


生命保険の死亡保険金には、原則として相続税がかかります。ただし「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、この範囲なら税金はかかりません。
非課税枠が使えるのは、亡くなった人が保険料を負担し、相続人が受け取った場合です。契約の形によっては、相続税ではなく所得税や贈与税がかかります。
だれが受け取るかでも税額は変わります。相続放棄した人や相続人でない孫が受け取ると非課税枠が使えず、孫の場合は相続税が2割増しになります。
保険金を受け取っても、ほかの財産と合わせて基礎控除以下なら申告は要りません。ただし保険会社は支払った保険金を税務署に報告しているため、判定を誤るとあとから分かります。
さらに保険金は受取人だけの財産で、原則として遺産分割の対象にはなりません。ただし相続人の間の不公平が大きいと、遺産に足し戻して計算し直すことがあります。
この記事では、死亡保険金に相続税がかかるケース、契約の形で決まる3つの税金、非課税枠の計算、相続税の計算例、申告の要否、受取人の選び方、遺留分との関係を解説します。
▼ この記事の3行まとめ

亡くなった人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税の対象になります。ただし「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、さらに遺産全体が基礎控除以下なら相続税はかかりません。ここでは、かかるケースとかからないケースを先に整理します。
死亡保険金に相続税がかかるかは、2段階で決まります。まず非課税枠を超えるか、次に遺産全体が基礎控除を超えるかです。
| 状況 | 相続税 | 理由 |
|---|---|---|
| 保険金が非課税枠の範囲内 | かからない | 保険金は課税の対象に入らない |
| 非課税枠を超えたが、遺産全体が基礎控除以下 | かからない | 遺産全体が非課税の範囲に収まる |
| 非課税枠を超え、遺産全体も基礎控除を超える | かかる | 超えた部分に相続税がかかる |
| 保険料を負担したのが受取人本人や別の人 | 相続税ではない | 所得税や贈与税の対象になる |
表の見方:黄色の行だけが、相続税を納めるケースです。保険金が多くても、遺産全体が基礎控除以下なら相続税は0円です。
重要ポイント:最後の行のように、契約の形によっては相続税ではない税金がかかります。保険証券で、だれが保険料を払っていたかを最初に確かめてください。
相続税がかかる場合でも、課税されるのは保険金の全額ではありません。非課税枠を引いた残りが、ほかの財産と合わせて基礎控除を超えた部分にだけかかります。
参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
非課税枠は、遺産全体にかかる基礎控除とは別に使えます。相続人3人なら、保険金1,500万円と、ほかの財産4,800万円の合計6,300万円まで相続税はかかりません。
| 法定相続人の数 | 保険金の非課税枠 | 基礎控除 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 500万円 | 3,600万円 | 4,100万円 |
| 2人 | 1,000万円 | 4,200万円 | 5,200万円 |
| 3人 | 1,500万円 | 4,800万円 | 6,300万円 |
| 4人 | 2,000万円 | 5,400万円 | 7,400万円 |
| 5人 | 2,500万円 | 6,000万円 | 8,500万円 |
表の見方:相続人が1人増えるごとに、非課税枠が500万円、基礎控除が600万円増えます。合計では1,100万円ずつ広がります。
重要ポイント:合計の金額は、保険金が非課税枠の範囲内という条件つきです。保険金が枠を超えれば、超えた分はほかの財産と一緒に基礎控除と比べます。
生前の贈与も足し戻すため、亡くなる前3〜7年に贈与を受けていれば、その分も合計に入ります。保険金と現預金だけで判断せず、財産全体で確かめてください。
生命保険で相続税がかからないのはいくらまでかと、基礎控除との違いは、下記の記事で解説しています。

死亡保険金は、法律上は亡くなった人の財産ではなく、受取人だけの財産です。遺産分割の話し合いを待たずに、受取人が1人で請求して受け取れます。
【受取人だけの財産であることで生じる効果】
一方で税金の上では、相続で受け取ったものとみなして相続税の対象にします。法律上は財産でないのに税金はかかる、という二重の性格を持つ点を押さえてください。
【保険金の請求に使う主な書類】
税金の上で相続財産とみなされる財産の種類と、それぞれの非課税枠は、下記の記事で解説しています。


