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マンションの相続税|2024年新ルール対応の評価額計算・節税方法・申告手順を解説

マンション_相続税

マンションを相続した場合、相続税はどのように計算されるのか。土地と建物を分けて評価する基本は戸建てと同じですが、マンション特有の「敷地権」「区分所有補正率」という概念が加わるため、計算が複雑になります。さらに2024年1月から新しいルールが導入され、相続税評価額の算出方法が大きく変わりました。

この記事では、マンションの相続税評価額の計算方法から2024年改正の影響、節税に使える特例、賃貸マンションの評価の仕組み、相続後の処分・活用における税金の違いまで、順序立てて解説します。申告期限(相続発生を知った翌日から10か月)は待ってくれないため、早めに全体像を把握しておくことが重要です。

▼ この記事の3行まとめ

  • マンションの相続税評価額は「建物(固定資産税評価額)+土地(路線価×地積×敷地権割合)」で算出し、2024年1月から区分所有補正率による上方修正が入るケースがある
  • 小規模宅地等の特例・配偶者控除・賃貸割合評価減を組み合わせることで、相続税額を大幅に圧縮できる
  • 区分所有補正率の計算は4つのパラメータを使う複雑な手順で、申告ミスが起きやすいため相続税に詳しい税理士への相談が必須

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マンションの相続税評価額とは|基本的な考え方

相続税の計算では、財産ごとに「相続税評価額」を算出し、その合計から基礎控除を差し引いた額に税率を掛けます。マンションの評価では、「建物部分」と「土地(敷地権)部分」を別々に計算し、合算するのが基本の手順です。

評価額は市場価格(時価)とは異なり、一般的に市場価格より低く設定されます。ただし2024年1月からの新ルールにより、市場価格との乖離が大きいマンションは評価額が引き上げられるケースが生じています。

建物と土地(敷地権)を分けて評価する

区分所有マンションを相続した場合、評価の対象は「建物部分(専有面積の部屋)」と「土地部分(敷地権)」の2つに分かれます。敷地権とは、マンション全体の敷地に対して各区分所有者が持つ権利の割合で、登記簿(全部事項証明書)に記載されています。

たとえば、全体1,000㎡の敷地を50戸のマンションが共有している場合、各戸の敷地権割合は理論上1/50(2%)程度になります。この敷地権割合が、土地の評価額計算に直結します。

評価の対象評価の基礎となる資料評価方法
建物(専有部分)固定資産税評価証明書固定資産税評価額 × 1.0
土地(敷地権)登記簿謄本・路線価図路線価 × 地積 × 敷地権割合(補正あり)

マンションの評価は「建物」と「土地(敷地権)」を必ず分けて計算し、それぞれに補正率を適用することが重要です。一括で「時価の何%」といった簡易計算は申告では使えません。

建物の評価|固定資産税評価額を使う

建物部分の相続税評価額は、「固定資産税評価額」がそのまま使われます。固定資産税評価額は市区町村が算定する金額で、毎年4〜6月に届く「固定資産税・都市計画税 納税通知書」の課税明細書に記載されています。

建物の評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0

固定資産税評価額は市場価格の60〜70%程度に設定されることが多く、相続税の計算上は時価より低い水準で評価されます。なお、固定資産税評価額は3年ごとに見直されるため(評価替え)、最新の納税通知書で確認してください。

賃貸に出しているマンション(貸家)の場合は、「固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)」という計算式を使うため評価額がさらに下がります。詳細は「賃貸マンションの評価」セクションで解説します。

土地(敷地権)の評価|路線価×地積×敷地権割合

土地部分の評価は、マンション全体の敷地面積を路線価で評価し、そこに敷地権割合を掛けます。路線価が設定されていない地域では倍率方式(固定資産税評価額×評価倍率)を使います。

土地(敷地権)の評価額 = 路線価(円/㎡)× 各種補正率 × 敷地全体の地積(㎡)× 敷地権割合

たとえば、路線価30万円/㎡、敷地面積500㎡、自分の敷地権割合が1/50(2%)の場合:

