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仮想通貨(暗号資産)の相続税|評価方法・二重課税の問題・手続き手順を解説

仮想通貨_相続税

仮想通貨(暗号資産)を保有している人が亡くなった場合、その仮想通貨は相続税の課税対象になります。ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産は「財産的価値のあるもの」として扱われるため、現金や不動産と同様に相続財産に計上しなければなりません。

しかも、相続した仮想通貨を後から売却した場合には所得税まで加算され、合計税率が110%を超えるケースも起きています。

この記事では、仮想通貨の相続税評価額の算出方法から計算手順、相続税と所得税の二重課税が生じる仕組み、コールドウォレットの引き継ぎを含む手続きフロー、申告漏れが多いパターン、生前にできる対策まで、順序立てて解説します。

申告期限(相続発生を知った翌日から10か月)は待ってくれないため、早めに全体像を把握しておくことが重要です。

▼ この記事の3行まとめ

  • 仮想通貨の相続税評価額は「相続発生日の取引所価格(売却価格)」で算出し、相続税と売却時の所得税が重なる二重課税が発生するケースがある
  • コールドウォレット(ハードウェアウォレット)は秘密鍵がなければ技術的にアクセスできず、財産の把握と引き継ぎ準備が生前対策の最重要ポイントになる
  • 仮想通貨の相続は評価・申告・手続きのすべてで専門知識が必要なため、相続税専門かつ暗号資産に詳しい税理士への早期相談が不可欠

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仮想通貨(暗号資産)も相続税の対象になる

仮想通貨は目に見えないデジタル資産ですが、財産的価値を持つものとして相続税の課税対象になります。現金や不動産と同様に「正味の相続財産」に計上され、基礎控除を超える部分に相続税が課されます。ただし、仮想通貨には通常の財産にはない特有のリスクと複雑さがあります。

相続税の対象になる仮想通貨の種類

相続税の対象になる仮想通貨は、財産的価値があると認められるすべての暗号資産です。国内の主要取引所で売買されているものから、海外取引所でのみ扱われているもの、さらにはNFTや独自トークンまで広く対象になります。

種類具体例評価方法相続税上の取り扱い
主要仮想通貨ビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)・リップル(XRP)相続発生日の取引所価格通常通り課税対象
アルトコインソラナ・ポルカドットなど相続発生日の取引所価格(活発な市場がある場合)通常通り課税対象
NFT(非代替性トークン)デジタルアート・ゲームアイテム個別評価(売買実例・精通者意見)課税対象(評価が複雑)
DeFiポジションステーキング報酬・流動性提供相続発生日時点の価値課税対象(把握困難)
秘密鍵不明の仮想通貨アクセス不可能な状態の仮想通貨原則として通常通り評価原則課税(交渉の余地あり)

仮想通貨は国内取引所だけでなく、海外取引所や自己管理ウォレットに分散して保有されていることが多く、財産の全容を把握することが申告の第一関門になります。

取引所管理(ホットウォレット)とプライベートウォレット(コールドウォレット)の違い

仮想通貨は保管場所によって相続手続きの難易度が大きく変わります。国内の主要取引所(コインチェック・GMOコイン・ビットフライヤーなど)で管理されている仮想通貨は「ホットウォレット」と呼ばれ、取引所に死亡届を出すことで手続きが進みます。

一方、インターネットに接続されていないハードウェアウォレット(LedgerやTrezorなど)に自己管理している仮想通貨は「コールドウォレット」といい、秘密鍵(プライベートキー)またはシードフレーズ(12〜24の英単語)がなければ技術的にアクセスできません。

種類具体例手続きの難易度紛失リスク
ホットウォレット(取引所管理)コインチェック・ビットフライヤー等低(取引所に連絡)低(取引所が管理)
ソフトウェアウォレットMetaMask・Phantom等中(シードフレーズが必要)
コールドウォレット(ハードウェア)Ledger・Trezor等高(秘密鍵+PINコードが必要)高(秘密鍵を失うと永久に取得不可)
ペーパーウォレット秘密鍵を紙に印刷したもの中〜高高(紙が失われると取得不可)

コールドウォレットの秘密鍵が失われると、仮想通貨はブロックチェーン上に存在し続けていても永久にアクセスできなくなります。生前に秘密鍵・シードフレーズを安全な場所に記録し、相続人に伝える準備が必要です。

