


親が老人ホームに入って自宅が空き家のまま亡くなった場合でも、自宅の土地の評価を80%下げる特例は使えます。
かつては使えませんでしたが、平成26年の改正で認められるようになりました。空き家だったことを理由に諦める必要はありません。
ただし3つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると使えません。
誤解が多いのは1つ目の要件です。入居した時点で介護の認定がなくても、亡くなる直前にあれば使えます。
使えるかどうかで税額は大きく変わります。遺産1億円で子2人なら、770万円が410万円になります。
使うには申告期限までに分け方を決めて申告する必要があります。黙っていて自動的に適用されるものではありません。
この記事では、3つの要件、対象になる施設、入居後にしてはいけないこと、立場別の判定、税額の試算、入居一時金の扱いまでを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

自宅の土地の評価を大きく下げる制度を、小規模宅地等の特例といいます。亡くなった人が住んでいた土地であることが前提の制度です。
老人ホームに入ると自宅は空き家になります。かつてはこれで「住んでいた土地」に当たらないとされていましたが、平成26年1月1日以後の相続からは、条件を満たせば住んでいた土地として扱われます。
ここでは、下がる金額と面積の上限、そして満たすべき3つの要件の全体像を押さえます。個々の要件は次の章から順に見ていきます。
自宅の土地として使われていた部分は、330平方メートルまで評価額を80%下げられます。100平方メートルの土地なら全部が対象です。
評価額3,000万円の土地なら、2,400万円を引いた600万円として計算します。330平方メートルを超える部分は下がりません。
対象になるのは土地だけで、建物の評価は下がりません。また、この特例を使うには申告期限までに分け方を決めて申告書を提出する必要があります。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
特例の全体像と4つの類型は、下記の記事で解説しています。

老人ホームに入っていた場合に特有の要件が3つあります。3つすべてを満たしたときだけ、空き家だった自宅の土地が「住んでいた土地」として扱われます。
| 要件 | 判定する時点 | 欠けるとどうなるか | |
|---|---|---|---|
| ① | 介護が必要だと公的に認定されていたこと | 亡くなる直前 | 使えない |
| ② | 決められた種類の施設に入っていたこと | 入居している間 | 使えない |
| ③ | 入居後の自宅を人に貸したり事業に使ったりしていないこと | 入居後から亡くなるまで | 使えない |
| — | 3つすべてを満たすこと | — | 1つでも欠けたら適用不可 |
表の見方:3列目の「判定する時点」が重要です。要件ごとに見る時点が違い、特に①は入居したときではなく亡くなる直前で判断します。
重要ポイント:この3つは亡くなった人の側の条件です。これとは別に「誰が相続するか」という取得者側の条件があり、そちらも満たさないと使えません。取得者の条件は後の章で扱います。
参照元:国税庁 老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例(平成26年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する場合の取扱い)
改正が適用されるのは、平成26年1月1日以後に亡くなった場合です。それより前の相続では、老人ホームに入った時点で自宅は「住んでいた土地」ではなくなる扱いでした。
当時は、入居していた施設が終身利用権付きかどうか、自宅にいつでも戻れる状態だったかといった細かい条件が問われていました。現在はこれらの条件は不要です。
古い解説記事にはこの改正前の条件がそのまま残っていることがあります。「いつでも戻れる状態でなければ使えない」という記述を見かけたら、改正前の情報だと考えてください。

1つ目の要件は、介護が必要だと公的に認定されていたことです。自分や家族の判断ではなく、市区町村の認定が要ります。
ここで多くの人がつまずきます。「入居したときはまだ認定を受けていなかった」という理由で諦めてしまうケースが少なくありません。
しかし国税庁は、判定するのは入居時ではなく亡くなる直前だと明記しています。この章では、判定の時点、認定の種類、申請中に亡くなった場合を順に見ます。
国税庁の質疑応答事例には、次のように書かれています。老人ホームに入居する時点で認定を受けていなくても、相続開始の直前に受けていれば要件を満たすという内容です。
元気なうちに自分の意思で入居し、その後に体が弱って認定を受けたという順番でも問題ありません。実際にはこの順番のほうが多いはずです。
逆に、入居時には認定があったのに亡くなる直前には更新していなかった場合は要件を満たしません。認定には有効期間があるため、切れたままになっていないか確認してください。
重要ポイント:この点を明記している解説は少数です。入居時に認定がなかったことを理由に特例を使わずに申告してしまうと、本来払わなくてよい相続税を納めることになります。
参照元:国税庁 老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例(平成26年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する場合の取扱い)
認定にはいくつか種類がありますが、要介護と要支援のどちらでも使えます。介護の度合いが軽いという理由で除かれることはありません。
| 認定の種類 | 区分 | 特例に使えるか |
|---|---|---|
| 要介護認定 | 要介護1〜5 | 使える |
| 要支援認定 | 要支援1・2 | 使える |
| 事業対象者の認定 | 介護予防・日常生活支援総合事業の対象者 | 使える |
| 障害支援区分の認定 | 区分1〜6 | 使える |
| 認定なし | — | 使えない |
表の見方:上の4つはいずれも公的な認定で、どれか1つを亡くなる直前に受けていれば要件を満たします。区分の重い軽いは問われません。
重要ポイント:障害支援区分の認定でも使えます。介護保険の認定だけが対象だと思われがちですが、障害者総合支援法に基づく認定も含まれます。
認定の申請をしたあと、結果が出る前に亡くなることもあります。申請から認定までは通常1か月ほどかかるためです。
この場合も、申請が認められて認定の効力が申請日にさかのぼれば要件を満たします。認定には申請日にさかのぼって効力が生じる扱いがあるためです。
亡くなった後に認定の結果が届いた場合は、その通知書を保管しておいてください。申告のときに認定を受けていた証拠として使います。
重要ポイント:申請自体をしていなかった場合は、亡くなった後から申請することはできません。入居を検討する段階で認定の申請だけは済ませておくことが、将来の相続での分かれ目になります。
認定をまったく受けていなかった場合、この特例は使えません。要件①を満たさないためです。
ただし諦める前に確認すべきことがあります。自宅に配偶者や生計を一にする親族が住み続けていた場合は、老人ホームの要件とは別の道で特例を使えることがあります。
その場合は「亡くなった人が住んでいた土地」ではなく「亡くなった人と生計を一にしていた親族が住んでいた土地」として判定します。認定の有無は関係ありません。
判定が分かれる場面なので、認定がなかったからといって自己判断で諦めず、自宅に誰が住んでいたかを整理したうえで税理士に確認してください。

