


相続税の申告書は第1表から第15表と、その付表で構成されています。
ただし、すべての表を書くわけではありません。自分の相続に関係する表だけを選んで作成します。
作成の順番にもコツがあり、まとめ役の第1表は最初ではなく最後に書くのが正解です。
先に財産の明細(第9表〜第15表)を固め、その数字を第1表へ転記して税額を確定させる流れになります。
この順番を知らずに第1表から書き始めると、途中で手が止まってやり直しになりがちです。
さらに令和6年からは第11表の様式が付表1〜4に分かれるなど、直近の変更点も押さえておく必要があります。
本記事では、必要な表を絞り込むチェックリスト、書く順番、各表の記入のコツを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

最初に、申告書作成の全体像をつかみましょう。ポイントは「第1表は最後」「必要な表だけ選ぶ」の2つです。この2点さえ押さえれば、あとは手順どおりに進むだけです。
第1表は「相続税の申告書」という名前どおり、申告書全体のまとめ役です。
各相続人の課税価格や納める相続税額を集約する表のため、先に財産の明細を計算しないと、そもそも数字を書き込めません。
そこで、財産の明細を記入する第9表〜第15表を先に作り、その結果を第1表へ転記していきます。
「結論を書く欄が第1表、その根拠を作るのが他の表」とイメージすると、順番の理由が腑に落ちます。
実際、第1表には「第11表③」のように参照する表と欄の番号が印刷されています。この指示に従って各表から数字を転記していけば、迷わず埋められる設計になっています。
逆に言えば、参照先の表ができていないと第1表は1マスも埋まりません。順番を守ることが、そのまま作業効率につながります。
⬇
⬇
この3ステップは、そのまま相続税の計算の流れと同じです。表の作成に迷ったら「今どのステップにいるか」を確認してください。
作成前に、この3ステップに入るための準備も済ませておきましょう。相続人の確定(戸籍集め)・財産の確定(残高証明や登記の取得)・遺産分割協議の3つです。
とくに戸籍や残高証明は取り寄せに数週間かかることがあります。申告書の記入に入る前段階から、早めに動いておくと期限に余裕が生まれます。
知りたいことに応じて、次の順で読み進めてください。
申告書は「全部を完璧に」ではなく「必要な表を正確に」がゴールです。自分に関係ない表は飛ばして構いません。
まず全体像を1度つかんでしまえば、あとは各表を順番に埋めるだけの作業になります。難しく見える申告書も、分解すれば1つずつは単純な転記と計算の積み重ねです。

作成に入る前に、申告書がどんな構成かを俯瞰しておきましょう。全体像が見えれば、自分に必要な表も選びやすくなります。
| 表 | 役割 | 要否 |
|---|---|---|
| 第1表 | 申告書のまとめ(各人の課税価格・納税額) | 必須 |
| 第2表 | 相続税の総額の計算 | 必須 |
| 第4表・第4表の2 | 2割加算・贈与税額控除 | 該当時 |
| 第5表 | 配偶者の税額軽減 | 該当時 |
| 第6表・第7表・第8表 | 未成年者/障害者控除・相次相続控除・外国税額控除 | 該当時 |
| 第9表・第10表 | 生命保険金・退職手当金の明細 | 該当時 |
| 第11表(+付表1〜4) | 相続税がかかる財産の明細 | 必須 |
| 第11・11の2表の付表1 | 小規模宅地等の特例の計算 | 該当時 |
| 第12表・第14表 | 農地の納税猶予・暦年贈与の加算 | 該当時 |
| 第13表 | 債務・葬式費用の明細 | ほぼ必須 |
| 第15表 | 財産の種類別価額表(集計) | 必須 |
表の見方:黄色が多くの相続で必要になる表です。第1・2・11・13・15表が土台で、あとは自分に該当する表を足していくイメージです。第3表(農業相続人)など特殊なものは大半の人に不要です。
申告書の用紙は、次の方法で入手できます。
用紙とあわせて、国税庁が公表する「相続税の申告のしかた」という手引きも入手しておくと便利です。各表の記載例や計算の流れが図解されており、書き方に迷ったときの辞書として使えます。
重要なのは「被相続人が亡くなった年分」の様式を使うことです。様式は年によって改訂されるため、古いものを使うと書き直しになります。
とくに令和6年(2024年)分から第11表の様式が大きく変わっているため、この点は後述で詳しく解説します。
ネット上には旧様式で書かれた記入例も多く残っています。参考にする記載例が、被相続人が亡くなった年に対応しているかを必ず確認してください。国税庁が公表する年分ごとの記載例が最も確実です。