  • 敷地全体の評価:30万円 × 500㎡ = 1億5,000万円
  • 自分の持分(敷地権):1億5,000万円 × 1/50 = 300万円

参照元:国税庁 No.4602 土地家屋の評価

敷地権割合は必ず登記事項証明書(全部事項証明書)の「敷地権の割合」欄で確認してください。建物の面積割合とは一致しないケースもあります。

タワマンと一般マンション、評価方法はどう違うか

基本的な評価の手順(建物+土地の合算)はタワマンも一般マンションも同じです。大きく異なるのは2024年改正の「区分所有補正率」の影響の大きさです。

比較項目一般マンション(低〜中層)タワーマンション(高層)
総階数指数低め(0.5〜0.7程度)1.0に近い(20階以上)
所在階の影響小さい高層階ほど乖離率が大きくなる
評価乖離率の傾向1.5〜2.0程度(補正が入らないケースも)2.5〜4.0程度(ほぼ補正が入る)
新ルールの影響中〜小(物件によって差あり)大(評価額が大幅に引き上がる)

自社のタワーマンション専用解説記事もご参照ください。この記事では主に中低層の区分所有マンションを対象に解説します。タワマンか否かにかかわらず、区分所有補正率の計算は全マンションに適用対象となるため、必ず確認することが必要です。

2024年1月スタートの新ルール|区分所有補正率とは

2024年1月1日以降に相続が発生したマンションから、「区分所有補正率」による評価の補正が適用されています。これは、従来の評価方法では市場価格との乖離が大きすぎたために導入された制度で、マンションの相続税評価に最も大きな影響を与える改正です。

改正が導入された背景|評価額と市場価格の乖離問題

国税庁の有識者会議が公表したデータによると、戸建て住宅の相続税評価額は市場価格の約60%(乖離率1.66倍)であるのに対し、マンションは平均2.34倍の乖離がありました。つまり、同じ市場価格2,000万円の物件でも、戸建ては1,200万円で評価されるのに対し、マンションは850万円程度で評価されていたことになります。

この乖離を利用した「マンション節税」が問題視され、国税庁は2023年に通達を改正。2024年1月以降の相続から評価額を是正する方向で補正を加えることになりました。

物件種別改正前の平均乖離率改正後の目標乖離率
戸建て1.66倍(評価額は市場価格の約60%)変更なし
マンション(平均)2.34倍(評価額は市場価格の約43%)1.67倍(市場価格の約60%)に引き上げ
タワーマンション3.16倍(評価額は市場価格の約32%)同上

改正の目的は「マンションの評価額を市場価格の60%程度に引き上げること」です。従来より評価額が高くなるケースが生じるため、申告前に必ず補正の影響を確認してください。

4つのパラメータから「評価乖離率」を計算する

区分所有補正率を求めるには、まず「評価乖離率」を計算します。評価乖離率は以下の4つのパラメータを使った計算式で求めます。

評価乖離率の計算式

評価乖離率 = 3.220 + A + B + C + D

記号パラメータ計算式数値の意味
A築年数築年数 × △0.033古いほど乖離率が下がる(評価が上がりにくい)
B総階数指数総階数指数 × 0.239総階数÷33(1を上限)。高層ほど乖離率が上がる
C所在階所在階 × 0.018高層階ほど乖離率が上がる
D敷地持分狭小度敷地持分狭小度 × △1.195敷地持分面積÷専有面積(小さいほど乖離率が下がる)

参照元:国税庁 マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議

計算例:築15年・総階数15階建て・8階・専有面積70㎡・敷地持分面積10㎡のマンション

  • A = 15年 × △0.033 = △0.495
  • B =(15÷33≒0.454)× 0.239 = 0.109
  • C = 8階 × 0.018 = 0.144
  • D =(10㎡÷70㎡=0.142)× △1.195 = △0.170
  • 評価乖離率 = 3.220 − 0.495 + 0.109 + 0.144 − 0.170 = 2.808

計算は複数のステップがあり、数値の扱い(小数点の切捨てルール等)に注意が必要です。国税庁が公開するExcelの計算ツールを活用することをお勧めします。

「区分所有補正率」の算出と適用のしくみ

評価乖離率が算出できたら、次に「評価水準」を求め、それをもとに区分所有補正率を決定します。

評価水準 = 1 ÷ 評価乖離率

評価水準の値区分所有補正率評価額への影響
1.0以上(評価乖離率 ≤ 1.0)補正なし(1.0)従来の評価額のまま
0.6以上1.0未満(乖離率 1.0〜1.667)評価乖離率をそのまま乗じる評価額が引き上げられる
0.6未満(評価乖離率 > 1.667)評価乖離率 × 0.6評価額が大幅に引き上げられる

上記の例(評価乖離率2.808)の場合:

  • 評価水準 = 1 ÷ 2.808 ≒ 0.356(0.6未満)
  • 区分所有補正率 = 2.808 × 0.6 = 1.685
  • 補正後評価額 = 補正前評価額 × 1.685

