遺留分は相続税の対象!相続税の計算方法と申告時の注意点をわかりやすく解説

遺留分_相続税
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目次

遺留分を受け取ったら相続税はかかる

結論から申し上げますと、遺留分として取得した金銭や財産は、相続税の課税対象となります。遺留分を受け取った結果、相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合には、相続税の申告および納税が必要となります。

遺留分侵害額請求をしたかどうかに関わらず、相続財産全体の評価額が基礎控除額を上回る場合は、相続税の計算が必要となります。遺留分を受け取った方は、その額もご自身の取得財産に含めた上で、納付すべき相続税額を計算することになります。

遺留分に相続税が発生する状況とは?

相続税は、原則として「被相続人(亡くなった方)から相続または遺贈により取得した財産」のすべてに対して課税されます(国税庁 No.4105「相続税がかかる財産」参照)。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属)に法律上保障された、最低限の遺産取得割合のことを指します。

遺言によって特定の相続人や第三者に財産が集中し、ご自身の遺留分が侵害された場合、その侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます(遺留分侵害額請求)。この請求によって取得した金銭は、実質的に「被相続人から相続または遺贈により取得した財産」に代わるものであるため、相続税の課税財産に含まれるのです。

相続税は基礎控除額を超える場合にのみ発生する

遺留分の問題について考える前に、まず相続税の基本的な仕組みを理解しておく必要があります。相続税は、亡くなった方(被相続人)が遺した財産のすべてに対して無条件でかかるわけではありません。

相続税の課税対象となるのは、被相続人のプラスの財産(預貯金、不動産、有価証券など)から、マイナスの財産(借入金や未払金など)と葬式費用を差し引いた「正味の遺産額」です。この正味の遺産額が、法律で定められた「基礎控除額」を超える場合にのみ、その超えた部分に対して相続税が課税されます。

基礎控除額は、「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」で算出
(国税庁 No.4152「相続税の計算」参照)

例えば、法定相続人が妻と子2人(合計3人)の場合、基礎控除額は 3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円 となります。このケースで、正味の遺産額が4,800万円以下であれば、遺言の内容や遺留分侵害額請求の有無にかかわらず、相続税は一切発生せず、申告も原則として不要です。

したがって、遺留分を受け取ったことによって相続税が「発生する」のは、そもそも相続財産全体の総額が、この基礎控除額を上回っている状況が絶対的な前提となります。

遺留分侵害額請求により新たに相続税の申告義務が発生したとき

遺留分に相続税が「発生する」状況として、最も分かりやすいのがこのケースです。これは、当初の遺言内容では財産を全く、あるいはほとんど取得していなかった相続人が、遺留分侵害額請求によって金銭を取得した場合に起こり得ます。

例えば、遺産総額が8,000万円、法定相続人が長男と次男の2名(基礎控除額は4,200万円)というケースを想定します。ここで被相続人が「全財産8,000万円を長男に相続させる」という遺言を遺していたとします。この遺言に基づけば、次男の取得財産はゼロです。

この場合、相続税の申告(相続開始後10ヶ月以内)時点では、長男が8,000万円全額に対応する相続税を申告・納税し、次男は財産を取得していないため納税額ゼロとして申告(または申告不要)となります。

しかし、次男には遺留分(法定相続分1/2のさらに1/2=全体の1/4)として2,000万円を受け取る権利があります。もし次男が申告期限後に長男に対して遺留分侵害額請求を行い、長男から2,000万円の支払いを受けた場合、この金銭は税務上「相続または遺贈により取得した財産」とみなされます(国税庁 No.4105「相続税がかかる財産」参照)。

その結果、次男は相続財産を取得したことになり、本来納付すべきであった相続税額(2,000万円の取得に対応する税額)について、新たに相続税の申告(期限後申告)と納税の義務が「発生」します。