申告書の作り方には、いくつか選択肢があります。
注意したいのは、所得税でおなじみの「確定申告書等作成コーナー」には相続税の機能がない点です。
「作成コーナーで作れるはず」と探して見つからず、時間を無駄にする人が少なくありません。相続税は手書きか、民間ソフトかe-Taxで作成すると覚えておいてください。
3つの選択肢は、財産の複雑さで使い分けます。預貯金中心のシンプルな相続なら民間ソフトが手軽で、計算ミスも防げます。
ちなみに、税務署の窓口では申告書の書き方について無料で相談できます。ただし個別の節税相談や特例の適用判断までは踏み込まないため、一般的な記入方法の確認に向いています。混み合う時期は事前予約が無難です。
手書きは自由度が高い反面、転記ミスや計算間違いが起きやすいのが難点です。表の数が多い相続では、自動計算のあるソフトやe-Taxが安心です。
とはいえ、財産が預貯金と自宅だけといったシンプルな相続なら、手書きでも十分に対応できます。表の数が少なければ、転記の量も限られるためです。自分の相続の複雑さに合わせて選びましょう。
どの方法を選んでも、提出する申告書の様式は同じです。作り方が違うだけで、完成品の中身に差はありません。自分が最も正確に、無理なく作れる方法を選ぶのが正解です。
e-Taxは添付書類もデータで送れて便利ですが、マイナンバーカードや事前登録の準備が必要です。使い慣れていない場合は、初回は手間に感じるかもしれません。

全15表を前に途方に暮れる必要はありません。該当するものにチェックを入れれば、自分が作る表が自動的に決まります。
重要ポイント:チェックが付いた表に加え、誰でも作る第1・2・11・13・15表を用意すれば、必要な表はそろいます。「該当しない表は作らない」で問題ありません。
チェックリストを最初にやっておくと、必要な用紙を過不足なく用意できます。作りながら「この表も要るのか」と後から気づくと、二度手間になりがちです。
どんな相続でも基本的に作成するのが、次の5表です。
この5表が申告書の骨格です。まずここを固め、チェックリストで該当した表を肉付けしていきましょう。
第13表を「ほぼ必須」としたのは、借金も葬式費用も一切ない相続がまれだからです。葬式費用は多くの相続で発生するため、実質的には土台の5表に含めて考えて差し支えありません。
逆に、多くの人に不要な表もあります。第3表(農業相続人)・第8表(外国税額控除)・第12表(農地の納税猶予)は、農業や海外資産といった特別な事情がある場合だけです。
「表が15もある」と身構える必要はありません。一般的な相続で使うのは、土台の5表に控除の2〜3表を足した程度。全体の半分も使わないのが普通です。
たとえば「配偶者と子が自宅と預貯金を相続し、生命保険金もある」という典型的なケースなら、第1・2・5・9・11・13・15表と小規模宅地の付表があれば足ります。数えてみると8種類ほどで、思うほど多くありません。
該当するかどうか迷いやすい表を、補足しておきます。
【第9表(生命保険金)】
非課税枠(500万円×法定相続人)の範囲内でも、保険金を受け取っていれば作成します。「非課税だから不要」ではなく、非課税枠を計算するために使う表です。
【第5表(配偶者の税額軽減)】
配偶者が財産を受け取るなら、税額が0円でも作成します。この表を出さないと軽減が適用されず、本来ゼロの税額が発生してしまいます。
【第13表(債務・葬式費用)】
借金や葬式費用があれば作成します。財産から差し引けるお金なので、該当があるのに作らないと相続税を払いすぎます。
「特例や控除を使う表は、出さないと適用されない」が共通ルールです。有利になる表ほど、作成を忘れないでください。
相続時精算課税で過去に贈与を受けていた人も要注意です。この制度を選んだ人は、相続時に第11の2表で過去の贈与財産を相続財産に加算します。記入漏れが多い表として知られています。
「もう贈与税を払って済んだ話」と思い込んで書き忘れると、後日の指摘対象になります。過去に精算課税を選択した記憶がある場合は、当時の贈与税申告書を確認してください。

最初のステップは、財産と債務の明細作りです。ここが申告書の土台であり、最も時間がかかる部分でもあります。表ごとに見ていきましょう。
死亡保険金は第9表、死亡退職金は第10表に記入します。
どちらも「誰が・いくら・いつ受け取ったか」を書き、500万円×法定相続人の数の非課税枠を差し引いた課税金額を計算します。
ここで出した課税金額を、後述の第11表(付表4)へ転記します。