「税率110%超」が起きる仕組みの全体像

仮想通貨の相続で最も深刻な問題は、相続税と売却時の所得税が重なり合う「二重課税」です。これが「税率110%超」といわれる現象を生む原因です。

仕組みを簡単に説明します。被相続人が100万円で購入した仮想通貨が、相続時に1,000万円になっていた場合を考えます。まず相続税は1,000万円の評価額に対して課税されます。次に相続人がその仮想通貨を1,200万円で売却すると、所得税は「売却価格 − 被相続人の取得価額(100万円)」に対して課税されます。

課税のタイミング課税対象税率納税者
相続時相続発生日の時価(1,000万円)10〜55%(相続税)相続人
売却時売却価格 − 被相続人の取得価額(100万円)最大55%(所得税・住民税)相続人

株式や不動産であれば「取得費加算の特例」(相続税申告期限から3年以内の売却で、支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度)が使えますが、仮想通貨は雑所得として扱われるためこの特例が適用されません。詳細は後述の「二重課税」セクションで解説します。

仮想通貨の相続税評価額の算出方法

仮想通貨の相続税評価額は、財産の種類・市場の活発さ・アクセス可能かどうかによって算出方法が異なります。まず「活発な市場がある仮想通貨」の評価を理解し、それ以外のケースへの対応を確認しましょう。

活発な市場がある仮想通貨の評価|相続発生日の取引所価格

ビットコイン・イーサリアム・リップルなど、国内外の主要取引所で活発に売買されている仮想通貨は、「相続発生日(被相続人が亡くなった日)の取引所の最終公表価格(売却価格)」で評価します。

評価額 = 相続発生日の取引所の最終公表価格 × 保有数量

参照元:国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)

確認する価格使用する数値取得先
相続発生日の最終公表価格取引所が公表する売却価格(Bid価格)利用していた取引所のウェブサイト・残高証明書
相続発生日に公表がない場合前後で最も近い日の最終公表価格同上
複数の取引所で保有している場合各取引所の価格をそれぞれ確認各取引所

計算例:ビットコイン2.5枚を保有。相続発生日の取引所の最終公表価格が1枚600万円の場合

  • 評価額 = 600万円 × 2.5枚 = 1,500万円

仮想通貨の価格は24時間変動するため、「相続発生日の最終公表価格」を正確に記録することが重要です。取引所から「残高証明書」と「相続発生日の換算レート証明書」を取得して申告書に添付してください。

活発な市場がない仮想通貨・NFTの評価

マイナーなアルトコインやNFTのように、売買実績が少ない・価格が不安定な仮想通貨は「活発な市場が存在しない」と判断され、個別評価になります。個別評価では以下の基準を参考に評価額を算出します。

  • 売買実例価額:相続発生日前後で実際に取引された価格
  • 精通者意見価格:暗号資産の専門家による鑑定評価
  • 原価方式:取得価額を基礎とした評価

NFTの場合は、作品の希少性・発行枚数・過去の落札価格・関連プロジェクトの状況などを総合的に勘案して評価します。NFTは市場価格が存在しないケースも多く、評価額の算定に専門的な判断が必要です。

マイナーコインやNFTの評価は客観的な基準が少なく、税務調査で評価額を巡って問題になるケースがあります。評価方法の根拠を文書化しておくことが重要です。

秘密鍵が不明・アクセスできない仮想通貨の評価

コールドウォレットの秘密鍵が見つからない・パスワードを忘れた等の理由で仮想通貨にアクセスできない場合、相続税の取り扱いはどうなるのかが多くの方の疑問です。

原則として、仮想通貨がブロックチェーン上に存在している限り、アクセスできなくても相続税は課税されます。これは国税庁の公式見解です。

ただし、国会答弁では「客観的に換価不可能であることが明らかな場合には評価額をゼロとすることもあり得る」という見解が示されています。現実的には専門家を通じた税務当局との交渉が必要であり、一律に評価ゼロが認められるわけではありません。

状況相続税の取り扱い対応策
秘密鍵紛失・完全アクセス不可原則課税(評価ゼロは個別判断)専門家と相談のうえ税務当局と交渉
パスワード不明(推測可能)課税対象アクセス回復を試みながら申告
取引所が倒産・閉鎖回収不能な場合は評価ゼロの可能性あり専門家と相談

秘密鍵不明の仮想通貨は「存在するが使えない」という最悪の状況を生みます。生前対策として、秘密鍵・シードフレーズを安全な場所に記録し、信頼できる人物に伝えておくことが最も重要な対策です。

相続税計算3ステップ|仮想通貨がある場合

仮想通貨の評価額が確定したら、相続税全体の計算に進みます。基本的な手順は他の財産と変わりませんが、仮想通貨特有の注意点があります。3つのステップで確認しましょう。

