会社経営者の相続税対策は、一般の個人資産家とは根本的に構造が異なります。
自社株という特殊な財産が相続財産に加わることで評価額が数億円単位で膨らみやすく、さらに「現金は会社にあるが個人の手元資金が少ない」という経営者特有の資産構造が、納税資金の確保を難しくします。
対策の核心は「自社株評価の引き下げ」「個人資産の圧縮」「事業承継税制の活用」の3軸を組み合わせることです。
本記事では、会社経営者が直面する相続税の課題を整理し、各対策の具体的な仕組みと節税効果、そして対策を実施すべきタイミングを詳しく解説します。
▼ この記事の3行まとめ
- 会社経営者の相続税は自社株評価が高くなりやすく、個人資産と合算されることで課税総額が一般家庭より大幅に膨らむ
- 自社株評価の引き下げ・退職金・生命保険・事業承継税制を組み合わせると相続税額を大幅に圧縮できる
- 自社株の相続は経営権の分散リスクもあるため、遺言書や種類株式で後継者への集約を早期に設計する必要がある
会社経営者の相続税が高くなる3つの理由

一般の相続と比べて会社経営者の相続税が高額になるのは、単に財産が多いからではありません。自社株の評価方法・個人資産との合算・現金以外の財産比率の高さという3つの構造的な理由があります。対策の前提として、まずこの仕組みを正確に理解しましょう。
理由1|自社株が想定外の高評価になるメカニズム
非上場株式(自社株)は、国税庁が定める財産評価基本通達に従い、主に「類似業種比準価額方式」または「純資産価額方式」のいずれか、あるいはその折衷方式で評価されます。上場株式のように市場で値段がつくわけではなく、会社の規模・業績・純資産をもとに計算された金額が相続税上の評価額となります。
問題は、業績が好調な会社ほど自社株評価が高くなるという点です。純資産価額方式を例にとると、会社の総資産を相続税評価額に洗い替え、負債と法人税等相当額(37%)を控除した残額が株式の評価額となります。利益の積み上がりが純資産増加につながり、結果として株価が上がる構造です。
具体的に見ると、年商10億円・純資産5億円の会社であれば、純資産価額方式での自社株評価は5億円前後になります。これに加えて個人名義の不動産や預貯金があれば、相続財産の合計は優に数億円を超えます。長年にわたり会社を育て上げた結果として、自社株の価値が上昇し、それが相続税の重荷になるというのが経営者固有の課題です。
| 評価方式 | 適用会社規模 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 類似業種比準価額方式 | 大会社 | 同業上場企業の配当・利益・純資産と比較して評価 | 業績(利益・配当)を圧縮すれば評価を下げられる |
| 純資産価額方式 | 小会社 | 総資産を相続税評価に洗い替え、負債・税相当額を控除 | 純資産が多いほど高評価になりやすい |
| 折衷方式(L値) | 中会社 | 上記2方式を一定比率で組み合わせる | 会社規模に応じた比率が国税庁基準で決まる |
| 配当還元方式 | 全規模(少数株主のみ) | 年間配当金を10%の利率で還元して評価 | 同族株主以外の少数株主に適用される低評価方式 |
「5年前は大した評価ではなかったが、業績拡大で今や評価額が急上昇している」というケースは、税理士への相談時に頻繁に耳にする状況です。株価上昇に気づかないまま時間が過ぎ、対策が手遅れになることは少なくありません。
理由2|個人資産と合算されて課税総額が膨らむ
会社経営者の相続税計算では、自社株の評価額だけでなく、個人名義で保有するあらゆる財産が課税対象になります。長年の経営で蓄積された役員報酬・役員賞与は個人の預貯金や不動産として積み上がっており、これらが自社株と合算されることで課税総額は想像以上の金額になります。
例えば、自社株評価1億円・個人不動産8,000万円・預貯金5,000万円・有価証券3,000万円という経営者の場合、合計2億7,000万円が相続財産総額となります。法定相続人が配偶者と子2人(計3人)なら基礎控除は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)であり、課税遺産総額は2億2,200万円です。これに適用される税率は40〜45%という高水準になります。
| 財産の種類 | 評価額 | ポイント |
|---|---|---|
| 自社株(非上場) | 1億円 | 業績・純資産に連動して変動する |
| 個人所有の不動産 | 8,000万円 | 路線価・固定資産税評価額ベースで算出 |
| 預貯金・現金 | 5,000万円 | 額面全額が課税対象 |
| 有価証券・保険積立 | 3,000万円 | 上場株は相続時の時価で評価 |
| 合計(相続財産総額) | 2億7,000万円 | 基礎控除4,800万円を引いた2億2,200万円が課税対象 |
会社員家庭との最大の違いは、「自社株」という経営者固有の高額財産が合算されること、そして個人名義の不動産も複数抱えているケースが多い点にあります。相続税の税率は課税遺産が大きいほど高くなる累進構造であるため、財産の規模が大きい経営者ほど対策の効果も大きくなります。