参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
注意点は、相続放棄した人や相続人以外が受け取った分には非課税枠が使えないことです。人数のカウントには含めますが、その人の受取分は枠の対象外になります。
受取人が複数いる場合、非課税枠は受け取った金額の割合で按分します。第9表・第10表にはこの按分計算の欄も用意されているため、指示に沿って埋めていけば計算できます。
なお、死亡退職金は死亡後3年以内に支給が確定したものが対象です。3年を過ぎて確定した退職金は相続税ではなく受取人の所得税の対象となり、第10表には記入しません。
申告書の中心が、相続税がかかる財産を記入する第11表です。
令和6年(2024年)1月以降の相続からは、財産の種類ごとに付表1〜4へ記入する新様式になりました。
| 様式 | 記入する財産 |
|---|---|
| 付表1 | 土地・家屋 |
| 付表2 | 有価証券(株式・投資信託・国債など) |
| 付表3 | 現金・預貯金 |
| 付表4 | 家庭用財産・事業用財産・保険金・退職金など上記以外 |
| 第11表(本表) | 付表1〜4の合計をまとめる |
表の見方:作成順は「付表1〜4に財産を書く→本表で合計する」です。古い記入例を見て1枚にまとめて書こうとすると、様式が合いません。必ず亡くなった年分の様式で確認してください。
この改正は、財産の種類ごとに記入欄を分けて申告書を作りやすくする狙いで行われました。慣れれば旧様式より整理しやすい構成ですが、令和5年以前の相続では旧様式(1枚の第11表)を使う点に注意が必要です。
付表4には「その他の財産」として幅広い財産が入ります。家財道具・自動車・貸付金・ゴルフ会員権のほか、近年は暗号資産(仮想通貨)もここに記入します。見落としやすい財産の受け皿でもあるため、記入前に持ち物を広く洗い出しておきましょう。
各付表には、財産の種類・所在地・数量・単価・評価額と、取得した人・金額を記入します。土地の評価額は「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」で計算した金額を転記します。
財産の記入では「利用区分」も書きます。土地なら自用地・貸宅地・貸家建付地・借地権などの区分で、これによって評価額が変わります。上場株式は証券会社名と支店、預貯金は金融機関名と口座種別まで記入します。
付表には「遺産の分割状況」を記入する欄もあります。全部分割済みなら「1」、一部が未分割なら「2」、全部未分割なら「3」を選び、分割が確定した日付を記入します。
小規模宅地等の特例を使う場合は、先に「第11・11の2表の付表1」で減額後の価額を計算し、その金額を付表1の土地の欄に転記します。特例の計算が先、財産明細への反映が後、という順番です。
土地の評価明細書の書き方は、下記の記事で解説しています。

被相続人の借金や葬式費用は、財産から差し引けます。第13表に記入しましょう。
| 区分 | 差し引ける | 差し引けない |
|---|---|---|
| 債務 | 借入金・未払いの医療費・未払いの税金 | 団信で消える住宅ローン・保証債務 |
| 葬式費用 | 通夜・告別式・火葬・お布施 | 香典返し・法要(初七日等)・墓地の購入費 |
重要ポイント:差し引けるものを漏らすと、相続税を払いすぎます。お布施のように領収書が出ない支払いも、金額・日付・支払先をメモしておけば控除できます。
第13表には、債務や葬式費用を「誰が負担したか」も記入します。負担した人の課税価格から差し引かれるため、負担者を正しく書かないと控除の効果が別の人に回ってしまいます。
住宅ローンは注意が必要です。団体信用生命保険(団信)が付いていれば、死亡時にローンが完済されるため債務控除の対象になりません。団信なしのローンだけが控除できます。
相続開始前の一定期間に相続人へ贈与された財産は、遺産に足し戻して第14表に記入します。
この期間は改正により、従来の「3年以内」から「7年以内」へ段階的に延長されています。
「もう7年分を書く」は誤解で、2026年中の相続はまだ3年以内の贈与だけが対象です。年をまたぐ相続では、対象期間の確認を慎重に行ってください。
加算するのは、相続や遺贈で財産を取得した人への贈与です。財産を受け取らない孫への贈与は、原則として加算されません。誰への贈与かを1件ずつ確認しましょう。
加算する金額は、贈与時点の価額です。贈与後に値上がりや値下がりがあっても、もらった当時の金額で足し戻します。過去の贈与契約書や贈与税申告書で、当時の価額を確認してください。