STEP1|保有する仮想通貨の全財産を把握する

相続税申告の前提として、被相続人が保有していた仮想通貨をすべて把握する必要があります。これが仮想通貨相続で最も難しい作業です。見落としがあると申告漏れになります。

調査の場所調査の方法主な見落としリスク
国内取引所各取引所に死亡連絡・残高照会複数取引所への分散保有
海外取引所メール履歴・アプリ検索申告漏れの最大原因
ハードウェアウォレットLedger・Trezor等の実物を探す秘密鍵と一緒に保管されていないケース
スマートフォン仮想通貨アプリを確認MetaMask等のソフトウェアウォレット
メール・通知取引所からの入出金通知メールを検索古いメールが削除されている
クレジットカード明細取引所への入金履歴を確認入金はあるが残高不明なケース

仮想通貨の財産調査は、被相続人のスマートフォン・PC・メールへのアクセス権限が必要です。パスワードが不明な場合は早急に専門家に相談してください。

STEP2|基礎控除を差し引いて課税遺産総額を求める

仮想通貨を含むすべての相続財産の合計から基礎控除を差し引きます。

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

法定相続人の数基礎控除額課税される仮想通貨評価額の目安
1人3,600万円仮想通貨+他財産の合計が3,600万円超で課税
2人4,200万円同4,200万円超で課税
3人4,800万円同4,800万円超で課税
4人5,400万円同5,400万円超で課税

仮想通貨は価格変動が大きいため、相続発生日の価格によっては基礎控除を大きく超えることがあります。仮想通貨の価格が高騰している時期に相続が発生した場合、基礎控除以下と思っていた財産が課税対象になるケースがあるため、必ず正確な評価額を確認することが必要です。

STEP3|税率を掛けて相続税額を算出する

課税遺産総額を法定相続分で按分し、速算表の税率を掛けて相続税の総額を計算します。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

法定相続分に応じた取得額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

相続税の申告期限は相続発生を知った翌日から10か月以内です。仮想通貨の財産調査に時間がかかる場合でも、この期限を守る必要があります。

ケース別シミュレーション5パターン|仮想通貨の相続税額を試算

仮想通貨の保有状況・家族構成・他の財産の有無によって相続税額は大きく変わります。5つのパターンで実際の税額を試算します。なお、試算は概算であり、相続税の特例・控除は考慮していません。

パターン1|ビットコイン500万円のみを相続したケース

前提条件

  • 被相続人:父
  • 相続人:子1人
  • 仮想通貨:ビットコイン(相続発生日の評価額500万円)
  • 他の財産:預貯金2,500万円 / 合計3,000万円

計算の流れ

  • 相続財産の総額:3,000万円
  • 基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 1人 = 3,600万円
  • 課税遺産総額:3,000万円 − 3,600万円 = 0円(課税なし)

財産総額が基礎控除以下のため相続税はかかりません。ただし、その後子がビットコインを売却した場合、売却益に所得税が課されます。被相続人の取得価額が100万円だった場合、子が600万円で売却すると「600万円 − 100万円 = 500万円」が雑所得として課税対象になります。

パターン2|複数の仮想通貨(合計2,000万円)を相続したケース

前提条件

  • 相続人:子2人
  • 仮想通貨:ビットコイン1,200万円 + イーサリアム800万円 = 合計2,000万円
  • 他の財産:預貯金3,000万円 / 合計5,000万円

計算の流れ

  • 基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円
  • 課税遺産総額:5,000万円 − 4,200万円 = 800万円
  • 各人の法定相続分(各1/2):400万円 → 40万円(税率10%)
  • 相続税の総額:40万円 × 2 = 80万円(各人40万円)

仮想通貨の高騰により基礎控除を超えた場合に相続税が発生します。複数の取引所・仮想通貨に分散して保有している場合、それぞれの残高証明書を取得する必要があります。一つでも漏れると申告漏れになります。

パターン3|仮想通貨+その他財産を相続したケース

前提条件

  • 相続人:配偶者・子1人(合計2人)
  • 仮想通貨:ビットコイン3,000万円(被相続人の取得価額:200万円)
  • 他の財産:自宅不動産2,000万円 + 預貯金2,000万円 / 合計7,000万円

計算の流れ(特例なし)

  • 基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円
  • 課税遺産総額:7,000万円 − 4,200万円 = 2,800万円
  • 配偶者(1/2):1,400万円 → 160万円(税率15%−50万円)
  • 子(1/2):1,400万円 → 160万円
  • 相続税の総額:160万円 × 2 = 320万円

配偶者は「配偶者の税額軽減」により実際の納税額がゼロになるケースがほとんどです。仮想通貨3,000万円(取得価額200万円)を後で売却した場合、含み益2,800万円が雑所得として課税されます。最高税率55%が適用されると1,540万円の所得税が発生し、相続税と合わせると二重の税負担になります。

