不動産を個人で保有したまま相続を迎えると、路線価や固定資産税評価額で算定された評価額が課税対象になります。
資産管理会社(法人)を設立して不動産を法人に移すと、課税対象が不動産から「法人の株式」に変わります。
株式評価には純資産価額から法人税等相当額37%が控除されるため、不動産の時価より相続税評価が下がります。
ただし法人化には3方式の選択・土地の扱い・設立後3年の縛りなど、専門的な判断が欠かせません。
この記事では不動産評価額3億円・5億円規模のシミュレーションを交えながら、仕組みから実務手順・注意点まで解説します。
▼ この記事の3行まとめ
- 不動産を法人化すると株式評価に法人税37%控除が入り、相続税評価が大幅に下がる
- 法人化3方式(不動産所有・サブリース・管理受託)は資産規模と収入水準で選ぶ
- 設立後3年以内の相続・無償返還届の未提出など落とし穴が多く、専門家の設計が不可欠
不動産法人化で相続税評価が下がる3つの仕組み

不動産法人化とは、個人が保有する賃貸不動産を資産管理会社(法人)に移転させる相続税対策の手法です。
法人化後に相続が発生した場合、被相続人の財産として評価されるのは不動産そのものではなく法人の株式です。
この「不動産評価から株式評価への置き換え」が、相続税を大幅に圧縮できる核心的な理由です。
以下の3つの仕組みを理解すると、なぜ高額資産家の相続税対策に法人化が有効かが分かります。
なお3つの仕組みはそれぞれ単独でも節税効果がありますが、複数を同時に活用することで相乗効果が生まれ、節税額が大幅に拡大します。
仕組み1|株式評価で法人税等相当額37%が控除される
非上場株式の相続税評価方法のひとつである「純資産価額方式」では、法人が保有する資産の相続税評価額を合計し負債を差し引きます。
この計算の中で重要なのが、含み益(評価差額)に対する法人税等相当額37%の控除です。
この37%控除は、将来法人が資産を売却した際に負担するであろう法人税・住民税・事業税を先取りして反映する仕組みです。
個人が不動産を直接保有する場合には適用されない控除であるため、法人化で初めて得られる評価減です。
たとえば建物の相続税評価額が1億5,000万円の場合、純資産価額方式による株式評価は次のようになります。
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 建物の相続税評価額(法人保有) | 1億5,000万円 |
| うち含み益(評価差額) | 1億5,000万円 |
| 法人税等相当額(37%控除) | △5,550万円 |
| 株式の純資産価額(相続税評価) | 9,450万円 |
個人保有では1億5,000万円の評価だった建物が、法人保有にすることで9,450万円まで圧縮されます。
この5,550万円の評価減が、法人化による相続税節税の根幹にあたります。
37%という割合は、法人税・法人住民税・事業税の実効税率を踏まえた税法上の根拠ある数値です。
なお株式評価には純資産価額方式のほか類似業種比準価額方式もあり、会社規模や業種によって折衷計算となる場合があります。
類似業種比準価額方式とは、同種事業を営む上場会社の株価をベースに評価する方法です。
一般に純資産価額方式より低い評価となることが多く、中小の法人ほど折衷計算の恩恵を受けやすくなります。
ただし不動産賃貸業を主な事業とする資産管理会社は、総資産に占める土地の比率が高くなりやすい点に注意が必要です。
土地の評価額が総資産の70%(大会社・中会社)または90%(小会社)を超えると「土地保有特定会社」に該当します。
土地保有特定会社は純資産価額方式のみによる評価が強制され、類似業種比準の折衷計算が使えなくなります。
土地保有比率を下げるためには金融資産や事業資産を法人に持たせる手法がありますが、設計には専門家の関与が必須です。
仕組み2|役員報酬で財産を相続人へ合法的に移転する
個人で賃貸不動産を保有する場合、家賃収入は全額が個人の財産として積み上がり将来の相続財産を増やします。
法人が不動産を保有する形に変えると、家賃収入はすべて法人の収益として計上されます。
相続人(子など)を法人の役員として就任させ、役員報酬を支払うことで毎年財産を次世代へ移転できます。
役員報酬として支払う場合は贈与税が課税されず、給与所得控除も適用されるため非常に税効率が高くなります。
たとえば年間家賃収入が1,200万円の法人から、相続人2人に役員報酬を支払うと次のような財産移転が実現します。
| 受取人 | 役員報酬(年額) | 給与所得控除 | 手取り目安 |
|---|---|---|---|
| 長男 | 300万円 | 98万円 | 約202万円(税引後) |
| 次男 | 300万円 | 98万円 | 約202万円(税引後) |
| 合計 | 600万円/年 | 196万円 | 約404万円/年 |
10年間継続すれば6,000万円が相続財産から外れ、その分だけ相続税が下がります。
暦年贈与(年間110万円の基礎控除)と比べると、移転できる金額が格段に大きくなります。
ただし役員報酬は職務内容に見合った適正額で設定する必要があり、不相当に高額な場合は損金不算入となります。
役員就任の実態(取締役会への参加・業務執行の事実など)も求められるため、名目だけの就任は避ける必要があります。
役員報酬の金額は毎期首から3か月以内に決定し、原則として期中に変更することができません。