加算した贈与に贈与税を払っていた場合は、二重課税を防ぐため「第4表の2」で贈与税額控除を計算します。加算(第14表)と控除(第4表の2)はセットで作成する、と覚えておくと漏れません。
参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
第15表は、第11表〜第14表の内容を財産の種類別に集計する表です。
各相続人が取得した財産・差し引く債務を種類別に並べ、1人ひとりの課税価格(財産−債務)を確定させます。
ここで出た各人の課税価格が、次のステップ2で第1表へ転記する数字になります。
各人の課税価格は、1,000円未満を切り捨てて記入します。切り捨てのタイミングを間違えると後の計算がずれるため、様式の指示どおりの順番で処理してください。
第15表には「続」と書かれた2枚目があります。相続人が多い場合は、この続きの用紙を使って全員分を記載します。人数分の欄が足りるかを、記入前に確認しておきましょう。
ここまでがステップ1です。財産の洗い出しと評価さえ正確なら、あとの計算は各表の指示に従うだけで進みます。時間をかけるべきはこの財産把握の部分だと意識してください。
財産の把握が甘いと、後の計算をどれだけ正確に行っても正しい税額にはなりません。土台が財産明細である以上、ここの丁寧さが申告全体の精度を決めます。
集計表のため、前の表の数字を正確に拾えていれば機械的に埋まります。逆に、ここで合計が合わなければ前の表のどこかにミスがあるサインです。
第15表は税務署が財産の全体像を把握する重要な表でもあります。土地・家屋・有価証券・現預金・保険金といった種類ごとに、いくらずつあるかが一目で分かる構成です。
この段階で「思ったより課税価格が大きい」と感じたら、債務や葬式費用(第13表)の計上漏れ、あるいは特例の適用漏れがないかを見直しましょう。集計表は、抜け漏れに気づく最後のチェックポイントになります。
第15表は税務調査でも最初に見られる表です。ここに書かれた財産構成が、生前の収入や暮らしぶりと釣り合っているかを税務署はチェックします。不自然に預貯金が少ないと、名義預金などの疑いにつながります。
集計が終わったら、課税価格の合計と基礎控除を比べてみてください。合計が基礎控除以下なら、そもそも相続税はかからず、原則として申告も不要になります(特例で0円にする場合を除く)。ここで初めて「申告が必要かどうか」の最終判定ができます。

財産の明細ができたら、いよいよ税額の計算です。相続税は「まず総額を出し、それを各人に振り分ける」という独特の計算をします。第2表と第1表を使って進めます。
第2表は、家族全体の相続税の総額を計算する表です。
実際の分け方ではなく、いったん法定相続分で分けて計算するのがポイントです。この総額計算により、分け方が変わっても家族全体の税額は変わらない仕組みになっています。
第2表には相続税の速算表が印刷されており、法定相続分で分けた各人の取得金額に税率を当てはめれば税額が出ます。取得金額が大きいほど税率が高くなる累進構造です。
法定相続人の数え方には注意が必要です。相続放棄した人も基礎控除の計算では人数に含め、養子は実子がいれば1人まで・いなければ2人までしか含められません。
第2表で総額が出たら、第1表の上部に移ります。
第1表の上部には、被相続人の氏名・死亡日・住所や、各相続人の氏名・続柄・取得した課税価格なども記入します。ここは第11〜15表から転記する欄が中心です。
ここでは、相続税の総額を実際に取得した財産の割合(あん分割合)で各相続人へ振り分けます。
多く財産をもらった人ほど多く負担する、という当たり前の配分がここで行われます。あん分割合の合計は必ず1.00になるよう調整します。
あん分割合は小数点以下を割り切れないことが多く、その場合は各人の割合を調整して合計が1.00になるようにします。端数の付け方で各人の税額が数百円変わることもありますが、この調整は相続人間で合意すれば任意に行えます。
あん分割合は、通常は小数点以下2桁で計算します。桁数の取り方は様式の指示に従いますが、合計が1.00になっていれば端数の割り振り自体は柔軟です。数百円の差にこだわりすぎず、合計を合わせることを優先してください。
【前提】課税価格の合計5,000万円、相続人は配偶者と子2人(法定相続人3人)、法定相続分どおりに取得したシナリオです。
⬇
⬇
計算ロジック:基礎控除以下なら申告も納税も不要ですが、この例は200万円超過のため申告が必要です(2026年時点)。配偶者の税額軽減は第5表を出して初めて適用されるため、次のステップ3に進みます。