パターン4|相続後に仮想通貨を売却した場合(二重課税の計算例)

前提条件

  • 被相続人の仮想通貨取得価額:100万円
  • 相続発生日の評価額:1,000万円(この金額で相続税を計算・納付済み)
  • 相続人が1年後に1,200万円で売却
  • 相続人の給与収入:800万円(所得税の適用税率33%)

売却時の所得税の計算

  • 雑所得 = 1,200万円(売却価格)− 100万円(被相続人の取得価額)= 1,100万円
  • 所得税:1,100万円 × 33% − 153.6万円(控除額)≒ 209万円
  • 住民税:1,100万円 × 10% = 110万円
  • 合計所得税・住民税:約319万円

既に支払った相続税(仮に100万円とする)に加えて所得税・住民税319万円を合わせると、実質的な税負担は419万円になります。仮想通貨には「取得費加算の特例」(相続税の一部を取得費に加算できる制度)が適用されないため、株式や不動産の相続と比べて大きく不利な課税となります。

パターン5|秘密鍵不明・コールドウォレットが残されたケース

前提条件

  • 被相続人がハードウェアウォレットにビットコイン5,000万円(相続発生日評価)を保有
  • 相続人は秘密鍵・シードフレーズを知らない
  • PINコードも不明

想定される問題

  • ビットコイン5,000万円は評価額として相続財産に計上される(原則)
  • 相続税の対象になるが、実際には換金できない状態
  • 相続税を他の財産から支払う必要が生じる

このケースでは専門家を通じて税務当局と協議し、「換価不可能であることの証明」を行うことで評価額の見直しを求める交渉が必要になります。ただし認められる保証はなく、最悪の場合は換金できない財産に対して相続税を支払うことになります。このリスクを回避するために、秘密鍵・シードフレーズは「生前に相続人に伝える」か「安全な記録媒体に保管して遺言・エンディングノートに場所を記す」ことが不可欠です。

仮想通貨相続の最大の問題|相続税と所得税の二重課税

仮想通貨の相続において、最も深刻な問題は相続税と所得税が重なる「二重課税」です。通常の財産では軽減できる税負担が、仮想通貨では現行法上の制度的な欠陥により解消されません。この問題の仕組みを正確に理解することが、対策を考えるうえで重要です。

「税率110%超」が発生するメカニズム

相続税の税率は最大55%(住民税含む)、売却時の所得税・住民税の税率は現行法では最大55%です。これが重なると理論上「110%超」の税率になります。実際に税率が110%を超えるのは、相続税・所得税ともに最高税率が適用される超高額の資産を持つケースですが、仮想通貨で巨額の含み益を持つ場合には現実的なリスクです。

財産の種類相続税売却時の所得税取得費加算の特例二重課税の程度
不動産・土地10〜55%15〜20%(譲渡所得・申告分離)使える(3年以内売却)軽減可能
上場株式10〜55%20.315%(申告分離)使える(3年以内売却)軽減可能
仮想通貨(現行)10〜55%最大55%(総合課税・雑所得)使えない最大110%超の課税
仮想通貨(令和10年改正後)10〜55%20.315%(申告分離・予定)使えるようになる予定軽減される見込み

取得費加算の特例が使えない理由(株式との違い)

「取得費加算の特例」(租税特別措置法第39条)とは、相続税の申告期限から3年以内に相続財産を売却した場合、支払った相続税の一部を売却資産の取得費に加算できる制度です。これにより売却時の譲渡所得が圧縮され、二重課税が軽減されます。

株式や不動産はこの特例が使えますが、仮想通貨には適用されません。その理由は「適用区分」の違いです。

  • 株式・不動産の売却益:「譲渡所得」として申告分離課税(税率20.315%)→ 特例適用可
  • 仮想通貨の売却益:「雑所得」として総合課税(最大55%)→ 特例適用不可

この制度的な不公平を是正するため、令和10年(2028年)から仮想通貨の税制が変更される予定です。改正後は「取得費加算の特例」が使える可能性があります。

令和10年(2028年)の税制改正で何が変わるか

2026年度税制改正の議論では、仮想通貨の課税方法を現行の「雑所得・総合課税」から「譲渡所得・申告分離課税(税率20.315%固定)」に変更する方向性が示されています。令和10年(2028年)1月以降の売却から適用予定です。