遺留分侵害額請求により納付すべき相続税が増加したとき

この状況は、すでに相続税申告を済ませている相続人が、遺留分侵害額請求によって、当初の申告よりも多くの財産(金銭)を取得した場合に該当します。

例えば、遺産総額が1億円、法定相続人がAとBの2名(基礎控除額4,200万円)とします。遺言で「Aに7,000万円、Bに3,000万円」の財産が分けられたとします。AもBも法定相続分(各5,000万円)には満たないものの、遺留分(各2,500万円)は侵害されていませんでした。そのため、両者はこの内容で納得し、相続開始後10ヶ月以内にAは7,000万円、Bは3,000万円の財産取得に基づいて相続税を申告・納税しました。

ところが、申告期限後に、遺言書には記載のない「隠れた負債(借金)2,000万円」が発覚したとします。この負債はAとBが法定相続分(1/2ずつ)で返済義務を負うため、実質的な相続財産はAが6,000万円(7,000万円-1,000万円)、Bが2,000万円(3,000万円-1,000万円)となります。

その結果、Bの取得財産(2,000万円)が遺留分(相続財産純額8,000万円の1/4=2,000万円)を下回る可能性…(失礼しました、この例は複雑です。よりシンプルな例に修正します。)

改めて、法定相続人がA・Bの2名(遺留分各1/4)、遺産総額1億円のケースで、「Aに8,000万円、Bに2,000万円」を相続させる遺言があったとします。Bの遺留分は2,500万円(1億円×1/4)ですので、500万円侵害されています。しかし、期限内に話がまとまらず、両者は一旦、遺言通りAが8,000万円、Bが2,000万円を取得したものとして相続税を申告・納税しました。

その後、BがAに対して遺留分侵害額請求を行い、AがBに500万円を支払うことで合意が成立しました。この場合、Bが最終的に取得した財産は2,500万円(当初2,000万円+遺留分500万円)となります。

Bは当初2,000万円の取得で申告していましたが、取得財産が増加したため、相続税額も増加します。Bは、この増加した500万円に対応する相続税の差額について、「修正申告」を行い、追加で税金を納付する義務が「発生」します。 (逆に、Aは取得財産が7,500万円に減少したため、「更正の請求」を行い、納めすぎた税金の還付を受けることができます。)

遺留分侵害額請求と2019年民法改正のポイント

遺留分に関する現在のルールを理解する上で、2019年7月1日に施行された改正民法が非常に重要です。この改正により、遺留分の請求に関する大きな変更がありました。

改正前は「遺留分減殺請求」と呼ばれ、遺留分を侵害する遺贈や贈与の効力を一部否定し、財産そのもの(例えば不動産の持分など)を取り戻す権利(物権的効力)でした。これにより、不動産が共有状態になるなど、かえって紛争が複雑化するケースも少なくありませんでした。

しかし、改正後は「遺留分侵害額請求」となり、遺留分を侵害された額に相当する「金銭」の支払いを請求する権利(金銭債権化)へと変わりました。これにより、相続人間の公平を図りつつも、金銭での解決が原則となり、手続きの円滑化が期待されています。

この改正は、税務上も重要な影響を与えます。特に注意が必要なのは、遺留分侵害額を支払う側(義務者)です。原則として金銭で支払うべきところ、当事者間の合意に基づき、金銭の代わりに不動産や株式などの「現物」で支払い(代物弁済)を行うケースがあります。この場合、支払者側は、その資産を遺留分侵害額という債務の返済に充てた(=時価で譲渡した)ものとみなされます。

その結果、その資産の取得時からの値上がり益に対して、相続税とは別に「譲渡所得税」が課税される可能性があります。遺留分の問題を現物で解決しようとする際には、この二重の課税リスクについて専門家による慎重な検討が必要です。

遺留分が確定する時期と相続税申告の手続き

遺留分に関する実務上の最大の注意点は、相続税の申告期限との関係です。

被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内

相続税の申告と納税の期限は、原則として「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です(国税庁 No.4205「相続税の申告と納税」参照)。

しかし、遺留分侵害額請求に関する協議や調停、訴訟は、この10ヶ月という短期間では解決しないケースがほとんどです。ここで重要なのは、遺留分の金額が確定していなくても、相続税の申告期限は延長されないという点です。

