


相続税の未成年者控除(未成年控除)とは、18歳未満の相続人の相続税を年齢に応じて減らす制度です。控除額は18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算します。
たとえば12歳なら60万円、5歳なら130万円が相続税から引かれます。財産の評価額から引くのではなく、算出された税額から直接引く仕組みです。
引ききれない分は捨てずに済みます。本人の相続税を超えた金額は、親や兄弟など扶養義務者の相続税から差し引けます。
注意したいのが年齢の判定です。18歳の誕生日を迎えていると使えないため、相続開始の時期によって結論が変わります。
もうひとつの落とし穴は、未成年者が財産をまったく相続しない場合です。このとき本人も扶養義務者も控除を使えず、金額が丸ごと消えます。
申告要件がない控除なので、期限後申告でも未分割の申告でも適用できます。使い忘れていた場合は、あとから取り戻す手続きもあります。
この記事では、未成年者控除の計算方法と年齢別の早見表、年齢の正しい数え方、4つの適用要件、扶養義務者への振り替え、2回目以降の制限、申告の要否、財産を渡さないと控除が消える理由、障害者控除との併用、実務の注意点までを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

未成年者控除の計算式は1つだけです。18歳になるまでの年数に10万円をかけた金額が、その人の相続税から直接引かれます。年齢が若いほど控除額は大きくなります。まず金額を確認したうえで、財産から引く控除との違いを押さえます。
相続税の控除には2種類あります。基礎控除のように財産の額から引くものと、計算した税額から引くものです。未成年者控除は後者です。
税額から直接引くため、効果がそのまま金額で分かります。控除額60万円なら、その人の納税額がそのまま60万円減るということです。財産の評価額を下げる小規模宅地等の特例のように、減額分に税率をかけて効果を計算する必要はありません。
| 控除の種類 | 何から引くか | 例 |
|---|---|---|
| 財産から引く控除 | 相続財産の合計額 | 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
| 税額から引く控除 | 計算した相続税額 | 未成年者控除・障害者控除・配偶者の税額軽減 |
重要ポイント:基礎控除で相続税が0円になる家庭では、そもそも税額がないので未成年者控除を使う場面がありません。未成年者控除が効くのは、基礎控除を超えて相続税が発生する家庭です。
自分の年齢の行を見れば、控除額がそのまま分かります。計算しなくても金額が確定します。
| 相続開始時の年齢 | 18歳までの年数 | 控除額 | 相続開始時の年齢 | 18歳までの年数 | 控除額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0歳 | 18年 | 180万円 | 9歳 | 9年 | 90万円 |
| 1歳 | 17年 | 170万円 | 10歳 | 8年 | 80万円 |
| 2歳 | 16年 | 160万円 | 11歳 | 7年 | 70万円 |
| 3歳 | 15年 | 150万円 | 12歳 | 6年 | 60万円 |
| 4歳 | 14年 | 140万円 | 13歳 | 5年 | 50万円 |
| 5歳 | 13年 | 130万円 | 14歳 | 4年 | 40万円 |
| 6歳 | 12年 | 120万円 | 15歳 | 3年 | 30万円 |
| 7歳 | 11年 | 110万円 | 16歳 | 2年 | 20万円 |
| 8歳 | 10年 | 100万円 | 17歳 | 1年 | 10万円 |
表の見方:左3列と右3列で年齢が続いています。生まれたばかりの子や胎児が相続人になる場合は180万円で、これが上限です。
計算ロジック:相続税法は「10万円にその者が18歳に達するまでの年数を乗じて算出した金額」と定めています。1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。
制度の効果を金額で確かめます。配偶者と子2人(15歳と12歳)が法定相続分どおりに相続したケースです。遺産8,000万円なら、子2人の納税額は175.0万円から85.0万円に下がります。
| 遺産の総額 | 相続税の総額 | 控除前の子2人の税額 | 未成年者控除 | 控除後 | 減った額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 6,000万円 | 120.0万円 | 60.0万円 | 30万円+60万円 | 0円 | △60.0万円 |
| 8,000万円 | 350.0万円 | 175.0万円 | 30万円+60万円 | 85.0万円 | △90.0万円 |
| 1億円 | 630.0万円 | 315.0万円 | 30万円+60万円 | 225.0万円 | △90.0万円 |
| 1億5,000万円 | 1,495.0万円 | 747.5万円 | 30万円+60万円 | 657.5万円 | △90.0万円 |
表の見方:配偶者の税額は配偶者の税額軽減で0円になる前提です。15歳の子が30万円、12歳の子が60万円で合計90万円の控除になります。
重要ポイント:遺産6,000万円のケースでは、12歳の子の控除60万円のうち30万円が引ききれずに余ります。この余りは扶養義務者の相続税から引けますが、配偶者の税額が0円だと引く先がありません。
計算ロジック:遺産8,000万円・相続人3人なら基礎控除4,800万円を引いた課税遺産総額は3,200万円で、相続税の総額は350.0万円です。
控除の反映:子の法定相続分は各4分の1なので按分税額は各87.5万円、合計175.0万円です。ここから90万円を引いて85.0万円になります。
控除額が子の相続税を上回れば納税は0円になります。15歳と12歳の子がいる家庭なら、遺産6,600万円までは子の相続税が0円です。
| 遺産の総額 | 相続税の総額 | 子2人の税額 | 未成年者控除90万円を引いた後 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 20.0万円 | 10.0万円 | 0円 |
| 5,500万円 | 70.0万円 | 35.0万円 | 0円 |
| 6,000万円 | 120.0万円 | 60.0万円 | 0円 |
| 6,600万円 | 約180万円 | 約90万円 | 0円(ここが境目) |
| 7,000万円 | 225.0万円 | 112.5万円 | 22.5万円 |
| 8,000万円 | 350.0万円 | 175.0万円 | 85.0万円 |
表の見方:相続人は配偶者と子2人(15歳と12歳)で、法定相続分どおりに分けた場合です。配偶者の税額は配偶者の税額軽減で0円になる前提にしています。
重要ポイント:基礎控除4,800万円を超えても、遺産6,600万円あたりまでは未成年者控除で子の納税が0円になります。基礎控除だけを見て「相続税がかかる」と判断すると、実際より重く見積もることになります。
計算ロジック:子2人の控除額は15歳が30万円、12歳が60万円で合計90万円です。子の按分税額の合計が90万円以下なら0円になります。遺産6,600万円のとき子2人の税額が約90万円になるため、ここが境目です。
相続税の計算そのものの手順は下記の記事で解説しています。


