


相続税を申告した後、いつ税務調査が来るのか分からないまま過ごすのは落ち着きません。何年経てば安心してよいのかも見えません。
解説記事の多くは「申告から1〜2年後の8月から11月ごろ」と書いています。ただしこの数字は、国税庁が公表したものではありません。
実は調査時期には根拠のある構造があります。税務署の1年は7月に始まり翌年6月に終わる事務年度で動いているためです。7月に人事異動があり、新体制が固まった8月から実地調査が本格化します。年明けは所得税の確定申告で手が回りません。
この仕組みが分かれば、自分の申告がどの年の8〜11月に対象になるかを逆算できます。相続開始の月から機械的に出せます。何年後までかは法律で決まっています。国税通則法70条が原則5年、偽りその他不正の行為があれば7年と定めています。
この記事では、事務年度から逆算する調査時期、経過期間ごとの調査率、除斥期間5年と7年の条文、事前通知の7つの事項までを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

まず答えを示します。相続税の税務調査は、申告から1〜2年後の8月から11月に来やすいとされています。ただし来方は1種類ではありません。自宅に調査官が来る実地調査と、文書や電話で済む簡易な接触では、負担がまったく違います。
税務署の実地調査は、申告書を提出してから1〜2年後に行われるのが一般的です。連絡は電話で来ます。季節は8月から11月に集中します。理由は税務署の内部スケジュールで、7月の人事異動が終わって新体制が固まる時期にあたるためです。
年が明けると所得税の確定申告で手が回らなくなるため、1月から3月に相続税の調査はほとんど行われません。この構造は次の章で詳しく扱います。まず「自分はどちらの接触を受けるのか」を押さえてください。
ここは正確に書きます。「申告から1〜2年後」という時期は、税理士の実務経験にもとづく目安です。国税庁が毎年公表する「相続税の調査等の状況」を全文確認しましたが、どの年分の申告を調査対象にしたかという記載は1か所もありません。
公表されるのは事務年度ごとの件数と金額だけです。「令和6事務年度に9,512件の実地調査を行った」という形で、対象年分は示されません。
したがって「1〜2年後」は確定した事実ではなく、実務上の傾向として理解してください。この記事では、公表データから逆算できる範囲を示します。
税務署の接触は2種類あります。この違いを知らないと、必要以上に不安になります。
| 項目 | 実地調査 | 簡易な接触 |
|---|---|---|
| 件数(令和6事務年度) | 9,512件 | 21,969件 |
| 方法 | 調査官が自宅などへ来る | 文書・電話・来署依頼 |
| 非違件数 / 割合 | 7,826件 / 82.3% | 5,796件 / 26.4% |
| 追徴税額の合計 | 824億円 | 138億円 |
| 1件あたりの追徴税額 | 867万円 | 63万円 |
表の見方:件数は簡易な接触のほうが2.3倍多いですが、1件あたりの追徴額は実地調査が867万円で簡易な接触の63万円です。同じ「税務署から連絡が来た」でも負担は13.8倍変わります。
重要ポイント:非違割合も大きく違います。実地調査は82.3%で指摘されますが、簡易な接触は26.4%です。文書での照会なら、4件に3件は指摘なしで終わります。
計算ロジック:いずれも国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」の公表値です。1件あたり追徴税額は867万円÷63万円=13.76倍で、13.8倍としています。非違割合は7,826÷9,512=82.3%、5,796÷21,969=26.4%です。
どんな家庭が選ばれやすいかは、下記の記事で解説しています。

細かい説明の前に、大まかな時期を出してください。相続開始の月さえ分かれば計算できます。
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重要ポイント:山は2回来ます。1回目の8〜11月を無事に過ぎても、翌年の同じ時期までは可能性が残ります。
どこまで調べられるのか・当日の質問内容は、下記の記事で解説しています。