2つ目の要件は、決められた種類の施設に入っていたことです。施設なら何でもよいわけではなく、法律で列挙されたものに限られます。
とはいえ、高齢者が介護を理由に入る施設のほとんどは含まれます。特別養護老人ホームから有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅まで幅広く対象です。
この章では、対象になる施設の一覧、届出をしていない施設の扱い、病院に入院していた場合の考え方を見ていきます。
対象は租税特別措置法施行令に列挙されています。根拠となる法律ごとに整理すると、次の10種類です。
| 根拠となる法律 | 施設・住居 | 対象か |
|---|---|---|
| 老人福祉法 | 特別養護老人ホーム | 対象 |
| 老人福祉法 | 養護老人ホーム | 対象 |
| 老人福祉法 | 軽費老人ホーム(ケアハウスを含む) | 対象 |
| 老人福祉法 | 有料老人ホーム | 対象 |
| 老人福祉法 | 認知症の人が共同生活する住居(グループホーム) | 対象 |
| 介護保険法 | 介護老人保健施設(老健) | 対象 |
| 介護保険法 | 介護医療院 | 対象 |
| 高齢者住まい法 | サービス付き高齢者向け住宅 | 対象 |
| 障害者総合支援法 | 障害者支援施設(施設入所支援のあるもの) | 対象 |
| 障害者総合支援法 | 共同生活援助を行う住居 | 対象 |
| — | 病院・診療所への入院 | この要件の対象外 |
表の見方:介護を理由に入る施設はほぼ入っています。入居先の種別が分からない場合は、施設との契約書か重要事項説明書に根拠法と施設の種類が書かれています。
重要ポイント:障害支援区分の認定を受けて障害者支援施設に入っていた場合も対象です。高齢者向けの施設だけが対象だと誤解されがちですが、要件①で障害支援区分の認定が認められているのと対になっています。
参照元:e-Gov法令検索 老人福祉法
有料老人ホームは、開設する前に都道府県へ届け出ることになっています。ところが実際には、届け出ないまま運営されている施設があります。
「無届けの施設に入っていたから使えない」と説明されることがありますが、条文はそう読めません。老人福祉法が定める有料老人ホームの中身は「老人を入居させ、介護や食事の提供などを行う施設」であって、届出をしたかどうかは定義に含まれていないからです。
同じ条文には「届出がされていない疑いがある有料老人ホーム」という表現も出てきます。届け出ていない施設も有料老人ホームであることを、法律自体が前提にしています。
重要ポイント:ただし実務では、その施設が有料老人ホームに当たることを自分の側で示す必要があります。契約書・重要事項説明書・パンフレット・利用料の明細など、介護や食事の提供を受けていたことが分かる資料を残しておいてください。
サービス付き高齢者向け住宅、いわゆるサ高住も対象です。登録を受けた住宅であれば要件を満たします。
注意したいのは、サ高住には介護サービスが付いているものと、見守りだけのものがある点です。介護や食事の提供まで行っている場合は、法律上は有料老人ホームとして扱われます。
どちらに当たるかで特例の使えるかどうかが変わることはありません。どちらも対象だからです。種別の判定に迷っても、この要件では結論は同じになります。
老人ホームではなく病院に入院したまま亡くなった場合は、この要件の話になりません。病院は列挙された施設に含まれないためです。
ただし特例が使えないわけではありません。入院は一時的なもので、生活の本拠は自宅のままと考えるのが一般的だからです。自宅に住んでいた土地として判定します。
つまり老人ホームの要件を持ち出す必要がありません。自宅を空けていた理由が入院であれば、通常の居住用の土地として特例を検討してください。
重要ポイント:迷うのは老人ホームに入ったあとで入院し、そのまま亡くなった場合です。この場合は老人ホームの3要件で判定します。入院で要件が切れることはありません。
参照元:国税庁 老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例(平成26年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する場合の取扱い)