理由3|「資産はあるが現金がない」納税資金不足の罠
相続税の申告・納付期限は、被相続人が亡くなった翌日から10か月以内と定められています。原則は現金一括払いであり、分割払い(延納)や財産そのものでの納付(物納)も制度としてありますが、要件が厳しく誰でも使えるわけではありません。
会社経営者の場合、財産の大部分が自社株・不動産という非流動資産で占められているため、相続税額が数千万円に達しても手元の現金がそれに足りないというケースが頻発します。かといって自社株を売却しようとすれば、経営権が失われかねません。会社の財産は数億円あるのに、10か月以内に現金を用意できないという状況が生じます。
不動産や自社株を10か月以内に売却して納税資金を作るのは、実務的に非常に困難です。買い手を見つけ、適切な価格で売却し、代金を受け取るまでのプロセスは数か月を要することも珍しくありません。このリスクを事前に回避するためにも、生前から納税資金の確保策を設計しておく必要があります。
| 手段 | 特徴 | 準備すべき時期 |
|---|---|---|
| 生命保険(個人・法人契約)の死亡保険金 | 受取時に非課税枠あり・すぐに現金化できる | 健康診断に問題がない時期(早期ほど有利) |
| 役員退職金の積立準備 | 法人側で損金計上・会社の経費として準備できる | 現役中に退職金規程を整備しておく |
| 延納(分割払い) | 利子税がかかる・不動産担保が必要なことも | 相続発生後に申請(担保準備が必要) |
| 自社株売却(M&A等) | 第三者への売却で資金化・経営権移転が伴う | 事前にM&Aアドバイザーを探す必要あり |
自社株の相続税評価を下げる5つの対策

会社経営者の相続税対策において最も効果が大きいのが「自社株評価の引き下げ」です。自社株は評価額が大きい分、評価を圧縮できれば節税効果も大きくなります。以下の5つの対策を状況に合わせて組み合わせることで、評価額を大幅に下げることが可能です。
対策1|類似業種比準価額方式の3要素を圧縮する
類似業種比準価額方式とは、国税庁が公表する同業種の上場企業の株価と自社の「1株当たりの配当金額(D)」「1株当たりの利益金額(E)」「1株当たりの純資産価額(F)」を比較して自社株を評価する方法です。この3要素(D・E・F)が小さいほど、評価額も低くなります。
具体的に評価額を下げる方法としては、役員報酬の増額による利益の圧縮が代表的な手法です。役員報酬を適切に引き上げることで、会社の当期利益が減少し、類似業種比準価額の「利益金額(E)」が小さくなります。また、配当を抑制することで「配当金額(D)」の要素も下げられます。ただし、役員報酬の改定は事業年度開始から3か月以内に行うルールがあるため、タイミングを逃さないよう毎期の見直しが重要です。
純資産価額(F)の圧縮については、会社内に余剰な純資産がある場合、その一部を合理的な設備投資・不動産取得などに活用することが有効です。ただし、節税のみを目的とした不合理な支出は税務調査で否認されるリスクがあります。あくまで事業上の合理的な理由のある投資に限ることが前提です。
| 要素 | 内容 | 圧縮方法 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| D(配当金額) | 1株当たりの配当金額 | 配当を減額・無配にする | 株主との関係に注意 |
| E(利益金額) | 1株当たりの当期利益 | 役員報酬の増額・退職金の支給 | 期首から3か月以内に改定が必要 |
| F(純資産価額) | 1株当たりの純資産 | 設備投資・不動産取得・退職金支給 | 事業合理性のある支出に限る |
対策2|役員退職金の支給で自社株評価を大幅に引き下げる
会社経営者が引退・代替わりのタイミングで多額の役員退職金を受け取ると、相続税対策として二重の効果があります。ひとつは、退職金が会社の損金(経費)として計上されて法人税が減少すること。もうひとつは、会社の純資産が減少することで自社株の相続税評価額が下がることです。
死亡時(相続発生時)に死亡退職金として支給された場合、その金額はみなし相続財産として相続財産に加算されますが、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が適用されます。法定相続人が3人なら1,500万円が非課税となります。
さらに重要なのが自社株評価への影響です。退職金3,000万円を支給すれば、会社の純資産が3,000万円減少し、純資産価額方式での評価が下がります。非課税枠1,500万円分は相続財産から消え、加えて自社株評価が下がった分も節税効果として積み上がります。この「退職金で会社の純資産を下げ、かつ非課税枠を活用する」二段構えの効果が、経営者の相続税対策における退職金の価値です。
参照元:国税庁 No.4117 退職手当金等の相続税の非課税
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 支給した退職金(みなし相続財産として加算) | +3,000万円 | 相続財産に加算される |
| 退職金の非課税枠(500万円×3人) | △1,500万円 | 非課税で課税財産から除外される |
