空き家の相続税はいくら?計算方法と3,000万円控除の要件

空き家_相続税_特例

空き家の相続税は、土地を路線価で、建物を固定資産税評価額で評価して計算します。空き家であることを理由に評価が下がる仕組みはありません。

むしろ空き家は相続税が高くなりやすい財産です。土地の評価を最大80%下げられる小規模宅地等の特例が使えないことが多いためです。

親が一人で住んでいた家を子が相続するとき、その子に持ち家があると特例の要件から外れます。

土地の評価が6,000万円の実家なら、特例が使えるかどうかで相続税は10万円と780万円に分かれます。

一方で、売るときには納めた税金を取り戻せる制度があります。一定の要件を満たして売却すると、売却益から最大3,000万円を差し引ける特例です。

この特例には10個の要件があり、1億円以下の判定や「同一の被相続人について1回限り」といった見落としやすい条件も含まれます。

この記事では、空き家の相続税の計算方法、特例が使えるかどうかの判定、売却時の3,000万円控除の要件と使えないケース、解体費用の税務上の扱い、手続きと必要書類までを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 空き家の相続税は土地は路線価・建物は固定資産税評価額で計算する。空き家だから安くなる仕組みはない
  • 持ち家がある子が相続すると小規模宅地等の特例が使えない。土地6,000万円の実家なら相続税は780万円、持ち家がない子が相続すれば10万円
  • 売却時は3,000万円控除で最大609.5万円軽くなる。相続人が3人以上だと1人2,000万円に下がる
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空き家の相続税はいくら?評価と計算の3ステップ

空き家の相続税は、他の財産と同じ手順で計算します。空き家であることを理由に評価を下げる仕組みはありません。土地・建物・預金を評価して合計し、基礎控除を引いて税率をかけます。

STEP1|土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価する

財産ごとに相続税評価額を出すところから始めます。空き家で問題になるのは土地と建物の2つで、それぞれ評価の方法が違います。

対象 評価のしかた 調べ方
土地 路線価方式(路線価 × 面積)または倍率方式 国税庁の路線価図・評価倍率表
建物 固定資産税評価額と同額 市区町村から届く固定資産税の課税明細書
預金・株式など 相続開始日の残高や時価 残高証明書・証券会社の報告書

重要ポイント:建物の評価は固定資産税評価額そのままです。誰も住んでいなくても、傷んでいても、評価額は下がりません。築年数による目減りは固定資産税評価額の中で織り込まれています。

土地は路線価が時価の8割程度の水準に設定されています。売却価格より評価額のほうが低くなることが多い財産です。

参照元:国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例

STEP2|基礎控除を超えるかを確かめる

財産の合計が基礎控除以下なら相続税はかかりません。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

土地6,000万円・建物500万円・預金2,000万円の合計8,500万円を相続する場合で見ます。

相続人 基礎控除 課税される遺産 相続税の総額
子1人 3,600万円 4,900万円 780万円
子2人 4,200万円 4,300万円 545万円
子3人 4,800万円 3,700万円 405万円

表の見方:同じ財産でも相続人が1人か3人かで相続税の総額は780万円と405万円に分かれます。相続人の数が少ないほど税負担は重くなります。

STEP3|税額を出す|土地の評価額ごとの早見表

課税される遺産を法定相続分で分けたものとして税率をかけ、相続人ごとに割り振ります。土地の評価額ごとの相続税の総額です。

土地の評価額 課税価格(建物・預金を含む) 子1人 子2人 子3人
4,000万円 6,500万円 385万円 245万円 170万円
6,000万円 8,500万円 780万円 545万円 405万円
8,000万円 1億500万円 1,370万円 860万円 705万円
1億円 1億2,500万円 1,970万円 1,260万円 1,004.9万円
1億5,000万円 1億7,500万円 3,860万円 2,590万円 1,940万円

計算ロジック:建物500万円・預金2,000万円を一定として、国税庁 No.4155の速算表どおりに算出しています。小規模宅地等の特例を使わない場合の金額です。

この段階の金額は「特例を使わなかった場合」の税額です。空き家では、次に見る小規模宅地等の特例が使えるかどうかで結果が大きく変わります。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

土地や建物を含む不動産全体の相続税の計算は、下記の記事で解説しています。

空き家は相続税が高くなりやすい|特例が使えるかで変わる

空き家が相続税で不利になるのは、土地の評価を最大80%下げる小規模宅地等の特例が使えないことが多いためです。税額は特例の有無で数百万円単位で変わります。

空き家に小規模宅地等の特例が使えるかの判定

この特例で土地の評価を8割下げられるのは、330平方メートルまでの「特定居住用宅地等」に当たる場合です。誰が相続するかで使えるかどうかが決まります。

相続する人 小規模宅地等の特例 判断の分かれ目
配偶者 使える 要件なし。ただし空き家では配偶者がいない
同居していた親族 使える 申告期限まで住み続けて所有し続ける。ただし同居者がいたら空き家ではない
別居の子で持ち家がない(家なき子) 使える 3年以内に自分・配偶者・三親等内の親族が持つ家に住んでいない
別居の子で持ち家がある 使えない 空き家を相続する典型例。土地は満額で評価される

表の見方:空き家とは「亡くなった人が一人で住んでいた家」です。配偶者も同居していた親族もいないので、使える可能性があるのは家なき子だけになります。

重要ポイント:つまり空き家では、持ち家がある子が相続すると土地は満額で評価されます。売却時の3,000万円控除は使えるのに、相続税の特例は使えないという関係です。

