


家(自宅・実家)を相続すると、その家は土地・建物ともに相続税の課税対象になります。
ただし、相続税は家単体ではなく、預貯金なども含めた遺産全体に対して計算される税金です。
実際には、基礎控除や特例のおかげで、家を相続しても相続税がかからない人のほうが多数派です。
相続税が課税されるのは、亡くなった人のうち約10人に1人にすぎません。
一方で、「かからないはずが、特例の要件を外れて数百万円の課税」「税額0円なのに申告を忘れて特例が使えない」といった落とし穴もあります。
自分のケースで税金がかかるのか、かかるならいくらなのかを、正しい手順で確かめることが大切です。
本記事では、家に相続税がかからない3つのケース、評価額の計算方法、小規模宅地等の特例の要件を解説します。
▼ この記事の3行まとめ

最初に全体像を示します。「家を相続したら高額な相続税が来る」という心配は、多くの家庭では現実になりません。
国税庁の統計では、相続税が課税される被相続人の割合(課税割合)は約10%です。
つまり、亡くなった人の約9割の相続では、家があっても相続税は発生していません。
日本の持ち家率は約6割です。「家を持つ人の大半が相続税を払う」なら課税割合はもっと高いはずで、統計がその逆を示しています。
「家=高額資産=相続税」とは限らない理由は、基礎控除と特例の存在にあります。
まずは自分がどちら側の9割か1割かを、この記事の手順で判定していきましょう。
家を相続して相続税がかからないのは、次の3つの型のどれかです。
多くの家庭は、この3つのどれか(または組み合わせ)に収まります。それぞれの中身は次のセクションで解説します。
ここで最重要の注意点があります。3つの型は「申告の要否」が異なるのです。
型1(基礎控除以下)なら、申告も納税も不要です。
しかし型2・型3は、特例を適用した申告書を提出することが、税額0円になるための条件です。
「0円だから何もしなくていい」と申告を忘れると、特例が使えず本来の税額+ペナルティを請求されるおそれがあります。
自分がどの型かを判定することは、「申告が必要かどうか」の判定でもある。この視点で読み進めてください。
家の相続税では、次の3つの誤解が判断を狂わせます。
【誤解1:売買相場で税金がかかる】
相続税は市場価格ではなく相続税評価額で計算します。評価額は時価の7〜8割程度が目安で、想定より低くなるのが通常です。
【誤解2:家単体に税金がかかる】
相続税は遺産全体で計算します。「家の評価額×税率」という単純計算では、高すぎる金額が出てしまいます。
【誤解3:生前贈与しておくほうが安心で得】
家の生前贈与は贈与税・不動産取得税・高い登録免許税がかかり、小規模宅地等の特例も失います。相続で渡すほうが安いのが大半です。
「思ったよりかからない」が家の相続税の実像です。過大な不安で急いで対策する前に、まず正しい判定をしましょう。

3つの型を順に見ていきます。自分の家庭がどれに当てはまりそうか、イメージしながら確認してください。
相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があります。
法定相続人が3人(配偶者と子2人)なら4,800万円。家と預貯金を合わせてもこの範囲に収まれば、相続税はかかりません。
家の評価額は時価(売買価格)より2〜3割低くなることが多く、思ったより基礎控除に収まりやすいのが実情です。
たとえば市場価格4,000万円の実家でも、相続税評価では3,000万円前後になることがあります。
「不動産は現金より相続に有利」といわれるのは、この評価差があるからです。
まずは売買相場ではなく評価額ベースで遺産を集計し直す。それだけで「かからない側」だと判明する家庭も少なくありません。
この型に収まる場合は、申告も納税も不要です。
ただし「収まっているつもり」の自己判定には、評価ミスや財産の見落としのリスクがあります。境目に近い場合は専門家の確認を挟んでください。
配偶者が相続した財産は、「1億6,000万円」か「配偶者の法定相続分」のどちらか多い金額まで相続税がかかりません。
夫名義の家を妻が相続するような場合、よほどの資産家でない限り、配偶者の税負担は0円になります。
この軽減は法律上の配偶者だけの権利です。内縁のパートナーには適用されず、遺言で家を遺贈しても2割加算の対象になります。
ただし、この軽減は申告書の提出が適用条件です。