| 自社株評価の減少(純資産減少による) | △3,000万円 | 会社の純資産が減少するため株価が下がる |
| 純課税財産への影響(概算) | 約△1,500万円 | 非課税枠の分だけ確実に課税財産が減る |
退職金の支給には「退職給与規程」の整備が前提です。退職金規程のない会社が突然多額の退職金を支給すると、税務調査で損金算入を否認されるリスクがあります。まず退職金規程(功績倍率法などに基づく)を整備し、支給額の根拠を文書化しておくことが不可欠です。
対策3|会社規模の見直しで評価方式を変更する
自社株の評価方式は会社規模(従業員数・取引金額・総資産額)によって「大会社」「中会社」「小会社」に分類され、それぞれに適用される評価方式が異なります。一般に、大会社に適用される類似業種比準価額方式のほうが、小会社に適用される純資産価額方式よりも評価が低くなるケースが多くあります。
会社の規模区分は国税庁が定める基準(従業員数・売上高・総資産価額の組み合わせ)によって判定されます。例えば、グループ会社の再編や事業部門の統合を通じて会社規模の区分が変わると、適用される評価方式も変わります。税務上の評価を下げることのみを目的とした組織改変は否認リスクがあるため、事業上の合理性を保ちながら規模を調整することが前提です。
また、一時的に利益が膨らんだ年度は類似業種比準価額が上がりやすいため、その翌年度以降に評価が下がったタイミングで株式を後継者へ贈与するといった時期の調整も有効な手法です。自社株の評価額は毎年変動するため、年ごとに評価を計算し、低いタイミングを狙って贈与を実行することが節税の基本戦略となります。
対策4|持株会社の設立で評価額に37%控除を適用する
持株会社(ホールディングカンパニー)を設立して自社株を間接保有する方法も、評価圧縮の有力な選択肢です。持株会社が事業会社の株式を保有している場合、持株会社の株式を純資産価額方式で評価する際に「法人税等相当額(37%)」を控除することができます。
具体的には、事業会社の株式を直接保有している場合の純資産価額が1億円だとすると、持株会社を通じた間接保有に組み替えれば「1億円×(1-37%)=約6,300万円」程度に評価が下がる効果が生じます。この37%控除は自社株の評価を直接かつ大幅に下げる効果があり、高額の自社株を持つ経営者にとって特に有効な対策です。
ただし、持株会社の設立には費用・事務負担・グループ管理の複雑化といったデメリットもあります。また、設立直後に相続が発生すると税務調査で否認されるリスクがあるため、早期に設立して実態のある運営を行うことが重要です。取締役会の開催・グループ間の適切な経営管理契約の締結など、実体的な経営管理機能を持たせることが要件となります。持株会社の設立は、税理士・弁護士・司法書士と連携して慎重に進めましょう。
対策5|従業員持株会の活用で株式を分散させる
従業員持株会を設置し、自社の株式の一部を従業員に保有させる方法も、オーナー経営者の保有割合を下げ、相続税評価額を下げる手法として活用されています。持株会に加入した従業員は同族株主以外の少数株主となるため、「配当還元方式」という低い評価方式が適用されます。
配当還元方式の評価額は、純資産価額方式で算出した評価額の数分の一〜数十分の一となるケースがあります。従業員持株会に一部株式を移すだけでも、会社全体の平均株価が下がる効果があり、相続財産に算入される自社株の総額を減らすことができます。
ただし、従業員持株会を通じた株式保有は、経営権の確保とのバランスが重要です。オーナーが議決権の過半数(できれば3分の2以上)を確保できる範囲で株式を分散させる設計が必要であり、持株会規約や信託を活用した議決権の管理を組み合わせることが一般的です。株式を分散させすぎると後継者への経営権移転が困難になるため、専門家との綿密な設計が必要です。
従業員持株会を設立する際の主な手順は以下のとおりです。設立から安定運用まで最低でも1〜2年の準備期間を見込んでおきましょう。
| ステップ | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| STEP1|設計 | 持株会の規約・奨励金の設定・加入対象者の範囲を決める | 議決権の管理方法(信託型か規約型か)を確定する |
| STEP2|会社の機関決定 | 取締役会で持株会設立を承認・定款の譲渡制限との整合を確認 | 法務・税務の専門家と連携して整合性を確認 |
| STEP3|従業員説明・加入募集 | 制度内容を説明し、加入希望者から申込書を取得 | 奨励金(会社補助)の設定で加入率を高める |
| STEP4|株式の移転 | オーナーが保有する株式を持株会(理事長名義)に譲渡 | 適正な譲渡価額での取引が必要(みなし贈与に注意) |
| STEP5|継続運営 | 毎月の拠出・配当の分配・総会の開催・名簿管理 | 従業員退会時の株式買取ルールを規約に明記 |
会社経営者が活用できる個人資産の相続税対策

自社株対策と並行して、個人名義の資産に対する相続税対策も欠かせません。経営者の個人資産には不動産・預貯金・有価証券など多様な財産が含まれており、それぞれに有効な圧縮手法があります。