3つ目の要件は、老人ホームに入った後の自宅の使い方です。空き家のままにしておくのがいちばん安全で、手を加えるほど危うくなります。
使えなくなるのは2つの場合に絞られます。事業に使った場合と、亡くなった人や生計を一にしていた親族以外の人が住み始めた場合です。
この章では、判定の一覧、貸した場合、親族が住み始めた場合、建物に手を加えた場合を見ていきます。
空き家のまま置いておくことに不安を感じて、誰かに貸したり親族を住まわせたりする家庭は少なくありません。ここが分かれ目になります。
| 入居後の自宅の状態 | 特例 | 理由 |
|---|---|---|
| 空き家のままにしていた | 使える | 誰の居住にも事業にも使っていない |
| 配偶者が住み続けていた | 使える | 亡くなった人の家族が住んでいる |
| 生計を一にする親族が住み続けていた | 使える | 同上 |
| たまに帰ってきて使っていた | 使える | 本人の利用なので問題ない |
| 家財を置いたままにしていた | 使える | 居住にも事業にも当たらない |
| 第三者に貸していた | 使えない | 新たに他人の居住の用になった |
| 入居後に生計が別の親族が住み始めた | 使えない | 同上 |
| 事務所や店舗として使った | 使えない | 事業の用になった |
表の見方:上の5つは特例が使え、下の3つは使えません。境目は「亡くなった人と生計を一にしていた親族以外の人が新たに住み始めたかどうか」です。
重要ポイント:空き家のまま放置していても特例は失われません。管理のために月に数回通っていた、家財をそのままにしていた、といった状態はいずれも問題ありません。
入居後に自宅を賃貸に出すと、特例は使えなくなります。空き家の管理が大変だから、入居費用の足しにしたいからという事情があっても結論は変わりません。
注意したいのは、家賃を取らずに貸した場合も同じ扱いになる点です。無償で貸していても、住んでいるのが生計を別にする第三者であれば「新たに他人の居住の用に供された」ことになります。
親族に無償で貸した場合の判定は、その親族が亡くなった人と生計を一にしていたかどうかで分かれます。生計が一つであれば使え、別であれば使えません。
重要ポイント:賃貸に出してしまった場合でも、別の道が残ることがあります。貸付事業用の土地として200平方メートルまで50%下げる扱いです。居住用より減額は小さくなりますが、ゼロではありません。
貸している土地の特例は、下記の記事で解説しています。

賃貸に出している不動産の評価の下げ方は、下記の記事で解説しています。

もっとも判断が難しいのがこの場面です。親が施設に入った後、空いた実家に子ども家族が引っ越してくることはよくあります。
この場合、その子が親と生計を一にしていたかどうかで結論が変わります。生計が一つなら特例は維持され、別なら失われます。
生計が一つかどうかは、財布を共にしていたかで判断します。親の施設費用を子が負担していた、親から子へ生活費を渡していたといった実態があれば一つと見られます。
逆に、それぞれ独立して生計を立てていた場合は別と扱われます。同じ建物に住んでいたかどうかは関係ありません。
重要ポイント:入居前から住んでいた親族なら、生計が別でも特例は失われません。要件で問われるのは「入居後に新たに住み始めたか」だからです。いつから住んでいたかを必ず確認してください。
空き家の管理が難しく、建物を取り壊すことがあります。この場合は特例の対象になる土地ではなくなる可能性が高くなるので、実行する前に影響を確かめてください。
特例は「建物の敷地」として使われていた土地を対象にするためです。建物がなくなれば敷地でもなくなります。
建て替えについても慎重な判断が必要です。亡くなった人が住むために建て替えたのでなければ、元の状態が続いているとは言いにくくなります。
重要ポイント:取り壊しや建て替えは相続が終わるまで待つのが安全です。固定資産税の負担や倒壊の危険といった事情があっても、先に税理士へ影響を確認してから決めてください。

ここまでの3要件は、亡くなった人の側の条件でした。これを満たしても、誰がその土地を相続するかで使えるかどうかが変わります。
使えるのは4つの立場のいずれかに当たる人だけです。兄弟姉妹で分けるとき、誰が自宅を取るかによって家族全体の税額が変わることになります。
この章では、4つの立場を比べたうえで、それぞれの条件と、老人ホームのケース特有の注意点を見ていきます。
立場によって追加の条件が違います。特に「申告期限まで住み続ける必要があるか」と「売らずに持っている必要があるか」は、分け方を決める前に確認してください。
| 誰が相続するか | 追加の条件 | 申告期限まで住み続ける必要 | 売らずに持つ必要 |
|---|---|---|---|
| 配偶者 | なし | 不要 | 不要 |
| 入居前から同居していた親族 | 入居前に同居していたこと | 必要 | 必要 |
| 持ち家のない別居の親族 | 配偶者も同居親族もいないこと。3年以上自分や親族の持ち家に住んでいないことなど | 不要 | 必要 |
| 生計を一にしていた親族 | 入居の直前から自宅に住んでいること | 必要 | 必要 |
| 上のどれにも当たらない親族 | — | — | 使えない |
表の見方:配偶者だけが追加の条件なしで使えます。他の3つは条件付きで、申告期限である10か月まで状態を維持する必要があるものがあります。
重要ポイント:申告期限より前に売ってしまうと、条件を満たさなくなります。空き家を早く処分したい気持ちがあっても、相続税の申告が終わるまでは待ってください。
親と同居していた場合に相続税がどれだけ減るかは、下記の記事で解説しています。