申告期限までに遺留分の額が確定していない場合、相続人はまず「遺留分侵害額請求がなかったもの」として、遺言書通りの内容(あるいは法定相続分)に基づいて、一旦相続税の申告・納税を行わなければなりません。その後、協議や裁判が終結し、遺留分侵害額が確定して実際に金銭の支払いが行われた時点で、当初の申告内容を修正する手続きを行います。

  • 遺留分を支払った側(義務者): 当初の申告よりも取得財産が減少するため、納めた相続税が過大になります。この場合、税務署に対して「更正の請求」という手続きを行い、納めすぎた税金の還付を求めます。この請求は、原則として遺留分侵害額が確定したことを知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があります。
  • 遺留分を受け取った側(権利者): 取得財産が増加し、納付すべき相続税が増える(または新たに発生する)ことになります。この場合は、「修正申告」(または期限後申告)を行い、不足分の税金を納付します。

遺留分を支払った側は「更正の請求」を行う

「義務者」とは、主に遺言によって被相続人の財産の大部分を取得した結果、他の相続人の遺留分を侵害してしまい、その侵害額に相当する金銭を支払う義務を負った人のことです。

相続税の申告期限(10ヶ月)の時点では、まだ遺留分の金額が確定していないことが一般的です。そのため、義務者はまず、遺言書に記載された通り(または遺留分を支払う前)の多くの財産を取得したものとして、相続税の申告・納税を行います。

その後、協議や裁判が終結し、遺留分侵害額請求権者(権利者)に対して実際に金銭を支払うと、その支払った金額分だけ、義務者が最終的に取得した財産は減少することになります。つまり、当初の申告では「財産を多く取得しすぎた」状態となり、結果として「相続税を納めすぎた」ことになります。この納めすぎた相続税を取り戻すための税務手続きが「更正の請求」です。

この「更正の請求」は、遺留分侵害額が確定し、支払いが行われたこと(またはその合意が成立したこと)を知った日の翌日から4ヶ月以内に、管轄の税務署長に対して行う必要があります。この期限を過ぎてしまうと、原則として還付を受けられなくなるため、非常に重要です。

なお、2019年の民法改正により、遺留分侵害額は「金銭」で支払うことが原則となりました。もし義務者が、金銭の代わりに不動産や株式などの「現物」で支払い(代物弁済)をした場合、税務上は「その資産を時価で売却し、その売却代金で遺留分という債務を返済した」ものとみなされます。その結果、その資産の取得時からの値上がり益に対して、相続税とは別に「譲渡所得税」が課税される可能性があります。これは非常に見落としやすいポイントであり、特に不動産で代物弁済を行う際には、専門家である税理士への事前相談が不可欠です。

遺留分を受け取った側(権利者)は「修正申告」を行う

「権利者」とは、遺言などによって本来受け取れるはずの財産が法定の遺留分に満たなかったため、侵害額に相当する金銭の支払いを請求する権利を持っていた人のことです。

まず大前提として、権利者が受け取った遺留分侵害額(金銭)は、贈与税や一時所得(所得税)の対象ではなく、あくまで「相続または遺贈により取得したもの」として相続税の課税対象となります(国税庁 No.4105「相続税がかかる財産」参照)。

権利者も、申告期限(10ヶ月)の時点では、遺言書通りの少ない財産(あるいは財産ゼロ)に基づいて相続税の申告・納税を済ませているか、あるいは基礎控除額以下で財産取得がゼロであれば申告自体をしていないケースもあります。

その後、義務者から遺留分侵害額に相当する金銭を受け取ると、その分だけ相続によって取得した財産が増加します。その結果、当初の申告内容では「納付した税額が不足している」状態、あるいは「新たに納税義務が発生した」状態になります。この不足している相続税を追加で納付するための手続きが「修正申告」(当初申告をしていた場合)または「期限後申告」(当初申告をしていなかった場合)です。

この手続きは、遺留分侵害額が確定し、金銭を受け取った(または受け取ることが確定した)ことを知った後、速やかに行う必要があります。申告期限(10ヶ月)はすでに過ぎていますので、法律上は、追加で納付する本税のほかに「延滞税」(利息に相当)が課されます。