生命保険の非課税枠を最大活用する
相続税において、被相続人が保険料を負担していた生命保険の死亡保険金は「みなし相続財産」として課税対象になりますが、「500万円×法定相続人の数」を上限とする非課税枠が設けられています。法定相続人が3人いれば1,500万円まで非課税で受け取れます。
会社経営者が特に有効に活用できるのが「法人契約の生命保険」です。会社が保険料を支払い、被保険者を経営者とする死亡保険を契約しておけば、相続発生時に法人から死亡退職金として支払うことができます。この死亡退職金も「500万円×法定相続人の数」の非課税枠の対象となり(退職金の非課税枠と保険金の非課税枠は別々に適用)、両方の非課税枠を合わせると最大3,000万円(法定相続人3人の場合)が非課税になります。
| 非課税枠の種類 | 非課税限度額(法定相続人3人の場合) | 適用条件 |
|---|---|---|
| 死亡保険金の非課税 | 500万円×3人=1,500万円 | 受取人が相続人であること |
| 退職手当金の非課税 | 500万円×3人=1,500万円 | 受取人が相続人であること |
| 合計の最大非課税 | 3,000万円 | 両方を組み合わせた場合(それぞれ独立した非課税枠) |
生命保険の活用にあたっては、早期に加入するほど保険料が低く、保険会社の審査(健康告知)も通りやすいというメリットがあります。健康上の問題が生じた後では加入できなくなる場合もあるため、対策の開始は早ければ早いほど有利です。
不動産評価の圧縮で課税評価額を下げる
会社経営者が保有する個人名義の土地や建物は、相続税の計算では「路線価方式」または「倍率方式」で評価されます。路線価(国税庁が公示する1㎡あたりの評価額)をベースとした評価額は、実際の取引価格(時価)の概ね80%水準となっており、更地のままであれば比較的高い評価額が維持されます。
ここで有効なのが「賃貸物件の活用」です。土地に賃貸アパートや賃貸マンションを建てると、その土地は「貸家建付地」として評価されるため、路線価×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)という計算式で評価額が下がります。借地権割合60%・借家権割合30%の地域であれば、約18%の評価減が適用されます。
さらに「貸付事業用宅地等の小規模宅地等の特例」を活用すれば、200㎡まで50%の評価減が可能です。ただし、相続直前に賃貸物件を取得した場合は、空室率の問題や継続要件に注意が必要です。節税のみを目的とした直前の賃貸転用は否認リスクが高まるため、中長期的な計画のもとで実行することが前提です。
暦年贈与・相続時精算課税で生前に資産を移す
個人資産を生前に計画的に子・孫へ移転することで、将来の相続財産を減らすことができます。主な制度として「暦年課税」と「相続時精算課税」があります。
暦年課税は、毎年1人あたり110万円まで非課税で贈与できる制度です。例えば子2人・孫2人の合計4人に毎年110万円ずつ贈与すれば、年間440万円を非課税で移転できます。10年間継続すると4,400万円が相続財産から外れます。ただし、2024年の税制改正により、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるようになりました(2024年1月1日以降の贈与分から段階的に延長)。7年以上前から継続することが長期的な節税効果を生み出します。
一方、相続時精算課税は2,500万円まで贈与税が非課税(ただし相続時に精算)で、2024年改正より年間110万円の基礎控除も新設されました。自社株を後継者へ早期に移転したい場合や、将来の評価上昇が見込まれる財産を今の評価額で移転したい場合に有効です。ただし、一度選択すると暦年課税には戻れないため、慎重な判断が必要です。
下表は暦年贈与を活用した場合の贈与スケジュール例です。対象者が多いほど年間移転額を増やせることがわかります。
| 贈与対象者 | 年間贈与額 | 10年間の累計移転額 | 相続財産からの除外効果 |
|---|---|---|---|
| 子1人のみ | 110万円 | 1,100万円 | 相続税の節税効果:約70〜150万円(税率による) |
| 子2人 | 220万円 | 2,200万円 | 相続税の節税効果:約140〜300万円 |
| 子2人+孫2人 | 440万円 | 4,400万円 | 相続税の節税効果:約280〜600万円 |
| 子2人+孫4人 | 660万円 | 6,600万円 | 相続税の節税効果:約420〜900万円 |
※節税効果は相続税の税率(課税遺産の金額)によって異なります。相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、早期開始・長期継続が効果を最大化します。
事業承継税制で自社株の相続税を最大100%猶予する

上記の株価引き下げ対策と並んで、会社経営者が検討すべき強力な制度が「非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予制度(事業承継税制)」です。要件を満たせば自社株の相続税を最大100%猶予でき、後継者が経営を続ける限り最終的に免除になる可能性もあります。