家なき子の6つの条件|配偶者名義の家に住んでいても外れる

家なき子として認められる条件は6つあります。見落としやすいのは4つ目で、自分名義の家を持っていなくても要件を外れることがあります。

【家なき子として認められる6つの条件】

  • 日本国籍を持たない制限納税義務者ではないこと
  • 亡くなった人に配偶者がいないこと
  • 亡くなった人が住んでいた家に住んでいた相続人がいないこと
  • 相続開始前3年以内に、自分・配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある法人が持つ家に住んでいないこと
  • 相続開始時に住んでいる家を、過去に一度も所有していないこと
  • その土地を相続税の申告期限まで持ち続けること

上の2つ目と3つ目は「亡くなった人が一人で住んでいた」という意味なので、空き家ならこの2つは自動的に満たします。分かれ目は4つ目と5つ目です。

4つ目は「自分が所有する家」だけではありません。配偶者名義の家や、親・祖父母・兄弟・叔父叔母など三親等内の親族が持つ家に住んでいた場合も対象外です。

借家に住んでいるつもりでも、貸主が親族なら要件を満たしません。相続が起きてから3年間さかのぼって判定されるため、後から動かせません。

5つ目は「いま住んでいる家を過去に所有していたことがない」という条件です。自宅を子や親族に売って住み続けている場合はここで外れます。

参照元:国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例

使える場合と使えない場合で相続税はいくら変わるか

土地の評価額ごとに、特例が使えない場合と使える場合の相続税を並べます。建物500万円・預金2,000万円を相続し、子1人が相続する前提です。

土地の評価額 特例が使えない(持ち家あり) 特例が使える(家なき子) 差
4,000万円 385万円 万円 385万円
6,000万円 780万円 10万円 770万円
8,000万円 1,370万円 50万円 1,320万円
1億円 1,970万円 90万円 1,880万円
1億5,000万円 3,860万円 235万円 3,625万円

表の見方:土地の評価が6,000万円なら相続税は10万円と780万円に分かれ、差は770万円です。土地の評価が大きいほど差は開きます。

重要ポイント:同じ実家を相続しても、持ち家のない子が相続すれば770万円節税できます。兄弟のうち誰が相続するかを決める段階で効いてくる論点です。

計算ロジック:特例が使える場合の土地の評価は6,000万円 × 20% =1,200万円として算出しています。330平方メートルまでという面積の上限を超える場合は、超えた部分は減額されません。

相続前に貸していた空き家は50%減にできる|ただし控除を失う

3年以上前から人に貸していた土地なら、200平方メートルまで評価を50%下げられます。ただし貸すと売却時の3,000万円控除が使えなくなります。

空き家特例は「亡くなる直前に本人が住んでいた家」を対象にしているためです。相続税が下がる代わりに売却時の負担が増えるので、トータルで比べる必要があります。

土地6,000万円(330平方メートル)の実家を9,000万円で売る前提で、3つのケースを比べます。

ケース 土地の評価 相続税 売却時の税 合計
①持ち家がある子が相続(特例なし) 6,000万円 780万円 1,066.5万円 1,846.5万円
②家なき子が相続(330平方メートルまで80%減) 1,200万円 10万円 1,066.5万円 1,076.5万円
③3年以上前から貸していた(200平方メートルまで50%減) 4,181.8万円 416.4万円 1,676万円 2,092.3万円

表の見方:③は相続税が780万円から416.4万円に下がりますが、3,000万円控除を失うため売却時が1,066.5万円から1,676万円に増えます。合計では245.8万円重くなります。

重要ポイント:「空き家は貸して小規模宅地等の特例を使う」という対策は、売る予定があるなら逆効果になります。持ち続けて賃料を得る前提でなければ選べません。

計算ロジック:③の減額は6,000万円 ×(200 ÷ 330)× 50% =1,818.2万円です。貸付事業用宅地等の上限は200平方メートルなので、330平方メートルのうち200平方メートル分だけが対象になります。

相続開始前3年以内に新たに貸し始めた土地は対象外です。相続が近づいてから慌てて貸しても使えません。

持っている間のコスト|放置すると固定資産税が上がる

空き家は持ち続けるだけで固定資産税がかかります。管理を放置して勧告を受けると、住宅用地の特例が外れます。

空き家の状態 住宅用地の特例 土地の固定資産税
通常の空き家 適用される(200平方メートル以下は課税標準が6分の1) 据え置き
管理不全空家等に指定され勧告を受けた 外れる 計算上は6倍まで上がる
特定空家等に指定され勧告を受けた 外れる 計算上は6倍まで上がる

重要ポイント:令和5年の法改正で「管理不全空家等」が新たに勧告の対象になりました。倒壊の危険がある特定空家等になる前の段階でも特例が外れます。

計算ロジック:住宅用地の特例が外れると課税標準が6分の1から1になるため、計算上は6倍です。ただし急な上昇を抑える負担調整措置があるため、実際の税額が1年で6倍になるわけではありません。

固定資産税の負担と、売却したときに使える3,000万円控除の期限を合わせて考えると、動く時期は限られます。次に売却時の特例を見ます。

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売却時の3,000万円控除|仕組みと軽くなる税額

相続した空き家を売ると売却益に所得税と住民税がかかります。一定の要件を満たすと売却益から最大3,000万円を差し引けるのがこの特例です。根拠は租税特別措置法35条3項です。

売却益から差し引く仕組み

売却益は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算します。ここから特別控除を引いた残りに税率をかけるため、控除額がそのまま課税対象から消える形になります。

取得費は亡くなった人が買ったときの値段を引き継ぎます。相続税評価額ではありません。契約書が見つからない場合は売却価格の5%として計算します。

買った値段がわからない実家を9,000万円で売り、仲介手数料などの譲渡費用が300万円かかった場合で見ます。

項目 控除を使わない場合 控除を使う場合
売却価格 9,000万円 9,000万円
取得費(買った値段がわからず売却価格の5%) 450万円 450万円
譲渡費用(仲介手数料など) 300万円 300万円
売却益 8,250万円 8,250万円
特別控除 ― 3,000万円
課税される売却益 8,250万円 5,250万円
所得税・住民税(20.315%) 1,676万円 1,066.5万円
差額 ― 609.5万円の軽減