この例のように、基礎控除をわずかに超える相続では税額そのものは小さくなります。それでも申告義務は生じるため、「少額だから申告しなくてよい」とはなりません。金額の大小にかかわらず、超えたら申告が必要です。

最後に、各種の控除や加算を反映します。この調整で納税額が大きく変わるため、該当する表は必ず作成してください。
| 表 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 第4表 | 2割加算 | 孫・兄弟姉妹など配偶者・子・親以外 |
| 第4表の2 | 贈与税額控除 | 加算した生前贈与に贈与税を払っていた人 |
| 第5表 | 配偶者の税額軽減 | 配偶者(1億6,000万円まで無税) |
| 第6表 | 未成年者・障害者控除 | 未成年者・障害のある相続人 |
| 第7表 | 相次相続控除 | 10年以内に続けて相続があった人 |
| 第8表 | 外国税額控除 | 海外財産に現地で課税された人 |
表の見方:使う頻度が高いのは黄色の第5表(配偶者の税額軽減)です。加算(第4表)は税額を増やし、それ以外は減らす表と整理できます。
第6表の未成年者控除・障害者控除は、控除しきれない分を扶養義務者(親など)の税額から引ける仕組みです。子が未成年で税額が少ない場合、余った控除枠を親が使えることがあります。
第7表の相次相続控除は、10年以内に相続が続いた場合の救済です。前回の相続で相続税を払っていることが条件で、当時の申告書控えが計算に必要になります。連続相続の家庭は見落とさないでください。
配偶者が財産を相続するなら、第5表はほぼ必須です。
配偶者が取得した財産は、1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い金額まで、相続税がかかりません。
効果が非常に大きい一方、この表を提出しないと軽減は適用されません。税額が0円になる場合でも、申告書一式を提出する必要があります。
「法定相続分まで」か「1億6,000万円まで」の大きい方が上限です。配偶者の法定相続分は、子と分ける場合は2分の1、親と分ける場合は3分の2になります。多くのケースで1億6,000万円が実質的な基準になります。
「配偶者が全部相続すれば無税だから申告不要」は、最も多い誤解の1つです。無税にするために申告が必要、という逆説的な関係を理解しておいてください。
この関係は小規模宅地等の特例でも同じです。特例で土地の評価を8割下げて税額が0円になる場合も、申告書を提出して初めて特例が適用されます。0円だから何もしない、が最も危険な選択です。
ステップ3まで終えたら、第1表の各人の納税額を合計し、第2表の相続税の総額と一致するかを確認します。加算・控除で各人の負担は変わっても、加算がなく控除前なら合計は総額と一致するはずです。ここが合っていれば、計算の大枠は正しく組めています。
ただし、原則として申告期限までに遺産分割が終わっていることが適用の条件です。分割がまとまらない場合の対応は、期限内に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。
配偶者の税額軽減は効果が大きい分、二次相続まで見た使い方が重要です。今回すべてを配偶者に寄せて0円にすると、次に配偶者が亡くなったときの相続税が膨らむことがあります。
第5表を作成するときは「今回いくら軽減するか」だけでなく、「配偶者にどれだけ財産を残すのが家族全体で有利か」まで意識すると、申告書作りが節税につながります。
ステップ3では、各人の事情に応じた最終調整を行います。加算がある人・控除がある人で、税額が上下します。
各人の算出税額に、加算(第4表)を足し、控除(第5〜8表)を引きます。
その結果が、各相続人が実際に納める最終的な相続税額です。納付税額は100円未満を切り捨てて確定します。
これで第1表が完成し、申告書全体が仕上がります。最後に各人の税額を合計し、第2表で出した総額と大きくずれていないかを確認しましょう。
2割加算がある場合は先に加算してから控除を引く、という順番も決まっています。第4表・第6〜8表の控除は「第8の8表」に集約してから第1表へ転記する流れになるため、控除が複数あるときはこの内訳書も作成します。
控除には引く順番も定められています。配偶者の税額軽減や未成年者控除など、複数の控除がある場合は様式の順序どおりに適用します。順番を変えると税額が変わることもあるため、独自の順で計算しないでください。