「7月に人事異動があるから8月から」という説明は多くの記事にあります。ただしその先の構造まで書いた解説はほとんどありません。税務署の1年は7月に始まり翌年6月に終わります。これを事務年度と呼びます。
この単位が分かると、自分の申告がどの年の8〜11月に対象になるかを機械的に出せます。
国税庁が公表する統計は、すべて事務年度で集計されています。「令和6事務年度」とは2024年7月から2025年6月までの1年間です。4月始まりの会計年度とは別の区切りで、税務署の人事異動もこの切り替えに合わせて7月に行われます。
つまり調査の担当者は7月に入れ替わり、新しい体制で1年分の調査を回します。年度の途中にまたぐ調査は引き継ぎが発生して非効率です。そのため7月直後に着手し、翌年6月までに完結させる流れになります。
1年の動きを月別に整理しました。自分に連絡が来やすい時期が分かります。
| 時期 | 税務署の動き | 通知が来る可能性 |
|---|---|---|
| 7月 | 人事異動・新体制の立ち上げと引き継ぎ | 低い |
| 8〜11月 | 選定を終えて実地調査を実施 | 最も高い |
| 12月 | 年内の調査を締めに入る | やや下がる |
| 1〜3月 | 所得税の確定申告に人員を投入 | ほとんどない |
| 4〜6月 | 事務年度の締めと翌年度の準備 | 低い |
表の見方:実質的に動くのは8月から12月の5か月です。なかでも8〜11月が本番で、12月は年内に終える案件の締めに入ります。
重要ポイント:1〜3月に相続税の調査の連絡が来ることはまずありません。この時期に税務署から書面が届いた場合は、調査ではなく「お尋ね」や簡易な接触の可能性が高いです。
相続開始の月から逆算した表です。自分に近い行を確認してください。
| 相続開始 | 申告期限(10か月後) | 1回目の山 | 2回目の山 |
|---|---|---|---|
| 2024年1月 | 2024年11月 | 2025年8〜11月 | 2026年8〜11月 |
| 2024年6月 | 2025年4月 | 2025年8〜11月 | 2026年8〜11月 |
| 2024年12月 | 2025年10月 | 2026年8〜11月 | 2027年8〜11月 |
| 2025年1月 | 2025年11月 | 2026年8〜11月 | 2027年8〜11月 |
| 2025年6月 | 2026年4月 | 2026年8〜11月 | 2027年8〜11月 |
表の見方:申告期限の直後に来る8〜11月が1回目の山です。期限が11月や12月だと1回目が翌々年になり、待つ期間が長くなります。
重要ポイント:2024年6月の相続なら、2025年8〜11月と2026年8〜11月の2回が要注意期間です。この2回を過ぎれば、統計上の主な対象期間からは外れます。
計算ロジック:【前提】申告期限=相続開始を知った日の翌日から10か月・調査は申告の1〜2年後の8〜11月。相続開始月に10か月を加えて申告期限を出し、その直後の8〜11月を1回目、その翌年を2回目としています。
申告期限までの逆算スケジュールは、下記の記事で解説しています。

時間軸をもう1つ押さえておくと、構造がはっきりします。国税庁は毎年「相続税の申告事績の概要」を公表しますが、集計の締め日が決まっています。令和6年分は令和7年10月31日までに提出された申告書で集計されています。修正申告書は除かれます。
申告期限が10か月なので、ある年に亡くなった人の申告は翌年10月末までにほぼ出揃う計算です。つまり税務署がその年分の全体像を把握できるのは、相続開始の翌年11月以降になります。
重要ポイント:この締め日が「申告から1〜2年後」の下限を決めています。全体が揃う前に選定はできないため、申告直後に調査が来ることは構造上ほとんどありません。
解説記事によって「8〜11月」と「8〜12月」が混在しています。どちらを見ればよいか整理します。本番は8〜11月です。12月は年内に終える案件の締めに入る時期で、新規の通知は減ります。
通知を受ける側の立場では「8〜11月を警戒し、12月も可能性は残る」と考えるのが実務的です。なお国税庁は月別の件数を公表していません。この時期の集中は税務署の内部スケジュールから導かれる推定です。