控除額は年齢で決まるため、相続開始の日に何歳だったかの判定を誤ると金額がずれます。とくに18歳前後は結論が変わるため、数え方を正確に押さえます。
端数の扱いと、誕生日をまたぐときの判定を順に確認します。どちらも決まったルールがあり、家庭ごとの事情で変わることはありません。
18歳になるまでの年数に1年未満の端数があるときは、切り上げて1年として計算します。実質的には、相続開始時の年齢の1年未満を切り捨てるのと同じ結果になります。
15歳9か月の場合、18歳まではあと2年3か月です。この端数を切り上げて3年とし、3年×10万円=30万円が控除額になります。国税庁も同じ例を挙げて、15歳9か月なら3年として計算すると示しています。
| 相続開始時の年齢 | 18歳までの実際の期間 | 切り上げ後 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 15歳0か月 | 3年0か月 | 3年 | 30万円 |
| 15歳9か月 | 2年3か月 | 3年 | 30万円 |
| 15歳11か月 | 2年1か月 | 3年 | 30万円 |
| 16歳0か月 | 2年0か月 | 2年 | 20万円 |
| 17歳11か月 | 0年1か月 | 1年 | 10万円 |
重要ポイント:17歳11か月でも1年分の10万円が引けます。18歳の直前であっても控除が0円になることはありません。
「年齢の1年未満を切り捨てて(18歳-年齢)で計算する」と書く解説もありますが、15歳9か月を15歳として18歳まで3年とするので、結果は同じです。
年齢は誕生日当日ではなく、誕生日の前日が終わる時点で1つ上がります。選挙権の年齢などでも使われている考え方です。
年齢計算ニ関スル法律が「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」と定め、期間の計算は民法の規定によります。出生日から起算した18年は、応当する日の前日に満了します。
| 相続開始の日(誕生日を4月10日とする) | その時点の年齢 | 未成年者控除 |
|---|---|---|
| 4月8日 | 17歳 | 使える(10万円) |
| 4月9日(誕生日の前日) | 17歳 | 使える(10万円) |
| 4月10日(18歳の誕生日) | 18歳 | 使えない |
| 4月11日 | 18歳 | 使えない |
表の見方:18歳になるのは4月9日が終わる瞬間なので、4月9日中はまだ17歳です。4月10日以降は18歳に達しているため対象外になります。
重要ポイント:誕生日の前後で控除できるかどうかが分かれるのは17歳のときだけです。金額は10万円ですが、引ききれない分を扶養義務者に振り替えられるため、家族全体では10万円以上の差になることもあります。
参照元:e-Gov 法令検索 明治三十五年法律第五十号(年齢計算ニ関スル法律)
民法の成年年齢の引き下げに合わせて、令和4年4月1日以後の相続では18歳未満が対象になりました。それより前の相続では20歳未満が対象です。
| 相続開始の日 | 対象になる年齢 | 控除額の計算 |
|---|---|---|
| 令和4年3月31日まで | 20歳未満 | (20歳-年齢)×10万円 |
| 令和4年4月1日以後 | 18歳未満 | (18歳-年齢)×10万円 |
重要ポイント:この改正で控除額の上限は200万円から180万円に下がりました。過去に未成年者控除を使ったことがある人は、2回目の計算で古い基準を使わないよう注意が必要です。
注意点:成年年齢が18歳になったことで、18歳と19歳の人は成年として扱われます。ただし相続税の2割加算や法定相続分の判定は年齢と無関係なので、この改正で変わるのは未成年者控除の対象範囲だけです。