死亡保険金にかかる税金は1種類ではありません。保険料を負担した人・被保険者・受取人の組み合わせで、相続税・所得税・贈与税のどれになるかが決まります。非課税枠が使えるのは相続税の場合だけなので、最初にここを確かめてください。
判定の基準は、契約者の名義ではなく、保険料を実際に負担した人です。契約者が子の名義でも、保険料を父が払っていれば、父が負担した保険として扱います。
| 保険料を負担した人 | 被保険者 | 受取人 | かかる税金 |
|---|---|---|---|
| 父(亡くなった人) | 父 | 母・子(相続人) | 相続税(非課税枠が使える) |
| 子(受取人本人) | 父 | 子 | 所得税・住民税 |
| 母 | 父 | 子 | 贈与税 |
表の見方:黄色の行だけが相続税で、非課税枠が使えます。保険料を負担した人と被保険者が同じで、受取人が相続人という形です。
重要ポイント:相続対策として保険に入るなら、亡くなる人が保険料を負担し、自分を被保険者にする形が基本です。この形でなければ非課税枠は使えません。
保険料をだれが払っていたかを確かめる
引き落とし口座の名義を見ます。契約者の名義ではなく、お金の出どころで判断します。
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払った人と被保険者が同じかを確かめる
同じなら相続税です。違えば所得税か贈与税になります。
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受取人がだれかを確かめる
払った人が受取人なら所得税、3者が違えば贈与税です。相続税なら、受取人が相続人かで非課税枠が決まります。
よくあるのが、契約者は子の名義なのに、保険料は父の口座から払っていたという形です。この場合は父が負担した保険として扱い、父が被保険者なら相続税の対象になります。
保険料を夫婦で分けて払っていた場合は、それぞれが払った割合で税金を分けて判定します。払った人ごとに相続税・所得税・贈与税が混ざるため、払込みの記録を確かめてください。通帳の引き落としの記録が、そのまま判定の根拠になります。
子が保険料を払い、父が亡くなって子が受け取った場合は、相続税ではなく所得税と住民税の対象です。課税されるのは「保険金-払った保険料-50万円」の半分で、ほかの所得と合わせて計算します。
【計算例】保険金2,000万円・払った保険料1,500万円
(2,000万円-1,500万円-50万円)×2分の1=225万円が、所得税の課税の対象です。払った保険料を差し引けるため、保険金と保険料の差が小さいと負担は軽く済みます。
受け取った翌年の3月15日までに、確定申告が必要です。相続税の非課税枠という考え方はありません。
一時所得には住民税もかかります。給与など他の所得と合わせて税率が決まるため、所得が多い人ほど負担は大きくなります。受け取る前に、ほかの所得と合わせた税額の見込みを確かめてください。
相続税の申告や確定申告が必要かどうかの判定は、下記の記事で解説しています。

母が保険料を払い、父が被保険者で、子が受け取った場合は、母から子への贈与として贈与税がかかります。3つの税金の中で最も負担が重くなりやすい形です。
贈与税は、受け取った額から基礎控除110万円を引いた残りに、高い税率がかかります。保険金2,000万円なら、相続税で受け取る場合と比べて税額が大きく膨らみます。
【計算例】母が保険料を払い、父が亡くなって成人の子が保険金2,000万円を受け取った場合
(2,000万円-110万円)×45%-265万円=585.5万円の贈与税です。父が保険料を払う形なら、非課税枠と基礎控除で相続税が0円になることも多い金額です。
夫婦それぞれが自分の保険料を払い、自分を被保険者にする形にしておけば、贈与税の形を避けられます。加入している保険の形を一度確かめてください。
受取人が18歳未満の子や、夫から妻への場合は、計算例より高い一般の税率が使われます。贈与税の形になっている保険は、早めに契約の形を見直す価値があります。
亡くなった人が保険料を払っていた保険でも、被保険者が別の人で、まだ生きている場合があります。この保険は保険金ではなく「生命保険契約に関する権利」として、本来の相続財産になります。
評価額は、亡くなった日に解約したとした場合の解約返戻金の額です。保険金ではないため、500万円×法定相続人の数の非課税枠は使えません。
たとえば父が保険料を払い、母を被保険者にしていた保険は、父の相続で解約返戻金の額が相続財産に入ります。契約者を引き継ぐ人を、遺産分割で決める必要があります。
| 保険料を払った人 | 被保険者 | 亡くなった人 | 相続での扱い |
|---|---|---|---|
| 父 | 父 | 父 | 死亡保険金として相続税(非課税枠あり) |
| 父 | 母 | 父 | 契約に関する権利として相続財産(解約返戻金の額・非課税枠なし) |
| 母 | 父 | 父 | 受取人が子なら贈与税、母なら所得税 |
表の見方:黄色の行は、保険金がまだ支払われていない保険です。保険金ではないため、非課税枠を使えない点に注意してください。

相続税の対象になる保険金には、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。人数の数え方、枠を超えた場合の計算、受取人が複数いるときの分け方、枠が使えないケースを順に確認します。
非課税枠を決めるのは、法定相続人の数です。実際に保険金を受け取った人の数ではありません。数え方は基礎控除と同じです。
| ケース | 数え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相続放棄した人がいる | 人数に入れる | その人が受け取った保険金には枠を使えない |
| 養子がいる(実子あり) | 養子は1人まで | 2人目からは人数に入らない |
| 養子がいる(実子なし) | 養子は2人まで | 3人目からは人数に入らない |
| 子が先に亡くなり孫がいる | 孫を人数に入れる | 代わりに相続する孫は枠も使える |
表の見方:黄色の行が最も混乱しやすいところです。相続放棄した人は「人数には入れるが、本人は枠を使えない」という食い違いがあります。
重要ポイント:相続放棄があっても枠の総額は減りません。放棄した人が受取人でなければ、ほかの相続人が枠を使えます。
受取人が子1人だけでも、相続人が配偶者と子2人の3人なら、枠は1,500万円です。受取人の数を増やしても枠は増えず、増えるのは相続人の数が増えたときだけです。
相続税の基礎控除の計算と、法定相続人の数え方の注意点は、下記の記事で解説しています。