「3年経てばほぼ来ない」という説明をよく見かけますが、根拠となる数字を出した記事はほとんどありません。国税庁の公表値から調査率を逆算すれば、おおよその水準は出せます。ここでは計算過程も示します。
国税庁は実地調査の件数と、申告書の提出件数を別々に公表しています。この2つを割れば調査率が出ます。令和6事務年度の実地調査は9,512件です。問題は分母をどの年分の申告件数に取るかです。
調査対象年分は公表されていないため、分母は仮定になります。ここが記事によって数字が違う理由です。申告から1〜2年後という傾向にしたがえば、令和6事務年度の主な対象は令和4年分の申告と考えられます。
分母を変えると調査率がどう動くかを示しました。
| 分母に取る年分 | 申告件数 | 実地調査率 | 接触率(実地+簡易) |
|---|---|---|---|
| 令和2年分 | 120,372件 | 7.90% | 26.15% |
| 令和3年分 | 134,275件 | 7.08% | 23.45% |
| 令和4年分(有力) | 150,858件 | 6.31% | 20.87% |
| 令和5年分 | 155,740件 | 6.11% | 20.21% |
| 令和6年分 | 166,730件 | 5.71% | 18.88% |
表の見方:分母の取り方で5.71%から7.90%まで振れます。「調査率6.3%」という数字を見たときは、令和4年分を分母にした値だと理解してください。
重要ポイント:簡易な接触まで含めた接触率は約21%です。申告した5人に1人は何らかの形で税務署から接触を受けます。ただしそのうち7割は文書や電話で終わります。
計算ロジック:【前提】令和6事務年度の実地調査9,512件・簡易な接触21,969件。分母は各年分の「申告書の提出に係る被相続人数」。令和4年分なら9,512÷150,858=6.31%、(9,512+21,969)÷150,858=20.87%です。
この目安には構造的な理由があります。事務年度の回り方から説明できます。申告が出揃うのが相続開始の翌年10月末です。そこから最初に来る8〜11月が1回目、その翌年が2回目になります。
つまり主な対象になる事務年度は2回しか回りません。3回目以降は、新しい年分の申告が積み上がって選定の優先度が下がります。
令和6年分の申告は166,730件で、令和2年分の120,372件から38.5%増えています。税務署の人員は大きく増えないため、古い年分に手を戻す余裕は小さくなります。
注意:「3年でほぼ来ない」は可能性が下がるという意味で、来ないという意味ではありません。法律上の期限は5年で、これを過ぎるまで確定しません。
実地調査より件数が伸びているのが簡易な接触です。推移を見てください。
| 事務年度 | 令和2 | 令和3 | 令和4 | 令和5 | 令和6 |
|---|---|---|---|---|---|
| 簡易な接触件数 | 13,634 | 14,730 | 15,004 | 18,781 | 21,969 |
| 追徴税額の合計(億円) | 65 | 69 | 87 | 122 | 138 |
表の見方:令和2年度から令和6年度で件数は161.1%になりました。実地調査(9,512件)の2.3倍の規模で、税務署はこちらに力を入れています。
重要ポイント:簡易な接触は電話や文書で来ます。自宅に調査官が来る実地調査だけを警戒していると、こちらへの備えが抜けます。1件あたりの追徴は63万円です。
ここまで時期の話をしてきましたが、選ばれるかどうかを決めるのは申告の中身です。時期は「いつ連絡が来るか」を決めるだけで、「連絡が来るか」は別の要因で決まります。
申告漏れの7割は現金・預貯金と有価証券です。名義預金と生前贈与の扱いが最も指摘されやすい部分です。時期を待つより、申告内容を見直すほうが実効性があります。
選ばれやすい家庭の特徴と選定の仕組みは、下記の記事で解説しています。


いつまで待てば確定するのかは法律で決まっています。国税通則法70条が期限を定めています。原則は5年、偽りその他不正の行為があれば7年です。起算点は相続開始日ではありません。
条文の原文を確認します。
国税通則法70条1項:次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から五年…を経過した日以後においては、することができない。一 更正又は決定 その更正又は決定に係る国税の法定申告期限
更正も決定もできなくなるため、実質的に調査の意味がなくなります。これを除斥期間と呼びます。時効という言葉が使われますが、正確には除斥期間で、中断や停止がありません。
参照元:e-Gov 法令検索(国税通則法 昭和三十七年法律第六十六号)
意図的に隠していた場合は期限が延びます。
国税通則法70条5項1号:偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税…についての更正決定等(は)…七年を経過する日まで、することができる。
要件は「偽りその他不正の行為」です。単なる計算ミスや評価の誤りは、この要件に当たりません。財産の存在を知りながら申告しなかった場合や、通帳を隠した場合が典型です。うっかり漏らした場合と、意図的に隠した場合は別に扱われます。
無申告の場合も、申告義務を知っていながら出さなかったなら7年になり得ます。
ここを間違えると2年近くずれます。起算点は相続開始日ではなく、法定申告期限です。相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月です。そこから5年または7年を数えます。
相続開始から数えると、実際には5年10か月・7年10か月になります。
相続開始の月から機械的に計算しました。
| 相続開始 | 申告期限 | 5年経過(原則の期限) | 7年経過(不正があった場合) |
|---|---|---|---|
| 2024年1月 | 2024年11月 | 2029年11月 | 2031年11月 |
| 2024年6月 | 2025年4月 | 2030年4月 | 2032年4月 |
| 2024年12月 | 2025年10月 | 2030年10月 | 2032年10月 |
| 2025年6月 | 2026年4月 | 2031年4月 | 2033年4月 |
表の見方:相続開始から数えると5年10か月です。2024年6月の相続なら2030年4月まで可能性が残ります。
重要ポイント:ただし統計上の主な対象期間は最初の2回の8〜11月です。5年間ずっと同じ確率で来るわけではありません。
計算ロジック:【前提】申告期限=相続開始を知った日の翌日から10か月。国税通則法70条1項により法定申告期限から5年、同条5項1号により偽りその他不正の行為があれば7年。相続開始月に10か月を加えて期限を出し、そこに5年・7年を加算しています。
相続税と一緒に問題になりやすいのが生前贈与です。贈与税の除斥期間は相続税と違います。贈与税は原則6年、偽りその他不正の行為があれば7年です。相続税の5年より1年長くなっています。
令和6事務年度の贈与税の実地調査は2,778件で、1件あたりの追徴は443万円でした。相続税の調査で生前贈与の申告漏れが見つかると、贈与税の問題として扱われることがあります。
無申告が税務署にどう把握されるかは、下記の記事で解説しています。