この「定期同額給与」の原則を守ることで、役員報酬が法人の損金(費用)として認められます。
子や孫が役員に就任する場合、業務に従事している事実(書類作成・入居者対応等)を記録として残すことが重要です。
役員議事録・業務日報・取締役会議事録などの証跡を整備することで、税務調査での否認リスクを大幅に低減できます。
仕組み3|建物の個人財産が法人株式(持分)に変わる
不動産所有方式で法人化を行う場合、建物を法人に売却するため建物は個人の相続財産から外れます。
個人の財産として残るのは「法人の株式」であり、この株式の評価額には前述の37%控除が反映されます。
さらに株式は役員報酬・配当の支払いによって法人の純資産を年々引き下げることができます。
土地は個人保有のままにするのが一般的で、後述の特定同族会社事業用宅地等の特例を活用できます。
建物を法人に売却した後、個人の財産構成は次のように変化します。
| 財産の種類 | 法人化前(個人) | 法人化後(個人) |
|---|---|---|
| 建物 | 固定資産税評価額で評価 | 個人財産から外れる |
| 土地 | 路線価で評価 | 路線価で評価(変わらず) |
| 法人株式 | なし | 純資産価額×(1-37%)で評価 |
建物評価が株式評価に置き換わることで、合計の相続税評価額が確実に下がります。
個人に残った土地も特例要件を満たせば最大80%の評価減が適用されるため、両者の組み合わせで大きな節税が実現します。
株式の評価は毎年の役員報酬・配当支払いを通じてさらに引き下げ続けることができ、長期的に節税効果が累積します。
配当支払いを続けると法人の純資産価額が下がり、それに連動して株式の相続税評価額も引き下げられます。
一方で配当は法人の損金にはなりません。所得税が課税される点を踏まえ、役員報酬とのバランスを最適化することが重要です。
また法人の株式は不動産と異なり物理的な分割なしに所有比率で按分できるため、遺産分割が大幅に簡便になります。
子3人に相続させる場合でも株式を3等分するだけで遺産分割が完結し、不動産の共有名義トラブルを未然に防げます。
遺産分割の利便性という観点でも、法人化は不動産の直接相続と比べて大きなメリットがあります。
法人化3方式の比較と選び方

不動産法人化には「不動産所有方式」「サブリース方式」「管理受託方式」の3つのスキームがあります。
節税効果・初期コスト・手続きの複雑さはそれぞれ大きく異なるため、状況に合った方式の選択が重要です。
どの方式を選ぶかは保有不動産の規模・年間家賃収入・相続人の人数・相続発生までの期間などで判断します。
方式1|不動産所有方式(節税効果最大・手続き最複雑)
不動産所有方式とは、法人が建物を直接所有し個人は土地のみを保有するスキームです。
建物の所有権が法人に移るため、家賃収入はすべて法人の収益として計上されます。
法人から相続人への役員報酬・3方式で唯一の37%株式評価控除の両方が得られ、節税効果は3方式で最大です。
相続税評価の観点では、建物が法人株式に置き換わって37%控除が適用される点が最大のメリットです。
一方、建物を法人に売却する際には不動産取得税・登録免許税・消費税が発生します。
売却時の不動産取得税は固定資産税評価額の3〜4%、登録免許税は2%が目安となります。
個人が建物を適正価格より低く売却すると法人への寄付金認定や個人への贈与税が生じるため、売却価格の設定に注意が必要です。
不動産所有方式の設立にかかる初期費用の目安は次のとおりです。
| 費用項目 | 計算式・目安 | 建物評価1億円の場合 |
|---|---|---|
| 法人設立登記費用 | 株式会社の場合約25万円 | 約25万円 |
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額×3〜4% | 300万〜400万円 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額×2% | 200万円 |
| 司法書士・不動産登記費用 | 案件により異なる | 10万〜30万円 |
| 合計初期費用(目安) | - | 535万〜655万円 |
建物評価が1億円の場合、初期費用の合計は500万〜600万円程度になります。
初期費用が大きいため、法人化による相続税節税効果(評価1億円で約3,700万円)と比較して判断する必要があります。
建物評価が1億円以上であれば初期費用を大きく上回る節税効果が見込めるため、法人化の費用対効果は高くなります。
向いているケース:
- 年間家賃収入が1,000万円以上ある賃貸オーナー
- 建物の相続税評価額が1億円以上で節税効果が大きいケース
- 相続人を役員として活用できる(子・配偶者が存在する)方
- 10年以上の長期的な節税計画を立てたい高額資産家
方式2|サブリース方式(中程度の節税・設立容易)
サブリース方式とは、法人がオーナー(個人)から不動産を一括借り上げし入居者に転貸する方式です。
不動産の所有権は個人のまま移動しないため、建物の売却手続きや移転コストが発生しません。
法人の収益は転貸家賃と仕入家賃の差額(利鞘)になり、この差額を役員報酬として相続人へ分配します。
建物所有権が個人に残るため37%の株式評価控除はなく、節税効果は不動産所有方式より小さくなります。