表の見方:控除額3,000万円に税率20.315%をかけた609.5万円が軽くなる税額の上限です。

計算ロジック:相続した不動産は亡くなった人の所有期間を引き継ぐため、長期譲渡所得の税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)になります。買った値段がわからない前提で取得費を売却価格の5%としています。

参照元:国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期

売却益ごとに軽くなる税額

売却益が3,000万円以下なら税額はゼロになります。実家の売却では大半のケースで負担をゼロにできる強い特例です。売却益ごとの税額を並べます。

売却益 控除なしの税額 3,000万円控除 2,000万円控除 3,000万円控除で軽くなる額
1,500万円 304.7万円 万円 万円 304.7万円
3,000万円 609.5万円 万円 203.2万円 609.5万円
5,000万円 1,015.8万円 406.3万円 609.5万円 609.5万円
8,000万円 1,625.2万円 1,015.8万円 1,218.9万円 609.5万円

表の見方:売却益が3,000万円を超えると、超えた部分に20.315%がかかります。控除が2,000万円に下がると軽減額は406.3万円までになります。

重要ポイント:控除額は相続人1人あたりです。兄弟で共有して相続すればそれぞれが控除を使えるため、誰が相続するかで結果が変わります。

参照元:国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算

令和6年から変わった3つのこと

令和6年1月1日以後の譲渡から、使いやすくなった2点と、不利になった1点があります。売る時期が年をまたぐ場合はどちらのルールになるかを先に確認します。

変わった点 令和5年12月31日までの譲渡 令和6年1月1日以後の譲渡
使える期限 令和5年12月31日まで 令和9年12月31日まで(4年延長)
耐震改修や取り壊しの時期 売る前に終わらせる 売った後、翌年2月15日まででもよい
控除額 相続人の数にかかわらず1人3,000万円 家屋と敷地を相続した人が3人以上なら1人2,000万円

重要ポイント:耐震改修や取り壊しの時期について、条文は誰が工事をするかを限定していません。「譲渡の時から翌年2月15日までに行われたこと」が条件なので、買主が工事をする形でも認められます。

この変更で、売主が解体費用を立て替えずに古家付きの土地としてそのまま売れるようになりました。ただし工事が期限に間に合わないと売主が特例を失うという別の危険が生まれます。

控除額が2,000万円に下がるのは「家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上」のときです。相続人が3人でも、家屋と敷地を取得したのが2人なら3,000万円のままです。

参照元:国土交通省 住宅:空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)

使えるかどうかの10の要件|家・売り方・売る人

この特例の要件は10個あります。1つでも欠けると控除は使えません。家屋の3つ、売り方の1つ、売る人と期限の6つに分けて確認します。

家屋の3つの要件

対象になるのは「亡くなった人が住んでいた家」で、次の3つをすべて満たすものです。どれも登記事項証明書や市区町村の確認書で確かめられる形式的な条件です。

家屋の要件 内容 確認する書類
①昭和56年5月31日以前に建てられたこと 旧耐震基準の建物であること 登記事項証明書
②マンションではないこと 区分所有建物として登記されていないこと 登記事項証明書
③亡くなる直前に、その人以外に住んでいた人がいないこと 一人暮らしだったこと 被相続人居住用家屋等確認書

重要ポイント:マンションは対象外です。区分所有建物として登記されている建物は、築年数が古くてもこの特例を使えません。

③は同居していた家族がいなかったことを意味します。亡くなる直前に子や親族が同居していた家は対象外で、この点は小規模宅地等の特例とちょうど裏返しの関係になります。

老人ホームに入っていて亡くなった場合も、要介護認定を受けていたなど一定の要件を満たせば対象になります。詳しい要件は国税庁のコード3307にまとまっています。

参照元:国税庁 No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋

売り方の要件|3つのうちどれかを選ぶ

売り方は3通りあり、令和6年からは工事を買主に任せる形も選べます。どれを選ぶかで工事の期限と費用の負担者が変わります。

売り方 工事をする人 工事の期限
耐震改修してから売る 売主 売る前まで
取り壊して更地にしてから売る 売主 売る前まで
家屋と敷地をそのまま売る(令和6年から) 売主でも買主でもよい 売った翌年2月15日まで

表の見方:3つ目は令和6年1月1日以後の譲渡だけに使えます。いずれの場合も、相続した時から工事や売却までの間に人に貸したり住んだりしていないことが前提です。

売る人と期限の6つの要件

残りの6つは売る人自身と期限、金額の条件です。④と⑨は競合の解説でもほとんど触れられていない見落としやすい要件です。

【売る人と期限の要件】

  • ④家屋と敷地の両方を相続または遺贈で取得した相続人であること(土地だけ・家屋だけの取得では使えない)
  • ⑤相続した時から売る時まで、事業用・貸付用・居住用に使っていないこと
  • ⑥相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • ⑦売却代金が1億円以下であること
  • ⑧取得費加算の特例など他の特例を受けていないこと
  • ⑨同一の亡くなった人について、この特例を受けたことがないこと
  • ⑩親子・夫婦など特別の関係がある人への売却ではないこと