つまり補正前に比べて評価額が約1.7倍になります。市場価格が5,000万円で補正前の評価額が1,500万円だった場合、補正後は1,500万円 × 1.685 = 約2,527万円に引き上げられます。

新ルールの影響を受けるケース・受けないケースの判定フロー

2024年改正の影響は、すべてのマンションに同等に及ぶわけではありません。評価水準が0.6以上であれば補正なし(従来通り)です。以下の判定フローで確認してください。

条件影響の有無代表的なケース
築年数が古い(築30年超)影響小〜なし評価乖離率が低く、評価水準が0.6を超えやすい
低層マンション(5階以下)影響小〜なし総階数指数が低く乖離率が抑えられる
郊外・地方のマンション影響小〜なし路線価が低く市場価格との乖離が小さい
新築〜築10年以内の都心マンション影響大乖離率が2〜3倍になりやすい
高層マンション(15階以上)の高層階影響大所在階・総階数指数の影響が大きい

自分のマンションが影響を受けるかどうかは、4つのパラメータを計算して評価水準を求めることで判断できます。申告前に必ず確認してください。

相続税計算4ステップ|マンションがある場合

マンションの評価額が算出できたら、相続税全体の計算に進みます。マンションがある場合も、相続税計算の基本的な流れは他の財産と変わりません。4つのステップで順番に確認しましょう。

STEP1|相続財産の総額を算出する

被相続人が所有していたすべての財産を洗い出して合計します。マンションについては「建物評価額(補正後)+土地(敷地権)評価額(補正後)」を相続財産に計上します。

財産の種類評価の基準備考
マンション建物固定資産税評価額×区分所有補正率補正率の適用を忘れずに
マンション土地(敷地権)路線価×地積×敷地権割合×区分所有補正率同上
現金・預貯金死亡日時点の残高利息も含む
有価証券・投資信託死亡日等の終値・基準価格
生命保険(死亡保険金)受取金額500万円×法定相続人数が非課税枠

債務(住宅ローン残高・未払い税金など)や葬式費用は相続財産から差し引くことができます。マンションに住宅ローンが残っている場合は、残高を相続財産から差し引ける(債務控除)ため、残高証明書を必ず取得してください。

STEP2|基礎控除を差し引いて課税遺産総額を求める

正味の相続財産から基礎控除を差し引きます。

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

法定相続人の数基礎控除額この金額以下なら相続税ゼロ
1人3,600万円正味の相続財産が3,600万円以下
2人4,200万円正味の相続財産が4,200万円以下
3人4,800万円正味の相続財産が4,800万円以下
4人5,400万円正味の相続財産が5,400万円以下

マンションの評価額が2024年改正で引き上げられた場合、従来は基礎控除以下だった財産が課税対象になるケースがあります。改正前に相続を想定していた方は再計算が必要です。

STEP3|法定相続分で按分して相続税の総額を計算する

課税遺産総額を法定相続分で按分し、各人の仮定取得額に税率を掛けて相続税の総額を求めます。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

法定相続分に応じた取得額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

STEP4|実際の取得割合で各人の納税額を確定する

STEP3で計算した「相続税の総額」を、実際の遺産取得割合で各人に按分します。これが各相続人が実際に納める相続税額になります。

各人の相続税額 = 相続税の総額 × (各人の実際の取得財産 ÷ 相続財産の総額)

その後、配偶者控除・未成年者控除・障害者控除などを適用して最終的な納税額を確定します。申告期限は相続発生を知った翌日から10か月以内です。各人がそれぞれ申告・納税しますが、連署での一括申告も可能です。

ケース別シミュレーション5パターン|マンション相続の税額を試算

実際の相続では、マンションの種類・立地・家族構成・特例の適用有無によって税額が大きく異なります。ここでは5つのパターンで、具体的な数字を使って相続税額を試算します。なお、試算はすべて特例なし・控除適用前の概算です。

パターン1|都心区分マンション(自宅・市場価格5,000万円)

前提条件

  • マンション:築8年・13階建て・7階・専有70㎡・市場価格5,000万円
  • 補正前の相続税評価額:建物600万円 + 土地(敷地権)400万円 = 1,000万円
  • 評価乖離率:2.5(評価水準0.4 → 区分所有補正率 = 2.5×0.6=1.5)
  • 補正後の相続税評価額:1,000万円 × 1.5 = 1,500万円
  • 他の財産:預貯金2,000万円 / 相続人:配偶者・子1人(合計2人)

計算の流れ(特例なし)

  • 相続財産の総額:1,500万円 + 2,000万円 = 3,500万円
  • 基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円
  • 課税遺産総額:3,500万円 − 4,200万円 = 0円(課税なし)