事業承継税制(特例措置)の基本スキームと要件
事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」があります。特例措置は2018年の税制改正で設けられた期間限定の優遇制度で、通常の一般措置と比較して、猶予割合が100%・対象株式の制限なし・後継者3人まで拡大というより手厚い内容です。
| 項目 | 一般措置 | 特例措置 |
|---|---|---|
| 猶予割合(相続税) | 80% | 100% |
| 対象株式数 | 発行済株式総数の2/3まで | 制限なし(全株式対象) |
| 後継者の人数 | 1人 | 最大3人 |
| 特例承継計画の提出 | 不要 | 必要(提出期限:2026年3月31日) |
| 適用期間(相続・贈与の発生) | 期限なし | 2027年12月31日まで |
参照元:国税庁 No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例
特例措置の適用には、先代経営者・後継者・会社それぞれの要件を満たす必要があります。先代は贈与・相続時点で代表権を有していたこと、後継者は会社の代表者であること(相続の場合は相続後5か月以内に代表就任)、会社は中小企業者であることが主な要件です。
特例承継計画の提出と手続きの流れ
特例措置を利用するためには、「特例承継計画」を都道府県知事に提出し、認定を受けることが必要でした。この特例承継計画の提出期限は2026年3月31日であり、本記事の公開時点(2026年6月)では既に期限が終了しています。
2026年3月31日までに特例承継計画を提出済みの場合は、2027年12月31日までに相続・贈与が発生すれば特例措置を利用できます。提出済みかどうかの確認は、各都道府県の商工担当窓口に問い合わせてください。
特例承継計画を未提出の場合は、期限に制限のない一般措置(猶予割合80%)を活用することになります。一般措置でも相続税の80%を猶予できるため、自社株評価が高い場合には十分な節税効果があります。例えば自社株に対する相続税が5,000万円であれば、一般措置で4,000万円が猶予されます。
猶予取消リスク|継続要件と注意点
事業承継税制の最大の注意点は、猶予が取り消されるリスクです。一定の継続要件を満たさなくなった場合、猶予されていた税額に加えて利子税も一括で納付しなければならなくなります。長年にわたって猶予を維持するための継続管理が必要です。
主な取消事由としては、「後継者が代表者を退任した場合」「5年間(一般措置)の雇用確保要件を満たせなかった場合」「会社が上場した場合」「会社が解散・清算した場合」「株式を譲渡した場合」などがあります。
特例措置では、5年間の雇用人数が基準の80%を下回った場合でも都道府県に報告・理由説明をすることで即時取消を回避できる「弾力化措置」が設けられていますが、この要件管理は毎年継続して行う必要があります。継続要件の管理を担当する人員・体制を承継計画に明確に定めておくことが、長期的なリスク回避につながります。
ケース別シミュレーション|会社経営者の相続税額と節税効果

ここでは、会社経営者が直面する典型的な3つのケースについて、対策前後の相続税額を試算します。数値はあくまで概算であり、実際の税額は個別の財産構成・家族構成・適用特例によって異なります。税理士への相談時の参考としてご活用ください。
ケース1|自社株1億円+個人資産2億円の経営者
最も典型的なケースとして、会社規模は中小企業(従業員30人・年商5億円)、経営者は60代・家族は配偶者と子2人(計3人)と想定します。財産の合計は3億円で、基礎控除(4,800万円)を引いた課税遺産は2億5,200万円です。
| 財産の種類 | 評価額 |
|---|---|
| 自社株(純資産価額方式) | 1億円 |
| 個人不動産 | 8,000万円 |
| 預貯金・現金 | 8,000万円 |
| 有価証券・保険積立 | 4,000万円 |
| 合計(相続財産総額) | 3億円 |
| 基礎控除(3,000万円+600万円×3人) | △4,800万円 |
| 課税遺産総額 | 2億5,200万円 |
| 相続税総額(概算・配偶者1/2取得想定) | 約2,860万円 |
配偶者が1億5,000万円を相続した場合、配偶者税額軽減(法定相続分1億5,000万円以下は非課税)により配偶者の相続税はゼロとなります。子2人が各7,500万円を相続した場合の相続税は、各約1,430万円(合計2,860万円)の負担です。
| 対策内容 | 圧縮効果(概算) |
|---|---|
| 暦年贈与(110万円×3人×10年) | 3,300万円分を相続財産から除外 |
| 死亡退職金(3,000万円)の非課税枠活用 | 1,500万円が非課税+自社株評価も連動して低下 |
| 生命保険(2,000万円)の非課税枠活用 | 1,500万円が非課税 |
| 賃貸物件の活用(小規模宅地等の特例) | 土地評価を50%減(200㎡まで) |
| 対策後の相続税総額(概算) | 約1,800万円 |
| 節税効果(概算) | 約1,060万円(△37%) |