枠を超えた分だけが、相続財産に加わります。保険金の全額に相続税がかかるわけではありません。
| 受け取った保険金 | 非課税枠(相続人3人) | 相続財産に加わる額 |
|---|---|---|
| 1,000万円 | 1,500万円 | 0円 |
| 1,500万円 | 1,500万円 | 0円 |
| 2,000万円 | 1,500万円 | 500万円 |
| 3,000万円 | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 5,000万円 | 1,500万円 | 3,500万円 |
表の見方:相続人3人で保険金2,000万円なら、枠1,500万円を引いた500万円だけが相続財産に加わります。
相続人が子2人だけなら、枠は1,000万円です。同じ保険金2,000万円でも、相続財産に加わるのは1,000万円になり、相続人3人の場合より500万円多くなります。
重要ポイント:税金の面だけで見れば、枠を超えて加入しても効果はありません。ただし納税資金や家族の生活保障が目的なら、枠を超えて加入する意味はあります。
受取人が複数いるときは、非課税枠を、それぞれが受け取った保険金の割合で分けます。
| 受取人 | 受け取った保険金 | 使える非課税枠 | 相続財産に加わる額 |
|---|---|---|---|
| 配偶者 | 1,500万円 | 750万円 | 750万円 |
| 子A | 900万円 | 450万円 | 450万円 |
| 子B | 600万円 | 300万円 | 300万円 |
| 合計 | 3,000万円 | 1,500万円 | 1,500万円 |
表の見方:相続人3人・保険金の合計3,000万円の例です。非課税枠1,500万円を、1,500対900対600の割合で分けています。
計算ロジック:配偶者の枠は1,500万円×(1,500万円÷3,000万円)=750万円です。子Aは1,500万円×(900万円÷3,000万円)=450万円、子Bは300万円になります。
受取人に相続人でない人が含まれる場合は、その人の保険金を除き、相続人が受け取った保険金の割合だけで枠を分けます。相続人でない人には、枠は割り当てられません。
按分した枠は、ほかの受取人に回すことはできません。1人が受け取った保険金が少なく、枠が余っても、その余りをほかの受取人の枠に足すことはできません。
非課税枠は、受取人や契約の形によって使えないことがあります。当てはまると税負担が大きく変わるため、加入の前と受け取りの前に確かめてください。
| ケース | 非課税枠 | 理由 |
|---|---|---|
| 相続放棄した人が受け取った | 使えない | 相続人ではなくなるため(人数には入れる) |
| 相続人でない孫が受け取った | 使えない | 相続人でないうえ、相続税が2割増し |
| 相続人でない兄弟姉妹・内縁の配偶者が受け取った | 使えない | 相続人でないうえ、相続税が2割増し |
| 保険料を負担した人が受取人本人 | 使えない | 所得税の対象で、相続税ではない |
| 3者がすべて違う | 使えない | 贈与税の対象で、相続税ではない |
表の見方:上の3行は相続税だが枠が使えないケース、下の2行はそもそも相続税ではないケースです。原因が違うため、対処も変わります。
重要ポイント:赤い行の孫は、子が生きている場合です。子が先に亡くなり、孫が代わりに相続人になっている場合は、枠が使えて2割増しにもなりません。
【事例】借金があって相続放棄し、保険金1,000万円を受け取った場合
放棄しても保険金は受け取れますが、非課税枠は使えず1,000万円全額が相続財産に加わります。ほかの相続人の財産と合わせて基礎控除を超えれば、放棄した人にも相続税がかかります。
相続放棄をした場合の基礎控除・保険金・使える控除は、下記の記事で解説しています。


保険金がある場合の相続税は、非課税枠を引いた保険金をほかの財産に足し、そこから基礎控除を引いて計算します。ここでは計算の手順と、受取人を変えた3つのケースの試算、遺産額ごとの税額を示します。
保険金があっても、相続税の計算の流れは変わりません。違うのは、最初に保険金から非課税枠を引く点だけです。
保険金から非課税枠を引く
受け取った保険金から、500万円×法定相続人の数を引きます。
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ほかの財産と合計する
残った保険金を、預貯金や不動産などほかの財産と足し、借入金と葬式費用を引きます。
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基礎控除を引いて相続税の総額を出す
3,000万円+600万円×人数を引き、法定相続分で分けたと仮定して税率を掛けます。
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各人が納める額を出す
総額を実際の取得額で分け、配偶者の税額軽減や孫の2割増しを反映します。
重要ポイント:相続税の総額は、法定相続分で分けたと仮定して計算します。保険金をだれが受け取ったかで変わるのは、各人が納める額のほうです。
相続税の総額を出した後は、各人が受け取った財産の割合で分けます。保険金を多く受け取った人は、そのぶん相続税の負担も多くなります。
同じ保険金2,000万円でも、だれが受け取るかで納める相続税が変わります。相続人でない孫が受け取ると、子が受け取る場合の4倍以上の相続税になります。
| 受取人 | 相続財産の合計 | 相続税の総額 | 家族が納める合計 |
|---|---|---|---|
| 子1が受け取る | 5,500万円 | 70万円 | 38.2万円 |
| 配偶者が受け取る | 5,500万円 | 70万円 | 31.8万円 |
| 孫(相続人でない)が受け取る | 7,000万円 | 225万円 | 157.5万円 |
表の見方:上の2行は非課税枠が使えるため、相続財産の合計は5,500万円です。孫が受け取ると枠が使えず、合計7,000万円になります。
子1が受け取る場合と配偶者が受け取る場合で差が出るのは、配偶者の取り分が増えると、税額軽減で0円になる部分が増えるためです。ただし、この差は次の相続の負担を含んでいません。
孫のケースでは、孫自身が相続税を納めます。孫が未成年なら、親が代わりに手続きをすることになり、家族全体の負担として考える必要があります。
重要ポイント:孫のケースは、枠が使えないことと2割増しの両方が効きます。子が受け取る場合との差は119.3万円です。
計算ロジック:【前提】現金5,000万円(配偶者2,500万円・子2人に各1,250万円)と保険金2,000万円・相続人は配偶者と子2人。配偶者の分は税額軽減で0円、孫の分は2割増しで計算しています。
孫が財産を受け取る場合の相続税と、2割増しになる対象は、下記の記事で解説しています。

