14.9万円) | 配偶者が有利(7.8万円) | 配偶者が有利(9.8万円) |
| 1億5,000万円 | 配偶者が有利(16.0万円) | 配偶者が有利(10.4万円) | 配偶者が有利(2.5万円) |
| 2億円 | 配偶者が有利(26.9万円) | 配偶者が有利(3.2万円) | 配偶者が有利(5.9万円) |
| 3億円 | 配偶者が有利(34.1万円) | 配偶者が有利(22.1万円) | 配偶者が有利(6.3万円) |
| 分かれ目 | 遺産7,200万円 | 遺産8,400万円 | 遺産9,600万円 |
表の見方:「子が有利」は子が負担した方が2回の合計が少なく、「配偶者が有利」は配偶者が負担した方が少ないことを示します。かっこ内はその差額です。
重要ポイント:分かれ目は「配偶者の取り分=配偶者が亡くなったときの基礎控除」になる遺産額です。配偶者自身の財産があれば分かれ目はもっと下がり、配偶者の負担が有利になる範囲が広がります。
計算ロジック:子2人なら2回目の基礎控除は4,200万円で、配偶者の取り分(遺産の2分の1)が超えるのは遺産8,400万円からです。超えなければ2回目は0円なので、配偶者負担は1回目の不利だけが残ります。
差額は数万〜数十万円で、相続税全体から見れば大きくありません。家族の間で納得できる負担の分け方を優先し、そのうえで迷ったときの判断材料にしてください。
判定表を見て「配偶者の負担にしておこう」と申告書だけ書き換えるのは認められません。通達13-3は、引けるのはその人が実際に負担する金額としています。
否認されやすい形
実際の負担者を決める方法として認められやすいのは、遺産分割協議の中で決めることです。「葬儀費用200万円は配偶者が負担する。その分、配偶者は預金〇〇万円を取得する」のように、取得する財産とあわせて協議書に書きます。
こうしておけば、誰の取り分から引くかと、実際のお金の流れが一致します。立て替えた人がいる場合は、協議の結果に沿って精算し、振込の記録を残してください。

相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。それまでに葬儀費用の負担者が決まらなくても、葬儀費用を引かずに申告する必要はありません。
この章では、負担者が決まらないときの申告のしかた、遺産分割がまとまっていない場合、あとから決まったときの直し方を説明します。
通達13-3は、実際に負担する金額が決まっていないときは、民法の相続分(遺言で指定があればその割合)に応じて負担したものとして扱うとしています。
| 相続人 | 法定相続分 | 葬儀費用200万円の割り当て |
|---|---|---|
| 配偶者 | 2分の1 | 100万円 |
| 長男 | 4分の1 | 50万円 |
| 長女 | 4分の1 | 50万円 |
表の見方:配偶者と子2人の場合、葬儀費用は配偶者に2分の1、子に4分の1ずつ割り当てて、第13表の負担者欄に書きます。
重要ポイント:この割り当ての結果、ある人の取り分を超える金額が割り当てられたときは、超えた分をほかの相続人から引く申告が認められています。負担者が決まっている場合にはない扱いです。
計算ロジック:民法900条の法定相続分は、配偶者と子が相続人なら配偶者2分の1、子は残りの2分の1を人数で均等に分けます。200万円×1/2=100万円、200万円×1/4=50万円です。
遺産分割がまとまっていない場合は、法定相続分で財産を取得したものとして申告します(未分割申告)。このときも葬儀費用は引けます。負担者は前の項と同じく法定相続分で割り当てます。
未分割で申告すると、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は使えません。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えておけば、3年以内に分割がまとまったときに適用を受け直せます。
未分割で申告するときに忘れやすいこと
未分割で申告する方法と、特例の取り戻し方は、下記の記事で解説しています。