また、税務調査などで指摘されてから修正申告を行うと、ペナルティとして「過少申告加算税」(または無申告加算税)がさらに課される場合があります。余計な税金を納めないためにも、遺留分の確定後は自主的に、かつ速やかに手続きを完了させることが肝要です。

遺留分と相続税に関する罰則・ペナルティについて

遺産相続・相続税申告の専門家である税理士の立場から、遺留分と相続税に関連して発生しうる罰則・ペナルティについて、その種類と詳細を網羅的に解説いたします。

遺留分に関連する税務上のペナルティは、主に「相続税の申告・納税が正しく行われなかった」場合に発生します。これは、申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月)を過ぎて申告した場合や、申告した税額が不足していた場合に課されるもので、「加算税」と「延滞税」の2種類に大別されます。

延滞税:納付の遅延に対する利息相当のペナルティ

延滞税は、法律で定められた納期限(相続税の場合は原則として相続開始を知った日の翌日から10ヶ月)までに税金を完納しなかった場合に、その遅延した日数に応じて課される、利息に相当する附帯税です。

遺留分に関連する場面では、特に遺留分を受け取った権利者が修正申告や期限後申告を行う際に、この延滞税がほぼ必ず発生します。なぜなら、遺留分侵害額請求は申告期限後に確定することがほとんどですが、それによって追加で納付することになった相続税は、法律上「本来の申告期限(10ヶ月)の時点」で納付すべきだったものとみなされるためです。

例えば、相続開始から2年後に遺留分が確定し、権利者が修正申告で追加の税金を納付する場合、本来の申告期限の翌日から実際に納付する日までの約1年2ヶ月分の期間に対して延滞税が計算されます。遺留分の協議や裁判が長引けば長引くほど、この延滞税の負担は大きくなります。

税率は納付期限の翌日から2ヶ月を経過するかどうかで異なり、また、その時々の市中金利(銀行の新規短期貸出金利)に連動して変動します(国税庁 No.9205「延滞税について」参照)。

過少申告加算税:当初の申告額が不足していた場合のペナルティ

過少申告加算税は、法定申告期限(10ヶ月)までに相続税の申告書を提出したものの、その申告額が本来納付すべき税額よりも少なかった場合に課されるペナルティです。

遺留分のケースでは、遺留分を受け取った権利者が、申告期限後に遺留分侵害額(金銭)を取得し、その結果として当初の申告よりも取得財産が増加し、納付すべき税額が不足した場合に該当します。この不足分を納めるために「修正申告」を行うことになります。

このペナルティの重要な点は、自主的に修正申告を行うタイミングです。税務署から税務調査の事前通知を受ける「前」に、自主的に修正申告書を提出した場合は、この過少申告加算税は課されません

しかし、税務調査の通知を受けた後や、税務署からの指摘(更正)によって税額の不足が判明した場合は、原則として、追加で納付する本税に対して**10%の税率が課されます。さらに、追加税額が当初の申告額と50万円のいずれか多い金額を超える部分については、税率が15%**に加重されます(国税庁 No.2026「確定申告を間違えたとき」参照)。

無申告加算税:申告期限までに申告しなかった場合のペナルティ

無申告加算税は、最も基本的なペナルティであり、法定申告期限(10ヶ月)までに相続税の申告書を提出しなかった場合に課されます。

遺留分に関連する場面としては、例えば、当初は遺言により全く財産を取得しなかった(あるいは基礎控除額以下だった)ため申告をしていなかった権利者が、申告期限後に遺留分侵害額請求によって金銭を取得した結果、取得財産の合計が基礎控除額を超え、申告義務が「さかのぼって発生した」場合などが該当します。この場合、権利者は「期限後申告」を行うことになります。

このペナルティも、自主的に申告するタイミングが重要です。税務調査の通知を受ける「前」に、自主的に期限後申告を行った場合は、ペナルティが軽減され、納付すべき本税に対して5%の税率で済みます。しかし、税務調査の通知を受けた後や、税務署からの指摘によって申告漏れが判明した場合は、原則として、納付すべき本税に対して15%(納税額が50万円を超える部分は20%)という重い税率が課されます(国税庁 No.2024「確定申告を忘れたとき」参照)。