もっとも簡単なのがこの形です。配偶者が自宅の土地を相続すれば、追加の条件なしで特例を使えます。
申告期限まで住み続ける必要も、売らずに持っている必要もありません。相続した直後に売っても特例は失われません。
老人ホームのケースでは、夫婦そろって施設に入っていることがあります。その場合でも配偶者が相続すれば同じ扱いです。配偶者自身が自宅に住んでいるかどうかは問われません。
なお、配偶者には別に大きな軽減があり、1億6,000万円までは相続税がかからない仕組みがあります。自宅を配偶者に寄せるかどうかは、次の相続まで見て決めてください。
配偶者への配分の決め方は、下記の記事で解説しています。

親が施設に入る前に同居していた子が相続する形です。老人ホームのケースでは、入居前に同居していたかどうかで判定します。
この立場で使うには、申告期限まで自宅に住み続け、かつ売らずに持っている必要があります。10か月という期間を意識してください。
注意したいのは、親が施設に入った後に一度引っ越して相続のときに戻ってきたような場合です。同居が続いていたと言えるかが問われ、判定が難しくなります。
二世帯住宅で同居していた場合は、建物の登記の形によって結論が変わることがあります。判定の分かれ目は下記の記事で解説しています。

配偶者も同居していた親族もいない場合に限って、別居している親族でも使える道があります。持ち家のない人を対象にした扱いです。
老人ホームのケースでは、自宅が空き家だったため「同居していた親族」がいないことが多く、この道を使える場面が比較的多くなります。
条件は細かく、3年以上にわたって自分や配偶者、一定の親族が所有する家に住んでいないことなどが求められます。過去の住まいの履歴を戸籍の附票などで確認することになります。
申告期限まで住む必要はありませんが、売らずに持っている必要はあります。空き家を相続してすぐ売る予定がある場合は、申告が終わるまで待つ段取りにしてください。
条件の詳細と判定の手順は、下記の記事で解説しています。

別居していても財布が一つだった親族が、自宅に住んでいた場合に使える形です。親の施設費用を子が負担していたようなケースが当てはまります。
この立場では、その親族自身が入居の直前から自宅に住んでいることが前提になります。空き家だった場合はこの立場を使えません。
申告期限まで住み続け、売らずに持っている必要があります。条件は同居していた親族の場合と同じです。
参照元:国税庁 別紙 老人ホームに入居中に自宅を相続した場合の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法第69条の4)の適用について

ここまでの要件を満たすと、自宅の土地の評価が80%下がります。では相続税は実際にいくら変わるのかを計算します。
結論から言うと、遺産1億円で子2人なら360万円の差が出ます。申告書1枚の書き方で、この金額が動くことになります。
この章では、遺産額ごとの比較、代表例の計算の内訳、面積の上限を超える場合の考え方を見ていきます。
【シナリオ】被相続人は父で、母は既に死亡。相続人は子2人です。遺産のうち自宅の土地が3,000万円で、330平方メートル以内とします。
| 遺産の総額 | 特例なし | 特例あり | 差額 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 80万円 | 0万円 | △80万円 |
| 8,000万円 | 470万円 | 140万円 | △330万円 |
| 1億円 | 770万円 | 410万円 | △360万円 |
| 1億5,000万円 | 1,840万円 | 1,280万円 | △560万円 |
表の見方:「特例あり」は土地の評価額3,000万円から80%にあたる2,400万円を引いて計算しています。土地以外の財産と相続人の数は変えていません。
重要ポイント:遺産5,000万円では特例を使うと相続税が0円になります。課税価格が2,600万円となり、基礎控除4,200万円を下回るためです。
計算ロジック:基礎控除は3,000万円+600万円×2人で4,200万円。課税価格から基礎控除を引いた額を法律で決まった割合(子2人なら2分の1ずつ)で分け、それぞれに税率をかけて合計しています。
相続税そのものの計算手順は、下記の記事で解説しています。