また、配偶者に財産を寄せすぎると、次の相続(二次相続)で子の負担が重くなる問題もあります。0円にできるからといって全額配偶者、が最適とは限りません。
配偶者の税額軽減は強力ですが、使い方には設計が必要です。
一次相続(父の相続)で母にすべて相続させて0円にしても、次の母の相続(二次相続)では税額軽減が使えず、基礎控除も人数減で小さくなります。
母の財産が膨らんだ状態で二次相続を迎えると、トータルの税額はかえって増えることがあります。
二次相続では法定相続人も1人減るため、基礎控除が600万円縮み、生命保険の非課税枠も500万円縮みます。人数減の効果は想像以上に大きいのです。
家を誰が相続するかも同じ視点が必要です。母が住み続けるなら母へ、いずれ子が継ぐ家なら一次相続で子へ(同居していれば特例も使える)、という2段構えの設計が節税につながります。
一次相続の遺産分割は、二次相続までの合計税額で比較して決めてください。
自宅の土地は、要件を満たすと「小規模宅地等の特例」で評価額を330㎡まで80%減額できます。
たとえば評価額4,000万円の土地なら800万円に。この減額によって遺産総額が基礎控除以下になれば、相続税は0円です。
家の相続で最も強力な特例であり、「家があるのに相続税がかからない」最大の理由がこれです。
都市部の実家など土地の評価額が大きいほど、80%減のインパクトも大きくなります。
330㎡(約100坪)という限度面積は、一般的な戸建ての敷地なら余裕で収まる広さです。多くの自宅は敷地全体が80%減の対象になります。
ただし、誰が相続するかで要件が大きく変わり、こちらも申告が適用条件です。詳しくは後述のセクションで解説します。

かかるかどうかは、次の4ステップで判定できます。順番どおりに進めれば、1〜2週間で概算の結論が出せます。
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判定に迷ったら、「基礎控除の8〜9割以上の財産がありそうか」を境目にしてください。ぎりぎりのラインこそ、評価ミスや財産の見落としが命取りになる領域です。
判定の結果「かかりそう」「特例を使って0円にする」となったら、申告期限を軸にスケジュールを組みます。
相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
家がある相続では、遺産分割(誰が家を取得するか)が決まらないと小規模宅地等の特例が確定しません。
逆算すると、財産調査と評価に3ヶ月、遺産分割協議に3ヶ月、申告書作成に2ヶ月、予備に2ヶ月という配分が現実的です。
「家を誰が継ぐか」の話し合いこそが、税務スケジュールの最大の律速要因になります。早めに家族の意向をすり合わせてください。
相続放棄(3ヶ月)や準確定申告(4ヶ月)など、10ヶ月より早い期限もあります。全体の手続きカレンダーは早い段階で1枚にまとめておくと安心です。
STEP3の合算では、見落としやすい財産があります。
「家+通帳の残高」だけで判定すると、これらの足し戻しで基礎控除を超えていた、という事故が起こります。
特に名義預金と生前贈与は、税務調査でも最も指摘の多い項目です。判定の段階から視野に入れてください。
不動産の情報は税務署に登記経由で共有されるため、「家の相続」は税務署から見えやすい相続でもあります。判定は保守的に行うのが安全です。
重要ポイント:この判定は相続開始前(生前)でも同じ手順でできます。親が元気なうちに一度試算しておくと、必要な対策が早く見えます。

家の評価は「建物」と「土地」に分けて行います。どちらも自分で概算できる方法が用意されています。
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額×1.0。つまり固定資産税評価額そのままです。
毎年春に届く固定資産税の課税明細書の「価格(評価額)」欄を見れば、建物の評価額は1分で確認できます。
固定資産税評価額は建築費の5〜6割程度で、築年数とともに下がっていきます。古い実家なら数百万円ということも珍しくありません。
リフォームで価値が上がっていても、固定資産税評価に反映されていなければ原則そのままの評価です。増改築の未登記部分がある場合だけ、個別の評価が必要になります。
課税明細書が見つからない場合は、市区町村で固定資産評価証明書を取得すれば確認できます。
土地は、所在地によって2つの方式のどちらかで評価します。
