


相続税申告の相談準備とは、税理士に初めて会う前に、手元でそろえておく書類と情報を決めることです。
相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月です。相談が遅れるほど、申告に使える時間が減ります。
ところが「全部そろえてから相談しよう」として、戸籍謄本や登記簿の取り寄せに何週間もかけてしまう方がいます。
初回相談で税理士が見ているのは、申告が要るかどうかと、どこに手間がかかりそうかの2点です。そのために必要な書類は6点しかありません。
残りは相談のあとで、税理士が「これを取ってください」と指示するか、代理で取得します。先に集めても使わない書類が出ます。
国税庁も「相続税の申告のために必要な準備」として、相続人の確認と財産の把握から始めるよう案内しています。
本記事では、申告が要るかの自己判定、持参する6点と持参しなくてよい書類、財産情報の整理の仕方、相談前に伝えておく項目までを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

相続税申告には大きく2つの段階があります。最初が「相談段階」です。これは、相続の規模や財産構成を税理士に説明し、「申告が必要かどうか」「どのような対策があるか」を判断してもらう段階です。次が「申告段階」です。
ここで初めて全ての書類を集め、申告書を作成して税務署に提出します。初回相談は「申告段階の準備」ではなく「相談そのもの」を目的とした段階であることが重要です。つまり、相談時点では全ての書類が揃っていなくても問題ありません。
むしろ、相談前にあれこれ書類を集めようとしても、「実は不要だった」「取得手続きが複雑で時間がかかった」というトラブルが発生しやすいのです。
相談段階では、大きく3つを行います。まず「申告義務の有無判定」です。遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかを判定します。超えなければ、そもそも申告は不要です。
この判定により、その後の準備内容が大きく変わります。申告が不要なら、わざわざ複雑な書類取得手続きを進める必要がないからです。次に「簡易的な試算」を行います。概算の遺産規模から、相続税額の大まかな目安を計算します。
この試算により、「どの程度の相続税が発生するのか」という概観が分かり、その後の節税対策の検討方向が決まります。最後に「複雑ケースの判定」です。
株式・不動産・事業承継など複雑な財産がある場合、どのような対策が可能かを事前に検討することで、その後の申告手続きをスムーズにできます。
複雑ケースの判定により、「申告段階で何に注力すべきか」「どのような専門知識が必要か」が明確になり、準備計画が立てやすくなるのです。
申告段階では、本格的に書類を集め始めます。具体的には、戸籍謄本・遺産分割協議書・不動産評価額の根拠資料など、申告書作成に必要な全ての証拠書類を取得します。また、金融機関や市役所などから、各種証明書や手続き書類を取得することもあります。
この段階では、税理士が「どの書類が必要か」を明確に指示し、場合によっては代理取得を行うため、依頼者の負担が大幅に軽減されます。
相続税の申告期限は10ヶ月です。相続開始から10ヶ月以内に申告書を提出しないと、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。つまり、相談段階を早めに済ませることで、申告段階に十分な時間を確保できます。
特に、複雑ケースの場合は相談を早めに開始することが重要です。2つの段階で何が違うかを並べます。
| 相談段階 | 申告段階 | |
|---|---|---|
| 目的 | 申告が要るかの判定と、手間がかかる点の洗い出し | 評価を確定し、申告書を作って提出する |
| 必要な書類 | 6点(正式な書類は死亡診断書と遺言書だけ) | 戸籍謄本一式・登記事項証明書・残高証明書など数十種類 |
| 誰が集めるか | 相続人が手元のもので用意する | 税理士が指示し、代理取得することが多い |
| かかる期間 | 半日〜数日 | 3週間〜2ヶ月(財産の内容による) |
| 費用 | 初回相談は無料の事務所が多い | 報酬は遺産額の0.5〜1%が目安 |
表の見方:2列目と3列目で「必要な書類」の量が大きく違う点が要点です。相談段階で申告段階の書類まで集めようとすると、使わない書類に時間を使うことになります。
相続開始から申告までの10ヶ月を逆算すると、相談は最初の1〜2ヶ月で済ませておきたいところです。
財産の書き出しと相談の予約
通帳と固定資産税の納税通知書を見て、基礎控除を超えるかを概算で判定します。超えそうなら相談を予約します。
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初回相談
6点を持って相談します。申告が要るか、どこに手間がかかるか、報酬がいくらかがここで分かります。
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依頼先の決定と書類の取得開始
税理士の指示に従って戸籍謄本や残高証明書を集めます。ここから先は代理取得も使えます。
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財産の評価と遺産分割協議
土地の評価と特例の適用を検討しながら、誰が何を取得するかを決めます。分け方で税額が変わります。
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申告と納付
申告書を提出し、相続税を納付します。期限を過ぎると加算税と延滞税がかかります。
相談が3ヶ月目・4ヶ月目にずれ込むと、評価と協議に使える時間がそのまま減ります。