同じ金額でも、現金で残すより保険で受け取るほうが相続財産は小さくなります。非課税枠の分だけ、税金のかかる財産が減るためです。
| 財産の持ち方 | 相続財産の合計 | 基礎控除 | 税金のかかる額 |
|---|---|---|---|
| 現金6,000万円のまま | 6,000万円 | 4,800万円 | 1,200万円 |
| 現金4,500万円+保険金1,500万円 | 4,500万円 | 4,800万円 | 0円 |
表の見方:財産の総額は同じ6,000万円ですが、1,500万円を保険に換えると非課税枠に収まり、基礎控除を下回ります。
計算ロジック:【前提】相続人は配偶者と子2人。保険金1,500万円は非課税枠(500万円×3人)にちょうど収まるため、相続財産に加わりません。
保険金を含めた相続財産の合計で、相続税の目安を確かめてください。配偶者が半分を受け取れば、配偶者の分は税額軽減で0円になり、子が納める分だけが残ります。
| 相続財産の合計(保険金を含む) | 配偶者と子1人 | 配偶者と子2人 |
|---|---|---|
| 6,000万円 | 90万円 | 60万円 |
| 8,000万円 | 235万円 | 175万円 |
| 1億円 | 385万円 | 315万円 |
| 1億5,000万円 | 920万円 | 747.5万円 |
表の見方:金額は子が納める相続税の合計です。保険金は、非課税枠を引いた後の額で相続財産に含めてください。
計算ロジック:【前提】配偶者が法定相続分(2分の1)を取得し、配偶者の税額軽減を使った場合。相続税の総額の半分が子の負担です。
子が1人の家庭は、子2人の家庭より基礎控除が600万円小さく、子1人あたりの取り分も大きくなります。そのため同じ遺産額でも、子が納める相続税は子1人の家庭のほうが多くなります。

保険金を受け取ったからといって、必ず申告が必要になるわけではありません。保険金の非課税枠を引いたうえで、遺産全体が基礎控除以下なら申告は要りません。ただし保険金の情報は税務署に届いているため、判定は正確に行ってください。
保険金の非課税枠は、申告しなくても使えます。枠を引いた保険金とほかの財産の合計が基礎控除以下なら、申告は要りません。
ただし、自宅の土地の特例や配偶者の税額軽減を使って基礎控除以下や0円になる場合は別です。これらの特例は、申告書を出すことが使う条件になります。
【申告が要るかの判定】
たとえば相続人3人で、保険金2,000万円と預貯金3,500万円がある場合です。保険金から枠1,500万円を引いた500万円と預貯金を足すと4,000万円で、基礎控除4,800万円を下回るため申告は要りません。
保険会社は、100万円を超える死亡保険金を支払うと、受取人や金額を書いた「支払調書」を税務署に出します。申告しなくても、税務署は保険金の存在を把握しています。
このため、保険金を外して基礎控除以下と判断すると、あとから税務署に指摘されます。申告が必要だったのに出していなければ、無申告加算税と延滞税がかかります。
無申告加算税は、税務調査のあとに申告すると15%(50万円超の部分は20%、300万円超の部分は30%)です。調査の通知が来る前に自分で申告すれば、5%に下がります。
家族が知らない保険がないかは、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」で調べられます。亡くなった人の契約を、加盟する保険会社にまとめて照会できます。
照会は、亡くなった人の法定相続人や遺言執行者などが申し込めます。見つかった保険は受取人が請求し、申告が要るかの判定にも金額を入れてください。照会には手数料がかかり、結果が届くまで数週間ほど見ておく必要があります。
保険金の請求には期限があります。多くの保険会社では、亡くなってから3年を過ぎると請求の権利が時効で消えます。受取人になっていることに気づいたら、早めに請求してください。
保険金を一括でなく年金で受け取る場合は、受け取る権利の評価額に相続税がかかります。毎年受け取る年金は所得税の対象ですが、相続税がかかった部分は差し引いて計算します。
年金で受け取ると税金の計算が2つの税目にまたがるため、受け取り方を決める前に保険会社と税理士に確かめてください。
年金で受け取る場合も、受け取る権利の評価額から非課税枠を引けます。一括で受け取るか年金にするかで、非課税枠が使えなくなるわけではありません。
一方、個人年金保険を受け取っている途中で亡くなり残りの年金を引き継いだ場合は、非課税枠を使えません。年金の種類別の扱いは、下記の記事で解説しています。