【路線価方式(市街地)】
評価額=路線価×面積×補正率。路線価は国税庁の路線価図で調べられます。「300D」なら1㎡あたり30万円という意味です。
【倍率方式(路線価のない地域)】
評価額=固定資産税評価額×地域ごとの倍率。倍率も国税庁サイトの評価倍率表で確認できます。
【前提】路線価30万円・面積100㎡の整形地のシナリオなら、30万円×100㎡=3,000万円が土地の評価額の目安です。
路線価は市場価格(時価)の8割程度に設定されているため、評価額は売買相場より低くなるのが通常です。
いびつな形の土地や間口の狭い土地は、補正率でさらに評価が下がります。高低差・騒音・セットバックなども減額要素です。
補正を正しく適用できるかどうかで評価額が1〜2割変わることもあります。減額要素の詳細は、下記の記事で解説しています。

土地の概算評価に使う路線価は、誰でも無料で調べられます。手順は次のとおりです。
数字の後ろのアルファベット(D など)は借地権割合の記号で、自分の土地を自分で使っている場合は無視して構いません。
路線価は毎年7月に更新されます。相続の年の路線価を使う点だけ注意してください。
1月〜6月に相続が起きた場合、その年の路線価はまだ公表されていないため、7月の公表を待ってから評価することになります。
この概算で基礎控除との距離感をつかみ、ぎりぎりなら補正まで含めた正式な評価を税理士に依頼する、という2段構えが効率的です。
路線価図の見方が分からなければ、税務署に電話で聞くこともできます。住所を伝えれば該当の路線価を案内してもらえます。
分譲マンションの評価は、2024年1月1日以後の相続から新しいルールが適用されています。
従来の「土地の持分+建物の固定資産税評価額」に、築年数・総階数・所在階などから計算する「区分所有補正率」を掛けて評価します。
市場価格と評価額のかい離が大きかったタワーマンションの高層階などは、従来より評価額が大幅に上がりました(おおむね市場価格の6割水準が目安)。
なお、2階建て以下の低層マンションや二世帯住宅の区分所有は新ルールの対象外で、従来どおりの評価です。
古い情報のまま「マンションの評価は低い」と思い込んでいると、判定を誤ります。マンションの実家は特に、最新ルールでの試算が必須です。
実家の評価では、建物の敷地以外の土地を見落としがちです。
固定資産税の課税明細書には、名義人のすべての物件が載っています。まず明細書で「土地が何筆あるか」を数えてください。
なお、小規模宅地等の特例(居住用)が使えるのは自宅の敷地部分だけです。離れた駐車場や畑には適用されません。
先祖代々の土地が点在している家庭では、この「家以外の土地」が税額を押し上げる主因になることもあります。
名寄帳(固定資産課税台帳の一覧)を市区町村で取得すると、その自治体内の所有物件を漏れなく確認できます。複数の市町村に土地がある場合は自治体ごとに取得してください。
家の状況によって、評価はさらに変わります。
ただし団体信用生命保険(団信)付きのローンは死亡時に完済されるため、債務控除は使えません。
「ローンがあるから相続税は減るはず」という見込みは、団信の有無で結論が逆転します。契約内容を確認してください。
団信で完済された場合、ローンの負担なく家がまるごと遺産に加わります。むしろ課税側に働く点も含めて試算しましょう。

家の相続税を左右する最大の特例です。自宅の土地330㎡までの評価額が80%減額されますが、「誰が相続するか」で要件がまったく違います。
| 取得する人 | 主な要件 |
|---|---|
| 配偶者 | 無条件で適用(居住・保有の縛りなし) |
| 同居していた親族 | 申告期限(10ヶ月)まで住み続け、所有し続ける |
| 別居の親族(家なき子) | 配偶者・同居相続人がいない+3年以上借家住まい等の厳しい要件 |
表の見方:配偶者は最強、同居親族は「住み続ける」が条件、別居は狭き門、という3段階です。誰がこの家を相続するかという遺産分割の決定が、税額を直接左右します。
別居の子が実家を相続する場合の「家なき子特例」は、次の要件をすべて満たす必要があります。
「持ち家を子に売って借家住まいに見せかける」といった抜け道は、2018年の改正でふさがれています。
マイホームを持っている子が親の実家を相続するケースでは、原則としてこの特例は使えません。
逆に、転勤族で社宅・賃貸暮らしが長い子は好条件です。実家を継ぐ予定があるなら、マイホーム購入のタイミングは相続まで見据えて判断する価値があります。