⑥は「3年以内」ではありません。令和8年5月に相続が起きたなら令和11年12月31日までなので、実際には3年7か月あります。

④は家屋と敷地をセットで相続していることを求めています。母から土地だけを相続し、家屋は別の相続人が取得したというケースでは使えません。

⑨は同じ亡くなった人について1回だけという制限です。実家と別荘の2つを相続しても、この特例を使えるのは一方だけです。

重要ポイント:⑧により、取得費加算の特例とはどちらか一方を選ぶことになります。どちらが有利かは加算できる額が控除額を超えるかで決まります。

10の要件チェックリスト

売却活動を始める前に、この10項目をすべて確認します。1つでも「いいえ」があれば控除は使えません。④と⑨は後から直せないので、遺産分割を決める段階で押さえます。

  • □ ①昭和56年5月31日以前に建てられた家屋である
  • □ ②マンション(区分所有建物)ではない
  • □ ③亡くなる直前に、その人以外に住んでいた人がいない
  • □ ④家屋と敷地の両方を相続または遺贈で取得した
  • □ ⑤相続してから売るまで、貸したり住んだりしていない
  • □ ⑥相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
  • □ ⑦売却代金が1億円以下である
  • □ ⑧取得費加算の特例など他の特例を使っていない
  • □ ⑨同じ亡くなった人について、この特例を使ったことがない
  • □ ⑩親子・夫婦など特別の関係がある人への売却ではない

重要ポイント:⑦の1億円は、他の相続人が売った分や数回に分けて売った分も合算して判定します。次の章で詳しく確認します。

参照元:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

対象から外れるケースと範囲が削られるケース

要件を形式的に満たしていても、建物の使い方や相続後の扱いで対象が削られることがあります。売却活動を始める前に確認しておく論点です。

店舗兼住宅は住居部分だけが対象になる

この特例の対象は「亡くなった人の居住用」の部分です。1階が店舗で2階が住居だった建物では、住居部分に対応する割合だけが控除の対象になります。

建物の使い方 3,000万円控除の対象 考え方
すべて住居 全部が対象 按分は不要
1階が店舗・2階が住居 住居部分だけ 床面積の割合で分ける
一部を人に貸していた 貸していない部分だけ 貸付用の部分は対象外
店舗や倉庫だけ 対象なし 亡くなった人の居住用ではない

表の見方:按分は床面積の割合で行います。店舗部分が半分なら、売却益の半分にしか3,000万円控除を使えません。

重要ポイント:店舗部分には空き家特例が使えませんが、取得費加算の特例なら使える場合があります。併用不可なのは「同じ部分について」だけです。

母屋と離れがあるときは床面積で按分する

敷地に母屋と離れが建っていた場合、対象になる土地は母屋の床面積が占める割合の分だけです。

母屋の床面積が100平方メートル、離れが50平方メートルで、敷地が300平方メートルなら、対象は300 ×(100 ÷ 150)=200平方メートルになります。

計算ロジック:按分するのは「用途上不可分の関係にある2以上の建築物」がある一団の土地の場合です。母屋と物置・離れなどが同じ敷地にある家では確認が必要になります。

対象が削られた分の土地には控除が使えません。離れが大きい家では控除できる額が想定より小さくなります。

参照元:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

完全に対象から外れる6つのケース

次のいずれかに当たると控除は使えません。相続してからの扱いで外れるものが3つあるので、売るまでのあいだ何もしないことが原則になります。

【対象から完全に外れるケース】

  • 生前贈与で建物を先にもらっていた(相続または遺贈で取得したものでないため)
  • 相続してから売るまでに人に貸した(短期間でも「貸付けの用に供した」ことになる)
  • 相続してから売るまでに自分や親族が住んだ
  • 取り壊した後、売るまでに駐車場やアスファルト舗装にした(建物または構築物の敷地に使ったことになる)
  • マンション(区分所有建物として登記されている建物)
  • 親子・夫婦・生計を一にする親族・売却後にその家で同居する親族への売却

見落としやすいのは4つ目です。取り壊して更地にした後、売れるまでのあいだに駐車場として貸したり舗装したりすると要件から外れます。

重要ポイント:空き家のまま置いておくのは固定資産税の面では不利ですが、この特例の要件としては「何にも使わない」ことが正解です。固定資産税の負担と控除額を比べて判断します。

生前贈与で建物をもらっていた場合も対象外です。親が元気なうちに実家の名義を子に移していたケースがこれに当たります。

取得費加算の特例より対象になる人が狭い

この特例を使えるのは「相続または遺贈により家屋と敷地を取得した相続人(包括受遺者を含む)」です。相続人でも包括受遺者でもない人は使えません。

取得費加算の特例は「相続または遺贈による財産の取得をした個人」が対象なので、相続人以外でも使えます。2つの特例で対象になる人の範囲が違います。

財産の受け取り方 空き家の3,000万円控除 取得費加算の特例
法定相続人として相続した 使える 使える
遺言で全財産の何割かを受け取った(包括受遺者) 使える 使える
遺言で実家だけを受け取った相続人以外の人(特定受遺者) 使えない 使える
相続放棄したあとに実家だけを遺言で受け取った 使えない 使える

表の見方:相続放棄をすると相続人ではなくなるため、その後に実家だけを遺言で受け取っても空き家特例は使えません。取得費加算のほうは使えます。

重要ポイント:2つの特例は「どちらか一方を選ぶ」関係ですが、対象になる人の範囲が違うため、そもそも空き家特例が使えない立場なら取得費加算を選ぶことになります。

家屋と敷地の両方を取得していることも変わらず必要です。遺言で土地だけを受け取った場合は、相続人であっても空き家特例は使えません。

1億円以下の判定|合算のしかたと超えたときの手続き

売却代金が1億円を超えると控除は使えません。この1億円は契約書に書かれた金額だけで判定するわけではありません。合算するものが4つあります。

判定に入れるものと入れないもの

判定に使うのは「売却代金」で、売却益ではありません。取得費や譲渡費用を引く前の金額なので、手取りが1億円以下でも足りません。

判定に入れるもの 入れるか 注意点
家屋と敷地の売却代金 入れる 本体の代金
固定資産税の精算金 入れる 買主から受け取る日割り分
買主や業者が負担した取壊し費用 入れる(足し戻す) 値引きの形にしても判定では戻される
他の相続人が売った分 入れる 同じ家屋・敷地を分けて売った場合
数回に分けて売った分 入れる 売った日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
譲渡費用(仲介手数料など) 入れない 売却代金から引かない