比較項目現行(令和9年まで)改正後(令和10年〜・予定)
所得区分雑所得(総合課税)譲渡所得(申告分離課税)
税率5〜45%(住民税含む最大55%)15%(住民税5%を含む20.315%)
取得費加算の特例使えない使えるようになる見込み
損益通算他の雑所得との通算のみ同年の他の暗号資産の損益と通算可能
損失の繰越控除不可3年間の繰越控除が可能になる予定

改正後は、仮想通貨を相続した後に売却しても「取得費加算の特例」が使えるようになり、二重課税が大幅に緩和される見込みです。ただし、税制改正は国会での審議を経て確定するものであり、内容が変更される可能性があります。最新情報は税理士または国税庁のウェブサイトで確認してください。

仮想通貨相続の手続きフロー

仮想通貨の相続手続きは、通常の相続手続きよりも複雑で時間がかかります。特に財産の把握(どこにどれだけあるか)と、コールドウォレットの引き継ぎに特別な対応が必要です。4つのステップで手順を確認しましょう。

STEP1|被相続人の仮想通貨を全て把握する(財産調査)

相続が発生したら、まず被相続人が保有していた仮想通貨の全容を把握します。仮想通貨は通帳や登記簿のような明確な記録がないため、複数の場所を丁寧に調査する必要があります。

調査の優先度調査場所調査方法
最優先スマートフォン・PC仮想通貨アプリ・取引所アプリの確認
最優先メールボックス取引所名(コインチェック・GMOコイン等)で検索
重要国内取引所主要6〜10社に問い合わせ(本人確認書類が必要)
重要物理的な保管場所金庫・引き出し・セーフティボックスにウォレット機器がないか確認
要確認海外取引所メール履歴・アプリから特定
要確認クレジットカード明細過去2〜3年の明細で取引所への入金を確認

調査が不完全で申告漏れになると、税務調査で発覚した際に無申告加算税・延滞税が追加されます。申告漏れが最も多いのが海外取引所の仮想通貨であり、被相続人のメールを徹底的に調査することが重要です。

STEP2|取引所に死亡届を提出して残高証明書を取得する

国内取引所で保有している仮想通貨については、各取引所に被相続人の死亡を連絡し、手続きを進めます。取引所によって手続きの方法は異なりますが、一般的に必要な書類は以下の通りです。

  • 死亡届出書(取引所所定の書式)
  • 被相続人の死亡を証明する書類(死亡診断書・住民票の除票)
  • 相続関係を証明する書類(相続関係説明図・戸籍謄本)
  • 相続人全員の本人確認書類・印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(または遺言書)

死亡連絡の際に「相続発生日の残高証明書」と「相続発生日の日本円換算レートの証明書」を合わせて請求しましょう。これらは相続税申告書の添付書類になります。取引所への死亡連絡が遅れると、相続完了前に相続人が口座にアクセスできず手続きが止まる場合があります。相続発生後はできるだけ早く各取引所に連絡してください。

STEP3|コールドウォレットの仮想通貨を引き継ぐ

コールドウォレット(ハードウェアウォレット)の仮想通貨は取引所を通さないため、手続きが異なります。秘密鍵またはシードフレーズを使って相続人が自分のウォレットに移転する必要があります。

引き継ぎのステップ必要なもの注意点
シードフレーズの確認12〜24の英単語のリスト紛失すると永久にアクセス不可
新しいウォレットの用意相続人のソフトウェアまたはハードウェアウォレット実績のある信頼できるウォレットを選ぶ
インポート操作シードフレーズを新しいウォレットに入力操作を誤ると資産を失う可能性あり
残高の確認仮想通貨の種類・数量を確認して記録
相続税申告書への計上相続発生日の評価額の証明書類ブロックチェーン上の取引記録を残す

コールドウォレットの操作は専門知識が必要です。誤った操作で仮想通貨を失うリスクがあるため、不慣れな場合は仮想通貨に詳しい専門家に依頼することをお勧めします。

STEP4|相続税申告書に計上して申告する

取引所からの残高証明書・換算レート証明書と、コールドウォレットの残高記録をもとに、相続税申告書に仮想通貨を計上します。申告期限は相続発生を知った翌日から10か月以内です。

  • 第11表(相続税がかかる財産の明細書)に「暗号資産」として記載
  • 各仮想通貨の種類・数量・評価額を明記
  • 残高証明書・換算レート証明書を添付

申告書作成は専門的な知識が必要なため、仮想通貨の相続に詳しい税理士に依頼することを強く推奨します。

申告漏れが多い仮想通貨と見落としやすいポイント

仮想通貨の相続税申告では、一般の財産と比べて申告漏れが起きやすい特有のポイントがあります。税務調査で発覚した場合、重加算税(35〜40%)が加算される可能性があるため、事前に把握しておくことが重要です。

