法人事業税と法人税は名前が似ていますが、まったく別の税金です。
法人税は法人の所得に対して国に納める「国税」であり、法人事業税は事業活動に対して都道府県に納める「地方税」です。
両者の最も重要な違いは「損金算入の可否」にあります。法人事業税は支払った翌期に損金算入(経費計上)できますが、法人税は損金に算入できません。この違いが法人の実効税率に影響を与えます。
また、法人が所得に対して納める税金は法人税と法人事業税だけではありません。地方法人税・特別法人事業税・法人住民税を含めた「全5税」をセットで理解する必要があります。
本記事では、法人事業税と法人税の違いを10項目で横並び比較し、所得1,000万円の法人で全5税を通しで計算する具体例、損金算入が実効税率に与える影響のシミュレーション、仕訳方法の違いまで網羅的に解説します。
この記事の要点
- 法人税は国税、法人事業税は地方税。法人事業税は損金算入できるが法人税は損金算入できない
- 法人が所得に対して納める税金は全5税(法人税・地方法人税・法人事業税・特別法人事業税・法人住民税)。セットで理解すべき
- 法人事業税の税率は3段階(400万円以下/400万超〜800万円以下/800万円超)。資本金1億円超は外形標準課税が適用
法人事業税と法人税の違い|10項目の横並び比較表

【完全比較表】法人事業税vs法人税の10項目一覧
| 比較項目 | 法人税 | 法人事業税 |
|---|---|---|
| 税金の分類 | 国税 | 地方税 |
| 納付先 | 税務署(国) | 都道府県 |
| 課税の趣旨 | 法人の所得に対する課税 | 事業活動に対する行政サービスの対価 |
| 課税標準 | 所得 | 所得・付加価値・資本金等・収入(法人の種類による) |
| 税率構造 | 2段階(800万円以下15%/超23.2%) | 3段階(400万円以下/400万超〜800万円以下/800万円超) |
| 損金算入 | 不可 | 可能(翌期の損金に算入) |
| 赤字の場合 | ゼロ | 所得割はゼロ(外形標準課税法人は付加価値割・資本割が発生) |
| 申告期限 | 事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内 | 同左 |
| 申告書の様式 | 別表一〜(税務署提出) | 第6号様式(都道府県提出) |
| 関連する付加税 | 地方法人税(法人税額×10.3%) | 特別法人事業税(法人事業税額×37%) |
最も重要な違い①:国税vs地方税(納付先が異なる)
法人税は国税であり、税務署に申告・納付します。法人事業税は地方税であり、事業所が所在する都道府県に申告・納付します。
複数の都道府県に事業所がある法人は、法人事業税を都道府県ごとに分割して納付する必要があります。
最も重要な違い②:損金算入できるか否か
法人事業税は支払った税額を翌期の損金に算入できます。法人事業税は「事業活動に対する行政サービスの利用料」という性質(物税)を持つため、事業に必要なコストとして経費計上が認められているのです。
一方、法人税と法人住民税は損金に算入できません。この違いは、法人の実効税率の計算にも影響を与えます。
最も重要な違い③:税率構造(法人税は2段階、法人事業税は3段階)
法人税の税率は2段階(800万円以下15%/800万円超23.2%)ですが、法人事業税の所得割は3段階(400万円以下/400万円超〜800万円以下/800万円超)で税率が異なります。
法人事業税の方が段階が細かく、低所得帯の税率が低く設定されています。
法人の所得にかかる全5税の全体像

法人税等(法人三税)+地方法人税+特別法人事業税の関係図
法人が所得に対して納める税金は、一般に「法人三税」と呼ばれる法人税・法人事業税・法人住民税に加え、地方法人税と特別法人事業税を含めた全5税で構成されます。
- 法人税(国税)→ これに地方法人税(国税)が上乗せ
- 法人事業税(地方税)→ これに特別法人事業税(国税だが地方税と一括申告)が上乗せ
- 法人住民税(地方税)→ 法人税割+均等割で構成
【全5税の比較表】課税主体・課税標準・税率・損金算入・申告先
| 税金の種類 | 国税/地方税 | 課税標準 | 税率(中小法人) | 損金算入 | 申告先 |
|---|---|---|---|---|---|
| 法人税 | 国税 | 所得 | 15%/23.2% | 不可 | 税務署 |