保険金の請求と相続の手続きは、並行して進みます。相続放棄の期限(3か月)と申告の期限(10か月)を意識して、順番に進めてください。
保険会社に連絡して請求する
受取人が請求書と死亡を証明する書類を出すと、おおむね1週間ほどで支払われます。
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相続放棄をするかを決める
放棄しても保険金は受け取れますが、非課税枠は使えなくなります。
⬇
申告が要るかを判定する
保険金から非課税枠を引き、ほかの財産と合わせて基礎控除と比べます。
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申告と納付を済ませる
基礎控除を超える場合や、特例を使う場合は、申告書を出して相続税を納めます。
重要ポイント:借金が多く相続放棄を考えている場合も、保険金は受け取れます。ただし放棄した人は非課税枠を使えないため、放棄するかは保険金の税金も含めて判断してください。

非課税枠は相続人が受け取れば使えますが、配偶者・子・孫のだれを受取人にするかで、今回と次の相続を合わせた税額が変わります。ここでは受取人ごとの違いと、次の相続まで見た考え方を整理します。
配偶者が受け取った財産は、1億6,000万円か法定相続分の多いほうまで相続税がかかりません。保険金も、この税額軽減の対象に含まれます。
ただし配偶者の税額軽減は、申告書を出して初めて使えます。保険金の非課税枠が申告なしで使えるのとは扱いが違うため、注意してください。
たとえば遺産1億円で、配偶者が保険金を含めて5,000万円を受け取っても、1億6,000万円の範囲なので配偶者の相続税は0円です。この軽減は、遺産の分け方が決まっていることも条件です。
配偶者の税額軽減の上限と、申告の後に適用する方法は、下記の記事で解説しています。

配偶者が保険金を受け取ると今回の負担は軽くなりますが、その保険金は配偶者の財産になり、配偶者が亡くなったときに再び課税されます。
【今回の相続で起きること】
配偶者が受け取れば、税額軽減で配偶者の負担はほぼ生じません。
【次の相続で起きること】
相続人は子だけになり、基礎控除が600万円減り、配偶者の税額軽減も使えません。今回払わなかった分を、条件の悪い次の相続で払うことになります。
配偶者に十分な財産があるなら、子を受取人にして今回で完結させたほうが、2回の相続の合計が軽くなる場合があります。配偶者自身の財産と合わせて試算してください。
| 保険金3,000万円の受取人 | 今回の相続税 | 次の相続の相続税 | 2回の合計 |
|---|---|---|---|
| 子2人が受け取る | 321.3万円 | 180万円 | 501.3万円 |
| 配偶者が受け取る | 233.7万円 | 620万円 | 853.7万円 |
表の見方:今回だけ見れば配偶者が受け取るほうが軽いものの、次の相続まで合わせると子が受け取るほうが352.4万円軽くなります。
計算ロジック:【前提】今回は現金8,000万円(配偶者4,000万円・子2人に各2,000万円)と保険金3,000万円・相続人は配偶者と子2人。次の相続は、配偶者の財産2,000万円に今回の取得分を足し、子2人が相続する計算です。
受取人は、保険で何をしたいかで決めます。納税資金の準備が目的なら、子を受取人にするのが基本です。
| 目的 | 向いている受取人 | 理由 |
|---|---|---|
| 配偶者の生活資金 | 配偶者 | 税額軽減で負担が軽く、すぐに受け取れる |
| 子の納税資金 | 子 | 次の相続を経由しないため、合計で軽くなりやすい |
| 不動産を分けるための資金 | 不動産を取得する子 | ほかの相続人に払うお金にできる |
| 孫に残したい | 受取人にしないほうがよい | 非課税枠が使えず、相続税が2割増し |
表の見方:赤い行のとおり、孫に残したい気持ちが最も税負担を重くする組み合わせになります。孫には生前の贈与など別の方法を考えてください。
重要ポイント:受取人は、被保険者が生きている間なら保険会社の手続きで変えられます。今の契約の受取人を一度確かめてください。
受取人の変更は、遺言でもできます。ただし保険会社に知らせる前に保険金が支払われると、変更を主張できなくなることがあるため、生前に保険会社で手続きしておくのが確実です。