基礎控除の計算と課税されるかの判定は、下記の記事で解説しています。

前の表のとおり、特例を使うと相続税が0円になることがあります。ここに落とし穴があります。
この特例は申告書を出して初めて使えるものです。税額が0円だから申告しなくてよい、とはなりません。
申告しないまま期限を過ぎると、特例を使っていない状態で税額が計算されます。前の表の「特例なし」の金額に、加算税と延滞税が上乗せされます。
重要ポイント:特例で0円になる場合こそ、申告書の提出が絶対条件です。税額が出ないことと申告が不要なことは別だと覚えてください。期限を過ぎても特例そのものは使えますが、無申告加算税と延滞税は別にかかります。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
下げられるのは330平方メートルまでです。それを超える部分は通常どおりの評価になります。
たとえば500平方メートルの土地なら、330平方メートル分だけが80%引きで、残る170平方メートルはそのままです。
広い土地の場合は、面積あたりの評価額が高い部分から優先して適用するのが有利になります。複数の土地がある場合も、どれに使うかを選べます。
重要ポイント:自宅のほかに人に貸している土地や事業用の土地がある場合、どれに使うかで税額が変わります。組み合わせの計算は複雑なので、試算してもらってから決めてください。

有料老人ホームに入るとき、まとまった一時金を払うことがあります。この一時金は一定の期間をかけて少しずつ償却され、期間の途中で亡くなると残りが返ってきます。
この返ってくるお金を相続財産に入れ忘れる申告が少なくありません。金額が大きいため、後から指摘されると追徴の額も大きくなります。
この章では、返還金が誰のものになるのか、払った人によって扱いがどう変わるのか、計上すると税額がいくら動くのかを見ていきます。
入居一時金は、契約で決めた期間にわたって少しずつ施設の収入になります。この仕組みを償却といいます。
償却が終わる前に亡くなると、まだ償却されていない分が返還されます。この返還を受ける権利は、亡くなった時点で本人が持っていた財産です。だから相続財産に含めます。
現金が手元に来ていなくても同じです。亡くなった時点で権利があれば、その金額を財産として計上します。実際の入金が申告期限の後になっても変わりません。
重要ポイント:契約書に償却の期間と返還の計算方法が書かれています。入居から何年で全額が償却されるのか、初期に償却される割合があるのかを確認してください。
現金以外で相続財産に含まれるものは、下記の記事で解説しています。

入居一時金を子が負担していることがあります。親の年金では足りず、子が肩代わりする形です。この場合は扱いが変わります。
| 入居一時金を払った人 | 契約上の返還先 | 相続税・贈与税の扱い |
|---|---|---|
| 本人(亡くなった人) | 本人 | 返還金は相続財産になる |
| 本人 | 相続人のうち特定の1人を指定 | 契約の内容によって分かれる。税理士に契約書を見せて確認する |
| 子(本人は負担していない) | 本人 | 入居した時点で本人が利益を受けたとみられる場合がある |
| 子(本人は負担していない) | 払った子 | 本人の財産ではないので相続財産に含めない |
表の見方:判断の軸は2つです。誰がお金を出したかと、契約上いくら誰に返ることになっているかです。この2つは契約書と振込の記録で確認できます。
重要ポイント:子が払ったのに返還先が本人になっている契約は注意が必要です。入居した時点で本人が利益を受けたとみて、贈与があったものとして扱われることがあります。
契約で「返還金は長男に支払う」と定めている施設もあります。この場合の扱いは一律ではありません。
契約の内容によって、本人の財産として相続財産に入るのか、指定された人の固有の財産になるのかが分かれます。生命保険金のように法律で明確な扱いが定められているわけではありません。
判断を誤ると、遺産分割の対象になるかどうかも変わります。相続人の間の取り分の計算にも影響するため、自己判断で決めないでください。
重要ポイント:契約書の返還に関する条項を丸ごと税理士に見せるのが確実です。「受取人が指定されているかどうか」だけを伝えても、正しい判断はできません。
【シナリオ】遺産1億円(特例適用後の課税価格7,600万円)で子2人。入居一時金2,000万円を5年で償却する契約で、入居2年で相続が発生したとします。
返還金は2,000万円×(1 − 2年 ÷ 5年)で1,200万円です。これを課税価格に足します。
| 返還金を計上しない | 正しく計上した | |
|---|---|---|
| 課税価格 | 7,600万円 | 8,750万円 |
| 相続税 | 410万円 | 582.5万円 |
| 差額 | — | +172.5万円 |
表の見方:右列は返還金1,200万円を足し、施設への未払い分50万円を差し引いた金額です。計上を漏らすと172.5万円の申告漏れになります。
重要ポイント:返還金は税務署が把握しやすい財産です。施設からの入金は口座に残るため、調査で指摘される可能性が高い項目だと考えてください。
計算ロジック:基礎控除4,200万円を引いた額を子2人で2分の1ずつに分け、それぞれに税率をかけて合計しています。返還金を足したことで税率の区分が上がり、足した金額1,200万円に対して税額が172.5万円増えています。