| 地方法人税 | 国税 | 法人税額 | 10.3% | 不可 | 税務署(法人税と一括) |
| 法人事業税 | 地方税 | 所得(中小法人) | 3.5〜7.0%(3段階) | 可能 | 都道府県 |
| 特別法人事業税 | 国税 | 法人事業税額 | 37.0% | 可能 | 都道府県(事業税と一括) |
| 法人住民税 | 地方税 | 法人税額+資本金等 | 法人税割7.0%+均等割 | 不可 | 都道府県・市区町村 |
※法人事業税の税率は東京都の標準税率(軽減税率適用法人)。自治体により超過税率が適用される場合あり。参照:総務省|法人事業税
「法人税等」「法人実効税率」とは何を指すか
決算書の損益計算書に記載される「法人税、住民税及び事業税」は、上記5税の合計額を指します。
また、法人の実質的な税負担率を示す「法人実効税率」は、法人事業税の損金算入効果を考慮して計算されるため、単純な税率の合計よりも低くなります。中小法人の法人実効税率は約33〜34%(標準税率ベース)です。
法人事業税の仕組みを詳しく解説

法人事業税とは(事業活動に対する「行政サービスの利用料」)
法人事業税は、法人が事業活動を行うにあたって利用する道路・上下水道・消防・警察などの行政サービスの対価として、事業所が所在する都道府県に納める地方税です(参照:総務省|法人事業税)。
「所得に対する課税」という性質の法人税とは異なり、「事業活動そのものに対する課税」という性質を持っています。
4種類の税割(所得割・付加価値割・資本割・収入割)
法人事業税は以下の4種類の税割で構成されます。
- 所得割:法人の所得を課税標準として計算。資本金1億円以下の中小法人はこれのみ
- 付加価値割:報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料+単年度損益を課税標準。資本金1億円超の法人に適用
- 資本割:資本金等の額を課税標準。資本金1億円超の法人に適用
- 収入割:電気供給業・ガス供給業・保険業など特定業種の収入を課税標準
中小法人(資本金1億円以下)の場合は所得割のみが適用されるため、赤字であれば法人事業税はゼロです。
法人事業税の税率(3段階)
中小法人(資本金1億円以下)の法人事業税の所得割は、以下の3段階で税率が異なります。
| 課税所得 | 法人事業税率(標準税率) |
|---|---|
| 年400万円以下 | 3.5% |
| 年400万円超〜800万円以下 | 5.3% |
| 年800万円超 | 7.0% |
※上記は標準税率。東京都などでは超過税率が適用される場合あり。
特別法人事業税とは(法人事業税とセットで申告・納付)
特別法人事業税は、2019年10月以降に開始する事業年度から導入された国税です。
地方自治体間の税収格差を是正する目的で、法人事業税の所得割額に37.0%を乗じて計算します。名前は「国税」ですが、法人事業税とセットで都道府県に申告・納付します。
法人税の仕組みを詳しく解説
法人税とは(法人の所得に対する国税)
法人税は、法人の事業活動によって得た所得(益金−損金)に対して課される国税です。法人税額は「課税所得×税率−税額控除」で計算します(参照:国税庁|No.5759 法人税の税率)。
法人税の税率(2段階)
| 課税所得 | 法人税率 |
|---|---|
| 年800万円以下(中小法人) | 15% |
| 年800万円超 | 23.2% |
地方法人税とは(法人税額×10.3%)
地方法人税は、法人税額を課税標準として10.3%を乗じて計算する国税です。法人税と一括して税務署に申告・納付します。
名前に「地方」とありますが国税であり、国から地方自治体に地方交付税として配分される仕組みです。
【計算例】所得1,000万円の中小法人が納める全5税の金額
資本金1,000万円・従業員10名・東京23区内に事業所がある中小法人(所得1,000万円)の場合で、全5税を通しで計算してみます。
法人税の計算
800万円×15%+200万円×23.2%=120万円+46.4万円=166.4万円
地方法人税の計算
166.4万円×10.3%=17.1万円
法人事業税の計算(3段階税率の適用)
400万円×3.5%+400万円×5.3%+200万円×7.0%=14万円+21.2万円+14万円=49.2万円
特別法人事業税の計算
49.2万円×37.0%=18.2万円
法人住民税の計算(法人税割+均等割)