特定の相続人だけを受取人にすると、ほかの相続人から不公平だと言われることがあります。保険金は原則として遺産分割にも遺留分にも入りませんが、不公平が大きいと例外的に足し戻されます。ここでは原則と例外、足し戻された場合の計算を確認します。
死亡保険金は受取人だけの財産で、亡くなった人から引き継ぐ財産ではありません。そのため原則として、遺産分割の対象にも遺留分の計算にも入りません。
最高裁平成16年10月29日決定も、死亡保険金は生前の贈与などと同じように遺産に足し戻す財産(特別受益)には当たらない、と判断しています。
このため原則としては、ある相続人だけを受取人にして、ほかの相続人に保険金が渡らなくても問題になりません。保険が特定の人に確実にお金を渡す方法として使われる理由です。
ただし相続人全員が合意すれば、遺産分割の話し合いで保険金を考慮して分けることは自由です。保険金を多く受け取った人が、ほかの遺産を少なめにするといった調整はよく行われています。
同じ最高裁決定は、例外も示しました。受取人とほかの相続人との不公平が「到底是認できないほど著しい」特段の事情があれば、特別受益に準じて遺産に足し戻します。
| 判断の要素 | 見られる点 |
|---|---|
| 保険金の額 | 金額そのものの大きさ |
| 遺産の総額に対する割合 | 保険金が遺産全体のどれくらいか |
| 受取人とほかの相続人の関係 | 同居の有無、介護などの貢献 |
| 各相続人の生活の実態 | 今の暮らしや経済状態 |
表の見方:4つを合わせて判断するため、1つの要素だけでは結論が出ません。黄色の割合は目を引きますが、それだけで決まるわけではありません。
重要ポイント:長年介護をしていた相続人が受取人なら、多く受け取ることに理由があると評価される余地があります。
この最高裁決定は、遺産分割での足し戻し(特別受益)についての判断です。遺留分を請求する場面でも同じ考え方が使われるかは、事案ごとに判断が分かれる余地があります。
「遺産の半分を超えなければ大丈夫」という説明を見かけますが、判例が何%という基準を示したことはありません。その後の裁判例でも、結論は割合だけでは分かれていません。
| 保険金の遺産に対する割合 | 足し戻し | 判断に影響した事情の例 |
|---|---|---|
| 10%弱 | 否定 | 受取人が同居し、介護を手伝っていた |
| 約61% | 肯定 | 受取人との婚姻期間が3年5か月ほど |
| 約93% | 肯定 | 受取人の貢献を考慮しても特段の事情あり |
| 約100% | 肯定 | 扶養や介護を託す意図がうかがえなかった |
| 約270%(遺産の2.7倍) | 否定 | 婚姻約20年の配偶者で、長期の生活保障が必要 |
表の見方:黄色の行のように、遺産の2.7倍の保険金でも足し戻しが否定された例があります。逆に、割合が高くなるほど足し戻される可能性は高まる傾向です。
重要ポイント:受取人を偏らせるなら、遺言で「足し戻さない」という意思を書いておくと、争いを防ぐ材料になります。加入の目的も書面に残してください。
足し戻されると、保険金を遺産に加えて各相続人の取り分を計算し直します。受取人は、受け取った保険金の分だけ遺産からの取り分が減ります。
| 項目 | 足し戻しなし(原則) | 足し戻しあり(例外) |
|---|---|---|
| 分ける対象 | 遺産6,000万円 | 6,000万円+保険金2,000万円=8,000万円 |
| 1人の取り分(2分の1) | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 長男が遺産から取得 | 3,000万円 | 4,000万円-2,000万円=2,000万円 |
| 長男の合計(保険金を含む) | 5,000万円 | 4,000万円 |
| 次男の合計 | 3,000万円 | 4,000万円 |
表の見方:遺産6,000万円・子2人で、長男が保険金2,000万円を受け取った例です。足し戻すと、2人の取得額がそろいます。
重要ポイント:足し戻しは遺産の分け方の話で、相続税の計算は変わりません。非課税枠は、足し戻しの有無にかかわらず使えます。
特別受益があると相続税はどうなるかと、足し戻しの計算方法は、下記の記事で解説しています。


亡くなったときに受け取るお金は、死亡保険金だけではありません。死亡退職金には保険金とは別の非課税枠があり、入院給付金などは扱いが違います。ここでは、保険金と一緒に確かめたいお金の扱いを整理します。
死亡退職金にも「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。保険金の枠とは別に使えるため、相続人3人なら合わせて3,000万円が非課税です。
| 項目 | 死亡保険金 | 死亡退職金 |
|---|---|---|
| 非課税枠 | 500万円×法定相続人の数 | 500万円×法定相続人の数(別枠) |
| 相続人3人の場合 | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 対象 | 亡くなった人が保険料を負担した契約 | 亡くなってから3年以内に支給が確定したもの |
表の見方:基礎控除4,800万円と合わせると、相続人3人で7,800万円まで相続税がかからない計算です。
亡くなってから3年を過ぎて支給が決まった退職金は、相続税ではなく、受け取った遺族の一時所得として所得税の対象になります。
重要ポイント:会社から弔慰金が出る場合は、業務外の死亡なら給与の6か月分、業務上の死亡なら3年分までが、さらに別に非課税です。
弔慰金のうち、この範囲を超えた部分は死亡退職金として扱い、退職金の非課税枠を使います。保険金・退職金・弔慰金の3つの枠を、順に確かめてください。
参照元:国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
死亡退職金の相続税と、非課税枠の計算の早見表は、下記の記事で解説しています。