調査の時期を知る意味は、来る前に打てる手があることです。申告漏れに気づいた時点で自分から直せば、ペナルティが変わります。調査の通知が来る前に修正申告すれば、過少申告加算税は課されません。国税通則法65条6項が定めています。
同じ内容の修正でも、タイミングによって加算税の割合が違います。3段階に整理しました。
| 直したタイミング | 過少申告加算税 | 超過部分の上乗せ | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 調査の通知が来る前 | 0%(課されない) | なし | 65条6項 |
| 通知後、調査で指摘される前 | 5% | +5%(合計10%) | 65条1項かっこ書・2項 |
| 調査で指摘された後 | 10% | +5%(合計15%) | 65条1項・2項 |
| 隠蔽と判断された場合 | 重加算税35% | — | 68条1項 |
表の見方:上から下へ進むほど負担が重くなります。最上段の「通知前」だけが0%で、ここを過ぎると5%が発生します。
重要ポイント:「超過部分の上乗せ」は、期限内申告で納めた税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分にかかります。相続税では期限内申告額が大きいため、この上乗せまで届かないことが多くあります。
計算ロジック:【前提】期限内申告で納めた相続税1,000万円、後から判明した追加本税500万円のケース。通知前なら0円、通知後〜指摘前なら500万円×5%=25万円、指摘後なら500万円×10%=50万円です。
通知前と指摘後の差は50万円です。隠蔽と判断されれば重加算税175万円になり、差はさらに広がります。
0%になる条件は2つあり、両方を満たす必要があります。条文を確認します。
国税通則法65条6項:第一項の規定は、修正申告書の提出が、…更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、…第七十四条の九第一項第四号及び第五号…に掲げる事項…の通知…がある前に行われたものであるときは、適用しない。
1つ目が「更正があるべきことを予知してされたものでない」ことです。調査で指摘を受けてから慌てて出したものは該当しません。
2つ目が「調査通知がある前」であることです。条文が指す調査通知は74条の9第1項4号(税目)と5号(対象期間)の通知です。事前通知の7項目のうち、この2つが告げられた時点で0%の道が閉じます。電話を受けたあとでは間に合いません。
参照元:e-Gov 法令検索(国税通則法 昭和三十七年法律第六十六号)
時期の話とつながるのはここです。通知は8月から11月に集中します。申告の翌年7月までに見直しを終えていれば、通知前に自主的な修正申告が間に合う可能性が高くなります。
| 相続開始 | 申告期限 | 見直しを終えたい時期 | 主な通知の時期 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月 | 2026年1月 | 2026年7月まで | 2026年8〜11月 |
| 2025年9月 | 2026年7月 | 2027年7月まで | 2027年8〜11月 |
| 2026年3月 | 2027年1月 | 2027年7月まで | 2027年8〜11月 |
表の見方:申告期限を過ぎた最初の7月が節目です。この時点までに申告内容を点検しておけば、0%で直せる余地が残ります。
重要ポイント:通知は2年目の8〜11月にも来ます。1年目を無事に過ぎても、点検が済んでいないなら2年目の7月までが次の節目です。
計算ロジック:【前提】申告期限=相続開始の翌月から10か月。税務署の事務年度は7月開始で、7月の人事異動後の8〜11月に実地調査が集中します。したがって申告期限後の最初の7月末が、通知前に修正申告を済ませられる実質的な期限になります。
申告そのものを出していなかった場合も、通知前に出せば軽くなります。
| 出したタイミング | 無申告加算税 | 根拠 |
|---|---|---|
| 調査の通知が来る前 | 5% | 66条8項 |
| 通知後、決定される前 | 10%(50万円超部分は15%) | 66条1項かっこ書・2項 |
| 調査で指摘された後 | 15%(50万円超部分は20%) | 66条1項・2項 |
表の見方:無申告の場合は0%になりません。最も軽い通知前でも5%はかかります。過少申告と違い、申告義務を果たしていないためです。
重要ポイント:期限内に申告する意思があったと認められ、法定申告期限から1か月以内に出した場合は課されません(66条9項)。それを過ぎたら5%が最低ラインです。
自分で点検するときの進め方を示します。
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注意:加算税が0%でも延滞税は別に発生します。起算点は当初の申告期限なので、気づいた時点で早く出すほど負担は小さくなります。
修正申告の判断と手続は、下記の記事で解説しています。