相談前に、まず「申告が必要かどうか」を自分で判定することで、相談時間を効率化できます。基礎控除額を計算し、現在の遺産規模がそれを超えるかどうかを確認する作業です。この判定は、以後の準備内容を大きく左右します。
相続税申告が必要かどうかは、遺産総額が基礎控除額を超えるかで決まります。基礎控除額の計算式は以下です。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例えば、法定相続人が配偶者と子2人(計3人)の場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×3=4,800万円です。遺産総額が4,800万円以下であれば、申告は不要です。超える場合のみ、相続税の申告・納付義務が生じます。
法定相続人の人数ごとの基礎控除額は次のとおりです。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | 遺産がこの額以下なら |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 原則として申告は不要 |
| 2人 | 4,200万円 | 原則として申告は不要 |
| 3人 | 4,800万円 | 原則として申告は不要 |
| 4人 | 5,400万円 | 原則として申告は不要 |
| 5人 | 6,000万円 | 原則として申告は不要 |
計算ロジック:基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。相続放棄をした人も人数に数えます。養子は実子がいれば1人まで、いなければ2人までが人数に入ります。
基礎控除額を超えるかどうかを判定するために、遺産総額を概算で計算します。この段階では、「正確な評価額」は不要です。預貯金なら残高証明、不動産なら時価の大まかな推定、株式なら取得時の購入代金など、手元にある情報でOKです。
重要なのは「基礎控除額を超えるかどうか」という大ざっぱな判定であり、ここで正確性を求める必要はありません。実務的には、この概算計算により「申告が必要な可能性が高い」と判定されれば、相談を予約する判断ができます。
逆に「基礎控除額以下」と判定されれば、申告は不要で、単なる相続手続き(相続人確定、遺産分割、名義変更など)だけで足りることになります。
税額が0円でも申告が必要になるケース
これらの特例は「申告することが適用の条件」です。0円だからと申告しないと、特例そのものが使えなくなります。
つまり特例を使って0円にした場合は、必ず申告が要ります。概算で基礎控除を下回っていても、自宅の評価を8割減らした結果であればこちらに当たります。
申告が要るかどうかの判定は、下記の記事で解説しています。

基礎控除の計算と早見表は、下記の記事で解説しています。

□ ステップ1:法定相続人の人数を確認する
配偶者の有無、子ども(又は孫)の人数、兄弟姉妹の人数などを整理します。相続人の人数が多いほど、基礎控除額が大きくなり、相続税が課されない可能性が高くなります。
□ ステップ2:基礎控除額を計算する
3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。具体例として、相続人が配偶者と子2人なら、基礎控除額は3,000万円+600万円×3=4,800万円です。
□ ステップ3:預貯金残高を集計する
複数の銀行口座がある場合、残高を合計します。定期預金、普通預金、ネット銀行など、全ての金融機関を忘れずに確認してください。
□ ステップ4:不動産・株式・その他の資産を把握する
相続財産となる全ての資産を書き出します。自宅の土地・建物、賃貸物件、駐車場、上場株式、投資信託、生命保険など、あらゆる資産を思い出してください。
□ ステップ5:遺産総額が基礎控除額を超えるか判定する
超える場合は申告が必要です。不明な点は、相談時に税理士に質問すれば問題ありません。ここで重要なのは「正確性」ではなく「概要把握」です。細かい計算に時間をかけず、あくまで概算で構いません。

相続税申告に必要な書類は数十種類に上りますが、初回相談に持参すべき書類は限定的です。申告に必要な書類の一覧を見ると数十種類が並ぶため、「全部持っていかなければ」と身構えてしまいがちです。
実際には、相談段階では「概要把握」が目的のため、書類は最小限で構わないというのが実務的な運用です。以下の6種類が、初回相談の「最小限セット」です。
6点のうち、正式な書類が要るのは死亡診断書と遺言書だけです。残り4点は手書きのメモで構いません。
| 持っていくもの | 形式 | 税理士が何を見るか | 手元にない場合 |
|---|---|---|---|
| 被相続人の死亡診断書 | コピー | 相続開始日(申告期限と評価の基準日がここから決まる) | 市区町村で死亡届の記載事項証明書を取る(100〜200円程度) |
| 遺言書(ある場合) | コピー | 誰が何を取得するか。分け方が決まっていれば税額の試算が早い | 無ければ「協議中」と伝えれば足ります |
| 相続人のメモ | 手書きで可 | 法定相続人の人数(基礎控除の額が決まる) | 戸籍謄本は申告のときでよい |
| 遺産の概算リスト | 手書きで可 | 基礎控除を超えるかどうか | 通帳やネットバンキングの残高で足ります |
| 給与明細か源泉徴収票 | コピー | 準確定申告が要るかどうか | 相談のあとで取れば問題ありません |
| 分け方のメモ | 手書きで可 | 相続人ごとの取得額(税額の試算に使う) | 協議中なら現在の検討状況を口頭で伝えれば足ります |
表の見方:左から「何を」「どんな形で」「税理士が何を見るために使うか」「手元にないときどうするか」です。正式な書類が要るのは上の2点だけで、下の4点は手書きのメモで通ります。
重要ポイント:遺産の概算リストは正確でなくて構いません。「A銀行200万円、B銀行100万円、東京都内の自宅、上場株式(銘柄と株数)、生命保険(保険金額と受取人)」という程度の粒度で足ります。
参照元:国税庁 No.4202 相続税の申告のために必要な準備
申告の段階で必要になる書類の全体像は、下記の記事で解説しています。

6点のうち最初に確認されるのは死亡診断書です。そこに書かれた死亡年月日から、申告期限と財産の評価基準日の両方が決まります。相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月です。土地や株式の評価も、この相続開始日の時点の価額で行います。
日付が1日ずれるだけで株価の基準も変わるため、税理士は最初にここを押さえます。死亡診断書を紛失した場合や、病院以外で亡くなられた場合は、市区町村で死亡届の記載事項証明書を取れば代用できます。
申告までの全体の段取りと逆算の仕方は、下記の記事で解説しています。