補正後でも基礎控除以下のため相続税ゼロです。ただし補正前(評価額1,000万円)との差500万円が申告に影響するケースもあります。自宅について小規模宅地等の特例を適用すれば敷地権部分がさらに減額されます。

パターン2|郊外マンション(市場価格2,500万円・新ルール影響なし)

前提条件

  • マンション:築25年・5階建て・3階・専有65㎡・市場価格2,500万円
  • 評価乖離率:1.4(評価水準0.71 → 0.6以上のため補正なし)
  • 相続税評価額(補正前のまま):建物400万円 + 土地200万円 = 600万円
  • 他の財産:預貯金3,500万円 / 相続人:子2人

計算の流れ

  • 相続財産の総額:600万円 + 3,500万円 = 4,100万円
  • 基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円
  • 課税遺産総額:4,100万円 − 4,200万円 = 0円(課税なし)

築年数が古く低層マンションのため評価乖離率が低く、2024年改正の影響を受けません。こうしたケースでは、2024年改正を心配する必要はありません。

パターン3|賃貸に出しているマンション(貸家建付地評価)

前提条件

  • マンション:築10年・10階建て・5階・専有55㎡・賃貸中(賃貸割合100%)
  • 補正前評価額:建物500万円 + 土地300万円 = 800万円
  • 評価乖離率:2.0(区分所有補正率 = 2.0 × 0.6 = 1.2)
  • 補正後評価額:800万円 × 1.2 = 960万円
  • 貸家評価:建物 = 500万円 ×(1 − 30% × 100%)= 350万円
  • 貸家建付地評価:土地 = 300万円 ×(1 − 借地権割合60% × 30% × 100%)= 246万円
  • 賃貸評価後の合計:350万円 + 246万円 = 596万円(補正適用前より約200万円減額)
  • 他の財産:預貯金4,000万円 / 相続人:子2人

計算の流れ

  • 相続財産の総額:596万円 + 4,000万円 = 4,596万円
  • 基礎控除:4,200万円
  • 課税遺産総額:4,596万円 − 4,200万円 = 396万円
  • 各人の法定相続分(各1/2):198万円 → 19.8万円(税率10%)
  • 相続税の総額:19.8万円 × 2 = 約40万円

賃貸中のマンションは貸家・貸家建付地評価により評価額が下がります。賃貸割合が高いほど評価減の効果が大きくなるため、相続発生時点で入居中かどうかが評価額に直結します。

パターン4|複数マンションを所有していたケース

前提条件

  • マンションA(自宅):補正後評価額2,000万円
  • マンションB(賃貸):補正後・貸家評価後1,200万円
  • 他の財産:預貯金5,000万円 / 相続人:配偶者・子2人(合計3人)
  • 財産合計:2,000万円 + 1,200万円 + 5,000万円 = 8,200万円

計算の流れ(特例なし)

  • 基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
  • 課税遺産総額:8,200万円 − 4,800万円 = 3,400万円
  • 配偶者の法定相続分(1/2):1,700万円 → 205万円
  • 各子の法定相続分(各1/4):850万円 → 77.5万円
  • 相続税の総額:205万円 + 77.5万円 × 2 = 360万円

自宅マンションAに小規模宅地等の特例(土地部分80%減)を適用すれば、評価額がさらに下がります。配偶者は「配偶者の税額軽減」により実際の納税額がゼロになるケースがほとんどです。

パターン5|配偶者と子が共同で取得するケース(特例最大活用)

前提条件

  • 自宅マンション:補正後評価額3,000万円(うち土地敷地権1,000万円)
  • 他の財産:預貯金4,000万円 / 相続人:配偶者・子1人(合計2人)
  • 遺産分割:マンション全体と預貯金2,000万円を配偶者が取得、残り預貯金2,000万円を子が取得

小規模宅地等の特例適用後の評価額

  • 土地(敷地権):1,000万円 × 20% = 200万円(80%減額)
  • 建物:2,000万円(変わらず)
  • マンション評価額(特例後):200万円 + 2,000万円 = 2,200万円
  • 相続財産の総額:2,200万円 + 4,000万円 = 6,200万円
  • 基礎控除:4,200万円
  • 課税遺産総額:6,200万円 − 4,200万円 = 2,000万円
  • 相続税の総額:配偶者1,000万円 → 100万円 + 子1,000万円 → 100万円 = 200万円
  • 配偶者の税額軽減適用後:配偶者分は0円 → 子の納税額100万円のみ