実地調査には原則として事前の通知があります。突然来ることはまれです。通知される内容は国税通則法74条の9で7つ決まっています。何を告げられるか知っておけば、電話で慌てません。
連絡手段は電話が基本です。書面が届くわけではありません。税理士に申告を依頼していて税務代理権限証書を提出している場合は、税理士に連絡が入ります。納税者の同意があれば、税理士への通知だけで足りると条文に定められています。
自分で申告した場合は納税者本人に直接かかってきます。この違いは大きく、心構えの面でも税理士の有無が影響します。
条文が列挙している項目です。電話でこれらを告げられます。
| 号 | 通知される事項 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 一 | 調査を開始する日時 | 変更を求められる(2項) |
| 二 | 調査を行う場所 | 変更を求められる(2項) |
| 三 | 調査の目的 | 相続税の申告内容の確認か |
| 四 | 調査の対象となる税目 | 相続税だけか、贈与税も含むか |
| 五 | 調査の対象となる期間 | どの年分の申告が対象か |
| 六 | 調査の対象となる帳簿書類その他の物件 | 何を用意すべきか |
| 七 | その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項 | 調査官の氏名と所属など |
表の見方:7号は政令に委任されており、調査担当者の氏名や所属がここに含まれます。「6項目」と説明する記事がありますが、条文は7号まであります。
重要ポイント:電話では一度に伝えられるため、メモを取りながら聞いてください。特に五号の「対象となる期間」は、どの年分が問題になっているかを知る手がかりです。
参照元:e-Gov 法令検索(国税通則法 昭和三十七年法律第六十六号)
「その日は都合が悪い」と言えるかどうかは、条文に書かれています。
国税通則法74条の9第2項:税務署長等は、前項の規定による通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して同項第一号又は第二号に掲げる事項について変更するよう求めがあつた場合には、当該事項について協議するよう努めるものとする。
変更を求められるのは一号(日時)と二号(場所)です。条件は「合理的な理由を付して」求めることです。ただし条文は「協議するよう努める」と書いています。努力義務であって、必ず希望どおりになるとは限りません。
仕事や入院、遠方の相続人の都合といった具体的な理由を示せば、多くの場合は調整されます。理由を言わずに断ると通りにくくなります。
実務では、連絡から実施日までに1〜3週間の間隔が取られます。この期間に資料をそろえ、税理士と打ち合わせをします。短すぎると感じたら、前項の変更を求めてください。
条文に「何日前までに通知する」という定めはありません。実務の慣行として1〜3週間が確保されています。
電話を切ったあとの動きを順に示します。
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重要ポイント:電話口で申告内容について質問されても、その場で答える必要はありません。資料を確認してから回答すると伝えて構いません。
申告時にそろえた書類の一覧は、下記の記事で解説しています。