重加算税:意図的な隠蔽・仮装に対する最も重いペナルティ

重加算税は、上記の過少申告加算税や無申告加算税に代わって課される、最も重い税務上のペナルティです。これは、納税者が相続財産を意図的に隠したり(隠蔽)、事実を偽って申告したり(仮装)したと税務署に認定された場合に適用されます。

遺留分に関連する場面では、例えば、財産を多く相続した義務者(支払う側)が、遺留分権利者からの請求を免れる意図もあって、特定の預金口座や不動産の存在を故意に隠し、相続財産全体を少なく見せかけて当初の申告を行っていた場合などが該当し得ます。また、権利者側が、遺留分を受け取った事実を認識しながら意図的に修正申告を行わなかった場合も、悪質と判断されれば対象となる可能性があります。

  • 過少申告(当初申告あり)の場合:過少申告加算税に代わり、追加で納付する本税に対して35%
  • 無申告(当初申告なし)の場合:無申告加算税に代わり、納付すべき本税に対して40%

重加算税が課されると、税額の負担が非常に大きくなるだけでなく、税務署からの監視も厳しくなるため、絶対にあってはならない事態です。

遺留分を支払う側の「譲渡所得税」申告漏れペナルティ

遺留分を支払った義務者側は、相続税については「更正の請求」により税金の還付を受ける立場のため、通常ペナルティは発生しません。しかし、支払い方法によっては別の税金のペナルティが発生するため、最大の注意が必要です。

遺留分侵害額は金銭で支払うのが原則ですが、当事者の合意により、金銭の代わりに不動産や株式といった「現物」で支払う(代物弁済)ことがあります。この場合、税務上、義務者は「その資産を時価で売却し、その売却代金で遺留分という債務を返済した」ものとみなされます。

もし、その資産の時価が、被相続人が取得した時の価額(取得費)よりも値上がりしていた場合、その差額(譲渡益)に対して譲渡所得税(所得税・住民税)が課税されます。

この譲渡所得税の申告(通常、譲渡した年の翌年の確定申告)を怠った場合、所得税に対する「過少申告加算税(または無申告加算税)」および「延滞税」が発生します。これは相続税とは別のペナルティですが、遺留分の支払いに起因する非常に見落としやすい罰則です。

相続税・遺留分の計算・申告については税理士相談がおすすめ

遺産相続と相続税申告を専門とする税理士の立場から、相続税申告や遺留分計算について税理士に相談するメリットを3点、詳細に解説いたします。

複雑な財産評価と相続税計算の正確性の担保

相続税申告において、納税者ご自身での対応が最も困難な点が「相続財産の正確な評価」です。相続税額は、この財産評価額を基に計算されるため、評価額が1,000万円異なれば、適用される税率によっては数百万円単位で納税額が変わることもあります。

特に専門性が求められるのが「土地(不動産)」の評価です。国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づき、路線価方式や倍率方式を用いて計算しますが、単に路線価に面積を乗じるだけではありません。その土地の形状(不整形地、間口が狭い、奥行きが長い等)、接道状況(二方路線に面する、無道路地等)、利用状況(他人に貸している土地=貸宅地、アパートが建っている土地=貸家建付地等)といった個別の要因を反映させるための複雑な補正計算が必要です。

これらの評価減の適用を一つ見落とすだけで、本来よりも高い相続税を納めてしまう(過大申告)リスクがあります。 また、「小規模宅地等の特例」のように、適用できれば土地の評価額を最大80%減額できる強力な節税特例も存在しますが、適用要件(居住用、事業用、貸付用など)が非常に細かく定められており、その判断は税理士でも慎重を期す部分です。

さらに、名義預金(被相続人のお金で家族名義にしていた預金)の特定や、相続開始前3年(2024年以降の贈与は段階的に7年に延長)以内の生前贈与の加算、みなし相続財産である生命保険金や死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の計算など、申告書を作成するまでには無数の専門的判断が必要です。