特例と控除を最大活用することで、特例なし(約310万円)と比べて210万円以上の節税が可能になります。遺産分割の段階で特例を最大活用できる分け方を検討することが重要です。

マンション相続の節税に使える特例・控除

相続税_控除

マンションの相続税を合法的に抑える方法として、複数の特例・控除が用意されています。適用要件を満たすことが前提ですが、これらを組み合わせることで税負担を大幅に軽減できます。

小規模宅地等の特例|土地評価を最大80%減額

被相続人が居住していた自宅マンションの敷地権(土地部分)について、330㎡を限度に評価額を80%減額できる制度です。たとえば、敷地権の評価額が500万円の場合、特例適用後は100万円になります。

参照元:国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例

宅地の種類減額割合限度面積マンションでの適用例
特定居住用(自宅)80%330㎡自宅として住んでいたマンションの敷地権
貸付事業用(賃貸)50%200㎡賃貸に出していたマンションの敷地権

主な適用要件(特定居住用の場合):

  • 配偶者:要件なし(無条件で適用可)
  • 同居親族:申告期限まで居住継続・保有継続が必要
  • 家なき子:被相続人に配偶者・同居相続人がいない場合など一定の要件を満たす別居の子

小規模宅地等の特例は申告期限(10か月)までに遺産分割を完了させることが適用条件です。未分割のまま申告した場合は原則適用できません。

配偶者の税額軽減|1億6,000万円まで非課税

配偶者が相続した財産について、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額まで相続税が非課税になります。都心の高額マンションを配偶者が相続する場合、この控除により相続税がゼロになるケースが多くあります。

配偶者の取得額1億6,000万円以下1億6,000万円超
税額軽減の適用全額非課税(税額ゼロ)法定相続分相当額まで非課税

注意点は、配偶者が多くを取得すると二次相続(配偶者が亡くなった際)の税負担が増える点です。一次相続と二次相続をトータルで考えた遺産配分の設計が節税上の重要なポイントになります。

賃貸マンションの貸家建付地評価|市場価格より低く評価できる

賃貸に出しているマンションは、建物を「貸家」、土地を「貸家建付地」として評価するため、自宅マンションより低い評価額になります。

  • 貸家の評価 = 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
  • 貸家建付地の評価 = 路線価評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合は全国一律30%。借地権割合は地域によって50〜90%で異なります(路線価図で確認)。賃貸割合は相続発生時点で実際に入居している割合です。

相続発生時点で空室だった部屋は賃貸割合に算入できないため、賃貸割合の確認は相続発生日時点の入居状況で行ってください。

相続税の取得費加算の特例|売却する場合に活用

相続したマンションを、相続税の申告期限(10か月)から3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を売却時の「取得費」に加算できます(租税特別措置法第39条)。これにより譲渡所得が減り、譲渡所得税の負担が軽くなります。

加算できる金額 = 支払った相続税 × (売却した資産の相続税評価額 ÷ 相続財産全体の評価額)

「相続税の申告期限から3年以内」という期限は絶対条件です。売却を検討している場合は、申告期限から逆算して売却スケジュールを立てることが必要です。

賃貸マンションの相続税評価|自宅と何が違うか

被相続人が賃貸マンション(一室または一棟)を所有していた場合、評価方法が自宅マンションと異なります。賃貸中かどうか、一棟所有か区分所有かによっても計算が変わるため、それぞれの違いを確認しておきましょう。

賃貸割合による評価減のしくみ

「賃貸割合」とは、建物全体のうち賃貸されている部分の割合です。計算式は以下の通りです。

賃貸割合 = 入居中の部屋の床面積の合計 ÷ 建物全体の床面積

賃貸割合が高いほど評価減の効果が大きくなります。相続発生時に空室がある場合、その部屋分は賃貸割合から外れるため評価額が高くなります。

賃貸割合建物の評価減(借家権割合30%)土地の評価減(借地権割合60%の場合)
100%(全室入居)30%減18%減
50%(半数入居)15%減9%減
0%(全室空室)減額なし減額なし

相続発生日に一時的に空室になっている部屋でも、継続的に賃貸する意図があり空室期間が短期間(おおむね1か月程度以内)であれば、賃貸割合に算入できる場合があります。判断が難しい場合は税理士に確認してください。

貸家建付地評価の計算方法

賃貸マンションの土地は「貸家建付地」として評価され、更地評価額より低くなります。借地権割合は地域によって路線価図(A〜Gの記号)で確認します。

記号借地権割合主な地域の傾向
A90%
B80%都心の商業地域
C70%都市部の住宅地
D60%一般的な住宅地
E50%郊外の住宅地
F40%地方の住宅地
G30%農村・山林地域