亡くなった時点で施設への支払いが残っていることがあります。この未払い分は相続財産から差し引けます。
差し引けるのは、亡くなった時点で支払う義務が確定していて、かつ確実に支払うことになるものです。法律にそう定められています。
この章では、差し引けるものと差し引けないものを整理し、判断が分かれやすい原状回復費用の扱いと、差し引き忘れたときの損失を見ていきます。
施設にまつわるお金は種類が多く、扱いが分かれます。境目は「亡くなった時点で本人の義務として確定していたか」です。
| 施設に関するお金 | 相続税から差し引けるか | 理由 |
|---|---|---|
| 亡くなった月までの未払いの利用料 | 差し引ける | 亡くなった時点で支払う義務が確定している |
| 未払いの介護サービス費・医療費 | 差し引ける | 同上 |
| 退去時の原状回復費用(契約で義務づけられているもの) | 差し引ける場合がある | 義務が確定しているかで判断する |
| 亡くなった後に相続人が契約した片付け費用 | 差し引けない | 亡くなった人の債務ではない |
| 償却が済んだ入居一時金 | 差し引けない | 返ってこないお金 |
| 葬儀に関する費用 | 別枠で差し引ける | 債務ではないが葬式費用として控除できる |
表の見方:上から3つは亡くなった人の義務なので差し引けます。4つ目は相続人が新たに結んだ契約なので亡くなった人の債務ではありません。
重要ポイント:領収書は亡くなった日を挟んで分けて保管してください。同じ施設への支払いでも、亡くなる前の分と後の分で扱いが変わります。
債務控除の対象になるものの全体像は、下記の記事で解説しています。

月末締めの施設では、亡くなった月の利用料が未払いのまま残ります。介護サービスの自己負担分や、医療費の未払いも同じです。
これらは亡くなった時点で支払う義務が確定している債務なので、迷わず差し引けます。施設が発行する精算書が根拠になります。
精算書は退去の手続きが終わってから届くことが多く、亡くなってから1〜2か月かかります。申告の準備を始める段階で施設に発行を依頼しておいてください。
居室を明け渡すときの原状回復費用は、差し引けるかどうかが分かれます。
契約書に原状回復の義務が定められていて、亡くなった時点でその義務が確定していると言えるなら差し引ける余地があります。
一方で、相続人が施設と改めて話し合って金額を決めた場合は、亡くなった人の債務とは言いにくくなります。確実と認められる債務に限るという法律の条件があるためです。
重要ポイント:契約書の原状回復条項と、施設が出した請求書の日付を残すこと。この2つがあれば、差し引けるかどうかを税理士が判断できます。書類がないと安全側に振って差し引かない判断になりがちです。
未払い分の差し引きは、金額が小さいからと省かれることがあります。ただし実際にはそのまま税額に効きます。
前の章のシナリオで、未払いの利用料30万円と原状回復費用20万円の合計50万円を差し引かなかった場合、相続税は7.5万円多くなります。
金額そのものは小さく見えますが、返還金の計上漏れと合わせると数十万円単位になります。施設に関するお金は、入るものも出るものも漏れやすい項目です。
重要ポイント:施設との精算書を1枚もらえば、入るお金と出るお金が両方わかります。返還金の額も未払い分も同じ書類に載っているので、最初に依頼する書類として押さえてください。

要件を満たしていても、書類がそろわないと特例は使えません。老人ホームのケースでは通常の申告より書類が2種類増えます。
もう1つ見落とされやすいのが提出先です。施設に住民票を移していたかどうかで、申告書を出す税務署が変わることがあります。
この章では、必要な書類とその取得先、提出先の決まり方、10か月から逆算した進め方を見ていきます。
通常の相続税申告の書類に加えて、要件①と要件②を満たすことを示す書類が要ります。どちらも手元にあることが多い書類です。
| 書類 | 何を示すためのものか | 取得先 | 費用と日数の目安 |
|---|---|---|---|
| 介護保険の被保険者証の写し | 要介護・要支援の認定を受けていたこと | 手元の書類(返却済みなら市区町村) | 無料〜数百円・即日 |
| 障害者手帳・認定の通知書の写し | 障害支援区分の認定を受けていたこと | 手元の書類 | 無料 |
| 施設との契約書の写し | 対象になる施設に入っていたこと | 手元の書類(なければ施設) | 無料・数日 |
| 戸籍の附票の写し | 住所の移り変わり | 本籍地の市区町村 | 1通300円前後・即日〜1週間 |
| 被相続人の戸籍謄本一式 | 相続人が誰かの確定 | 本籍地の市区町村 | 1通450〜750円・即日〜2週間 |
| 遺産分割協議書の写しと印鑑証明書 | 誰がその土地を取得したか | 相続人が作成・市区町村 | 1通300円前後 |
表の見方:上の3つが老人ホームのケース特有の書類です。介護保険の被保険者証は亡くなった後に市区町村へ返却するため、返す前にコピーを取っておいてください。
重要ポイント:戸籍の附票は相続開始の日以後に作成されたものが必要です。以前に取ったものが手元にあっても使えないので、亡くなった後に取り直してください。
相続税の申告書は、亡くなった人の住所地を所轄する税務署に提出します。相続人が全国に散らばっていても提出先は1か所で、相続人それぞれの住所地ではありません。
ここで問題になるのが、老人ホームに住民票を移していた場合です。施設の所在地が亡くなった人の住所になるため、提出先はその地域の税務署になります。
住民票を自宅に残したまま入居していた場合は、自宅の所在地です。ただし住所は住民票の場所と必ず一致するわけではなく、生活の本拠がどこだったかで判断されます。
重要ポイント:提出先を間違えると正しい税務署に届くまでの間に期限を過ぎる恐れがあります。住民票を動かしていたかどうかを、申告の準備を始める段階で確認してください。
申告期限の数え方は、下記の記事で解説しています。