相続税の計算の全体像は、下記の記事でも解説しています。


申告書には、形式面のルールと内容面の落とし穴があります。どちらもミスすると再提出や税務調査の原因になるため、先に押さえておきましょう。
訂正印は必須ではありませんが、二重線での訂正が基本です。細かい点ですが、機械読み取りの表を折って郵送すると、税務署から確認が入ることがあります。
マイナンバーの記載も忘れがちなポイントです。第1表には財産を取得した相続人全員のマイナンバーを記入し、本人確認書類(マイナンバーカードの写しなど)を添付します。
数字は3桁ごとにカンマを入れず、枠内に1文字ずつ書くのが基本です。円単位で記入し、途中の計算で生じた端数の扱いも様式の指示に従います。細部は国税庁の記載例に合わせると間違いありません。
元号のコード欄など、見慣れない記入項目もあります。生年月日や死亡日を「令和は5、平成は4」のようにコードで書く欄で、記載例に対応表があります。空欄のまま提出すると差し戻される項目なので、記載例と照らして埋めてください。
最も指摘が多いのが、名義預金とタンス預金の申告漏れです。
家族名義でも、実質的に被相続人が管理・拠出していた預金(名義預金)は相続財産に含めます。
税務署は生前の収入と申告財産を照らし合わせ、名義預金やタンス預金を重点的に調べます。
見つかると、不足していた相続税に加えて加算税・延滞税がかかります。心当たりのある口座や現金は、集計の段階で洗い出しておきましょう。
名義預金かどうかは、預金の出どころと管理していた人で判定されます。専業主婦だった配偶者の名義に多額の預金があるのに、その人自身の収入では説明がつかない、というケースが典型です。
判断に迷う口座は、通帳の入出金履歴をたどって資金の流れを確認します。この確認を怠ると、税務調査で最も指摘されやすい財産だけに、後々の負担が大きくなります。
タンス預金も同じ扱いです。金庫の中の現金や、亡くなる直前に口座から引き出した大口のお金も相続財産に含めます。「手元にあるから分からない」は通用せず、出金の記録から追跡されます。
付表には、財産ごとに「誰がいくら取得したか」を記入します。
このとき、申告書に書いた取得者・金額が、遺産分割協議書の内容と食い違わないよう注意が必要です。
「協議書では長男が相続した土地を、申告書で次男の欄に書いてしまう」といったズレは、税務署に必ず気づかれます。
取得者が違えば課税価格も変わり、各人の税額もずれます。単なる書き間違いでも、税額計算の土台が崩れるため、再提出や修正の原因になりかねません。
申告書を作るときは、遺産分割協議書を横に置き、1つずつ照合しながら記入してください。
協議書が未分割で「法定相続分で仮申告する」場合は、付表の分割状況を「3(全部未分割)」とし、各人が法定相続分で取得したものとして記入します。この場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は一旦使えません。
後日、分割が確定したら更正の請求や修正申告で精算します。未分割申告は手間が二度かかるため、可能な限り期限内の分割を目指すのが得策です。
もう1つ見落としがちなのが、財産の価額と債務の負担者の対応です。土地を相続した人がその土地のローンも引き継ぐ、というように、財産と債務は関連づけて記入するのが自然です。バラバラに書くと課税価格の計算がおかしくなります。

申告書ができたら、あとは提出です。提出先と方法、期限を間違えないことが、最後の関門になります。
提出先は、被相続人(亡くなった方)の住所地を管轄する税務署です。相続人の住所地ではない点に注意してください。
期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内。申告と納税の期限は同じです。
なお、亡くなった方に事業や不動産の所得があった場合は、相続税とは別に「準確定申告」(4ヶ月以内)も必要になります。相続税の申告書と混同しないよう、2つの申告の違いは下記の記事で確認してください。

期限を過ぎると無申告加算税や延滞税がかかるうえ、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えなくなるおそれもあります。
納税は現金一括が原則です。申告書の提出と同じ期限までに、税務署か金融機関で納付します。まとまった現金が用意できない場合の延納・物納という制度もありますが、要件が厳しいため、まずは期限内の現金納付を目指すのが基本です。
被相続人が老人ホームに入居していた場合は、住民票の住所ではなく「生活の本拠だった場所」で提出先を判断することがあります。判断に迷うときは、生前の住所地を管轄する税務署に確認しておくと確実です。