法人税割:166.4万円×7.0%=11.6万円
均等割:7万円(資本金1,000万円以下・従業員50人以下)
合計=18.6万円
【合計表】全5税の税額一覧と実効税率
| 税金の種類 | 税額 | 損金算入 |
|---|---|---|
| 法人税 | 166.4万円 | 不可 |
| 地方法人税 | 17.1万円 | 不可 |
| 法人事業税 | 49.2万円 | 可能 |
| 特別法人事業税 | 18.2万円 | 可能 |
| 法人住民税 | 18.6万円 | 不可 |
| 合計 | 269.5万円 | — |
| 実質税負担率 | 約27.0% | — |
※標準税率ベースの概算。東京都の超過税率を適用した場合は若干高くなります。法人事業税・特別法人事業税は翌期に損金算入されるため、実効税率はこの数値よりさらに低くなります。
損金算入が実効税率に与える影響|法人事業税だけが経費になる理由

法人事業税が損金算入できる理由(「物税」としての性質)
法人事業税は、法人の「所得」ではなく「事業活動」に対して課される物税としての性質を持っています。
事業を行ううえで利用する行政サービス(道路・消防・警察等)の対価であるため、事業に必要なコスト=経費として損金算入が認められています。
法人税・法人住民税が損金算入できない理由
法人税は「所得に対する課税」であり、利益の一部を国に納めるという性質です。
仮に法人税を損金にできてしまうと、「法人税を払う→所得が減る→法人税が減る→さらに損金が減る→所得が増える…」という循環が生じるため、損金算入は認められていません。
法人住民税の法人税割も同様に法人税額をベースに計算されるため、損金に算入できません。
【シミュレーション】損金算入の有無で翌期の法人税額はいくら変わるか
前述の計算例で法人事業税49.2万円+特別法人事業税18.2万円=合計67.4万円が翌期に損金算入されます。翌期の所得が同じ1,000万円だった場合、損金算入により課税所得は932.6万円に圧縮されます。
| 項目 | 損金算入なし | 損金算入あり |
|---|---|---|
| 翌期の課税所得 | 1,000万円 | 932.6万円 |
| 翌期の法人税額 | 166.4万円 | 150.8万円 |
| 差額(法人税の節税額) | 約15.6万円 | |
法人事業税が損金算入できることで、翌期の法人税額が約15.6万円軽減されます。この損金算入効果があるため、法人の実効税率は各税率の単純合計よりも低くなるのです。
外形標準課税とは|資本金1億円超の法人に適用される特別ルール

外形標準課税の対象法人(資本金1億円超+2025年以降の適用拡大)
外形標準課税は、資本金1億円超の法人に適用される法人事業税の特別な課税方式です。
所得だけでなく、付加価値額(付加価値割)と資本金等の額(資本割)にも課税されるため、赤字であっても税金が発生します。
2025年4月以降は適用対象が段階的に拡大され、資本金と資本剰余金の合計額が10億円超の法人(資本金が1億円以下でも)が対象に加わります。
中小法人であっても大企業グループに属する場合は注意が必要です。
付加価値割・資本割の計算方法
付加価値割は、報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料+単年度損益の合計額に1.26%(標準税率)を乗じて計算します。資本割は、資本金等の額に0.525%(標準税率)を乗じて計算します。
赤字でも発生する外形標準課税の注意点
外形標準課税のうち、資本割は赤字であっても必ず発生します。付加価値割も、赤字であっても報酬給与額等の合計がプラスであれば発生します。
資本金1億円超の法人は「赤字だから法人事業税はゼロ」とはならない点に注意してください。
赤字の場合の違い
法人税:赤字ならゼロ
法人税は課税所得に税率を乗じて計算するため、赤字(課税所得ゼロ)であれば法人税額もゼロです。地方法人税も法人税額がベースのためゼロになります。
法人事業税(所得割):赤字ならゼロ(ただし外形標準課税法人は別)
資本金1億円以下の中小法人は所得割のみが適用されるため、赤字であれば法人事業税もゼロです。特別法人事業税も連動してゼロになります。
ただし、資本金1億円超の外形標準課税法人は、赤字でも付加価値割・資本割が発生します。
法人住民税:均等割は赤字でも発生