期限を過ぎてしまった場合に何が起きるかは、下記の記事で解説しています。

申告期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。老人ホームのケースでは、施設との精算に時間がかかる分余裕が少なくなります。
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重要ポイント:最初の1か月が勝負です。介護保険の被保険者証は返却すると手元から消えます。退去の慌ただしい時期ですが、コピーだけは必ず取ってください。

申告を済ませた後で「使えたのではないか」と気づくことがあります。納めすぎた相続税は取り戻せます。
期限は法定申告期限から5年で、相続開始から数えると5年10か月あります。数年前に済ませた申告でも間に合うことが多く、気づいた時点で動けば取り返せる余地が残っています。
この章では、使えないと判断された理由が本当に正しいのか、取り戻す手続きと期限、誰に相談すべきかを見ていきます。
特例を使わずに申告している場合、その判断が正しいとは限りません。老人ホームの要件は誤解されやすく、使えたはずのケースを落としていることがあります。よくある理由と、本当に使えないのかを並べます。
| 使えなかった理由 | 本当に使えないか | 確認すること |
|---|---|---|
| 入居時に介護の認定がなかった | 使える可能性が高い | 亡くなる直前に認定を受けていなかったか |
| 認定の区分が軽かった(要支援) | 使える | 要支援でも対象になる |
| 無届けの施設だった | 使える可能性がある | 実態が有料老人ホームに当たるかを契約書で確認 |
| 空き家だった | 使える | 空き家であること自体は問題にならない |
| 申告期限までに分け方が決まらなかった | 取り戻せる | 分割見込書を出していたか |
| 入居後に第三者へ貸していた | 使えない | 貸付事業用として50%下げられないか |
表の見方:上から4つは判断が誤っている可能性が高いものです。特に1つ目は、この記事の前半で見たとおり入居時の認定は要件ではありません。
重要ポイント:最下段のように本当に使えない場合でも、貸していた土地として200平方メートルまで50%下げられることがあります。居住用がだめでも別の枠が残っていないかを確認してください。
納めすぎた相続税を返してもらう手続きを、更正の請求といいます。法定申告期限から5年以内であれば請求できます。
請求が認められると、納めすぎていた分が還付されます。申告期限から3年以上経っていても5年以内なら間に合うので、「もう手遅れだろう」と諦める前に日付を数えてください。
なお、遺産分割がまとまったことなど後から生じた事情による場合は、その事実が起きた日から4か月以内という別の期限になります。特例の適用漏れは5年のほうを使います。
参照元:国税庁 B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続
戻る金額の目安と手続きの流れは、下記の記事で解説しています。

不動産の評価を見直して還付を受ける手順は、下記の記事で解説しています。

申告を担当した税理士に見直しを頼むのは、実際には難しい場面があります。自分の判断を訂正することになるためで、「問題ありません」という回答で終わってしまうこともあります。
別の事務所に意見を求める道があります。申告書の控えと施設の契約書があれば、見込みの有無を判断できます。土地の現物を見る必要はないので、遠方の事務所でも相談できます。
確認してもらうべき点は3つです。亡くなる直前に介護の認定があったか、入居していた施設が対象に当たるか、入居後に自宅を貸していなかったかの3点で、いずれも手元の書類から判定できます。
重要ポイント:申告書に小規模宅地等の特例の明細書が付いていないなら、特例をまったく検討していない可能性があります。まずこの1点を控えで確かめてください。