建物の売却手続きがないため初期コストと手続きが大幅に軽減され、設立しやすいメリットがあります。
個人の家賃収入を一部法人に移すことで被相続人の財産蓄積を抑え、将来の相続税増加を緩やかにする効果があります。
転貸利鞘の設定は家賃収入の15〜20%程度が相場であり、この割合が節税効果を左右します。
たとえば年間家賃収入1,000万円の物件で法人が利鞘20%(200万円)を確保する場合を確認します。
法人収益200万円から子2人へ役員報酬100万円ずつ支払うと、毎年200万円が相続財産から移転します。
10年間継続すれば2,000万円の財産移転効果が得られ、法人の純資産価額もその分下がります。
不動産所有方式の37%評価控除には及びませんが、初期コストがほぼゼロで始められる利便性が大きなメリットです。
向いているケース:
- 建物を法人に移転するコスト・手続きを避けたい方
- 年間家賃収入が500万〜1,000万円程度の中規模オーナー
- 段階的に法人化を進めたい方の第一ステップとして
方式3|管理受託方式(節税効果小・リスク最小)
管理受託方式とは、法人がオーナーの不動産管理業務を受託し管理手数料を受け取る方式です。
不動産の所有権・家賃収入の主体は個人のままであり、法人に入るのは管理手数料のみです。
管理手数料の相場は家賃収入の5〜10%程度であり、節税効果は3方式の中で最も限定的です。
管理手数料が家賃収入の10%を超えると実態のない管理として税務上否認されるリスクがあります。
節税効果は小さいですが、リスクが最も低く法人設立の実績を作るための入口として機能します。
将来的に不動産所有方式へ移行する際の組織・銀行口座・帳簿管理の基盤としても活用できます。
管理受託方式は節税効果が限定的ですが、法人としての実績を積みながら次の段階を準備できる柔軟性があります。
年間管理手数料が法人に入ることで法人口座の実績・信用が積み上がり、将来の融資活用にも役立ちます。
向いているケース:
- まず法人を設立して様子を見たい方
- 年間家賃収入が300万〜500万円程度で他方式のコストが見合わないケース
- 相続まで数年の余裕があり段階的に対策を進めたい方
3方式の比較表と選び方フロー
| 比較項目 | 不動産所有方式 | サブリース方式 | 管理受託方式 |
|---|---|---|---|
| 節税効果 | 大(37%評価減+役員報酬) | 中(役員報酬のみ) | 小(手数料分のみ) |
| 初期コスト | 高(売却税・登記費用) | 中(設立費用のみ) | 低(設立費用のみ) |
| 手続き複雑さ | 高(売却・登記が必要) | 中(賃貸契約変更) | 低(管理委託契約) |
| 適した年間収入 | 1,000万円以上 | 500万〜1,000万円 | 300万〜500万円 |
| 建物所有権 | 法人 | 個人 | 個人 |
| 37%評価控除 | あり | なし | なし |
方式の選び方は、まず年間家賃収入と建物評価額を確認するところから始めます。
年間収入が1,000万円以上かつ建物評価が1億円以上なら不動産所有方式を第一候補にします。
年間収入が500万〜1,000万円の場合は、初期コストを抑えながら役員報酬を活用するサブリース方式が有力候補です。
300万〜500万円では管理受託方式から始め、収入増加に伴い方式をステップアップする方法もあります。
なお方式の変更(管理受託→サブリース→不動産所有)は状況に応じて段階的に行うことができます。
段階的なアップグレードにより最初の投資コストを抑えながら、将来的に最大の節税効果を目指せます。
ただし方式を変更するたびに新たな契約・手続きが発生するため、変更コストも考慮して長期計画を立てることが重要です。
いずれの方式でも設立後3年以内の相続には別の注意が必要です。次のセクションを必ず確認してください。
節税シミュレーション|不動産評価額別3ケース

法人化の節税効果を具体的な数値で確認するため、3つのケースでシミュレーションを行います。
実際の相続税額は保有資産全体・負債・特例の適用状況によって異なるため、試算は概算として参照してください。
各ケースは建物を法人化してから3年以上経過した後に相続が発生したケースを前提にしています。
3年以内に相続が発生した場合の影響については、落とし穴セクション(3年縛り)で詳しく解説しています。
ケース1|賃貸マンション評価3億円・相続人2人(子)
前提条件として、資産は賃貸マンション1棟(建物1億5,000万円・土地1億5,000万円)のみとします。
法定相続人は子2人、基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。
【法人化前の相続税】
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 資産合計 | 3億円 |
| 基礎控除 | △4,200万円 |
| 課税遺産総額 | 2億5,800万円 |
| 法定相続分(各人) | 1億2,900万円 |
| 相続税額(各人) | 1億2,900万円×40%-1,700万円=3,460万円 |
| 相続税合計 | 6,920万円 |
【法人化後の相続税(不動産所有方式・建物のみ法人化)】
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 建物の株式評価(37%控除後) | 1億5,000万円×(1-0.37)=9,450万円 |