多くの初心者は「相談前に全ての書類を揃えるべき」と考えがちです。しかし、実務的には「相談前に持参する必要のない書類」が大半を占めます。むしろ、不要な書類を集めることで、時間と労力を無駄にしているケースが多いのです。
次の5種類は、相談の前に取りに行く必要がありません。先に集めても使わない書類が出ます。
| 書類 | なぜ相談前に要らないか | いつ必要になるか | 代わりに伝えること |
|---|---|---|---|
| 戸籍謄本一式 | どこまでさかのぼるかは相続人の確認結果で決まる | 申告の段階。税理士が代理で取得することが多い | 相続人の氏名・続柄・年齢のメモ |
| 不動産の登記事項証明書 | その不動産を誰が取得するかがまだ決まっていない | 評価する不動産が確定してから | 所在地・おおよその広さ・用途 |
| 固定資産税の評価証明書 | 同上。市区町村ごとに取りに行く手間が先行する | 同上 | 固定資産税の納税通知書に載っている評価額 |
| 残高証明書 | 相談の目的は申告が要るかの判定なので概算で足りる | 申告の段階。全金融機関にまとめて請求する | 通帳やネットバンキングで見える残高 |
| 生命保険の契約書一式 | 相談時は加入状況が分かれば足りる | 申告の段階。保険会社から支払通知書が届く | 保険会社名・保険金額・受取人 |
重要ポイント:株式の購入時の証書も要りません。上場株式は相続開始日の株価で評価するため、取得したときの価格は使わないからです。非上場株式も、相談の段階では決算書の提出まで求められません。
計算ロジック:この区分は「相談の目的が申告の要否とつまずきそうな点の洗い出しであること」から決まります。基礎控除を超えるかどうかは概算で判定できるので、正確な数字を出す書類は申告の段階まで要らない、という順序です。
申告書のどの表に何を書くかは、下記の記事で解説しています。


相談前と申告段階で、どの書類が必要かを一表で整理することが重要です。申告に必要な書類の一覧だけを見ると、相談の前に全部そろえるものだと受け取ってしまいます。
実際には、「今この段階で必要な書類」と「後で税理士が取得する書類」を区分けすることで、準備の効率が格段に上がるのです。
相談前に自分で用意するものには、共通する特徴が3つあります。まず「取得が容易」なこと。手元にあるか、数日で取得できるものです。次に「相続人の特定に直結しない」こと。被相続人の死亡確認や遺産の概算把握など、相続人確定の前に確認できるものです。
最後に「相談の質を大きく左右しない」こと。なければメモで補えるものばかりです。
| 書類名 | 相談前に必要 | 取得難易度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 死亡診断書 | 〇 持参 | 易(手元にあり) | 死亡事実の確認のみ |
| 遺言書 | 〇 あれば持参 | 易(手元にあり) | 分割方法に影響 |
| 相続人リスト(メモ) | 〇 メモで構わない | 易(自分で記載) | 正式な戸籍は後でOK |
| 遺産概算リスト | 〇 メモで構わない | 易(手元情報) | 正確な評価は後でOK |
| 戸籍謄本一式 | △ 不要 | 難(複数役所対応) | 申告段階で税理士が取得 |
| 登記簿謄本 | △ 不要 | 中(法務局) | 申告段階で一括取得 |
| 固定資産税評価証明書 | △ 不要 | 中(市区町村) | 申告段階で一括取得 |
| 残高証明書 | △ 不要 | 中(金融機関) | 申告段階で正確な残高確認 |
申告段階では、相談時の判定結果に基づいて、必要な書類が決まります。例えば、「複雑ケースではない」と判定されれば、不要な書類は取得しません。「株式の評価が重要」と判定されれば、株式に関する詳細書類を重点的に集めます。
このように、相談結果をフィードバックして初めて「本当に必要な書類」が確定するのです。相談前に「全部集めておこう」という考え方は、実は非常に非効率であり、多くの時間を浪費する原因になります。
相談前の準備内容は、ケースの複雑性によって大きく異なります。以下の3パターンで、各段階で実際に必要な書類を整理しました。
| ケース分類 | 相談前に準備 | 相談後に取得 | 目安となる準備期間 |
|---|---|---|---|
| 単純ケース (配偶者+子、預貯金と不動産のみ) | 死亡診断書、相続人メモ、遺産概算リスト | 戸籍謄本一式、登記簿謄本、残高証明書、固定資産税評価証明書 | 相談前:1~2日 相談後:3週間 |
| 中程度の複雑ケース (相続人が兄弟姉妹含む、株式あり) | 死亡診断書、相続人メモ、遺産概算リスト、株式一覧(銘柄・株数) | 戸籍謄本一式、登記簿謄本、残高証明書、証券会社の取引履歴、配当金領収書 | 相談前:3~4日 相談後:4~5週間 |
| 高度な複雑ケース (個人事業者、非上場株式、複数不動産) | 死亡診断書、相続人メモ、遺産概算リスト、事業概要メモ、決算書(直近3年)、不動産一覧 | 戸籍謄本一式、登記簿謄本(複数)、残高証明書(複数金融機関)、非上場株式の評価資料、税務申告書(過去3年) | 相談前:1~2週間 相談後:6~8週間 |
「単純ケース」なら相談前の準備は最小限で済みますが、「高度な複雑ケース」の場合は、相談前から事業概要や決算書を準備しておくことで、相談時の説明効率が大幅に上がります。
自分たちのケースがどれに該当するかを事前に判定することが、全体的な準備効率の鍵になります。
表の見方:左端のケース分類が自分に当てはまる行を見て、2列目だけを相談前に用意します。3列目は相談のあとで、税理士の指示に従って集めます。
重要ポイント:右端の「準備期間」を見ると、相談前は長くても1〜2週間です。ここに1ヶ月以上かけているなら、集めすぎている可能性があります。
相談後に集める書類のうち、税理士が委任状で代理取得できるものがあります。どこまで任せられるかを知っておくと、自分の作業量が読めます。
| 書類 | 税理士が代理で取れるか | 備考 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本・除籍謄本 | 取れる | 税理士会を通じた職務上請求で、出生から死亡まで一括で取れる |
| 住民票・戸籍の附票 | 取れる | 同上 |
| 登記事項証明書 | 取れる | オンラインで取得できる |
| 固定資産税の評価証明書 | 取れる | 委任状が要る |
| 金融機関の残高証明書 | 取れる | 委任状と相続人の印鑑証明が要る |
| 遺言書の検認 | 取れない | 家庭裁判所での手続きで、相続人が申し立てる |
| 遺産分割協議書への署名・押印 | 取れない | 相続人全員の実印と印鑑証明が要る |
| 相続人の印鑑登録証明書 | 取れない | 本人しか取れないため各自で用意する |
計算ロジック:代理で取れるかどうかは、その書類が「事実の証明」か「本人の意思表示」かで分かれます。戸籍や登記は事実の証明なので職務上請求で取れますが、印鑑証明や協議書への押印は本人の意思表示なので代われません。
遺産分割協議書の作り方は、下記の記事で解説しています。