表の見方:下の3つが見落としやすい項目です。自分が受け取った金額だけを見て1億円以下だと判断すると外します。

重要ポイント:譲渡費用は引きません。仲介手数料を払った後の手取りが1億円以下でも、売却代金が1億円を超えていれば要件を満たしません。

買主に解体させて値引きすると判定で戻される

令和6年から買主に取り壊しを任せられるようになりましたが、買主が負担した取壊し費用は売却代金に足し戻して判定します。

物件価格1億200万円の土地を、取壊し費用500万円を買主負担にして9,700万円で売った場合を見ます。

項目 見かけの金額 判定に使う金額
物件の価格 1億200万円 1億200万円
買主負担の取壊し費用(値引き) △500万円 足し戻す
売買契約書に書かれた売却代金 9,700万円 ―
1億円判定に使う金額 9,700万円(1億円以下に見える) 1億200万円(1億円超で要件アウト)

表の見方:契約書の金額は9,700万円で1億円以下に見えますが、判定額は1億200万円なので要件を満たしません。

重要ポイント:1億円に近い物件では、買主に解体させる形を選ぶとその解体費用のぶんだけ判定額が上がります。価格の決め方の段階で税理士に確認しておく必要があります。

計算ロジック:取壊し費用を値引きの形にしても、経済的には買主がその分を負担して物件を取得しているため、売却代金として扱われます。固定資産税の精算金も同じ考え方で加算します。

他の相続人が売った分・分けて売った分も合算する

同じ家屋と敷地を兄弟で分けて売った場合、全員の売却代金を合わせて1億円以下かを判定します。

自分の持分の売却代金が5,000万円でも、兄弟の分と合わせて1億円を超えれば誰も控除を使えません。

土地を数回に分けて売った場合も同じです。合算する期間は「相続の時から、この特例を使って売った日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」です。

重要ポイント:先に売った部分で控除を使い、後から残りを売って合計が1億円を超えると、先に使った控除もさかのぼって取り消されます。

超えたときは4ヶ月以内に修正申告する

あとから合計が1億円を超えたときは、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告と納税をします。

1年目
実家の敷地の一部を6,000万円で売り、3,000万円控除を使って確定申告

⬇

3年目
残りの敷地を5,000万円で売る。合計1億1,000万円で1億円を超える

⬇

売却から4ヶ月以内
1年目の申告について修正申告と納税。3,000万円控除が取り消される

重要ポイント:この修正申告の期限は通常の期限とは別に定められています。控除額3,000万円が取り消されると税額は609.5万円増えます。

残りを売る予定があるなら、最初の売却の段階で合計額を見積もっておきます。一部だけを売って様子を見る進め方は、この特例と相性がよくありません。

参照元:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
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誰が相続するかで控除額が変わる|共有と売って分ける方法

この控除は家屋と敷地を相続した人1人あたりに付きます。兄弟のうち1人が相続するか、共有で相続するかで税額が変わります。

共有で相続すると控除を人数分使える

売却益は持分に応じて分けられる一方、控除額は1人ずつ使えます。そのため家屋と敷地を相続する人数が増えるほど税額は下がります。

買った値段がわからない実家を9,000万円で売り、譲渡費用が300万円かかった場合で比べます。取得費は売却価格の5%として、売却益は8,250万円になります。

家屋と敷地を相続する人数 1人あたりの控除額 1人あたりの売却益 1人あたり課税される額 税額の合計
1人 3,000万円 8,250万円 5,250万円 1,066.5万円
2人 3,000万円 4,125万円 1,125万円 457.1万円
3人 2,000万円 2,750万円 750万円 457.1万円
4人 2,000万円 2,062.5万円 62.5万円 50.8万円

表の見方:単独で相続すると1,066.5万円、2人で共有すると457.1万円です。分け方を変えるだけで609.4万円変わります。

重要ポイント:2人と3人で税額が同じ457.1万円になっています。3人以上だと控除額が2,000万円に下がるため、3人にしても2人と変わらないという関係です。

計算ロジック:売却益8,250万円を人数で割り、1人あたりの控除額(2人以下は3,000万円・3人以上は2,000万円)を引いた残りに20.315%をかけて人数分を合計しています。4人なら50.8万円まで下がります。

ただし共有には売却時に全員の同意が必要になるという別の負担があります。税額だけで決めると、あとから売れなくなることがあります。

売ってお金で分けるときは協議書の書き方に注意する

実家を売って代金を兄弟で分ける方法を換価分割といいます。この方法では遺産分割協議書の書き方によって控除を使える人数が変わります。

【換価分割の協議書の書き方で使える人が減る】

  • 危ない書き方:「長男が実家を相続し、売却して代金を兄弟で分ける」→ 相続したのが長男だけと読めるため、控除を使えるのは長男1人
  • 安全な書き方:「実家を長男・次男が各2分の1の割合で共同相続し、これを売却して代金を持分に応じて分ける」→ 2人とも控除を使える
  • 登記も持分どおりに入れる。長男の単独名義にすると協議書と登記が食い違う