未成年者控除は18歳未満なら誰でも使えるわけではありません。財産を取得していること、法定相続人であること、日本国内に住所があることの3つが加わります。とくに1つ目と2つ目を外すケースが多いので、順に確認します。
前提として、その未成年者が実際に財産を受け取っている必要があります。相続人であっても取得額が0円なら控除は発生しません。
財産は現金でも不動産でもかまいません。生命保険金や死亡退職金のように、相続税の計算上は相続で取得したものとみなされる財産でも要件を満たします。
生命保険金が非課税枠に収まって本人の相続税が0円でも、受け取っていれば財産を取得したことになります。引ききれない控除は、扶養義務者の相続税から引けます。この要件を外すと本人だけでなく扶養義務者も控除を使えなくなるため、影響がいちばん大きい部分です。
財産を受け取っていても、法定相続人でなければ使えません。遺言で財産をもらっただけの孫や、内縁のパートナーの子は対象外です。
相続放棄をした場合は例外です。条文が「放棄がなかったものとした場合における相続人」と定めているため、放棄しても法定相続人として扱われます。
| 立場 | 法定相続人か | 未成年者控除 |
|---|---|---|
| 子(18歳未満) | 該当する | 使える |
| 相続放棄した子(遺贈や保険金を受け取った) | 該当する扱い | 使える |
| 孫(代襲相続人ではない)/遺言で財産をもらった | 該当しない | 使えない |
| 孫養子 | 該当する | 使える(2割加算の対象になることがある) |
| 代襲相続人の孫 | 該当する | 使える |
| 胎児(生まれた場合) | 該当する | 使える |
重要ポイント:孫は立場によって結論が変わります。養子にしていれば使えますが、遺言で渡しただけでは使えません。孫養子には相続税が2割加算される場合があるため、控除と加算の両方を見て判断します。
判定するのは相続開始の日、つまり亡くなった日の年齢です。申告の日や遺産分割が終わった日ではありません。
相続開始のあとに18歳になっても控除額は変わりません。亡くなった日に17歳だったなら、申告の時点で19歳になっていても10万円を引けます。逆に、亡くなった日に18歳だった人が申告時に何歳であっても控除は使えません。
相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所があることが原則です。ただし国内に住所がなくても、日本国籍があり一定の居住歴を満たせば使えます。
海外赴任に同行している子や留学中の子でも、要件に当てはまれば控除の対象になります。住所が国外にあること自体が理由で使えなくなるわけではないので、日本国籍と居住歴を先に確認してください。
【使えないのは制限納税義務者に当たる場合】
以前は結婚した未成年者を成年として扱う規定があり、未成年者控除が使えるかどうかが論点になっていました。この規定は削除されているため、いまは問題になりません。
民法の改正で成年年齢が18歳になり、婚姻できる年齢も男女とも18歳に統一されました。つまり18歳未満で結婚している人は制度上いないことになります。
注意点:古い解説記事では「婚姻による成年擬制でも未成年者控除は使える」という記述が今も残っています。結論は変わりませんが、前提の条文はすでに存在しません。
未成年者控除の解説には、事実と違う説明も見られます。次の3つは、どれも条文や通達と食い違うので注意してください。
| よくある説明 | 正しい扱い |
|---|---|
| 相続放棄した未成年者は控除を使えない | 遺贈や生命保険金で財産を取得していれば使える(相続税法基本通達19の3-1) |
| 未成年者控除を最初に引き、その後に配偶者の税額軽減を引く | 順番は配偶者の税額軽減が先で、未成年者控除はその後 |
| 申告書の第6表を出さないと控除は認められない | 未成年者控除は申告が適用の条件になっていない。控除で0円になれば申告自体が不要 |
重要ポイント:相続税の申告をする場合は、第6表で控除額を計算して添付します。「申告が条件ではない」ことと「申告するなら第6表に書く」ことは別の話です。