10年以上前から計画的に対策を積み重ねることで、1,000万円超の節税効果が期待できます。税理士に依頼した場合の報酬(概ね50万円〜150万円程度)と比較しても、十分に高い費用対効果です。
ケース2|業績好調で自社株が高騰しているケース
近年の業績好調で自社株評価が急上昇したケースです。5年前は評価額5,000万円だったのに、現在は2億5,000万円に達しています。個人資産1億円を合わせると相続財産は3億5,000万円、基礎控除後の課税遺産は3億200万円(配偶者+子2人の場合)となります。
| 対策 | 期待効果 | 優先度 |
|---|---|---|
| 役員退職金の支給(今期・適正額の最大化) | 純資産圧縮で評価を即効的に引き下げ | 最優先 |
| 役員報酬の適正化・配当の抑制 | 類似業種比準価額の利益要素を下げる | 優先 |
| 持株会社の設立検討 | 37%控除で大幅な評価圧縮が可能 | 中期的に検討(早期設立が効果的) |
| 事業承継税制(一般措置)の活用 | 自社株の相続税80%を猶予 | 事業承継が近ければ最優先 |
自社株が高騰しているケースでは、「今すぐできる評価引き下げ策」を即実行することが最優先です。役員退職金の支給は取締役会決議と税務上の合理的な根拠(功績倍率法など)が必要であり、退職金規程のない会社はまずその整備から始めましょう。評価が上昇し続けている間に手を打たないと、将来の対策コストがさらに増大します。
ケース3|対策が遅れて相続が近づいているケース
70代後半〜80代で健康問題が生じ、対策の実施時間が限られているケースです。暦年贈与は長期間の継続が前提のため、いまから開始しても相続財産への加算(相続開始前7年分)の影響が大きく、単独での効果は限定的です。
| 優先事項 | 理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 遺言書の作成(公正証書遺言) | 経営権を後継者に集約・遺留分を最小化 | 公証役場で比較的短期間に作成できる |
| 退職金規程の整備と退職金支給 | 相続財産の圧縮と自社株評価引き下げ | 功績倍率法に基づく合理的な根拠が必要 |
| 生命保険への加入または増額 | 納税資金の確保と非課税枠の活用 | 健康状態によって加入できない場合あり |
| 事業承継税制(一般措置)の申請準備 | 自社株の相続税80%猶予が受けられる | 後継者が代表就任後5か月以内に申請が必要 |
対策期間が短い場合でも、遺言書と事業承継税制(一般措置)の準備は比較的短期間で実施できる対策です。特に遺言書は公証役場での手続きで短期間に完成でき、自社株を後継者に確実に渡す最も確実な法的手段です。早急に税理士・弁護士に相談し、優先順位をつけて対策を進めましょう。
経営権の維持と遺留分対策|後継者に自社株を集約する

会社経営者の相続において、税務上の節税と同じくらい重要なのが「経営権の維持」です。自社株が複数の相続人に分散すると、会社の意思決定が滞り、最悪の場合は経営危機に陥ります。後継者への自社株集約を確実にするための法的な設計も欠かせません。
自社株が分散するとどうなるか|経営危機のシナリオ
遺言書がなく法定相続分通りに相続が進んだ場合、自社株は複数の相続人に分散することになります。例えば、後継者(長男)と他の相続人(次男・長女)が各々自社株を保有することになれば、株主総会での議決に他の相続人の協力が必要になります。
経営に無関心な相続人が自社株を保有している場合、配当の要求・自社株の第三者売却・取締役選任への反対票など、経営の意思決定を妨害する行動に出るリスクがあります。非上場株式には定款による譲渡制限が設けられているケースが多いですが、相続の場合は株主地位が相続されてしまうため、定款による制限だけでは不十分な場合があります。
最悪のシナリオは「相続人間で自社株をめぐる争いが起き、通常業務が停滞する」事態です。取引先・金融機関・従業員の信頼を失い、経営危機に直結するケースも現実に存在します。このリスクを回避するためにも、生前から法的な設計を行うことが不可欠です。
遺言書と種類株式で経営権を守る方法
経営権を後継者に集約するための法的手段として最も基本的なのが遺言書です。公正証書遺言で「自社株の全部を後継者に相続させる」と明記することで、法定相続分に関わらず自社株を後継者に集約できます。遺言書は公証役場で作成でき、遺言執行者を指定しておくことで相続発生後の手続きをスムーズに進められます。
ただし、遺言書があっても他の相続人には「遺留分」という最低限の相続権が認められています。被相続人の配偶者・子には法定相続分の1/2が遺留分として保護されており、後継者以外の相続人から遺留分侵害額請求が行われると、後継者は現金で遺留分相当額を支払う義務が生じます。
会社法上の「種類株式」を活用する方法もあります。議決権制限株式や拒否権付種類株式(黄金株)を活用することで、株式を後継者以外に分散させながらも経営権は後継者に集約する設計が可能です。例えば、後継者に議決権のある普通株式を持たせ、他の相続人には無議決権株式(配当のみの権利)を相続させるという設計が考えられます。この設計には定款変更・株主総会の特別決議が必要であり、弁護士・税理士と連携して事前に整備することが重要です。
