相続税の申告手続きは、相続人自らがおこなう必要があります。
しかし、相続財産の内訳や相続・遺贈の状況、法定相続人の数によって、相続税の申告手続きは異なります。
また、相続税には、さまざまな控除制度が用意されているので、ご自身が各種控除制度を利用できるのかについても慎重に判断しなければいけません。
相続税の申告・納付手続きにミスがあると、あとから追徴などのリスクも考えられます。
本記事では、「相続税申告書の書き方がわからない」「相続が発生したが何から手を付ければよいのか判断できない」という方のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- 相続税申告書の書き方の流れ
- 相続税申告書以外に必要になる添付書類
- 相続税の申告・納付手続きの概要
相続税申告書を書く一般的な順序

相続税申告書を作成するときの一般的な順序は、以下のとおりです。
- 被相続人の相続財産を把握する(第9表~第15表)
- 相続税を計算する(第1表~第3表)
- 相続税額の控除を計算して最終的な相続税額を算出する(第4表~第8表)
まずは、相続税を把握するときの全体像を押さえましょう。
【ステップ① 相続財産の把握】第9表~第15表を記載する
相続税を計算する前提として、被相続人の相続財産の全貌を把握する必要があります。
相続財産の全体像を確認するには、相続税申告書の第9表~第15表を記入してください。
【ステップ② 相続税の計算】第1表~第3表を記載する
把握できた相続財産の全体像を前提として、相続税がいくら課税されるのかを計算します。
相続税を計算するときには、相続税申告書の第1表~第3表を確認してください。
【ステップ③ 税額控除の額と最終的な相続税額の算出】第4表~第8表を記載する
実際に納付義務が課される相続税額は、各種控除制度を踏まえて算出されます。
相続人が利用できる控除制度を確認するには、相続税申告書の第4表~第8表を活用してください。
【ステップ①】相続財産の把握

まずは、被相続人の相続財産を把握する具体的な方法について解説します。
第9表:生命保険金などの明細書
被相続人が死亡して生命保険金・死亡保険金・生命共済金などを受け取ったときには、「生命保険金などの明細書(第9表)」を記入する必要があります。
保険会社の情報、生命保険金を受け取った日時、金額などを記入したうえで、ご自身で課税金額を計算しましょう。
第10表:退職手当金などの明細書
被相続人が死亡して退職手当金・功労金・退職給付金などを受け取った場合、「退職手当金などの明細書(第10表)」相続税の課税対象に含まれる退職手当金等を計算のうえ、明細書に記入してください。
第11表:相続税がかかる財産の明細書
相続税の課税対象にはさまざまな財産が含まれます。
たとえば、現金、預貯金、有価証券、宝石、不動産、貸付金、特許権、著作権など、金銭に換えることができる経済的価値を有する全てのものが含まれます。
税務調査などによって計上漏れがあとから発覚すると追徴などのリスクがあるため、脱税の嫌疑をかけられないためにも、国税庁のHPを確認しながら必要事項を丁寧に記入しましょう。
なお、相続税がかかる財産をリストアップするときには、「相続税がかかる財産の明細書(相続時精算課税適用財産を除きます)(第11表)」「相続時精算課税適用財産の明細書・相続時精算課税分の贈与税額控除額の計算書(第11の2表)」に分けて記載する必要があります。
第13表:債務及び葬式費用の明細書
マイナスの財産や葬式費用は、相続財産から差し引くことができます。
相続税の課税対象額が引き下げられるので、漏れなく記入しましょう。
被相続人名義のローン残債や借入金などについて、債権者の氏名もしくは名称や債務額の必要事項を「債務及び葬式費用の明細書(第13表)」に記載してください。
第14表:相続開始から遡り3年以内に贈与を受けた場合に提出
「純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額・出資持分の定めのない法人などに遺贈した財産・特定の公益法人などに寄附した相続財産・特定公益信託のために支出した相続財産の明細書(第14表)」には、相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、その相続開始前3年以内に被相続人から暦年課税に係る贈与によって取得した財産がある場合に記入する明細書のことです。
なお、令和6年1月1日以降に実施される暦年贈与については、相続財産に組み込まれる生前贈与の期間が7年に延長されているので、注意しましょう。
第15表:相続財産の種類別価額表
第11表~第14表の内容を基に、「相続財産の種類別価額表(第15表)」に相続財産の全貌をまとめます。
ステップ①では、第15表だけを見れば相続財産の全てがわかるようにするのがゴールです。
相続財産を正確に把握できなければ、相続税の負担内容を算出することはできません。
「相続人だけでは被相続人がどれだけの財産を所有していたかわからない」「相続財産の全貌はわかるものの、控除や記入事項のルールが難しい」などとお悩みの方は、必ず弁護士や税理士などの専門家まで相談してください。
【ステップ②】相続税の計算

