税務調査については、テレビや映画などで見る「ガサ入れ」のようなものであると誤解している人も多いでしょう。
実際は慎重におこなわれる相続税の確認作業のようなものですが、時間や労力を費やすことに変わりはないので、受けずに済むのであればそれに越したことはありません。
意図的に相続税申告で偽装するような場合は論外ですが、申告書を作成する際に注意していれば、税務調査は回避できる可能性があります。
本記事では、税務調査の日程や期間、税務調査の対象になるケースや、申告漏れがあった場合のペナルティなどについて解説します。
相続税の税務調査の日程と期間

税務署は、長い時間をかけて資料を収集し、細かく事前準備をおこなったうえで税務調査に臨みます。
たとえ相続人に遺産を隠そうとする意図がなくても、税務署に遺産隠しを疑われて税務調査がおこなわれることもあります。
ここでは、相続税の税務調査の日程・期間について解説します。
強制調査と任意調査がある
税務調査は、強制調査と任意調査の2つに分類されます。
強制調査
強制調査とは、いわゆる「マルサ」と呼ばれる国税局査察部による調査で、裁判所の令状をもっておこなわれるものです。
任意調査
任意調査とは、納税者の許可を得たうえでおこなわれる調査のことです。
ただし、納税者には税務調査に対応する「受忍義務」があり、任意調査だからといって正当な理由なく拒否することはできません。
相続税の申告から調査に入るまでの期間
税務調査は、相続税の申告書を提出して納税が完了し、不動産や預金口座などの名義変更を済ませた時点ですぐにおこなわれるわけではありません。
税務調査は、相続税の申告から1~2年後の8月~12月におこなわれるのが一般的です。
また、税務署は法人や個人の確定申告などが集中する1月~6月が特に忙しく、その時期の税務調査は比較的少ないといわれています。
調査期間は人によって異なる
税務調査の期間は、特に明確に定められているわけではありません。
税務署の責任者と税理士の都合のつく日におこなわれるのが一般的で、任意調査では2人以上の調査員によって早ければ3時間程度で終了します。
しかし、状況が複雑なケースでは1ヵ月以上になることもあり、用意した資料に疑いが生じるかどうか、事前に資料が用意されているかどうかなどでも所要時間は異なります。
税務調査によってある程度の目途がついた場合は、顧問税理士や相続人代表に対して調査結果と疑問点が提示されます。
調査の流れ
ここでは、相続税の税務調査の流れを解説します。
①連絡が入る
税務調査に着手する1週間~2週間ほど前に、税務署から税務調査の日時や場所などについて連絡が入ります。
②相続人の立ち会い
相続税の税務調査では、相続人全員に税務調査の立ち会いを求められることがあります。
ただし、高齢かつ遠方に住んでいる相続人がいたりして全員での立ち合いが難しい場合は、その旨を伝えることで考慮してもらえる場合もあります。
③現物確認調査
基本的には、相続財産がどのような状態で保管されているのかを調査するため、家のなかの状況確認がおこなわれます。
また、被相続人の生前の活動状況や、各相続人の情報などに関するヒアリングもおこなわれます。
④修正申告
税務調査によって申告漏れなどが発覚した場合は、修正申告書に正しい内容を記載して提出します。
また、税務調査の結果、申告内容に誤りがないことが証明された場合は、その時点で手続きは終了となります。
税務調査の終了は口頭にて伝えられるのが通常ですが、「調査結果についてのお知らせ」などの書面が送られてくる場合もあります。
なかには、申告漏れが発覚して加算税や延滞税などのペナルティが発生することもあり、次の項目ではペナルティの内容について解説します。
申告漏れがあると加算税と延滞税がかかる

加算税・延滞税は、期限内に正確に税申告できなかった場合に課される税金です。
ここでは、相続税を正しく申告できなかった場合に科されるペナルティについて解説します。
無申告加算税
無申告加算税とは、相続税の申告期限である「相続の開始を知った翌日から10ヵ月以内」に申告しなかった場合に発生する税金です(国税通則法第66条1項、2項)。
無申告加算税の税率は以下のとおりです。
- 本来納付すべき税額が50万円以内の部分:15%
- 本来納付すべき税額が50万円を超える部分:20%
過少申告加算税
過少申告加算税とは、申告した税額が実際よりも少なかった場合に発生する税金です(国税通則法第65条)。
過少申告加算税の税率は以下のとおりです。
- 「期限内に申告した税額」と「50万円」のどちらか多い方の金額を超えない部分:10%
- 「期限内に申告した税額」と「50万円」のどちらか多い方の金額を超える部分:15%
重加算税
重加算税とは、隠ぺいや仮装などの悪質な不正をおこなった場合に発生する税金です(国税通則法第68条)。
重加算税の税率は以下のとおりです。
- 過少申告加算税に代えて課される場合:35%
- 無申告加算税に代えて課される場合:40%
延滞税
延滞税とは、期限までに納税されなかった場合に発生する税金です(国税通則法第60条)。
延滞税の税率は以下のとおりです。
- 納期限の翌日から2ヵ月以内の部分:年2.4%
- 納期限の翌日から2ヵ月を超えた部分:年8.7%
申告書に不備や申告漏れがあると調査の対象になる