入院給付金や、余命の宣告を受けて生前に受け取る保険金(リビング・ニーズ特約)は、死亡保険金ではありません。使い切らずに残った分は、預貯金と同じ本来の相続財産になり、非課税枠は使えません。
| 受け取り方 | 相続税の扱い | 非課税枠 |
|---|---|---|
| 亡くなった後に死亡保険金として受け取る | 相続財産とみなす | 使える |
| 生前に受け取り、使わずに残った分 | 本来の相続財産 | 使えない |
| 亡くなった後に家族が入院給付金を請求した分 | 本来の相続財産 | 使えない |
表の見方:黄色の行のとおり、生前に受け取った給付金は、受け取った時点では非課税でも、残った分は相続財産になります。
重要ポイント:医療費などに使う予定がないなら、リビング・ニーズ特約を使わず死亡保険金として受け取るほうが、非課税枠を使える分だけ有利です。
がんの診断給付金や介護の一時金も、被保険者本人が受け取るものは同じ扱いです。受け取った時点では非課税ですが、亡くなったときに残っていれば預貯金と同じく相続財産になります。
受取人に指定していた人が先に亡くなっていて、変更していなかった場合は、その受取人の相続人が保険金を受け取ります。思わぬ人が受取人になることがあります。
たとえば受取人の妻が先に亡くなっていれば、妻の相続人である子が受け取るのが一般的です。受け取った人が相続人でなければ、非課税枠は使えません。
受取人が亡くなったら、被保険者が生きているうちに受取人を変えておいてください。約款によって扱いが違うこともあるため、保険会社に確かめるのが確実です。
受取人の相続人が複数いると、保険金は人数で等しく分けるのが原則です。思わぬ親族が受け取る形になると、非課税枠が使えない人が出てくることがあります。

生命保険は、非課税枠に加えて、納税資金や分け方の資金を確実に残せる方法です。ただし契約の形と受取人を間違えると、効果がなくなるうえに税金が重くなります。ここでは対策として使う場面と、加入前のチェック項目を整理します。
財産の大半が自宅などの不動産だと、相続税を払う現金や、ほかの相続人に払うお金が足りなくなります。保険金は遺産分割を待たずに受け取れるため、こうした資金として確実に使えます。
| 相続人 | 取得するもの | 渡すもの |
|---|---|---|
| 長男(受取人) | 自宅3,000万円+保険金1,000万円 | 次男に代償金1,000万円 |
| 次男 | 代償金1,000万円 | — |
表の見方:長男は自宅を取得しつつ、保険金で次男にお金を払えます。自宅を売らずに公平を保てます。
保険料の払い方には、一括で払う方法と毎月払う方法があります。一括で払う保険は、現金を保険に換えて非課税枠を使う方法としてよく使われますが、相続の直前の加入は遺留分の争いで不利に働くことがあります。
高齢になると、健康状態によって加入できる保険が限られ、保険料も上がります。保険を相続対策に使うなら、元気なうちに目的と金額を決めておくほうが選べる商品は広がります。
重要ポイント:代償金は、払った長男の課税価格から引き、受け取った次男の課税価格に加えます。非課税枠は、長男が受け取った保険金の額で判定します。
相続税の納付も、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。預金が凍結されて納税資金が用意できないときも、保険金なら期限に間に合わせやすくなります。
代償分割の代償金の決め方と、相続税の計算方法は、下記の記事で解説しています。

相続対策としての保険金額は、非課税枠と、相続税を払うのに要る現金の2つから逆算して決めます。枠だけを目安にすると、納税資金が足りなくなることがあります。
| 目的 | 保険金額の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 非課税枠を使い切る | 500万円×法定相続人の数 | 枠を超える部分は税金の効果がない |
| 相続税の納税資金 | 見込まれる相続税の額 | 土地が多く現金が少ない家庭ほど必要 |
| 分け方の資金 | 不動産を取得しない相続人の取り分 | 代償金として払える額 |
表の見方:3つの目的のうち、最も大きい額が保険金額の目安です。節税だけが目的なら、黄色の行の額で足ります。
重要ポイント:相続税の見込み額は、財産の評価で大きく変わります。保険金額を決める前に、今の財産で相続税がいくらになるかを試算してください。
次の項目は、すでに加入している保険の点検にも使えます。上の2つが、非課税枠を使えるかを決める項目です。
重要ポイント:相続の直前に一括払いで加入した保険は、資産の移し替えとみられやすく、遺留分の争いで不利になることがあります。健康なうちに目的を決めて加入してください。
一時払い終身保険が相続税対策になるかと、現金・贈与との比較は、下記の記事で解説しています。