控除額が本人の相続税より大きいと、引ききれない分が出ます。この余りは捨てずに、扶養義務者の相続税から差し引けます。未成年者控除の効果が家族全体に及ぶのはこの仕組みがあるためです。誰が対象になるか、いくら振り替えられるかを確認します。
扶養義務者は、配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者です。民法が定める扶養の義務を負う人の範囲と重なります。
| 続柄 | 扶養義務者にあたるか |
|---|---|
| 母(配偶者) | あたる |
| 祖父母(直系血族) | あたる |
| 兄・姉(兄弟姉妹) | あたる |
| おじ・おば(3親等内の親族) | 家庭裁判所の審判があれば あたる |
| いとこ(4親等) | あたらない |
重要ポイント:振り替えられるのはその相続で財産を取得して相続税を負担している扶養義務者だけです。扶養義務者であっても、その相続で相続税が発生していなければ振り替え先になりません。
扶養義務者という名前から、生活の面倒を見ている人だけが対象と思われがちです。しかし実際に扶養しているかどうかは問われません。
別居している兄や、生活費を出していない祖父母でも、続柄が当てはまり相続税を負担していれば振り替え先になります。扶養の実態を証明する書類を求められることもありません。
扶養義務者が複数いる場合、控除不足額を各人の相続税額の比で按分します。協議で自由に決めることもできますが、原則はこの按分です。
【計算例】未成年者Aの控除額60万円・Aの相続税30万円
計算ロジック:Aの相続税30万円は控除60万円で全額消えて0円になります。残った30万円を母と兄の相続税の比(20対40)で分けるため、家族全体では60万円ぶんの効果がまるごと使えます。
按分で計算した金額がそのまま引けるわけではありません。引けるのは、その扶養義務者が負担している相続税の金額までです。それを超える分は使えずに消えます。控除不足額が大きく、扶養義務者の相続税が小さい家庭では、控除を使い切れないことがあります。
【計算例】控除不足額100万円・母の相続税30万円・兄の相続税40万円
計算ロジック:扶養義務者2人の相続税の合計が70万円なので、控除不足額100万円のうち70万円までしか使えません。家族全体で負担している相続税が控除額の上限になります。
重要ポイント:控除額が大きくなる年齢の低い相続人がいる家庭では、この上限に当たりやすくなります。0歳なら控除額は180万円ですが、家族全体の相続税がそれ以下なら使い切れません。
注意したいのは、扶養義務者が誰も相続税を負担していないケースです。この場合は振り替えられず、控除額が余ったまま終わります。
配偶者が財産のほとんどを相続し、配偶者の税額軽減で納税額が0円になっている家庭で起こります。母の相続税が0円なら、子の控除の余りを引く先がありません。
【控除が余ってしまう典型】
遺産の分け方を決める段階なら、避けられる場合があります。配偶者の取得額を抑えて相続税を発生させておけば、余った控除を引く先ができます。二次相続まで含めた配分の考え方は下記の記事で解説しています。