「平成25事務年度における相続税の調査の状況について|国税庁」によると、相続税の申告をした人のうち、約4人に1人が税務調査の対象になっています。
その理由としては「申告に不備や漏れがあった」というのが大半で、適切な形式で申告書を作成できれば調査対象から外れる可能性が高まります。
税務調査の対象になりうる主なケースとしては、以下があります。
- 銀行残高証明書が添付されていない
- 被相続人が死亡する数年前に不動産の譲渡収入があったにもかかわらず、その税引き後の収入が相続財産に反映されていない
- 被相続人が死亡する前の確定申告で家賃収入・地代収入・駐車場収入などがあったにもかかわらず、該当する土地や家屋が相続財産に含まれていない
- 被相続人が死亡する前の確定申告で退職所得や配当所得があったにもかかわらず、該当する金融資産や株式が相続財産に含まれていない
- 被相続人が同族会社を経営していたにもかかわらず、取引相場のない株式などの申告額が少ない
- 所得額が2、000万円を超える場合に提出を求められる「財産・債務の明細書」に記載されていながら、その財産・債務が申告内容に反映されていない
- 郵便貯金・定額貯金・簡易保険などの財産が相続財産に含まれていない
- 債務控除として多額の借入金や未払金を申告しているにもかかわらず、それに見合った財産が申告内容に含まれていない
- 葬式費用として控除した金額が高額であるにもかかわらず、その人の社会的地位や職業などから判断して申告した財産が少ない
- 相続財産のなかに金融資産が少ないにもかかわらず、高額な相続税を現金で一括納付している
- 申告書が連名で提出されていない、一部の相続人の印鑑が押印されていない
- 「小規模宅地等の特例」などの相続税に関する特例の適用を受けているにもかかわらず添付書類がない、または少ない など
上記のいずれかに該当する場合は、税務調査の対象になる可能性があります。
相続税の税務調査で指摘されやすい3つのポイント
ここでは、税務調査でどのような点を指摘されやすいのかを解説します。
被相続人の預貯金
被相続人の死亡前5年以内に、預金から50万円や100万円などを一度に引き出しているような場合は、税務調査で確認されることがあります。
これは、名義預金になっていないかを確認するためでもあります。
被相続人の生命保険
被相続人が生命保険に加入しており、受取人である契約者と保険料負担者が異なる場合も、税務調査で指摘される可能性があります。
これは、被相続人の死亡によって受け取った保険金が、相続税の課税対象になる可能性もあるからです。
家族名義の預金
「相続人名義で口座を開設しているが、実際は被相続人が預金している」という場合なども、税務調査で指摘される可能性があります。
調査当日に心がけるべき4つの対応
税務調査を受けることになった場合、対応次第で結果が変わるわけではありませんが、できるだけスムーズに調査を終了させるためにも以下のポイントを心がけましょう。
代表者が応対する
税理士に依頼している場合でも任せっきりにならずに、やむを得ない事情がないかぎり、税務調査には立ち会って応対しましょう。
覚えていない、あるいは忘れた事項についての質問には後日回答する
税務署側の心証が悪くなるかもしれませんが、間違った説明をしてしまうとのちのち問題になる恐れもあるため、あいまいな状態で回答することは避けましょう。
税理士には良いことも都合の悪いことも話しておく
税理士は、依頼者からの情報をもとに対応方針などを決定します。
できるだけ正確な依頼状況を伝えることで的確な対応が望めるため、自分にとって都合の悪いことがあっても正直に伝えましょう。
真面目な態度で受け答えをする
税務署には、税務調査を適切におこなうために「質問検査権」という権利が認められており、納税者に対して質問や資料の要求などをすることができます。
税務調査にあたって対応を求められた場合は、真面目な態度で応じましょう。
まとめ
相続税の税務調査は、相続税を申告してから1~2年後の8月~12月におこなわれるのが一般的で、任意調査であれば3時間程度で調査終了となる場合もあります。
しかし、必ずしも上記どおりになるわけではなく、状況が複雑なケースでは任意調査でも1ヵ月以上かかることもあります。
税務調査について不安な点がある場合は、一度税理士に相談してみることをおすすめします。