| 土地(個人保有のまま) | 1億5,000万円 |
| 資産合計 | 2億4,450万円 |
| 課税遺産総額 | 2億250万円 |
| 法定相続分(各人) | 1億125万円 |
| 相続税額(各人) | 1億125万円×40%-1,700万円=2,350万円 |
| 相続税合計 | 4,700万円 |
建物の法人化だけで相続税が6,920万円から4,700万円に減少し、約2,220万円(約32%)の節税になります。
さらに特定同族会社事業用宅地等(400㎡以内・80%減額)を土地に適用した場合の試算は次のとおりです。
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 建物の株式評価 | 9,450万円 |
| 土地(特例適用・400㎡以内を想定) | 1億5,000万円×(1-0.80)=3,000万円 |
| 資産合計 | 1億2,450万円 |
| 課税遺産総額 | 8,250万円 |
| 法定相続分(各人) | 4,125万円 |
| 相続税額(各人) | 4,125万円×20%-200万円=625万円 |
| 相続税合計 | 1,250万円 |
特例との組み合わせで相続税が6,920万円から1,250万円まで減少し、節税額は約5,670万円(約82%削減)です。
ただし特定同族会社事業用宅地等の特例には要件があり、詳細はケース3で解説します。
なお建物の法人化は相続税節税のほかに、毎年の所得税・住民税の節税効果も同時に生じます。
年間家賃収入1,200万円を個人で受け取る場合と法人化した場合の税負担差は次のとおりです。
| 項目 | 個人保有 | 法人化後 |
|---|---|---|
| 年間家賃収入 | 1,200万円(個人収入) | 1,200万円(法人収益) |
| 実効税率(概算) | 所得税・住民税合計約43〜55% | 法人税等合計約33% |
| 所得税節税効果(概算) | - | 約120万〜264万円/年 |
相続税の節税効果(2,220万〜5,670万円)と所得税節税効果(年120万円超)の双方が得られる点が法人化の強みです。
10年で所得税も約1,200万円以上節税できると仮定すると、総合的な節税効果はシミュレーション以上になります。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
ケース2|賃貸ビル評価5億円・相続人3人(子)
前提条件として、資産は賃貸ビル(建物2億5,000万円・土地2億5,000万円)の合計5億円とします。
法定相続人は子3人、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。
【法人化前の相続税】
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 資産合計 | 5億円 |
| 基礎控除 | △4,800万円 |
| 課税遺産総額 | 4億5,200万円 |
| 法定相続分(各人) | 約1億5,067万円 |
| 相続税額(各人) | 1億5,067万円×40%-1,700万円=4,327万円 |
| 相続税合計 | 約1億2,980万円 |
【法人化後の相続税(建物のみ法人化)】
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 建物の株式評価(37%控除後) | 2億5,000万円×(1-0.37)=1億5,750万円 |
| 土地(個人保有のまま) | 2億5,000万円 |
| 資産合計 | 4億750万円 |
| 課税遺産総額 | 3億5,950万円 |
| 法定相続分(各人) | 約1億1,983万円 |
| 相続税額(各人) | 1億1,983万円×40%-1,700万円=3,093万円 |
| 相続税合計 | 約9,280万円 |
建物の法人化だけで相続税が1億2,980万円から9,280万円に減少し、約3,700万円(約29%)の節税になります。
特定同族会社事業用宅地等(400㎡相当・土地評価1億5,000万円分に適用)を組み合わせると次のようになります。
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 建物の株式評価 | 1億5,750万円 |
| 特例適用土地(400㎡相当) | 1億5,000万円×(1-0.80)=3,000万円 |
| 残土地(特例対象外) | 1億円 |
| 資産合計 | 2億8,750万円 |
| 課税遺産総額 | 2億3,950万円 |
| 法定相続分(各人) | 約7,983万円 |
| 相続税額(各人) | 7,983万円×30%-700万円=1,695万円 |
| 相続税合計 | 約5,085万円 |
特例との組み合わせで相続税が1億2,980万円から5,085万円に減少し、節税額は約7,895万円(約61%削減)です。
評価額が大きくなるほど法人化と特例の組み合わせによる節税効果が拡大することが分かります。
5億円規模の賃貸ビルでは10年間の役員報酬(年600万円×2人)による財産移転効果も加わります。
10年間で最大1億2,000万円が相続人の元に移転し、法人の純資産価額もその分下がります。
この長期的な複合効果を含めた総合節税額は、シミュレーションの数値をさらに大きく上回ることが期待できます。