海外取引所(バイナンス・コインベース等)の申告漏れリスク

国内取引所と異なり、海外取引所は日本の税務当局との情報共有が限定的です。しかし、国際的な税務情報交換の仕組みが整備されており、申告漏れが発覚するリスクは年々高まっています。

海外取引所の特徴申告漏れのリスク対策
日本語サポートが不十分相続手続きが困難・時間がかかる仮想通貨専門の税理士に依頼
本人確認なしで登録可能なケースも被相続人のアカウントを特定できないメール履歴から取引所を特定する
取引履歴の取得が困難取得価額の計算ができないCSVデータをダウンロードして保存
日本語での残高証明書が発行されない申告書への添付に工夫が必要英文書類を翻訳して添付

海外取引所の仮想通貨は「申告しなければバレない」と考えるのは危険です。金融機関の国際的な情報交換協定(CRS)により、海外口座の情報が国税庁に提供されるケースが増えています。必ず申告してください。

DeFi・ステーキング報酬の取り扱い

DeFi(分散型金融)でのステーキング報酬・流動性提供報酬・レンディング利息なども、相続発生時点で保有していれば相続財産に含めます。これらは複雑な仕組みで管理されているため、把握が難しいケースがあります。

  • ステーキング報酬:相続発生日時点の累積報酬額を評価
  • 流動性プールのポジション:プール内の仮想通貨の評価額で計算
  • レンディング(貸し出し中):貸し出し中の元本+未収利息を評価

DeFiポジションはブロックチェーンを直接確認しないと把握できないため、被相続人のウォレットアドレスを特定することが財産調査の前提になります。

NFTの相続税評価と申告の注意点

NFT(非代替性トークン)も財産的価値があれば相続税の対象です。しかし、NFTの評価方法は仮想通貨ほど明確な指針がなく、個別に評価する必要があります。

NFTの種類評価の考え方難易度
人気コレクション系OpenSea等のフロア価格(最低価格)を参考
1点もの・高額アート直近の成約価格・精通者意見
ゲームアイテムゲーム内マーケットの取引価格中〜高
価値不明のNFT精通者意見または取得価額ベース非常に高い

NFTはプロジェクトが終了すると価値がゼロになることもあります。評価日時点での実態に即した評価が必要で、専門家への相談が推奨されます。

仮想通貨の相続税を減らす生前対策

仮想通貨の二重課税リスクを回避し、相続人の税負担を軽減するために、生前にできる対策があります。相続発生前から計画的に実施することで、大きな節税効果が期待できます。

生前売却して現金化する(最も効果的な対策)

含み益を持つ仮想通貨を生前に売却して現金化することで、相続時の財産評価を「現金」に変え、二重課税を避けることができます。売却時に所得税はかかりますが、相続税との合算が避けられるため、トータルの税負担を抑えられるケースが多いです。

比較項目生前売却して現金化仮想通貨のまま相続
所得税(売却時)現行最大55%(本人の所得税率による)相続人が売却時に最大55%
相続税現金として評価(評価額の変動なし)相続発生日の時価で評価
二重課税なし発生する
取得費加算の特例対象外(本人の売却)現行は使えない

生前売却は「現時点での所得税を確定させる」代わりに「相続後の二重課税リスクを回避する」という選択です。どちらが有利かは仮想通貨の保有額・含み益・家族の状況によって異なるため、税理士に試算してもらうことをお勧めします。

暦年贈与で少しずつ移転する

年間110万円以下の贈与は贈与税がかかりません。毎年少量の仮想通貨(または売却後の現金)を後継者に贈与することで、相続財産を少しずつ減らすことができます。

  • 暦年贈与:年間110万円以下の贈与は非課税。2024年改正により相続発生前7年以内の贈与は相続財産に加算(旧ルールは3年)
  • 相続時精算課税:累計2,500万円まで贈与税ゼロ(相続時に相続財産に加算)。贈与時の評価額で固定されるため、価格上昇前の贈与が有利

仮想通貨の価格が低い時期に相続時精算課税を使って贈与することで、価格上昇分の課税を回避できます。価格の変動を見計らった贈与タイミングの判断が重要です。

デジタル遺産リストを作成する

仮想通貨を保有している場合、相続人が財産の全容を把握できるよう「デジタル遺産リスト」を作成しておくことが重要です。これが最もコストのかからない対策であり、相続人の負担を大幅に軽減します。