過去に未成年者控除を使ったことがあると、2回目は満額を使えません。短い間に相続が続いた場合、同じ枠を二重に使えない仕組みになっています。計算は2つの式を比べるだけです。古い相続が絡むと基準年齢が違うため、そこだけ注意します。
2回目の控除額は、今回の年齢で計算した額と、最初の相続の枠の残りを比べて小さいほうです。
【2回目の控除額の求め方】
②で使う年齢は最初の相続のときの年齢です。今回の年齢ではありません。
①だけで判断すると過大に控除してしまい、あとから修正申告になることがあります。
注意点:1回目の相続が2014年以前で、当時は控除が1年6万円・20歳までだった場合も、②は今の基準(18歳までの年数×10万円)で計算し直し、そこから実際に控除した額を引きます。
参照元:国税庁 相続税法基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)の趣旨について
参照元:e-Gov 法令検索 相続税法(第19条の3第3項)
12歳のときに父が亡くなり、14歳のときに祖父が亡くなったケースです。1回目に控除額60万円のうち30万円だけ使ったとします。
| 1回目(12歳) | 2回目(14歳) | |
|---|---|---|
| その年齢での控除額 | (18-12)×10万円=60万円 | ①(18-14)×10万円=40万円 |
| 実際に控除した額 | 30万円 | - |
| 枠の残り | - | ②(18-12)×10万円-30万円=30万円 |
| 控除額 | 30万円 | 30万円(①40万円と②30万円の小さいほう) |
計算ロジック:1回目に枠60万円のうち30万円を残しているため、2回目に使えるのはその30万円までです。①の40万円は使えません。
1回目が古い相続だと、当時は20歳基準でした。それでも②の計算では18歳基準に置き換えて計算し直します。
| 1回目(1歳・令和2年) | 2回目(9歳・令和5年) | |
|---|---|---|
| 当時の基準 | 20歳未満 | 18歳未満 |
| 当時の控除額 | (20-1)×10万円=190万円 | - |
| 実際に控除した額 | 90万円 | - |
| ①今回の年齢での額 | - | (18-9)×10万円=90万円 |
| ②枠の残り(18歳基準で再計算) | - | (18-1)×10万円-90万円=80万円 |
| 控除額 | 90万円 | 80万円(①90万円と②80万円の小さいほう) |
表の見方:1回目の控除額は当時のルールで190万円でしたが、②の計算では170万円(18歳基準)として扱います。古い基準の190万円を使うと控除額を10万円多く計算してしまいます。
計算ロジック:条文は②を「最初に財産を取得した際に第1項の規定により控除を受けることができる金額」と定めています。第1項は現行の18歳基準なので、過去の相続であっても18歳基準で計算し直すことになります。
2回目の計算に必要なのは最初の相続のときの年齢と、実際に控除した金額です。この2つが分からないと正しい控除額を出せません。過去の相続税の申告書(第6表)に記載されています。手元にない場合は、税務署で申告書等の閲覧を申請する方法があります。
【残しておくべき情報】

未成年者控除には申告しなければ使えないという条件がありません。この点が配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例と大きく違います。そのため控除後に税額が0円なら申告は不要で、期限を過ぎた申告や未分割の申告でも適用できます。
相続税の申告義務は、未成年者控除を引いたあとに税額が残る場合に生じます。引いた結果0円なら、その人は申告書を出す必要がありません。
相続税法は申告義務の条文で、未成年者控除と障害者控除を含めた控除後の税額を基準にしています。一方で配偶者の税額軽減はこの並びに入っていません。
| 0円になった理由 | 申告は必要か | 理由 |
|---|---|---|
| 基礎控除以下だった | 不要 | そもそも申告義務が生じない |
| 未成年者控除で0円 | 不要 | 申告義務の判定に未成年者控除が含まれている |
| 障害者控除で0円 | 不要 | 同じ扱い |
| 配偶者の税額軽減で0円 | 必要 | 申告が適用の条件になっている |
| 小規模宅地等の特例で0円 | 必要 | 同じく申告が条件 |
重要ポイント:同じ相続の中で、配偶者は申告が必要で、未成年の子は不要という状態も起こります。ただし実務では家族全員分を1通の申告書でまとめて提出するのが通常です。
申告要件がないため、申告期限の10か月を過ぎてから申告しても未成年者控除は使えます。控除そのものが失われることはありません。
ただし本来の期限を過ぎているため、納付すべき税額があれば無申告加算税と延滞税がかかります。控除は使えても、遅れた分のペナルティは別に発生します。
遺産分割がまとまらないまま申告する場合も、未成年者控除は適用できます。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えないのとは対照的です。未分割申告では法定相続分で取得したものとして計算するため、未成年者も財産を取得したことになり要件を満たします。
重要ポイント:未分割でも使える控除は限られています。未成年者控除・障害者控除・相次相続控除は未分割でも適用できます。分割が決まってから使えるようになるのは配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例です。
未分割のまま申告する手続きとその後の流れは、下記の記事で解説しています。

未成年者控除を適用せずに申告して納めすぎていた場合、更正の請求で還付を受けられます。期限は法定申告期限から5年以内です。
遺産8,000万円で15歳と12歳の子がいる家庭なら、控除の合計は90万円です。使い忘れていればその分を払いすぎていることになります。相続税を払いすぎていたときの取り戻し方は下記の記事にまとめています。

未成年者控除だけのために特別な添付書類は要りません。相続人であることと年齢が確認できる戸籍謄本があれば足ります。
【申告時に用意するもの】
第6表は未成年者控除と障害者控除の共通の様式です。同じ人が両方に該当する場合も、この1枚で計算します。
申告書のどの表を使い、どの順番で書くかは下記の記事で解説しています。