協議書は相続税の申告でも売却の確定申告でも使う書類です。作り直しはできないので、書く段階で持分を明記します。

「長男が相続して売り、代金を分ける」という書き方だと、相続したのは長男だけと読めます。この場合、控除を使えるのは長男1人分です。

共同で相続したうえで換価分割したことを明記すれば、それぞれが家屋と敷地を相続したことになるため、全員が控除を使えます。登記も協議書どおりの持分で入れておきます。

重要ポイント:売却代金を分ける割合と、登記に入れる持分を協議書の段階でそろえておきます。後から書き直しても相続時点の取得は変わりません。

代わりにお金を渡して分けると控除は1人分になる

長男が実家を単独で相続し、次男に現金を渡す方法もあります。この場合は家屋と敷地を相続したのが長男だけなので控除も1人分です。

前の表で見たとおり、単独相続と2人共有では税額が609.4万円違います。この差を承知したうえで分け方を選ぶことになります。

それでも実家を手元に残したい理由がある場合や、兄弟の同意が取れず共有を避けたい場合は、単独相続を選ぶ判断もありえます。税額だけで決める話ではありません。

解体費用は控除できるのか|相続税と売却時で答えが違う

解体費用を税金から差し引けるかは、相続税と売却時の所得税で答えが逆になります。まとめて「控除できる」「できない」と説明されていることが多い論点です。

相続税では差し引けない・売却時なら差し引ける

解体費用は数十万円から数百万円かかる大きな支出です。どの税金で差し引けるのかを先に整理します。

どの税金か 解体費用を差し引けるか 根拠
相続税 差し引けない 控除できる債務は「亡くなったときに現に存した被相続人の債務」だけ
売却時の所得税・住民税 差し引ける 土地を売るために建物を取り壊した費用は譲渡費用になる
固定資産税 差し引く対象ではない 解体すると住宅用地の特例が外れて上がる

表の見方:相続税では1円も差し引けません。一方で売るときには譲渡費用として差し引けるので、同じ支出でもどの税金の話かで結論が変わります。

相続税から差し引けるのは「亡くなったときに現に存した被相続人の債務」です。解体費用は相続した後に相続人が決めて負う費用なので、この条件を満たしません。

葬式費用は債務ではないものの例外的に差し引けますが、解体費用はその例外にも入っていません。相続税の申告で解体費用を差し引くと過少申告になります。

参照元:国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務

売却時は取壊し費用と建物の損失額を差し引ける

国税庁は譲渡費用の例として「土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額」を挙げています。

取壊し費用そのものだけでなく、取り壊した建物の未償却の残高に相当する損失額も差し引けます。この損失額のほうは見落とされがちな部分です。

解体費用200万円を譲渡費用に入れた場合の効果を、3,000万円控除を使ってなお売却益が残る2つのケースで見ます。

解体前の売却益 解体費用を入れない税額 解体費用を入れた税額 軽くなる額
5,000万円 406.3万円 365.7万円 40.6万円
8,000万円 1,015.8万円 975.1万円 40.6万円

表の見方:3,000万円控除を使ってなお売却益が残る場合、解体費用200万円を入れると税額は40.6万円軽くなります。

重要ポイント:3,000万円控除で売却益がゼロになるケースでは、解体費用を入れても税額は変わりません。控除を使い切っていない場合は解体費用の節税効果は出ません。

計算ロジック:売却益から3,000万円を控除した残りに20.315%をかけています。解体費用は売却益の計算段階で差し引くため、控除の前に効きます。

参照元:国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの

解体する時期で結果がどう変わるか

同じ解体でも、相続の前か後か、売る前か後かで3つの税金への影響が変わります。解体を決める前にどの時期に行うかを確認しておく必要があります。

解体した時期 相続税 3,000万円控除 固定資産税
相続が起きる前に解体していた 建物の評価はゼロ・土地は更地評価 家屋がないので使えない 住宅用地の特例が外れる
相続してから売る前に解体した 建物の評価はそのまま計上 使える 解体した年の翌年から特例が外れる
売った後、翌年2月15日までに解体した 建物の評価はそのまま計上 使える(令和6年から) 売却済みなので負担しない

表の見方:相続が起きる前に解体していると、家屋がないため3,000万円控除は使えません。親が生きているうちに実家を解体するのは、この特例を失う選択です。

重要ポイント:相続してから解体すると、相続税では建物の評価が計上されたままです。解体費用も相続税では引けないので、相続税の負担は解体しても軽くなりません。

固定資産税は解体した翌年から住宅用地の特例が外れます。解体から売却までの期間が長いと、その間の固定資産税が重くなります。

令和6年からは売った後に解体する形も選べるようになりました。固定資産税の負担を避けながら控除を使う道ができたことになります。次の章でこの選び方を詳しく見ます。

耐震改修か取り壊しか|買主に任せる場合と手続き

売り方は3通りあり、どれを選ぶかで費用の負担者と工事の期限が変わります。令和6年から買主に任せる形が加わり、選択肢が広がりました。

3つの売り方の比較

3つの違いは工事を誰がいつ行うかです。それによって売主の資金負担と、期限に間に合わないリスクの置き場所が変わります。

売り方 費用を負担する人 工事の期限 向くケース
耐震改修してから売る 売主 売る前まで 改修費が安く、建物に価値があるとき
取り壊して更地にしてから売る 売主 売る前まで 更地のほうが売れやすいとき
そのまま売って買主に任せる 買主 売った翌年2月15日まで 解体費を立て替えたくないとき

表の見方:買主に任せる形は解体費を立て替えずに済みますが、工事が期限に間に合うかどうかを買主に委ねることになります。

重要ポイント:買主が負担した取壊し費用は1億円判定の売却代金に足し戻されます。1億円に近い物件では、この形を選ぶと要件を外れることがあります。

買主が期限に間に合わないと売主が控除を失う

買主に工事を任せた場合、期限までに終わらなかったときに特例を失うのは売主です。自分ではどうにもできない事情で控除が消えます。

【買主に任せるときに売買契約書へ入れる3つの条項】

  • 工事の実行義務:「買主は譲渡の年の翌年2月15日までに家屋を取り壊す(または耐震改修する)」と明記する
  • 完了の報告と証明書の提出:工事完了後すぐに売主へ報告し、閉鎖事項証明書や工事の領収書を渡すことを約束させる
  • 損害賠償の取り決め:期限に間に合わず特例が使えなくなった場合、増えた税額を賠償する条項を入れる