デジタル遺産リストに記載すべき項目

  • 利用している国内取引所の名称・登録メールアドレス
  • 利用している海外取引所の名称・登録情報
  • ハードウェアウォレットの種類・保管場所
  • シードフレーズの保管場所(直接記載は危険・封印して保管)
  • 主な保有仮想通貨の種類
  • ウォレットアドレス(参考として)

シードフレーズや秘密鍵を遺言書に直接記載することは、第三者に見られるリスクがあるため推奨しません。別途封印して「特定の場所に保管している」とだけ遺言書や遺書に記載する方法が安全です。

秘密鍵・ウォレット情報の確実な引き継ぎ準備

コールドウォレットの秘密鍵・シードフレーズは、紛失すると永久に仮想通貨にアクセスできなくなります。一方、保管方法が不適切だと盗難リスクがあります。安全かつ確実な引き継ぎのために以下の方法を検討してください。

引き継ぎ方法メリットデメリット
金庫に保管・鍵を相続人に教えるシンプルで確実金庫への不正アクセスリスク
公証役場での保管安全性が高い費用・手間がかかる
弁護士・司法書士への寄託専門家が管理費用がかかる
シャミアの秘密分散単一の紛失リスクを分散できる技術的な知識が必要

シードフレーズをメールやクラウドサービスに保存することは、ハッキングで盗まれるリスクがあるため絶対に避けてください。物理的な媒体(紙またはスチールプレート)に記録し、安全な場所に保管することが基本です。

仮想通貨の相続こそ早めに税理士へ相談すべき理由

仮想通貨の相続は、財産調査・評価額の算出・申告書の作成・コールドウォレットの引き継ぎ・二重課税への対応など、通常の相続とは異なる専門知識が必要な場面が数多くあります。申告ミスや申告漏れが発覚した場合のペナルティは深刻です。

相談すべき理由|仮想通貨相続特有の複雑さ

  • 財産の全容把握が困難:国内外の複数取引所・コールドウォレット・DeFiポジション・NFTを網羅的に調査する必要がある
  • 評価方法が複雑:主要仮想通貨は比較的明確だが、マイナーコイン・NFT・DeFiポジションの評価は個別判断が必要
  • 二重課税のリスク管理:売却タイミング・生前対策・令和10年改正後の対応を総合的に判断する必要がある
  • コールドウォレットの引き継ぎ:技術的な操作を伴う引き継ぎ作業で、誤操作が財産の喪失につながる
  • 申告書の作成:仮想通貨を含む相続税申告書は記載方法が通常と異なり、添付書類の種類も多い

仮想通貨に対応できる税理士は限られています。「相続税専門」かつ「暗号資産・仮想通貨の申告実績がある」税理士を選ぶことが重要です。

相談するメリット|税負担軽減と申告ミス防止

  • 財産調査のサポート:被相続人のデジタル資産を網羅的に把握するための調査方法を指導
  • 評価額の適正化:評価方法の選択・計算の正確性確保により過払いや申告漏れを防止
  • 二重課税対策の最適化:売却タイミング・生前対策の組み合わせを試算してアドバイス
  • 申告書の正確な作成:添付書類の収集から申告書の記載まで一貫して対応
  • 令和10年改正への対応:改正後の節税対策(取得費加算の特例の活用等)を見据えたアドバイス

相談しなかった場合のリスク

リスクの種類具体的な内容金銭的な影響の目安
申告漏れ(海外取引所・コールドウォレット)税務調査で発覚した場合、重加算税が課される追徴本税+重加算税(35〜40%)+延滞税
評価額の誤り評価方法の選択ミス・計算誤りによる過少申告追徴課税+過少申告加算税(10〜15%)
二重課税の見落とし売却タイミングを誤り、税負担が最大化される数百万〜数千万円の余分な税負担
コールドウォレットの誤操作引き継ぎ操作を誤り仮想通貨を失う保有仮想通貨の全額喪失
申告期限の超過10か月の期限を過ぎた無申告加算税(5〜20%)+延滞税

費用対効果の試算|税理士報酬 vs 節税・リスク回避効果

項目金額の目安
仮想通貨を含む相続税申告の税理士報酬40〜100万円程度(財産規模・複雑さによる)
二重課税の最適化による節税効果数十万〜数百万円(保有額・含み益・所得税率による)
申告漏れ回避(重加算税の回避)申告漏れ額の35〜40%のリスク回避
令和10年改正後の取得費加算特例の活用売却時の所得税を数十万〜数百万円軽減できる見込み
コールドウォレットの適切な引き継ぎサポート財産喪失リスクの回避(保有額全額)