ケース3|地主・特定同族会社事業用宅地等の要件と設計の注意点
ケース3では土地を中心に保有する地主が法人化する際の注意点と、特例の設計方法を解説します。
地主の場合は不動産の内訳(土地のみ・建物込み・賃貸中か更地か)によって最適な設計が大きく変わります。
一般論ではなく個別の資産状況を踏まえた設計が不可欠であるため、ケース3は参照例として活用してください。
特定同族会社事業用宅地等(租税特別措置法69条の4第3項第3号)の要件は次のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 法人の要件 | 相続開始直前に被相続人・同族が発行済株式総数の50%超を保有する法人 |
| 土地の要件 | 相続開始直前まで被相続人または同族が法人に有償で貸し付けていた土地 |
| 相続人の要件 | 申告期限まで引き続き土地を法人に貸し付けており、かつ法人の役員であること |
| 面積上限 | 400㎡まで(80%減額) |
「有償で貸し付けていた」が絶対要件のため、無償(使用貸借)では特例が適用されません。
法人に土地を貸す際は必ず適正な地代を収受する賃貸借契約を締結する必要があります。
また「申告期限まで役員であること」という要件から、相続後に役員を辞任すると特例が取り消されます。
更地や駐車場を保有する地主が法人化する際は次の点にも注意が必要です。
更地を法人に移転すると財産評価基本通達185の規定により、移転後3年間は土地が時価(市場価格)で評価されます。
3年経過後は路線価評価(時価の約80%)に切り替わりますが、土地の小規模宅地等の特例が使えなくなるリスクがあります。
地主の場合は土地を個人保有のまま建物のみを法人化し、土地は特定同族会社事業用宅地等の特例で評価減する設計が基本です。
逆に法人化が効果的でないケースも存在します。更地(自用地)を保有する地主が特に注意すべきポイントを確認します。
更地2億円を個人保有のまま貸付事業用宅地等の特例(200㎡以内・50%減額)を適用すると評価額は1億円になります。
同じ更地を法人に移転した場合、法人株式評価は2億円×(1-0.37)=1億2,600万円となり、特例適用より高くなります。
更地の場合は「個人保有のまま特例を使う」方が有利なケースが多く、安易な法人化は逆効果になります。
法人化が有効かどうかは保有不動産の種類(土地のみ・建物込み・賃貸中か更地か)によって大きく異なります。
地主の方こそ「どの財産を法人に移すか」を慎重に選別し、税理士と詳細な試算を行うことが重要です。
法人化の落とし穴と年間維持コストの試算

不動産法人化は節税効果が大きい一方、設計を誤ると効果がゼロになるリスクを抱えています。
実際に後から発覚するケースが多い4つの落とし穴と、維持コストの試算を解説します。
落とし穴を事前に知っておくことで、失敗しない設計に活かすことができます。
特に最初の2つの落とし穴(3年縛りと無償返還届)は相続発生後に発覚しても修正が難しいため、設立前の段階で必ず確認してください。
落とし穴1|設立後3年以内の相続は不動産が時価評価される
財産評価基本通達185には、法人が取得してから3年以内の土地・建物は通常の取引価額(時価)で評価するという規定があります。
通常、法人が保有する土地は路線価(時価の約80%)で評価されるため相続税評価が下がります。
しかし取得後3年以内は路線価ではなく時価で評価するため、この路線価減額の恩恵を受けられません。
37%の法人税等相当額控除は3年以内でも適用されますが、路線価減額分が得られないため節税効果が半減します。
3年縛りによる評価差を数値で比較すると次のとおりです。
| 設立後の時期 | 土地の評価ベース | 株式評価額(土地1億円の場合) |
|---|---|---|
| 設立後3年以内 | 時価(取引価額)1億円 | 1億円×(1-0.37)=6,300万円 |
| 設立後3年経過後 | 路線価(時価の約80%)8,000万円 | 8,000万円×(1-0.37)=5,040万円 |
| 差額 | - | 1,260万円の評価差(土地1億円あたり) |
土地が1億円の場合でも3年後と比べて1,260万円の評価差が生じます。
保有不動産が10億円規模になると3年縛りによる評価差は1億円超になることもあります。
設立から3年以上の余裕を持って相続を迎えられるよう、早期に法人化の準備を始めることが重要です。
3年縛りリスクを軽減するための具体的な対策は次のとおりです。
- 相続まで余裕がある段階で早期に法人化を実行する(理想は相続の5〜10年前)
- 法人化のタイミングを被相続人の年齢・健康状態を踏まえて慎重に決定する
- 設立後3年以内に相続が発生した場合の影響額を事前にシミュレーションしておく
- 急ぎの場合は建物のみを段階的に法人化し、土地は個人保有のまま特例を活用する
万が一3年以内に相続が発生した場合でも37%の法人税等相当額控除は適用されるため、節税効果はゼロにはなりません。
3年縛りの影響を最小限に抑えるためにも、法人化の決断は早ければ早いほど有利です。
落とし穴2|無償返還届を出さないと土地に借地権が生じる
不動産所有方式で建物を法人に移転した場合、法人は建物の敷地(土地)を個人(被相続人)から借りることになります。
土地の貸し借りが発生する場合、権利金の授受なく土地を貸すと法人に借地権が認定されるリスクがあります。