期限に1日でも遅れると特例は使えません。買主が約束を守らなかったせいで売主が控除を失う構造なので、契約書上の期限は2月15日より前に余裕を持たせて設定します。

年末に売買契約を結ぶ場合は、引き渡しを年明けにする方法もあります。売却する年が1年後ろにずれるため、工事の期限も1年延びます。

ただし相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までという売却の期限は変わりません。両方の期限を並べて判断する必要があります。

重要ポイント:国土交通省は「特約を締結していない場合も確認書の発行は可能」としています。ただし特約がないと工事の実行を求める根拠がなくなるため、契約書に条項を入れておくほうが安全です。

参照元:国土交通省 住宅:空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)

手続きの流れ|確認書は市区町村に申請する

この特例は確定申告で使います。その前に市区町村から確認書をもらう必要があります。税務署ではなく市区町村の窓口です。

売却前
市区町村へ被相続人居住用家屋等確認申請書を提出する。亡くなった人が一人で住んでいたことなどを確認してもらう

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売却
売買契約を結んで引き渡す。買主に工事を任せる場合は契約書に3つの条項を入れる

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翌年2月15日まで
耐震改修または取り壊しを完了させる。この日を過ぎると使えない

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翌年2月16日〜3月15日
確定申告。譲渡所得の内訳書・確認書・登記事項証明書などを添えて提出する

重要ポイント:確認書の交付には時間がかかります。売却してから申請すると確定申告に間に合わないことがあるため、売却の準備と並行して申請を進めます。

必要書類の一覧

確定申告に添える書類は5種類です。売り方によって耐震基準適合証明書が必要かどうかが変わります。確認書だけは市区町村へ別に申請します。

書類 入手先 確認される内容
譲渡所得の内訳書(土地・建物用) 国税庁のホームページ・税務署 売却益の計算
被相続人居住用家屋等確認書 物件がある市区町村 一人暮らしだったこと・貸したり住んだりしていないこと・相続人の数
登記事項証明書など 法務局 相続で取得したこと・昭和56年5月31日以前の建築・マンションでないこと
耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し 建築士など 耐震改修して売る場合。調査は売却日前2年以内のもの
売買契約書の写しなど 手元保管 売却代金が1億円以下であること

重要ポイント:確認書には相続人の数も記載されます。令和6年1月1日以後の譲渡では、この人数で控除額が3,000万円か2,000万円か決まります。

特例を使って税額がゼロになる場合でも確定申告は必要です。申告しないと控除そのものが使えません。

参照元:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
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空き家の相続税の相談は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

空き家は相続税と売却時の所得税が絡み合い、しかも遺産分割の段階で結果が決まってしまう財産です。両方を扱える事務所でないと判断できません。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

この記事で見てきた判断は、どれも「売る前」「分ける前」でないと選び直せません。申告を代行するだけの依頼では間に合いません。

【相続税の対応実績がある税理士が必要な理由】

  • 相続税と譲渡所得の両方をまたぐ判断が必要(小規模宅地等の特例と3,000万円控除は逆の要件を求める)
  • 誰が相続するかで税額が変わる(家なき子に当たるか・共有にするかを分割前に決める必要がある)
  • 1億円判定に足し戻すものを知っているか(買主負担の取壊し費用・他の相続人の売却分・分割売却分)
  • 解体費用の扱いを税目ごとに分けられるか(相続税では引けず、譲渡費用では引ける)
  • 取得費加算の特例との有利判定を数値で出せるか

特に大きいのは誰が相続するかの判断です。持ち家がある子が実家を相続すると小規模宅地等の特例を使えず、土地6,000万円の実家なら相続税が770万円変わります。

この判断は遺産分割協議が終わる前にしかできません。相続税の申告を頼む段階では、すでに決まってしまっていることが多い論点です。

見積りを比べるときの3つの確認事項

複数の事務所に同じことを聞くと、回答の粒度そのものが実務力の差として見えます。

確認すること A事務所の回答 B事務所の回答 見えること
誰が相続すると得か 「相続税の申告はこちらで進めます」 家なき子に当たるかを確認し、共有にした場合の税額まで試算 分割前に相談する価値があるか
1億円判定の確認 「売却代金が1億円以下なら大丈夫です」 買主負担の解体費と他の相続人の売却分を足し戻して判定 足し戻す項目を知っているか
解体費用の扱い 「解体費は経費になります」 相続税では引けず譲渡費用では引けると分けて説明 税目を分けて答えられるか

重要ポイント:「売却代金が1億円以下なら大丈夫」と答える事務所は、買主負担の解体費や他の相続人の売却分を足し戻すことを織り込んでいません。足し戻す項目を挙げられるかで判別できます。

重要ポイント:解体費用を「経費になります」とまとめて答える事務所も注意が必要です。相続税では引けず譲渡費用では引けるという違いを分けて説明できるかを確かめます。

相談しないまま進めるリスク

この特例は取り返しがつかない場面が多い制度です。分け方・協議書の書き方・売却価格の決め方はいずれも後から直せません。

【相談しないまま進めるリスク】

  • 持ち家がある子が相続して小規模宅地等の特例を失う(土地6,000万円なら相続税が770万円変わる)
  • 単独で相続して控除を1人分しか使えない(2人共有なら609.4万円下がるケースがある)
  • 換価分割の協議書の書き方で控除を使える人が減る
  • 1億円判定を見誤って控除がまるごと取り消される(3,000万円控除の取り消しで税額は609.5万円増える)
  • 買主が期限に間に合わず控除を失う(契約書に条項がないと賠償も求められない)
  • 解体費用を相続税から引いて過少申告になる