仮想通貨の相続では、税理士報酬を大幅に上回るリスク回避・節税効果が得られるケースがほとんどです。特に含み益が大きい場合は早急に相談することをお勧めします。

初回相談で確認すべき質問リスト

  • □ 被相続人の仮想通貨の財産調査をどのように進めればいいですか?
  • □ 国内外の取引所への連絡方法・手続きのサポートはしてもらえますか?
  • □ コールドウォレットの引き継ぎ作業を手伝ってもらえますか?
  • □ 仮想通貨を売却した場合の所得税と相続税の合計税負担を試算してもらえますか?
  • □ 令和10年の税制改正後に売却するのと今売却するのでは、どちらが有利ですか?
  • □ NFTやDeFiのポジションの評価方法はどうなりますか?
  • □ 海外取引所の仮想通貨についても対応できますか?
  • □ 申告書の作成・提出まで一貫して依頼できますか?

よくある質問(FAQ)

Q. パスワードや秘密鍵を知らない仮想通貨にも相続税はかかりますか?

原則としてかかります。仮想通貨がブロックチェーン上に存在している限り、技術的にアクセスできなくても相続税は課税されるというのが国税庁の見解です。ただし、客観的に換価不可能であることが明らかな場合には評価額ゼロとなる可能性があるという国会答弁もあります。このケースでは税務当局との個別交渉が必要なため、専門家に相談してください。

Q. 仮想通貨の相続税評価額はいつの価格を使いますか?

相続発生日(被相続人が亡くなった日)の取引所の最終公表価格(売却価格)を使います。相続発生日に価格が公表されていない場合は、前後で最も近い日の最終公表価格を使用します。価格は利用していた取引所から「残高証明書」「換算レート証明書」を取得して確認します。

Q. 相続した仮想通貨を売却した場合、取得費加算の特例は使えますか?

現行法では使えません。「取得費加算の特例」は譲渡所得に適用される制度ですが、仮想通貨の売却益は雑所得として扱われるため対象外です。令和10年(2028年)からの税制改正により申告分離課税(譲渡所得扱い)に変更されれば、特例が使えるようになる見込みです。最新情報を税理士に確認してください。

Q. 海外取引所の仮想通貨も申告が必要ですか?

必要です。海外取引所の仮想通貨も日本の相続税の課税対象になります。「海外だから申告しなくてもバレない」という考えは危険で、国際的な金融情報の自動交換制度(CRS)により、税務当局が把握するケースが増えています。申告漏れが発覚した場合は重加算税(35〜40%)が加算されます。

Q. NFTも相続税の対象になりますか?

財産的価値があると認められるNFTは相続税の対象です。ただし、市場価格が明確でないNFTの評価方法は個別判断になります。過去の取引事例・フロア価格・精通者意見などを参考に評価額を算出します。価値がほぼゼロのNFTは評価ゼロとなるケースもありますが、判断には専門家の確認が必要です。

まとめ|仮想通貨の相続は早期の財産把握と生前対策が鍵

仮想通貨の相続税評価の基本

  • 評価額は「相続発生日の取引所の最終公表価格 × 保有数量」で算出し、秘密鍵不明でも原則として課税対象になる
  • 相続税(最大55%)と売却時の所得税(現行最大55%)が重なる二重課税が発生し、取得費加算の特例が使えないため実質税率が110%超になるケースがある
  • 令和10年(2028年)からの税制改正で申告分離課税に移行予定であり、改正後は二重課税が大幅に軽減される見込み

申告・手続きの注意点

  • 国内外の取引所・コールドウォレット・DeFiポジション・NFTまで全財産を把握することが申告の大前提
  • 海外取引所の申告漏れは税務調査で発覚するリスクが高く、重加算税(35〜40%)が課される可能性がある
  • コールドウォレットの引き継ぎは秘密鍵・シードフレーズが必須で、誤操作すると仮想通貨を永久に失うリスクがある

生前対策のポイント

  • 生前売却で現金化することが二重課税を避ける最も効果的な対策
  • デジタル遺産リストの作成と秘密鍵・シードフレーズの安全な保管・引き継ぎ準備が最重要の生前対策

今すぐ取るべき行動

  • 相続が発生したら、被相続人のスマートフォン・PC・メールを早急に確認し、保有する仮想通貨の全容を把握したうえで、仮想通貨の申告実績がある相続税専門の税理士に相談してください
  • まだ相続が発生していない場合も、デジタル遺産リストの作成・秘密鍵の安全な保管・生前売却または暦年贈与の検討を今すぐ始めることをお勧めします

※本記事は2025年12月時点の法令・税率に基づいて作成しています。仮想通貨の税制は改正が予定されているため、申告前には必ず税理士または国税庁のウェブサイトで最新情報をご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談に代わるものではありません。

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