制度の中でいちばん見落とされるのがこの点です。未成年者が1円も相続しないと、本人も扶養義務者も控除を使えません。未成年の子に財産を持たせたくないという判断が、結果として家族全体の税額を増やすことがあります。
未成年者控除は「相続や遺贈で財産を取得した者」に対する控除です。取得していない人には控除額そのものが発生しません。控除額が発生しなければ、引ききれない部分も存在しません。したがって扶養義務者へ振り替える余地もなくなります。
【よくある誤解】
ここが重要な点です。控除額は年齢だけで決まり、取得した財産の金額とは無関係です。10万円でも取得していれば、12歳なら60万円の控除が発生します。
本人の相続税を超えた分は扶養義務者へ振り替えられるので、少額を取得させるだけで家族全体としては控除を使い切れます。
| 12歳の子の取得額 | 発生する控除額 | 本人の相続税 | 扶養義務者へ振り替え |
|---|---|---|---|
| 0円 | 0円 | 0円 | できない |
| 10万円 | 60万円 | 0.4万円 | 59.6万円 |
| 500万円 | 60万円 | 21.9万円 | 38.1万円 |
| 2,000万円 | 60万円 | 87.5万円 | 0円(本人で使い切る) |
表の見方:遺産8,000万円・配偶者と子2人(相続税の総額350.0万円)の場合です。取得額が10万円でも2,000万円でも、控除額は年齢で決まる60万円です。違うのは本人で使い切るか、扶養義務者へ回すかだけです。
計算ロジック:本人の相続税は「相続税の総額×取得額÷遺産の総額」で按分します。10万円を取得した場合は350.0万円×10万円÷8,000万円=0.4万円で、控除60万円のうち59.6万円が扶養義務者へ回ります。
重要ポイント:未成年の子に多額の財産を持たせたくない場合でも、少額を取得させておけば控除は確保できます。管理しやすい現金を選べば、実務の負担も小さく済みます。
不動産を未成年者に持たせると、売却や管理のたびに手続きが必要になります。代償分割を使えば、財産の中身を選んで渡せます。
他の相続人が不動産を相続し、その代わりに未成年者へ現金を支払う方法です。未成年者は現金だけを取得するため、要件を満たしつつ管理の手間を避けられます。
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注意点:代償金を不動産や株式で支払うと、支払う側に譲渡所得税がかかる場合があります。現金で支払えばこの問題は起きません。
未成年者が相続人にいる場合の協議書の作り方は下記の記事で解説しています。


未成年で障害のある相続人は、未成年者控除と障害者控除の両方を使えます。どちらか一方しか選べない制度ではありません。複数の控除があるときは引く順番が決まっているため、そこも確認します。
未成年者控除は18歳まで、障害者控除は85歳までの年数で計算します。対象になる年数が違うため、同じ人が両方に該当します。
障害者控除は一般障害者なら1年につき10万円、特別障害者なら1年につき20万円です。年数が長いため、金額は未成年者控除よりはるかに大きくなります。
| 控除 | 計算式 | 10歳の場合の控除額 |
|---|---|---|
| 未成年者控除 | (18歳 - 年齢) × 10万円 | 80万円 |
| 障害者控除(一般障害者) | (85歳 - 年齢) × 10万円 | 750万円 |
| 障害者控除(特別障害者) | (85歳 - 年齢) × 20万円 | 1,500万円 |
| 一般障害者との合計 | - | 830万円 |
重要ポイント:10歳の一般障害者なら合計830万円です。本人の相続税を大きく超えることがほとんどなので、引ききれない分をどう扶養義務者へ振り替えるかが実務の中心になります。
計算ロジック:どちらも1年未満の端数を切り上げて計算します。10歳3か月なら、未成年者控除は18歳まで7年9か月で切り上げて8年、障害者控除は85歳まで74年9か月で切り上げて75年です。
障害者控除の対象になる範囲や2回目の注意点は、下記の記事で詳しく解説しています。