相続財産の全貌が判明したあとは、相続税の課税価格の合計額及び相続税の総額を計算するためのステップに進みます。
第1表:基本的な相続税の申告書
「相続税の申告書(第1表)」は、第11表~第15表で得られた相続財産の情報を基に、相続人に課税される相続税額を記入する申告書です。
また、相続の状況に応じて以下5つの付表の提出を求められることもあります。
- 納税義務等の承継に係る明細書(兼相続人の代表者指定届出書)(第1表の付表1)
- 還付される税額の受取場所(第1表の付表2)
- 受益者等が存しない信託等に係る相続税額の計算明細書(第1表の付表3)
- 人格のない社団等又は持分の定めのない法人に課される相続税額の計算明細書(第1表の付表4)
- 特定一般社団法人等に課される相続税額の計算明細書(第1表の付表5)
第2表:相続税の総額の計算書
「相続税の総額の計算書(第2表)」は、第1表及び第3表の「相続税の総額」を計算するための書類です。
相続税の基礎控除額の計算方法や法定相続人の数え方、相続税の税率などについては、厳格なルールが定められています。
特に、相続放棄や養子縁組などがある場合には、相続税の計算が複雑になるので注意が必要です。
第3表:農業相続人がいる場合に提出
財産を取得した人のなかに農業相続人がいる場合、特例農地等については、農業投資価格によって課税財産の価額を計算する必要があります。
このケースでは、「財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額の計算書(第3表)」と合わせて、「外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書(第8表)」「農地等についての納税猶予の適用を受ける特例農地等の明細書(第12表)」を提出してください。
【ステップ③】税額控除の額と最終的な相続税額の算出
相続制度には、さまざまな控除制度が用意されています。
高額になり得る相続税負担を軽減するのに役立つので、相続税を申告するときには、必ず自身が利用できる控除制度の有無を確認しましょう。
第4表:相続税額の加算がある場合に提出
財産を取得した人のなかに、被相続人の一親等の血族(代襲して相続人となった直系卑属を含む)及び配偶者以外の者がいる場合には、「相続税額の加算金額の計算書(第4表)」を記入する必要があります。
具体例として、「被相続人の兄弟姉妹や甥、姪が相続人になった場合」「被相続人の養子として相続人になった人で、その被相続人の孫でもある人のうち、代襲相続人にはなっていない場合」などが挙げられます。
第5表:配偶者控除を利用する際に必要
配偶者控除制度を利用するときには、「配偶者の税額軽減額の計算書(第5表)」に必要事項を記入して提出する必要があります。
第6表:未成年者控除額・障害者控除額の計算書
財産を取得した人のなかに未成年者や障害者がいるときには、「未成年者控除額・障害者控除額の計算書(第6表)」を提出します。
第7表:相次相続控除をおこなう場合に必要
短期間で相続が繰り返された場合、「相次相続控除額の計算書(第7表)」を提出しましょう。
第8表:外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書
課税される財産のなかに海外にあるものがあり、その財産について外国において日本の相続税に相当する税が課税されている場合や、農地相続人がいる場合には、「外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書(第8表)」を提出することで相続税が控除されます。
具体的な相続税申告書の書き方は国税局の記載例が参考になる

相続税を申告・納付するときには、相続人自身が自らに課される相続税額や控除制度について調査をしなければいけません。
しかし、相続税の計算方法や各種控除制度の適用範囲は複雑なため、法律の知識がない一般の方では対応できない場合も多いでしょう。
そこで、「相続税を申告しなければいけないが、費用をかけてまで弁護士や税理士に相談するのは避けたい」とお考えの場合には、国税庁が公表している「相続税の申告書の記載例」が役立ちます。
以下の申告書様式一覧から必要なものを選択して、記載例を参考にしてください。
ただし、申告書に漏れや不備があった場合、あとから課税ペナルティが発生する可能性があります。
財産の正確な価値を算出するのは専門知識を要するため、不安な場合は、弁護士や税理士などの専門家へ相談・依頼しましょう。
相続税の申告をするときの手順