海外で亡くなった場合や、被相続人が国内に住所を持たなかった場合も提出先の判断が特殊になります。国際的な要素がある相続では、提出先の確認から専門家に相談するのが安全です。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 窓口へ持参 | その場で受付印をもらえる。控えを持参すれば控えにも押印してもらえる |
| 郵送 | 信書扱いの郵便で送る。消印の日付が提出日になる。控えと返信用封筒を同封すると受付印つきの控えが返る |
| e-Tax | オンラインで提出。添付書類もデータで送れる。事前の利用登録が必要 |
表の見方:相続人が複数いる場合、申告書は代表者がまとめて提出できます(連署が一般的)。ただし納税は各相続人がそれぞれ行う点に注意してください。
郵送する場合、申告書は「信書」にあたるため、宅配便やゆうパックでは送れません。普通郵便かレターパックなどの信書対応の方法を使います。特定記録や簡易書留にすると、送付の記録が残って安心です。
控えに受付印がほしい場合は、申告書のコピーと切手を貼った返信用封筒を同封します。この控えは名義変更や金融機関の手続きでも求められることがあるため、受付印つきで残しておくと後の手続きがスムーズです。
重要ポイント:提出後に修正が必要になったときのため、控えの保管は必須です。名義変更や後日の更正の請求でも、申告書の控えが基礎資料になります。
提出前チェックで見落としやすいのが、押印や署名の漏れです。近年は相続人の押印が不要になりましたが、遺産分割協議書には実印と印鑑証明書が必要です。添付書類側の押印・証明も忘れずに確認してください。
添付書類の詳しいチェックリストは、下記の記事で解説しています。


ここまで読んで「自分でできそうか」を判断したい方へ、目安を示します。財産の中身で、自力申告の難易度は大きく変わります。
この条件なら、民間の申告ソフトを使えば自力申告も十分に可能です。ソフトは入力すれば必要な表を自動作成してくれます。
ソフトの利点は、複雑な計算や表の連動を自動でやってくれる点です。第9表で計算した非課税枠が第11表に自動反映されるなど、転記ミスの心配が減ります。
無料で使えるソフトもいくつか公開されています。ただし、第3表や第8表など一部の特殊な表に対応していないものもあるため、自分の相続に必要な表をカバーしているかを事前に確認してください。
それでも、財産の洗い出しと評価だけは自分で正確に行う必要があります。ソフトはあくまで「入力した情報を正しく計算する」道具で、財産の見落としまでは防げないことを理解しておきましょう。
土地評価や特例の判断は、税額を数十万〜数百万円動かします。評価を1つ間違えるだけで、税理士報酬をはるかに超える損失になり得ます。
また、相続税は「4件に1件」程度の割合で税務調査が入るといわれます。調査で申告漏れが見つかると、8割前後のケースで追徴課税を受けるのが実態です。
複雑な相続を自力で申告して調査対象になれば、追徴税額に加えて精神的な負担も大きくなります。難しいケースこそ、最初から専門家に任せる安心感の価値が高まります。
税理士が関与した申告では、書面添付制度を使うことで調査自体を回避できる場合もあります。この制度は税理士が申告内容を保証するもので、税務署はまず税理士への意見聴取を行い、そこで疑問が解消すれば実地調査に至らないことがあります。
「財産の洗い出しや預貯金の集計は自分で進め、土地評価と申告書の仕上げだけ税理士に頼む」という分担も可能です。
資料集めを自分でやっておけば、税理士報酬を抑えられることもあります。全部を抱え込むか丸投げするか、の二択ではありません。
ただし、途中まで自分で進めた内容を税理士がチェックする場合、かえって手戻りが増えることもあります。どこまで自分でやるかは、依頼前に税理士と分担を相談しておくとスムーズです。
まずは概算で自分の相続の難易度をつかみ、難しい部分だけプロに任せる。これが最もコスト効率のよい進め方です。
もう1つの目安が、税額の規模です。基礎控除を少し超える程度で税額が数万〜数十万円なら、ソフトを使った自力申告でも十分に取り返せる範囲です。
一方、遺産が大きく税額が数百万円規模になるなら、特例や評価の巧拙で税額が大きく動きます。この場合は、報酬を払っても税理士に任せた方が結果的に得になることがほとんどです。
依頼するタイミングも大切です。申告期限の直前に駆け込むと、受けてくれる事務所が限られ、報酬も割高になりがちです。相続開始から早めに相談すれば、選択肢も検討の時間も広がります。