控除が複数あるとき、引く順番は相続税法の条文の並びどおりです。有利になるよう並べ替えることはできません。
| 順番 | 控除 | 引ききれないとき |
|---|---|---|
| 1 | 贈与税額控除(暦年課税分) | 切り捨て(還付なし) |
| 2 | 配偶者の税額軽減 | - |
| 3 | 未成年者控除 | 扶養義務者の税額から引く |
| 4 | 障害者控除 | 扶養義務者の税額から引く |
| 5 | 相次相続控除 | 切り捨て |
| 6 | 外国税額控除 | 切り捨て |
| 7 | 相続時精算課税分の贈与税額控除 | 還付される |
表の見方:先に未成年者控除を引き、それでも税額が残っていれば障害者控除を引きます。引ききれない分を扶養義務者へ回せるのは未成年者控除と障害者控除だけです。
重要ポイント:順番が決まっているため、「障害者控除を先に使って未成年者控除を残す」ことはできません。どちらも余った場合は、両方の余りを扶養義務者へ振り替えます。
参照元:e-Gov 法令検索 相続税法(第19条〜第20条の2)
金額が大きくなるため、家族全体の相続税をすべて消しても控除が余ることがあります。遺産1億円で、相続人が配偶者・10歳の一般障害者の子・成人の子というケースで確認します。
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計算ロジック:家族全体で使えた控除は、10歳の子の157.5万円と兄の157.5万円を合わせた315.0万円です。控除額830万円のうち515.0万円は使えずに消えます。
重要ポイント:控除額が大きいほど余りやすくなります。扶養義務者の相続税を超える分は繰り越せないため、配分を工夫して家族全体の相続税を控除額に近づけるほど使い切れます。

未成年者が相続人にいると、遺産分割協議そのものに手続きが増えます。控除の計算より先に、協議を有効に成立させる準備が必要です。つまずきやすい4つの場面を確認します。
未成年者は自分で遺産分割協議に参加できないため、親が代理します。ただし親も同じ相続の相続人だと、親は子を代理できません。
親と子で取り分を分け合う関係になり、利益が相反するためです。民法は、この場合に家庭裁判所へ特別代理人の選任を請求しなければならないと定めています。
【特別代理人が必要になるケース】
重要ポイント:子が2人なら特別代理人も2人必要です。申立てに時間がかかるため、申告期限から逆算して早めに動きます。未成年者控除は未分割申告でも使えるので、間に合わない場合はいったん未分割で申告する選択もあります。
参照元:裁判所 特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)
離婚していても、親権者である親が代理します。亡くなった人の元配偶者が親権者なら、その人が協議に加わります。この場合、元配偶者は相続人ではないので利益相反になりません。したがって特別代理人の選任は不要で、そのまま子を代理できます。
| 状況 | 代理する人 | 特別代理人 |
|---|---|---|
| 母が相続人で、母が親権者 | 母(ただし利益相反) | 必要 |
| 離婚した元妻が親権者(相続人ではない) | 元妻 | 不要 |
| 親権者がいない(親が死亡など) | 未成年後見人 | 後見人も相続人なら必要 |
重要ポイント:離婚している場合、元配偶者が子の代理人として遺産分割に関わることになります。再婚相手や他の相続人との調整が難しくなるため、遺言を残しておく価値が高い場面です。
民法は「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と定めています。生まれてくれば相続人として扱われ、未成年者控除も使えます。控除額は0歳として計算するため、上限の180万円になります。
注意点:死産だった場合はこの規定が適用されません。出生を待たずに遺産分割協議をしても、生まれた子の権利を害するため通常は出生を待ってから協議します。申告期限に間に合わないときは、未分割で申告して後から更正の請求をします。
誰が法定相続人になるかの範囲と数え方は、下記の記事で解説しています。

孫を養子にすると法定相続人になるため、未成年者控除を使えます。ただし相続税が2割加算される場合があり、両方を合わせて見る必要があります。2割加算は控除より先に計算します。按分した税額に2割を上乗せしたうえで、そこから未成年者控除を引く順番です。
| 12歳の相続人 | 按分税額 | 2割加算後 | 未成年者控除 | 納税額 |
|---|---|---|---|---|
| 実子 | 87.5万円 | -(加算なし) | 60万円 | 27.5万円 |
| 孫養子 | 87.5万円 | 105.0万円 | 60万円 | 45.0万円 |
表の見方:遺産8,000万円・相続人3人(相続税の総額350.0万円)で、4分の1を取得した場合です。同じ12歳でも孫養子だと17.5万円多く納めます。
計算ロジック:按分税額87.5万円に2割を加えると105.0万円になり、そこから未成年者控除60万円を引いて45.0万円です。実子なら加算がないので87.5万円-60万円=27.5万円になります。
注意点:孫養子でも2割加算されない場合があります。子がすでに亡くなっていて孫が代襲相続人になっているときです。この場合は養子にする必要もなく、加算もありません。
孫が相続人になる場合の2割加算の判定は、下記の記事で詳しく解説しています。