借地権が認定されると法人に権利金相当額の受贈益が生じ、法人税が課税されます。
借地権課税を防ぐには「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出することが必要です。
無償返還届の有無による取り扱いの違いは次のとおりです。
| 処理方法 | 借地権認定 | 個人(地主)の相続税評価 |
|---|---|---|
| 無償返還届なし | 借地権認定あり(課税リスク) | 借地権と底地で分割評価される |
| 無償返還届あり | 借地権認定なし | 自用地評価×80%(底地評価) |
無償返還届を提出すると土地は自用地評価の80%(底地評価)で相続税評価されます。
届出は建物を法人に移転した後、原則として翌確定申告期限(翌年3月15日)までに提出する必要があります。
地代の設定は固定資産税の2〜3倍程度であれば無償返還届の提出と組み合わせることで問題ありません。
無償返還届の提出は一度で完了し、その後毎年提出する必要はありません。
ただし地代収入は個人の不動産所得として毎年確定申告に含める必要があります。
地代は法人側では費用として損金算入できるため、法人の税負担を抑える副次的な効果もあります。
落とし穴3|年間維持コストの試算と費用倒れのリスク
法人を維持するには毎年一定のコストが発生します。節税効果とコストを比較することが不可欠です。
主な年間維持コストの内訳と目安は次のとおりです。
| コスト項目 | 年間目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 税理士・顧問料(法人決算含む) | 60万〜120万円 | 法人規模・売上により異なる |
| 法人住民税(均等割) | 最低7万円〜 | 赤字でも課税される |
| 社会保険料(法人負担分) | 役員報酬の約15% | 役員1人あたりの目安 |
| 登記関連(役員改選・住所変更等) | 数万円(都度) | 役員任期ごとに発生 |
| 合計目安 | 年間100万〜200万円程度 | 役員数・規模により変動 |
年間100万〜200万円のコストをかけても節税効果が上回る場合にのみ法人化のメリットが生じます。
所得税・住民税の節税効果(法人税率と個人税率の差)だけを目的にする場合、年間収入が少ないと費用倒れになります。
一般に年間家賃収入500万円未満では法人維持コストの負担が大きく、法人化の経済合理性が薄くなります。
費用倒れになる典型的なケースを確認します。年間家賃収入400万円の場合の試算です。
| 項目 | 法人化前(個人) | 法人化後 |
|---|---|---|
| 年間家賃収入 | 400万円 | 400万円(法人収益) |
| 所得税節税効果(個人税率30%→法人23%) | - | 約28万円/年 |
| 法人維持コスト(税理士・均等割等) | なし | 約80万〜120万円/年 |
| 差し引き損益 | - | △52万〜△92万円(費用倒れ) |
所得税節税効果(約28万円)が法人維持コスト(80万〜120万円)を大幅に下回り、毎年損失が発生します。
相続税の節税効果は一時的ですが維持コストは毎年継続するため、長期的なトータルコストで判断することが重要です。
落とし穴4|撤退・解散時のコストと税負担
法人化した後に個人に戻す(解散・清算)場合、さまざまなコストと税負担が発生します。
法人に移した不動産を個人に戻すには法人から個人への再売却が必要です。
法人側では不動産売却益に対して法人税が、個人側では不動産取得税・登録免許税がかかります。
法人化は一度行うと簡単には元に戻せないため、長期的な視点で設計することが不可欠です。
また法人清算時には残余財産が株主に分配されますが、みなし配当として所得税が課税されます。
法人化後に財産状況や家族構成が変わった場合でも、設計変更には多額のコストがかかる点を念頭に置く必要があります。
解散・清算にかかる費用目安は弁護士・税理士費用・清算手続きを含めて50万〜150万円程度になります。
さらに保有資産を売却・分配する過程で、法人税やみなし配当課税が生じるケースがあります。
みなし配当は受取った株主(相続人)の所得として課税されるため、手取りが予想より大幅に少なくなる場合があります。
「やめたくなったらいつでもやめられる」という認識で法人化すると、後悔するケースが多く見られます。
不動産法人化の相続税対策こそ早めに税理士へ相談すべき理由

不動産の法人化は、スキームの選択・株主構成・無償返還届・役員報酬の設計など、専門的な判断が積み重なる対策です。
一つの設定ミスが大きな税負担を生む可能性があるため、設計段階からの税理士の関与が欠かせません。
以下では相談の理由・メリット・リスク・費用対効果・質問リストを解説します。
不動産法人化の対策は早ければ早いほど長期の複合節税効果が得られるため、まず専門家への相談から始めることが重要です。
相談すべき理由|個人では判断できない複雑さ
不動産法人化には次の専門的な判断が同時に必要です。
- 3方式のどれが最適か(資産規模・収入水準・相続人数・相続発生までの期間)
- 建物の売却価格の算定(適正時価でないと贈与税・寄付金課税のリスクがある)
- 地代の設定と無償返還届の提出要否(提出しないと借地権課税リスク)
- 株主構成の設計(誰がいくら保有するか・将来の遺産分割との整合性)