相続の中身によって、標準的に進むものと追加の判定が要るものに分かれます。複雑ケースの場合、相談の準備内容が大きく異なります。事前に自分たちのケースが「どちらに該当するのか」を判定することで、相談時間を最大限に活用できるのです。
次の4つをほぼ全部満たすなら単純ケースです。
単純ケースの4条件(ほぼ全部を満たす)
この場合、申告期限の10ヶ月間で標準的な手続きで申告が完了します。単純ケースの特徴は、相談前の準備に時間がかからず、相談後の申告手続きも「定型的」に進むということです。書類取得も比較的簡単であり、税理士との打ち合わせ回数も少なくて済みます。
つまり、初めて相続を経験する人にとって、「最も手間がかからないケース」となるのです。
複雑ケースは、以下の要素を1つ以上含むケースです。
複雑ケースの要素(1つでも当てはまれば)
このいずれかに該当する場合、相談前の準備内容が異なってきます。複雑ケースの特徴は、単純ケースよりも「税理士の専門知識」が重要になるという点です。例えば、非上場株式の評価には「会社法」「相続税法」「企業価値評価」など複数の分野の知識が必要です。
事業承継税制の活用には、相続前の準備や申告後の申請手続きなど、複数年にわたる対応が必要になります。だからこそ、複雑ケースの場合は「早期相談」がより一層重要になるのです。複雑ケースは、当てはまる要素ごとに持っていくものと聞くことが変わります。
| 当てはまる要素 | 相談に持っていくもの | 相談で聞くこと | 税額に効く制度 |
|---|---|---|---|
| 個人事業者・会社経営者だった | 直近3年の決算書のコピー、事業の概要メモ | 自社株の評価方法と、事業承継税制を使えるか | 法人版事業承継税制(納税猶予) |
| 農地や山林がある | 所在地と面積のメモ、営農を続けるかの方針 | 農地の納税猶予を使えるか、使うと何が続くか | 農業相続人の納税猶予 |
| 非上場株式がある | 保有株数と持株比率、直近3年の決算書 | 純資産価額方式と類似業種比準方式のどちらになるか | 取引相場のない株式の評価 |
| 不動産が複数ある | 所在地・用途・広さ・概算額の一覧表 | どれに小規模宅地等の特例を当てるのが有利か | 小規模宅地等の特例(限度面積の調整) |
| 相続人に兄弟姉妹や甥姪が含まれる | 相続人の続柄が分かるメモ | 2割加算がかかるか、基礎控除がいくらになるか | 相続税額の2割加算 |
| 海外資産や海外在住の相続人がいる | 資産の所在国、相続人の居住歴 | 日本で課税される範囲、外国税額控除を使えるか | 10年ルールと外国税額控除 |
| 借入金が多い | 返済予定表、借入先の一覧 | 債務控除でどこまで引けるか、相続放棄を検討すべきか | 債務控除 |
表の見方:左端の要素に1つでも当てはまれば複雑ケースです。2列目を用意し、3列目をその場で聞くと、相談1回で方針まで決まります。
重要ポイント:右端の制度はどれも要件が細かく、申告期限内に手続きしないと使えないものがあります。農地の納税猶予と事業承継税制は期限内申告が絶対条件です。
参照元:国税庁 No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例
参照元:国税庁 No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)
自社株の評価方法は、下記の記事で解説しています。