事前通知なしで調査官が来るケースもあります。ここには誤解が広がっています。無予告調査は「強制調査」ではありません。任意調査で通知を省略する仕組みです。
解説記事では「無予告=強制調査(査察)」と説明されていることがありますが、これは正確ではありません。根拠となる国税通則法74条の10は、74条の9の事前通知を省略できる場合を定めた規定です。あくまで任意調査の枠内です。
強制調査は国税犯則取締の手続で、裁判官の許可状にもとづいて行われる別の制度です。無予告調査は拒否すれば罰則がありますが、令状は伴いません。この違いを混同すると、必要以上に身構えることになります。
条文が定める要件を確認します。
国税通則法74条の10:…納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容…に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ…があると認める場合には、同条第一項の規定による通知を要しない。
要件は「違法又は不当な行為を容易にし、正確な把握を困難にするおそれ」です。通知すると証拠が隠される可能性がある場合に限られます。過去の調査で問題があった、事業の性質上その場で確認しないと分からないといったケースが想定されています。
3つの調査を並べて整理しました。
| 項目 | 通常の任意調査 | 無予告調査 | 強制調査(査察) |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 国税通則法74条の9 | 国税通則法74条の10 | 国税犯則取締の手続 |
| 事前通知 | あり(7つの事項) | なし | なし |
| 裁判官の許可状 | 不要 | 不要 | 必要 |
| 性質 | 任意調査 | 任意調査 | 犯罪捜査に準じる |
| 相続税での頻度 | ほとんどがこれ | まれ | 極めてまれ |
表の見方:中央の無予告調査は左の通常調査と同じ「任意調査」です。違いは通知の有無だけで、許可状は要りません。
重要ポイント:相続税で無予告調査になるのはまれです。主な対象は現金商売の事業者で、相続税の申告内容を確認する調査では通知が原則です。
予告なく調査官が来た場合の初動を示します。
【1】身分証明書と質問検査章を確認する
調査官は提示義務があります。所属・氏名を控え、目的と対象税目を聞いてください。
【2】税理士に連絡する
その場で電話して構いません。到着を待ってから始めてほしいと伝えることもできます。
【3】その場で回答を急がない
記憶があいまいなことを答えると、後で訂正が必要になります。資料を確認してから回答すると伝えてください。
【4】提示・提出を求められた書類は記録する
何を渡したかをメモに残します。原本を預ける場合は預り証を受け取ってください。
拒否はできませんが、進め方について協議することはできます。落ち着いて対応してください。

当日の時間配分はおおよそ決まっています。まる1日を空けておけば足ります。通常は午前10時ごろに始まり、午後4時ごろに終わります。調査官は2名で来るのが一般的です。
実地調査そのものは1日で完了するのが基本です。財産の種類が多い場合や論点が複数ある場合は2日になります。場所は被相続人が住んでいた自宅が多く、税理士事務所で行うこともあります。
自宅で行う理由は、金庫やタンス、仏壇まわりを実際に確認するためです。
1日の進み方を整理しました。
| 時間帯 | 内容 | 準備しておくこと |
|---|---|---|
| 午前10時〜正午 | ヒアリング(被相続人の経歴・生活状況・財産の管理者) | 答えられる相続人が同席する |
| 正午〜午後1時 | 昼休憩(調査官は外に出る) | — |
| 午後1時〜3時ごろ | 資料と実物の確認(通帳・証券・保険証券・権利証・金庫) | 該当の場所を片付けておく |
| 午後3時〜4時ごろ | 疑問点の確認・追加資料の依頼・終了 | 後日提出するものをメモする |
表の見方:午前は雑談に近い形で進みますが、これも調査の一部です。被相続人の収入や生活水準から、財産の規模が推定されます。
重要ポイント:午後は実物の確認に入ります。金庫やタンスの中を見せるよう求められることがあります。事前に何が入っているかを把握しておいてください。
その日に確認できなかった資料は、後日提出になります。金融機関への照会が必要な場合や、相続人が複数の場所に住んでいる場合は日数がかかります。追加提出を求められたら、期限を確認して記録に残してください。
質問の具体的な内容と答え方は、当日対応の話になります。時期の話とは別の準備が必要です。被相続人の趣味や交友関係まで聞かれる理由、預金の管理者を確認する意図など、質問には目的があります。
当日の質問内容とどこまで調べられるかは、下記の記事で解説しています。