法人住民税のうち法人税割はゼロになりますが、均等割は赤字でも必ず発生します。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の法人で年間最低約7万円です。
仕訳方法の違い
法人税・法人住民税の仕訳(損金不算入)
法人税・地方法人税・法人住民税は損金に算入できないため、損益計算書では「法人税、住民税及び事業税」として税引前当期純利益の後に控除する形で表示しますが、税務上は損金になりません。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税 | 2,021,000 | 未払法人税等 | 2,021,000 |
※法人税166.4万円+地方法人税17.1万円+法人住民税18.6万円=202.1万円
法人事業税の仕訳(翌期に損金算入)
法人事業税と特別法人事業税も同じ勘定科目で計上しますが、翌期に損金算入される点が異なります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税 | 674,000 | 未払法人税等 | 674,000 |
※法人事業税49.2万円+特別法人事業税18.2万円=67.4万円
損金算入の処理タイミング(申告書を提出した日の属する事業年度)
法人事業税の損金算入は、法人事業税の申告書を提出した日の属する事業年度に行います。通常は翌期に確定申告書を提出するタイミングで損金算入されます。
決算時に未払計上した法人事業税が、翌期の確定申告時に損金として反映される流れです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 法人事業税と法人税の最大の違いは何ですか?
最大の違いは「損金算入の可否」です。法人事業税は支払った翌期に損金算入(経費計上)できますが、法人税は損金に算入できません。この違いが法人の実効税率に影響を与えます。
もう一つの大きな違いは、法人税が「国税」であるのに対し、法人事業税は「地方税」である点です。
Q2. 法人事業税が損金算入できるのはなぜですか?
法人事業税は法人の「所得」ではなく「事業活動」に対する課税(物税)であり、行政サービスの利用料としての性質を持つためです。事業に必要なコストとして経費計上が認められています。
Q3. 法人事業税の税率は何%ですか?
中小法人(資本金1億円以下)の所得割は3段階で、年400万円以下の部分が3.5%、400万円超〜800万円以下が5.3%、800万円超が7.0%です(標準税率)。自治体によっては超過税率が適用されます。
Q4. 外形標準課税とは何ですか?
資本金1億円超の法人に適用される法人事業税の特別な課税方式です。所得割に加えて、付加価値割(付加価値額×1.26%)と資本割(資本金等の額×0.525%)が課されます。
赤字であっても付加価値割・資本割は発生する点が通常の所得割と大きく異なります。
Q5. 赤字の場合、法人事業税は払う必要がありますか?
資本金1億円以下の中小法人であれば、赤字の場合は法人事業税(所得割)はゼロです。
ただし、資本金1億円超の法人は外形標準課税が適用されるため、赤字でも付加価値割・資本割が発生します。
まとめ|法人事業税と法人税は「損金算入の可否」が最大の違い。全5税をセットで理解する
法人事業税と法人税は、名前は似ていても「国税vs地方税」「損金算入の可否」「税率構造」など多くの点で異なります。
最後に、本記事のポイントを整理します。
1. 法人事業税は損金算入できる唯一の「法人税等」
法人税・地方法人税・法人住民税は損金に算入できませんが、法人事業税(+特別法人事業税)は翌期の損金に算入できます。この違いが法人の実効税率を引き下げる効果を持っています。
2. 全5税をセットで把握し、トータルの税負担を理解する
法人税だけでなく、地方法人税・法人事業税・特別法人事業税・法人住民税の5税をセットで理解することで、法人の実質的な税負担率(実効税率)を正確に把握できます。本記事の計算例を自社の所得に当てはめて、トータルの税負担を確認してください。
3. 資本金1億円超の法人は外形標準課税に要注意
2025年以降は外形標準課税の適用対象が拡大されます。資本金が1億円以下でも、大企業グループに属する法人は対象になる可能性があるため、自社が対象に含まれるか早めに確認してください。
※本記事の情報は2026年3月時点のものです。税率は自治体や法人の種類により異なります。具体的な税務判断にあたっては最新の情報を確認し、税理士にご相談ください。