申告後に遺産分割がまとまり、葬儀費用の負担者も決まったら、各人の税額が変わる場合は申告をやり直します。税額が増える人は修正申告、減る人は更正の請求をします。
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葬儀費用は亡くなったあとに払う費用ですが、生前に払った場合や積み立てていた場合は、扱いが変わります。生前の準備が相続税の計算にどう影響するかを整理します。
結論からいうと、生前に払っても亡くなったあとに払っても、遺産から出ていく額が同じなら相続税はほぼ変わりません。変わるのは、計算のどこに入るかと、記録の残し方です。
本人が葬儀社と生前契約を結び、代金を前払いしていた場合、前払いした分は葬儀費用として引けません。相続人が負担した費用ではないからです。
| 生前に200万円を前払い | 亡くなったあとに相続人が200万円を払う | |
|---|---|---|
| 亡くなった時点の預金 | 9,800万円 | 1億円 |
| 葬儀費用の控除 | 0円 | 200万円 |
| 課税される金額 | 9,800万円 | 9,800万円 |
表の見方:生前に払うと預金が減り、亡くなったあとに払うと控除で引かれます。どちらも課税される金額は9,800万円で同じです。
重要ポイント:前払いしたのに葬儀社の都合で使われず、返金を受ける権利が残っている場合は、その権利が遺産になります。契約書と入金の記録は、相続人が見つけられる場所に保管してください。
計算ロジック:前払い分は「財産が減る」、相続後の支払いは「控除で引く」と入る場所が違うだけです。追加でかかった分を相続人が払った場合は、その追加分だけを葬儀費用として引きます。
冠婚葬祭の互助会に毎月積み立てていた場合、積み立てたお金は本人の財産で、使わずに残っていれば遺産に入ります。解約すれば戻ってくるお金だからです。
互助会を葬儀に使った場合の計上
相続人の誰かが自分の名義で積み立てていた互助会を使った場合は、その人が負担した葬儀費用として引けます。名義と掛金を誰が払っていたかを確認してください。
お墓や仏壇は相続税のかからない財産なので、生前に現金で買っておくと、その分の現金が遺産から減り、相続税が下がります。亡くなったあとに買っても葬儀費用として引けないので、この点は生前と死後で結果が違います。
| 買う時期と払い方 | 相続税への影響 |
|---|---|
| 生前に現金で払い終えた | 現金が減り、課税される金額が下がる |
| 生前に買ったが代金が未払い | 未払金は債務として引けない(通達13-6) |
| 亡くなったあとに相続人が買った | 葬儀費用として引けない(通達13-5) |
重要ポイント:相続税を下げる効果があるのは「生前に払い終えた」場合だけです。ローンや分割払いで残りが未払いのまま亡くなると、財産も債務も計算から外れ、買わなかった場合と税額は変わりません。
葬儀費用でもめる原因の多くは、誰が喪主になり、誰が払うかが決まっていないことです。本人が元気なうちに、葬儀の規模と費用の出し方を書き残しておくと、相続人の負担が軽くなります。
書き残しておくとよいこと
お墓や仏壇を引き継ぐ人(祭祀を主宰する人)は、遺言で指定すれば法的な効力があります(民法897条)。葬儀の規模や費用の負担は付言として書くことになり、法的な拘束力はありませんが、相続人が判断するときの拠り所になります。