種類株式を活用して経営権を後継者に集約する場合の主な手順は以下のとおりです。各ステップで専門家の関与が不可欠です。
| ステップ | 内容 | 関与する専門家 |
|---|---|---|
| STEP1|設計 | 議決権制限株式・無議決権株式・黄金株(拒否権付種類株式)のうち最適な種類を選択する | 弁護士・税理士 |
| STEP2|定款変更 | 種類株式の内容を定款に規定する(株主総会の特別決議が必要) | 弁護士・司法書士 |
| STEP3|株式の転換 | オーナーが保有する普通株式の一部を種類株式に転換し、後継者以外の相続人・家族に分配する | 税理士(みなし贈与の検討) |
| STEP4|遺言書と連動 | 後継者には議決権のある普通株式を相続させる旨を遺言書に明記する | 弁護士・公証役場 |
| STEP5|継続管理 | 株主名簿の管理・種類株主総会の開催・定期的な見直しを行う | 税理士・弁護士 |
種類株式の設計は一度定款に定めると変更に手間がかかるため、将来の事業承継計画全体を見据えて設計することが重要です。後継者候補が複数いる場合や、親族外承継(従業員・外部後継者)を視野に入れる場合は、より柔軟な設計が必要になります。
遺留分への対応|代償金と生命保険の活用
自社株を後継者に集約した場合、後継者以外の相続人の遺留分は現金(代償金)で解決するのが現実的です。この代償金の支払い原資として、生命保険(死亡保険金)を活用することが有効です。
具体的には、後継者(子)を受取人とする生命保険を契約しておくことで、相続発生時に後継者が死亡保険金を受け取り、それを代償金の支払いに充てることができます。生命保険は受取人固有の財産として遺産分割協議の対象外となるため、後継者に確実に資金を渡すことができます。
2019年施行の改正民法では「遺留分侵害額の請求方法」が金銭の支払いを原則とするよう整理されました(旧制度では現物の分配が認められていたため、自社株そのものが分割されるリスクがありました)。現行法では遺留分請求は金銭支払いが原則であるため、適切な資金を準備しておけば自社株の分散は防げます。遺留分の計算には専門的な知識が必要であり、生前に弁護士・税理士と協力して遺留分額を試算し、生命保険の保険金額を設定することを推奨します。
会社経営者の相続こそ早めに税理士へ相談すべき理由

会社経営者の相続税対策は、複数の税務・法律の専門知識が交差する複合的な課題です。自社株の評価・事業承継税制・遺留分の法的設計・納税資金の確保を一人で計画・実行することは現実的ではなく、専門家への早期相談が節税効果を最大化する近道です。
相談すべき理由|経営者特有の複合課題
一般の相続と比較して、会社経営者の相続では以下のような複合的な課題が絡み合います。税務だけでなく、会社法・民法(遺留分・遺言)・保険・金融まで知識が必要であり、相続税と事業承継の両方を専門とする税理士でなければ適切な対策の設計が困難です。
- 自社株の評価方式の選択・評価額の適正な算定(誤ると過大申告または税務調査の対象)
- 株価引き下げ策の実行タイミングと税務上のリスク管理(否認リスクの判断)
- 事業承継税制の要件管理と継続要件の監視(毎年の継続報告が必要)
- 持株会社設立の税務・法務の設計(実体のある運営が前提)
- 遺言書作成と遺留分対策の連携(弁護士との協働が必要)
- 生命保険・退職金の最適な組み合わせ設計(保険会社との連携も必要)
- 後継者・配偶者・他の相続人全員を含めた全体最適化
相談するメリット|税負担軽減と経営継続の安心感
税理士に相談することで得られる主なメリットは、税務上の節税効果だけではありません。経営権の確保・事業継続・納税資金の準備という経営者特有の課題を総合的にサポートしてもらえる点が大きな価値を持ちます。
- 自社株の評価額を適正に算定し、見落としていた節税機会を発見できる
- 対策の優先順位を明確にし、限られた時間と資源を最大限活用できる
- 事業承継税制の要件・継続管理を専門家に委ねることで取消リスクを低減できる
- 税務調査への対応・反論根拠の準備を事前に行うことができる
- 後継者・配偶者・他の相続人全員が納得できる遺産分割の設計ができる
- 相続発生後10か月以内という申告期限内に確実に申告・納税を完了できる
相談しなかった場合のリスク
相続税の対策を怠った場合・対策が不十分だった場合には、以下のような深刻なリスクが現実になります。特に会社経営者の相続は財産規模が大きいため、リスクが顕在化した際の被害も大きくなります。
- 自社株の過大評価による予期せぬ高額の相続税が発生し、納税資金が不足する
- 遺言書がないまま相続が始まり、後継者と他の相続人の間で遺産分割協議が長期化する
- 自社株が分散したことで株主間紛争が発生し、経営が停滞または危機に陥る
- 事業承継税制の継続要件を管理できず、猶予されていた税額が一括納付を求められる
- 税務調査で評価圧縮策が否認され、追徴課税・延滞税・過少申告加算税が発生する