ここまで見てきたとおり、老人ホームのケースは判定を1つ誤るだけで数百万円動きます。要件の見方、施設の種別、自宅の使い方、誰が相続するかがすべて結論に影響します。
しかも入居一時金の返還金や施設への未払い分など、通常の相続税申告には出てこない項目が加わります。これらを漏れなく扱えるかどうかで結果が変わります。
相続税の対応実績がある税理士に早い段階で相談し、複数の事務所から見積りを取って比べることをおすすめします。
この相続で差がつくのは計算の速さではありません。使えるはずの特例に気づけるかどうかです。経験の少ない事務所では、空き家だったことを理由に特例を検討しないまま申告してしまうことがあります。
【実績のある税理士が押さえていること】
金額で見ると差は明確です。【シナリオ】被相続人は父で母は既に死亡、相続人は子2人。遺産1億円のうち自宅の土地が3,000万円というケースで比べます。
差は360万円です。同じ事実関係で、認定をいつ時点で見るかという一点だけで生まれます。
計算ロジック:基礎控除は3,000万円+600万円×2人で4,200万円。特例を使うと土地3,000万円から2,400万円を引けるので、課税価格は7,600万円まで下がります。
重要ポイント:動かしているのは特例を使うかどうかの一点だけです。財産の内容も相続人の数も同じで、それでも360万円の差がつきます。
老人ホームのケースでは、見積書と初回相談に事務所の姿勢が表れます。3〜5の事務所から取れば、要件をどこまで詰める事務所かが読み取れます。
判定ポイント1:認定の時期を聞いてくるかA税理士は「介護認定はありましたか」とだけ聞き、B税理士は「認定を受けたのはいつですか。亡くなる直前は有効でしたか」と時点まで確認してきた。→ B税理士の方が、要件の判定基準を正確に理解していると判定できます。
判定ポイント2:入居後の自宅の使い方を確認するか空き家だったか、誰か住んでいたか、貸していたかを聞いてくるかを見る。聞かない事務所は要件③を検討していない可能性があります。→ 確認する事務所の方が、適用の可否を正しく判定できます。
判定ポイント3:施設との精算書を求めるか入居一時金の返還金と未払い分は、施設の精算書1枚で両方わかります。これを求めてくるかどうかで、意識している範囲が見えます。→ 求める事務所の方が、申告漏れも控除漏れも防げると判定できます。
3つとも、専門知識がなくても答えのあるなしが分かる質問です。同じ資料を渡したうえで比べてください。渡す情報が違うと見積りも比べられなくなります。
1つの事務所だけで決めると、その判断が正しいかを確かめる材料がありません。特例を使わないという結論が出ても、それが妥当なのか分からないまま申告することになります。
【相談しないまま進めたときに起きること】
金額で言えば、特例の適用を落とすだけで360万円、返還金の計上を漏らすと172.5万円の申告漏れになります。いずれも申告報酬を大きく上回る金額です。
重要ポイント:分け方を決める前に相談することが最も重要です。誰が自宅を相続するかで特例の可否が変わるため、決めてから相談すると選択肢がなくなります。
相談から依頼までの流れです。相続開始から7か月以内に依頼先を決めることを目安にしてください。
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重要ポイント:STEP2で老人ホームに入居していたことを最初に伝えてください。この一言があるかないかで、返ってくる提案の中身が変わります。
使える可能性が高いです。判定するのは入居した時点ではなく、亡くなる直前だからです。国税庁も、入居時に認定を受けていなくても相続開始の直前に受けていれば要件を満たすと明記しています。
元気なうちに自分の意思で入居し、その後に体が弱って認定を受けたという順番でも問題ありません。逆に、入居時には認定があったのに亡くなる直前に切れていた場合は要件を満たさないので、有効期間を確認してください。
なります。要介護1〜5と要支援1・2のどちらでも使え、介護の度合いが軽いことを理由に除かれることはありません。障害支援区分の認定を受けて障害者支援施設に入っていた場合も対象です。
区分の重い軽いは問われないため、「要支援だから無理だろう」と自己判断で諦めないでください。認定を受けていた事実が分かる書類を残しておけば足ります。
使える可能性があります。法律が定める有料老人ホームの中身は「老人を入居させ、介護や食事の提供などを行う施設」であって、届出をしたかどうかは定義に含まれていないためです。
ただし実務では、その施設が有料老人ホームに当たることを自分の側で示す必要があります。契約書・重要事項説明書・利用料の明細など、介護や食事の提供を受けていたことが分かる資料を保管してください。
その子が亡くなった人と生計を一にしていたかで変わります。財布が一つだったなら特例は維持され、それぞれ独立して生計を立てていたなら失われます。
判断の材料は、施設費用を誰が負担していたか、生活費のやり取りがあったかといった実態です。なお、入居前から住んでいた親族であれば、生計が別でも特例は失われません。いつから住んでいたかを確認してください。
本人が払い、契約上の返還先も本人であれば相続財産に入れます。亡くなった時点で返還を受ける権利を持っていたためで、現金が手元に来ていなくても計上します。
この記事の例では、入居一時金2,000万円を5年で償却する契約で入居2年で相続が発生したケースで返還金は1,200万円、相続税は172.5万円増えました。子が払っていた場合や受取人が指定されている場合は扱いが変わるので、契約書を税理士に見せて確認してください。
申告が必要です。この特例は申告書を出して初めて使えるもので、税額が0円になることと申告が不要になることは別だからです。
申告しないまま期限を過ぎると、特例を使っていない状態で税額が計算されます。この記事の例では770万円に加算税と延滞税が上乗せされることになります。
法定申告期限から5年以内であれば、更正の請求という手続きで納めすぎた分を返してもらえます。相続開始から数えると5年10か月あります。
見込みがあるかどうかは申告書の控えで確認できます。小規模宅地等の特例の明細書が付いていないなら、特例をまったく検討していない可能性があります。申告を担当した事務所とは別の税理士に見てもらう道もあります。
老人ホームに入って自宅が空き家になっていても、3つの要件を満たせば土地の評価を80%下げられます。諦める前に、要件を正しい時点で判定できているかを確かめてください。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年9月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制改正や個別の事情により取り扱いが異なる場合があります。具体的な手続きについては税理士または税務署にご相談ください。