- 特定同族会社事業用宅地等の要件充足の設計(有償貸付・役員就任の管理)
- 設立から3年以内に相続が発生した場合の影響シナリオ
これらを個人が独自に判断して実行した場合、気づかないまま税務リスクを抱えるケースが後を絶ちません。
特に無償返還届の未提出・役員報酬の設定根拠不備は、数年後の税務調査で指摘されるリスクがあります。
6つの判断項目はどれか一つでも誤ると、法人化全体の節税効果が損なわれる可能性があります。
全項目を体系的にカバーできる相続税専門の税理士への相談が、法人化成功の最短ルートです。
相談するメリット|税負担軽減と失敗回避の定量効果
相続税専門の税理士に相談することで得られる主なメリットは次のとおりです。
- 最適な法人化スキームを選択し、節税額を最大化できる(設計次第で数千万〜1億円超の差が生じる)
- 建物売却価格・地代・役員報酬の適正額を算定し、税務調査リスクをゼロにできる
- 無償返還届の提出から特例要件の管理まで、手続きの漏れを防げる
- 将来の相続発生時に備えた株主構成の設計で、遺産分割トラブルを事前に防げる
- 3年縛りのタイムラインを見据えた最適な設立時期を判断できる
不動産評価額が3億円を超える場合、専門家の関与による節税額が税理士報酬の10倍を超えるケースも珍しくありません。
専門家の有無による典型的な結果の差を不動産評価額別に比較します。
| 不動産評価額 | 専門家なし(典型例) | 専門家あり(典型例) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1億円 | 相続税2,000万円(設計ミスで特例使えず) | 相続税900万円 | △1,100万円 |
| 3億円 | 相続税7,500万円(借地権課税含む) | 相続税1,500万円 | △6,000万円 |
| 5億円 | 相続税1億3,000万円(役員報酬否認含む) | 相続税4,000万円 | △9,000万円 |
上記はあくまでも例示ですが、適切な設計の有無により相続税負担が2〜5倍異なるケースが実際に存在します。
相続税専門の税理士であれば初回相談だけで、法人化が有効かどうかの方向性を示してもらえます。
相談しなかった場合のリスク
税理士に相談せず自己判断で法人化した場合、次のリスクが生じることがあります。
| リスクの種類 | 具体的な内容 | 想定される追加税負担 |
|---|---|---|
| 借地権認定課税 | 無償返還届の未提出で借地権が認定される | 土地評価額の20〜60%相当に課税 |
| 低廉売却の否認 | 時価より低い価格で建物を法人に売却 | 差額が寄付金扱いとなり法人税増加 |
| 役員報酬の否認 | 職務実態のない高額報酬が損金不算入に | 否認分に法人税・過少申告加算税 |
| 3年縛りの見落とし | 設立後3年以内に相続が発生し評価増 | 路線価減額が適用されず数百万〜数千万増 |
| 特例要件の未充足 | 地代の未収受で特定同族会社特例が使えない | 最大80%の特例減額が消える |
複数のリスクが重なった場合、当初の節税効果が完全に消えるだけでなく余分な税負担が生じます。
特に相続発生後に設計ミスが発覚しても修正できないケースがほとんどであるため、事前の設計が唯一の対策です。
リスクの中でも影響が特に大きいのは「特例要件の未充足」です。
特定同族会社事業用宅地等の特例(80%減額)が使えない場合、土地評価が減額されずそのまま課税されます。
1億5,000万円の土地の場合、特例あり(3,000万円評価)と特例なし(1億5,000万円評価)では課税対象が1億2,000万円も異なります。
この差によって生じる相続税の増加分は数千万円に達することがあり、設計の精度がいかに重要かが分かります。
費用対効果の試算|税理士報酬 vs 節税・リスク回避額
不動産法人化に伴う税理士費用と、適切な設計で得られる効果を比較します。
| 項目 | 目安金額 |
|---|---|
| 【コスト】税理士報酬 | |
| 法人化スキーム設計・コンサルティング(一時費用) | 50万〜150万円 |
| 法人決算・申告(毎年) | 40万〜80万円/年 |
| 相続発生時の相続税申告 | 相続税額の0.5〜1%程度 |
| 【メリット】節税・リスク回避効果 | |
| 法人化による相続税削減(評価3億円の場合) | 2,220万〜5,670万円 |
| 役員報酬による毎年の財産移転(年間) | 300万〜600万円/年 |
| 借地権認定リスク回避(土地3億円の場合) | 6,000万〜1億8,000万円相当 |
| 特例設計ミス回避(土地1.5億円の場合) | 1億2,000万円の評価減を確保 |
不動産評価額3億円の場合、スキーム設計コスト(100万円前後)に対して節税効果は数千万円規模です。
特に設立当初の設計コンサルティング費用(50万〜150万円)は、節税額の1〜3%程度に過ぎません。
毎年の顧問料(60〜80万円)を10年間払い続けても、役員報酬による移転効果(年300万〜600万円)の方が大きくなります。
資産規模が大きいほど専門家への相談コストが節税効果に対して相対的に小さくなるため、早期相談が合理的です。
なお毎年の顧問料は法人の費用(損金)として計上できるため、顧問料自体も節税に貢献します。
税理士への支払いが法人の損金になることで実質的な税理士費用負担は、表示金額より20〜30%程度低くなります。