調査当日で終わりではありません。結果が出るまでにさらに時間がかかります。実務では調査当日から1〜3か月後に結論が伝えられます。この期間に税務署が追加確認を進めます。
結論は「是認」「修正申告の勧奨」「更正」の3つです。それぞれ手続が違います。
| 結果 | 意味 | 伝え方 | 不服申立て |
|---|---|---|---|
| 是認 | 申告内容に問題なし | 書面で通知(74条の11第1項) | — |
| 修正申告の勧奨 | 自分で申告をやり直すよう促される | 説明+書面交付 | できない |
| 更正 | 税務署が税額を決定する | 更正通知書が届く | できる |
表の見方:是認の場合は書面が届きます。「何も連絡がない」状態は是認ではありません。書面が来るまでは手続が続いています。
重要ポイント:中央の修正申告と下の更正は、税額が同じでも不服申立てができるかどうかが違います。納得できないなら修正申告に応じない選択があります。
問題がなかった場合の扱いは条文に定められています。
国税通則法74条の11第1項:税務署長等は、国税に関する実地の調査を行つた結果、更正決定等をすべきと認められない場合には、…その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする。
この書面を是認通知書と呼びます。条文に「その時点において」と書かれている点が重要です。将来にわたって問題がないと確定するものではありません。除斥期間内であれば、新たな事実が判明したときに再度調査が行われる余地があります。
ここが最も見落とされやすい部分です。条文が明記しています。
国税通則法74条の11第3項:…当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。
修正申告は自分で出す申告書です。自分が正しいと認めて出したものなので、後から不服を申し立てられません。税務署はこの内容を説明し、書面を交付する義務があります。説明を受けていないなら、その場で確認してください。
更正の請求は残りますが、こちらは納税者側が計算の誤りを主張する手続で、評価や事実認定の争いには向きません。
納得できないときの選択肢
争う意思があるなら、修正申告書を出す前に判断してください。出したあとでは戻れません。
参照元:e-Gov 法令検索(国税通則法 昭和三十七年法律第六十六号)
実地調査の結果はどうなっているかを数字で示します。
| 項目 | 令和5事務年度 | 令和6事務年度 |
|---|---|---|
| 実地調査の件数 | 8,556件 | 9,512件 |
| 非違があった件数 | 7,200件 | 7,826件 |
| 非違割合 | 84.2% | 82.3% |
| 重加算税の対象件数 | 971件 | 1,065件 |
| 1件あたりの追徴税額 | 859万円 | 867万円 |
表の見方:非違割合は84.2%から82.3%へ1.9ポイント下がりました。それでも実地調査に選ばれた8割以上で申告漏れが見つかっています。
重要ポイント:重加算税は1,065件で、非違があった7,826件の13.6%です。意図的な隠蔽と判断されると税率35%または40%が加わります。
計算ロジック:【前提】令和6事務年度の相続税の調査等の状況(国税庁)。非違割合=7,826÷9,512=82.3%。重加算税割合=1,065÷7,826=13.6%。1件あたり追徴=追徴税額の総額824億円÷9,512件=867万円です。
調査当日が終わってから結論までに間があるのは、署内の手続が残っているためです。当日に確認できなかった資料の追加提出を待ち、必要に応じて金融機関へ照会します。名義預金や生前贈与が争点なら、資金の流れを何年分もたどることになります。
そのうえで調査担当者が結論をまとめ、上席の審査を経て決裁されます。担当者の判断だけで確定するわけではありません。この期間に追加の質問が来ることもあります。回答が遅れると全体が長引くため、期限を確認して速やかに返してください。
重要ポイント:争点が複数ある場合や相続人が多い場合は3か月を超えることがあります。見通しが立たないときは、進捗の目安を担当者に確認して構いません。
追加で納める税金には延滞税が付きます。起算点は申告期限です。調査が2年後だった場合、2年分の延滞税がかかります。調査が遅く来るほど負担は増えます。延滞税の割合は年によって変わり、納期限の翌日から2か月を過ぎると税率が上がる仕組みです。

時期をめぐる誤解が3つあります。それぞれ根拠を示して整理します。「連絡がないから安心」という判断は、根拠として弱いものです。何をすれば実際に確率が下がるかを説明します。
是認は書面で通知されます。何も来ていない状態は是認ではありません。選定の対象になっていないだけの可能性もありますが、除斥期間内は判断が保留されているのと同じです。連絡がないことは、確定を意味しません。
令和6事務年度の簡易な接触は21,969件で、実地調査9,512件の2.3倍です。文書や電話による確認のほうが件数は多く、こちらは自宅に来ません。「お尋ね」の文書が届いた段階で対応すれば、実地調査に進まずに済むこともあります。
ただし1件あたりの追徴は63万円で、放置していい話ではありません。回答期限を守って対応してください。
簡易な接触には、申告していない人への文書送付も含まれます。税務署は死亡情報を市区町村から受け取り、不動産や金融資産の情報を保有しています。申告がなくても把握されます。無申告で発覚すると無申告加算税が加わり、負担はさらに重くなります。
時期を待つのではなく、申告内容を整える方向で対処します。
【1】通帳の入出金を死亡日前7年分そろえる
申告漏れの多くは現金・預貯金です。大きな出金の使途を説明できる状態にしておきます。
【2】名義預金の判定を見直す
家族名義でも、原資と管理者が被相続人なら被相続人の財産です。指摘が最も多い論点です。
【3】生前贈与の記録を整理する
贈与契約書、振込記録、受贈者が自由に使えていた事実を残します。贈与税の申告があれば控えも保管します。
【4】書面添付制度を利用する
税理士が申告内容の検討過程を書面で添付する制度です。相続税での利用割合は令和6事務年度で24.6%まで上がっています。
書面添付があると、実地調査の前に税理士への意見聴取が行われます。この段階で疑問が解消すれば、調査に至らないことがあります。
重要ポイント:書面添付の利用割合は22.2%(令和2事務年度)から24.6%(令和6事務年度)へ上がりました。それでも4件に3件は利用していません。依頼時に対応可否を確認してください。
名義預金の判定基準は、下記の記事で解説しています。