未成年者が取得した財産は本人のものです。親が自由に使えるお金ではありません。管理の仕方を誤ると、あとから別の問題が生じます。親が子の口座から生活費や学費を引き出して使い続けると、実質的に親の財産だったと判断される余地が出てきます。
【避けたい管理の仕方】
重要ポイント:子の名義で相続した財産は、子の口座に分けて置き、使途を子のためのものに限るのが原則です。学費や進学費用に充てる場合も、記録を残しておけば説明できます。
注意点:子が成人したら通帳と印鑑を本人へ渡します。親が管理を続けた状態のままだと、将来その子が相続する側になったときに名義預金の問題として蒸し返されます。
名義預金の判定基準と、加算されたときに税額がいくら増えるかは下記の記事で解説しています。

申告書を出す前に、未成年者控除で落としやすい項目を確認します。
チェックリスト:未成年者控除の確認項目
重要ポイント:このうち金額に直結するのは未成年者が実際に財産を取得しているかです。取得額が0円だと控除も0円になり、扶養義務者へ振り替えることもできません。

未成年者控除は遺産の分け方を決める段階で結果が変わる控除です。複数の税理士から見積りを取り、提案の中身を比べてください。
未成年者控除では年齢の判定・取得額の設計・扶養義務者への振り替えが同時に絡みます。計算式は単純でも、使い切れるかどうかは設計次第です。
【相続税の対応実績がある税理士に相談すべき理由】
たとえば遺産8,000万円・配偶者と15歳・12歳の子の家庭で、A税理士は未成年者控除を適用せずに申告し、子2人の納税額は175.0万円になりました。
B税理士は15歳の子に30万円、12歳の子に60万円の控除を適用し、子2人の納税額は85.0万円です。90.0万円の差が生まれています。
比べるべきなのは分け方の提案まで踏み込むかです。控除の計算そのものは誰がやっても同じ金額になります。
判定ポイント1:未成年者の取得額を提案するか「未成年の子には財産を持たせないほうがよい」で終わる提案か、少額でも取得させる設計を出してくるかを見てください。→ 取得させない提案では控除が使えません。
判定ポイント2:振り替え先を確認しているか相談の初期に配偶者の相続税がいくらになるかまで示すかどうかです。→ 配偶者が0円だと、子の控除の余りを引く先がなくなります。
判定ポイント3:過去の相続を聞いてくるか「10年以内に他の相続はありませんでしたか」と確認するかを見てください。→ 聞かない事務所は、2回目の制限を見落として過大に控除する可能性があります。
自分の判断だけで進めた場合に起きることです。あとから取り戻せない失敗が含まれます。
【相談しないまま進めた場合のリスク】
いずれも遺産分割協議書に押印する前に確認しておけば避けられたものです。
依頼から契約までは4つの段階で進み、フォームの記入は5分程度で終わります。
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18歳になるまでの年数1年につき10万円です。0歳なら180万円、12歳なら60万円、17歳なら10万円が相続税から直接引かれます。
1年未満の端数は切り上げます。15歳9か月なら18歳まで2年3か月ですが、切り上げて3年として計算し30万円になります。
使えません。年齢は誕生日の前日が終わる時点で1つ上がるため、誕生日当日にはすでに18歳に達しています。誕生日の前日であれば、その日のうちはまだ17歳なので10万円を引けます。17歳のときだけ、1日の違いで結論が変わります。
原則として不要です。相続税法は未成年者控除を引いたあとに税額が残る場合に申告義務が生じると定めているためです。
ただし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って0円にしている人がいる場合、その人は申告が必要です。これらは申告そのものが適用の条件になっています。
使えます。条文が「放棄がなかったものとした場合における相続人」と定めているため、放棄しても法定相続人として扱われます。
ただし財産を取得している必要があります。放棄したうえで遺言による財産や生命保険金を受け取っていれば対象になりますが、何も受け取っていなければ控除は発生しません。
控除は発生しません。本人の分がないだけでなく、扶養義務者の相続税から引くこともできなくなります。
遺産8,000万円で15歳と12歳の子がいる家庭なら、90万円の控除が丸ごと消えます。少額でも取得させれば年齢に応じた控除が満額発生するため、分け方を決める段階で確認してください。
未成年者控除の計算式は「18歳になるまでの年数×10万円」の1つだけです。0歳なら180万円、12歳なら60万円が相続税から直接引かれます。
金額を左右するのは年齢と、財産を取得しているかどうかです。1円も相続しないと控除は丸ごと消えるため、分け方を決める段階が勝負になります。
【この記事の要点】
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年10月時点の法令等に基づいて作成しています。相続税法および租税特別措置法の改正により、内容が変わる可能性があります。最新の制度については国税庁のホームページをご確認いただくか、相続税の対応実績がある税理士へご相談ください。