親子で住まいが一体化しているケースは、特例の適用判定が複雑になります。
【二世帯住宅】
建物内部で行き来できない完全分離型でも、原則として同居扱いで特例を使えます。ただし建物を親子で区分所有登記していると、子の居住部分に対応する土地は対象外になります。登記の形が分かれ目です。
【親の土地に子が家を建てている場合】
子が地代を払わず使っている(使用貸借)なら、土地は自用地として評価されます。その土地は「親の自宅の敷地」ではないため、特定居住用宅地等の特例は原則使えません(生計一親族の要件を満たす場合を除く)。
どちらも「登記」と「生計の実態」で結論が変わる論点です。該当する家庭は、相続が起きる前に専門家の判定を受けておくと安心です。
亡くなった親が老人ホームに入居していて、自宅が空き家だった場合でも、特例を使える可能性があります。
主な条件は次のとおりです。
「ホーム入居=住んでいなかったから特例は無理」とあきらめるのは早計です。介護保険証や施設の契約書を確認してください。
入居後の自宅に別の親族が住み始めた場合など、状況が変わると適用できないことがあります。空き家のまま維持していたケースが最も確実です。
小規模宅地等の特例は税務署のチェックも厳しく、形だけの適用は否認されます。
判定されるのは書類上の形ではなく、生活の実態です。電気・水道の使用量まで確認されることがあります。
特に「申告期限までの保有・居住」は、売却を急ぐ相続人が破りやすい要件です。売るとしても申告期限の後、と覚えておいてください。
なお、配偶者が取得する場合はこの保有・居住要件自体がないため、申告期限前に売却しても特例は使えます。取得者による違いは徹底しています。
小規模宅地等の特例は、相続税の申告書に必要書類を添えて提出することが適用条件です。
特例で税額が0円になる場合でも、申告しなければ適用されません。
また、遺産分割が決まっていること(誰が取得するか確定していること)も前提になります。分割協議が長引くと、いったん特例なしで納税する事態になりかねません。
その場合も「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、分割成立後に特例を適用して税金を取り戻せます。もめそうな場合はこの届出を忘れないでください。
同居の判定など、適用可否の詳しい基準は下記の記事で解説しています。


「結局いくらかかるのか」を早見表で確認しましょう。同じ家でも、特例の有無で税額が数百万円変わることが分かります。
【前提】法定相続人が子2人(基礎控除4,200万円)で、家と預貯金を合わせた遺産総額別の相続税の総額です。法定相続分どおりに相続したと仮定します。
| 遺産総額(課税価格) | 相続税の総額 |
|---|---|
| 4,000万円 | 0円(基礎控除以下・申告不要) |
| 5,000万円 | 80万円 |
| 6,000万円 | 180万円 |
| 8,000万円 | 470万円 |
| 1億円 | 770万円 |
表の見方:「家の評価額+預貯金など」の合計で行を選んでください。配偶者が相続人に入る場合、税額軽減でここからさらに大きく減ります。
計算ロジック:課税遺産総額(遺産総額−4,200万円)を法定相続分(各1/2)で分け、速算表(10〜55%・2026年時点)を適用して合算。例:6,000万円の場合、1,800万円×1/2=900万円→900万円×10%=90万円×2人=180万円。
特例の威力を、具体例で確認します。
【前提】遺産は実家5,000万円(土地4,000万円+建物1,000万円)と預貯金2,800万円の計7,800万円。相続人は配偶者と子2人(基礎控除4,800万円)で、同居の配偶者が家を相続するシナリオです。
【特例を使わない場合】
課税遺産総額は7,800万円−4,800万円=3,000万円。相続税の総額は約325万円になります。
【小規模宅地等の特例を使う場合】
土地の評価が4,000万円→800万円に減額。遺産総額は4,600万円となり基礎控除(4,800万円)以下に。相続税は0円です(申告は必要)。
特例1つで325万円の差。家の相続税は「特例を正しく使えるか」でほぼ決まるといっても過言ではありません。
計算ロジック:特例なし=3,000万円を法定相続分で分けて速算表を適用(配偶者1,500万円×15%−50万円=175万円、子各75万円、計325万円)。特例あり=土地4,000万円×20%=800万円で再集計(2026年時点の税率)。