これらの複雑な評価と計算、特例適用の判断を、相続税専門の税理士に依頼することで、法令に基づいた適正な財産評価が可能となり、税務調査のリスクを最小限に抑えつつ、適法な範囲で最大限の節税(適正納税)を実現できることが最大のメリットです。

遺留分計算と税務リスクのワンストップ対応

遺留分侵害額請求は、2019年の民法改正で金銭請求権となったことで、税務上の取り扱いがより複雑化しました。税理士に相談するメリットは、この複雑な遺留分の算定から、その後の税務申告までを一貫してサポートできる点にあります。

まず、遺留分の算定基礎となる財産価額の評価です。遺留分の計算における不動産等の評価は、相続税申告時の評価額(財産評価基本通達に基づく評価)とは異なり、原則として「客観的な時価」で行う必要があります。しかし、この「時価」には明確な定義がなく、実務上は相続税評価額、固定資産税評価額、公示価格、不動産鑑定士による鑑定評価額など、どの基準を用いるかで金額が大きく変動し、争いの種になりがちです。

相続税申告を経験している税理士であれば、相続税評価額を基準にしつつ、合理的な調整を加えるなど、当事者が合意しやすい客観的な評価額の算定をサポートできます。

さらに重要なのが、遺留分の支払い(清算)が完了した後の税務処理です。遺留分を**受け取った側(権利者)は、その金銭を「相続により取得した」ものとみなされるため、当初の申告内容よりも取得財産が増加します。結果として、税務署に対して「修正申告」または「期限後申告」を行い、不足分の相続税を追加で納付する義務が生じます。

一方、遺留分を支払った側(義務者)**は、取得財産が減少したため、納めすぎた相続税を取り戻す「更正の請求」という手続きが可能です。 特に注意すべきは、義務者が金銭の代わりに不動産などで支払い(代物弁済)をした場合です。

この場合、義務者には相続税とは別に、資産を時価で売却したとみなされ「譲渡所得税」が課税されるリスクがあります。税理士は、これらの複雑な税務処理を正確に把握しており、遺留分問題の発生から最終的な税務申告まで、予期せぬペナルティや税務リスクを回避するための最適なサポートを提供できます。

税務調査の対応と「二次相続」を見据えた遺産分割

相続税の申告書を提出した後、税務署は申告内容を精査します。申告漏れや評価誤りが疑われる場合、あるいは財産額が一定基準を超える場合には「税務調査」が行われる可能性があります。

国税庁の統計によれば、実地調査が行われた場合、申告漏れ等の非違(誤り)が指摘される割合は非常に高い水準にあります。 税理士に申告を依頼していれば、この税務調査の対応をすべて任せることができます。税務調査の事前通知はまず税理士に入り、調査当日の立ち会い、税務署からの指摘に対する専門家としての理論的な説明や交渉、万が一修正が必要となった場合の折衝まで、納税者の代理人として矢面に立ちます。これは、納税者の方々にとって計り知れない精神的負担の軽減となります。

また、申告書に税理士が作成したことを証明する「書面添付制度(税理士法第33条の2)」を利用することで、申告書の信頼性が高まり、税務調査自体が省略される可能性も高まります。 さらに、経験豊富な税理士は、目先(一次相続)の税負担だけでなく、その次に起こる相続(二次相続)までを見据えた遺産分割のアドバイスを行います。

例えば、ご両親のうち先に父親が亡くなった(一次相続)際、「配偶者の税額軽減」(1億6千万円または法定相続分まで非課税)を最大限に利用して、財産のほとんどを母親が相続すれば、一次相続の納税額はゼロになるかもしれません。

しかし、その結果、母親の財産が過大となり、次に母親が亡くなった(二次相続)際に、残された子供たちが多額の相続税を負担するケースは非常に多いです。税理士は、家族構成や財産状況、将来のライフプランを総合的に勘案し、一次・二次相続を通じたトータルの税負担が最も軽くなるような、最適な遺産分割案を提案することが可能です。

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本記事は相続税理士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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