この点も含めて費用対効果を考えると、専門家との顧問契約は投資として合理的な選択といえます。
初回相談で確認すべき質問リスト
相続税専門の税理士に初めて相談する際、以下の質問を確認することをお勧めします。
これらの質問を事前にリスト化しておくことで、限られた相談時間を有効に活用できます。
また複数の事務所に同じ質問をして回答内容を比較すると、信頼できる税理士を見極める判断材料にもなります。
- □ 私の資産規模・収入水準で法人化は経済合理性がありますか
- □ 不動産所有方式・サブリース・管理受託のどれが最適ですか
- □ 建物の売却価格はどのように算定しますか(贈与税・法人税リスクの確認)
- □ 土地の地代設定と無償返還届の手続きはどう進めますか
- □ 株主構成は誰がいくら持てばよいですか(相続人の人数・関係を踏まえて)
- □ 特定同族会社事業用宅地等の特例は使えますか(要件の確認)
- □ 設立から何年後に相続が見込まれますか(3年縛りリスクの確認)
- □ 年間の維持コストの試算を教えてください(税理士費用・社会保険・均等割)
これらの質問に具体的な数値を示して答えられる税理士であれば、不動産法人化の実務経験が豊富な専門家と判断できます。
相続税専門の税理士への相談は無料のケースも多く、まず試算だけでも依頼してみることを強くお勧めします。
相談先を選ぶ際は「相続税専門」かどうかを確認することが重要です。
相続税の業務経験が少ない税理士に不動産法人化の設計を依頼すると、設計ミスのリスクが高まります。
年間相続税申告件数が多い事務所・相続税専門を明示している事務所を優先して選ぶことを検討してください。
相談前に「保有不動産一覧(所在地・面積・路線価評価額)」「年間家賃収入一覧」「家族構成図」を準備すると効率的です。
これらの資料があれば初回相談でも具体的な節税額の試算まで進めてもらえるケースが多くあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 不動産法人化で相続税は必ず安くなりますか?
必ずしもそうとは言えません。法人化には年間100万〜200万円程度の維持コストがかかります。
年間家賃収入が500万円未満の場合、コストが節税効果を上回ることがあります。
資産規模・収入水準・相続人数を踏まえた試算を専門家に依頼することを強くお勧めします。
Q. 土地も法人に移転したほうが節税効果は大きいですか?
一概には言えません。土地を法人に移すと小規模宅地等の特例が使えなくなるケースがあります。
土地は個人保有のまま建物のみを法人化し、特定同族会社事業用宅地等の特例(80%減額)を活用する設計が一般的です。
土地と建物の評価バランス・特例の適用要件を踏まえて個別に判断する必要があります。
Q. 設立後すぐに相続が起きたらどうなりますか?
法人が不動産を取得してから3年以内に相続が発生すると、法人内の不動産は路線価ではなく時価で評価されます。
37%の法人税等相当額控除は適用されますが、路線価減額分の恩恵が得られないため節税効果が半減します。
余命に不安がある場合は、設立時期の判断を含めて税理士と慎重に相談することが重要です。
Q. 資産管理会社の株式は誰が保有すべきですか?
相続対策として最も有効なのは、相続人(子・孫)が設立時から株主になる設計です。
被相続人が全株式を保有する場合、その株式が相続財産として課税されるため節税効果が薄くなります。
設立時から相続人が出資する構成にすることで、法人の収益がそのまま相続人の財産として蓄積されます。
Q. 法人化のタイミングとして適切な時期はいつですか?
税務上は早ければ早いほど有利です。3年縛りの問題があるため、設立から3年以上経過して相続を迎えるのが理想です。
所得税の節税効果を考えると、不動産所得が課税所得900万円を超えて税率が43%(所得税・住民税合計)になるタイミングも目安です。
相続対策の緊急性・所得税の節税効果・設立コストを総合的に判断して最適な時期を決めることが大切です。
まとめ|不動産法人化は「設計」がすべて
不動産法人化で期待できる節税効果
- 株式評価で法人税等相当額37%が控除され、建物評価が大幅に下がる
- 役員報酬を活用して毎年300万〜600万円を相続人へ非課税で移転できる
- 特定同族会社事業用宅地等(80%減額)との組み合わせで節税効果がさらに拡大する
- 3億円評価の場合、節税額は2,220万〜5,670万円(設計・特例活用次第)
見逃せない落とし穴
- 設立後3年以内の相続は不動産が時価評価され、路線価減額の恩恵が得られない
- 無償返還届を提出しないと借地権が認定されて多額の課税リスクが生じる
- 年間維持コスト(100万〜200万円)が節税効果を上回る規模では法人化が逆効果になる
- 一度法人化すると撤退に多大なコストがかかり、簡単には元に戻せない
今すぐ取るべき行動
- 保有不動産の評価額・年間家賃収入・相続人数を整理して法人化の経済合理性を確認する
- 相続税専門の税理士に無料相談を申し込み、最適な方式と設立タイミングを判断してもらう
- 設立から3年以上の余裕を持って法人化を検討し、できるだけ早期に対策を始める
※本記事は2026年6月時点の税法・財産評価基本通達に基づいて作成しています。税率・評価方法は改正される場合があるため、実際の手続きは税理士にご相談ください。