税務調査の連絡を受けたあと、誰に相談するかで結果が変わります。立会いの経験がある税理士かどうかが分かれ目です。複数の事務所から見積りを取れば、対応方針と報酬を比べられます。
調査対応は申告書の作成とは別の技能です。その場の説明の仕方で、非違と判断されるかどうかが変わります。
実績がある税理士に依頼すべき理由
具体例で示します。家族名義の預金1,500万円について、税務署が名義預金として指摘したケースです。
A税理士は説明を組み立てられず全額を修正申告し、追徴は本税450万円と重加算税157万円で607万円になりました。B税理士は入金の原資と受贈時の意思表示を資料で示し、1,000万円分の贈与成立を認めさせています。
結果はB税理士で追徴150万円、差額457万円です。同じ事実でも、説明の準備で結果が動きます。
「調査に強い」という言葉だけでは判断できません。何を比べれば実務力が見えるかを示します。
判定ポイント1:立会い実績の件数を聞きます。「年間5件」と「年間30件」では経験量が違います。→ 件数を答えられない事務所は、実績が乏しいと判定できます。
判定ポイント2:見積りに「意見聴取対応」「修正申告の判断」まで含まれているかを確認します。→ 当日の立会いのみの見積りより、前後を含む事務所のほうが調査対応の実務経験が豊富と判定できます。
判定ポイント3:「重加算税を回避した事例」を説明できるかを聞きます。→ 隠蔽の意図がなかったことをどう主張したかを具体的に語れる事務所は、争点の組み立てができると判定できます。
3つとも数字と事例で答えられる事務所を選んでください。
自分だけで当日を迎えると、取り返しがつかない対応をしてしまうことがあります。
相談せずに進めた場合に起きること
修正申告に応じた場合の負担を具体化します。本税500万円、過少申告加算税75万円、延滞税27万円で合計602万円です。
この602万円のうち、争えば減らせた部分があったかどうかは、修正申告を出したあとでは検証できません。複数の税理士から見積りを取り、方針を比べてから決めてください。
連絡を受けてから依頼までの流れを4段階で示します。
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税理士費用の目安は、下記の記事で解説しています。

可能性は下がりますが、来ないとは言えません。法律上の期限は法定申告期限から5年で、偽りその他不正の行為があれば7年です。統計的に主な対象となるのは申告後1〜2年目の8〜11月ですが、除斥期間が過ぎるまで確定はしません。
法律で決まっているわけではありません。税務署の事務年度が7月から翌年6月までで、7月の人事異動が終わった直後の8〜11月に調査が集中する傾向があります。年明けから3月中旬は所得税の確定申告期にあたるため、相続税の実地調査は減ります。
違います。是認の場合は国税通則法74条の11第1項により、更正決定等をすべきと認められない旨が書面で通知されます。何も届いていない状態は、選定の対象になっていないか、手続が進行中のどちらかです。
できます。国税通則法74条の9第2項により、合理的な理由を付して日時と場所の変更を求めれば、税務署は協議するよう努める義務があります。ただし努力義務なので、必ず希望どおりになるとは限りません。仕事や入院など具体的な理由を伝えてください。
争えません。国税通則法74条の11第3項に、修正申告書を提出した場合は不服申立てができない旨が明記されています。更正の請求はできますが、評価や事実認定を争う手段としては限界があります。納得できない場合は、修正申告書を出す前に判断してください。
相続税の税務調査がいつ来るかは、税務署の事務年度から逆算すると見通しが立ちます。申告の1〜2年後、8月から11月が中心です。ただし法律上の期限は5年(不正があれば7年)で、この間は可能性が残ります。
▼ この記事の要点
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年8月時点の法令にもとづいて作成しています。相続税法および国税通則法の改正により取扱いが変わる場合があります。最新の制度については国税庁の公表資料をご確認いただき、個別の判断は税理士にご相談ください。