葬儀費用は、引ける費目を拾うだけなら一覧表で足ります。ただし誰の負担にするかは、配偶者が亡くなったあとの相続まで計算しないと決まりません。遺産分割や未分割の申告とも結びつくため、相続税全体を見て判断する必要があります。
葬儀費用の扱いは、費目の判定と負担者の決め方の両方で税額が動く論点です。
相続税の対応実績がある税理士に相談する理由
例を出します。遺産1億5,000万円・配偶者と子2人で、葬儀費用が250万円かかったケースです。
| 自分で申告した場合 | 税理士が整理した場合 | |
|---|---|---|
| 計上した葬儀費用 | 200万円(お布施50万円を入れ忘れ) | 250万円 |
| 負担者 | 長男 | 配偶者 |
| 1回目の相続の納税額 | 715.2万円 | 732.8万円 |
| 配偶者が亡くなったときの相続税 | 395.0万円 | 357.5万円 |
| 2回の相続の合計 | 1,110.2万円 | 1,090.3万円 |
計上漏れと負担者の選び方だけで、2回の相続の合計に19.9万円の差が出ます。1回目の相続だけを見ると税理士が整理した方が高く見えるため、自分で判断すると逆を選びやすい部分です。
計算ロジック:配偶者が遺産の2分の1を取得し、自身の財産はなく、10年以上たって亡くなる想定です。配偶者負担なら手元は7,250万円で、2回目は基礎控除を引いた残りが3,050万円に下がります(2026年時点の速算表)。
見積りを並べると報酬額を比べられますが、差が出るのは判断の根拠を示せるかです。次の3点を各事務所に同じ質問で聞き、答えを突き合わせてください。
判定ポイント1:誰の負担にするかを2回の相続で考えているか
→ B事務所の方が、二次相続まで見た実務経験が豊富と判定できます。
判定ポイント2:引けない費用の線引きを根拠で説明できるか
→ B事務所の方が、税務調査で否認されない申告をすると判定できます。
判定ポイント3:遺産分割協議書と申告書を合わせて作るか
→ B事務所の方が、負担者の食い違いによる否認を防げると判定できます。
葬儀費用の扱いは、間違えても税務署から連絡が来ないほうに倒れることがあります。引き忘れや不利な負担者の選択は、払いすぎになるだけで指摘されません。
自分だけで判断したときに起きること
前の表のとおり、整理の仕方だけで19.9万円動きます。複数の事務所に同じ資料を渡せば、どこまで見て試算しているかの差が分かります。
重要ポイント:比べるのは報酬額だけではありません。「2回の相続で負担者を考えるか」「引けない費用を根拠で分けるか」「協議書と申告書を合わせるか」の3点を同じ質問で聞いてください。
申し込みから依頼先を決めるまでは、相続開始から7ヶ月以内に終えるのが目安です。
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聞く順番より、同じ質問をすべての事務所に投げて答えを並べることが大事です。
初回相談で確認すること
見積書は総額が書面で出ているかを最優先で確かめてください。基本報酬だけ安く、加算報酬で膨らむ形が見分けにくい部分です。
見積書で確認すること
報酬の相場そのものを確かめたい場合は、下記の記事で解説しています。

税理士費用そのものを誰が払うかも、葬儀費用と同じく税額に影響します。下記の記事で解説しています。

法律上の上限額はありません。通夜・告別式・火葬・納骨など葬儀に通常かかる費用であれば、かかった額を控除できます。ただしお布施や心付けは「故人の職業や財産に照らして相当程度」が条件で、極端に高い部分は認められないおそれがあります。
差し引きません。香典は喪主への贈り物で故人の財産ではないため、相続税の計算に入れません。葬儀費用は払った総額で計上します。一方で香典返しの費用は、葬儀費用に含めることはできません。
できます。控除できるかは喪主かどうかではなく、相続人や遺言で遺産の一定割合をもらった人が実際に負担したかで決まります。立て替えたあと精算した場合は、精算後に最終的に負担した人の取り分から引きます。
納骨そのものの費用(墓石を開けて骨壺を納める作業や手数料)は控除できます。同じ日に行った四十九日法要のお布施や会食、墓石への戒名の彫刻は控除できません。支払先ごとに分けて記録してください。
1回目の相続だけなら子が負担した方が家族の納税額は少なくなります。配偶者が亡くなったあとの相続まで含めると、配偶者の取り分が2回目の基礎控除を超える場合は配偶者の負担が有利になります。差は数万〜数十万円なので、家族の納得を優先したうえで判断材料にしてください。
葬儀費用は相続税の計算で遺産から差し引けます。引ける範囲、記録の残し方、誰の負担にするかの3点で、税額と申告の手間が変わります。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいて作成しています。相続税法の改正により内容が変更となる場合があります。個別の相続税申告については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。