借地権割合60%・借家権割合30%・賃貸割合100%の場合、貸家建付地の評価減は「60% × 30% × 100% = 18%減」になります。更地評価額が1,000万円なら820万円で評価されます。

一棟所有マンション vs 区分所有マンションの違い

一棟所有マンション(建物丸ごと所有)と区分所有マンション(一室所有)では、評価の手順が異なります。

比較項目一棟所有マンション区分所有マンション(一室)
土地の評価建物が建っている全体の土地を評価敷地全体 × 敷地権割合を評価
区分所有補正率適用なし(一棟所有は対象外)適用あり(2024年改正の対象)
貸家評価賃貸割合を棟全体で計算賃貸割合を当該室のみで計算
小規模宅地等の特例貸付事業用宅地(50%減・200㎡限度)が適用可能同左

一棟所有マンションは区分所有補正率の対象外であるため、2024年改正の影響を直接受けません。ただし評価の計算は複雑で、適用できる特例の確認も含めて専門家への相談を推奨します。

マンションを相続した後の処分・活用と税金

マンションを相続した後、売却・賃貸・保有継続のいずれを選ぶかによって、かかる税金の種類と金額が変わります。それぞれの税負担を把握したうえで、最適な選択をしましょう。

相続後に売却する場合|譲渡所得税の計算

相続したマンションを売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して「譲渡所得税」が課されます。税率は所有期間によって異なります。

譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用(仲介手数料・印紙代など)

所有期間所得税住民税合計税率
5年超(長期譲渡)15%5%20.315%
5年以下(短期譲渡)30%9%39.63%

相続したマンションの所有期間は、被相続人が取得した日から計算します。親が10年前に購入したマンションを相続した場合、相続直後でも長期譲渡(税率20.315%)として扱われます。

取得費が不明な場合は「売却価格の5%」を概算取得費として使えますが、実際の購入価格が5%を超えているなら実額を使う方が節税になります。売買契約書・領収書などは必ず保管してください。

賃貸として活用し続ける場合|所得税・固定資産税

相続したマンションを賃貸運用する場合、毎年の家賃収入は「不動産所得」として所得税・住民税の申告が必要です。不動産所得は給与所得などと合算した総合課税になります。

不動産所得 = 家賃収入 − 必要経費(修繕費・管理費・減価償却費・固定資産税など)

確認事項内容
確定申告の要否不動産所得が年間20万円超なら申告が必要
減価償却建物部分を耐用年数に応じて毎年費用計上できる
固定資産税保有している限り毎年課税(賃貸収入の一部で賄うイメージ)
相続登記2024年4月から義務化(3年以内)。未登記のまま賃貸すると過料リスク

賃貸運用を続ける場合でも、相続登記を3年以内に完了させる義務があります。登記が遅れると10万円以下の過料が課される可能性があるため、早めに手続きを進めてください。

空き家のまま放置した場合のリスク

相続したマンションを売却も賃貸もせず空き家のまま放置した場合、複数のリスクが生じます。

リスクの種類内容金銭的な影響
固定資産税の継続課税住んでいなくても固定資産税がかかり続ける年間数万〜数十万円
管理費・修繕積立金の支払い義務区分所有マンションは空き家でも毎月の費用が発生年間12〜30万円程度
老朽化による資産価値の低下使用されないと劣化が加速し売却価格が下がる将来の売却損につながる
相続登記義務化の違反リスク3年以内に登記しないと10万円以下の過料過料 最大10万円

空き家のまま長期間放置するのは税務上・財務上ともに最もコストが高い選択になりやすいため、売却か賃貸かを早期に検討してください。

マンション相続の申告手続きと注意点

マンションを相続した場合の申告・手続きには、通常の相続と異なる書類や注意点があります。申告期限(10か月)を過ぎると各種ペナルティが発生するため、早めに準備を進めましょう。

申告期限は10か月|必要書類チェックリスト

相続税の申告期限は「被相続人が亡くなったことを知った翌日から10か月以内」です。マンション相続では通常の書類に加え、不動産固有の書類が必要になります。

書類の種類取得先用途
固定資産税評価証明書市区町村役場建物・土地の評価額確認
登記事項証明書(全部事項証明書)法務局敷地権割合・所有者の確認
マンションの間取り図・面積図売買時の資料・管理組合専有面積・総階数の確認
路線価図(財産評価基準書)国税庁ウェブサイト敷地の路線価確認
賃貸借契約書(賃貸の場合)手元の書類賃貸割合の計算
住宅ローン残高証明書(ローンがある場合)金融機関債務控除の計算