税理士には得意分野があり、相続税申告の経験が少ない事務所も実は多くあります。依頼するなら、相続税の対応実績がある税理士に絞って一括相談・見積りで比較するのが確実です。
相続税の申告書は、埋める数字しだいで税額が大きく変わります。
たとえば土地と自宅がある相続のケース。経験の浅いA税理士は、土地を路線価×面積のまま評価し、小規模宅地等の特例も保守的に適用して税額120万円で申告する方針でした。
相続税の対応実績が豊富なB税理士は、土地の減額補正を検討し、特例の要件も精査。評価額と特例の見直しで税額を40万円まで下げ、80万円の差がつきました。
申告書は「書き方」だけでなく「何をどう評価して書くか」で結論が変わります。だからこそ、最初の申告の質が問われるのです。
相続税の対応実績がある税理士から複数の見積りを取ると、次の3つの判定ポイントで実務力を比較できます。
判定ポイント1:土地評価の減額を検討するか。路線価×面積で済ませず、現地調査や補正の適用まで踏み込むか → 評価を詰める税理士の方が、払いすぎを防げると判定できます。
判定ポイント2:特例の適用を根拠つきで示すか。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を、要件を確認したうえで最大限に活かせるか → 特例に強い税理士の方が、税額を圧縮できると判定できます。
判定ポイント3:財産の拾い漏れまで確認するか。名義預金・生前贈与・みなし相続財産など、漏れやすい財産をチェックする体制があるか → 集計の質を確認する税理士の方が、申告後の指摘リスクを減らせると判定できます。
顧問税理士や知人の紹介など、1社だけに相談すると、その申告が十分かどうかを測る物差しがありません。
相続税に不慣れな事務所では、土地評価の減額漏れや特例の適用漏れがあっても、誰も気づかないまま申告が終わります。
払いすぎた相続税は、自分から更正の請求をしない限り戻りません。
複数の実績ある税理士の提案を並べることが、適正な税額と報酬への最短ルートです。
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 提案内容 | 土地評価の減額方針と、使える特例の適用方針が示されているか |
| 試算相続税額 | 特例適用後の税額と、その根拠(評価・要件判定)が示されているか |
| 報酬額 | 基本報酬+土地・特例などの加算を含めた総額か |
重要ポイント:相続税の報酬相場は遺産総額の0.5〜1%程度です。「報酬の安さ」だけでなく「税額まで含めた総負担」で比較してください。
⬇
⬇
⬇
重要ポイント:「相続税の申告は年間どのくらい扱っていますか」という質問に具体的に答えられるかは、実績を見極める分かりやすいサインです。初回相談で率直に聞いて構いません。
重要ポイント:申告書の作成を相談するなら、財産の資料が主役です。課税明細書と通帳が揃っていると、必要な表や税額の試算まで初回相談で進められます。
第9表〜第15表(財産の明細)から書き始めます。第1表は各表の数字を集約するまとめ役のため、最後に作成します。
「財産の明細→税額計算(第1・2表)→控除(第4〜8表)」の3ステップで進めると迷いません。
いいえ。自分の相続に関係する表だけを作成します。
ほとんどの相続で必要なのは第1・2・11・13・15表で、あとは保険金があれば第9表、配偶者が相続するなら第5表、というように該当する表を足していきます。
作れません。国税庁の作成コーナーは所得税や贈与税に対応していますが、相続税の申告書作成機能はありません。
相続税は、手書き・民間の申告ソフト・e-Taxのいずれかで作成します。
1つの申告書に相続人全員が連名で記載し、代表者がまとめて提出するのが一般的です。
別々に作成することもできますが、内容がずれると税務署に確認されやすくなります。納税は各相続人がそれぞれ行います。
提出前なら、二重線で消して正しい数字を書き直します。修正テープや修正液は使えません。
提出後に誤りに気づいた場合は、税額が少なすぎたなら修正申告、多すぎたなら更正の請求(申告期限から5年以内)で訂正できます。自主的な修正なら、加算税も軽く済みます。
相続税申告書の書き方について、重要なポイントを整理します。
【表の選び方】
【書く順番】
【記入と提出】
【今すぐ取るべき行動】
※本記事は2026年7月時点の法令・情報に基づいて作成しています。税制改正により、内容が変更となる可能性があります。最新の制度については国税庁の公式サイトや税理士にご確認ください。