【前提】法定相続人が配偶者と子2人(基礎控除4,800万円)で、法定相続分どおりに相続し、配偶者の税額軽減を適用した場合の「家族全体で実際に納める税額」です。
| 遺産総額(課税価格) | 納税額の合計(軽減適用後) |
|---|---|
| 5,000万円 | 約5万円 |
| 6,000万円 | 約30万円 |
| 8,000万円 | 約118万円 |
| 1億円 | 約315万円 |
表の見方:配偶者分の税額が軽減で0円になるため、子2人だけの場合(前の表)と比べて負担は半分以下になります。さらに小規模宅地等の特例を併用すれば、多くの家庭で0円圏内です。
計算ロジック:相続税の総額を法定相続分で按分し、配偶者分(1/2)を税額軽減で0円にした残り(子2人分)を合計(2026年時点の税率)。実際の分け方で結果は変わるため目安です。
早見表は便利ですが、2つの前提を忘れないでください。
1つ目は、税額は「家単体」ではなく「遺産全体」で決まることです。同じ家でも、預貯金の多寡で行が変わります。
2つ目は、相続人の構成で基礎控除も税額も変わることです。配偶者がいる場合・相続人が1人の場合は、この表と結果が異なります。
境目に近い場合や特例の可否が分からない場合は、概算のまま判断せず専門家の試算を挟みましょう。
近年増えているのが、ひとりっ子が親の家を相続するケースです。人数が少ないほど、税負担は重くなります。
【前提】遺産総額6,000万円(家+預貯金)を相続する場合の比較です。
同じ遺産でも、相続人1人なら130万円多く納める計算です。
ひとりっ子で親の家を継ぐ予定の人は、基礎控除が小さい前提で早めに試算し、同居(特例の確保)や生前贈与などの対策を検討する価値があります。
計算ロジック:子1人=課税遺産2,400万円×15%−50万円=310万円。子2人=1,800万円を2人で分けて各10%=計180万円(2026年時点の税率)。

相続が起きる前なら、打てる手はさらに増えます。家の相続税対策は「特例を確実に使える状態を作る」が基本方針です。
生前対策は、現状把握なしに始めると空回りします。順番が重要です。
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以降の対策1〜4は、この「方針決定」以降で使う道具です。
最も効果が大きいのは、土地80%減の特例を確実に適用できる状態を作ることです。
「誰がこの家を継ぐか」を生前に決めておくことが、そのまま数百万円の節税につながります。
特例の要件は改正のたびに細かく変わってきた歴史があります。数年前の知識で計画している場合は、現行要件での再確認をおすすめします。
「生前に家を子へ贈与しておけば安心」と考える人は多いのですが、税金面では要注意です。
家の生前贈与には贈与税(税率が相続税より高い)に加え、不動産取得税と高い登録免許税(相続の5倍)がかかり、小規模宅地等の特例も使えなくなります。
トータルでは「相続で渡すほうが安い」ケースが大半です。
贈与が有利になり得るのは、将来ほぼ確実に値上がりする不動産や、収益物件の家賃を早く子に移したい場合など、限られた場面です。
贈与と相続の税金の詳しい比較は、下記の記事で解説しています。

配偶者向けには、専用の制度が2つあります。
【おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)】
婚姻20年以上の夫婦間で、自宅(または取得資金)を2,110万円まで贈与税なしで贈与できます。この贈与は相続財産への足し戻し(7年加算)の対象外です。
【配偶者居住権】
家の「住む権利」と「所有権」を分け、配偶者は住む権利だけを相続する制度。配偶者の取得額を抑えて現金を多く残せるうえ、二次相続では居住権が消滅し課税されないため、トータルの節税になることがあります。
どちらも使いどころを誤ると逆効果になり得る制度です。適用前に必ず試算してください。
家そのものの贈与は不利でも、現金の暦年贈与は堅実な対策です。
年110万円の基礎控除内で子や孫にコツコツ贈与すれば、家を残したまま「家以外の財産」を圧縮し、遺産総額を基礎控除に近づけられます。
「家+預貯金で基礎控除を少し超える」ボーダーラインの家庭には、特に効果的です。