固定資産税評価証明書は相続開始年度のものが必要です。申告年と評価年が異なる場合もあるため、取得時期に注意してください。

相続登記の義務化(2024年4月〜)

2024年4月から相続登記が義務化されました。相続によりマンションを取得した人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。正当な理由なく期限を過ぎた場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

遺産分割協議が成立していない場合でも、「相続人申告登記」という暫定的な登記を行うことで、3年の義務を履行することができます。

状況対応方法期限
遺産分割が成立している通常の相続登記を申請取得を知った日から3年以内
遺産分割が成立していない相続人申告登記で暫定対応同上
遺産分割が後日成立した正式な相続登記に変更成立から3年以内

相続登記の申請は司法書士に依頼するのが一般的です。登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)が必要になるため、費用も事前に確認してください。

未分割申告の活用と小規模宅地特例の関係

遺産分割協議が申告期限内に成立しない場合は「未分割申告」を行います。法定相続分で相続したと仮定した内容で申告し、一旦納税する方法です。

注意が必要なのは、未分割の状態では小規模宅地等の特例が原則として適用できない点です。未分割申告の際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、後から特例を適用して更正の請求(還付)を行うことができます。見込書の提出を忘れずに行ってください。

マンション相続こそ早めに税理士へ相談すべき理由

マンションの相続は、区分所有補正率の計算・賃貸評価の判定・特例適用の判断・申告書類の準備など、通常の相続よりも専門知識が必要な場面が多く存在します。相続発生後に早めに税理士へ相談することが、節税と申告ミス防止の両面から重要です。

相談すべき理由|マンション相続特有の複雑さ

マンション相続で特に複雑になる点を整理します。

  • 区分所有補正率の計算:4つのパラメータ(築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度)を使う計算は、数値の扱い方を誤ると申告額が変わる
  • 賃貸割合の判定:相続発生時点の入居状況が評価に直結するため、状況確認と書類整理が必要
  • 小規模宅地等の特例の適用可否:居住用・賃貸用で適用要件が異なり、申告後に変更できないケースがある
  • 2024年改正の影響判定:すべてのマンションに影響があるわけではなく、物件ごとに計算が必要
  • 住宅ローン残高の債務控除:残高証明書の取得タイミングと申告額の対応

これらは一般の方が独力で正確に対処するには難易度が高く、申告ミスが税務調査の対象になるリスクもあります。

相談するメリット|税負担軽減と申告ミス防止

  • 評価額の適正化:区分所有補正率を正確に計算し、過払いを防ぐ
  • 特例の最大活用:小規模宅地等の特例・配偶者控除・賃貸割合評価減を組み合わせて節税効果を最大化
  • 遺産分割の税務アドバイス:誰がマンションを取得するかで税負担が変わるため、分割前から相談することで数十万〜数百万円の差が生まれることがある
  • 申告書の作成代行:複雑な計算式や添付書類の作成・確認をプロに任せることで申告ミスを防止
  • 期限管理のサポート:10か月という短い期限の中で、書類収集・評価・協議・申告をスムーズに進められる

相談しなかった場合のリスク

リスクの種類具体的な内容金銭的な影響の目安
区分所有補正率の計算ミス補正率を誤って過少申告追徴課税+延滞税・過少申告加算税(10〜15%)
小規模宅地等の特例の見落とし要件を満たしているのに適用しなかった数百万円の過払い(更正の請求は5年以内)
賃貸割合の判定誤り空室期間を適切に処理できなかった評価額の誤差が税額に影響
申告期限の超過申告が10か月を過ぎた無申告加算税(5〜20%)+延滞税
未分割のまま特例を逃す見込書を提出し忘れた特例が使えず数百万円の追加課税

費用対効果の試算|税理士報酬 vs 節税・リスク回避効果

項目金額の目安
相続税申告の税理士報酬(マンション含む)30〜80万円程度(遺産総額・複雑さによる)
小規模宅地等の特例適用による節税効果50〜300万円程度(敷地権の評価額次第)
区分所有補正率の計算ミス回避(追徴リスク)追徴課税額の10〜15%相当のリスク回避
賃貸評価・貸家建付地評価の適正適用50〜100万円の過払い防止
遺産分割の税務アドバイスによる節税100〜500万円(分割方法次第)

多くのケースで税理士報酬を大幅に上回る節税・リスク回避効果が得られます。特にマンションが含まれる相続では、費用対効果が高い依頼先として相続専門の税理士を選ぶことが重要です。