特に税務調査での否認リスクは、適切な記録・根拠を残しながら対策を実行しているかどうかで大きく変わります。事後に説明できる形で対策を進めるためにも、専門家の指導のもとで文書化・記録化を行うことが欠かせません。
費用対効果の試算|税理士報酬 vs 節税・リスク回避効果
| 項目 | 費用・効果(目安) |
|---|---|
| 初回相談料 | 無料〜5万円程度(税理士事務所による) |
| 相続税対策・プランニング報酬(生前) | 30万円〜100万円程度(財産規模・複雑さによる) |
| 相続税申告報酬(相続発生後) | 遺産総額の0.5〜1%程度(自社株含む場合は割増あり) |
| 対策による節税効果(ケース1の例) | 約1,060万円(10年間の対策で概算) |
| 税務調査リスク(対策なしの場合) | 過少申告加算税10〜15%・重加算税35〜40%(悪質な場合) |
| 費用対効果の目安 | 税理士費用の10倍以上の節税・リスク回避効果が期待できる |
初回相談で確認すべき質問リスト
- □ 現在の自社株の相続税評価額はいくら程度になりますか(評価方式・計算根拠を含めて)
- □ 自社株評価を下げるための具体的な対策とその実施時期を教えてください
- □ 事業承継税制(一般措置)を利用できる可能性はありますか。要件を確認してください
- □ 役員退職金の適切な金額と支給タイミングの目安を教えてください
- □ 生命保険は何円程度・どのような種類の商品が最適ですか
- □ 後継者が決まっていない場合、どのような対策を先に進めればよいですか
- □ 遺言書の作成と遺留分対策はどのように進めればよいですか
- □ 持株会社の設立は当社に有効ですか。コストとメリットを比較してください
よくある質問(FAQ)
Q. 会社経営者の相続税は必ず高くなりますか?
必ずしも高くなるわけではありませんが、自社株の評価が高い場合や個人資産が多い場合は、一般の相続と比べて課税総額が大きくなりやすい構造があります。自社株評価の方式・会社の規模・業績によって評価額は大きく変わるため、まず現状の評価額を専門家に試算してもらうことが対策の第一歩です。
Q. 事業承継税制の特例措置は今からでも利用できますか?
特例措置の特例承継計画の提出期限(2026年3月31日)は既に終了しているため、現時点から新たに特例措置を利用することはできません。ただし、提出期限内に特例承継計画を提出済みであれば、2027年12月31日までに相続・贈与が発生すれば特例措置を利用できます。提出が間に合わなかった場合は、期限のない一般措置(猶予割合80%)の活用を検討してください。
Q. 自社株を後継者に生前贈与する場合、贈与税はかかりますか?
通常の贈与では贈与税がかかります。ただし、事業承継税制を利用して贈与税の納税猶予を受けることができます(一般措置は100%猶予、特例措置は100%猶予)。また、毎年110万円以内の暦年贈与であれば非課税で贈与できますが、自社株の評価が高い場合は贈与税が高額になりやすいため、事業承継税制との組み合わせが効果的です。
Q. 自社株の評価額が高い場合、どの対策から始めるべきですか?
最初に自社株の現在の評価額を正確に試算することが最優先です。その上で、退職金規程の整備(退職金支給の準備)・役員報酬の見直し(利益圧縮)・生命保険の加入(納税資金の確保)を短期的に着手できる対策として進めます。持株会社の設立・事業承継税制の申請は中長期の対策として並行して検討します。
Q. 遺言書を作っておけば自社株は後継者に確実に渡りますか?
遺言書を作成することで法定相続分に関わらず後継者に自社株を相続させることができますが、他の相続人には「遺留分」(法定相続分の1/2)という権利が認められています。後継者以外の相続人から遺留分侵害額請求を受けた場合、後継者は現金で遺留分相当額を支払う義務が生じます。この代償金の原資として生命保険を活用する対策を並行して整備しておくことが重要です。
まとめ|会社経営者の相続税対策は早期着手が最大の節税
会社経営者の相続税が高くなる主な理由
- 自社株は業績に連動して評価が上がり、個人資産と合算されることで課税総額が膨らみやすい
- 財産の大部分が非流動資産(自社株・不動産)で占められるため、納税資金の確保が難しい
- 経営権の維持という問題も加わり、一般の相続より対策の複雑度が高い
会社経営者が取るべき主な対策
- 自社株評価の引き下げ(退職金・役員報酬の調整・持株会社設立など)と個人資産の圧縮(生命保険・贈与・不動産活用)を並行して進める
- 事業承継税制(一般措置・特例措置)を活用して自社株にかかる相続税を猶予する
- 遺言書と種類株式で後継者への経営権集約を法的に確保し、遺留分は生命保険で対応する
今すぐ取るべき行動
- 相続税の専門家(相続税・事業承継に強い税理士)に相談し、現在の自社株評価額を試算してもらう
- 退職金規程を整備し、適正な退職金額の根拠を今から文書化しておく
- 健康な今のうちに生命保険の加入・見直しを行い、納税資金と遺留分対応の原資を準備する
※本記事は2026年6月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制改正等により内容が変更される場合があります。個別の状況については必ず専門家にご相談ください。