注意点は、相続開始前7年以内(段階的に延長中)の相続人への贈与は相続財産に足し戻されることです。
対策は早く始めるほど効きます。また、孫など相続人以外への贈与は原則足し戻しの対象外という使い分けも覚えておいてください。
贈与の証拠(振込記録・贈与契約書)を残し、受け取った側が口座を管理することも重要です。形が曖昧だと名義預金として遺産に戻されます。
相続税評価の仕組み上、現金1億円は1億円のまま課税されますが、不動産に変えると評価が下がります。
自宅の買い替えやリフォームで現金を家に変える、賃貸に出して貸家評価にする、といった方法で遺産全体の評価を圧縮できます。
ただし、行きすぎた節税目的の不動産購入は、税務署に評価を否認された判例もあります。
納税資金(現金)とのバランスも重要です。節税と資金繰りをセットで設計してください。
評価差を狙う対策は、実行から相続までの期間や経済合理性が問われます。相続直前の駆け込みは否認リスクが高い、と覚えておきましょう。

相続税の有無にかかわらず、家を相続したら必要な手続きと税金があります。特に相続登記は2024年から義務になりました。
2024年4月から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務化されました。
正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。
重要なのは、義務化前に相続した家も対象であることです。過去の相続で登記していない実家がある場合、2027年3月31日までに登記する必要があります。
「祖父名義のままの土地」など世代をまたいだ未登記は、相続人が数十人に膨らんでいることもあります。心当たりがあれば、期限を待たず早めに着手してください。
放置の期間が長いほど、戸籍収集と相続人全員の同意取得の難度は上がっていきます。義務化は「今のうちに片付けるきっかけ」と捉えるのが得策です。
遺産分割がすぐにまとまらない場合は、ひとまず「相続人申告登記」という簡易な手続きで義務を果たす方法もあります。
登記には登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)と、司法書士に依頼する場合の報酬(数万〜十数万円)がかかります。
相続登記のコストは、次の2つで構成されます。
あわせて10〜25万円前後が、家1軒の登記費用の目安です。
相続税の申告費用とは別に、この登記費用も相続の必要経費として最初から予算に入れておきましょう。
評価額100万円以下の土地は登録免許税が免除される特例もあります(2027年3月末まで)。地方の実家では該当することも多いので確認してください。
なお、登記は自分で申請することも可能です。法務局の「かんたん登記申請」などの案内も整備されており、時間があれば自力でのコスト削減も選択肢になります。
家を相続すると、翌年から固定資産税・都市計画税を毎年払うことになります。
目安は固定資産税評価額の1.4%(+都市計画税0.3%)。住宅用地の軽減があるため、評価額2,000万円の家なら年間10〜20万円程度が一般的です。
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されます。遺産分割が決まるまでは相続人全員の連帯負担となるため、立て替えの精算方法も決めておきましょう。
住まない実家を持ち続けるコストは、税金だけで年数十万円になり得ます。維持管理費も含めて、持ち続けるか手放すかの判断材料にしてください。
なお、空き家を放置して「管理不全空家」などに指定されると、住宅用地の軽減(最大6分の1)が外れて固定資産税が跳ね上がるリスクもあります。
「とりあえず持っておく」は、コストとリスクを積み上げる選択でもあります。方針は相続から1年以内に決めるのが理想です。
相続した家を売却して利益が出ると、譲渡所得税がかかります。ただし2つの大きな軽減策があります。
2つの特例は併用できないため、どちらが有利か試算してから売却してください。
「住む・貸す・売る」のどれを選ぶかで、その後の税金は大きく変わります。相続の段階から出口まで見据えて決めるのが理想です。
相続した実家の売却で最も強力な「空き家の3,000万円特別控除」の主な要件を整理します。
要件を満たせば、譲渡所得3,000万円まで税金ゼロ。古い実家の売却では数百万円級の節税になります。
ただし取得費加算の特例とは併用できません。相続税を多く納めた人は、どちらが有利か必ず両方で試算してください。