初回相談で確認すべき質問リスト

  • □ 我が家のマンションに区分所有補正率は適用されますか?評価乖離率はいくつになりますか?
  • □ 小規模宅地等の特例を適用できますか?適用するための条件は満たせていますか?
  • □ 賃貸に出しているマンションの賃貸割合はどのように計算しますか?
  • □ マンションを誰が相続するかによって税額はどう変わりますか?
  • □ 住宅ローンの残高は債務控除できますか?どのような書類が必要ですか?
  • □ 申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合はどうすればいいですか?
  • □ 相続後にマンションを売却する予定ですが、取得費加算の特例を使えますか?
  • □ 相続登記の手続きも依頼できますか?司法書士との連携はできますか?

よくある質問(FAQ)

Q. マンションの相続税評価額は市場価格(時価)と同じですか?

異なります。相続税評価額は固定資産税評価額(建物)と路線価×地積×敷地権割合(土地)を基に計算され、一般的に市場価格より低くなります。ただし2024年1月から導入された区分所有補正率により、市場価格と評価額の乖離が大きかったマンションは評価額が引き上げられるケースがあります。

Q. 区分所有補正率は全てのマンションに適用されますか?

すべてのマンションが対象ですが、評価水準(1÷評価乖離率)が0.6以上のマンションは補正なし(従来の評価額のまま)です。築年数が古いマンションや低層マンション、郊外・地方のマンションは評価水準が0.6を超えるケースが多く、影響を受けないことがあります。自分のマンションが影響を受けるかは4つのパラメータを計算して確認する必要があります。

Q. 相続したマンションに住宅ローンが残っている場合はどうなりますか?

住宅ローンの残高は「債務控除」として相続財産から差し引くことができます。相続発生日時点の残高が対象で、金融機関から残高証明書を取得して申告書に添付します。マンションの評価額からローン残高を差し引いた実質的な価値が正味の相続財産となります。

Q. 相続したマンションを売却する場合、相続税と譲渡所得税の二重課税になりますか?

相続税と譲渡所得税は別の税金として課税されるため、理論上は二重課税のように見えます。ただし「相続税の取得費加算の特例」(相続税申告期限から3年以内の売却が条件)を活用することで、支払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税の負担を軽減できます。売却を検討している場合は3年以内という期限を意識して動くことが重要です。

Q. タワーマンションと一般マンションで相続税の計算は大きく違いますか?

基本的な計算の手順(建物+土地の合算)は同じですが、2024年改正の影響の大きさが異なります。タワーマンション(高層・高所在階)は評価乖離率が大きくなりやすく、区分所有補正率による評価額の引き上げが大きい傾向があります。一方、低層・築古・郊外のマンションは補正が入らないケースも多くあります。

まとめ|マンション相続は2024年改正の影響確認と特例活用が鍵

マンションの相続税評価の基本

  • 評価は「建物(固定資産税評価額)+土地(路線価×地積×敷地権割合)」の合算で行い、2024年1月から区分所有補正率による上方修正が入るケースがある
  • 区分所有補正率は4つのパラメータ(築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度)から算出し、評価水準が0.6未満の場合に評価額が引き上げられる
  • 賃貸マンションは貸家・貸家建付地評価により自宅より低く評価でき、賃貸割合が高いほど節税効果が大きい

節税に使える特例・控除

  • 小規模宅地等の特例(土地部分を最大80%減額・330㎡限度)は申告期限までの遺産分割完了が条件
  • 配偶者の税額軽減(1億6,000万円まで非課税)と組み合わせることで、配偶者の相続税がゼロになるケースが多い
  • 売却する場合は申告期限から3年以内に売ることで、相続税の取得費加算の特例が使える

申告・手続きの注意点

  • 申告期限(10か月)までに遺産分割が成立しない場合は「未分割申告」+「分割見込書」の提出で特例適用の権利を確保する
  • 相続登記は2024年4月から義務化。3年以内に申請しないと10万円以下の過料が課される

今すぐ取るべき行動

  • 相続が発生したら、固定資産税評価証明書・登記事項証明書・マンションの間取り図を早急に収集し、区分所有補正率の計算と特例適用の可否を相続税専門の税理士に確認してください
  • まだ相続が発生していない場合も、自宅マンションの評価乖離率を事前に試算し、相続発生時の税負担を把握しておくことをお勧めします

※本記事は2025年12月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制は改正されることがありますので、申告前には必ず税理士または税務署へご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談に代わるものではありません。

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