農地を相続したときの納税猶予は、下記の記事で解説しています。

借入金があるときの判断は、下記の記事で解説しています。

複雑ケースを判定するためには、被相続人と相続財産、相続人の3つの観点から確認が必要です。以下のフロー図に沿って、1つずつ確認してください。
【ステップ1】被相続人の属性を確認
□ 個人事業者または会社経営者だったか?□ 農業従事者または農地を所有していたか?□ 顕著な借金や債務があったか?1つでも「はい」なら、以下のステップ2へ。
この確認により、「事業承継税制」「農地納税猶予」「債務控除」など、特有の対策が必要かどうかが判定できます。
【ステップ2】相続財産の構成を確認
□ 非上場株式を所有していたか?□ 複数の不動産を所有していたか(3件以上)?□ 有価証券の種類が複雑か(投信・外国株など)?1つでも「はい」なら、複雑ケースの可能性が高い。
財産の構成が複雑なほど、評価額の算定や税務申告書の作成に時間がかかるため、早期相談がより重要になります。
【ステップ3】相続人の状況を確認
□ 相続人に兄弟姉妹が含まれるか?□ 相続人間で遺産分割について意見が分かれているか?□ 相続放棄を検討している相続人がいるか?1つでも「はい」なら、追加の判定や対策が必要。
相続人の状況が複雑な場合は、遺産分割協議の成立に時間がかかり、その結果、申告期限が迫る可能性があります。そのため、相続人が複雑な構成の場合こそ、早期に税理士に相談し、「どのような分割方法が税効率的か」を事前に検討することが重要です。
3つのステップで「はい」が多いほど、相談時に詳細な準備資料が必要になる可能性が高いのです。自分たちのケースがどの程度の複雑性を持つかを把握することで、相談準備の方向性が明確になります。
ケース1:個人事業者の場合
事業承継税制の適用可否が重要です。相談時には、事業の概要(従業員数・売上・営業年数)と現在の株式保有状況(自社株の取得方法・保有割合)をメモで持参してください。
準備メモ例:「建設業(一般土木工事)、従業員20名、年売上3億円、営業開始1992年、自社株保有割合100%、現在の株価時価評価は不明」
相談時の質問例:「事業承継税制(贈与税の猶予制度)は申告後に利用できるか」「役員報酬の適正性は相続税に影響するか」
ケース2:農地・山林を所有している場合
農地納税猶予や山林の特例控除が適用可能かどうかで、相続税額が大きく変わります。相談時には、農地・山林の面積と所在地をメモで持参してください。
準備メモ例:「農地(水田):茨城県××市、面積2ヘクタール、時価評価1,500万円前後。生前営農しており、相続人も農業継続予定」相談時の質問例:「農地納税猶予制度の適用要件は何か」「相続税額がいくら軽減されるか」
ケース3:非上場株式を所有している場合
株価評価が複雑であり、相続税額に大きな影響を与えます。相談時には、会社の直近3年分の決算書(損益計算書・貸借対照表)をコピーで持参してください。
準備メモ例:「保有会社:△△システムズ株式会社、保有株数1,000株(全体の30%)、直近3年の平均利益3,000万円、純資産5億円」
相談時の質問例:「株価評価方法は何か(純資産法か類似企業比較法か)」「評価額がいくらになるか」「相続後の株式売却やM&A計画にも影響するか」
ケース4:複数の不動産を所有している場合
各不動産の評価方法が異なるため、事前に一覧表を作成することが重要です。相談時には「所在地・用途(自宅・賃貸物件など)・概算時価」を記載した一覧表を持参してください。
準備一覧表例:
| 所在地 | 用途 | 面積 | 概算時価 |
|---|---|---|---|
| 東京都渋谷区 自社ビル | 自社営業所(事業用) | 200㎡ | 5,000万円 |
| 東京都世田谷区 賃貸物件 | 賃貸住宅(投資用) | 1,500㎡ | 2億円 |
| 神奈川県横浜市 駐車場 | 駐車場経営 | 500㎡ | 3,000万円 |
相談時の質問例:「賃貸物件の相続税評価はいくらか(時価か、評価減があるか)」「複数の不動産を相続人で分割する場合、評価額をどう調整するか」

相談を効率化するためには、相談前に「財産情報を整理したシート」を作成することが重要です。これにより、相談時に税理士が必要な情報をすぐに把握でき、概算計算に時間を無駄にしません。以下のシートを参考に、事前に情報を整理してください。
財産は5種類に分けて書き出します。正確な評価額は要りません。税理士が見ているのは、基礎控除を超えるかと評価に手間がかかる財産があるかの2点です。
| 財産の種類 | 書き出す項目 | どこを見れば分かるか | 正確さの目安 |
|---|---|---|---|
| 預貯金・現金 | 金融機関名・支店名・口座の種類・おおよその残高 | 通帳、ネットバンキングの残高照会 | 万円単位の概算で足ります |
| 不動産 | 所在地・用途(自宅/賃貸/駐車場/農地)・おおよその広さ・概算の価額 | 固定資産税の納税通知書 | 固定資産税評価額をそのまま書けば足ります |
| 有価証券 | 銘柄・株数・証券会社名・上場か非上場か | 証券会社の取引残高報告書 | 相続開始日の株価は税理士が調べます |
| 生命保険 | 保険会社名・保険金額・受取人・契約者 | 保険証券、保険会社からの通知 | 保険金額と受取人が分かれば足ります |
| 債務・葬式費用 | 借入先・残高・葬儀にかかった額 | 返済予定表、葬儀社の領収書 | 概算で足ります |
表の見方:左から「何を」「どの項目を」「どこを見れば分かるか」「どこまで正確に書けばよいか」です。4列目のとおり、どれも概算で通ります。
重要ポイント:生命保険は受取人が誰かで扱いが変わります。相続人が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるため、保険金額と受取人はセットで書き出してください。
参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
保険金や死亡退職金の扱いは、下記の記事で解説しています。