控除額3,000万円と加算額(納めた相続税の一部)の比較なので、多くのケースでは空き家特例が有利です。相続税が高額だった場合だけ逆転があり得ます。
注意:「相続後に一度でも貸すと対象外」という要件は見落としがちです。売却も視野にあるなら、安易に賃貸に出す前に出口の方針を決めてください。

家は分けにくい財産の代表です。税金以外のトラブルも含めて、よくある失敗と対策を知っておきましょう。
見落としがちですが、家の中にある動産も相続財産です。
現金(タンス預金)、貴金属、骨とう品、車などは、家とは別に評価して遺産総額に含めます。
遺品整理で多額の現金や通帳が見つかるケースは珍しくなく、申告後に発覚すると修正申告が必要になります。
一般的な家財(家具・家電など)は「家財一式」として数十万円程度で評価するのが実務です。
高価な美術品や車がある場合だけ、個別の評価が必要になります。購入時の資料や鑑定書があれば保管しておきましょう。
実家の片付けは、形見分けや処分の前に「財産になるものがないか」の目で一度全体を確認してから進めてください。貸金庫がある場合は開扉の立ち会いも忘れずに。
【事例1:とりあえず共有名義にして塩漬けに】
兄弟で1/2ずつ共有にした実家。売却にも賃貸にも全員の同意が必要で、意見が割れて何もできないまま空き家に。次の相続で共有者がさらに増え、収拾がつかなくなりました。
「平等だから」と共有を選んだ結果、誰も使えない資産になってしまう典型例です。共有の解消(持分の買い取りや分割請求)には、相続以上の手間と費用がかかります。
対策:共有は原則避け、単独相続+代償金(他の相続人へ現金で調整)や売却して分ける換価分割を検討する。
【事例2:遺産が家だけで、相続税が払えない】
遺産のほとんどが実家で現金がなく、納税資金が用意できない。期限が迫り、慌てて相場より安く売却する羽目に。
対策:生前から納税資金を試算し、生命保険(非課税枠500万円×法定相続人)で現金を準備する。間に合わなければ延納・物納も検討する。
【事例3:「家だけいらない」ができず放棄を選べない】
資産価値のない地方の実家だけを相続放棄したいが、放棄は全財産が対象。預貯金を受け取るには家も引き受けるしかありませんでした。
対策:財産の一部だけの放棄はできない前提で、売却・活用・相続土地国庫帰属制度(土地のみ・要件あり)などの出口を早めに検討する。
3つの事例に共通する予防策は「生前に家の行き先を決めておく」ことです。遺言と家族での話し合いが最大のトラブル対策になります。
遺言で家の取得者を指定しておけば、分割協議を経ずに登記や特例の適用へ進めます。家という分けにくい財産こそ、遺言の効果が最も大きい財産です。
買い手がつかない地方の土地には、2023年に始まった「相続土地国庫帰属制度」という選択肢があります。
相続した土地を、審査と負担金(原則20万円〜)を経て国に引き取ってもらう制度です。
ただし対象は土地のみで、建物が建っている場合は解体して更地にしなければ申請できません。
抵当権つき・境界不明・崖地など、引き取ってもらえない土地の類型も細かく決まっています。
解体費と負担金をかけても手放したいか、という損得の問題になるため、売却・寄附・活用と並べて比較検討してください。
「タダ同然でも売れるなら売る」が原則、国庫帰属は最後の手段、という優先順位が現実的です。
自治体の空き家バンクや、隣地の所有者への声かけも意外な出口になります。選択肢を広く並べてから決めましょう。
相続税は原則、現金一括・10ヶ月以内の納付です。家はあるのに現金がない場合の選択肢を押さえておきましょう。
「家を売らずに納税したい」なら延納かローン、「家を手放してよい」なら期限内の売却が軸になります。
どの手段も準備に時間がかかるため、「払えないかも」と気づいた時点で動くことが重要です。
納税資金が足りない場合の対処法は、下記の記事で解説しています。


家の相続税は、評価と特例の適用判断で結果が大きく変わります。境目のケースほど、一括相談・見積りで複数の税理士に確認する価値があります。
土地の評価と小規模宅地等の特例は、税理士の力量差が最も出る分野です。
たとえば実家の土地5,000万円を含む相続のケース。A税理士は路線価×面積の単純計算で評価し、特例の検討も最小限でした。
B税理士は不整形地の補正で評価を4,400万円に下げ、老人ホーム入居でも特例が使えると判定。最終的な税額は280万円以上の差がつきました。