非課税枠の計算そのものは単純ですが、契約の形の判定と、次の相続や遺留分まで見た受取人の決め方は判断が要ります。複数の税理士に同じ条件で相談し、提案の中身と費用を比べて選ぶのがおすすめです。
保険を相続対策に使う場合、税金と民法の両方の判断が要ります。保険の販売担当者は、税金の判定や遺留分の見通しまで踏み込めないことがあります。
相続税の対応実績がある税理士に相談する理由
本記事の試算では、同じ保険金2,000万円でも、子が受け取る場合と相続人でない孫が受け取る場合で、家族が納める相続税に119.3万円の差が出ました。
見積もりを並べると費用を比べられますが、差が大きいのは提案の中身です。次の3点を各事務所に同じ質問で聞き、答えを突き合わせてください。
判定ポイント1:保険料を実際に払った人を最初に確かめるか
A税理士は契約者の名義だけを確かめ、B税理士は「保険料はどの口座から引き落とされていましたか」と聞きました。
→ B税理士の方が、税金の種類を正しく判定する実務経験が豊富と判定できます。
判定ポイント2:受取人を変えた場合の試算を出すか
A税理士は今の契約のままの税額だけを示し、B税理士は配偶者・子それぞれを受取人にした場合の、2回の相続の合計を比べました。
→ B税理士の方が、次の相続まで見た提案の実務経験が豊富と判定できます。
判定ポイント3:遺留分のおそれに触れるか
A税理士は税額の計算だけで終わり、B税理士は受取人の偏りが大きい点と、遺言での手当てを説明しました。
→ B税理士の方が、争いを見すえた設計の実務経験が豊富と判定できます。
保険の担当者だけに相談して進めると、税金と分け方の両方で見落としが起きます。いずれも、加入前や受け取りの前に確かめれば避けられたものです。
相談しないまま進めると起きること
相談は無料のことが多く、比べるだけなら費用はかかりません。今の契約の点検だけでも、相談する価値があります。
同じ保険金2,000万円で、受取人だけを変えた場合の負担を並べます。受取人の指定を1つ変えるだけで、相続税が大きく変わります。
| 受取人 | 非課税枠 | 2割増し | 家族が納める相続税 |
|---|---|---|---|
| 子1が受け取る | 使える | なし | 38.2万円 |
| 配偶者が受け取る | 使える | なし | 31.8万円 |
| 孫(相続人でない)が受け取る | 使えない | あり(1.2倍) | 157.5万円 |
表の見方:上の2行は枠が使えるため、負担は小さく済みます。配偶者が受け取ると今回は最も軽くなりますが、次の相続の負担は含んでいません。
重要ポイント:受取人は、被保険者が生きていれば変えられます。今の契約の受取人を確かめてください。
計算ロジック:数値は「受取人を変えた3つのケースの試算」の表と同じ前提です。現金5,000万円と保険金2,000万円、相続人は配偶者と子2人です。
相続の概要を整理する
被相続人の資産内容・資産額概算・相続人構成・年齢・遺言の有無をメモにまとめます。保険証券で、保険料を払った人・被保険者・受取人も書き出します。
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一括見積り・相談サービスに依頼する
複数の税理士事務所に一括で見積りを依頼できるサービスを使います。希望内容を「相続税申告・相続税の節税・確定申告・準確定申告など」と明確に記し、複数の税理士(目安3~5の事務所)への同時打診を依頼します。
不動産がある場合は所在地・広さなども記載します。フォームでは「財産の種類」「相続人の人数」をできるだけ正確に伝えると見積りの精度が上がります。フォーム記入自体は5分程度です。
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見積りと初回相談を受ける
各事務所から「提案内容」「試算相続税額」「報酬額」が記載された見積りが届きます。受取人を変えた場合の税額を、各事務所に同じように聞いてください。
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税理士を選定・正式依頼する
「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で事務所を選びます。相続開始から7ヶ月以内に税理士を決めて、期限直前の加算を避けてください。
聞く順番より、同じ質問をすべての事務所に投げて答えを並べることが大事です。
重要ポイント:保険証券を持っていくと、契約の形と受取人をその場で確かめてもらえます。
見積書は生前の相談だけか申告まで頼むかと、税込の総額が書面で出ているかを先に確かめてください。
重要ポイント:見積りは費用の安さだけでなく、受取人の設計まで提案するかとあわせて比べてください。
相続税の対応実績がある税理士の探し方と、選ぶときのポイントは、下記の記事で解説しています。

税理士費用の相場と、遺産額別の報酬の早見表は、下記の記事で解説しています。

かかるとは限りません。亡くなった人が保険料を払い、相続人が受け取った場合は相続税の対象ですが、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。さらに遺産全体が基礎控除以下なら相続税は0円です。契約の形によっては、所得税や贈与税になります。
使えません。相続放棄をすると相続人ではなくなるため、受け取った保険金の全額が相続財産に加わります。ただし非課税枠を計算するときの人数には放棄した人も入るため、枠の総額は減りません。保険金そのものは、放棄しても受け取れます。
子が生きている場合の孫は相続人ではないため、非課税枠が使えず、相続税も2割増しになります。本記事の試算では、子が受け取る場合より相続税が119.3万円多くなりました。子が先に亡くなり、孫が代わりに相続人になっている場合は、枠が使えて2割増しもありません。
非課税枠を引いた保険金とほかの財産の合計が基礎控除以下なら、申告は要りません。超える場合は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要です。保険会社は100万円を超える保険金を税務署に報告しているため、保険金を外して判定しないでください。
原則として対象になりません。最高裁平成16年10月29日決定は、保険金は受取人だけの財産で、遺産に足し戻す財産に当たらないとしています。ただし相続人の間の不公平が著しい特段の事情があれば、例外的に足し戻されます。何%なら安全という基準はありません。
相続税がかかるか
税金の種類と非課税枠
受取人と申告
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年10月時点の法令・実務に基づいて作成しています。相続税法や関連制度の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度や個別の判断については、国税庁の情報や相続税の対応実績がある税理士にご確認ください。