借入金や葬式費用を差し引ける範囲は、下記の記事で解説しています。

実際にどの程度書けばよいかを、5種類そろえた例で示します。金額はすべて概算です。桁が合っていれば、あとは税理士が正確な数字にします。
| 種類 | 書き方の例 |
|---|---|
| 預貯金 | A銀行 渋谷支店 普通 150万円/B銀行 定期 200万円/ゆうちょ 普通 50万円 |
| 不動産 | 東京都世田谷区 自宅(土地150㎡・建物100㎡)固定資産税評価額 3,200万円 |
| 有価証券 | ○○株式会社 1,000株(△△証券)/投資信託 約300万円 |
| 生命保険 | □□生命 死亡保険金 1,000万円 受取人は配偶者 |
| 債務 | 住宅ローン残高 800万円/葬儀費用 180万円 |
計算ロジック:この例を足すと、預貯金400万円+不動産3,200万円+有価証券500万円+保険金1,000万円=5,100万円です。
判定:相続人が配偶者と子2人なら基礎控除は3,000万円+600万円×3=4,800万円です。5,100万円がこれを超えるので「申告が要りそうだ」と分かります。
重要ポイント:保険金の非課税枠1,500万円や住宅ローンの控除を当てると課税価格はさらに下がります。そこは税理士が計算するので、概算の段階では引かずに足し上げてください。
不動産の評価額をもう少し詰めたい場合は、下記の記事で解説しています。

5種類に分けて書き出しても、そもそも思い出されない財産があります。税務調査で指摘される上位は、ほぼ決まっています。
| 漏れやすい財産 | なぜ漏れるか | 確認する方法 |
|---|---|---|
| 子や孫の名義の預金(名義預金) | 名義が本人でないため相続財産だと思われていない | 通帳と印鑑を誰が管理していたか、本人が口座の存在を知っていたかで判定する |
| 手元に置いていた現金 | 口座の残高だけを数えている | 自宅の金庫やタンスを確認する |
| 親族や知人への貸付金 | 返ってこないものと思っている | 借用書、振込の記録を探す |
| ゴルフ会員権・リゾート会員権 | 財産という意識が薄い | 会員証、年会費の引き落とし記録 |
| 暗号資産・ネット証券の口座 | 紙の通知が来ないため気づかれない | スマートフォンのアプリ、メールの取引通知 |
| 相続開始前7年以内の贈与 | 贈与済みなので相続財産ではないと考えている | 通帳の振込履歴、贈与契約書、贈与税の申告書 |
重要ポイント:最後の「7年以内の贈与」は、令和6年1月1日以後の贈与から対象期間が3年から7年に延びたものです。延長された4年分については合計100万円まで加算されません。
相談の段階では、これらに心当たりがあるかどうかを伝えるだけで足ります。正確な金額は税理士が調べます。
名義預金かどうかの判定基準は、下記の記事で解説しています。

税務署が財産を把握する経路は、下記の記事で解説しています。


予約のときに伝えておくと当日の中身が変わる項目があります。これにより、税理士が事前に調査や準備を進めることができ、相談当日の時間を大幅に短縮できるのです。持ち物ばかりに目が向きがちですが、当日の密度を決めるのは予約の時点で何を伝えておくかです。
予約の電話やメールで次の5つを伝えておくと、税理士が当日までに試算を始められます。
| 伝える項目 | 伝え方の例 | 伝えると何が変わるか |
|---|---|---|
| 相続開始日と最後の住所地 | 2026年6月10日死亡、最後の住所は東京都世田谷区 | 申告期限と提出先の税務署が確定する |
| 相続人の人数と続柄 | 配偶者1名、子2名の計3名 | 基礎控除額(3,000万円+600万円×人数)を先に計算できる |
| 遺産総額の概算 | 預貯金3,000万円、不動産3,000万円で合計6,000万円程度 | 申告が要るかどうかの見当が当日を待たずにつく |
| 複雑になりそうな要素 | 非上場株式を持っていた/農地がある/相続人に海外在住者がいる | 必要な資料を事前に指示してもらえる |
| 相談で決めたいこと | 申告が要るか知りたい/配偶者の税額軽減をどう使うか相談したい | 当日その論点から始められる |
重要ポイント:4つ目の「複雑になりそうな要素」が最も効きます。被相続人が個人事業者・会社経営者・農業従事者だった場合や、非上場株式・農地・海外資産がある場合は、予約の時点で必ず伝えてください。当日はじめて分かると、資料をそろえ直してもう一度会うことになります。
自社株や事業用資産がある場合の考え方は、下記の記事で解説しています。

相続人が海外にいる場合の課税の判定は、下記の記事で解説しています。

以下の形式で、相談予約時にメール送信すると効率的です。
【相談予約シート】
相続人氏名:●●●●被相続人の死亡日:2026年6月●日相続人の人数:配偶者1名、子ども2名(計3名)遺産総額(概算):8,000万円程度(預貯金3,000万円、不動産5,000万円)複雑ケースフラグ:非上場株式(事業用)を所有していた
相談の目的:申告が必要か判定し、相続税を最小化する対策を検討したい事前質問:「事業承継税制は適用できるか」「配偶者控除をどの程度活用できるか」このシートを相談予約時に提出すれば、税理士の準備が大幅に進み、相談当日の効率が格段に上がります。