同じ家でも、見る人によって評価額も特例の結論も変わる。これが家の相続税の実務です。
複数の税理士から見積りを取ると、次の3つの判定ポイントで実務力を比較できます。
判定ポイント1:土地の評価で現地調査・減額要素の検討をするか。A税理士は机上計算のみ、B税理士は現地と役所調査で不整形・高低差などの減額要素を拾う → 現地まで見る税理士の方が、評価を適正に下げられると判定できます。
判定ポイント2:小規模宅地等の特例の適用判断を具体的に示すか。同居実態・老人ホーム・家なき子の要件を資料ベースで判定し、根拠を説明できるか → 判定過程を見せる税理士の方が、否認リスクを減らせると判定できます。
判定ポイント3:二次相続・売却まで見据えた分割案を出すか。配偶者の税額軽減の使い方や出口(売却時の特例)まで含めた提案があるか → 先まで設計する税理士の方が、トータルの負担を減らせると判定できます。
土地の評価は「間違いではないが高すぎる」ことがあり得ます。
1社だけの評価では、減額要素の見落としや特例の適用漏れがあっても、比較対象がなく気づけません。
払いすぎた相続税は、更正の請求(原則5年以内)を自分から行わない限り戻りません。
複数の税理士の評価方針を並べることが、適正な税額への最短ルートです。
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 提案内容 | 土地評価の進め方(現地調査の有無)と特例適用の判定方針 |
| 試算相続税額 | 小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減を織り込んだ税額か |
| 報酬額 | 土地評価の加算報酬(不動産1件あたり)を含めた総額か |
重要ポイント:相続税申告の報酬は「基本報酬+不動産の件数などの加算」が一般的です。家がある相続では加算部分まで含めた総額で比較してください。
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重要ポイント:司法書士と連携している事務所なら、相続登記(義務化対応)までワンストップで進められます。登記の段取りも初回相談で確認しておきましょう。
重要ポイント:固定資産税の課税明細書が1枚あるだけで、初回相談の精度が大きく上がります。評価額の土台がその場で分かるからです。
建物は、毎年春に届く固定資産税の課税明細書の「価格(評価額)」欄で確認できます。
土地は、国税庁サイトの路線価図で「路線価×面積」を計算すれば概算が分かります。正確な評価(補正率の適用など)は税理士に依頼してください。
使える場合があります。亡くなった親が一人暮らしで、相続する子が3年以上借家住まいなどの要件を満たす「家なき子特例」に該当すれば、別居でも80%減額が可能です。
ただし持ち家のある子は原則対象外です。要件が厳格なため、該当しそうなら税理士に確認してください。
0円になる理由によります。基礎控除以下で0円なら申告不要ですが、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って0円になる場合は、申告が適用の条件です。
申告しないと特例が使えず、本来の税額と加算税を請求されるおそれがあります。
持ち続けると毎年の固定資産税と管理コストがかかります。賃貸に出して収益化するか、売却するのが主な選択肢です。
売却するなら、空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例(3年10ヶ月以内)が使える期間内に動くと税負担を抑えられます。
迷って空き家のまま数年放置するのが、コスト・特例・建物の傷みのすべてで最も不利な選択です。
建物については同じです(固定資産税評価額をそのまま使います)。
土地は別物で、固定資産税評価額は時価の7割程度、相続税評価(路線価)は時価の8割程度が目安です。土地の相続税評価を固定資産税の明細で代用しないよう注意してください。
家の相続税について、重要なポイントを整理します。
【かからないケースの判定】
【評価と計算】
【相続後の手続きと出口】
【今すぐ取るべき行動】
※本記事は2026年7月時点の法令・情報に基づいて作成しています。税制改正により、内容が変更となる可能性があります。最新の制度については国税庁の公式サイトや税理士にご確認ください。