最後に、相続税の申告をするときの手順・流れについて解説します。
1.相続税申告書を集める
まずは、相続税申告書を入手する必要があります。
相続税申告書は国税庁のWebサイトからダウンロードできるほか、最寄りの税務署窓口や郵送でも入手可能です。
なお、相続税の納税手続きを効率的に済ませたいという方は、e-Taxを活用して電子申請することもできます。
2.申告書と一緒に出す書類を集める
相続税を申告するときには、申告書と合わせて添付書類などを提出しなければいけません。
相続の状況次第で必要書類は異なるのでご注意ください。
一般的な場合(特例などを受けない場合)
特例や控除制度を利用しないときの添付書類は、以下のとおりです。
- 相続人全員の戸籍謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
- 遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
- 相続時精算課税適用者がいる場合は、被相続人及び相続時精算課税適用者の戸籍の附表の写し(相続開始の日以後に作成されたもの)
配偶者の税額軽減(配偶者控除)の適用を受ける場合
相続にあたって、配偶者控除制度を利用するときの添付書類は以下のとおりです。
- 相続人全員の戸籍謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
- 遺言書の写し又は遺産分割書の写し(印鑑証明書に登録している印鑑で押印する)
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
- 申告期限後3年以内の分割見込書(相続税申告期限内に遺産分割が間に合わないやむを得ない理由がある場合)
小規模宅地等の特例の適用を受ける場合
小規模宅地等の特例を利用して相続税の節税をするときの添付書類は、以下のとおりです。
- 相続人全員の戸籍謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
- 遺言書の写し又は遺産分割書の写し(印鑑証明書に登録している印鑑で押印したもの)
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
- 申告期限後3年以内の分割見込書(相続税申告期限内に遺産分割が間に合わないやむを得ない理由がある場合)
- 特定居住用宅地等の要件を満たすことを示す証拠
延納申請をおこなう場合
相続税の申告・納付期限に間に合わないときには、延納申請によって納付時期を遅らせることができます。
延納申請をするときには、以下の必要書類を用意しましょう。
- 延納申請書
- 金銭納付を困難とする理由書
- 担保目録及び担保提供書
- 不動産等の財産の明細書
- 担保提供関係書類(登記事項証明書、固定資産税評価証明書、抵当権設定に必要な書類 など)
物納申請をおこなう場合
相続税を物納によって納付するときには、以下の書類を提出しなければいけません。
- 物納申請書
- 金銭納付を困難とする理由書
- 物納財産目録
- 物納手続き関係書類(登記事項証明書、公図その他必要な書類)
3.申告書を提出する
相続税の提出書類の準備が終わると、期限までに申告・納付手続きをおこなう必要があります。
申告書の提出期限
相続税の申告・納付期限は、「相続の開始があったことを知った日(通常、被相続人が死亡した日)の翌日から10ヶ月が経過する日」です。
申告期限が土曜日・日曜日・祝日に重なった場合、その翌日が相続税の申告期限になります。
期限を確認して、余裕をもって申告をしましょう。
相続税申告書の提出先
相続税申告書の提出先は、「被相続人の死亡のときにおける住所地を所轄する税務署長」です。相続人の住所地を所轄する税務署長ではないので注意が必要です。
税務署の所在地については、国税庁Webサイト内「国税局・税務署を調べる」から確認してください。
申告書の提出方法
相続税の申告手続きは、同じ被相続人から相続・遺贈・相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人たちが共同で作成して申告することができます。
ただし、相続人間でトラブルが発生しているときや、そもそも他の相続人の連絡先がわからないときには、各相続人が個別で相続税の申告書を作成・提出しても差し支えありません。
相続税の納付をおこなう場合
相続税の法定納付期限は、申告期限と同じように、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月が経過する日」です。
期限までに適切な金額の相続税を納付しないと、延滞税・過少申告加算税・無申告加算税・重加算税という課税のペナルティが科されます。
相続財産の内容次第では、相続税の法定納付期限が到来するまでに十分な準備ができない可能性もあります。
必ず弁護士・税理士に相談のうえ、税務調査で指摘されないような申告手続きを実施してください。
まとめ
相続税申告書の書き方を確認するには、国税庁のホームページが役立ちます。
しかし、実際の相続税額を算出するには相続財産の全貌を調査したり、利用できる控除制度について検討したりする作業が不可欠です。
しかし、相続する財産の種類によって提出書類が変わるため変動、申告書類の作成に不安がある方は、税理士への相談をおすすめします。
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