金額の大きさは相続税側のほうが上です。小規模宅地等の特例を失う影響は数百万円規模になり、3,000万円控除の取り消しも609.5万円の増税になります。

複数の事務所から見積りを取って計算根拠を比べれば、これらの取りこぼしは売る前に見つけられます。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

一括相談・見積りは4つのステップで進みます。比較するのは報酬額だけでなく提案内容の質です。

STEP1
相続の概要を整理する
亡くなった人の資産の内容と概算額、相続人の構成、実家の建築年・面積・想定売却価格、相続税の申告が済んでいるかを書き出します。相続する人に持ち家があるかどうかも確認します。

⬇

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する
希望内容として「相続税申告」「空き家売却の確定申告」「3,000万円控除の適用判定」を明記し、相続税の対応実績がある3〜5の税理士事務所へ同時に打診します。不動産の所在地と広さ、建築年も記載します。財産の種類と相続人の人数はできるだけ正確に伝えると見積りの精度が上がります。フォームの記入は5分程度です。

⬇

STEP3
見積りと初回相談を受ける
各事務所から提案内容・試算した税額・報酬額が記載された見積りが届きます。気になる事務所と初回相談を行い、誰が相続すると得かの試算と1億円判定を実際に出してもらいます。

⬇

STEP4
税理士を選定して正式に依頼する
提案内容の質・説明の丁寧さ・報酬の納得性で選びます。相続税の申告が必要な場合は相続開始から7ヶ月以内に決めます。

重要ポイント:遺産分割がまだ決まっていない段階で相談するのが最も効果が大きいです。誰が相続するかから提案してもらえるためです。相続税の申告期限の10ヶ月から逆算して動きます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続した空き家がマンションでも3,000万円控除は使えますか。

使えません。区分所有建物として登記されている建物は対象外と定められています。築年数が昭和56年5月31日以前であっても、マンションでは適用できません。

ただし取得費加算の特例は建物の種類を問わないため、マンションを相続して売る場合はそちらを検討することになります。

Q2. 解体費用は相続税から控除できますか。

できません。相続税から差し引ける債務は「亡くなったときに現に存した被相続人の債務」に限られ、相続した後に相続人が負う解体費用は含まれないためです。

一方で、土地を売るために建物を取り壊した場合の取壊し費用と建物の損失額は譲渡費用として売却益から差し引けます。どの税金の話かで結論が変わります。

Q3. 買主に解体してもらう契約でも特例は使えますか。

令和6年1月1日以後の譲渡なら使えます。譲渡の時から翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しが行われていれば、工事をしたのが買主でも認められます。

ただし期限に間に合わなかったときに特例を失うのは売主です。売買契約書に工事の実行義務・完了報告・損害賠償の3つの条項を入れておきます。買主が負担した取壊し費用は1億円判定の売却代金に足し戻される点にも注意が必要です。

Q4. 兄弟で共有にすると控除額はどうなりますか。

控除額は家屋と敷地を相続した人1人あたりに付くため、共有にすると人数分使えます。売却益8,250万円のケースでは、単独相続で1,066.5万円、2人共有で457.1万円になります。

ただし令和6年1月1日以後の譲渡では、家屋と敷地を取得した相続人が3人以上だと1人あたりの控除額が2,000万円に下がります。共有には売却時に全員の同意が必要になるという負担もあります。

Q5. 売却代金が1億円を少し超えそうです。何か方法はありますか。

1億円を超えると控除は使えません。判定には固定資産税の精算金や買主が負担した取壊し費用も加算されるため、値引きや費用の負担を買主に移す方法では下がりません。

他の相続人が売った分や数回に分けて売った分も合算されます。あとから合計が1億円を超えたときは、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告と納税が必要になります。

まとめ|空き家は「誰が相続するか」で結果が決まる

空き家の相続税は土地を路線価、建物を固定資産税評価額で評価して計算します。空き家だから安くなる仕組みはなく、むしろ小規模宅地等の特例が使えないことで高くなりやすい財産です。

  • 相続税は土地は路線価・建物は固定資産税評価額で評価する。空き家でも建物の評価は下がらない
  • 持ち家がある子が相続すると小規模宅地等の特例が使えない。土地6,000万円の実家なら相続税は780万円、持ち家がない子(家なき子)なら10万円
  • 売却時の3,000万円控除は要件が10個ある。家屋と敷地の両方を相続していること・同一の亡くなった人について1回限りは見落としやすい
  • 1億円判定には固定資産税の精算金・買主負担の取壊し費用・他の相続人の売却分・分割売却分を合算する。あとから超えたら4ヶ月以内に修正申告
  • 控除額は相続した人1人あたり。共有にすると人数分使えるが、3人以上だと1人2,000万円に下がる
  • 解体費用は相続税では差し引けず、売却時の譲渡費用では差し引ける
  • 令和6年から売却後に買主が工事する形も選べる。ただし間に合わないと売主が控除を失うので契約書に条項を入れる

今すぐ取るべき行動

  • 遺産分割をこれから決める場合:相続する予定の人に持ち家があるかを確認し、家なき子に当たる人がいれば実家をその人に寄せられないか検討する
  • 兄弟で分ける場合:共有にして控除を人数分使えないかを試算する。売って分けるなら協議書に「共同相続して換価分割」と持分を明記する
  • 実家の建築年を確認する場合:登記事項証明書で昭和56年5月31日以前かどうかと、マンション(区分所有建物)でないことを確かめる
  • 売却価格が1億円に近い場合:固定資産税の精算金と買主負担の解体費を足した金額で判定し直す
  • 解体を検討している場合:相続税では差し引けないことを前提に、売却前に解体するか買主に任せるかを比べる
  • 売却の期限を確認する場合:相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日を計算し、市区町村への確認書の申請を売却準備と並行して始める

※本記事は2026年9月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制改正や個別の事情により取り扱いが異なる場合があります。具体的な手続きについては税理士または税務署にご相談ください。

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