相談前の準備段階で発生しやすいトラブルを、Q&A形式で整理しました。これらのトラブルを事前に把握することで、「相談準備が全く進まない」という状況を避けられます。
相談の前後でよく起きる8つの場面を、対処とあわせて整理しました。どれも「完璧にしてから」と考えたことが原因です。
| つまずく場面 | どうすればよかったか |
|---|---|
| 相談前に戸籍謄本や登記簿を全部集めてしまった | 最小限の6点だけ用意する。残りは相談で必要と言われてから取る |
| 相談後に「この書類を次回持参して」と言われ、また出向くことになった | 初回は完全にそろえる場ではない。追加資料は郵送やデータで送れないか確認する |
| 書類集めに1ヶ月以上かかり、申告期限が不安になった | 準備に時間をかけるほど申告に使える時間が減る。そろっていなくても先に相談する |
| 非上場株式の評価が重要だと後から言われた | 個人事業者・会社経営者・農地所有者は予約の時点で伝える |
| 相続税を勉強してから行こうとして進まなかった | 相談が学ぶ場。事前の勉強より早く会うほうが得られるものが多い |
| 相続人の誰が行くべきかで揉めた | 初回は代表者1名で足りる。意見が対立しているなら全員で行き、中立の説明を受ける |
| 試算額が予想の3倍で動揺した | 初回の試算は参考値。不動産や株式の評価と特例の適用で下がることが多い |
| 節税対策を勧められたが実現できるか分からなかった | 「その対策を使うには何の手続きが要るか」をその場で聞く |
重要ポイント:8つのうち5つは「準備に時間をかけすぎた」ことが原因です。申告期限は10ヶ月で、そのうち相談前に使ってよいのは長くても数日という感覚で動いてください。
初回相談で告げられる税額は概算です。不動産と株式の評価は正式な査定で動きます。土地は形状による補正で下がることがあり、自宅は小規模宅地等の特例が使えれば最大80%減額されます。配偶者が取得する分には配偶者の税額軽減もあります。
つまり初回の試算は、特例を当てる前の上限に近い数字です。その場で判断せず、申告段階の計算を待ってください。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
準備が間に合わず期限が迫っている場合でも、期限内に申告書を出すことを最優先にしてください。期限を過ぎると無申告加算税と延滞税がかかります。分け方が決まっていなくても、いったん法定相続分で申告しておけば、あとから分割が決まった時点で修正できます。
未分割のまま出すときは「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えます。これを出しておかないと、原則として小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減があとから使えなくなります。
期限を過ぎてしまった場合の扱いは、下記の記事で解説しています。

分け方が決まらないまま申告する方法は、下記の記事で解説しています。

「完璧な準備」ではなく「最小限の準備で早く相談する」ほうが、結果として手続き全体は早く終わります。

同じ財産でも、どの税理士に頼むかで納める相続税は変わります。土地の評価に形状の補正を当てるか、小規模宅地等の特例を誰の取得分に当てるかで、結果が動くからです。
相続税の申告を毎年こなしている事務所と、年に数件という事務所では、最初の相談で出てくる論点の数が違います。
相続税の対応実績がある税理士に相談する理由
遺産1億円・うち自宅の土地6,000万円・相続人が配偶者と子1人のケースで考えます。A事務所は自宅に小規模宅地等の特例を当てず、相続税の総額は770万円でした。B事務所は特定居住用宅地等として330㎡まで80%減額し、総額100万円になりました。
同じ財産で670万円の差です。配偶者の税額軽減で配偶者の分が0円になるとしても、子が実際に納める額が385万円と50万円で335万円違います。
計算ロジック:自宅6,000万円×80%=4,800万円を課税価格から引いた場合と引かない場合で、相続人2人の基礎控除4,200万円を差し引いて計算しました。配偶者と子が法定相続分どおり2分の1ずつ取得する前提です。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
見積りを並べると報酬額が比べられますが、もっと差が出るのは「何を持ってきてください」の中身です。次の3点を各事務所に同じ質問で聞き、答えを突き合わせてください。
判定ポイント1:相談前に何を用意させるか
「初回相談に何を持っていけばいいですか」と聞きます。A事務所は「戸籍謄本一式と登記簿をそろえてから」、B事務所は「死亡診断書と財産のメモだけで結構です」という答えでした。
→ B事務所の方が、相談と申告の段階を分けて考えていると判定できます。
判定ポイント2:土地を現地で見るか
「土地は現地を確認しますか」と聞きます。A事務所は路線価図と公図だけ、B事務所は現地で間口と高低差を実測するという答えでした。
→ B事務所の方が、形状による評価減を取りこぼさないと判定できます。
判定ポイント3:分け方の案を何通り出すか
「誰がどれを相続すると有利かの案は出してもらえますか」と聞きます。A事務所は法定相続分どおりの1案、B事務所は二次相続まで見た3〜5案という答えでした。
→ B事務所の方が、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減の組み合わせを検算していると判定できます。
1つの事務所だけで決めると、その事務所の答えが標準なのかどうかを比べる相手がいません。
1つの事務所だけで進めたときに起きること
先ほどの例で言えば、特例の当て方ひとつで670万円が動きます。報酬の差が数十万円でも、税額の差はその何倍にもなります。
重要ポイント:比べるのは報酬額だけではありません。「相談前に何を用意させるか」「土地を現地で見るか」「分け方の案を何通り出すか」の3点を同じ質問で聞けば、実務の厚みが見えます。
| 遺産規模 | 税理士A 報酬 | 税理士B 報酬 | 税理士C 報酬 | 報酬差 (高低差) | 節税効果の 差(試算) |
|---|---|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 70万円 | 100万円 | 90万円 | 30万円 | 約50~100万円 (対策の質による) |
| 1億円 | 150万円 | 200万円 | 180万円 | 50万円 | 約100~200万円 (対策の質による) |
| 2億円 | 300万円 | 400万円 | 350万円 | 100万円 | 約200~500万円 (対策の質による) |
表の見方:左の3列が各事務所の報酬額、5列目がその高低差、右端が評価と特例の当て方で動く税額の幅です。
重要ポイント:報酬の差より税額の差のほうが大きくなります。安さだけで選ぶと節税分で負けることがあるため、提案の中身と並べて判断してください。
計算ロジック:この表の報酬は計算式から出したものではなく、同じ案件を複数の事務所に当てたときに実際に開く見積りの幅です。右端の税額差は、土地の補正と小規模宅地等の特例の当て方で動く幅を示しています。
比較の手間は数日ですが、動く額は数十万〜数百万円です。
申し込みから依頼先を決めるまでは、相続開始から7ヶ月以内に終えるのが目安です。
相続の概要を整理する
亡くなった方の財産の種類と概算額、相続人の人数と年齢、遺言の有無を書き出します。この同じ内容をすべての事務所に渡すことで、見積りを横に並べられます。
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一括相談・見積りサービスに依頼する
フォームに「相続税申告」などの希望内容を書き、複数の税理士(目安3〜5の事務所)への同時打診を依頼します。不動産があれば所在地と広さも記載します。
財産の種類と相続人の人数はできるだけ正確に伝えてください。記入自体は5分程度です。
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見積りと初回相談を受ける
各事務所から提案内容・試算した相続税額・報酬額が届きます。気になった事務所と初回相談を行います。初回相談は無料の事務所が多いので、複数の事務所で受けて構いません。
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税理士を選定・正式依頼する
提案内容の質・説明の丁寧さ・報酬の納得性で選びます。相続開始から7ヶ月以内に決めておくと、申告期限までの段取りに余裕が残ります。
複数の税理士と初回相談する際に、以下の項目を確認してください。聞く順番より、同じ質問をすべての事務所に投げて答えを並べることが大事です。
□ 相続税申告の実績は年間何件か?
相続税申告に特化した税理士は、年間50件以上の申告実績がある傾向です。実績が少ないと、複雑ケースへの対応経験が不足している可能性があります。
□ 複雑ケース(非上場株式・事業承継など)の対応経験はあるか?
あなたのケースが複雑ケースに該当する場合、その対応経験が豊富な税理士を選ぶことが重要です。
□ 相談準備の指導は「最小限優先」か「事前準備重視」か?
「相談前の準備は最小限で構わない、むしろ早期相談を優先してください」というアドバイスをする税理士が、相談効率を重視している傾向です。
□ 初回相談から申告書提出まで、平均的にどれくらいの期間がかかるか?
相続開始から申告期限は10ヶ月であり、早期に対応を開始する必要があります。相談から申告書提出まで「3~4ヶ月」が目安です。
□ 報酬体系は明確か?(隠れた加算報酬がないか?)
報酬額が「遺産額の1%」と明確か、それとも「基本報酬+複雑ケース加算+面倒な手続き加算」など加算項目が多いか確認します。
□ 相談後のフォローアップ体制は整っているか?
不明な点が生じた時の相談対応、書類取得のサポート、代理取得の対応など、相談後のサポート体制を確認します。
□ 担当者は直接、相続税申告の経験が豊富か、それとも新人担当か?
大規模事務所では新人が対応することもあります。可能な限り「相続税実務経験が豊富な担当者」による対応を確認してください。
見積書は総額が書面で出ているかを最優先で確かめてください。基本報酬だけ安く、加算報酬で膨らむ形が見分けにくい部分です。
見積書で確認すること
重要ポイント:加算報酬が最も膨らみやすいのは土地の筆数と非上場株式の銘柄数です。不動産を複数持っている場合は、「土地は何筆で、加算はいくらになりますか」と先に聞いてください。
報酬の相場そのものを確かめたい場合は、下記の記事で解説しています。

税理士以外の相談先も含めて比べたい場合は、下記の記事で解説しています。

相続税の対応実績をどう見分けるかは、下記の記事で解説しています。

東京で相談先を探している場合は、下記の記事で解説しています。

繁忙期(相続開始から数ヶ月)では1~2週間、閑散期なら数日で初回相談が可能な税理士が多いです。相続には10ヶ月の申告期限があるため、なるべく早期に相談予約することが重要です。相談予約時に「いつまでに相談したいか」を明確に伝えてください。
大多数の税理士事務所は、初回相談をオンライン(Zoom・Teams等)で対応しています。対面を希望する場合でも、「遠方のため最初はオンライン、申告段階になったら対面」といった柔軟な対応が可能です。相談予約時に対応形式を確認してください。
相続税申告は重大な判断であり、複数の事務所からの相談・見積り比較は業界でも一般的です。むしろ「複数の事務所から見積りを取ることで、最適な税理士を選ぶ」という行為は、クライアントの当然の権利です。税理士側も、比べられることを想定して対応しています。
伝えても伝えなくても構いません。ただし比較していると分かると、提案の中身をより丁寧に説明してもらえる傾向があります。あとから「他の事務所に決めました」と伝えるときも角が立ちにくいので、最初に言っておくほうが進めやすくなります。
その場で決める必要はありません。「見積りを受け取ってから比較して、改めて返事します」で構いません。2〜3日かけて複数の事務所の見積りを比べ、そのあとに正式依頼を連絡する流れが一般的です。税理士側もそれを想定しています。
相談前の準備は「最小限」に絞る
複雑ケースは事前に判定し、準備内容を調整する
複数の事務所から相談・見積りを取り、最適な税理士を選ぶ
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年6月時点の法令・税率に基づいて作成しています。相続税法の改正により、内容が変わる可能性があります。最新の制度については、税理士や税務署にお問い合わせください。